アオスゲ 青菅

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Flora of Mikawa

カヤツリグサ科 Cyperaceae スゲ属

別 名 アキアオスゲ、イワアオスゲ
中国名 青绿薹草 qing lu tai cao
英 名 short-stem sedge
学 名 Carex leucochlora Bunge
 synonym Carex leucochlora Bunge var. leucochlora

 synonym Carex breviculmis R. Br. var. leucochlora (Bunge) Makino

 synonym Carex breviculmis auct. non R. Br.
アオスゲの花序
アオスゲ苞鞘
アオスゲ鱗片
アオスゲ果実
アオスゲ
アオスゲ基部の鞘
アオスゲ果胞
果 期 4~5月
高 さ 15~50㎝
生活型 多年草
生育場所 日当たりの良い道端、草地
分 布 在来種 日本全土、朝鮮、中国(黒竜江省、内モンゴル、遼寧省、吉林省)、台湾、モンゴル、ロシア、アフガニスタン、パキスタン、インド原産
撮 影 幸田町 12.5.10
道端で普通に見られる。
  多年草、茎は高さ15~25(~50)cm。根茎は短く、叢生し、ストロンは出さない。全体が緑色、硬く、基部の葉鞘は淡褐色、やや光沢があり、古くなると繊維状に分解する。葉は花茎とほぼ同長、幅2~3㎜。苞は花序と同じ高さかまたはやや高く、ほとんど鞘は無い。小穂は3~4個つく。頂小穂は1個、雄性、こん棒形、長さ1~2cm、多数の花をつける。雌性の側小穂は2~3個で、互いに接近してつき、多数花を密生し、長さl~2㎝×幅3~4㎜。根際に雌小穂をつけることはない。雌鱗片は長円形、長円状倒卵形、または卵形、長さ2~2.5㎜、中央は薄緑色、両側部は緑白色または黄緑色、膜質、先は凹形~鋭形、長い芒があり、3本の脈がある。果胞は倒卵状楕円形または楕円状披針形、長さ2~3㎜、鈍い3稜があり、薄緑色または緑白色で、まばら~上部に密に毛があり、4~5本の脈があり、上部は鋭く尖り、短い嘴があり、口部はわずかに凹形。小堅果は果胞に密着し、長円状披針形~倒卵形、長さ約1.7㎜、3肋があり、頂部に柱基の宿存した環状の付属体があり、柱基は拡大した円錐形、柱頭は3岐。果期は4~5月。
 5変種があり、類似種は次のとおり。
 メアオスゲ(変種var. candolleana)は雄小穂が線形、雌小穂は花が少なく、長さ1㎝以下、根際に雌小穂がつくことがある。また、苞の鞘が長く、はっきり認められる。
 オオアオスゲ(Carex lonchophora)は基部の鞘に光沢がなく、苞の鞘が長さ1㎝以上ある。
 イトアオスゲ(変種var. gracillima)は雄小穂が線形で、ときにきわめて短いことがあり、雌小穂は花が少なく、鱗片の芒が短い。
 ノゲヌカスゲ(Carex mitrata Franch. var. aristata)は基部の鞘が長く、雄小穂が細くて短く、苞の鞘が長さ約3㎜ある。
 ヌカスゲ(Carex mitrata)は苞が短く、雄小穂がきわめて細く、鱗片に芒がない。

(1) Carex leucochlora Bunge var. aphanandra (Franch. et Sav.) T.Koyama ニイタカスゲ 新高菅

  synonym Carex aphanandra Franch. & Sav.
  synonym Carex morrisonicola Hayata

  synonym Carex breviculmis R.Br. f. aphanandra (Franch. et Sav.) Kük.

 日本(本州中部の主に太平側)、朝鮮、中国(吉林省)、台湾原産。
 多年草。やや硬く、高さ4~10㎝。叢生して比較的大きな株になる。斜上する短いが、ストロンは出さない。葉は大きさの割に幅が広く、通常は幅2~3㎜、ときに4㎜になり、直立せず多少弓なりに地面に広がる。花茎も果胞が熟す頃には弓なりにしなる。雄小穂は小さい。雌小穂は2~3個つき、1~2個は雄小穂に接し、最下の1個は離れて根際に生じ、長柄がある。雌小穂は花がまばらに1個以下つく。雄花の鱗片は芒がある。雌花の鱗片は芒が短い。果胞はイトアオスゲやメアオスゲとほぼ同じ。

(2) Carex leucochlora Bunge var. candolleana (H.Lév. et Vaniot) Katsuy. メアオスゲ 雌青菅

  synonym Carex candolleana H.Lév. & Vaniot
  synonym Carex geihokuensis K.Okamoto
  synonym Carex breviculmis R.Br. f. longearistata Kük.
  synonym Carex breviculmis R.Br. f. aphanandra sensu Kük.
 日本(本州、四国、九州)、朝鮮に分布。疎林や草地、林縁に生える。
 棄は直立し、幅が狭い。根際に雌小穂をつける。雌花の鱗片には長い芒がある。小穂は花が比較的少い。
 多年草。全体に小型で細く軟らかく、高さ5~20㎝。叢生して大きな株は作るが、ストロンは出さない。 葉は直立し花茎よりもやや高く、通常、糸状、幅1~2㎜、稀に幅4㎜になる。基部の鞘は褐色を帯びる。雄小穂は線形で長さ5~15㎜。雌小穂は2~3個つき、上部の1~2個は雄小穂に接し、最下の1個は根際に生じる。苞は花茎と同じ高さ、短いが明瞭な鞘がある。雌小穂は花を数個つけ、長さ1㎝以下。雌花の鱗片は鈍頭で芒は長い。果胞は長さ2.5~3㎜、脈は不明瞭、疎らに毛がある。果期は4~5月。

(3) Carex leucochlora Bunge var. gracillima (Akiyama) Katsuy. イトアオスゲ 糸青菅

  synonym Carex breviculmis R.Br. var. puberula (Boott) T.Koyama

  synonym Carex breviculmis R.Br. f. filiculmis seusu Kük.

