ガマ 蒲
Flora of Mikawa
ガマ科 Typhaceae ガマ属
中国名 |
宽叶香蒲 kuan ye xiang pu |
英 名 |
broadleaf cattail, bulrush |
学 名 | Typha latifolia L. |
花 期 | 6~8月 |
高 さ | 1~2.5m |
生活型 | 多年草 |
生育場所 | 池、沼、湿地、川 |
分 布 | 在来種 北海道、本州、四国、九州、中国、ロシア、モンゴル、パキスタン、西南アジア、アフリカ、ヨーロッパ、アメリカ |
撮 影 | 蒲郡市 05.7.20 |
地下茎が横に広がって増える。茎は高さ1~2.5(3)m。花をつけるシュートは幅1~2㎝、茎は花穂近くで幅3~7㎜、頑強。葉は普通、新鮮なときに粉白を帯び、葉鞘の側面は紙質又は膜質、縁は狭く明瞭、頂部は次第に細くなり、葉身へと続き、明瞭な肩があり、まれに紙質の葉耳がある。葉鞘の粘液腺は普通、無色~不明瞭~欠く。葉は長さ45~95㎝、シュートの最も広い葉は新鮮なとき、幅10~23(29)㎜、乾くと5~20㎜、上部の葉身も幅がほぼ等しい。葉裏は凸面形、横断面は半円形。茎頂に花穂をつける。雌雄同株。上部の雄花穂は下部の雌花穂と離れず、接してつき、クローンでは4(~8)㎝の長さの花序軸で離れてつくこともある。雄花穂は雌花穂とほぼ同長、長さ3.5~12㎝、花時の幅1~2㎝。基部又は中間部に脱落性の苞を1~3個つける。雄鱗片は無色~わら色、糸状、単一、長さ約4㎜、幅0.0.5㎜。雌花穂は花時に淡緑色、乾くと帯褐色、後に赤褐色又は帯黒色になり、果時にしばしば毛の先の白色のパッチでまだらになり、長さ5~25㎝、花時の幅5~8㎜、果時の幅24~36㎜、多数の雌花と不稔の雌花(カルポディア carpodium)が混在し、雌小苞は無い。雌花はcompound pedicelの上につき、compound pedicelは果時に剛毛状、同じ花穂につくものも変化し、長さ1.5~3.5㎜。雄花は長さ5~12㎜、雄しべが普通2個、まれに1又は3個。葯は長さ1~3㎜。葯室は黄色、先は暗褐色。花粉は4粒が合着した4集粒(tetrad)。雌花は花時に長さ2~3㎜、果時に長さ10~15㎜。柄の毛(pistil hair)は無色、集まると白色、大きくならない。雌小苞は無い。柱頭は残存性、花穂の表面の硬い層を形成し、花時に淡緑色、乾くと褐色になり、後に赤褐色又は先が普通、帯黒色になり、へら形~卵形~卵状披針形、長さ0.6~1㎜×幅0.2~0.25㎜。終期に果実が熟すと柱頭が取れ、果穂は淡褐色になり、カルポディアが柄の毛の間から見えるようになり、カルポディアはわら色、柱頭が無く、先が丸い。果実は小さな堅果状の披針形の袋果(follicle)、細長い柄がある。柄の基部に白色の長毛があり、風で飛散する。果皮は透明で、水中で縦に割れて1個の種子を放出する。種子は長さ約1㎜。2n=30。
コガマはガマに似て、雄花穂と雌花穂が接している。ガマより小さく、葉は幅.4~9㎜。雌花穂は果期に長さ4.5~15㎝、幅10~20㎜、上端がやや幅広い円柱形、濃褐色。花粉が単粒。
ヒメガマは雄花穂と雌花穂が離れてつき、雌花穂は果期に幅13~25㎜、円柱形、葉鞘の内面に褐色の粘液腺があり粘る。
多年草、沼地や水中に生え、匍匐する根茎をもつ。葉は互生、直立し、2列、線形、普通、スポンジ状、全縁、基部に鞘がある。花は単性、小さく、多数、円筒形の穂状花序(花穂)に密に密集し、下部が雌性、上部が雄性。苞は葉状。花被は無い。雄花は1~3個の雄しべからなり、普通、花糸の基部が合着し、毛の囲まれる。葯は2半葯(thecous)、底着、縦に裂開する。花糸は短い。花粉粒は単集粒(monads)又は4集粒(tetrads)。雌花は子房が1室、長い細管状の柄につき、多数の細かい毛があり又は基部に小苞がある。花柱は細管状。柱頭は広がり又はへら形。胚珠は1個。不稔の子房は花柱をもたない。果実は小さく、柄と一緒に落ちる。
世界に約16種があり、熱帯と温帯地域に分布する。
