クガイソウ 九蓋草
Flora of Mikawa
オオバコ科 Plantaginaceae クガイソウ属
学 名 | Veronicastrum sibiricum f. glabratum (Nakai) H.Ohashi synonym Veronicastrum japonicum (Nakai) T.Yamaz. var. japonicum synonym Veronicastrum sibiricum (L.) Pennell subsp. japonicum (Nakai) Yamazaki |
花 期 | 7月中旬~8月下旬 |
高 さ | 80~130㎝ |
生活型 | 多年草 |
生育場所 | 山地の草地 |
分 布 | 在来種 北海道、本州、サハリン |
撮 影 | 八島ケ原湿原 03.8.7 |
シベリアクガイソウは大きさ、花序軸の毛の有無、花の色により5品種、シロバナナンゴククガイソウ(f. albiflorum)、シロバナクガイソウ(f. album)、 クガイソウ(f. glabratum)、イブキクガイソウ(f. humile)、シベリアクガイソウ(f. sibiricum)に分けられる。
クガイソウは従来の本州に広く分布するクガイソウと北海道、サハリンに分布するエゾクガイソウを統合したものである。
高さ(60~)80~150㎝。葉は通常長さ6㎝以上で、狭楕円形または狭卵形、先は尖鋭形~尾状。花序軸は有毛。花は紫色。
(1) Veronicastrum japonicum (Nakai) T.Yamaz. var. japonicum クガイソウ 九蓋草
synonym Veronicastrum sibirz"cum (L.) Pennell var. japonicum (Nakai) Hara in Journ.Jap. Bot. 16: 160 (1940)
本州に広く分布する。山地や亜高山の日当たりの良い草地に生える。エゾグガイソウに比べて全体に小形、高さ(60~)80~150㎝、茎は円柱形、直立し、株立ちになる。葉は(4~)5~6(~8)枚、輪生する。葉柄は短柄または無柄。葉身は単葉、長さ5~18㎝×幅2~5㎝、狭楕円形または狭卵形、先は先は尖鋭形~尾状、基部は楔形、縁は鋸歯がある。花序は頂生、穂状の長い総状花序、長さ10~25㎝、花が多数つき、花序軸には短毛が散生する。小花柄は長さ1.5~3㎜。萼は花時に長さ1~1.5㎜、5深裂する。花冠は淡紫色、筒形、長さ5~6㎜、先は4浅裂し、裂片は先がやや鋭形(~やや鈍形)。雄しべは2本、花冠から長く突き出る。蒴果は卵形、長さ約2.5㎜。2n=34,68。花期は7月中旬~8月下旬。
(2) Veronicastrum sibiricum subsp. yezoense (H.Hara) T.Yamaz. エゾクガイソウ 蝦夷九蓋草
synonym Veronicastrum sibiricum (L.) Pennell var. yezoense Hara
synonym Veronicastrum sachalinense T.Yamaz. in J. Jap. Bot. 57: 212 (1982), nom. superfl.
synonym Veronica sachalinensis Boriss.
北海道、サハリンに分布する。低地~山地の日当たりの良い草地や林縁、道端の湿地に生える。全体に大形。高さ100~200㎝、クガイソウより大きい。葉は輪生し、節ごとに(5~)7~8(~10)枚つき、葉身は長さ10~20㎝×幅2~3㎝、[披針形~]狭楕円形または狭卵形、先は尖鋭形~尾状、基部は楔形、縁の鋸歯は細かく、前向きに曲がり、葉の上面は無毛、下面に毛が密生[または毛がほとんどないか無毛]。花序は頂生、直立し、長さ[15~]20~40㎝の総状花序、花が密に多数つく。花序軸には短毛が散生する。小花柄はほぼ無またはあっても1㎜以下。苞は線形。萼は花時に長さ2~3[3.5]㎜、披針形、先が鋭形。花冠は鮮やかな紫色、長さ[約6]7~8㎜。花冠裂片は[長さ約1㎜]、先が円形~やや鈍形(変異がありまれに鋭形)。雄しべは2本、[長さ約10㎜]長く突き出る。花糸は白色。葯は褐色。[蒴果は2室、球形~卵形、先は鈍形、長さ2~3㎜×幅2~2.5㎜、4歯から裂開する。種子は約・長さ0.75㎜×幅0.3㎜、楕円形、先は鈍形、溝があり疣状突起がある。]花期は7~8月。2n=34。[]はV. sachalinense。
品種) 'Hendersonii' , 'Sunny Border Blue'