 日本(北海道、本州)、朝鮮、ロシア原産。別名はコアオスゲ、ヒメイトアオスゲ。低山地の疎林や草地、林縁に生える。
 棄は直立し、幅が狭い。普通、根際に雌小穂はつけない。雌花の鱗片の芒は短い。小穂は花が比較的少い。
 多年草、叢生し、高さ10~30㎝、稀に高さ50cmになる。根茎は短く、ストロンは出さない。全体に細く軟らかく、葉は直立し、花茎よりよりもやや短く、幅1~2㎜。基部の鞘は褐色を帯びるがアオスゲよりもやや色が淡色。雄小穂は線形で、ときにきわめて短く、長さ5~20㎜、生育の良いものでも幅1.5㎜以下。雌小穂は2~3個、離れてつき、最下の小穂は長さ5~20㎜、普通,根際に雌小穂はつけないが、稀につける。花は少なく10個まで。苞葉は花茎よりも短く、最下の苞葉には短いが明らかな鞘がある。雌花の鱗片の芒は短い。果胞は長さ2.5~3㎜、脈は不明瞭、まばらに毛があり、口部は凹形。果実は橙褐色、頂部に柱基の宿存した付属体がある。果期は4~5月。

(4) Carex leucochlora Bunge var. horikawae (K.Okamoto) Katsuy ミセンアオスゲ 

  synonym Carex leucochlora Bunge var. setouchiensis K.Okamoto

 日本(本州)に分布。別名はセトウチコアオスゲ。乾燥した林内や崖に生える。
 高さ15~40㎝。叢生し、ス卜ロンは出さない。全体にきわめて細い。基部の鞘は比較的淡色。苞は葉身が刺状かまたはほとんど無く、短いが顕著な鞘がある。葉は花茎よりも短く、幅1~2㎜。雄性の頂小穂は顕著な柄があり、線形、長さ5~10㎜、しばしば赤褐色を帯びる。雌性の側小穂は1~3個つき、互いに離れてつく。小穂は花が少なく、数個つく。雌花の鱗片の芒は短く、ときにやや褐色を帯びる。果胞は毛のあるものが多い。

(5) Carex leucochlora var. meridiana Akiyam イソアオスゲ 磯青菅

  synonym Carex meridiana (Akiyama) Akiyama 
  synonym Carex tosaensis Akiyama [YList]
 本州(福井県以西)、九州、沖縄に分布。海岸の崖地や岩上に生える。
 多年草、高さ5~20㎝。しばしば顕著な短くて細い半地上性の根茎(ストロン)を出す。基部の鞘は褐色でやや光沢がある。葉や茎はアオスゲのようにザラつかない。葉はほぼ直立し、花茎よりも高く、幅1.5~4㎜。雄小穂は細く、線形、長さ5~10㎜。雌小穂は2~4個で,下部の小穂は少し離れ、しばしば、柄が根生し根際につく。苞は長く、花茎よりも著しく高い。雌小穂は花が少なく、10個以下。雌花の鱗片の芒は短い。果胞は長さ2.5~3㎜、熟すと面が膨れて丸くなり、脈はやや太いが、数が少なく、毛もまばら。果実の頂部には柱基が残る。果期は4~5月。

スゲ属

  family Cyperaceae - genus Carex

 多年草、根茎は普通、匍匐茎がある(stoloniferous)。稈(culms:中空で髄がある)はほとんどが三角形(trigonous)ときに丸く、叢生(cespitose, tufted)又は疎ら、花茎(flower−bearing stems:有花茎ともいう)は側生(lateral)又は中心生=中央生(central)、直立し、3角形(trigonous)、基部に葉身の無い鞘がある。鞘はしばしば分化し(少なくとも3つの角のある稈を持つ種では)、前面(外側)は薄く、半透明で、ときには斑点状、縞模様、または横しわがある。後面(内側)にはときに斑点や横隔壁があり、またはしわ状になる。葉舌(ligule)は葉身と鞘の接合部に存在し、大部分が葉身と融合している。葉は根生葉のみ、または根生葉及び茎葉、断面が平ら~V形~W形、まれに縁が内巻き又は外巻き、線形~帯ひも形(lorate)、まれに披針形、基部に鞘がある。花序は頂生で、穂状花序(spicateまたはspikes)、総状花序又は円錐花序中に配置された小穂(spikes)の中につく小穂(spikelet)からなる。苞(involucral bract)は小穂(spikes)の基部につき(subtending)、葉状、まれに鱗片状又は剛毛状(setaceous)、鞘が有又は無。花は単性、単性の小穂(spikelet)の中に1個の雄花または1個の雌花がつく。雌小穂(female spikelet)は前出葉(prophyll)に包まれ、前出葉は完全に胞果の縁に合着して果胞(perigynium (pl. perigynia), utricle)になり、ときに退化した小穂の軸が果胞の中にあり、基部に鱗片状の小苞(scalelike bractlet)をもつ。小穂(spike)は1個~多数、複合花序に配置され、多数の単性又は両性の小穂の複合であり、両性の小穂は雄雌性花序(androgynous:同じ小穂内で、雌花の上に雄花がつく)または雌雄性花序(gynaecandrous:同じ小穂内で、雄花の上に雌花がつく)または雄雌雄性(androgynaecandrous: 同じ小穂内で、雌花の上下に雄花をもつ)、または普通、雌雄同株(monoecious)、まれに雌雄異株(dioecious)、花序柄が有又は無、小さな鞘状又は胞果状のクラドプロフィル(cladoprophyll:筒状の前出葉(prophyl)であり、部分的な花序(coflorescence)の軸の基部につき、苞の反対の上側に位置する)がある。小穂(spikelet)ごとにつく鱗片(glumes:苞頴)は螺旋状につき、雌鱗片は通常宿存性であるが、まれに脱落する。花被は無い。雄花は3本(以前にウンキニア属 Unciniaに置かれた種では1~3本)の雄しべをもつ。花糸は分離。雌花は雌しべ1個をもつ。花柱はわずかに細く、宿存又は脱落性、基部は普通、太くならない。柱頭は2岐または3岐(まれに4岐)。果胞(perigynium (pl. perigynia), utricle)は膜質、紙質、革質、またはコルク質、3稜形、平凸面又は両凸面、わずかに長い又は短い嘴をもち、口部は切形(全縁)または2裂(歯)=凹形。小堅果(痩果)はいくぶん堅く又は緩く果胞に包まれ、3稜形又は平凸面形(レンズ形)、まれに4稜形。x=10。
 世界に約2000種あり、全世界に分布する。