日本全土、中国、台湾、モンゴル、ロシア、アフガニスタン、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、パキスタン、インド、ネパール、ミャンマー、タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、 南西アジア、ヨーロッパ、オーストラリア、北アメリカ原産。中国名は水烛 shui zhu 。英名は cattail , lesser reed-mace , lesser-bulrush , nailrod , narrow-leaf cattail , small reed-mace。湖、池、川などの浅い水域に生える。
ホソバガマはヒメガマに似るが、粘液腺がない。ヒメガマは葉鞘の内面に短い線状の橙褐色の粘液腺(mucilagegland)があり、粘る。
多年草、茎は高さ1.5~3m、丈夫。葉は長さ52~120㎝×幅4~9mm、下面は凸形、横断面は半円形。穂状花序の上部の雄性部分は長さ約8cm、1~3枚の落葉苞がある。 穂状花序の下部の雌生部分は長さ(5~)15~30㎝、長さ2.5~7㎝の軸で雄性部分から離れている。雄花:雄しべは3個、まれに2または4個ある。葯は長さ約2mm。雌花は小苞を持ち、小苞は糸状、子房は紡錘形、柄は長さ約5㎜、細い。花柱は長さ1~1.5㎜。柱頭は線形~披針形、長さ1.3~1.8㎜。柄の毛は花柱より短い。果実は狭い楕円形。花期および果期は6~9月。2n=30。
品種) 'Zebratails' , 'Variegata'
2 Typha domingensis Pers. ヒメガマ 姫蒲
synonym Typha angustifolia auct. non L.
synonym Typha angustata Bory et Chaub.
日本、韓国、中国、台湾、モンゴル、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、パキスタン、インド、ネパール、スリランカ、ミャンマー、ベトナム、 インドネシア、マレーシア、フィリピン、南西アジア、オーストラリア、ヨーロッパ、アフリカ、南北アメリカ原産。中国名は长苞香蒲 chang bao xiang pu。英名はsouthern cattail, cattail, lesser reed-mace。池、沼、湿地、川に生える。
多年草。高さ0.7~2.5(4)m。雄花穂と雌花穂が離れ、間の緑色の軸が見えるのが特徴。粉白を帯びない。花をつけるシュートは幅1~2㎝、茎は花穂近くで幅3~4㎜。葉鞘の側面は膜質、縁は広く明瞭、膜質の葉耳があり、頂部は次第に細くなり、葉身へと続く。葉身の基部の1~10㎝と全縁の葉鞘の内面に短い線状の橙褐色の粘液腺(mucilagegland)があり、粘る。葉は長さ40~150㎝×幅3~8㎜、シュートの最も広い葉身の幅は新鮮なとき6~18㎜、乾くと5~15㎜。葉身の先は花序とほぼ同じ高さになる。雄花穂は雌花穂と離れ、軸が(0~)1~8㎝見える。雄花穂は雌花穂の長さの約1.4倍(長さ7~30㎝)、花時の幅約1㎝、1~2個の苞がつき、苞は長さ35㎝以下。雄鱗片はわら色~ほとんど明橙褐色、同じ花穂でも変化し、線形~楔形、しばしば先が不規則に切れ込み、長さ3~4㎜、幅0.3㎜。花時の雌花穂は新鮮なとき明かるいシナモンブラウン色、帯白色の斑(乾くと帯褐色)があり、後に橙色~褐色になるが。果時には通常、柱頭と同じように淡色になり、しばしば、小苞が落ちてなくなる。雌花穂は長さ5~23(35)㎝、花時に幅5~6㎜、果時に幅15~25㎜、基部に1個の苞があり、多数の雌花が小苞と不稔の雌花(カルポディウム carpodium)の間に散在する。雌花はcompound pedicelの上につき、compound pedicelは止めくぎ似ており、果時に長さ約0.6~0.9㎜。雌花の基部に雌小苞があり、開花前に花穂の表面を形成し、後にわずかに柱頭が突き出て、わずかに毛(pistilhair)が突き出る。