コウヤボウキ 高野箒

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Flora of Mikawa

キク科 Asteraceae コウヤボウキ属

中国名 长花帚菊
学 名 Pertya scandens (Thunb.) Schultz-Bip.
 synonym Pertya ovata Maximovicz
コウヤボウキの花
コウヤボウキの総苞
コウヤボウキの果実
コウヤボウキの冠毛
コウヤボウキの開いて残った総苞
コウヤボウキの1年目枝の葉
コウヤボウキ
コウヤボウキの2年目枝の葉
コウヤボウキの冬
コウヤボウキ冠毛を取った果実
花 期 9~10月
高 さ 60~100㎝
生活型 小低木
生育場所 林縁
分 布 在来種  本州(関東地方以西)、四国、九州、中国
撮 影 吉良町  11.11.2
三河の山には多く、普通に見かけられる。茎は細くてしなやかで、短い毛が生える。葉にも短い毛が生え、1年目の枝には長さ1.5~3㎝、幅0.7~1㎝の卵形の葉を互生し、頭花が1個だけ先端につく。葉には小さな突起状の鋸歯が5対以上つき、3脈が見える。2年目以後の茎には細長く鋸歯がある長さ4~6.5㎝、幅1.5~2.5㎝の葉を数個、束生し、花はつかない。総苞は長さ約1.5㎝、幅0.8㎝の筒状。総苞片は約7列。両性花のみで、花冠は先が5深裂し、裂片は線状惰円形。秋になると冠毛のついた果実(痩果)をつける。冠毛は不同長、長さ8~11㎜、白色ときに淡紅色を帯びる。痩果は長さ約7㎜、縦肋があり、白毛が密生する。冬に果実が飛んで開いた総苞が残る。
 類似のナガバノコウヤボウキの方が花がやや早く咲き始める。ナガバノコウヤボウキは三河では分布が少なく、まれにしかみられない。ナガバノコウヤボウキは1年目の枝には花がつかず、2年目の枝に花がつく。
 タイワンタマボウキ Pertya shimozawae は台湾に自生する。中国名は台湾帚菊 (tai wan zhou ju)。葉は互生し、葉身は卵形。頭花は枝先に単生し、総苞は長さ1.4~1.7㎝の鐘形、総苞片は約7列。痩果は長さ約5.5㎜の倒円錐形、冠毛は長さ11~12㎜。

コウヤボウキ属

  family Asteraceae - genus  Pertya

 低木、亜低木、多年草、まれに攀縁性の低木。葉は互生し、小枝の上に集まる。葉身は線形、錐形、披針形、長円形、又は卵形、縁は全縁~歯状~小歯状。頭花はほぼ無柄、又は花序柄があり、団散花序、散房花序、又は円錐花序の合成花序につき、又は単生し、中心小花頭花(discoid:筒状小花だけからなる頭花)、同性。総苞は鐘形又は円筒形。総苞片は多数、3列~多列、覆瓦状、不等長、草質又は革質。花托は平ら、ハチの巣状又はハチの巣状でなく、無毛又は周りに絨毛があり、パレアは無い(epaleate)。小花は少数、両性、まれに単性、筒形、花冠は5深裂し、規則的又はわずかに不規則、まれに明瞭に不規則に分裂する。裂片は線形、外巻き。葯は基部が長い尾状になり、先に付属体がある。花柱は先が浅裂し、花柱の枝はごく短く、外側に短毛又はパピラをもち、先は鈍形。痩果は円柱形、倒卵形、又は倒円錐形、10うねがある。冠毛は剛毛、多数。 2n = 24, 26, 28。
 世界に約25種あり、日本、中国、アフガニスタン、タイに分布する。

コウヤボウキ属の主な種

1 Pertya glabrescens Sch.Bip. ex Nakai ナガバノコウヤボウキ 長葉の高野箒

  synonym Pertya scandens sensu Sch.Bip., excl. basion.
 日本(本州、四国、九州)原産。
 落葉小低木。高さ60~90㎝。葉に毛がほとんど無く、葉脈が目立たない。1年目の枝は花がつかず、葉は互生し、卵形~広卵形、基部が広楔形~円形~切形、小さな突起状鋸歯縁。2年目の枝の葉は輪生状に3~6個が束生し、長さ3~4.5㎝、幅1~1.5㎝の長楕円形~楕円形、基部が楔形、鋸歯がやや大きく明瞭、無柄の頭花が葉の束生した中央につく。総苞は筒形、長さ11~12㎜、幅3~4㎜。総苞片は約4列。頭花は筒状花だけが約10個つく。筒状花は長さ約15㎜、花冠の先が5裂する。雄しべ5個。雌しべ1個。痩果は褐色、長さ6~7㎜、縦肋があり、短毛が散生する。冠毛は褐色~赤褐色を帯び、不同長、長さ8~10㎜程度。痩果が熟してくると総苞片が開き、やがて総苞片が開出し、冠毛が球形に開いて痩果が飛散する。花期は8~9月。

