アリドオシ 蟻通し

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Flora of Mikawa

アカネ科 Rubiaceae アリドオシ属

中国名 虎刺 hu ci
学 名 Damnacanthus indicus C.F.Gaertn.
アリドオシの花
アリドオシの花2
アリドオシの刺と大形の葉
アリドオシの果実と小形の葉
アリドオシの果実
アリドオシ
アリドオシ
花 期 5月 (果期 9月)
高 さ 30~50cm
生活型 常緑小低木
生育場所 林下
分 布 在来種 本州(関東以西)、四国、九州、朝鮮、中国、インド、タイ
撮 影 幡豆郡幡豆町  02.5.12
和名の由来は蟻を刺し通すほど刺が鋭いことから。
 根は肉質、数珠状。葉は対生し、大形と小形が交互につく。大形の葉は長さ1.5~2㎝、幅7~20㎜の広卵形~広惰円形。葉質は硬くて光沢がある。側脈は2~3(4)対。刺の長さは1~2㎝、大形の葉の1/2より長い。托葉は早落性、長さ0.3~1㎜と微小。花は枝先に、1~2個つく。花冠は白色、筒部の長さ7~9㎜、先が4裂する。裂片は長さ2.5~5㎜の三角形。核果は球形、直径5~6㎜、9月に赤く熟し、翌春5月まで残り、花と実が同時に見られることがある。2n=22, 44。
 よく似ていて葉が長く、刺が葉の1/2長以下の短いものはオオアリドオシホソバオオアリドオシであり、三河地方で見られる。

アリドオシ属

  family Rubiaceae - genus Damnacanthus

 低木、ときに托葉下又は腋上生(superaxillary)の対の刺をもつ。枝はときに複合の仮軸になり、削減された節間や前出葉(prophylls)をもつ(Damnacanthus indicus)。根はときに少なくとも、数珠形になる(例:節や節状のくびれ)。針状結晶(raphides)が有る。葉は対生、ダニ室(domatia)は無い。托葉は宿存し、硬くなり又は、ときに、破砕して落ち、葉柄間又は茎の周りに短く合着し、通常は三角形、鋭形又は短く2裂~多裂。花序は偽腋生(pseudoaxillary)、腋上生(superaxillary)、見かけ上頂生、短シュート上に双生し、腋生のように見え、花が単生、又は普通、集散花序~束生して花が2~4個つき、ほぼ無柄~短花序柄に見え(例::葉の無い短シュートにつき)、苞があり、苞は普通、小さく、腺のある長毛縁。花はほぼ無柄~花柄があり、しばしば下向き、両性、単一形又はdistylous(2つの花の形態を有する異種植物)。萼の拡大部は円蓋形又は鐘形、4裂(又は5裂 D. henryi)。花冠は白色~黄色~淡紫色、筒状漏斗形、しばしば革質、内側ののど部~全体に密に軟毛がある。筒部はまれに、有窓(fenestrate)[(D. henryi]。裂片は4(D. henryiは5)個、蕾では敷石状。雄しべは4個、花冠筒部の上部につき、突き出さないか又は突き出る。花糸は短い。葯は背着。子房は4室(D. henryiは2室)。胚珠は各室に1個、隔壁の先端近くにつき、湾生胚珠。柱頭は4( D. henryiは2)個、線形、突き出さないか又は突き出る。果実は赤色、核果(drupaceous)、球形~楕円形~卵形、肉質、萼の拡大部が宿存する。核(小堅果)は4( D. henryiは2)個、各1種子をもち、平凸面形、類球形、楕円形、又は鈍い3稜形。種子は中型、類球形~平凸面形。胚乳は角(つの)質。胚は小さい。幼根は地下性。
 世界に約13種あり、アジア東部、南部に分布する。

アリドオシ属の主な種と園芸品種

1 Damnacanthus angustifolius Hayata ホソバノアリドオシ 細葉の蟻通し

  synonym Damnacanthus angustifolius Hayata f. stenophyllus (Koidz.) T.Yamaz.