雌小苞の色はわら色~明るいオレンジブラウン色、柱頭と同色かより淡色、不規則な狭へら形~広へら形~披針形、長さ0.8㎜×幅0.1~0.3㎜、大部分が柱頭より幅が広く、先は同じ花序や異なる株で変化し、鋭形~尖鋭形。雄花は長さ約5㎜、雄しべ3個、まれに2個。葯は長さ(1.4)2~2.5㎜、葯室は黄色、先は明るいオレンジブラウン、花粉粒は単粒。雌花は花時に長さ約2㎜、果時に長さ8~9㎜(長さ3~6㎜の細い柄を含む。)、長毛がある。長毛(pistil-hair)は集まるとわら色~オレンジブラウン色、頂端下に1個の明るいオレンジブラウン色のたいてい大きくなった細胞をもつ。花柱は長さ05~1.5㎜。柱頭はしばしば果時に脱落し、花時には直立し、長くなり、曲がって表面のマットを形成する。花時の新鮮なときは白色、後に明るいオレンジブラウン色、狭線形~披針形、長さ0.8~1.5㎜×幅約0.1㎜、普通、花柱より太い。カルポディウム(carpodium)は毛からわずかに突き出し、普通、果時の花穂の表面で明瞭、わら色、オレンジ色の斑点があり、先は広く丸い。果実は細長い柄のある小さな堅果状の紡錘形の袋果(follicle)、柄の基部に長毛がある。果皮は透明で、水中で縦に割れて1個の種子を放出する。種子は長さ約1㎜。2n=30。 ホソバガマ Typha angustifolia L.はヒメガマに似て粘液腺がない。学名は従来ヒメガマに使われていた。ホソバヒメガマはユーラシア大陸原産であるが、北アメリカにも分布が広がっており、カリフォルニアではヒメガマ×ホソバヒメガマ×ガマの3種交雑体が普通であるという。花期は6~8月。
3 Typha latifolia L. ガマ 蒲
北海道、本州、四国、九州、中国、ロシア、モンゴル、パキスタン、西南アジア、アフリカ、ヨーロッパ、アメリカ原産。中国名は宽叶香蒲 kuan ye xiang pu。英名はbroadleaf cattail, bulrush。池、沼、湿地、川に生える。
多年草。高さ1~2.5m。地下茎が横に広がって増える。茎は高さ1~2.5(3)m。花をつけるシュートは幅1~2㎝、茎は花穂近くで幅3~7㎜、頑強。葉は普通、新鮮なときに粉白を帯び、葉鞘の側面は紙質又は膜質、縁は狭く明瞭、頂部は次第に細くなり、葉身へと続き、明瞭な肩があり、まれに紙質の葉耳がある。葉鞘の粘液腺は普通、無色~不明瞭~欠く。葉は長さ45~95㎝、シュートの最も広い葉は新鮮なとき、幅10~23(29)㎜、乾くと5~20㎜、上部の葉身も幅がほぼ等しい。葉裏は凸面形、横断面は半円形。茎頂に花穂をつける。雌雄同株。上部の雄花穂は下部の雌花穂と離れず、接してつき、クローンでは 4(~8)㎝の長さの花序軸で離れてつくこともある。雄花穂は雌花穂とほぼ同長、長さ3.5~12㎝、花時の幅1~2㎝。基部又は中間部に脱落性の苞を1~3個つける。雄鱗片は無色~わら色、糸状、単一、長さ約4㎜、幅0.0.5㎜。雌花穂は花時に淡緑色、乾くと帯褐色、後に赤褐色又は帯黒色になり、果時にしばしば毛の先の白色のパッチでまだらになり、長さ5~25㎝、花時の幅5~8㎜、果時の幅24~36㎜、多数の雌花と不稔の雌花(カルポディア carpodium)が混在し、雌小苞は無い。雌花はcompound pedicelの上につき、compound pedicelは果時に剛毛状、同じ花穂につくものも変化し、長さ1.5~3.5㎜。雄花は長さ5~12㎜、雄しべが普通2個、まれに1又は3個。葯は長さ1~3㎜。葯室は黄色、先は暗褐色。花粉は4粒が合着した4集粒(tetrad)。雌花は花時に長さ2~3㎜、果時に長さ10~15㎜。柄の毛(pistil hair)は無色、集まると白色、大きくならない。雌小苞は無い。柱頭は残存性、花穂の表面の硬い層を形成し、花時に淡緑色、乾くと褐色になり、後に赤褐色又は先が普通、帯黒色になり、へら形~卵形~卵状披針形、長さ0.6~1㎜×幅0.2~0.25㎜。終期に果実が熟すと柱頭が取れ、果穂は淡褐色になり、カルポディアが柄の毛の間から見えるようになり、カルポディアはわら色、柱頭が無く、先が丸い。果実は小さな堅果状の披針形の袋果(follicle)、細長い柄がある。柄の基部に白色の長毛があり、風で飛散する。果皮は透明で、水中で縦に割れて1個の種子を放出する。種子は長さ約1㎜。2n=30。花期は6~8月。