スゲ属の用語


 小穂はスゲ属を除くイネ科やカヤツリグサ科では花が複数つくspikeletであるが、 スゲ属では1花のspikeletが集まったspikeが他属のspikeletのような構成単位になっているため、これを小穂(spike)という。1花の小穂(spikelet)ごとにつくglumesは苞頴であるが鱗片といわれる。小穂は雄花または雌花だけの単性の小穂、または両者がつく両性の小穂があり、花の配置により雄雌性花序(androgynous:同じ小穂内に雄花と雌花をもち、雌花の上に雄花がつく)と雌雄性花序(gynaecandrous:同じ小穂内に雄花と雌花をもち、雄花の上に雌花がつく)に分けられる。ときに雄雌雄性(androgynaecandrous: 同じ小穂内で、雌花の上下に雄花をもつ)。小穂の基部につく苞はinvolucral bractであるが、総苞片とはいわれず、苞または苞葉という。果実は痩果または小堅果(nutlets)といわれ、膜質の果胞(perigynium (pl. perigynia), utricle)に包まれ、先に嘴(beak)があり、先端に口部(orifice:開口部)がある。

スゲ属の主な種

1 Carex aequialta Kük. トダスゲ 戸田菅
 日本(本州の関東地方・近畿地方、九州北部)、中国(安徽省、江蘇省)原産。中文は等高薹草 deng gao tai cao。別名はアワスゲ(粟菅)。水辺に生える。
根茎は短い。 稈は叢生し、高さ30~60㎝、三角形、平滑、基部は暗褐色の葉身のない鞘で覆われ、鞘は網状の繊維に崩壊する。葉は稈に等しい長さになり、葉は線形、幅3~4㎜、平らで硬い。苞は葉状で花序を超え、鞘は無い。小穂は3~4個つき、頂生の小穂は雄性、線形、長さ2~3㎝、ほぼ無柄。側小穂は雌性、円筒形、長さ3~5㎝、わずかに緩く花がつき、直立した短い花序柄を持つ。雌の鱗片は鉄さび色、長円状卵形、3脈の肋は突き出し、先が鈍形の微突になる。果胞は鉄さび色、密に斑点があり(flecked)、鱗片の長さに等しいが、むしろ幅が広く、開出し、円状卵形、大きく膨らみ、長さ2.5~3㎜、膜質で、多数の脈があり、先は急に狭まり、非常に短い嘴となり、口部は全縁。小堅果は緩く包まれ、円形~倒卵形、長さ約2㎜。花柱の基部は太く無い。柱頭は2岐。花期および果期は4~6月。

2 Carex albidibasis T.Koyama ザラツキシラスゲ
  synonym Carex planiculmis var. urasawae Ohwi
 日本(本州中部の栃木県、埼玉県、山梨県、長野県)原産。別名はチチブシラスゲ。高山の岩礫地に生える。
細長い匐枝を持つ。花序、花茎や葉は著しくざらつく。葉の裏面には乳頭状突起を密布し、粉白色。雌小穂はシラスゲよりまばらに花を付ける。果胞は鱗片より長く、脈があり、無毛、嘴は長く、口部に2歯がある。柱頭は3岐。

3 Carex acicularis Boott カレックス・アキクラリス
  synonym Carex pyrenaica F.Muell.
  synonym Carex inconspicua Colenso
 ニュージーランド原産。山地から亜高山(生息範囲の南部では海岸沿いにあることもある)で見られ、湿った開けた石だらけの地面や、低木林や森林あるいは草むらの中の湿った場所に生える。
 小さく、根茎が短く、小さな房やマットを形成する。稈は長さ20~200㎜ x直径約0.5㎜、円柱形、平滑。 基部の鞘は栗褐色または黄褐色。 葉は稈よりわずかに短く(ときに超え)、幅約0.5㎜、毛状、平凸形、溝状になり、堅く、黄緑色~暗緑色、縁はザラつき、先は鈍形。花序は単生。小穂は長さ約5㎜、最下の鱗片は苞である。雌花は2~6個、雄花と同数または超える。鱗片は果胞より長く、または等しく、卵形、鋭形、褐色で中肋が緑色。果胞は長さ3~5㎜×幅1㎜、披針形、平滑、先は先細り、長さ1~2㎜の暗色の嘴になり、縁は明瞭にザラつき、斜めの脚があり、柄は長さ約1㎜。柱頭は3岐。花序軸は果胞に包まれ、長さ2~2.3㎜、線形、縁はザラつき、頂部には小さな赤色の付属体が上につく。堅果は長さ約2㎜、長円形、断面は三角形、平滑。

