イヌコウジュ 犬香需

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Flora of Mikawa

シソ科 Lamiaceae イヌコウジュ属

中国名 石荠苎 shi qi zhu
学 名 Mosla scabra (Thunb.) C.Y.Wu et H.W.Li
Mosla punctulata (Gmel.) Nakai
Mosla lanceolata (Benth.) Maxim.
イヌコウジュの花
イヌコウジュ苞と萼
イヌコウジュ萼
イヌコウジュ萼
イヌコウジュ萼の果時
イヌコウジとヒメジソの萼
イヌコウジュの花序軸
イヌコウジュの若い茎
イヌコウジュの茎
イヌコウジュ
イヌコウジュの葉
イヌコウジュ葉裏の腺点
イヌコウジュ分果
花 期 9~10月
高 さ 20~60㎝
生活型 1年草
生育場所 林縁、山野の道端
分 布 在来種  日本全土、朝鮮、中国、台湾、ベトナム
撮 影 新城市  09.10.16
特有の嫌な臭いが強いものとややハッカのような強い臭いのものがある。茎は4綾形で、赤味を帯びることが多く、直立し、よく枝分かれする。茎の綾には下向きの白毛が密生し、面には細毛があり、腺点も散生する。葉は対生し、葉柄は長さ.3~16(20)㎜。葉身は長さ2~4㎝、幅1~2.5㎝の狭卵形~卵形、縁に6~13対のやや鈍い鋸歯がある。葉裏に黄色の腺点が密生し、葉の表にもはっきりした腺点がある。総状花序は長さ2.5~15㎝ 、花が2個の仮輪が多数つく。苞は披針形~狭披針形、長さ 2.7~3.5㎜、小花柄より短いかやや長い。花冠は長さ3.~4㎜の紅紫色の唇形花。萼は長さ2~3㎜、果時に長さ約4㎜、上下に分かれ、下側は2裂、上側は3裂し、上萼歯の先もやや鋭くとがる。萼や花序軸などにも腺点が多い。果実は4分果。分果は灰褐色、長さ約1㎜、隆起する網目がある。
 シロイヌコウジュ(シロバナイヌコウジュ) form. leucantha は白花品種。
 ヒメジソ Mosla dianthera とよく似ていて混同しやすい。ヒメジソは葉の縁の鋸歯が4~8対と少なく、やや明瞭で、葉の長さがやや短く、卵形~広卵形である。また、上萼歯の先が鈍いことが多い。しかし、葉の鋸歯などの葉の形状や上萼歯の形状だけでは判別が難しいことも多い。これらのほかに注目する点は次のとおり。①色 イヌコウジュは全体に赤味を帯び、花も赤味が強く、紅紫色である。②臭い イヌコウジュは臭いが強く、葉裏や萼に黄色の腺点が密につき、葉の表にも黄色の腺点がある。ヒメジソは腺点が白く、葉裏につく密度も少なく、葉の表には腺点がない。③毛 イヌコウジュは茎の綾の毛だけでなく、面にも細毛がある。

イヌコウジュ属

  family Lamiaceae - genus Mosla
 
1年草、芳香がある。葉は葉柄がある。葉身は歯状縁、下面に目立つ押し付けられた腺がある。輪散花序は花が2個つき、頂生の総状花序になる。苞は小さく又は下部の苞は葉状になる。花は花柄をもつ。咢は鐘形、10脈があり、のど部に毛があり、拡大部はほぼ等長の5歯又は2唇形。上唇は3歯があり、歯は鋭形~鈍形。下唇は2歯があり、歯は披針形。果時の咢は広がり、片側の基部が膨れる。花冠は白色又はローズ色~紫赤色、筒部は無毛又は有毛、内側に冠状になる。拡大部は2唇形に近い。上唇は凹形。下唇は3裂し、縁は円鋸歯。側裂片は中裂片より小さく、凹形。雄しべは4本、後ろ側の2本は稔性、前側の2本は小さく、葯室が不明瞭。葯室は2個、開出する。花柱の先はほぼ等長~等長に2裂する。小堅果(分果)は類球形~球形、まばらに網目があるか又は小さく凹んだ穴がある。基部の形状は点状。
 世界に約22種があり、日本、朝鮮、中国、インド、ラオス、カンボジア、ベトナム、インドネシア、マレーシア、フィリピンに分布する。