イブキクガイソウ f. humile は伊吹山、四国に分布し、小型で高さが50~70㎝。
ナンゴククガイソウ var. australe は本州(中国地方)、四国、九州に分布し、葉幅が広く、花序軸が無毛。
よく似たルリトラノオは葉が対生し、花冠の筒部が短い。
クガイソウ属
family Plantaginaceae - genus Veronicastrum多年草。根は普通、若い時に密に黄色の綿毛がある。根茎は短又は長、まれに無い。茎は直立又はアーチ状になり、先から根を出す。葉は互生、対生、又は輪生。花序は頂生又は腋生、穂状花序。花は普通、密集する。萼は5裂、上側の萼片は他よりわずかに小さい。花冠は4裂、筒部は筒状、真っすぐ又はわずかに曲がり、普通、内側に絨毛の輪をもち、まれに無毛になる。花冠の拡大部は放射相称又は2唇形。花冠裂片は幅が不等で、上の裂片が最も幅が広く、下側の裂片は狭い。雄しべは2本。花糸は普通、基部に絨毛があり、まれに無毛、花冠筒部の上部につく。葯室は輻合し(connivent)、合流(confluent)しない。柱頭は小さく、わずかに広がる。蒴果は卵形~卵状球形、わずかに側部が扁平、2溝があり、バルブは4個。種子は蒴果に多数。
世界に約20種あり、東アジア、北アメリカに分布する。
クガイソウ属の主な種と園芸品種
1 Veronicastrum axillare (Siebold et Zucc.) T.Yamaz. トラノオスズカケ 虎の尾鈴懸
synonym Veronicastrum axillare (Siebold et Zucc.) T.Yamaz. var. simadae (Masam.) H.Y.Liu
synonym Veronicastrum simadae (Masam.) T.Yamaz. タカサゴトラノオ
日本(四国、九州)、中国(安徽省、福建省、広東省、江蘇省、江西省、浙江省)、台湾原産。中国名は爬岩红 pa yan hong。標高の低い地域の森林、森林縁の草原、谷間の日陰に生える。根茎は短く、水平。茎は弓状に伸びて先端で根を張り、基部は円柱形で、中央部と先端は角張り、無毛、まれに角(かど)にまばらに毛が生える。葉は互生し、葉柄は短い。葉身は卵形~卵状披針形で、長さ5~12㎝、紙質、無毛、縁は斜めの三角形の歯があり、先は尖鋭形。花序は腋生まれに頂生し、長さ1~3㎝。苞と萼片は線状披針形~錐形、無毛または縁毛がある。花冠は紫色~赤紫色で、長さ4~5㎜、真っすぐ、拡大部は放射相称、花冠裂片は長さ約2㎜、狭三角形。雄しべはわずかに突出するか顕著に突出し、花冠より約2㎜長い。花糸は有毛。葯は長さ0.6~1.5㎜。蒴果は卵形~球形、長さ約3㎜。種子は長円形、長さ約0.6㎜。種皮は不明瞭な網目がある。花期は7~9月。
2 Veronicastrum formosanum (Masam.) T.Yamaz. タカサゴルリトラノオ 高砂瑠璃虎の尾
synonym Veronicastrum kitamurae (Ohwi) T.Yamaz. タロコソウ 高山腹水草
台湾原産。中国名は台湾腹水草 tai wan fu shui cao。標高2000~3000mに生える。茎は直立し、高さ15~30cm、単純または分枝し、翼があり、無毛。葉は互生し、ほぼ無柄から短い葉柄がある。葉身は広線形~楕円形、長さ4~11㎝×幅0.5~2㎝、無毛で、基部は漸尖し、縁は鋸歯~歯があり、歯先は斜上し、先は鋭形~尖鋭形。総状花序は主茎と葉のある枝に頂生し、長さ1.5~4.5㎝。苞は錐状披針形、長さ3~5㎜×幅約1㎜。萼は無毛、萼片は錐状披針形、長さ3~4㎜×幅約1㎜。花冠は帯緑色~帯黄色または帯紫色、長さ約3mm、有毛。花冠筒部は拡大部と同長、拡大部は放射相称。雄しべは花冠とほぼ同長。花糸は毛がある。蒴果は卵状球形、長さ 3~4㎜、無毛。花期は7~8月。
3 Veronicastrum liukiuense (Ohwi) T.Yamaz. リュウキュウスズカケ 琉球鈴懸
日本固有種。奄美大島、喜界島、沖縄群島に分布する。山地の岩場などに生える。多年草、高さ30~100㎝。茎は基部から分枝して地上を這う。葉は互生し、卵形~卵状披針形、長さ4~12㎝、基部は円形~広楔形、縁に鋸歯があり、先は鋭形。穂状花序は頂生または葉腋に腋生し、直立し、長さ4~6㎝、花を多数つける。花は長さ7㎜、淡紅紫色または白色。花期9~10月。
4 Veronicastrum loshanense T.-T.Chen et F.-S.Chou ベロニカストルム・ロシャネンセ
