ネコノメソウ 猫の目草
Flora of Mikawa
ユキノシタ科 Saxifragaceae ネコノメソウ属
学 名 | Chrysosplenium grayanum Maxim. |
花 期 | 4~5月 |
高 さ | 5~20㎝ |
生活型 | 多年草 |
生育場所 | 山地の湿った場所 |
分 布 | 在来種 北海道、本州、朝鮮、ロシア |
撮 影 | 豊田市(小原村) 04.4.8 |
葉腋を除き、毛はなく、全体にみずみずしい。匐枝を長く伸ばし、茎は下部で這い、先が立ち上がる。葉は対生し、長さ0.5~2㎝の卵円形、縁は鈍鋸歯。苞は葉と同形、基部が黄色になるものもある。花の直径は約2㎜。萼裂片は直立し、淡黄色。雄しべ4個、萼裂片より短い。種子は1個の稜があり、微細な乳頭状突起がある。2n=22
ヤマネコノメソウは匐枝を出さす、全体に毛が生え、茎葉は互生し、萼裂片が平開し、緑色。雄しべ8個。
ツルネコノメソウは地上に匐枝を出し、小形の扇形の葉を互生する。苞葉が黄色。萼裂片は平開し、雄しべ8個。
コガネネコノメソウは4個の萼裂片が直立し、壺形になり、黄色で目立ち、雄しべ8個、葯は萼から突き出ない。。
トウノウネコノメはコガネネコノメソウに似るが、雄しべが6~8個で長く、葯が萼から突き出る
多年草、小型、根茎や小球根があり、普通、ストロン(走出枝)をもち、機能的な葉があるか、葉がなくなり、機能的でない鱗片がつく。てい幹は無い。花茎は平伏、傾伏、斜上、又は直立し、葉が有又は無、長さ(1.2~)2~30㎝(しばしば C. wrightiiのように短く2㎝もある)、無毛又は疎~密に絨毛がある。葉は茎葉又はストロンにつき、互生又は対生、無毛又は絨毛のある葉柄があり、無托葉、単葉。葉身は卵形、扁卵形、扁楕円形、腎形、扇形、ときに円形に近く、不分裂、基部は漸尖形、くさび形、切形、又は心形、縁はほぼ全縁、円鋸歯、又は円鋸歯状歯状、歯はときに明瞭で、±裂片のように見え、葉先は鈍形、円形、又は切傾、表面は無毛又はまばらな絨毛~絨毛があり、脈は掌状。花序は単純又は複合の集散花序、ロゼットの頂芽から生じ、花が2~30個、ときに花が単生し、苞葉(bracteal leaves)に囲まれる。花は花托筒が子房の中間1/2~3/4又上部につき、子房から長さ0.5~1.5mmが分離し、帯緑色~黄緑色。咢片は4(又は5)個、蕾では覆瓦状、黄色、緑黄色、緑色、緑赤色、赤橙色、、又は紫色、ときに紫色の反転がある。花弁は無い。蜜腺の盤は目立つか又は無いように見え、又は明瞭に(4又は)8裂し、ときに褐色のパピラに取り囲まれる。雄しべは2~8本、普通、4又は8本。花糸は披針形、錐形、狭長円形。葯は2室、横方向に裂開する。葯は熟すと色が変化してくるため、裂開直前の葯の色を観察比較する。花粉粒は小さく、3類溝孔粒(3-colporoidate)、細かい網目がある。心皮は2個、普通、下部で合着する。子房は上位、半下位、又は亜下位、1室。胎座は2個、側膜胎座 。胚珠は多数。花柱は2本、分離。果実は蒴果、2個の心皮子房は1/2~3/4下位、1室。心皮は小型、その長さの3/4~4/5が合着する。側膜胎座 。花柱は2個。柱頭は2個。蒴果は裂開後に杯形、2嘴があり、散開する。種子は多数、暗褐色又は赤褐色、楕円形、卵形、又は球形、平滑、パピラがあり、いぼ状突起があり、柔毛があり、溝があるか又は他がある。英名はGolden saxifrage。x=11。
世界に約65種があり、アフリカ、アメリカ、アジア、ヨーロッパに分布する。
1-1 Chrysosplenium album Maxim. var. album シロバナネコノメソウ
日本固有種(本州の近畿地方~中国地方、四国、九州)。林内の谷沿いの湿った場所に生える。
高さ5~10㎝、全体に白軟毛が多い。走出枝は地上性で、花後に伸長し、白色の軟毛が密生する。根出葉は花時には枯れる。葉は対生し、1~2対つき、葉柄は長さ0.3~3cm。葉身は長さ2~10mm×幅3~16㎜、扇状円形~円状腎形、基部は鈍形又はくさび形、縁は上半部に円鋸歯があり、歯は5~9個。花茎は普通、高さ5~10cm、帯暗紫色、白色の軟毛がある。花柄は長さ1~4㎜。花は直径3~5mm。萼裂片は4個、花時に直立し、長さ3~5mm、狭長卵形、先は鋭形、花時に白色で、花後に淡緑色に変わる。花弁は無い。雄しべは8本、萼片と同長さ又はやや長く、花時に直立する。葯は暗紅色、後に黒紫色になる。子房は上位。花柱は2個、長さ1.5~2mm。果実は朔果、斜上し、2個の嘴はほぼ同長、萼片から突期出す。種子は卵形、長さ0.6-0.7㎜、縦に10数本の縦条があり、パピラが密にある。
1-2 Chrysosplenium album Maxim. var. flavum H.Hara キバナハナネコノメ 黄花花猫の目
本州の東海地方(岐阜県、静岡県、愛知県)に分布する。愛知県準絶滅危惧種(NT)。深山の渓流沿いや滝付近などの湿った場所に生える。萼裂片が鮮やかな黄色になる
走出枝は花後に伸び、パッチ状に群生することがある。葉は対生し、葉柄は長さ2~7mm。葉身は扇形、長さ1~8mm×幅2~9mm、縁は深い円鋸歯縁、歯は2~4個、下面は暗紫色を帯びる。花茎は直立、高さ2~7㎝。花は1~6個、やや密につく。萼片は鮮やかな黄色、広卵形~円形、先は鈍形~円形、かなり平開し、ハナネコノメの咢片の長さよりやや短い。雄しべは8本、長く突き出る。花期は3~4月。
1-3 Chrysosplenium album Maxim. var. nachiense H.Hara キイハナネコノメ 紀伊花猫の目
紀伊半島南部(三重県~和歌山県)に分布する。コガネネコノメソウに似る。
基準変種やハナネコノメより萼片が短く、長さ2~3㎜。雄しべはと花柱は安定して短く、突き出ない。萼片は白色。葯は紫色。花期は2月上旬~3月中旬。2n=24。
1-4 Chrysosplenium album Maxim. var. stamineum (Franch.) H.Hara ハナネコノメ 花猫の目
本州の福島県~京都府に分布。花が白色。基準変種種に比べて毛が少なく、ストロンが暗紅色を帯びる。2n=24。
1-5 Chrysosplenium album Maxim. var. totukawaense J.Oda et Nagam. トツカワハナネコノメ 十津川花猫の目
本州の三重県、奈良県、和歌山県に分布しする。低山帯の、小さな滝の崖地に生える。雄しべや花柱が萼片を超出し、花粉の色や花期にわずかながら相違が見られる。
茎は直立し、高さ5~20㎝、太さ0.8~1.2㎜、軟らかい円柱形、緑色~紫褐色、軟毛とともに白色の長毛がまばらにある。根出葉は葉柄があり、しばしば花時まで残り、は柄は長さ10~40mm、長毛がある。葉身は長さ7~10mm×幅8~12mm、扇形~扁円形、縁に各1~2個の円鋸歯があり、基部はやや切形、葉柄に沿下し、長毛がまばらにある。茎葉は無柄又は有柄、葉身は長さ3~10mm×幅4~12mm、縁に各1~2個の円鋸歯がある。萼片は白色、長さ2.0~2.6mm×幅1.5~2.9mm、先は円形、上半部は反曲する。雄しべは8本、花糸は長さ2.6~3.2mm、裂片から0.3~1.0㎜、突き出る。葯は暗赤褐色。花粉粒は白黄色~黄色。花柱は長さ1.6~2.2mm、突き出る。蒴果は斜上し、萼片から突き出る。種子は卵状球形、長さ0.6~0.7mm、褐色、10~12本の隆条に低いパピラがつく。花期は2月下旬から3月下旬。
2 Chrysosplenium alternifolium L.
ヨーロッパ、シベリア原産。英名はalternate-leaved golden-saxifrage。
2-1 Chrysosplenium alternifolium L. var. sibiricum Ser. エゾネコノメソウ 蝦夷猫の目草
synonym Chrysosplenium alternifolium auct. non L.
synonym Chrysosplenium sibiricum (Ser.) Kharkev.