品種) 'Variegata' (v)
4 Typha laxmannii Lepech. モウコガマ 蒙古蒲
日本(北海道、秋田県、千葉県)、中国(甘粛省、河北省、黒竜江省、河南省、江蘇省、吉林省、遼寧省、内モンゴル、寧夏、青海省、陝西省、山東省、山西省、四川省、新疆)、モンゴル、ロシア、アフガニスタン、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、パキスタン、南西アジア、ヨーロッパ原産。中国名は无苞香蒲 wu bao xiang pu。湖、池、水路、沼地、浅い川に生える。秋田県以外は外来ともいわれる。
多年草、茎は高さ0.8~1.3m、細い。葉は長さ50~90cm×幅2~4 mm、下面は凸形、横断面は半円形。穂状花序の雄性部分は長さ6~14cm、軸には帯白色または黄褐色の毛があり、基部と中央部分に1~2枚の落葉性の苞がある。穂状花序の雌性部分は雄部分から明瞭に分かれ、長さ4~6cm、1個の落葉苞を持つ。 雄花: 雄しべは2~3個。葯は長さ約1.5㎜。雌花には苞が無い。子房は披針形、柄は2.5~3 mm、細い。花柱は長さ0.5~1㎜。柱頭はへら形、長さ0.6~0.9 mm、柄に花柱の毛と同じように毛がある。果実は楕円形。花期および果期は6~9月。2n=30。
5 Typha minima Hoppe チャボガマ 矮鶏蒲
synonym Typha orientalis C.Presl
synonym Typha japonica Miq.
中国(甘粛省、河北省、黒竜江省、河南省、湖北省、吉林省、遼寧省、内モンゴル、陝西省、山東省、山西省、四川省、新疆ウイグル自治区)、モンゴル、ロシア、アフガニスタン、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、パキスタン、南西アジア、ヨーロッパ原産。中国名は小香蒲 xiao xiang pu。池や川などの浅い水域に生える。
多年草。茎は高さ16~65㎝、細い。葉は通常、根生し、鞘状になり、しばしば葉身がないか、またはときにあり、長さ15~40㎝×幅1~2mm、花茎より短い。穂状花序の雄部分は長さ3~8㎝、軸に毛がなく、基部に1個の落葉苞がある。穂状花序の雌部分は雄部分から明瞭に分かれ、長さ1.6~4.5㎝、基部に苞がある。 雄花: 雄しべは1個まれに2~3個ある。葯は長さ約1.5 mm。雌花は小苞を持つ。子房は紡錘形、柄は長さ約4 mm、細い。花柱は長さ約0.5 mm。柱頭は線形、長さ約0.5 mm、柄の毛は先が膨らみ、花柱より短い。果実は楕円形。花期および果期は5~8月。
6 Typha orientalis C. Presl コガマ 小蒲
日本(本州、四国、九州)、韓国、中国、台湾、モンゴル、ロシア、ミャンマー、フィリピン、オーストラリア原産。中国名は东方香蒲 dong fang xiang pu 。英名は broadleaf cumbungi, lesser reed-mace 。池、沼、湿地、川に生える。
ガマに似て、ガマより小さく、雄花穂と雌花穂が接している。
多年草。茎は高さ1.3~2m、丈夫。葉は長さ40~70㎝、幅4~9㎜、葉裏は凸面状、横断面は半円形。雄花穂は長さ2.7~9㎝、基部又は中間部分に1~3個の脱落性の苞がある。葉鞘に粘液腺はない。雌花穂は雄花穂と離れず接し、果時に長さ4.5~15㎝×幅10~20㎜、上端がやや幅広い円柱形、濃褐色、基部に1個の脱落性の苞がある。雄花は雄しべ3個、まれに2又は4個、葯は長さ約3㎜。花粉は黄色、単粒、直径15~20μm。雌花は小苞がなく、子房は紡錘形~披針形、1室、子房柄は長さ約2.5㎜、細い。花柱は長さ1.2~2㎜。柱頭はへら形、長さ0.5~0.8㎜。子房柄の毛(絹毛)は花柱とほぼ同長。果実は小さな堅果状の楕円形の袋果(follicle)、果皮は透明で、水中で縦に割れて種子を放出する。種子は長さ約1㎜。2n=60(X=15)。花期は6~8月。