4 Carex alliiformis C.B.Clarke リュウキュウスゲ 琉球菅
 日本(九州南部~沖縄)、中国(貴州省、湖北省、湖南省、四川省)、台湾、ベトナム原産。中国名は葱状薹草 cong zhuang tai cao。森林、林縁、山の斜面の空き地に生える。  根茎は短く、長い匍匐茎を持ち、匍匐茎は赤茶色の葉身のない鞘で覆われる。稈は緩く叢生し、高さ25~45㎝、鈍角の三角形でかなり太く、少数の葉身のない鞘で被われる。葉は稈より長く、葉身は幅7~14㎜、平らで、側部に明瞭な2脈があり、紫赤色の鞘に覆われる。苞は葉状、下部の苞葉は狭く、抱く小穂よりも長く、わずかに長い鞘がある。上部の苞はかなり狭く、抱く小穂よりも短く、短い鞘がある。小穂は5~8個、下部の小穂は離れた位置につき、上部の小穂は接近する。頂部の1~2個の小穂は雄性、ほぼ線形、長さ2.5~4㎝、花序柄がある。残りの小穂は雌性、ときに基部に少数の雄花をもち、円筒形、長さ2.5~5.5㎝、密に多数の花があり、下部の小穂にはかなり長い花序柄があり、上部の小穂は花序柄が短い。雄鱗片は褐赤色、披針形、長さ約6㎜、1脈があり、先は鋭形。雌鱗片は褐赤色、披針状卵形または披針形、長さ3~4㎜、膜質、1脈があり、先は尖鋭形または鋭形、微突形。果胞は緑色または黄緑色、斜めに開出し、鱗片より長く、倒卵状長円形、膨らんだ三角形、長さ約4㎜、草質、無毛、数本の脈があり、基部は楔形、先端は急に狭まりかなり短い嘴になり、口部には2歯がある。小堅果は灰緑色、角(かど)は褐黄色、やや緩く包まれ、楕円形、三角形、長さ約2㎜。花柱の基部は太くない。柱頭は3岐。花果期は5~7月。

5 Carex alopecuroides D.Don カレックス・アロペクロイデス

  synonym Carex japonica Thunberg var. alopecuroides (D. Don ex Tilloch & Taylor) C. B. Clarke.

  synonym Carex sasakii Hayata
 中国、台湾、インド(アッサム州)、西ヒマラヤ(インド北部、パキスタン北部)、東ヒマラヤ(ネパール東部、インド北東部、ブータン、中国(チベット自治区、雲南省)、ミャンマー北部)、ネパール、ベトナム、、フィリピン、インドネシア(ジャワ、スマトラ島、スラウェシ島、)、ニューギニア原産。中国名は禾状薹草 he zhuang tai cao。標高400~2700mの溝の脇や山の斜面の林内の湿った場所に生える。
根茎は短く、細い匍匐茎がある。 稈は叢生し、高さ30~60㎝、三角形、上隅にザラツキがあり、淡褐色の葉身のない鞘で覆われる。葉は稈とほぼ同長かわずかに長く、葉身は幅2~4㎜、平らでやや硬く、上面に3本の葉脈があり、下面に1本の葉脈が明瞭にあり、葉脈と上側の縁はザラつき、縁は乾くと通常外巻きし、長い鞘に覆われ、鞘の膜質の部分は通常裂ける。苞(総苞片)は葉状、下側の苞は抱く小穂より長く、上部の1~2枚の苞は抱く小穂と高さが同じかそれより短く、鞘は無い。小穂は3~5個、通常は稈の上部で隣接する。頂生の小穂は雄性、ときに頂部に雌花がつき、ほぼこん棒形、長さ2~3㎝、非常に短い花序柄があるか、またはほぼ無柄。側小穂は雌性、円筒形、長さ2~3cm、密に多数の花がつき、一番下の1~2個は短い花序柄を持ち、上部のものはほぼ無柄。雌性の鱗片は淡わら色、長円状卵形または披針状卵形、長さ2~3㎜、膜質、1脈があり、先は漸尖するか、ときにほぼ鈍形で微突形または無突起(muticous)で、微突はなく、側部に小剛毛がある。果胞は緑色、成熟するとわら色、斜めに開出し、成熟すると±水平に開出し、下部の果胞は鱗片と同じ長さかそれよりわずかに短く、上部の果胞は鱗片より短く、卵形、鈍角の三角形、わずかに膨らみ、長さ約3㎜、膜質、無毛、外面に5脈があり、基部は鈍形、先は漸尖し、中型~長い嘴になり、口部は凹形で短い2歯がある。小堅果は褐色、わずかにきつく包まれ、広卵形またはほぼ楕円形、三角形、長さ約1.5㎜、基部に柄は無く、先は微突形。花柱の基部は太くない。柱頭は3岐。花果期は4~7月(flora of China)。
 Kewscienceでは日本を分布域に含めず、下位分類もなく、シラスゲはCarex doniana Sprengとしている。YListでは以下を掲載している。

5-1 Carex alopecuroides D.Don var. alopecuroides コカイスゲ 

 葉幅が狭い。

5-2 Carex alopecuroides D.Don var. chlorostachya C.B.Clarke シラスゲ 白菅⇒Carex doniana Spreng

  synonym Carex doniana Spreng [Kewscience]
  synonym Carex chlorostachya D.Don

  synonym Carex japonica subsp. chlorostachys (C.B.Clarke) T.Koyama

  synonym Carex japonica var. chlorostachys (C.B.Clarke) Kük.