イヌコウジュ属の主な種

1 Mosla chinensis Maxim.  ホソバヤマジソ
  synonym Mosla japonica Maxim. var. angustifolia Makino
  synonym Mosla angustifolia (Makino) Makino ex Nakai 
 中国、台湾、ベトナム原産。中国名は石香薷 shi xiang ru

2 Mosla dianthera (Buch.-Ham. ex Roxb.) Maxim.  ヒメジソ 姫紫蘇
  synonym Mosla formosana Maxim.
  synonym Mosla grosseserrata Maxim. 
 日本、中国、台湾、ロシア、インド、ブータン、ネパール、パキスタン、ミャンマー、ベトナム、マレーシア原産。中国名は小鱼荠苎 xiao yu xian cao 。
 1年草。高さ20~60(~100)㎝。茎は4綾形で、直立し、よく枝分かれする。茎の綾には下向きの白毛が生えるか、又は無毛。葉は対生し、葉柄は長さ3~18㎜。葉身は長さ1.2~3.5㎝、幅0.5~1.8㎝の狭状被針形~卵形~広卵形、縁に4~6(8)対のやや粗い(離れた鋭い)鋸歯がある。葉裏は無毛、腺点(impressed glandular)が密(まばら)にあり、葉の表には腺点は無く、先は尖鋭形~鋭形。。総状花序は長さ3~7(15)㎝、花が2個の仮輪が多数つく。苞は披針形~線状披針形、ほぼ、無毛、基部は広楔形、先は尖鋭形、長さ1㎜以下、小花柄より短いか同長、果時に約5㎜以下になる。花序軸はほぼ無毛。小花柄は長さ約1㎜、果時に4㎜以下になる。花冠は長さ4~5㎜の淡紅色~白色の唇形花。萼は2唇形、長さ約2㎜×幅2~2.6㎜、果時に長さ約3.5×幅4㎜と大きくなり、上下に分かれ、下側は2裂、上側は3裂し、上萼歯の先の尖りがやや鈍い。上萼歯の3個のうち中間の歯が低いものや無いものも見られる。果実は4分果。分果は灰褐色、直径1~1.6㎜の類球形、表面の網目模様はあまり隆起しない。花期と果期は5~11月(主に花期は9~10月。

3 Mosla hirta (H.Hara) H.Hara  シラゲヒメジソ  白毛姫紫蘇
  synonym Mosla dianthera (Buch.-Ham. ex Roxb.) Maxim. var. nana (H.Hara) Honda
 最近ではヒメジソに含め、独立種として扱わない。
 本州、四国、九州、朝鮮、台湾に分布。中国名は毛台灣乾汗草 mao tai wan qian han cao。別名はヒカゲヒメジソ。
 ヒメジソに似て、毛が多く、葉の表面に白色の長毛がある。
  1年草。高さ20~50㎝。茎は4綾形で、直立し、よく枝分かれする。茎にも腺点があり、綾には下向きの短毛とやや開出する長毛がある。葉は対生し、長さ3~5㎝、幅1.5~3㎝、両面に長い軟毛があり、葉裏の腺点が目立ち、臭いが強い。葉縁に6~11対の鋸歯がある。花序は総状で、花が2個の仮輪が多数つく。花冠は長さ3~4㎜の淡紅紫色の唇形花。萼は長毛があり、腺点が密生し、上萼歯の先の尖りがやや鋭い。果実は4分果。花期は9~10月。