7 ハイブリッド
(1) Typha x suwensis T.Shimizu アイノコガマ
ガマ×コガマ
(2) Typha angustifolia x T. latifolia (T. glauca)
(3) Typha domingensis x T. latifolia
(4) Typha angustifolia x T. domingensis
Typha
Typha
Typha
Typha
木村雄四郎,長町田鶴子 : 日本産蒲黄に就て 邦産薬用植物生産概況(其六)
6) 植物研究雑誌 49(2): 54-62(1974)
佐橋紀男,幾瀬マサ : ガマの花粉4集粒における数種の移行形列について
コガマはガマに似て、雄花穂と雌花穂が接している。ガマより小さく、葉は幅.4~9㎜。雌花穂は果期に長さ4.5~15㎝、幅10~20㎜、上端がやや幅広い円柱形、濃褐色。花粉が単粒。
ヒメガマは雄花穂と雌花穂が離れてつき、雌花穂は果期に幅13~25㎜、円柱形、葉鞘の内面に褐色の粘液腺があり粘る。
ガマ属
family Typhaceae - genus Typha多年草、沼地や水中に生え、匍匐する根茎をもつ。葉は互生、直立し、2列、線形、普通、スポンジ状、全縁、基部に鞘がある。花は単性、小さく、多数、円筒形の穂状花序(花穂)に密に密集し、下部が雌性、上部が雄性。苞は葉状。花被は無い。雄花は1~3個の雄しべからなり、普通、花糸の基部が合着し、毛の囲まれる。葯は2半葯(thecous)、底着、縦に裂開する。花糸は短い。花粉粒は単集粒(monads)又は4集粒(tetrads)。雌花は子房が1室、長い細管状の柄につき、多数の細かい毛があり又は基部に小苞がある。花柱は細管状。柱頭は広がり又はへら形。胚珠は1個。不稔の子房は花柱をもたない。果実は小さく、柄と一緒に落ちる。
世界に約16種があり、熱帯と温帯地域に分布する。
ガマ属の主な種と園芸品種
1 Typha angustifolia L. ホソバガマ 細葉蒲日本全土、中国、台湾、モンゴル、ロシア、アフガニスタン、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、パキスタン、インド、ネパール、ミャンマー、タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、 南西アジア、ヨーロッパ、オーストラリア、北アメリカ原産。中国名は水烛 shui zhu 。英名は cattail , lesser reed-mace , lesser-bulrush , nailrod , narrow-leaf cattail , small reed-mace。湖、池、川などの浅い水域に生える。
ホソバガマはヒメガマに似るが、粘液腺がない。ヒメガマは葉鞘の内面に短い線状の橙褐色の粘液腺(mucilagegland)があり、粘る。
多年草、茎は高さ1.5~3m、丈夫。葉は長さ52~120㎝×幅4~9mm、下面は凸形、横断面は半円形。穂状花序の上部の雄性部分は長さ約8cm、1~3枚の落葉苞がある。 穂状花序の下部の雌生部分は長さ(5~)15~30㎝、長さ2.5~7㎝の軸で雄性部分から離れている。雄花:雄しべは3個、まれに2または4個ある。葯は長さ約2mm。雌花は小苞を持ち、小苞は糸状、子房は紡錘形、柄は長さ約5㎜、細い。花柱は長さ1~1.5㎜。柱頭は線形~披針形、長さ1.3~1.8㎜。柄の毛は花柱より短い。果実は狭い楕円形。花期および果期は6~9月。2n=30。
品種) 'Zebratails' , 'Variegata'
2 Typha domingensis Pers. ヒメガマ 姫蒲
synonym Typha angustifolia auct. non L.