 台湾原産。中国名は台湾虎刺 tai wan hu ci。標高1000~2500mの原生林に生える。
 矮性の低木~低木、高さ0.5~1m。枝は無毛で棘がなく、若い時はほぼ4稜形、または通常8本の太い~細い縦のうねが交互にあり、4角(かど)になり、黄色くなる。発達した葉の葉柄は長さ1.5~5㎜、無毛。葉身は乾くと硬い紙質、狭披針形、狭楕円形、線状披針形、楕円形、または披針状楕円形、長さ5~14㎝×幅0.5~3㎝、全体に無毛、またはときにまばらに微軟毛~下面に微細剛毛があり、基部は鋭形~楔形状、縁は平坦で、全縁または不規則な小鋸歯があり、先は鋭形~尖鋭形。 中肋は上面に薄く突出する。二次脈は5~9対。托葉は早落性、葉柄間につき、三角形~へら形、長さ0.5~1㎜、無毛、鋭形~腺毛状。花序は無毛。小花柄は長さ2~5㎜。萼は無毛。花托筒部分はこま形、長さ1.2~1.5㎜。拡大部は長さ約1㎜、約1/2分裂し、裂片は三角形。花冠は白色、外側は無毛。花冠筒部は長さ6~8 mm。花冠裂片は三角形、長さ2~2.5mm。核果は扁円形、約・長さ4㎜×幅6㎜。 花期は1~4月、10月。果期は1月、6月、10~11月。

2 Damnacanthus biflorus (Rehder) Masam. リュウキュウアリドオシ 琉球蟻通し

  synonym Damnacanthus biflorus (Rehder) Masam. var. lutchuensis (Koidz.)E.Walker

  synonym Damnacanthus lutchuensis (Koidz.) Hatus.
 日本固有種(奄美大島~南西諸島)。常緑樹林内に生える。別名はオキナワジュズネノキ。
 常緑低木、高さ1~1.5m。茎はまばらに分枝し、若枝は無毛。枝の刺は普通、無く、稀にごく短い刺がある。アリドオシに比べ極端に棘が短くて少ない。葉は対生し、短い葉柄がある。葉身は質が厚く、楕円形~長円形、長さ2~6㎝×幅1.3~3㎝、基部は鋭形、縁はほぼ全縁、先は鋭形、両面とも無毛、上面は光沢がある。花は枝先や葉腋に2(1~3)個ずつつき、花冠は白色、漏斗形、筒部は長さ約8㎜、先は4裂し、裂片は三角状卵形、先は鋭形。核果(液果)は球形~扁球形、直径5~6㎜、赤色に熟す。花期は3~4月。

3 Damnacanthus giganteus (Makino) Nakai ナガバジュズネノキ 長葉数珠根の木

  synonym Damnacanthus macrophyllus Siebold ex Miq. var. giganteus (Makino) Koidz.

  synonym Damnacanthus macrophyllus Siebold ex Miq. f. giganteus (Makino) T.Yamaz.

 日本(本州の東海地方以西、四国、九州)、中国原産。中国名は短刺虎刺 duan ci hu ci。
 常緑低木。高さ0.7~1.5m。根は細長い数珠状に肥厚する。葉は対生し、短い葉柄がある。葉身は長楕円状披針形~狭楕円形、長さ7~13㎝×幅2~4㎝、先は鋭形、基部も鋭形、縁は全縁、両面とも無、葉の基部には短い刺が有又は無。花序は頂生又は腋生、花が2個ずつ、下向きにつく。花冠は白色、筒部は長さ約9㎜、先は4裂し、裂片は3角状卵形、先がやや鋭形、長さ約2㎜。核果(液果)は球形、直径3~5㎜、赤色に熟す。花期は4~5月。