2 Pertya rigidula (Miq.) Makino クルマバハグマ 車葉白熊
 日本固有種(本州の近畿地方以北)
 多年草。高さ50~80㎝。和名の由来は葉が車状につくことから。葉は茎の中央部に7~8個が輪生状につく。葉は長さ約20㎝、先が尖り、基部は楔形、無柄。茎頂の円錐花序にまばらに頭花がつく。頭花は直径約1㎝、10個ほどの両性の筒状花をつける。花冠の先は5裂し、カールして反り返える。総苞片は硬く、鱗状に規則正しく並び、果実が熟すと開出する。痩果は長さ約8㎜、断面が円く。縦肋がありまばらに微毛がある。冠毛は褐色を帯び、長さ10㎜内外。花期は8~9月。

3 Pertya robusta (Maxim.) Makino カシワバハグマ 柏葉白熊
 日本固有種(本州、四国、九州)。山地の木陰に生える。
 落葉小低木。高さ30~70㎝。葉は茎の中部に集まってつき、長柄がある。葉身は長さ10~20㎝の卵状長楕円形、粗い歯牙状の鋸歯があり、カシワの葉に似ている。下部の葉には柄がある。長い穂状花序に頭花を3~18個つけ、数個が固まってつくことも多い。頭花は直径約1㎝、筒状花が約10個つき、頂部を除いてほぼ無柄。総苞は長さ17~27㎜、円柱形。総苞片は約8列、外片は扁円形~広卵形、鱗状に規則正しく並び、内片は狭長楕円形。花冠は白色、先が5裂し、先がカールする。痩果は長さ10~11㎜、冠毛は不同長、帯褐色になる。2n=24。花期は9~11月。

3-1 Pertya robusta (Maxim.) Makino var. kiushiana Kitam. ツクシカシワバハグマ 筑紫柏葉白熊

 短い花序柄(頭花の柄)があり、総苞の外面に細毛があることで、基本種と区別する。

4 Pertya scandens (Thunb.) Sch.Bip. コウヤボウキ 高野箒
  synonym Pertya ovata Maxim.
 日本(本州の関東地方以西、四国、九州)、中国原産。中国名は长花帚菊 chang hua zhou ju 。
 三河の山には多く、普通に見かけられる。
 落葉小低木。高さ60~100㎝。茎は細くてしなやかで、短い毛が生える。葉にも短い毛が生え、1年目の枝には長さ1.5~3㎝、幅0.7~1㎝の卵形の葉を互生し、頭花が1個だけ先端につく。葉には小さな突起状の鋸歯が5対以上つき、3脈が見える。2年目以後の茎には細長く鋸歯がある長さ4~6.5㎝、幅1.5~2.5㎝の葉を数個、束生し、花はつかない。総苞は長さ約1.5㎝、幅0.8㎝の筒状。総苞片は約7列。両性花のみで、花冠は先が5深裂し、裂片は線状惰円形。秋になると冠毛のついた果実(痩果)をつける。冠毛は不同長、長さ8~11㎜、白色ときに淡紅色を帯びる。痩果は長さ約7㎜、縦肋があり、白毛が密生する。冬に果実が飛んで開いた総苞が残る。花期は9~10月。

5 Pertya shimozawae Masam. タイワンタマボウキ 台湾玉箒

  synonym Pertya scandens (Thunb.) Sch.Bip. var. shimozawae (Masam.) Kitam.

 台湾原産。中国名は台湾帚菊 tai wan zhou ju 。標高300~1400mの開けた森林に生える。
 低木。葉は長いシュートに互生し、、葉柄は長さ1~3㎜、葉身は卵形、長さ2~5㎝×幅1.5~4.5㎝、紙質、3脈があり、両面にはまばらに絨毛があり、基部は円形、縁は歯先が点状の歯があり、先は鋭形または鈍形。葉は小枝の上に束生し、3~4枚つき、葉身は卵形、落葉性、両面にまばらに絨毛があり、先は鋭形。 頭花は単生、長いシュートの上に頂生し、約13個つく。総苞は鐘形、長さ1.4~1.7㎝。総苞片は7列、外総苞片は卵形、内総苞片は狭長円形、長さ約1.2㎝。小花は両性、花冠は筒状、長さ約1.3㎝、5深裂し、裂片は線形、外巻きする。痩果は倒円錐形、長さ約5.5㎜、密に白い絨毛があり、うねがある。冠毛は長さ1.1~1.2㎝。花期は11月。