台湾原産。花蓮県、楽山村、台湾東部でのみ知られ、標高約600mのまばらな広葉樹林内に生える。多年草。茎は斜上または傾伏し、よく分枝し、長さ約1m、幅約0.5㎜、翼は幅約1㎜、無毛。葉は互生し、単葉、2形性、縁は鋸歯があり、無毛、茎下部では倒披針状楕円形、長さ7~10cm×幅2~2.5cm、先は鋭形、基部は漸尖し、枝と茎上部では卵状楕円形、長さ2~5cm×幅1~3cm、先は鋭形、基部は楔形。葉柄は短く、長さ1~2㎜、無毛。花序は頂生、総状花序、長さ5~12cm、無毛。花は暗紫色、ほぼ無柄、苞がある。小花柄は長さ約1㎜。苞は披針形、長さ約3㎜×幅約1㎜。萼片は5深裂し、緑色、裂片は狭い角卵形(trullate)、尖鋭形、浅い鋸歯があり、無毛、長さ約3㎜×幅約1mm。花冠は4裂し、筒状鐘形、暗紫色。花冠筒部は長さ約2.5㎜、口部付近の内側は羊毛状、外側は無毛。上部の裂片はわずかに湾曲し、卵状円形、長さ約2.5mm×幅約2㎜。その他の裂片は披針形、長さ2.5㎜×幅1.5 ㎜、反り返っている。雄しべは2本、わずかに突き出し、花冠上部の裂片の脇につき、長さ約3 mm。基部近くに毛があり、葯は背着し、長さ約1㎜、縦方向に裂開し、黄色。子房は卵状楕円形で、約・長さ1㎜×幅1.5㎜。花柱は長さ約2㎜。柱頭は点状。果実は卵形の蒴果で、長さ3~4㎜×幅2~3㎜、裂開して4つの弁になる。種子は多数、卵形楕円形で、長さ約0.5㎜×幅約0.4㎜、網状の条線がある。
5 Veronicastrum noguchii K.Uehara, K.Saiki et T.Ando イスミスズカケ 夷隅鈴懸
日本固有種。本州の千葉県いすみ市のみに生育する。急峻な崖に生える。多年草.茎は細長く、上方にアーチを描き下垂、先端が接地したところで発根し、新しい苗を形成する。茎は円柱状で、長い曲がった軟毛がある。葉は互生、し、茎の先端に向かって徐々に小さくなる。葉柄は長さ2~5mmで、表面に毛がある。葉身は紙質、卵形で長さ7~10cm×幅4~6cm、表面に毛が散在し先は尖り、基部は心形、ときに切形、葉縁は円鋸歯状、鋸歯の先端は尖り、中脈とその他の葉脈は下面に盛り上がり、軟毛があり、普通3~4本の側脈が中脈の基部もしくは基部の少し上から出る。7~8月に穂状花序を腋生、花序は亜球形、長さと幅は2~3cm。 苞葉は狭卵形、先端は尖り、長さ約4mm、表面に毛が散在する。苞葉により覆われた花は、若い芽の時期には普通赤紫色を帯びる。萼は釣鐘形、基部付近まで5裂する。萼片は細い三角形、先端は尖り、縁に毛があるがほとんど無毛、長さ約5mm。花冠は筒状で暗青紫色、花冠筒部は長さ約7mm、外側は無毛で内側は有毛、先は4裂する。花冠裂片は三角形で先端は尖り、長さ約2mm。 雄しべは、長く花の外に飛び出し、長さ11~12mm、花糸の基部は有毛、花冠の基部につく。子房は卵形、長さ約1mm。花柱は糸状で無毛、長さ14~15mm。蒴果と種子は未観察。(参考5)。
6 Veronicastrum sibiricum (L.) Pennell シベリアクガイソウ 広義
日本、朝鮮、中国(甘粛省、河北省、黒龍江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル自治区、陝西省、山西省、山東省)、モンゴル、ロシア原産。中国名は草本威灵仙 cao ben wei ling xian。標高2500m以下の道端、草地の斜面、茂みに生える。
従来、本州に分布するクガイソウ、北海道などに分布するエゾクガイソウ、朝鮮、中国、ロシアなどに分布するシベリアクガイソウ、イブキクガイソウ、ツクシクガイソウ、ナンゴククガイソウなどが別種、亜種、変種などに分類されてきたが、これらは連続変異であり、変種以上のランクで識別するほど明瞭ではないことから、日本国内のクガイソウ類を1種にまとめ、大きさ、花序軸の毛の有無、花の色により5品種、シロバナナンゴククガイソウ(f. albiflorum)、シロバナクガイソウ(f. album)、 クガイソウ(f. glabratum)、イブキクガイソウ(f. humile)、シベリアクガイソウ(f. sibiricum)に分類することが提案され(大橋広好 :クガイソウ(オオバコ科)の変異 2015年)、POWO(Kew)もこの説に従い5品種としている。
通常全体に大型(f. humileは小型)で、高さ(60~)80~150㎝(ときに~200㎝)。節における輪生葉の数が多く、葉は通常長さ6㎝以上(f. humileは6㎝未満)で、狭楕円形または狭卵形(f. humileは楕円形または卵形まれに狭楕円形)、先は尖鋭形~尾状(f. humileは鋭形~尖鋭形)。花序軸は無毛または有毛。花は紫色または白色。