4 Damnacanthus indicus C.F.Gaertn. アリドオシ 蟻通し [広義]
 日本、朝鮮、中国(安徽省、福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、四川省、西蔵、雲南省、浙江省)、台湾、インド原産。中国名は虎刺 hu ci。標高100~1500mの丘や山の疎林または密林、岩の茂みに生える。
 低木、高さ0.3~1.5m。 根は多肉質、多形。 枝は密に棘状から皮状で、場合によっては無光沢になったり、テレテになったり、場合によっては 4 角になり、3~20 mm の多数の持続的な棘があります。 発達した葉の葉柄は0.5~3 mm、縞模様、有棘、または無光沢。 葉身は乾燥して硬く紙状から革状で変色、卵形、索形、楕円卵形、楕円形、または広楕円形、0.5~2(~3)㎝×幅0.5~1(~1.5)㎝、上面は無毛、下面は無毛またはまばらに微細剛毛~脈に沿って小剛毛があり、基部は鈍形~円形、切形、または小心形で、ときに斜めになり、縁は全縁で平坦、先は鋭形。中肋は上面に薄く突出する。二次脈は2~3(~4)対。托葉はすぐに断裂するか早落性、葉柄間につき、狭~広三角形、長さ0.3~1㎜、小剛毛があるか無毛になり、鋭形~腺毛状(glandular-fimbriate)。花序は小剛毛~微細剛毛がある。小花柄は長さ0.5~8㎜。萼は小剛毛があるか無毛。花托筒部分はこま形、長さ1~1.5㎜。拡大部は長さ0.8~2㎜、1/4~4/5分裂し、裂片は広三角形~狭三角形。花冠は白色、外側は無毛。花冠筒部は長さ7~9㎜、花冠裂片は楕円形~披針状楕円形、長さ2.5~5mm。核果は直径4~6㎜。花期は3~6月。果期は3~1月。
品種) 'Variegatus'
4-1 Damnacanthus indicus C.F.Gaertn. var. indicus アリドオシ 蟻通し
  synonym Damnacanthus indicus C.F.Gaertn. var. ovatus Koidz
 日本(本州の関東以西、四国、九州)、朝鮮、中国、インド、タイ原産。
 常緑小低木。高さ30~50㎝。根は肉質、数珠状。葉は対生し、大形と小形が交互につく。大形の葉は長さ1.5~2㎝、幅7~20㎜の広卵形~広惰円形。葉質は硬くて光沢がある。側脈は2~3(4)対。刺の長さは1~2㎝、大形の葉の1/2より長い。托葉は早落性、長さ0.3~1㎜と微小。花は枝先に、1~2個つく。花冠は白色、筒部の長さ7~9㎜、先が4裂する。裂片は長さ2.5~5㎜の三角形。核果は球形、直径5~6㎜、9月に赤く熟し、翌春5月まで残り、花と実が同時に見られることがある。2n=22,44。花期は5月。果期は9月。

4-2 Damnacanthus indicus C.F.Gaertn. var. formosanus Nakai タイワンアリドオシ 台湾蟻通し

 Damnacanthus indicus var. indicusに含められる。

4-3 Damnacanthus indicus C.F.Gaertn. var. lancifolius Makino  ホソバオオアリドオシ 細葉大蟻通し

  synonym Damnacanthus lancifolius (Makino) Koidz. 

  synonym Damnacanthus major Siebold et Zucc. var. lancifolius (Makino) Ohwi 

4-3-1 Damnacanthus indicus C.F.Gaertn. var. lancifolius Makino f. oblongus (Koidz.) Sugim.  コバンバニセジュズネノキ

  synonym Damnacanthus lancifolius (Makino) Koidz. var. oblongus Koidz.
 Damnacanthus indicus var. indicusに含められる。

4-4 Damnacanthus indicus C.F.Gaertn. var. microphyllus (Makino) Makino ex Nakai ヒメアリドオシ 姫蟻通し

  synonym Damnacanthus indicus C.F.Gaertn. var. indicus f. microphyllus Makino

 日本(本州の紀伊半島、九州、屋久島、種子島)、 韓国(済州島)に分布。
 高さ30㎝以下。小枝は密に分枝し、刺は長く、葉の長さの2/3以上。葉は長さ約1㎝、先端は短く刺状。花冠は長い漏斗形、白色。

5 Damnacanthus macrophyllus Siebold ex Miq. ジュズネノキ 数珠根の木

  synonym Damnacanthus macrophyllus Siebold ex Miq. var. parvispinus auct. non (Koidz.) S.Takah.