synonym Chrysosplenium serreanum Hand.-Mazz. [Flora of China]
北海道に分布。別名はカラフトネコノメソウ、 オクヤマネコノメソウ。英名はalternate-leaved golden saxifrage。中国名は五台金腰 wu tai jin yao. 湿原や林下の水湿地に生える。 2n=24。
3 Chrysosplenium aureobracteatum Y.I.Kim et Y.D.Kim
韓国原産。 C. valdepilosumに似ているが、苞葉が黄緑色。栄養葉に光沢のある銀色の斑点があり、種皮のいぼ状突起が大きい。2018年に記載された。
4 Chrysosplenium delavayi Franch. アオネコノメ 青猫の目
中国、台湾、ミャンマー原産。中国名は肾萼金腰 shen e jin yao
5 Chrysosplenium echinus Maxim. イワネコノメソウ 岩猫の目草
日本固有種(本州の福島県南部。関東地方・東海地方、四国、九州)。林内の沢沿いの陰湿地に生える。別名はトゲミネコノメソウ、ホソバミズネコノメソウ。
高さ3~12㎝、全体にほぼ無毛。根出葉は花時には枯れてない。ストロンは花茎の基部から花後に出て、地上性、先端は明瞭なロゼットにならない。ストロンには葉柄がある葉が4~5対、間隔をおいてつき、葉柄は長さ4~12㎜。葉身は花茎の葉より大きく、先端ほど大きく、長さ2~18mm、円形~円腎形、縁には3-10個の鋸歯があり、先は内曲し、やや鋭い。茎葉は葉柄があり、1~2対が対生する。葉身は長さ2~8mm×幅3~10mm、扇形~円腎形、基部は切形~広くさび形、縁は上部に3~5個の内曲する明瞭な鋸歯がある。花茎は高さ3~12cm。花序を取り囲む苞葉は緑色、卵形、左右相称、上縁に1~2対の鋸歯がある。花は直径3~5mm。萼片は4個、平開し、長さ1~1.5mm位、三角形~卵形、先は鈍形~鋭形、緑色、ときに部分的に暗赤紫色を帯びる。花盤があり、淡緑色。花弁は無い。雄しべは8本、長さ約0.5mm、直立する。葯は橙赤色。子房は下位。花柱は2個あり短い。果実は朔果、朔果の嘴は斜開する。種子は18~20個入り、卵形、長さ0.8~1mm、縦に10数本の隆条があり、微細な棍棒状突起が密にある。花期は4~5月。
6 Chrysosplenium fauriei Franch. ホクリクネコノメ 北陸猫の目
synonym Chrysosplenium fauriei f. ferruginiflorum Wakab. & H.Ohba
日本固有種(本州の山形県南、福島県、新潟県~島根県の日本海沿岸部)。山地の谷沿いなどの陰湿地に生える。別名はエチゴネコメ。
高さ5~19㎝、葉腋に毛をがある以外は無毛。ストロンは花後に長く伸び、先にロゼットを作り、ロゼット葉は2~3対の大きな葉からなり、葉は無柄又は短柄、葉身は広楕円形~扇状円形、長さ1~6㎝×幅1~4.5㎝、縁には5~10対の内曲した低い鋸歯があり、上面は緑色、下面は白緑色。根出葉は花時にあり無柄又はごく短い葉柄がある、葉身は円形~広楕円形、長さ1.5~5㎝×幅1~3㎝。花茎は直立し、高さは5~19㎝、普通、1対の茎葉がつく。茎葉は短い葉柄があり、葉身は葉柄を含めて長さ2~3.5㎝、円形~卵形~楕円形、縁に6~10対の歯の内曲する鈍鋸歯があり、基部は切形。集散花序は小型。花序を取り囲む苞葉は下側の苞葉は茎葉状、上側の苞葉は広楕円形、縁に鈍鋸歯があり、鮮やかな黄色。花は直径2.8~3.5mm、鐘形。萼片は4個、直立し、長さ1.1~1.5mm、円形、先はやや切形又は鈍形、浅緑色~薄緑色。雄しべは本、萼片から突き出し、長さ2.3~.7mm。花糸は花時の葯の長さの2.5-3.4倍。葯は暗紅色、長さ0.6~0.8㎜、後に黒紫色になる。花柱は2個、細く先細で、萼裂片から長く突き出る。子房は中位。果実は朔果。種子は多数あり、広楕円形、長さ0.8~0.9㎜、10数本の縦の隆条があり、棍棒状突起が密にある。花期は4~5月。
6-1 Chrysosplenium fauriei Franch. f. ferruginiflorum Wakab. et H.Ohba サンインネコノメ 山陰猫の目
本州(島根~京都)に分布。
萼片は直立し淡橙色~淡茶褐色。葯は暗赤褐色。
7 Chrysosplenium flagelliferum F.Schmidt ツルネコノメソウ 蔓猫の目草
日本(北海道、本州の近畿地方以北、四国)、朝鮮、中国、モンゴル、ロシア原産。中国名は蔓金腰 man jin yao。別名はヒメネコノメソウ。愛知県絶滅危惧Ⅱ類(VU)。
多年草。高さ(3)5~15㎝、和名の由来は花後に走出枝を出すことから。走出枝の葉は互生し、長さ0.6~1㎝、幅1~1.9㎝の亜腎形、円鋸歯が5~8個ある。茎は無毛。茎葉は互生し、3~4個つき、長さ 4~8㎜、幅5~10 ㎜のほぼ円形、円鋸歯が5個ほどあり、葉柄は長さ6~10㎜。根生葉は花時に枯れることが多く、長さ1.2~3.8㎝、幅1.5~5.3㎝の円形で、円鋸歯が12~18個あり、葉柄は長さ5~8㎝。苞葉は長さ2~7㎜、幅1.8~8.3㎜の広卵形~広惰円形、基部は広い楔形。萼片は4個、長さ1.9~2㎜、幅1~2㎜、 黄色で、平開する。花の直径は2~4㎜。雄しべ8個。果実は長さ約3㎜。種子は長さ0.7~0.8㎜、黒褐色。2n=24。花期は4~5月。
8 Chrysosplenium grayanum Maxim. ネコノメソウ 猫の目草
北海道、本州、朝鮮、ロシア原産。別名は別名はミズネコノメソウ。
多年草。高さ5~20㎝葉腋を除き、毛はなく、全体にみずみずしい。匐枝を長く伸ばし、茎は下部で這い、先が立ち上がる。葉は対生し、長さ0.5~2㎝の卵円形、縁は鈍鋸歯。苞は葉と同形、基部が黄色になるものもある。花の直径は約2㎜。萼裂片は直立し、淡黄色。雄しべ4個、萼裂片より短い。種子は1個の稜があり、微細な乳頭状突起がある。2n=22。花期は4~5月。
9 Chrysosplenium hebetanum Ohwi ダイブネコノメ 大武猫の目
台湾原産。中国名は大武金腰 da wu jin yao。別名はコネコノメ
10 Chrysosplenium japonicum (Maxim.) Makino ヤマネコノメソウ 山猫の目草
日本(本州、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国、台湾原産。中国名は日本金腰 ri ben jin yao。湿った林内に生える。
中国には珠芽(むかご)ができない亜種があり、ヤマネコノメソウを基準亜種としている。
全体に毛がある。茎葉は互生し、長柄があり、長さ1~3㎝㎝、腎円形、縁に平らなの鋸歯がある。根生葉は7~11個の鋸歯があり、基部が心形。花茎は直立し、上部で分枝し、枝先に黄緑色の花をかまってつける。花は花弁がなく、萼は4裂し、萼裂片は 長さ0.6~1.4㎜、幅1~1.4㎜の半円形、緑色、基部は少し黄色になり、平開する。雄しべ8個。果実は長さ4~5㎜、熟すと、上向きに裂開する。種子は長さ0.6~0.7㎜の惰円形、微細な乳頭状突起がある。花後に、毛のある楕円形の珠芽(むかご)を茎の基部につける。2n=24。花期は3~4月。
10-1 Chrysosplenium japonicum (Maxim.) Makino var. tetrandrum (H.Hara) Y.N.Lee ヨツシベヤマネコノメ
synonym Chrysosplenium japonicum (Maxim.) Makino f. tetrandrum H.Hara
11 Chrysosplenium kamtschaticum Fisch. ex Ser. チシマネコノメソウ 千島猫の目草
日本(北海道、本州の近畿地方以北)、カムチャッカ半島、千島列島、サハリン原案。別名はミチノクネコノメ。愛知県絶滅危惧Ⅱ類(VU)。イワネコノメソウ に似るが、走出枝の先端につく葉はロゼットをつくり、葉の鋸歯が低い鈍鋸歯。
小型の多年生草本。茎は高さ 5~10㎝、基部から地上性の走出枝を出す。走出枝は花後伸長して長さ 10~20㎝、1~2 回分枝し、先端にロゼット状の小株をつける。根出葉は花時に残り,短柄があり、葉身は長さ 5~10㎜×幅6~15㎜、基部は広いくさび形で葉柄に続き、縁は上半部に低い鈍鋸歯がある。茎葉は鋸歯が無かあっても1 対である。花序は 2~3回分枝する。花は直径3~4㎜、黄緑色、雄しべは8本、長さ約0.8mm、花時に直立する。葯は鮮黄色又は汚紅色。子房は下位。花柱は2本、長さ約0.5㎜。果実は朔果、で2個の心皮は大きさが異なり、朔果の嘴は斜開する。花期は4月。
11-1 Chrysosplenium kamtschaticum Fisch. ex Ser. f. tobishimense Wakab. トビシマネコノメソウ
11-2 Chrysosplenium kamtschaticum Fisch. ex Ser. var. aomorense (Franch.) H.Hara ミチノクネコノメソウ
本州の深山の沢沿いの林内に生える。
葉と苞にある鋸歯が目立つ。走出枝の先端にロゼットをつけ、途中に1対の葉をつけ、その葉腋から枝を出す。葯は橙赤色~淡橙黄色。
12 Chrysosplenium kiotoense Ohwi ボタンネコノメソウ 牡丹猫の目草
synonym Chrysosplenium fauriei Franch. var. kiotoense (Ohwi) Ohwi
日本有種(本州の長野県西部~島根県)。別名はボタンネコノメ。
高さは5~20cm、葉腋の褐色の毛を除いて無毛。根出葉は花時にあり、無柄か又は短柄がある。葉身は卵円形、長さ1.5~4.5㎝×幅1~3㎝。茎の基部にほとんど花茎をつけない枝がよく発生して伸び、2~3対の大きな葉からなるロゼットを形成する。ロゼットの葉は短柄があるかまたは無柄、葉身は円みのある広楕円形~扇状円形、長さ1~3cm×幅1~2.5cm、縁には5~10対の内曲した低鋸歯があり、上面は緑色、脈に沿って白班があり、下面は白緑色。花茎は直立し、高さ5~20㎝、普通、1対の小さな茎葉がある。集散花序は小型。苞葉は卵形~楕円形、縁は鈍鋸歯縁、鮮黄色。花は直径2.4~3.2㎜、広鐘形。萼片は4個で花時に直立し、長さ1.0~1.3㎜、円形~扁円形、先は切形~凹形、赤褐色又は暗紫色。花弁は無い。雄しべは8本、萼裂よりかなり短く、長さ0.9~1.0mm。花糸は花時の葯とほぼ同長さ。葯は暗紅紫色、長さ0.5~0.6㎜。花柱は2個、短くて萼片から突き出ず、円柱形。果実は朔果、宿存性の花糸は萼裂片の長さの約1/2又はそれ以下。種子は多数あり、広楕円形、長さ約0.8㎜、約12本の縦の隆状ががあり、丸い小突起がある。花期は4~5月。
12-1 Chrysosplenium kiotoense Ohwi f. xanthandrum (Araki) Wakab. et H.Ohba キンシベボタンネコノメ