植物研究雑誌(J.J.Bot.90(3): 179-191(2015))に品種へのKey toが示されている(参考8)。
1. 高さ40~70㎝。葉は通常長さ6㎝未満で、楕円形または卵形まれに狭楕円形、先は鋭形~尖鋭形 ......... f. humile
1. 高さ(60~)80~150㎝。葉は通常長さ6㎝以上で、狭楕円形または狭卵形、先は尖鋭形~尾状 .................. 2
2. 花序軸は無毛 .......................... 32. 花序軸は有毛 .......................... 4
3. 花冠は紫色 ............................... f. sibiricum
3. 花冠は白色 ............................... f. albiflorum
4. 花冠は紫色 ............................... f. glabratum
4. 花冠は白色 ............................... f. album
6-1 Veronicastrum sibiricum f. albiflorum Akasawa シロバナナンゴククガイソウ 白花南国九蓋草
synonym Veronicastrum japonicum f. albiflorum (Akasawa) T.Yamaz.synonym Veronicastrum japonicum (Nakai) T.Yamaz. var. australe (T.Yamaz.) T.Yamaz. f. albiflorum (Akasawa) T.Yamaz. [YList]
四国に分布する。YListではナンゴククガイソウの白花品種とし、basionymとされている。花序軸に毛がなく、葉の幅が広くて草丈がやや低く、花が白色。
6-2 Veronicastrum sibiricum f. album T.Shimizu シロバナクガイソウ 白花九蓋草
synonym Veronicastrum japonicum f. album (T.Shimizu) T.Yamaz. in Fl. Japan 3a: 346 (1993) [YList]
synonym Veronicastrum sibiricum f. albiflorum Hayashi in Bull. Gov. Forest Exp. Sta. 170: 83 (1964), nom. illeg.
synonym Veronicastrum sibiricum f. albiflorum N.Yonez. in J. Phytogeogr. Taxon. 32: 126 (1984), nom. illeg.
synonym Veronicastrum sibiricum f. albiflorum Hideki Takah. in J. Phytogeogr. Taxon. 52: 191 (2004), nom. illeg.
synonym Veronicastrum sibiricum(L.)Pennell var. yezoense H. Hara f. albiflorum Hideki Takahashi シロバナエゾクガイソウ
synonym Veronicastrum sibiricum (L.) Pennell var. yezoense H.Hara f. candidum Yonek.
synonym Veronicastrum sibiricum f. candidum Yonek.
北海道、本州に分布する。クガイソウ(エゾクガイソウ)の白花品種。花序軸に毛がある。
6-3 Veronicastrum sibiricum f. glabratum (Nakai) H.Ohashi クガイソウ 九蓋草
synonym Veronica japonica (Raf.) Steud.synonym Veronicastrum japonicum (Nakai) T.Yamaz. var. japonicum クガイソウ [YList]
synonym Veronicastrum japonicum (Nakai) T.Yamaz.synonym Veronica sibirica f. glabrata Nakai
synonym Veronicastrum sibiricum var. yezoense H.Hara in J. Jap. Bot. 16: 161 (1940)