synonym Typha angustata Bory et Chaub.
synonym Typha angustifolia L. var. angustata (Bory et Chaub.) Jord.
synonym Typha australis Schumach. et Thonn.日本、韓国、中国、台湾、モンゴル、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、パキスタン、インド、ネパール、スリランカ、ミャンマー、ベトナム、 インドネシア、マレーシア、フィリピン、南西アジア、オーストラリア、ヨーロッパ、アフリカ、南北アメリカ原産。中国名は长苞香蒲 chang bao xiang pu。英名はsouthern cattail, cattail, lesser reed-mace。池、沼、湿地、川に生える。
多年草。高さ0.7~2.5(4)m。雄花穂と雌花穂が離れ、間の緑色の軸が見えるのが特徴。粉白を帯びない。花をつけるシュートは幅1~2㎝、茎は花穂近くで幅3~4㎜。葉鞘の側面は膜質、縁は広く明瞭、膜質の葉耳があり、頂部は次第に細くなり、葉身へと続く。葉身の基部の1~10㎝と全縁の葉鞘の内面に短い線状の橙褐色の粘液腺(mucilagegland)があり、粘る。葉は長さ40~150㎝×幅3~8㎜、シュートの最も広い葉身の幅は新鮮なとき6~18㎜、乾くと5~15㎜。葉身の先は花序とほぼ同じ高さになる。雄花穂は雌花穂と離れ、軸が(0~)1~8㎝見える。雄花穂は雌花穂の長さの約1.4倍(長さ7~30㎝)、花時の幅約1㎝、1~2個の苞がつき、苞は長さ35㎝以下。雄鱗片はわら色~ほとんど明橙褐色、同じ花穂でも変化し、線形~楔形、しばしば先が不規則に切れ込み、長さ3~4㎜、幅0.3㎜。花時の雌花穂は新鮮なとき明かるいシナモンブラウン色、帯白色の斑(乾くと帯褐色)があり、後に橙色~褐色になるが。果時には通常、柱頭と同じように淡色になり、しばしば、小苞が落ちてなくなる。雌花穂は長さ5~23(35)㎝、花時に幅5~6㎜、果時に幅15~25㎜、基部に1個の苞があり、多数の雌花が小苞と不稔の雌花(カルポディウム carpodium)の間に散在する。雌花はcompound pedicelの上につき、compound pedicelは止めくぎ似ており、果時に長さ約0.6~0.9㎜。雌花の基部に雌小苞があり、開花前に花穂の表面を形成し、後にわずかに柱頭が突き出て、わずかに毛(pistilhair)が突き出る。雌小苞の色はわら色~明るいオレンジブラウン色、柱頭と同色かより淡色、不規則な狭へら形~広へら形~披針形、長さ0.8㎜×幅0.1~0.3㎜、大部分が柱頭より幅が広く、先は同じ花序や異なる株で変化し、鋭形~尖鋭形。雄花は長さ約5㎜、雄しべ3個、まれに2個。葯は長さ(1.4)2~2.5㎜、葯室は黄色、先は明るいオレンジブラウン、花粉粒は単粒。雌花は花時に長さ約2㎜、果時に長さ8~9㎜(長さ3~6㎜の細い柄を含む。)、長毛がある。長毛(pistil-hair)は集まるとわら色~オレンジブラウン色、頂端下に1個の明るいオレンジブラウン色のたいてい大きくなった細胞をもつ。花柱は長さ05~1.5㎜。柱頭はしばしば果時に脱落し、花時には直立し、長くなり、曲がって表面のマットを形成する。花時の新鮮なときは白色、後に明るいオレンジブラウン色、狭線形~披針形、長さ0.8~1.5㎜×幅約0.1㎜、普通、花柱より太い。カルポディウム(carpodium)は毛からわずかに突き出し、普通、果時の花穂の表面で明瞭、わら色、オレンジ色の斑点があり、先は広く丸い。果実は細長い柄のある小さな堅果状の紡錘形の袋果(follicle)、柄の基部に長毛がある。果皮は透明で、水中で縦に割れて1個の種子を放出する。種子は長さ約1㎜。2n=30。 ホソバガマ Typha angustifolia L.はヒメガマに似て粘液腺がない。学名は従来ヒメガマに使われていた。ホソバヒメガマはユーラシア大陸原産であるが、北アメリカにも分布が広がっており、カリフォルニアではヒメガマ×ホソバヒメガマ×ガマの3種交雑体が普通であるという。花期は6~8月。
3 Typha latifolia L. ガマ 蒲