萼片が緑色~黄緑色、葯は黄色。
13 Chrysosplenium lanuginosum Hook.
中国、台湾、ブータン、インド、ミャンマー、ネパール、シッキム原産。中国名は绵毛金腰 mian mao jin yao
13-1 Chrysosplenium lanuginosum Hook.f. et Thomson var. formosanum (Hayata) H.Hara タイワンネコノメ
synonym Chrysosplenium formosanum Hayata,
台湾原産。中国名は台湾金腰 tai wan jin yao
14 Chrysosplenium lectus-cochleae Kitag. ヒカゲネコノメソウ
synonym Chrysosplenium pilosum Maxim. var. amabile (Kitag.) Kitag. マンシュウネコノメソウ
synonym Chrysosplenium amabile Kitagawa
中国原産。中国名は 林金腰 lin jin yao
15 Chrysosplenium macrostemon Maxim. イワボタン 岩牡丹
日本固有種((本州の関東地方以西の太平洋側、四国、九州)。別名はミヤマネコノメソウ。
ボタンネコノメソウに似る。
高さ10~20㎝。走出枝は地上性、花後に伸び、先端近くには基部のものより大型の葉を数対ロゼット状につける。葉が細長く、根出葉は明確な葉柄があり、花時まで残り、広卵形~狭卵形。花茎はふつう高さ10~20cmになり、暗紅色をおび、葉腋を除き毛はない。茎葉は1-2対が対生し、葉身は長さ0.5~5cmになる卵円形から卵状楕円形で、基部はくさび形になり、上縁には4-9個の内曲する鋸歯がある。葉柄は長く、長さ2.5cm以下、普通、葉の上面には灰白色の斑紋がある。花茎は10~20㎝。花序を取り囲む苞葉は、下側の苞葉は暗緑色~濃緑色、楕円形~楕円状披針形。上側の苞は鮮黄色~緑黄色、卵形。花は直径3~4.5mm。萼片は4個、花時に斜開又は直立し、長さ1~1.8㎜、楕円形~三角状卵形、淡緑色~黄緑色。花盤の蜜腺は緑白色。花弁は無い。雄しべは普通、8本、まれに4本、長さ2~3mm、萼片より長く、花時に斜上するか又は直立する。葯は普通、黄色、まれに帯赤褐色、花粉は黄色。子房は中位。花柱は2個、長さ1.5~2㎜、花時に直立する。果実は朔果、嘴は散開。種子は楕円形~卵形、長さ約0.8~1㎜、縦に10数本の隆条があり、棍棒状の突起が密にある。花期は3~4月。
15-1 Chrysosplenium macrostemon Maxim. var. atrandrum H.Hara ヨゴレネコノメ 汚れ猫の目
上側の苞葉は淡黄色~淡黄緑色。基準変種に似るが、萼片は暗褐紫色~淡緑色で花時にほぼ直立する。雄しべは4~-8本、葯は暗紅色。花糸、花盤、花柱、子房も紅紫色を帯びる。花期は4月。
15-2 Chrysosplenium macrostemon Maxim. var. calicitrapa (Franch.) H.Hara キシュウネコノメ 紀州猫の目
紀伊半島に分布する。イワボタンと区別しない見解がある。
基準変種に似るが、葯は暗紅色を帯びる。種子の隆条の上の突起はが細長い。
15-3 Chrysosplenium macrostemon Maxim. var. macrostemon イワボタン
基準変種。別名はミヤマネコノメソウ。
15-4 Chrysosplenium macrostemon Maxim. var. shiobarense (Franch.) H.Hara ニッコウネコノメ 日光猫の目
本州の東北地方から中部地方の太平洋側に分布する、山地の谷沿いの湿った場所に生える。別名はニッコウネコノメソウ。
花茎は高さ4~18㎝。花時には普通、根出葉はない。花後に長さ30cmになる走出枝を出す。茎葉は対生し、葉身は卵形、長さ1~2.5cm。基準変種やヨゴレネコノメに似るが、萼片は黄白色、花時にほぼ平開する。雄しべは普通、8本、まれに4本、葯は暗紅紫色を。花期は4~5月。
15-5 Chrysosplenium macrostemon Maxim. var. viridescens (Sutô) H.Hara サツマネコノメ 薩摩猫の目
synonym Chrysosplenium viridescens (Sutô) Sutô ex H.Hara
九州、四国に分布する。
全体が緑色。花茎は横に這い、先端が傾上して立ち上がり、花序をつける。萼片は花時に直立する。葯は黄色。
16 Chrysosplenium maximowiczii Franch. et Sav. ムカゴネコノメソウ 珠芽猫の目草
日本固有種(本州の宮城県南部~関東地方、東海地方)。別名はタマネコノメ、ムカゴネコノメ。谷沿いの林内に生える。
高さ3~15㎝。茎にわずかの毛がある他は全体に無毛。走出枝を出し、先端に1個のむかご(珠芽)をつける。珠芽は紡錘形、長さ約1㎝、帯赤色、暗紫褐色の細点があり、毛が密生する。走出枝は地上性と地中性の両方があり、地上性の走出枝には普通、葉があり、地中性の走出枝には鱗片がある。花茎は前年の地中にできたむかごから生じ、高さ3~15cm、白毛がまばらに生え、緑白色、基部は赤紫色を帯びる。茎葉は2~3対つき、対生又は互生し、葉柄は長さ2~15mm。葉身は卵円形~広倒卵円形、長さ4~18mm×幅4~18mm、縁には歯が3~7個の内曲した鈍鋸歯があり、両面とも無毛、基部はくさび形。花序は少数の花がまばらにつく。苞葉は茎葉とほぼ同形。花柄がある。萼片は4個、花時に直立し、長さ約1.5mm、広卵形~卵円形、緑色~淡緑色ま~淡黄緑色。花弁は無い。雄しべは8本、長さ0.8~1mm、花時に内側に傾く。葯は緑白色~黄白色。花盤蜜腺はは発達しない。子房は中位。花柱は2個あり、ごく短く、直立する。果実は朔果、嘴は直立し、萼片から突き出る。種子は多数、卵状円形、長さ約0.6mm、縦に10数本の隆条があり、硬いパピラがある。花期は3~4月。
17 Chrysosplenium nagasei Wakab. et H.Ohba ヒダボタン 広義
17-1 Chrysosplenium nagasei Wakab. et H.Ohba var. nagasei ヒダボタン 飛騨牡丹
日本固有種(本州中部のの岐阜県・福井県・長野県、本州西部の兵庫県・鳥取県・島根県・山口県に点在)。山地の谷沿いなどの陰湿地に生える。
高さ5~13㎝。葉腋に褐色の毛がある他は無毛。根出葉は花時にあり、ほぼ無柄又は短柄がある。葉身は卵状円形、長さ1.5~4.5㎝×幅1~3㎝。花茎をつけないシュートが出て、長く伸び、2-3対の大きな葉のロゼットを作る。ロゼット葉はほぼ無柄又は短柄があり、葉身は広楕円形~扇状円形、長さ1~3㎝×幅1~3㎝、縁には5~10対の歯の内曲する低鋸歯があり、上面は緑色、下面は白緑色。花茎は直立し、高さ5~13㎝、帯暗紅紫色、普通羽、1対の小さな歯がつく。集散花序は小型。苞葉は卵形~楕円形、縁は鈍鋸歯縁、鮮やかな黄色。花は大きく、直径3.7~4.6㎜、広鐘形。萼片は4個、花時に直立し、長さ1.4~1.7mm、円形~扁円形、先は切形~凹形、黄色~緑黄色。花弁は無い。雄しべは8本、萼片と同長又は短く、長さ1.5~1.7mm。花糸は花時の葯の長さの1.5~2.2倍。葯は赤色、長さ0.6~0.8㎜。花柱は2個、細く、先細、萼片から突き出ない。果実は朔果、斜開し、宿存性の花糸は、萼裂片と同長さ又は短い。種子は多数、広楕円形、長さ約0.8mm、縦に約12本の隆条があり、パピラがあつ。花期は4~5月。
17-2 Chrysosplenium nagasei Wakab. et H.Ohba var. luteoflorum Wakab. et H.Ohba ヒメヒダボタン
岐阜県、福井県、滋賀県に分布する。ボタンネコノメソウの品種のキンシベボタンネコノメに似る。
花は直径2.7~3.5㎜の鐘形、基本種よりやや小さい。萼片は長さ1.4~1.6㎜、黄色~黄緑色。雄しべはは萼片より短い。葯は黄色
17-3 Chrysosplenium nagasei Wakab. et H.Ohba var. porphyranthes Wakab. et H.Ohba アカヒダボタン
岐阜県・滋賀県・三重県に分布する。典型的なボタンネコノメソウによく似る。
花は直径2.5-2.9㎜、鐘形、基本種より小型。萼片は長さ1.2~1.4㎜、赤褐色~暗紫色。雄しべはは萼片と同長又は短い。葯は暗赤色。
18 Chrysosplenium pilosum Maxim. ケネコノメソウ
朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は毛金腰 mao jin yao。別名はケネコノメ。
高さ14~16㎝。栄養枝は下部の茎葉の葉腋から生じ、密に褐色の毛があある。茎は褐色の直軟毛がある。茎葉は対生し、葉柄は長さ約3.5㎜、褐色の直軟毛がある。葉身は扇形、長さ約0.85㎝×幅約1.1㎝、両面と縁は無毛、又は褐色の直軟毛があり、基部はくさび形、縁は不明瞭な6個の波状の円鋸歯又は不明瞭な歯があり、先は類切形。集散花序は長さ約2㎝、枝は無毛、苞葉は長さ1~2mmの葉柄があり、直軟毛をもち、葉身は類扇形、長さ1~1.3㎝×幅8.5~11mm、両面と縁は無毛又は直軟毛があり、縁は不明瞭な3~5個の波状円鋸歯又は不明瞭な鈍い歯があり、先は鈍形~類切形。花柄は無毛。咢片は褐色の斑点があり、広卵形~広っ類楕円形、長さ1.8~2.2㎝×幅約2mm、先は鈍形。雄しべは8本、長さ約1mm。子房は半下位。花柱は長さ約1mm。花盤は無い。蒴果は長さ約5.5㎜。心皮は不等長。嘴は長さ約1mm。種子は暗褐色、広楕円形、長さ約1mm、約17本の溝があり、うねにパピラがある。花期と果期は4~6月。2n = 24。
18-1 Chrysosplenium pilosum Maxim. var. pilosum ケネコノメソウ
基準変種。
18-2 Chrysosplenium pilosum Maxim. var. sphaerospermum (Maxim.) H.Hara コガネネコノメソウ
synonym Chrysosplenium sphae synonym Crrospermum Maxim. var. fulvum (Terracc.) H.Hara
synonym Chrysosplenium sphaerospermum Maxim.
synonym Chrysosplenium pilosum Maxim. var. fulvum (Terracc.) H.Hara
日本(本州の関東地方以西、四国、九州)、朝鮮(済州島)原産。別名はコガネネコノメ,オオコガネネコノメソウ。
多年草。高さ5~10㎝。茎は暗紫色を帯び、白色の軟毛がまばらに生える。葉は長さ3~15㎜、幅3~17㎜の扇形~円形で、基部はくさび形~切形。縁には円い鋸歯がある。花は直径2~4㎜。下部の苞は暗紫色、上部の苞は鮮黄色。萼は黄色の壺形で、萼片は直立し、平開せず、開花時に四角形に見える。雄しべは8個、萼より短く、萼から突き出ない。葯は黄色。2n=24,25,48,49,72,73。花期は3~5月。
18-3 Chrysosplenium pilosum Maxim. var. valdepilosum Ohwi シラゲネコノメソウ
synonym Chrysosplenium barbatum Nakai
朝鮮、中国原産。中国名は柔毛金腰 rou mao jin yao。
19 Chrysosplenium sinicum Maximowicz, オオイワボタン 大岩牡丹
synonym Chrysosplenium pseudofauriei H.Lév.
synonym Chrysosplenium sinicum Maxim. var. pseudofauriei (H.Lév.) Kitag.
synonym Chrysosplenium chingii H.Hara
synonym Chrysosplenium lushanense W.T.Wang
synonym Chrysosplenium trachyspermum Maxim.