synonym Veronicastrum sibiricum subsp. yezoense (H.Hara) T.Yamaz. エゾクガイソウ [YList]
synonym Veronicastrum sibiricum (L.) Pennell var. japonicum (Nakai) H.Hara
synonym Veronicastrum sachalinense T.Yamaz.北海道、本州、サハリンに分布。山地の草地に生える。POWOではエゾクガイソウを含めて広義に扱う。
多年草。高さ(60~)80~150(エゾクガイソウは200まで)㎝。葉は通常長さ6㎝以上で、狭楕円形または狭卵形、先は尖鋭形~尾状。花序軸は有毛。花は紫色。
(1) Veronicastrum japonicum (Nakai) T.Yamaz. var. japonicum クガイソウ 九蓋草
synonym Veronicastrum sibirz"cum (L.) Pennell var. japonicum (Nakai) Hara in Journ.Jap. Bot. 16: 160 (1940)
本州に広く分布する。山地や亜高山の日当たりの良い草地に生える。エゾグガイソウに比べて全体に小形、高さ(60~)80~150㎝、茎は円柱形、直立し、株立ちになる。葉は(4~)5~6(~8)枚、輪生する。葉柄は短柄または無柄。葉身は単葉、長さ5~18㎝×幅2~5㎝、狭楕円形または狭卵形、先は先は尖鋭形~尾状、基部は楔形、縁は鋸歯がある。花序は頂生、穂状の長い総状花序、長さ10~25㎝、花が多数つき、花序軸には短毛が散生する。小花柄は長さ1.5~3㎜。萼は花時に長さ1~1.5㎜、5深裂する。花冠は淡紫色、筒形、長さ5~6㎜、先は4浅裂し、裂片は先がやや鋭形(~やや鈍形)。雄しべは2本、花冠から長く突き出る。蒴果は卵形、長さ約2.5㎜。2n=34,68。花期は7月中旬~8月下旬。
(2) Veronicastrum sibiricum subsp. yezoense (H.Hara) T.Yamaz. エゾクガイソウ 蝦夷九蓋草
synonym Veronicastrum sibiricum (L.) Pennell var. yezoense Hara
synonym Veronicastrum sachalinense T.Yamaz. in J. Jap. Bot. 57: 212 (1982), nom. superfl.
synonym Veronica sachalinensis Boriss.
北海道、サハリンに分布する。低地~山地の日当たりの良い草地や林縁、道端の湿地に生える。全体に大形。高さ100~200㎝、クガイソウより大きい。葉は輪生し、節ごとに(5~)7~8(~10)枚つき、葉身は長さ10~20㎝×幅2~3㎝、[披針形~]狭楕円形または狭卵形、先は尖鋭形~尾状、基部は楔形、縁の鋸歯は細かく、前向きに曲がり、葉の上面は無毛、下面に毛が密生[または毛がほとんどないか無毛]。花序は頂生、直立し、長さ[15~]20~40㎝の総状花序、花が密に多数つく。花序軸には短毛が散生する。小花柄はほぼ無またはあっても1㎜以下。苞は線形。萼は花時に長さ2~3[3.5]㎜、披針形、先が鋭形。花冠は鮮やかな紫色、長さ[約6]7~8㎜。花冠裂片は[長さ約1㎜]、先が円形~やや鈍形(変異がありまれに鋭形)。雄しべは2本、[長さ約10㎜]長く突き出る。花糸は白色。葯は褐色。[蒴果は2室、球形~卵形、先は鈍形、長さ2~3㎜×幅2~2.5㎜、4歯から裂開する。種子は約・長さ0.75㎜×幅0.3㎜、楕円形、先は鈍形、溝があり疣状突起がある。]花期は7~8月。2n=34。[]はV. sachalinense。
品種) 'Hendersonii' , 'Sunny Border Blue'
6-4 Veronicastrum sibiricum f. humile (Nakai) H.Ohashi イブキクガイソウ 伊吹九蓋草
synonym Veronicastrum japonicum (Nakai) T.Yamaz. var. humile (Nakai) T.Yamaz. [YList]
synonym Veronicastrum japonicum (Nakai) T.Yamaz. f. humile (Nakai) T.Yamaz.
synonym Veronicastrum sibiricum (L.) Pennell subsp. japonicum (Nakai) T.Yamaz. f. humile (Nakai) T.Yamaz.