5-3 Carex alterniflora Ohwi var. rubrovaginata J.Oda et Nagam. ベニイトスゲ 異分類


6 Carex alterniflora Franch. オオイトスゲ 大糸菅

  synonym Carex sachalinensis F. Schmidt var. alterniflora (Franch.) Ohwi

  synonym Carex pisiformis Boott subsp. alterniflora (Franch.) T. Koyama

 日本固有種。北海道、本州、四国、九州に分布する。低地~山地の林内や林縁、道端などに生える。
 まばらに叢生し、長く丈夫な匍匐枝(走出枝)を出す。茎は高さ20~60cm、鈍い3稜がある。基部の鞘は白色を帯びた薄褐色(シロイトスゲ)、薄褐色(アリマイトスゲ、クジュウスゲ゙)、薄黄褐色(キイトスゲ)、黄褐色(チャイトスゲ)、赤褐色(ベニイトスゲ)とされているが、濃淡、色調には変異があり、判定の決め手にはならない。葉鞘口部は切形(シロイトスゲ、クジュウスゲ、ベニイトスゲ)、または凹型~半円形(アリマイトスゲ、キイトスゲ)、または半円形~U字形(チャイトスゲ)。葉舌は高さが低い(約0.3~0.4㎜)または高い(約1.0~1.2㎜)、前部膜質部に刺毛が有または無。葉は直立し、長さ10~20cm、幅1.5~3.5mm。苞は鞘があり、葉身を伴う。小穂は3~5個つき、直立し、頂小穂は1個、雄性、棒形、長さ1.5~2.5~3㎝。側小穂は雌性、糸状円柱形、長さ1~3㎝。小穂の花序柄は長さ1~6㎝。鱗片は色が葉鞘にほぼ連動し、微突端。果胞は脈があり、有毛または無毛、長さ2.5~3㎜(アリマイトスゲ)、(2.7)2.8~~3.5mm(シロイトスゲ、チャイトスゲ、キイトスゲ、ベニイトスゲ)、3.5~4㎜(クジュウスゲ)。嘴は短(アリマイトスゲ)~中(シロイトスゲ、チャイトスゲ、キイトスゲ、ベニイトスゲ)~長(クジュウスゲ)、口部は2歯。柱頭は3岐。
 基部葉鞘の色(鱗片の色はほぼ連動する)、葉鞘口部の形、葉舌の高さ、果胞の嘴の長さ、などにより6変種(Kewscienceでは5)に分類されている。葉鞘の色は変化がある。

6-1 Carex alterniflora var. alterniflora オオイトスゲ 大糸菅 基本変種

 本州(静岡県~岩手県)、九州、主に東海地方以東の太平洋側に分布する。別名はシロイトスゲ。
 匍匐枝を伸ばし、茎を疎らに叢生し、花茎は高さ20~40㎝。基部の鞘は白色を帯びた薄褐色(whitish light brown)、葉鞘口部が切形、葉舌が高く、高さ約1.2㎜、前部膜質部に刺毛が多い。葉身は幅1.5~3.5mm。頂小穂は雄性で棒形、側小穂は雌性で無柄。苞は鞘があり、葉身は小穂より長い。雄鱗片は半透明で先に芒がある。雌鱗片は果胞よりやや短く、緑白色で先には芒がある。果胞はやや疎らにつき、無毛、狭卵形で長さ2.8~3mmまたは3~3.5mm、嘴は長さが中位。果期は4~5月。

6-2 Carex alterniflora var. arimensis Ohwi アリマイトスゲ 有馬糸菅

 本州(大阪府~広島県)に分布。丘陵~山地の林縁、林内の岩場、ときに里山の水路脇斜面などに生える。Kewscienceには無い。
 まばらに生え、またはまばらに叢生し、地上性の匍匐枝を出す。基部の鞘は薄褐色(light brown)、葉鞘口部の前から見た形は凹型あるいは半円形、葉舌は高さ約0.4㎜でシロイトスゲ、ベニイトスゲ、クジュウスゲよりは明らかに低い。葉鞘の前部膜質部は通常無毛、ときに刺毛がわずかに見られることがある。葉は花茎よりも高く、幅1.5~2㎜。花茎は高さ20~40㎝。頂小穂は雄性、棒形、長さ1.5~3㎝、通常、緑白色、果期にはしばしば淡褐色となる。側小穂は雌性、2~3個つき、長さ1.5~3㎝、花序柄は短い。苞は鞘があり、葉身は小穂より長いかまたは同長。雌鱗片は緑白色。果胞は有毛または微毛があり(無毛ともされる)、まばらにつき、他の変種より小型、長さ2.5~3㎜、嘴はきわめて短い。痩果は長さ約2㎜。果期は5月。

6-3 Carex alterniflora var. aureobrunnea Ohwi チャイトスゲ 茶糸菅

  synonym Carex sachalinensis F.Schmidt var. aureobrunnea (Ohwi) Ohwi

 本州(山梨県~兵庫県)、四国、九州南部に分布。乾いた林内、林縁に生える。
 まばらに叢生し、ときに地下に長い匍匐枝を出す。稈(花茎)は高さ20~40㎝。基部の鞘は黄褐色(yellowish brown)、葉鞘口部の形は半円形~U字形で、葉舌が顕著に低く、高さ約0.3㎜。葉鞘の質は他の変種より薄く、裂けやすい。葉鞘の前部膜質部は通常無毛、ときに刺毛がわずかに見られることがある。葉はやや硬く(少し軟らかい)、幅1.5~3㎜、葉縁の小刺は上向きで鋭い。苞は鞘があり、葉身は小穂より長い。 雄性の頂小穂は淡褐色。雌性の側小穂は互いに離れてつき、直立し、淡緑色、柄が短い。果胞は2.5~3.5㎜、ほとんど平滑、無毛~まばらに短毛があり、嘴の長さは中位。雌鱗片は果胞より短く、淡緑色~淡褐色。痩果は長さ約2㎜、果胞よりかなり小さい。柱頭は3岐。果期は4~5月。