朝鮮、中国、モンゴル、ロシア原産。中国名は中华金腰 zhong hua jin yao
多年草、高さ(3~)10~20(~33)㎝。栄養枝はよく発達し、下部の葉腋に生じ、無毛。茎は無毛。葉は普通、対生。 葉柄は長さ6~10mm、ときに腋近くに褐色の直軟毛がある。葉身は円形~広卵形、長さ 6~10.5mm × 7.5~11.5mm、無毛、基部は広くさび形、縁は鈍い12~16個の歯があり、先は鈍形。集散花序は長さ2.2~3.8㎝、花が4~10個つき、枝は無毛、苞葉は葉柄をもち、葉柄は長さ1~7㎜、腋近くに褐色のパピラがある。葉身は卵形0.4~1.8㎝×幅9~10mm、無毛、基部は広くさび形~斜め、縁は鈍い5~16個の歯がある。花は黄菱色。花柄は無毛。咢片は直立し、±広卵形、長さ0.8~2.1mm×幅1~2.4mm、先は鈍形。雄しべは8本、長さ約0.4mm。花盤は無い。蒴果は長さ7~10㎜。心皮は散開し、明瞭に不等形。嘴は長さ0.3~1.2mm。種子は暗褐色、光沢があり、楕円形~広卵形、長さ0.6-0.9mm、パピラがある。花期と果期は4~8月。
19-1 Chrysosplenium pseudofauriei H.Lév. var. nipponense Wakab. ヒメオオイワボタン 姫大岩牡丹
四国(徳島県)に分布
根出葉は円形~広楕円形、縁には鈍鋸歯がある。茎葉は対生する。萼片は直立し、黄色。雄しべは8個、葯は黄色。
20 Chrysosplenium pseudopilosum Wakab. & Hid.Takah. トウノウネコノメ 東濃猫の目
日本固有種(本州の中部地方の岐阜、愛知県北部)。山地の谷沿いに生える。
多年草、高さ3~10㎝。長いストロンをもたない。花茎は高さ3~8㎝、茎は暗紫色を帯び、白色の長剛毛又はまばらに毛が生える。根生葉は長さ5~8(15)㎜×幅3~10(1)7㎜の扇形~円形、基部は楔形~切形、縁には円鋸歯がある。茎葉は1~2対が対生し、葉柄は長さ9~15㎜。葉身は長さ2~7mm×幅4~10mm、花は直径2~4(3.5~3.8)㎜。苞葉は緑色で幅2~6mm、扇形~倒卵状扇形、基部はくさび形、各側に1~3個の低い鈍鋸歯がある。萼は壷形、萼片は直立し、平開せず、萼の背軸側(外側)は無毛。雄しべは6~8個つき、雄しべが萼から突き出す。 葯は鮮黄色。蒴果の2花柱の角度は50~80度。種子は縦肋があり、肋上に棒状の小突起が列生する。花期は3~5月。
20-1 Chrysosplenium pseudopilosum Wakab. et Hir.Takah. var. pseudopilosum
基準変種。
20-2 Chrysosplenium pseudopilosum Wakab. et Hir.Takah. var. divaricatistylosum Wakab. et Hir.Takah. ヤマシロネコノメ 山城猫の目
近畿地方(京都)に分布。コガネネコノメソウに似ている。
基準変種との違いは、(1)花が直径約4.6mmと大きく(トウノウネコノメでは3.5~3.8㎜、(2)萼の背軸側(外側)に毛が散在(トウノウネコノメでは無毛),、(3)蒴果に宿存する2花柱の間の角度は約140~180度に展開する(トウノウネコノメでは50~80度)、(4)種子表面には半円形のいぼ状小突起が縦に列生して隆起した肋はほとんど目立たない(トウノウでは隆起した肋上に棒状の小突起が列生する)など。2n=25、29。
21 Chrysosplenium ramosum Maxim. マルバネコノメソウ 丸葉猫の目草
synonym Chrysosplenium ramosum Maxim. f. macrophyllum H.Hara
synonym Chrysosplenium ramosum Maxim. f. microphyllum (Tatew. et Sutô) H.Hara
日本(北海道、本州の近畿地方以北)、中国、ロシア原産。中国名は多枝金腰 duo zhi jin yao。別名はマルバネコノメ,クモノスネコノメ,オオマルバネコノメ。
多年草、高さ12.5~22㎝。栄養枝はよく発達し、褐色の直軟毛がある。茎は細く、褐色の直軟毛がある。茎葉は対生、葉柄は長さ約5mm、上面、縁、及び腋に褐色の直軟毛がある。歯ミは広卵形、約・長さ6㎜×幅6.5mm、上面に褐色の直軟毛があり、基部は円形、約12個の円鋸歯があり、歯には褐色の1本の縁毛がある。集散花序は長さ約3.6㎝、花が約14個つき、枝は無毛。苞葉は長さ0.7~2mmの柄があり、腋に褐色のパピラがあり、葉身は広卵形~広いほぼ円形、長さ4~6.7 mm×幅4~8mm、無毛、基部は広くさび形又は斜め~類切形、縁は不明瞭な4~8個の円鋸歯がある。花は直径約3.4mm。咢片は広がり、広楕円形、長さ0.9~1.3mm×幅1~1.3mm、切れ込みに褐色のパピラがあり、先は鈍形又は鋭形。雄しべは8本。花糸は長さ約0.5mm。子房は半下位。花柱は長さ約0.4mm。花盤は明瞭に8裂、、まばらに褐色のパピラに取り囲まれる。蒴果は類切形で先が微凹形。心皮は水平、ほぼ等長。嘴は長さ約0.4mm。種子は黒色、狭いほぼ卵形、長さ約1㎜、平滑、無毛。花期と果期は3~8月。 2n = 12, 24。
22 Chrysosplenium rhabdospermum Maxim. ツクシネコノメソウ 筑紫猫の目
synonym Chrysosplenium doianum Ohwi
日本固有種(九州)。別名はツクシネコノメ。
多年草、高さ4~10㎝。根出葉は多くは花時に枯れる。茎葉は普通1対、対生し、茎の下部からストロンを出す。葉は円腎形~円形、長さ3~10㎝、縁に5~7個円鋸歯があり、表面には長軟毛を散生する。花は枝先に集散花序となり、苞葉は緑色、萼裂片は4個、卵円形、先が円形、淡緑色で直立し、長さ1~1.2mmで萼萼筒とほぼ同長。雄しべは8本、葯は黄色。種子は表面の肋に低いこぶが並ぶ。花期は3~4月。2n=24。
22-1 Chrysosplenium rhabdospermum Maxim. var. shikokianum Wakab. トゲミツクシネコノメ
四国(愛媛県、高知県)に分布。 沢沿いの湿った場所に生える。
多年草。花期は3~4月。長いストロンをもつ。根出葉は花時には枯れる。花茎は高さ10㎝以下、花茎の基部から走出枝を出す。花時の萼片は淡緑色であること、葉の表面の毛が長さ1~1.5㎜であり、ツクシネコノメソウとほぼ一致するが、種子の表面の肋に短毛が密生し、ツクシネコノメソウと相違がある。
23 Chrysosplenium suzukaense Wakab., Hir.Takah. et S.Tomita スズカボタン 鈴鹿牡丹
日本固有種(本州の中部地方の岐阜県・三重県・滋賀県)。石灰岩地のやや湿った陰地に生える。
ホクリクネコノメ系(ホクリクネコノメ、ボタンネコノメソウ、 ヒダボタン)であるが、おしべが4本。 多年草、高さ3~9(15)㎝。根出葉は小さく、数対つき、ロゼットを形り、花期にあるが、花後に枯れ、葉柄は無又は短、葉身は円形~倒卵状楕円形、長さ10~32mm×幅10~30mm。花後に数本の花茎とストロンが葉腋から伸び、先端に2~3対の大きな葉からなるロゼットを形成する。ロゼット葉は葉柄が無又は短、葉身は円形~扇状円形、上面は緑色、葉脈に沿う白斑があり、下面は緑白色、縁に4~7対の内曲する鈍鋸歯があり、花後に葉は大きくなり、長さ10~16mm×幅10~17mm。花茎は花時に高さ3~9cm、果期に高さ6~15㎝になり、2~数個の葉を対生するが、しばしば下部の茎葉は花後には枯れる。茎葉は葉柄が長く、葉身は卵形~楕円形、長さ4~18mm×幅4~12mm、基部はくさび形、縁に4~7対の内曲する鈍鋸歯がある。苞葉は卵形~楕円形、縁に鋸歯があり、鮮黄色~緑黄色。花は直径1.8~2.5mm。萼片は4個、卵形又は三角形、花時に直立又は斜開し、先は鈍形、長さ1.2~1.3mm、茶灰色~灰色で微細な紫色の斑点がある。雄しべは4個、長さ1.7~2.6mm、萼片に対生し、突き出す。花糸は開花時の葯の長さの1.8~2.8倍。葯は暗赤色、長さは0.6~0.8mm。子房は下位~半下位。花柱は2個あり、細く、突き出る。果実は蒴果、2個の心皮はわずかに大きさが異なり、長く突き出し、斜上する。種子は楕円形、長さ0.6~0.8mm、約12本の隆条に小突起が並び、突起は半球形~円柱形で長さ9~38µm。2n=22。花期は3月下旬~4月上旬。
24 Chrysosplenium tosaense (Makino) Makino ex Sutô タチネコノメソウ 立猫の眼草