本州、四国に分布する。本州の伊吹山、四国の東赤石山系、剣山だけに自生する。クガイソウに似ている。高さ40~70㎝、50㎝程度の低いものが多く、葉身が楕円形~卵形、まれに狭楕円形、先は鋭形~尖鋭形、長さは6cm以下。花期は7~8月。
6-5 Veronicastrum sibiricum f. sibiricum シベリアクガイソウ
synonym Veronicastrum sibiricum (L.) Pennell var. sibiricum シベリアクガイソウ [YList]
synonym Veronica sibirica var. glabra Nakai.synonym Veronicastrum sibiricum var. zuccarinii (Koidz.) H.Hara ツクシクガイソウ
synonym Veronicastrum japonicum var. australe (T.Yamaz.) T.Yamaz. ナンゴククガイソウ [YList]
synonym Veronicastrum sibiricum var. australe T.Yamaz.日本、朝鮮、中国(甘粛省、河北省、黒龍江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル自治区、陝西省、山西省、山東省)、モンゴル、ロシアに分布。標高2500m以下の道端、草地の斜面、茂みに生える。
高さ(60~)80~150㎝。葉は通常長さ6㎝以上で、狭楕円形または狭卵形、先は尖鋭形~尾状。花序軸は無毛。花は紫色。
根茎は水平で、長さ13㎝まで、節間は短い。茎は直立し、単純で、円柱形、無毛またはまばらに絨毛があり、多細胞毛がある。葉は4~6枚が輪生し、無柄で、長円形~広線形、長さ8~15㎝×幅1.5~4.5㎝、無毛またはまばらに毛があり、多細胞毛がある。花序は先端に付き、苞は長い尾状、無毛。萼片は花冠の半分以下の長さで、裂片は錐形。花冠は赤紫色、紫色、または淡紫色で、長さ5~7㎜。花冠筒部は筒状で真っ直ぐ、先の内部に毛がある。拡大部は放射相称、裂片は長さ1.5~2㎜。蒴果は卵形、長さ約3.5㎜。種子は楕円形。花期は7~9月(Flora of China)。2n=34(朝鮮、ロシア)
(1) Veronicastrum sibiricum (L.) Pennell var. sibiricum シベリアクガイソウ
シベリアグガイソウは全体に大型、節における輪生葉の数が多く、花は大きく殆ど無柄である。この点ではエゾクガイソウによく似ている。花序軸は無毛、花冠裂片の先は尖る。(2) Veronicastrum japonicum (Nakai) T.Yamaz. var. australe (T.Yamaz.) T.Yamaz. ナンゴククガイソウ 南国九蓋草
本州(中国地方)、紀伊半島、四国、九州に分布。山地の日当たりの良い草地に生える。高さ80~130㎝。葉は輪生し、葉柄は無またはごく短い短柄。葉身は葉幅が広く、長円状披針形~楕円状披針形、先は鋭形、縁は鋸歯縁。花序軸は無毛。小花柄は長い。花冠は淡紫色、筒形、長さ5~6㎜、花冠裂片の先は円形~鈍形。クガイソウとシベリアクガイソウとの中間的な性質を示す。
(3) Veronicastrum sibiricum var. zuccarinii (Koidz.) H.Hara ツクシクガイソウ 筑紫九蓋草
九州(熊本県、大分県)、朝鮮に分布する。丘陵地や低山地の谷の草地に生える。茎や葉の両面、特に裏面に毛が密生する。その他の特徴はシベリアグガイソウと同じであり、朝鮮では両者の変異は連続的である。2n=34。
7 Veronicastrum tagawae (Ohwi) T.Yamaz. キノクニスズカケ 紀の国鈴懸
日本固有種(紀伊半島南部)。林内に生える。
多年草。高さ1~1.5m。茎は斜上、しばしばアーチ状になり、先が接地し、根を出す。葉は互生、葉柄は長さ5~10㎜。葉身は厚う、卵形~狭卵形、長さ10~13㎜×幅は4~7㎜、基部は円形、縁は低い鋸歯縁、先は長い鋭形~尾状尖鋭形、上面は無毛、下面は脈上に短毛がある。穂状花序は腋生、短い円柱状、直立し、花が密につく。花冠は白色、長さ約7㎜、先は4浅裂する。雄しべは2本、長く突き出す。 花期は9月下旬~10月上旬。
8 Veronicastrum tubiflorum (Fisch. et C.A.Mey.) H.Hara ヤナギバトラノオ 柳葉虎の尾