 日本(本州の近畿地方以西、四国、九州)、中国原産。中国名は浙皖虎刺 zhe wan hu ci 。別名はナガバジュズネノキ、オオバジュズネノキ
 低木、高さ1~2m、根は肉質、数珠形。枝は微軟毛~小剛毛があり、太い条線と細い条線が8本互生し、少数の脱落性又は宿存性の長さ2~6㎜の刺がある。発達した葉の葉柄は長さ1~2㎜、無毛又はまばらに微軟毛~粗毛がある。葉身は乾くと硬い紙質、卵形~長円状卵形~披針形~長円状披針形、長さ3~6(~8)㎝×幅1~2.5(~3)㎝、上面は無毛、下面は無毛又は脈沿いに微軟毛があり、基部は楔形~円形、縁は平ら~薄く外巻き、先は短く尖鋭形~鋭形、中脈は上面で細く明瞭、2次脈は3~4(~)対。托葉は宿存し、葉柄間、三角形、長さ0.3~1㎜、微軟毛~無毛になり、鋭形~腺のある多裂又は長毛縁。花序は小剛毛~微軟毛がある。花柄は長さ1~2㎜。萼は小剛毛~微軟毛がある。花托筒は倒円錐形、長さ1.2~1.5㎜、拡大部は長さ1~1.5㎜。裂片は長さの1/3~1/2、三角形~卵形。花冠は白色、外側は無毛、筒部は長さ8(~13)㎜。花冠裂片は卵状三角形、長さ約2㎜。核果は直径約2㎜。花柄は長さ5㎜以下に長くンる。花期は4~6月。果期は10~12月。

6 Damnacanthus major Siebold et Zucc. オオアリドオシ 大蟻通し

  synonym Damnacanthus indicus C.F.Gaertn. var. major (Siebold et Zucc.) Makino

  synonym Damnacanthus indicus C.F.Gaertn. subsp. major (Siebold et Zucc.) T.Yamaz.

 日本、朝鮮、中国(広東省、浙江省)原産。中国名は大卵叶虎刺 da luan ye hu ci。標高600~700mの山のまばらな森林や藪に生える。
 低木、高さ1~2m。根は多肉質、白色または淡紫色、数珠形。 枝は若いうちに密に小剛毛(hispidulous)~微細剛毛(hirtellous)があり、ときに無毛になり、円柱形またはときに4稜形、長さ3~10㎜の棘が多数あり、宿存する。発達した葉の葉柄は長さ1~4㎜、伏した小剛毛(strigillose)~微細剛毛がある。葉身は乾くと紙質、広卵形~卵形、または楕円状卵形、長さ3~4㎝×幅1.5~2㎝、上面は無毛、下面は無毛または葉脈に沿ってまばらに小剛毛があり、基部は鈍形または円形、縁は平坦で全縁、先は鋭形。中肋は上面に薄く突き出す。二次脈は3~5対。托葉はすぐに断裂するか早落性、葉柄間につき、広三角形、長さ0.5~1㎜、伏した小剛毛があるか無毛になり、鈍形~鋭形。花序は伏した小剛毛がある。小花柄は長さ約1㎜。萼は伏した小剛毛があるかまたは毛がある。花托筒部分は倒円錐形、長さ1~2㎜。拡大部は長さ約2㎜、深裂し、裂片は狭~広三角形。花冠は白色、外側は無毛。花冠筒部は長さ約11㎜、花冠裂片は卵状三角形、長さ約4㎜。核果は直径5~10㎜。花期は4月。果期は冬。

6 Damnacanthus minutispinus Koidz. オオシマアリドオシ 大島蟻通し
  synonym Damnacanthus major Siebold et Zucc. var. parvifolius Koidz.

  synonym Damnacanthus major Siebold et Zucc. var. parvispinus (Koidz.) Koidz.

  synonym Damnacanthus major Siebold et Zucc. var. minutispinus (Koidz.) Koidz. ex Masam.

  synonym Damnacanthus indicus auct. non C.F.Gaertn.
  synonym Damnacanthus indicus C.F.Gaertn. var. parvispinus Koidz.
  synonym Damnacanthus indicus C.F.Gaertn. var. intermedius Matsum. 

  synonym Damnacanthus indicus C.F.Gaertn. f. minutispinus (Koidz.) Sugim.

 日本固有種(沖縄)。別名は ビシンニセジュズネノキ、コバノジュズネノキ。
 高さ2m以下。普通、刺はなく、まれに短い刺がある。葉は楕円形~長円形、長さ2~6㎝、基部は鋭形、先は尖鋭形、下面に光沢がある。

7 ハイブリッド
(1) Damnacanthus x okinawensis Hatus. ヤンバルアリドオシ
  synonym Damnacanthus indicus C.F.Gaertn. var. okinawensis Hatus.
 別名はヤンバルジュズネノキ又はオオシマアリドオシ

参考

1) Flora of China
 Damnacanthus
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=109263
2) GRIN
 Damnacanthus
https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=3378
3) Plants of the World Online | Kew Science
 Damnacanthus
http://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:34456-1