日本固有種(本州の関東以西、四国、九州)。山地の渓流沿いや湿った林内に生える。別名はトサネコノメ。
多年草。高さ5~10㎝。地下にストロンを伸ばし、基部は膨れ、先に葉を出して増殖する。根生葉は開花時にも残り、葉柄があり、葉身は長さ4~17mm×幅5~25mm、ほぼ円形、基部は心形~浅い心形、縁に5~9個の円鋸歯がある。花茎は高さ5~10㎝、0~2個の葉を互生し、ほぼ無毛、集散花序を頂生する。茎葉は根生葉より小さくほぼ円形で基部は浅い心形~切形。下側の苞葉は茎葉状、上側の苞は丸みがあり、卵形、縁に歯が3~5個の円鋸歯がある。花は直径約3mm、短い花柄がある。萼片は平開し、緑色、広卵形、先は鈍形、長さ1.5~2mm。花盤は黄緑色~淡緑色。雄しべは8本、花時に直立し、長さ約0.5mm、萼裂片より明らかに短い。葯は黄色。花柱はごく短く、花時には直立するが、果時には平開する。種子は卵形、長さ0.6~0.7mm、1稜があり平滑、微細なパsピラがある。2n=24。花期は4~5月。
Chrysosplenium
Chrysosplenium
本州中部産ネコノメソウ属の一新種および一新変種
Chrysosplenium
ヤマネコノメソウは匐枝を出さす、全体に毛が生え、茎葉は互生し、萼裂片が平開し、緑色。雄しべ8個。
ツルネコノメソウは地上に匐枝を出し、小形の扇形の葉を互生する。苞葉が黄色。萼裂片は平開し、雄しべ8個。
コガネネコノメソウは4個の萼裂片が直立し、壺形になり、黄色で目立ち、雄しべ8個、葯は萼から突き出ない。。
トウノウネコノメはコガネネコノメソウに似るが、雄しべが6~8個で長く、葯が萼から突き出る
ネコノメソウ属
family Saxifragaceae - genus Chrysosplenium多年草、小型、根茎や小球根があり、普通、ストロン(走出枝)をもち、機能的な葉があるか、葉がなくなり、機能的でない鱗片がつく。てい幹は無い。花茎は平伏、傾伏、斜上、又は直立し、葉が有又は無、長さ(1.2~)2~30㎝(しばしば C. wrightiiのように短く2㎝もある)、無毛又は疎~密に絨毛がある。葉は茎葉又はストロンにつき、互生又は対生、無毛又は絨毛のある葉柄があり、無托葉、単葉。葉身は卵形、扁卵形、扁楕円形、腎形、扇形、ときに円形に近く、不分裂、基部は漸尖形、くさび形、切形、又は心形、縁はほぼ全縁、円鋸歯、又は円鋸歯状歯状、歯はときに明瞭で、±裂片のように見え、葉先は鈍形、円形、又は切傾、表面は無毛又はまばらな絨毛~絨毛があり、脈は掌状。花序は単純又は複合の集散花序、ロゼットの頂芽から生じ、花が2~30個、ときに花が単生し、苞葉(bracteal leaves)に囲まれる。花は花托筒が子房の中間1/2~3/4又上部につき、子房から長さ0.5~1.5mmが分離し、帯緑色~黄緑色。咢片は4(又は5)個、蕾では覆瓦状、黄色、緑黄色、緑色、緑赤色、赤橙色、、又は紫色、ときに紫色の反転がある。花弁は無い。蜜腺の盤は目立つか又は無いように見え、又は明瞭に(4又は)8裂し、ときに褐色のパピラに取り囲まれる。雄しべは2~8本、普通、4又は8本。花糸は披針形、錐形、狭長円形。葯は2室、横方向に裂開する。葯は熟すと色が変化してくるため、裂開直前の葯の色を観察比較する。花粉粒は小さく、3類溝孔粒(3-colporoidate)、細かい網目がある。心皮は2個、普通、下部で合着する。子房は上位、半下位、又は亜下位、1室。胎座は2個、側膜胎座 。胚珠は多数。花柱は2本、分離。果実は蒴果、2個の心皮子房は1/2~3/4下位、1室。心皮は小型、その長さの3/4~4/5が合着する。側膜胎座 。花柱は2個。柱頭は2個。蒴果は裂開後に杯形、2嘴があり、散開する。種子は多数、暗褐色又は赤褐色、楕円形、卵形、又は球形、平滑、パピラがあり、いぼ状突起があり、柔毛があり、溝があるか又は他がある。英名はGolden saxifrage。x=11。
世界に約65種があり、アフリカ、アメリカ、アジア、ヨーロッパに分布する。
ネコノメソウ属の主な種と園芸品種
1 Chrysosplenium album Maxim. シロバナネコノメソウ 白花猫の目草 [広義]1-1 Chrysosplenium album Maxim. var. album シロバナネコノメソウ
日本固有種(本州の近畿地方~中国地方、四国、九州)。林内の谷沿いの湿った場所に生える。
高さ5~10㎝、全体に白軟毛が多い。走出枝は地上性で、花後に伸長し、白色の軟毛が密生する。根出葉は花時には枯れる。葉は対生し、1~2対つき、葉柄は長さ0.3~3cm。葉身は長さ2~10mm×幅3~16㎜、扇状円形~円状腎形、基部は鈍形又はくさび形、縁は上半部に円鋸歯があり、歯は5~9個。花茎は普通、高さ5~10cm、帯暗紫色、白色の軟毛がある。花柄は長さ1~4㎜。花は直径3~5mm。萼裂片は4個、花時に直立し、長さ3~5mm、狭長卵形、先は鋭形、花時に白色で、花後に淡緑色に変わる。花弁は無い。雄しべは8本、萼片と同長さ又はやや長く、花時に直立する。葯は暗紅色、後に黒紫色になる。子房は上位。花柱は2個、長さ1.5~2mm。果実は朔果、斜上し、2個の嘴はほぼ同長、萼片から突期出す。種子は卵形、長さ0.6-0.7㎜、縦に10数本の縦条があり、パピラが密にある。
1-2 Chrysosplenium album Maxim. var. flavum H.Hara キバナハナネコノメ 黄花花猫の目
本州の東海地方(岐阜県、静岡県、愛知県)に分布する。愛知県準絶滅危惧種(NT)。深山の渓流沿いや滝付近などの湿った場所に生える。萼裂片が鮮やかな黄色になる
走出枝は花後に伸び、パッチ状に群生することがある。葉は対生し、葉柄は長さ2~7mm。葉身は扇形、長さ1~8mm×幅2~9mm、縁は深い円鋸歯縁、歯は2~4個、下面は暗紫色を帯びる。花茎は直立、高さ2~7㎝。花は1~6個、やや密につく。萼片は鮮やかな黄色、広卵形~円形、先は鈍形~円形、かなり平開し、ハナネコノメの咢片の長さよりやや短い。雄しべは8本、長く突き出る。花期は3~4月。
1-3 Chrysosplenium album Maxim. var. nachiense H.Hara キイハナネコノメ 紀伊花猫の目
紀伊半島南部(三重県~和歌山県)に分布する。コガネネコノメソウに似る。
基準変種やハナネコノメより萼片が短く、長さ2~3㎜。雄しべはと花柱は安定して短く、突き出ない。萼片は白色。葯は紫色。花期は2月上旬~3月中旬。2n=24。
1-4 Chrysosplenium album Maxim. var. stamineum (Franch.) H.Hara ハナネコノメ 花猫の目
本州の福島県~京都府に分布。花が白色。基準変種種に比べて毛が少なく、ストロンが暗紅色を帯びる。2n=24。
1-5 Chrysosplenium album Maxim. var. totukawaense J.Oda et Nagam. トツカワハナネコノメ 十津川花猫の目
本州の三重県、奈良県、和歌山県に分布しする。低山帯の、小さな滝の崖地に生える。雄しべや花柱が萼片を超出し、花粉の色や花期にわずかながら相違が見られる。
茎は直立し、高さ5~20㎝、太さ0.8~1.2㎜、軟らかい円柱形、緑色~紫褐色、軟毛とともに白色の長毛がまばらにある。根出葉は葉柄があり、しばしば花時まで残り、は柄は長さ10~40mm、長毛がある。葉身は長さ7~10mm×幅8~12mm、扇形~扁円形、縁に各1~2個の円鋸歯があり、基部はやや切形、葉柄に沿下し、長毛がまばらにある。茎葉は無柄又は有柄、葉身は長さ3~10mm×幅4~12mm、縁に各1~2個の円鋸歯がある。萼片は白色、長さ2.0~2.6mm×幅1.5~2.9mm、先は円形、上半部は反曲する。雄しべは8本、花糸は長さ2.6~3.2mm、裂片から0.3~1.0㎜、突き出る。葯は暗赤褐色。花粉粒は白黄色~黄色。花柱は長さ1.6~2.2mm、突き出る。蒴果は斜上し、萼片から突き出る。種子は卵状球形、長さ0.6~0.7mm、褐色、10~12本の隆条に低いパピラがつく。花期は2月下旬から3月下旬。
2 Chrysosplenium alternifolium L.
ヨーロッパ、シベリア原産。英名はalternate-leaved golden-saxifrage。
2-1 Chrysosplenium alternifolium L. var. sibiricum Ser. エゾネコノメソウ 蝦夷猫の目草
synonym Chrysosplenium alternifolium auct. non L.
synonym Chrysosplenium sibiricum (Ser.) Kharkev.