朝鮮、中国(黒龍江省、吉林省、内モンゴル)、モンゴル、ロシア原産。中国名は管花腹水草 guan hua fu shui cao。低地の牧草地、茂みに生える。根は無毛。根茎はない。茎は直立し、高さ40~70㎝、単生、円柱形、先に絨毛がある。葉は互生し、無柄、線形、長さ 3~9㎝×幅約0.6㎝、紙質、下面は絨毛が密にあり、上面は小剛毛があり、無毛になり、縁はまばらに鋸歯があり、1脈がある。花序は頂生、1個、長さ5~15㎝、花序軸と小花柄にはまばらに絨毛がある。萼片は披針形で長さ約1.5㎜、短い縁毛がある。花冠は青色~淡赤色、長さ約6㎜。花冠筒部は筒状、真っすぐで、先は内側に毛がある。拡大部は放射相称、裂片は花冠の長さの約1/4。蒴果は卵形、長さ2~2.5㎜、先は鋭形。花期は6~8月。
9 Veronicastrum villosulum (Miq.) T.Yamaz. スズカケソウ 鈴懸草
日本、中国原産。中国名は毛叶腹水草 mao ye fu shui cao 。
日本では江戸時代から栽培されているが、原産地はよくわからず、徳島県貞光町(1989)で野生種と思われるものが確認されている。岐阜県、鳥取県からも報告があるが野生かは不明。
暖地に生じる多年草。茎はつる状、長さ約2m、先端は地に着いて根を出し、新株を生じる。葉は互生し、長卵形、先は尖り、鋸歯があり、茎とともに細毛に被われる。秋に葉腋に花序柄の無い球形の花序に多数の濃紫色の小花をつける。花冠は4裂、下部は狭筒形、腺縁毛をもつ苞と咢片とが基部にある。雄しべは2本。雌しべは1本。希少品として栽培されている。
【Flora of Chinaの解説】
根茎は短い。茎はアーチ状になり、先から根を出し、円柱形、ときに、先に狭い角(かど)がある。葉は互生、葉柄は短い。葉身は菱状卵形、長さ4~15㎝X幅1.5~7㎝、無毛又は有毛、基部はほとんどが広楔形~まれに円形、縁は歯状、先は鋭形~尖鋭形。花序は頭状花序、腋生、長さ1~1.5㎝。苞は披針形、花冠の長さと同長又は短く、縁毛がある。萼は苞より短く、萼片は錐形。花冠は真っすぐ、拡大部は放射相称、花冠裂片は長さ1~2㎜。雄しべは明瞭に突き出し、花糸に毛がある。葯は長さ1.2~1.5㎜。蒴果は卵形、長さ約2.5㎜。種子は黒色、球形。花期は5~9月。
9-1 Veronicastrum villosulum var. villosulum
日本、中国原産。中国名は毛叶腹水草 mao ye fu shui cao
茎、葉、苞及び咢は密に褐色の多細胞の腺毛をもつ。葉身は長さ7~12㎝X幅3~7㎝。 花冠は紫色~紫青色、長さ6~7㎜。花冠裂片は長さ約1㎜、デルタ形。花期は6~8月。
9-2 Veronicastrum villosulum var. glabrum T. L. Chin & D. Y. Hong
中国原産。中国名は铁钓竿 tie diao gan
茎と葉は無毛。葉身は狭卵形~卵状披針形、長さ6~15㎝X幅2.5~6㎝、紙質、上面は明るく(lucid)、基部は円形、縁は歯状、歯は葉先に向かって斜めになり、先は尖鋭形。苞と萼片には密に縁毛がある。花冠は紫色、淡紫色、又は紫青色、長さ5~6㎜。花冠裂片は狭三角形、長さ約1.5㎜。
9-3 Veronicastrum villosulum var. hirsutum T. L. Chin & D. Y. Hong
中国原産。中国名は刚毛毛叶腹水草 gang mao fu shui cao
茎は普通、褐黄色の多細胞の巻毛の軟毛をもち、まれに褐色の多細胞の腺毛をもつ。葉身はほとんどが卵形~卵j状円形、粗毛があり、まれに褐色の多細胞の腺毛もつ。苞と萼片は長~短の腺毛をもつ。花冠は紫色、長さ5~9㎜。花冠裂片は長さ1.5~2㎜、三角形。花期は5~8月。
9-4 Veronicastrum villosulum var. parviflorum T. L. Chin & D. Y. Hong
中国原産。中国名は两头连 liang tou mang
茎は密に短い巻き毛がある。葉身は卵形~卵状披針形、長さ4~8㎝X幅1.5~3㎝、脈上に短い巻き毛があり、基部は切形~円形、まれに広楔形、縁は円鋸歯で基部に尖りのある湾入部がある。花冠は白色、長さ3.5~5㎜、花冠裂片は長さ1.2~1.6三井。花期は7~9月。
10 Veronicastrum virginicum (L.) Farw. セイヨウクガイソウ 西洋九蓋草
北アメリカ(カナダ、USA)原産。英名はblackroot , bowman's-root , Culver's-root , Culver's-physic , tall-speedwell。別名は洋種クガイソイウ、クガイソウ。多数の園芸品種がある。根は薬用の下剤として使われる。