5 Mosla japonica (Benth. ex Oliv.) Maxim.  ヤマジソ
 日本、朝鮮原産。日当たりのよい山地や丘陵地に生える。
 1年草。高さ5~30㎝。茎は分枝し、開出毛が多い。葉は対生し、葉柄は長さ3~10㎜。葉身は卵形~狭卵形、長さ1~3㎝×幅7~17㎜、鋸歯縁、鋸歯の数は少ない。花序は頂生、輪散花序はやや密。苞は卵形~広卵形、長さ3~6㎜。萼は花時に長さ約3㎜、果時に長さ5~7㎜、毛があり、2唇形ではなく、5裂し、咢歯は等長。花冠は淡紅色、2唇形、長さ約3㎜。雄しべは4本、後ろ側2本が稔性。分果は球形、わずかに扁平、直径約1.3㎜、不揃いの浅い網目がある。花期は9~10月。

5-1 Mosla japonica (Benth. ex Oliv.) Maxim. var. hadae (Nakai) Kitam オオヤマジソ 大山紫蘇
  synonym  Mosla hadae Nakai 
本州(兵庫県)、四国(徳島県)、九州(北部)に分布する。ヤマジソに比べて葉が丸い。
 1年草。高さ10~25㎝。茎は直立し、分枝し、四稜形、白色の毛が開出する。 葉は対生し、卵円形~長卵形、長さ1~3㎝×幅0.7~2㎝、両面に白色の毛が開出し、白色の縁毛がある。 総状花序は枝先に頂生、長さ2~5㎝、花が密につく。花冠は唇形、淡紅紫色、長さ約3㎜。苞卵円形、長さ6~14㎜。花冠や咢には白色の毛が開出する。 花期は9~10月。
5-2 Mosla japonica (Benth. ex Oliv.) Maxim. var. robusta (Nakai) Ohwi  タンナヤマジソ
5-3 Mosla japonica (Benth. ex Oliv.) Maxim. var. thymolifera (Makino) Kitam.  シロバナヤマジソ
  synonym Mosla japonica (Benth. ex Oliv.) Maxim. f. thymolifera (Makino) T.Yamaz. et Murata
 白花の変種。

6 Mosla scabra (Thunb.) C.Y.Wu et H.W.Li  イヌコウジュ 犬香需
  synonym Mosla punctulata (J.F.Gmel.) Nakai
  synonym Mosla lanceolata (Benth.) Maxim.
 日本全土、朝鮮、中国、台湾、ベトナム原産。中国名は石荠苎 shi qi zhu
 1年草。高さ20~60㎝。特有の嫌な臭いが強いものとややハッカのような強い臭いのものがある。茎は4綾形で、赤味を帯びることが多く、直立し、よく枝分かれする。茎の綾には下向きの白毛が密生し、面には細毛があり、腺点も散生する。葉は対生し、葉柄は長さ.3~16(20)㎜。葉身は長さ2~4㎝、幅1~2.5㎝の狭卵形~卵形、縁に6~13対のやや鈍い鋸歯がある。葉裏に黄色の腺点が密生し、葉の表にもはっきりした腺点がある。総状花序は長さ2.5~15㎝ 、花が2個の仮輪が多数つく。苞は披針形~狭披針形、長さ 2.7~3.5㎜、小花柄より短いかやや長い。花冠は長さ3.~4㎜の紅紫色の唇形花。萼は長さ2~3㎜、果時に長さ約4㎜、上下に分かれ、下側は2裂、上側は3裂し、上萼歯の先もやや鋭くとがる。萼や花序軸などにも腺点が多い。果実は4分果。分果は灰褐色、長さ約1㎜、隆起する網目がある。花期は9~10月。
6-1 Mosla scabra (Thunb.) C.Y.Wu et H.W.Li f. leucantha (Honda)   シロイヌコウジュ
 白花品種。

参考

1) Flora of China
 Mosla
 http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=121236
2) GRIN
 Mosla
 http://tn-grin.nat.tn/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=7827
3)Plants of the World Online | Kewscience
 Mosla
 http://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:21056-1
4) Flora of Pakistan
 Mosla
 http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=5&taxon_id=121236