synonym Chrysosplenium serreanum Hand.-Mazz. [Flora of China]
北海道に分布。別名はカラフトネコノメソウ、 オクヤマネコノメソウ。英名はalternate-leaved golden saxifrage。中国名は五台金腰 wu tai jin yao. 湿原や林下の水湿地に生える。 2n=24。
3 Chrysosplenium aureobracteatum Y.I.Kim et Y.D.Kim
韓国原産。 C. valdepilosumに似ているが、苞葉が黄緑色。栄養葉に光沢のある銀色の斑点があり、種皮のいぼ状突起が大きい。2018年に記載された。
4 Chrysosplenium delavayi Franch. アオネコノメ 青猫の目
中国、台湾、ミャンマー原産。中国名は肾萼金腰 shen e jin yao
5 Chrysosplenium echinus Maxim. イワネコノメソウ 岩猫の目草
日本固有種(本州の福島県南部。関東地方・東海地方、四国、九州)。林内の沢沿いの陰湿地に生える。別名はトゲミネコノメソウ、ホソバミズネコノメソウ。
高さ3~12㎝、全体にほぼ無毛。根出葉は花時には枯れてない。ストロンは花茎の基部から花後に出て、地上性、先端は明瞭なロゼットにならない。ストロンには葉柄がある葉が4~5対、間隔をおいてつき、葉柄は長さ4~12㎜。葉身は花茎の葉より大きく、先端ほど大きく、長さ2~18mm、円形~円腎形、縁には3-10個の鋸歯があり、先は内曲し、やや鋭い。茎葉は葉柄があり、1~2対が対生する。葉身は長さ2~8mm×幅3~10mm、扇形~円腎形、基部は切形~広くさび形、縁は上部に3~5個の内曲する明瞭な鋸歯がある。花茎は高さ3~12cm。花序を取り囲む苞葉は緑色、卵形、左右相称、上縁に1~2対の鋸歯がある。花は直径3~5mm。萼片は4個、平開し、長さ1~1.5mm位、三角形~卵形、先は鈍形~鋭形、緑色、ときに部分的に暗赤紫色を帯びる。花盤があり、淡緑色。花弁は無い。雄しべは8本、長さ約0.5mm、直立する。葯は橙赤色。子房は下位。花柱は2個あり短い。果実は朔果、朔果の嘴は斜開する。種子は18~20個入り、卵形、長さ0.8~1mm、縦に10数本の隆条があり、微細な棍棒状突起が密にある。花期は4~5月。
6 Chrysosplenium fauriei Franch. ホクリクネコノメ 北陸猫の目
synonym Chrysosplenium fauriei f. ferruginiflorum Wakab. & H.Ohba
日本固有種(本州の山形県南、福島県、新潟県~島根県の日本海沿岸部)。山地の谷沿いなどの陰湿地に生える。別名はエチゴネコメ。
高さ5~19㎝、葉腋に毛をがある以外は無毛。ストロンは花後に長く伸び、先にロゼットを作り、ロゼット葉は2~3対の大きな葉からなり、葉は無柄又は短柄、葉身は広楕円形~扇状円形、長さ1~6㎝×幅1~4.5㎝、縁には5~10対の内曲した低い鋸歯があり、上面は緑色、下面は白緑色。根出葉は花時にあり無柄又はごく短い葉柄がある、葉身は円形~広楕円形、長さ1.5~5㎝×幅1~3㎝。花茎は直立し、高さは5~19㎝、普通、1対の茎葉がつく。茎葉は短い葉柄があり、葉身は葉柄を含めて長さ2~3.5㎝、円形~卵形~楕円形、縁に6~10対の歯の内曲する鈍鋸歯があり、基部は切形。集散花序は小型。花序を取り囲む苞葉は下側の苞葉は茎葉状、上側の苞葉は広楕円形、縁に鈍鋸歯があり、鮮やかな黄色。花は直径2.8~3.5mm、鐘形。萼片は4個、直立し、長さ1.1~1.5mm、円形、先はやや切形又は鈍形、浅緑色~薄緑色。雄しべは本、萼片から突き出し、長さ2.3~.7mm。花糸は花時の葯の長さの2.5-3.4倍。葯は暗紅色、長さ0.6~0.8㎜、後に黒紫色になる。花柱は2個、細く先細で、萼裂片から長く突き出る。子房は中位。果実は朔果。種子は多数あり、広楕円形、長さ0.8~0.9㎜、10数本の縦の隆条があり、棍棒状突起が密にある。花期は4~5月。
6-1 Chrysosplenium fauriei Franch. f. ferruginiflorum Wakab. et H.Ohba サンインネコノメ 山陰猫の目
本州(島根~京都)に分布。
萼片は直立し淡橙色~淡茶褐色。葯は暗赤褐色。
7 Chrysosplenium flagelliferum F.Schmidt ツルネコノメソウ 蔓猫の目草
日本(北海道、本州の近畿地方以北、四国)、朝鮮、中国、モンゴル、ロシア原産。中国名は蔓金腰 man jin yao。別名はヒメネコノメソウ。愛知県絶滅危惧Ⅱ類(VU)。
多年草。高さ(3)5~15㎝、和名の由来は花後に走出枝を出すことから。走出枝の葉は互生し、長さ0.6~1㎝、幅1~1.9㎝の亜腎形、円鋸歯が5~8個ある。茎は無毛。茎葉は互生し、3~4個つき、長さ 4~8㎜、幅5~10 ㎜のほぼ円形、円鋸歯が5個ほどあり、葉柄は長さ6~10㎜。根生葉は花時に枯れることが多く、長さ1.2~3.8㎝、幅1.5~5.3㎝の円形で、円鋸歯が12~18個あり、葉柄は長さ5~8㎝。苞葉は長さ2~7㎜、幅1.8~8.3㎜の広卵形~広惰円形、基部は広い楔形。萼片は4個、長さ1.9~2㎜、幅1~2㎜、 黄色で、平開する。花の直径は2~4㎜。雄しべ8個。果実は長さ約3㎜。種子は長さ0.7~0.8㎜、黒褐色。2n=24。花期は4~5月。
8 Chrysosplenium grayanum Maxim. ネコノメソウ 猫の目草
北海道、本州、朝鮮、ロシア原産。別名は別名はミズネコノメソウ。
多年草。高さ5~20㎝葉腋を除き、毛はなく、全体にみずみずしい。匐枝を長く伸ばし、茎は下部で這い、先が立ち上がる。葉は対生し、長さ0.5~2㎝の卵円形、縁は鈍鋸歯。苞は葉と同形、基部が黄色になるものもある。花の直径は約2㎜。萼裂片は直立し、淡黄色。雄しべ4個、萼裂片より短い。種子は1個の稜があり、微細な乳頭状突起がある。2n=22。花期は4~5月。
9 Chrysosplenium hebetanum Ohwi ダイブネコノメ 大武猫の目
台湾原産。中国名は大武金腰 da wu jin yao。別名はコネコノメ
10 Chrysosplenium japonicum (Maxim.) Makino ヤマネコノメソウ 山猫の目草
日本(本州、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国、台湾原産。中国名は日本金腰 ri ben jin yao。湿った林内に生える。
中国には珠芽(むかご)ができない亜種があり、ヤマネコノメソウを基準亜種としている。
全体に毛がある。茎葉は互生し、長柄があり、長さ1~3㎝㎝、腎円形、縁に平らなの鋸歯がある。根生葉は7~11個の鋸歯があり、基部が心形。花茎は直立し、上部で分枝し、枝先に黄緑色の花をかまってつける。花は花弁がなく、萼は4裂し、萼裂片は 長さ0.6~1.4㎜、幅1~1.4㎜の半円形、緑色、基部は少し黄色になり、平開する。雄しべ8個。果実は長さ4~5㎜、熟すと、上向きに裂開する。種子は長さ0.6~0.7㎜の惰円形、微細な乳頭状突起がある。花後に、毛のある楕円形の珠芽(むかご)を茎の基部につける。2n=24。花期は3~4月。
10-1 Chrysosplenium japonicum (Maxim.) Makino var. tetrandrum (H.Hara) Y.N.Lee ヨツシベヤマネコノメ
synonym Chrysosplenium japonicum (Maxim.) Makino f. tetrandrum H.Hara
11 Chrysosplenium kamtschaticum Fisch. ex Ser. チシマネコノメソウ 千島猫の目草
日本(北海道、本州の近畿地方以北)、カムチャッカ半島、千島列島、サハリン原案。別名はミチノクネコノメ。愛知県絶滅危惧Ⅱ類(VU)。イワネコノメソウ に似るが、走出枝の先端につく葉はロゼットをつくり、葉の鋸歯が低い鈍鋸歯。
小型の多年生草本。茎は高さ 5~10㎝、基部から地上性の走出枝を出す。走出枝は花後伸長して長さ 10~20㎝、1~2 回分枝し、先端にロゼット状の小株をつける。根出葉は花時に残り,短柄があり、葉身は長さ 5~10㎜×幅6~15㎜、基部は広いくさび形で葉柄に続き、縁は上半部に低い鈍鋸歯がある。茎葉は鋸歯が無かあっても1 対である。花序は 2~3回分枝する。花は直径3~4㎜、黄緑色、雄しべは8本、長さ約0.8mm、花時に直立する。葯は鮮黄色又は汚紅色。子房は下位。花柱は2本、長さ約0.5㎜。果実は朔果、で2個の心皮は大きさが異なり、朔果の嘴は斜開する。花期は4月。
11-1 Chrysosplenium kamtschaticum Fisch. ex Ser. f. tobishimense Wakab. トビシマネコノメソウ
11-2 Chrysosplenium kamtschaticum Fisch. ex Ser. var. aomorense (Franch.) H.Hara ミチノクネコノメソウ
本州の深山の沢沿いの林内に生える。
葉と苞にある鋸歯が目立つ。走出枝の先端にロゼットをつけ、途中に1対の葉をつけ、その葉腋から枝を出す。葯は橙赤色~淡橙黄色。
12 Chrysosplenium kiotoense Ohwi ボタンネコノメソウ 牡丹猫の目草
synonym Chrysosplenium fauriei Franch. var. kiotoense (Ohwi) Ohwi
日本有種(本州の長野県西部~島根県)。別名はボタンネコノメ。
高さは5~20cm、葉腋の褐色の毛を除いて無毛。根出葉は花時にあり、無柄か又は短柄がある。葉身は卵円形、長さ1.5~4.5㎝×幅1~3㎝。茎の基部にほとんど花茎をつけない枝がよく発生して伸び、2~3対の大きな葉からなるロゼットを形成する。ロゼットの葉は短柄があるかまたは無柄、葉身は円みのある広楕円形~扇状円形、長さ1~3cm×幅1~2.5cm、縁には5~10対の内曲した低鋸歯があり、上面は緑色、脈に沿って白班があり、下面は白緑色。花茎は直立し、高さ5~20㎝、普通、1対の小さな茎葉がある。集散花序は小型。苞葉は卵形~楕円形、縁は鈍鋸歯縁、鮮黄色。花は直径2.4~3.2㎜、広鐘形。萼片は4個で花時に直立し、長さ1.0~1.3㎜、円形~扁円形、先は切形~凹形、赤褐色又は暗紫色。花弁は無い。雄しべは8本、萼裂よりかなり短く、長さ0.9~1.0mm。花糸は花時の葯とほぼ同長さ。葯は暗紅紫色、長さ0.5~0.6㎜。花柱は2個、短くて萼片から突き出ず、円柱形。果実は朔果、宿存性の花糸は萼裂片の長さの約1/2又はそれ以下。種子は多数あり、広楕円形、長さ約0.8㎜、約12本の縦の隆状ががあり、丸い小突起がある。花期は4~5月。
12-1 Chrysosplenium kiotoense Ohwi f. xanthandrum (Araki) Wakab. et H.Ohba キンシベボタンネコノメ