多年草、直立し、高さ80~200㎝、不分枝又は上部で分枝し、直立する。下部の葉は3~6輪生、葉柄は長さ2~4㎜、葉身は披針形~広披針形~楕円形、長さ(40~)70~140mm×幅10~36㎜、細かい歯がある。上部の葉は葉柄が長さ0.1~3mm、葉身は披針形~狭披針形~楕円形、長さ20~40mm×幅3~10mm。総状花序は1~8(~12)個、花は連続し、先細の円筒形、長さ6~35㎝、花序柄は長さ5~15㎝。総状花序が数段輪生し、複合の円錐花序を頂生する。苞は葉状、上部では小さく、長さ(4~)12~75mm×幅1~12mm。集散花序は花が1~2個つく。花柄は斜上し、長さ0.3~1.2㎜、無毛。小苞は線状披針形~線形。花は萼が無毛、萼片は長さ1.2~3mm×幅0.5~1mm、内側の2個の萼片は外側の萼片より短い。花冠は白色~淡青色、長さ4~5.5(~6.5)㎜、外側は無毛、内側に不明瞭な毛があり、筒状、筒部は直径1~1.3mm、先は短く4裂する。花冠裂片は広がり、広卵形~三角形、長さ1.2~2.2mm、外側の3個は内側の1個より幅が狭い。雄しべは長く突き出し、花糸は長さ7~9mm。蜜腺があり子房の基部に輪になる。 花柱は長さ7~9mm。蒴果は卵形~楕円形、長さ2.5~4.5(~5.2)mm×幅1.8~2.3mm、無毛。種子は0.3~0.7mm×幅0.2~0.4mm。2n=34。花期は6~8月。
品種) 'Adoration'(赤紫色) , 'Alboroseum' , 'Album' , 'Apollo'アポロ(薄青紫色) , 'Challenger' (PBR)チャレンジャー , 'Cupid'キューピッド , 'Dianaダイアナ(白花)' , 'Diane' , 'Du Jardin' , 'Erica' , 'Fascination' ファシネーション(薄紫色) , 'Klein Erica' , 'Lavendelturm' , 'Pink Glow' , 'Pointed Finger' , 'Red Arrow' , 'Ruby Glow' , 'Spring Dew' , 'Temptation'
11 Veronicastrum wulingense G.W. Hu & Q.F. Wang ベロニカストルム・ウリンゲンセ
中国(湖北省)原産。中国名は武陵腹水草 Wu Ling Fu Shui Cao。武陵山地域北中部の海抜1000~1400mの高地にある歩道沿いの広葉樹林の下の岩に隣接する厚い腐植層に生える。多年草。根茎は短く水平。茎は密に短い縮毛があり、長さ90cm以下、円柱形で角(かど)や条線はなく、基部で分枝し、弓状に伸びて先端で根を張る。葉は互生し、葉柄は短く、しばしば紫褐色になり、長さ5㎜以下で、短い縮毛がある。葉身は厚い紙質~革質、卵形~卵状披針形、長さ3~12㎝×幅2~6㎝、基部は円形、まれに広楔形、先は鋭形~短い尖鋭形、縁の鋸歯は波打ち不規則、尖端から長く尖った歯状、先は上向きまたは円鋸歯状。葉身の下面は紫赤色で、両面にまばらに白色の毛が生えるかほぼ無毛で、葉脈上に密に毛がある。葉脈は明瞭、側脈は4~6対あり、上面で凹状、下面に凸状になる。穂状花序は腋生、長さ4~9㎝。花序柄は長さ1~7㎝、通常、中上部に数枚の小さな葉状の総苞片に囲まれる。花は小花柄があるかまたはほぼ無柄(長さ0~2.5㎜)で、花序軸の先に密集し、長さはほぼ2~3㎝。花序柄、花序軸、小花柄には短い巻き毛が密にある。萼片は5深裂し、内側の裂片1個は小さく、苞と萼片は線状披針形~狭三角形で、花冠より著しく短く、短い縁毛が密生する。花冠は紫色~赤紫色、長さ5.5~7㎜。花冠筒部は筒状で真っ直ぐ、内面は毛がある(crinite)。花冠は等分に4裂し、花冠裂片はすべて真っ直ぐで、放射相称、卵状三角形~披針形、花冠の長さの2/5~1/2。雄しべは2本で、わずかに突出し、花冠より約2~3㎜長く、中間より下は毛がある。。葯は橙黄色、長円形、長さ1~1.5㎜。葯室は輻合し、合流しない。子房は無毛、柱頭は小さく、わずかに膨れる。花柱は長さ5~7 mm。蒴果は卵状球形、長さ3~3.5㎜、2溝があり、4バルブがある。花柱、苞葉、萼は宿存する。種子は蒴果あたり多数、小さく、長円形、種皮は網状。花期は6~7月。果期は8~10月。
12 その他ハイブリッド
品種) 'Adoration' , 'Red Arrows' , 'White Jolan'
参考
1) Flora of ChinaVeronicastrum
Veronicastrum
Veronicastrum
Veronicastrum virginicum (L.) Farw.
原寛 :米園措葉室使リ(共四)
山崎敬 :東亜産ゴマノハグサ科雑記(2) - Veronicastrum sibiricum
山崎敬 : クガイソウとエゾクガイソウ
千葉県で発見されたオオバコ科クガイソウ属の新種イスミスズカケについて
大橋広好 : クガイソウ(オオバコ科)の変異
A new Taiwan species Veronicastrum loshanense(Scrophulariaceae)
北海道産植物の染色体数(14)