北海道、本州、四国、九州、中国、ロシア、モンゴル、パキスタン、西南アジア、アフリカ、ヨーロッパ、アメリカ原産。中国名は宽叶香蒲 kuan ye xiang pu。英名はbroadleaf cattail, bulrush。池、沼、湿地、川に生える。
多年草。高さ1~2.5m。地下茎が横に広がって増える。茎は高さ1~2.5(3)m。花をつけるシュートは幅1~2㎝、茎は花穂近くで幅3~7㎜、頑強。葉は普通、新鮮なときに粉白を帯び、葉鞘の側面は紙質又は膜質、縁は狭く明瞭、頂部は次第に細くなり、葉身へと続き、明瞭な肩があり、まれに紙質の葉耳がある。葉鞘の粘液腺は普通、無色~不明瞭~欠く。葉は長さ45~95㎝、シュートの最も広い葉は新鮮なとき、幅10~23(29)㎜、乾くと5~20㎜、上部の葉身も幅がほぼ等しい。葉裏は凸面形、横断面は半円形。茎頂に花穂をつける。雌雄同株。上部の雄花穂は下部の雌花穂と離れず、接してつき、クローンでは 4(~8)㎝の長さの花序軸で離れてつくこともある。雄花穂は雌花穂とほぼ同長、長さ3.5~12㎝、花時の幅1~2㎝。基部又は中間部に脱落性の苞を1~3個つける。雄鱗片は無色~わら色、糸状、単一、長さ約4㎜、幅0.0.5㎜。雌花穂は花時に淡緑色、乾くと帯褐色、後に赤褐色又は帯黒色になり、果時にしばしば毛の先の白色のパッチでまだらになり、長さ5~25㎝、花時の幅5~8㎜、果時の幅24~36㎜、多数の雌花と不稔の雌花(カルポディア carpodium)が混在し、雌小苞は無い。雌花はcompound pedicelの上につき、compound pedicelは果時に剛毛状、同じ花穂につくものも変化し、長さ1.5~3.5㎜。雄花は長さ5~12㎜、雄しべが普通2個、まれに1又は3個。葯は長さ1~3㎜。葯室は黄色、先は暗褐色。花粉は4粒が合着した4集粒(tetrad)。雌花は花時に長さ2~3㎜、果時に長さ10~15㎜。柄の毛(pistil hair)は無色、集まると白色、大きくならない。雌小苞は無い。柱頭は残存性、花穂の表面の硬い層を形成し、花時に淡緑色、乾くと褐色になり、後に赤褐色又は先が普通、帯黒色になり、へら形~卵形~卵状披針形、長さ0.6~1㎜×幅0.2~0.25㎜。終期に果実が熟すと柱頭が取れ、果穂は淡褐色になり、カルポディアが柄の毛の間から見えるようになり、カルポディアはわら色、柱頭が無く、先が丸い。果実は小さな堅果状の披針形の袋果(follicle)、細長い柄がある。柄の基部に白色の長毛があり、風で飛散する。果皮は透明で、水中で縦に割れて1個の種子を放出する。種子は長さ約1㎜。2n=30。花期は6~8月。
品種) 'Variegata' (v)
4 Typha laxmannii Lepech. モウコガマ 蒙古蒲
synonym Typha laxmannii Lepech. var. davidiana (Kronf.) C.F.Fang
synonym Typha davidiana (Kronf.) Hand.-Mazz.日本(北海道、秋田県、千葉県)、中国(甘粛省、河北省、黒竜江省、河南省、江蘇省、吉林省、遼寧省、内モンゴル、寧夏、青海省、陝西省、山東省、山西省、四川省、新疆)、モンゴル、ロシア、アフガニスタン、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、パキスタン、南西アジア、ヨーロッパ原産。中国名は无苞香蒲 wu bao xiang pu。湖、池、水路、沼地、浅い川に生える。秋田県以外は外来ともいわれる。
多年草、茎は高さ0.8~1.3m、細い。葉は長さ50~90cm×幅2~4 mm、下面は凸形、横断面は半円形。穂状花序の雄性部分は長さ6~14cm、軸には帯白色または黄褐色の毛があり、基部と中央部分に1~2枚の落葉性の苞がある。穂状花序の雌性部分は雄部分から明瞭に分かれ、長さ4~6cm、1個の落葉苞を持つ。 雄花: 雄しべは2~3個。葯は長さ約1.5㎜。雌花には苞が無い。子房は披針形、柄は2.5~3 mm、細い。花柱は長さ0.5~1㎜。柱頭はへら形、長さ0.6~0.9 mm、柄に花柱の毛と同じように毛がある。果実は楕円形。花期および果期は6~9月。2n=30。
5 Typha minima Hoppe チャボガマ 矮鶏蒲
synonym Typha orientalis C.Presl
synonym Typha japonica Miq.