萼片が緑色~黄緑色、葯は黄色。
13 Chrysosplenium lanuginosum Hook.
中国、台湾、ブータン、インド、ミャンマー、ネパール、シッキム原産。中国名は绵毛金腰 mian mao jin yao
13-1 Chrysosplenium lanuginosum Hook.f. et Thomson var. formosanum (Hayata) H.Hara タイワンネコノメ
synonym Chrysosplenium formosanum Hayata,
台湾原産。中国名は台湾金腰 tai wan jin yao
14 Chrysosplenium lectus-cochleae Kitag. ヒカゲネコノメソウ
synonym Chrysosplenium pilosum Maxim. var. amabile (Kitag.) Kitag. マンシュウネコノメソウ
synonym Chrysosplenium amabile Kitagawa
中国原産。中国名は 林金腰 lin jin yao
15 Chrysosplenium macrostemon Maxim. イワボタン 岩牡丹
日本固有種((本州の関東地方以西の太平洋側、四国、九州)。別名はミヤマネコノメソウ。
ボタンネコノメソウに似る。
高さ10~20㎝。走出枝は地上性、花後に伸び、先端近くには基部のものより大型の葉を数対ロゼット状につける。葉が細長く、根出葉は明確な葉柄があり、花時まで残り、広卵形~狭卵形。花茎はふつう高さ10~20cmになり、暗紅色をおび、葉腋を除き毛はない。茎葉は1-2対が対生し、葉身は長さ0.5~5cmになる卵円形から卵状楕円形で、基部はくさび形になり、上縁には4-9個の内曲する鋸歯がある。葉柄は長く、長さ2.5cm以下、普通、葉の上面には灰白色の斑紋がある。花茎は10~20㎝。花序を取り囲む苞葉は、下側の苞葉は暗緑色~濃緑色、楕円形~楕円状披針形。上側の苞は鮮黄色~緑黄色、卵形。花は直径3~4.5mm。萼片は4個、花時に斜開又は直立し、長さ1~1.8㎜、楕円形~三角状卵形、淡緑色~黄緑色。花盤の蜜腺は緑白色。花弁は無い。雄しべは普通、8本、まれに4本、長さ2~3mm、萼片より長く、花時に斜上するか又は直立する。葯は普通、黄色、まれに帯赤褐色、花粉は黄色。子房は中位。花柱は2個、長さ1.5~2㎜、花時に直立する。果実は朔果、嘴は散開。種子は楕円形~卵形、長さ約0.8~1㎜、縦に10数本の隆条があり、棍棒状の突起が密にある。花期は3~4月。
15-1 Chrysosplenium macrostemon Maxim. var. atrandrum H.Hara ヨゴレネコノメ 汚れ猫の目
上側の苞葉は淡黄色~淡黄緑色。基準変種に似るが、萼片は暗褐紫色~淡緑色で花時にほぼ直立する。雄しべは4~-8本、葯は暗紅色。花糸、花盤、花柱、子房も紅紫色を帯びる。花期は4月。
15-2 Chrysosplenium macrostemon Maxim. var. calicitrapa (Franch.) H.Hara キシュウネコノメ 紀州猫の目
紀伊半島に分布する。イワボタンと区別しない見解がある。
基準変種に似るが、葯は暗紅色を帯びる。種子の隆条の上の突起はが細長い。
15-3 Chrysosplenium macrostemon Maxim. var. macrostemon イワボタン
基準変種。別名はミヤマネコノメソウ。
15-4 Chrysosplenium macrostemon Maxim. var. shiobarense (Franch.) H.Hara ニッコウネコノメ 日光猫の目
本州の東北地方から中部地方の太平洋側に分布する、山地の谷沿いの湿った場所に生える。別名はニッコウネコノメソウ。
花茎は高さ4~18㎝。花時には普通、根出葉はない。花後に長さ30cmになる走出枝を出す。茎葉は対生し、葉身は卵形、長さ1~2.5cm。基準変種やヨゴレネコノメに似るが、萼片は黄白色、花時にほぼ平開する。雄しべは普通、8本、まれに4本、葯は暗紅紫色を。花期は4~5月。
15-5 Chrysosplenium macrostemon Maxim. var. viridescens (Sutô) H.Hara サツマネコノメ 薩摩猫の目
synonym Chrysosplenium viridescens (Sutô) Sutô ex H.Hara
九州、四国に分布する。
全体が緑色。花茎は横に這い、先端が傾上して立ち上がり、花序をつける。萼片は花時に直立する。葯は黄色。
16 Chrysosplenium maximowiczii Franch. et Sav. ムカゴネコノメソウ 珠芽猫の目草
日本固有種(本州の宮城県南部~関東地方、東海地方)。別名はタマネコノメ、ムカゴネコノメ。谷沿いの林内に生える。
高さ3~15㎝。茎にわずかの毛がある他は全体に無毛。走出枝を出し、先端に1個のむかご(珠芽)をつける。珠芽は紡錘形、長さ約1㎝、帯赤色、暗紫褐色の細点があり、毛が密生する。走出枝は地上性と地中性の両方があり、地上性の走出枝には普通、葉があり、地中性の走出枝には鱗片がある。花茎は前年の地中にできたむかごから生じ、高さ3~15cm、白毛がまばらに生え、緑白色、基部は赤紫色を帯びる。茎葉は2~3対つき、対生又は互生し、葉柄は長さ2~15mm。葉身は卵円形~広倒卵円形、長さ4~18mm×幅4~18mm、縁には歯が3~7個の内曲した鈍鋸歯があり、両面とも無毛、基部はくさび形。花序は少数の花がまばらにつく。苞葉は茎葉とほぼ同形。花柄がある。萼片は4個、花時に直立し、長さ約1.5mm、広卵形~卵円形、緑色~淡緑色ま~淡黄緑色。花弁は無い。雄しべは8本、長さ0.8~1mm、花時に内側に傾く。葯は緑白色~黄白色。花盤蜜腺はは発達しない。子房は中位。花柱は2個あり、ごく短く、直立する。果実は朔果、嘴は直立し、萼片から突き出る。種子は多数、卵状円形、長さ約0.6mm、縦に10数本の隆条があり、硬いパピラがある。花期は3~4月。
17 Chrysosplenium nagasei Wakab. et H.Ohba ヒダボタン 広義
17-1 Chrysosplenium nagasei Wakab. et H.Ohba var. nagasei ヒダボタン 飛騨牡丹
日本固有種(本州中部のの岐阜県・福井県・長野県、本州西部の兵庫県・鳥取県・島根県・山口県に点在)。山地の谷沿いなどの陰湿地に生える。
高さ5~13㎝。葉腋に褐色の毛がある他は無毛。根出葉は花時にあり、ほぼ無柄又は短柄がある。葉身は卵状円形、長さ1.5~4.5㎝×幅1~3㎝。花茎をつけないシュートが出て、長く伸び、2-3対の大きな葉のロゼットを作る。ロゼット葉はほぼ無柄又は短柄があり、葉身は広楕円形~扇状円形、長さ1~3㎝×幅1~3㎝、縁には5~10対の歯の内曲する低鋸歯があり、上面は緑色、下面は白緑色。花茎は直立し、高さ5~13㎝、帯暗紅紫色、普通羽、1対の小さな歯がつく。集散花序は小型。苞葉は卵形~楕円形、縁は鈍鋸歯縁、鮮やかな黄色。花は大きく、直径3.7~4.6㎜、広鐘形。萼片は4個、花時に直立し、長さ1.4~1.7mm、円形~扁円形、先は切形~凹形、黄色~緑黄色。花弁は無い。雄しべは8本、萼片と同長又は短く、長さ1.5~1.7mm。花糸は花時の葯の長さの1.5~2.2倍。葯は赤色、長さ0.6~0.8㎜。花柱は2個、細く、先細、萼片から突き出ない。果実は朔果、斜開し、宿存性の花糸は、萼裂片と同長さ又は短い。種子は多数、広楕円形、長さ約0.8mm、縦に約12本の隆条があり、パピラがあつ。花期は4~5月。
17-2 Chrysosplenium nagasei Wakab. et H.Ohba var. luteoflorum Wakab. et H.Ohba ヒメヒダボタン
岐阜県、福井県、滋賀県に分布する。ボタンネコノメソウの品種のキンシベボタンネコノメに似る。
花は直径2.7~3.5㎜の鐘形、基本種よりやや小さい。萼片は長さ1.4~1.6㎜、黄色~黄緑色。雄しべはは萼片より短い。葯は黄色
17-3 Chrysosplenium nagasei Wakab. et H.Ohba var. porphyranthes Wakab. et H.Ohba アカヒダボタン
岐阜県・滋賀県・三重県に分布する。典型的なボタンネコノメソウによく似る。
花は直径2.5-2.9㎜、鐘形、基本種より小型。萼片は長さ1.2~1.4㎜、赤褐色~暗紫色。雄しべはは萼片と同長又は短い。葯は暗赤色。
18 Chrysosplenium pilosum Maxim. ケネコノメソウ
朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は毛金腰 mao jin yao。別名はケネコノメ。
高さ14~16㎝。栄養枝は下部の茎葉の葉腋から生じ、密に褐色の毛があある。茎は褐色の直軟毛がある。茎葉は対生し、葉柄は長さ約3.5㎜、褐色の直軟毛がある。葉身は扇形、長さ約0.85㎝×幅約1.1㎝、両面と縁は無毛、又は褐色の直軟毛があり、基部はくさび形、縁は不明瞭な6個の波状の円鋸歯又は不明瞭な歯があり、先は類切形。集散花序は長さ約2㎝、枝は無毛、苞葉は長さ1~2mmの葉柄があり、直軟毛をもち、葉身は類扇形、長さ1~1.3㎝×幅8.5~11mm、両面と縁は無毛又は直軟毛があり、縁は不明瞭な3~5個の波状円鋸歯又は不明瞭な鈍い歯があり、先は鈍形~類切形。花柄は無毛。咢片は褐色の斑点があり、広卵形~広っ類楕円形、長さ1.8~2.2㎝×幅約2mm、先は鈍形。雄しべは8本、長さ約1mm。子房は半下位。花柱は長さ約1mm。花盤は無い。蒴果は長さ約5.5㎜。心皮は不等長。嘴は長さ約1mm。種子は暗褐色、広楕円形、長さ約1mm、約17本の溝があり、うねにパピラがある。花期と果期は4~6月。2n = 24。
18-1 Chrysosplenium pilosum Maxim. var. pilosum ケネコノメソウ
基準変種。
18-2 Chrysosplenium pilosum Maxim. var. sphaerospermum (Maxim.) H.Hara コガネネコノメソウ
synonym Chrysosplenium sphae synonym Crrospermum Maxim. var. fulvum (Terracc.) H.Hara
synonym Chrysosplenium sphaerospermum Maxim.
synonym Chrysosplenium pilosum Maxim. var. fulvum (Terracc.) H.Hara
日本(本州の関東地方以西、四国、九州)、朝鮮(済州島)原産。別名はコガネネコノメ,オオコガネネコノメソウ。
多年草。高さ5~10㎝。茎は暗紫色を帯び、白色の軟毛がまばらに生える。葉は長さ3~15㎜、幅3~17㎜の扇形~円形で、基部はくさび形~切形。縁には円い鋸歯がある。花は直径2~4㎜。下部の苞は暗紫色、上部の苞は鮮黄色。萼は黄色の壺形で、萼片は直立し、平開せず、開花時に四角形に見える。雄しべは8個、萼より短く、萼から突き出ない。葯は黄色。2n=24,25,48,49,72,73。花期は3~5月。
18-3 Chrysosplenium pilosum Maxim. var. valdepilosum Ohwi シラゲネコノメソウ
synonym Chrysosplenium barbatum Nakai
朝鮮、中国原産。中国名は柔毛金腰 rou mao jin yao。
19 Chrysosplenium sinicum Maximowicz, オオイワボタン 大岩牡丹
synonym Chrysosplenium pseudofauriei H.Lév.
synonym Chrysosplenium sinicum Maxim. var. pseudofauriei (H.Lév.) Kitag.
synonym Chrysosplenium chingii H.Hara
synonym Chrysosplenium lushanense W.T.Wang
synonym Chrysosplenium trachyspermum Maxim.