6-4 Carex alterniflora var. elongatula Ohwi クジュウスゲ 久住菅

 本州(岡山県)、四国、九州に分布。山地の林床や路傍などに生える。
 まばらに叢生し、地下に短い匍匐根茎がある。有花茎は高さ20~50㎝、上部はザラつく。基部の鞘は薄褐色(light brown)、葉鞘口部がほぼ切形で、葉舌が高さ約1.0㎜と高いことがシロイロスゲに類似するが、葉鞘の前部膜質部に刺毛がない。葉は幅1.5~3mm。苞は鞘があり、葉身は葉状、小穂より短い。頂小穂は雄性、棒形で、長さ2.5~3cm、有柄。側小穂は雌性、互いに離れてつき、線状円柱形、長さ1~3㎝。雄鱗片は淡褐色、先は鈍形または短い芒がある。雌鱗片は淡色、先は鋭形~短い芒がある。果胞は雌鱗片よりも長く、卵形、長さ3.5~4㎜、無毛、嘴は長く、口部は2小歯。痩果は果胞にやや密に包まれ、卵形、長さ1.9~2.1mm、頂部に盤状の付属体がある。柱頭は3岐。2n=62。
6-5 Carex alterniflora var. fulva Ohwi キイトスゲ 黄糸菅
 北海道、本州(岩手県~広島県)に分布。山地や山頂付近などに生える。
 まばらに叢生し、短い匍匐根茎がある。花茎は高さ20~35cm、上部はザラつき、下部は平滑。基部の鞘は長さ1~3㎝、黄薄褐色(yellowish light brown)。葉鞘口部は凹形~半円形(シロイトスゲとチャイトスゲの中間的な形態)、葉舌は高さ約0.6㎜でシロイトスゲとチャイトスゲの中間の高さ。葉鞘前面の膜質部は通常無毛、ときに刺毛がわずかにある。葉は花茎と同長または短く、幅1.5~3㎜。苞は鞘が短く長さ1~2㎝、葉身は葉状。頂小穂は雄性、棒形、長さ1.5~3.5㎝、花序柄は長さ1~6㎝。雄鱗片は淡黄色~黄褐色、先が鈍形または鋭形。側小穂は雌性、線状円柱形、長さ1.5~3.5㎝、下部のものはしばしば離れてつき、まれに根生する。雌鱗片は淡褐色~褐色、先が鈍形または短い芒がある。果胞は雌鱗片よりも長く、倒卵形、長さ2.7~3㎜×幅1~1.3㎜、無毛、上部は次第に狭まり長さが中位の嘴となり、口部は2小歯、縁には細鋸歯条の小剛毛(鋸歯状の刺毛)がある。痩果は果胞にきつく包まれ、卵形、長さ1.9~2.1㎜×幅0.9~1.3㎜、頂部に盤状の付属体がある。柱頭は3岐。果期は5~7月。

6-6 Carex alterniflora var. rubrovaginata J.Oda & Nagam. ベニイトスゲ 紅糸菅

 本州(奈良県~山口県)、四国、九州北部に分布。別名はカンサイイトスゲ。低地~低山地の林内や林縁、道端などに生える。
まばらに叢生し、短い匐枝を持つ。基部の鞘は赤褐色(reddish brown)、葉鞘口部が切形、葉舌が高さ約1.2㎜と高く、前部膜質部に刺毛が多い。葉は花茎と同長かまたは長く、幅1.5~2.5(~3.5)㎜。花茎は高さ20~50㎝、上部はザラつき、下部は平滑。頂小穂は雄性、棒形で長さ1.5~2.5㎝×幅1~2㎜、花序柄は長さ1~2㎝、赤紫色。側小穂は雌性、線状円柱形、長さ1~3.5㎝×幅2~3mm、しばしば下側の小穂は離れてつき、花序柄は短く、長さ5㎜未満。苞は長さ1~2㎝の鞘があり、葉身は葉状、長さ1~5㎝。雌鱗片は赤紫色~紫色、先は鋭形または短い芒がある。雌鱗片は先が鋭形または短い芒がある。果胞は雌鱗片よりも長く、倒卵形、長さ2.8~3㎜×幅1~1.1㎜、稜間に5~6脈があり、平滑、先に長さが中位の嘴があり、口部は2小歯、嘴の縁には小剛毛がある。痩果はきつく果胞に包まれ、倒卵形、長さ1.9~2.1㎜×幅0.8~1㎜、頂部には盤状の付属体がある。柱頭は3岐。2n=68~71。果期は5月。

7 Carex amgunensis F.Schmidt アムグンスゲ 
 中国(河北省、黒竜江省)、モンゴル、ロシア、東ヨーロッパ(ウクライナ原産。中国名は球穗薹草 qiu sui tai cao。標高およそ2000mの斜面や湿地などの日陰の場所に生える。

8 Carex anbouensis Katsuy. ヤクシマカンスゲ 屋久島寒菅
  synonym Carex morrowii var. laxa Ohwi
 日本固有種。屋久島の渓谷の岩場や林縁に生える。葉がカンスゲより細く、やや柔らかい。
 葉は幅3~8㎜、やや柔らかく、縁はザラつく。基部の鞘は、暗褐色~赤紫色。雄小穂は長い線形。雌小穂は果胞がまばらにつく。果胞は鱗片から突き出し、長く、7~8脈があり、平滑、上部は次第に狭まり長い嘴があり、縁には上向きの刺毛があり、口部は2歯。柱頭は3岐。2n=38。

9 Carex angustisquama Franch. ヤマタヌキラン 山狸蘭
 日本固有種。本州の東北地方に分布。火山や温泉などの硫黄化合物を含む火山性ガスの噴出口周辺の水湿地に生える。
 多年草、高さ20~50㎝。しばしば大きな群落作る。根茎は斜めに伸び、まばらに叢生する。葉は幅3~5㎜、下面はパピラ(乳頭状突起)が密生し、粉白色を帯びる。基部の鞘は褐色~赤褐色、葉身がない。花茎は高さ20~50cm、下部は平滑、上部では多少ザラつく。苞は上部では鞘がなく、葉身が刺状となり、下部の苞は葉状に発達し、最下の小穂の苞は花序とほぼ同長、葉身部の基部には褐色の葉舌が発達する。花序は小穂を4~6個つける。頂小穂は1個、雄性まれに雌花が混じることがあり、円柱形、長さ1~2.5cm、長さ1~5cmの花序柄があり、柄の基部にはそれを包む淡褐色の前出葉がある。側生の小穂は雌性であり、3~5個つき、楕円形~円柱形、長さ1~3cm×幅7~8mm、細長い花序柄があり、垂れ下がる。雌鱗片は黒紫色で果胞より短く、幅も狭く、黒紫色で先端が尖る。果胞は長さ4~5mm、卵形、脈は不明瞭、まばらに赤紫色の斑紋があり、嘴は極めて短く、口部は凹形、縁に微細な棘がある。痩果は緩く果胞に包まれ、卵形、長さ約1.5mm。柱頭は2岐。花期は6~7月。