中国(甘粛省、河北省、黒竜江省、河南省、湖北省、吉林省、遼寧省、内モンゴル、陝西省、山東省、山西省、四川省、新疆ウイグル自治区)、モンゴル、ロシア、アフガニスタン、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、パキスタン、南西アジア、ヨーロッパ原産。中国名は小香蒲 xiao xiang pu。池や川などの浅い水域に生える。
多年草。茎は高さ16~65㎝、細い。葉は通常、根生し、鞘状になり、しばしば葉身がないか、またはときにあり、長さ15~40㎝×幅1~2mm、花茎より短い。穂状花序の雄部分は長さ3~8㎝、軸に毛がなく、基部に1個の落葉苞がある。穂状花序の雌部分は雄部分から明瞭に分かれ、長さ1.6~4.5㎝、基部に苞がある。 雄花: 雄しべは1個まれに2~3個ある。葯は長さ約1.5 mm。雌花は小苞を持つ。子房は紡錘形、柄は長さ約4 mm、細い。花柱は長さ約0.5 mm。柱頭は線形、長さ約0.5 mm、柄の毛は先が膨らみ、花柱より短い。果実は楕円形。花期および果期は5~8月。
6 Typha orientalis C. Presl コガマ 小蒲
日本(本州、四国、九州)、韓国、中国、台湾、モンゴル、ロシア、ミャンマー、フィリピン、オーストラリア原産。中国名は东方香蒲 dong fang xiang pu 。英名は broadleaf cumbungi, lesser reed-mace 。池、沼、湿地、川に生える。
ガマに似て、ガマより小さく、雄花穂と雌花穂が接している。
多年草。茎は高さ1.3~2m、丈夫。葉は長さ40~70㎝、幅4~9㎜、葉裏は凸面状、横断面は半円形。雄花穂は長さ2.7~9㎝、基部又は中間部分に1~3個の脱落性の苞がある。葉鞘に粘液腺はない。雌花穂は雄花穂と離れず接し、果時に長さ4.5~15㎝×幅10~20㎜、上端がやや幅広い円柱形、濃褐色、基部に1個の脱落性の苞がある。雄花は雄しべ3個、まれに2又は4個、葯は長さ約3㎜。花粉は黄色、単粒、直径15~20μm。雌花は小苞がなく、子房は紡錘形~披針形、1室、子房柄は長さ約2.5㎜、細い。花柱は長さ1.2~2㎜。柱頭はへら形、長さ0.5~0.8㎜。子房柄の毛(絹毛)は花柱とほぼ同長。果実は小さな堅果状の楕円形の袋果(follicle)、果皮は透明で、水中で縦に割れて種子を放出する。種子は長さ約1㎜。2n=60(X=15)。花期は6~8月。
7 ハイブリッド
(1) Typha x suwensis T.Shimizu アイノコガマ
ガマ×コガマ
(2) Typha angustifolia x T. latifolia (T. glauca)
(3) Typha domingensis x T. latifolia
(4) Typha angustifolia x T. domingensis
参考
1) Flora of ChinaTypha
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=134063
2) Plants of the World Online | Kew ScienceTypha
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30003823-2
3)GRINTypha
https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxon/taxonomysimple
4)Flora of North AmericaTypha
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=134063
5) 植物研究雑誌 10(12): 783-791(1934)木村雄四郎,長町田鶴子 : 日本産蒲黄に就て 邦産薬用植物生産概況(其六)
6) 植物研究雑誌 49(2): 54-62(1974)
佐橋紀男,幾瀬マサ : ガマの花粉4集粒における数種の移行形列について