朝鮮、中国、モンゴル、ロシア原産。中国名は中华金腰 zhong hua jin yao
多年草、高さ(3~)10~20(~33)㎝。栄養枝はよく発達し、下部の葉腋に生じ、無毛。茎は無毛。葉は普通、対生。 葉柄は長さ6~10mm、ときに腋近くに褐色の直軟毛がある。葉身は円形~広卵形、長さ 6~10.5mm × 7.5~11.5mm、無毛、基部は広くさび形、縁は鈍い12~16個の歯があり、先は鈍形。集散花序は長さ2.2~3.8㎝、花が4~10個つき、枝は無毛、苞葉は葉柄をもち、葉柄は長さ1~7㎜、腋近くに褐色のパピラがある。葉身は卵形0.4~1.8㎝×幅9~10mm、無毛、基部は広くさび形~斜め、縁は鈍い5~16個の歯がある。花は黄菱色。花柄は無毛。咢片は直立し、±広卵形、長さ0.8~2.1mm×幅1~2.4mm、先は鈍形。雄しべは8本、長さ約0.4mm。花盤は無い。蒴果は長さ7~10㎜。心皮は散開し、明瞭に不等形。嘴は長さ0.3~1.2mm。種子は暗褐色、光沢があり、楕円形~広卵形、長さ0.6-0.9mm、パピラがある。花期と果期は4~8月。
19-1 Chrysosplenium pseudofauriei H.Lév. var. nipponense Wakab. ヒメオオイワボタン 姫大岩牡丹
四国(徳島県)に分布
根出葉は円形~広楕円形、縁には鈍鋸歯がある。茎葉は対生する。萼片は直立し、黄色。雄しべは8個、葯は黄色。
20 Chrysosplenium pseudopilosum Wakab. & Hid.Takah. トウノウネコノメ 東濃猫の目
日本固有種(本州の中部地方の岐阜、愛知県北部)。山地の谷沿いに生える。
多年草、高さ3~10㎝。長いストロンをもたない。花茎は高さ3~8㎝、茎は暗紫色を帯び、白色の長剛毛又はまばらに毛が生える。根生葉は長さ5~8(15)㎜×幅3~10(1)7㎜の扇形~円形、基部は楔形~切形、縁には円鋸歯がある。茎葉は1~2対が対生し、葉柄は長さ9~15㎜。葉身は長さ2~7mm×幅4~10mm、花は直径2~4(3.5~3.8)㎜。苞葉は緑色で幅2~6mm、扇形~倒卵状扇形、基部はくさび形、各側に1~3個の低い鈍鋸歯がある。萼は壷形、萼片は直立し、平開せず、萼の背軸側(外側)は無毛。雄しべは6~8個つき、雄しべが萼から突き出す。 葯は鮮黄色。蒴果の2花柱の角度は50~80度。種子は縦肋があり、肋上に棒状の小突起が列生する。花期は3~5月。
20-1 Chrysosplenium pseudopilosum Wakab. et Hir.Takah. var. pseudopilosum
基準変種。
20-2 Chrysosplenium pseudopilosum Wakab. et Hir.Takah. var. divaricatistylosum Wakab. et Hir.Takah. ヤマシロネコノメ 山城猫の目
近畿地方(京都)に分布。コガネネコノメソウに似ている。
基準変種との違いは、(1)花が直径約4.6mmと大きく(トウノウネコノメでは3.5~3.8㎜、(2)萼の背軸側(外側)に毛が散在(トウノウネコノメでは無毛),、(3)蒴果に宿存する2花柱の間の角度は約140~180度に展開する(トウノウネコノメでは50~80度)、(4)種子表面には半円形のいぼ状小突起が縦に列生して隆起した肋はほとんど目立たない(トウノウでは隆起した肋上に棒状の小突起が列生する)など。2n=25、29。
21 Chrysosplenium ramosum Maxim. マルバネコノメソウ 丸葉猫の目草
synonym Chrysosplenium ramosum Maxim. f. macrophyllum H.Hara
synonym Chrysosplenium ramosum Maxim. f. microphyllum (Tatew. et Sutô) H.Hara
日本(北海道、本州の近畿地方以北)、中国、ロシア原産。中国名は多枝金腰 duo zhi jin yao。別名はマルバネコノメ,クモノスネコノメ,オオマルバネコノメ。
多年草、高さ12.5~22㎝。栄養枝はよく発達し、褐色の直軟毛がある。茎は細く、褐色の直軟毛がある。茎葉は対生、葉柄は長さ約5mm、上面、縁、及び腋に褐色の直軟毛がある。歯ミは広卵形、約・長さ6㎜×幅6.5mm、上面に褐色の直軟毛があり、基部は円形、約12個の円鋸歯があり、歯には褐色の1本の縁毛がある。集散花序は長さ約3.6㎝、花が約14個つき、枝は無毛。苞葉は長さ0.7~2mmの柄があり、腋に褐色のパピラがあり、葉身は広卵形~広いほぼ円形、長さ4~6.7 mm×幅4~8mm、無毛、基部は広くさび形又は斜め~類切形、縁は不明瞭な4~8個の円鋸歯がある。花は直径約3.4mm。咢片は広がり、広楕円形、長さ0.9~1.3mm×幅1~1.3mm、切れ込みに褐色のパピラがあり、先は鈍形又は鋭形。雄しべは8本。花糸は長さ約0.5mm。子房は半下位。花柱は長さ約0.4mm。花盤は明瞭に8裂、、まばらに褐色のパピラに取り囲まれる。蒴果は類切形で先が微凹形。心皮は水平、ほぼ等長。嘴は長さ約0.4mm。種子は黒色、狭いほぼ卵形、長さ約1㎜、平滑、無毛。花期と果期は3~8月。 2n = 12, 24。
22 Chrysosplenium rhabdospermum Maxim. ツクシネコノメソウ 筑紫猫の目
synonym Chrysosplenium doianum Ohwi
日本固有種(九州)。別名はツクシネコノメ。
多年草、高さ4~10㎝。根出葉は多くは花時に枯れる。茎葉は普通1対、対生し、茎の下部からストロンを出す。葉は円腎形~円形、長さ3~10㎝、縁に5~7個円鋸歯があり、表面には長軟毛を散生する。花は枝先に集散花序となり、苞葉は緑色、萼裂片は4個、卵円形、先が円形、淡緑色で直立し、長さ1~1.2mmで萼萼筒とほぼ同長。雄しべは8本、葯は黄色。種子は表面の肋に低いこぶが並ぶ。花期は3~4月。2n=24。
22-1 Chrysosplenium rhabdospermum Maxim. var. shikokianum Wakab. トゲミツクシネコノメ
四国(愛媛県、高知県)に分布。 沢沿いの湿った場所に生える。
多年草。花期は3~4月。長いストロンをもつ。根出葉は花時には枯れる。花茎は高さ10㎝以下、花茎の基部から走出枝を出す。花時の萼片は淡緑色であること、葉の表面の毛が長さ1~1.5㎜であり、ツクシネコノメソウとほぼ一致するが、種子の表面の肋に短毛が密生し、ツクシネコノメソウと相違がある。
23 Chrysosplenium suzukaense Wakab., Hir.Takah. et S.Tomita スズカボタン 鈴鹿牡丹
日本固有種(本州の中部地方の岐阜県・三重県・滋賀県)。石灰岩地のやや湿った陰地に生える。
ホクリクネコノメ系(ホクリクネコノメ、ボタンネコノメソウ、 ヒダボタン)であるが、おしべが4本。 多年草、高さ3~9(15)㎝。根出葉は小さく、数対つき、ロゼットを形り、花期にあるが、花後に枯れ、葉柄は無又は短、葉身は円形~倒卵状楕円形、長さ10~32mm×幅10~30mm。花後に数本の花茎とストロンが葉腋から伸び、先端に2~3対の大きな葉からなるロゼットを形成する。ロゼット葉は葉柄が無又は短、葉身は円形~扇状円形、上面は緑色、葉脈に沿う白斑があり、下面は緑白色、縁に4~7対の内曲する鈍鋸歯があり、花後に葉は大きくなり、長さ10~16mm×幅10~17mm。花茎は花時に高さ3~9cm、果期に高さ6~15㎝になり、2~数個の葉を対生するが、しばしば下部の茎葉は花後には枯れる。茎葉は葉柄が長く、葉身は卵形~楕円形、長さ4~18mm×幅4~12mm、基部はくさび形、縁に4~7対の内曲する鈍鋸歯がある。苞葉は卵形~楕円形、縁に鋸歯があり、鮮黄色~緑黄色。花は直径1.8~2.5mm。萼片は4個、卵形又は三角形、花時に直立又は斜開し、先は鈍形、長さ1.2~1.3mm、茶灰色~灰色で微細な紫色の斑点がある。雄しべは4個、長さ1.7~2.6mm、萼片に対生し、突き出す。花糸は開花時の葯の長さの1.8~2.8倍。葯は暗赤色、長さは0.6~0.8mm。子房は下位~半下位。花柱は2個あり、細く、突き出る。果実は蒴果、2個の心皮はわずかに大きさが異なり、長く突き出し、斜上する。種子は楕円形、長さ0.6~0.8mm、約12本の隆条に小突起が並び、突起は半球形~円柱形で長さ9~38µm。2n=22。花期は3月下旬~4月上旬。
24 Chrysosplenium tosaense (Makino) Makino ex Sutô タチネコノメソウ 立猫の眼草
日本固有種(本州の関東以西、四国、九州)。山地の渓流沿いや湿った林内に生える。別名はトサネコノメ。
多年草。高さ5~10㎝。地下にストロンを伸ばし、基部は膨れ、先に葉を出して増殖する。根生葉は開花時にも残り、葉柄があり、葉身は長さ4~17mm×幅5~25mm、ほぼ円形、基部は心形~浅い心形、縁に5~9個の円鋸歯がある。花茎は高さ5~10㎝、0~2個の葉を互生し、ほぼ無毛、集散花序を頂生する。茎葉は根生葉より小さくほぼ円形で基部は浅い心形~切形。下側の苞葉は茎葉状、上側の苞は丸みがあり、卵形、縁に歯が3~5個の円鋸歯がある。花は直径約3mm、短い花柄がある。萼片は平開し、緑色、広卵形、先は鈍形、長さ1.5~2mm。花盤は黄緑色~淡緑色。雄しべは8本、花時に直立し、長さ約0.5mm、萼裂片より明らかに短い。葯は黄色。花柱はごく短く、花時には直立するが、果時には平開する。種子は卵形、長さ0.6~0.7mm、1稜があり平滑、微細なパsピラがある。2n=24。花期は4~5月。
参考
1) Flora of ChinaChrysosplenium
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=107013
2) Plants of the World Online | Kew ScienceChrysosplenium
http://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30129301-2
3) 植物分類,地理 50(1), 1-12, 1999 日本植物分類学会本州中部産ネコノメソウ属の一新種および一新変種
https://ci.nii.ac.jp/naid/110003758683
2) Flora of North America @ efloras.orgChrysosplenium
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=107013