10 Carex annectans (E.P.Bickn.) E.P.Bickn. アメリカミコシガヤ 
 北アメリカ(カナダ、USA)東部原産。英名はyellowfruit sedge。標高0~1500mの乾燥~湿った場所に生え、石灰質の土壌の開けた場所、中湿性~湿った牧草地に生える。
 稈は高さ75㎝×太さ2㎜まで、ザラつく。鞘の前面は淡褐色または赤色で不明瞭な斑点があり、先は凸形、膜質、しわがある。葉舌は円形、長さ3㎜まで、自由な拡大部は長さ0.2㎜まで。葉身は60㎝×5mmで花茎より短い。 花序は穂状花序、長さ4~7㎝×幅約15㎜、10~15本の枝があり、下部は通常明瞭。下部の節間は1.5㎝まで。苞は剛毛状(setaceous)、下部の1~3個の苞は目立ち、上部の苞は鱗片状。鱗片は透明、赤褐色で縁は狭く無色、芒は長さ1.5㎜まで。果胞(perigynia)は金褐色、外面に3脈があり、体は広楕円形~卵形、長さ2.2~3㎜×幅1.5~2.2㎜、基部は丸く、嘴は長さ0.5~1.2㎜、体の1/3の長さ。痩果は赤褐色、円形、長さ1.2~1.5㎜×幅1~1.2㎜、光沢がある。果期は7~8月。

11 Carex aphanolepis Franch. et Sav. エナシヒゴクサ 柄無し肥後草
 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国原産。中国名は匿鳞薹草 ni lin tai cao。道端、草地に生える。和名はヒゴクサに似て、雌小穂の柄がないことから。果胞の嘴が短く、柱頭も短いなど他の相違点も多い。
 多年草、高さ20~40㎝。細長い根茎を横に伸ばし、まばらに叢生する。基部の鞘は淡色。葉は幅2~4(6)㎜。小穂は2~4個つく。頂小穂は雄性、長さ1.5~3㎝、線形、柄は長さ2~15㎜。雌性の側小穂は、長さ7~12(20)㎜×幅6~7㎜の円柱形、ほとんど柄が無い。最上部の雌小穂はほとんど柄がなく、上から2番目の雌小穂の柄は長さ0~1.5㎜と短い。3番目の雌小穂の柄は長さ2~5㎜。小穂は直立し、果期にも垂れ下がらず、柱頭はヒゴクサほど長くない。果期には果胞は膨らみ、軸にほぼ直角になる(開出)。果胞は長さ3~3.5㎜、嘴は短く、口部は2歯。雌鱗片は果胞より短く、鋭尖頭。果実は果胞よりかなり小さく、長さ1.8~2㎜の3稜のある倒卵形、柱頭は3岐。花期は4~6月。

12 Carex aphyllopus Kük. var. aphyllopus タテヤマスゲ 立山菅
 日本固有種。本州(中部地方以北)に分布。亜高山~高山の湿地や草原に生える。  多年草、高さ30~60cm。根茎が横走して広がり、まばらに叢生する。茎の基部の鞘は葉身がなく、紅紫色を帯びる。花序は頂部の1~3個の小穂が雄性、褐色、その下部に雌性の無柄~短柄の小穂が2~3個つき、下垂せず直立する。果胞は雌鱗片と同長または短く、細脈が3~4本あり、無毛、上部は急に狭まり短い嘴があり、口部は切形。柱頭は2岐。花期は7~8月。

12-1 Carex aphyllopus Kük. var. impura (Ohwi) T.Koyama ヒルゼンスゲ 蒜山菅

  synonym Carex impura Ohwi
 日本固有種。岡山県蒜山の山地の草原に自生する。タテヤマスゲに似るが、果胞が細長く、果胞は雌鱗片よりやや長い。
 多年草、まばらに叢生する。基部の鞘は赤褐色。花序は上部の1~3個の小穂が雄性。雌小穂は雄小穂の下部に側生し、無柄。鱗片は褐色~黒紫色。果胞は雌鱗片と同長または長く、長さ3.5㎜以上で、4~5脈があり、無毛、上部は外曲するやや長い嘴があり、口部は切形。柱頭は2岐。

13 Carex apoiensis Akiyama アポイタヌキラン 
 日本固有種。北海道に分布する。渓流の岩場に生える。
 多年草、高さ30cm内外の多年草。地下に木質の根茎があり、岩のすき間などに叢生する(geophyte)。基部の鞘は暗赤褐色。葉は茎より短い。小穂は2~4個つき、上部に雄小穂がつき、下部に雌小穂がつく。雄小穂は長円形、雄鱗片は濃紫色で長い芒がある。雌小穂は長い花序柄があり、下垂する。雌燐片は濃赤紫色、長い芒がある。果胞はほぼ無毛、雌鱗片より長く、披針形、長い嘴があり、口部は凹形または2歯があり、黒紫色。花柱は長さ8~10㎜。柱頭は3岐、長さ5~7㎜、宿存する。花期は5~6月。