6 Pertya trilobata (Makino) Makino オヤリハグマ 御槍白熊
 日本固有種(東北地方~関東北部)。山地の林内に生える。
 多年草、高さ45~85㎝。茎には短毛がある。茎の中部の葉が最も大きく、長さ10~13㎝×幅7~13㎝、先が3中裂し、縁は粗い歯牙状鋸歯縁。長い葉柄がある。上部の葉は小さく、分裂しない。茎頂の円錐花序に頭花が多数つく。頭花に筒状花が1個だけつく。総苞は細い筒形、長さ14~17㎜。総苞片は7列、外片ほど短い。花冠は白色、長さ1.7~1.8㎝、先が5裂し、裂片は線形で緩く螺旋状に巻く。花期は9~10月。

7 Pertya yakushimensis H.Koyama et Nagam. シマコウヤボウキ 島高野箒
 日本固有種(屋久島)
 ナガバノコヤボウキ類似種。ナガバノコヤボクキとの区別点は次のとおり。
 ①葉がほとんど無毛である。②総苞の基部に鱗片状小葉を有する。③痩果の上部に腺毛が著しく、冠毛の下部までに現れる。④痩果の毛がほとんどない。⑤短枝上の葉が5~9枚と多い。
 茎は長さ約120㎝、斜上し、十分に枝分かれし、無毛になり、枝は直立して散開する。葉は5~9枚が密生してつき、非常に短い葉柄をもち、楕円形で、長さ2~6㎝×幅1~2㎝、両縁に鋭い鋸歯があり、上面は帯緑色、下面は淡色で光沢があり、無毛。頭花は前年の葉の葉腋につき、無柄。総苞は鐘形、長さ14㎜。総苞片は約35個、覆瓦状、縦に5列に並ぶ。花冠は白色、長さ13~15㎜、深さが均等またはわずかに不均等に5裂し、筒部は長さ5~6㎜。花柱は先にパピラがあり、短く2分岐する。葯は先が微突頭、基部は矢じり形、葯隔は合着する耳があり、先は引き裂かれる。冠毛は帯褐色、多数の不等の剛毛があり、先にまばらに腺があり、基部が密に腺毛に覆われる。痩果は倒披針状長円形、長さ7~8mm、わずかに扁平、幅2㎜、線条が13本あり、先はわずかに狭くなり、先に密に腺があり、基部は無毛で狭くなる(参考5)。

8 ハイブリッッド
(1) Pertya x hybrida Makino カコマハグマ カコ間白熊
  synonym x Macropertya hybrida (Makino) Honda
  synonym Pertya macrophylla Nakai 
 本州(関東地方以西)に分布する。山地の林内に生える。カシワバハグマとコウヤボウキとの自然交雑種。和名はカ(シワバハグマ)とコ(ウヤボウキ)の間の意味。
 カシワバハグマに似るが、葉のつき方はカシワバハグマのように葉は茎の中部に集まってつかない。
(2) Pertya x koribana (Nakai) Makino et Nemoto センダイハグマ 仙台白熊
  synonym Pertya triloba Makino var. koribana (Nakai) Makino
 宮城県、山形県、福島県、茨城県に分布する。山地の林内や林縁にに生える。
 多年草、高さ40~80㎝。葉は卵状楕円形、長さ10~13㎝×幅7~12cm、3裂しない。頭花は円錐花序に穂状に多数つく。花は白色。花期は9~10月。  センダイハグマはオヤリハグマとカシワバハグマの自然交雑種とされてきたが、DNA解析の結果、雑種とする根拠は無く、単にオヤリハグマの葉が無裂のものであるとされている。
(3) Pertya x suzukii Kitam. イワキハグマ 磐城白熊
 関東地方北部~東北地方南部の限られた地域にのみ分布する。クルマバハグマとオヤリハグマとの自然交雑種。
 葉は倒卵形、長さ17~27㎝×幅9~15㎝、基部は急に狭まり有翼の葉柄となり、縁は不規則の牙。1頭花に3~4個の小花をつける。

(3-1) Pertya x suzukii Kitam. var. yamizoanum Mas.Suzuki ヤミゾハグマ 八溝白熊

 八溝山の標高800m附近のブナ林内や草原に生える。
 本変種は有翼の葉柄となり、小花が3~4(5)個であり、母種に似ているが、茎の中部の葉は3分裂し、大きさも長さ10~14㎝×幅5~8㎝と小さい。オヤリハグマとは葉柄が有翼であり、1頭花に3~4小花をつけることにより異り、イワキハグマとは葉が3分裂すること、小形なことにより異る。

参考

1) Flora of China
 Pertya
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=124636
2) GRIN
 Pertya
https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=18814
3)Flora of Nort America
 Tephroseris
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=113620
4) Kewscience
 Pertya
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:11255-1
5)Acta Phytotaxa. Geobot. 1988 Volume 39 Nos. 1-3 Pages 67-70
 屋久島産新種シマコウヤボウキ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bunruichiri/39/1-3/39_KJ00002594214/_pdf/-char/en
6)茨城大学教育学部紀要(16): 203-226(1967)
 関東地方北部の植物相(1):八溝山および高笹山
https://core.ac.uk/download/pdf/59196954.pdf