14 Carex aquatilis Wahlenb. クロアゼスゲ 黒畔菅 広義
 北、中央および東ヨーロッパ~シベリア、カナダ東部~USAの温帯~寒帯に広く分布。
 叢生しない。稈は高さ20~150㎝。基部の鞘は赤褐色~褐茶色。下部の葉の鞘は無毛で、前面には不明瞭な斑点があり、葉脈がなく、先はU字形。葉身は通常、両面に気孔があり(amphistomic)、両面にパピラがある。花序:下部の苞は花序より長い。小穂:下部の2~6個の小穂は雌性。頂生の(1~)2~4個の小穂は雄性。 雌鱗片は赤褐色~紫褐色、先は鈍形または鋭形で芒がない。果胞は斜上し、脈がなく、やや扁平で、痩果を緩く包み、楕円形または倒卵形、鈍く、先は鈍形または鋭形、パピラがある。痩果はくびれがなく、光沢がある。2n=72~80。
 4変種がある。Carex aquatilis は周北植物(circumboreal)で、変化しやすい。 広範囲に交雑する4変種が確認されている。この種は次の特徴がある。両面に気孔があり(amphistomic)、var. divesでは外気孔(epistomic)であり、パピラがあり、無毛の鞘は頂部が凹形。果胞は脈がなく、通常下半分に褐色の斑点がある。痩果は光沢がある。
14-1 Carex aquatilis var. minor Boott クロアゼスゲ 黒畔菅
  synonym Carex aquatilis Wahlenb. var. stans (Drej.) Boott
  synonym Carex stans Drejer
 カナダ、アラスカ、グリーンランドに分布。標高0~600mの湿ったツンドラに生える。
 稈は35~100cm、角(かど)はザラつく。葉:基部の鞘は葉身がなく、通常は赤褐色。葉身は両面に気孔があり(amphistomic)、幅5~8mm、両面にパピラがある。花序:下部の小穂の花序柄は長さ4㎝以下。下部の苞は花序より長く、幅4~8㎜。小穂は直立し、下部の3~4個の小穂は雌性、長さ2~4cm×幅4~7㎜、基部は楔形または漸尖形。頂部の1~3個の小穂は雄性。雌鱗片は淡赤褐色で、狭い淡色の中脈がある。果胞は長さ2~3㎜×幅1.2~2mm、先は丸く、嘴は淡褐色、長さ0.2㎜以下、肥厚する。2n=76。果期は7~8月。

15 Carex arenicola F.Schmidt クロカワズスゲ 黒蛙菅
 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、ロシア原産。湿った草地、海岸や湖畔などの砂質の湿地に生える。
 多年草、高さ10~30㎝。根茎は長く横に地中を這い、茎は硬く、疎らに直立する。葉は幅2~3㎜。葉舌はない。花序は茎頂につき、長さ1.5~3㎝、数個の無柄の小穂を密につける。小穂は長さ5~8㎜、雄雌性花序(androgynous)、上部に雄花、下部に雌花をつける。小穂が密生し、果期には全体が1個の褐色の小穂のように見える。果胞は無毛、長さ3~4(3.7~5.2:Flora of North America)㎜の卵形、上部は長い嘴があり、口部が斜めの切形。果胞の基部は中央に溝があり、中身が海綿質で肥厚し、果実(痩果)は果胞の上半分ほどに入る。雌鱗片は鈍い淡褐色、縁が膜質。柱頭は2岐。果実は長さ1.7㎜。花期4~5月。

16 Carex argunensis Turcz. ex Ledeb. アルグンスゲ 
 中国、モンゴル、ロシア原産。中国名は额尔古纳薹草 e er gu na tai cao。

17 Carex argyi H.Lév. et Vaniot  ワンドスゲ 
 中国原産。中国名は阿齐薹草 a qi tai cao。

18 Carex argyrolepis Maxim. ex Franch. & Sav. ミノボロスゲ 簑襤褸菅
  synonym Carex albata Boott ex Franch. & Sav.
  synonym Carex nubigena var. albata Kük. ex Matsum.

  synonym Carex nubigena subsp. albata (Boott ex Franchet & Savatier) T. Koyama [Flora of China ,YList]

  synonym Carex nubigena subsp. albata (Kük. ex Matsum.) T.Koyama

  synonym Carex ablata var. laxiuscula (Kük.) Sutô
  synonym Carex nubigena f. laxiuscula Kük.
 日本(北海道の西南部、本州の中部地方以北)、千島列島、朝鮮、中国原産。中国名は褐红脉薹草 he hong mai tai cao。愛知県は分布の南限にあたり、三河地域でもまれに見られる。愛知県の絶滅危惧Ⅱ類に指定されている。
 多年草、高さ20~60㎝。根茎は短く、叢生する。茎は稜が鋭く、ざらつき、基部の葉鞘は赤褐色~黒褐色。葉は幅2~3㎜、花茎より短い。茎頂に円柱形の花序を1個つける。花序は長さ2~5㎝、雄雌性(androgynous)の小穂を多数、密につける。苞は細く、長さがバラつき、花序より短いものが多い。小穂は無柄、長さ5~8㎜、雌花が多数つき、頂部に雄花がつく。果胞は赤褐色を帯び、長さ4~5㎜、上面が平らな卵状披針形(広披針形)、長い嘴があり、縁に狭い翼がつき、ザラつき、口部は2歯。鱗片は果胞より短く、褐色、中肋は緑色、縁は薄膜質。痩果は褐色、光沢があり、長さ約1.3㎜の卵状円形。柱頭は2岐。 2n=112。果期は5~7月。

19 Carex arisanensis Hayata アリサンタマツリスゲ
 中国、台湾原産。中国名は阿里山薹草 a li shan tai cao。

20 Carex arnellii Christ アルネルスゲ 
 朝鮮、中国、モンゴル、ロシア、カザフスタン原産。中国名は麻根薹草 ma gen tai cao。

21 Carex ascotreta C.B.Clarke ex Franch. カレックス・アスコトレタ

  synonym Carex davidi var. ascocentra (C.B.Clarke ex Franch.) Kük

  synonym Carex ichangensis C.B.Clarke
 Flora of ChinaではC. formosensis H. Léveillé & Vaniotがsynonymとされ、日本、朝鮮が分布域に含まれていたが、Kewscienceでは分布は中国だけ。
 中国(貴州省、湖北省、湖南省、陝西省、四川省)原産。中国名は宜昌薹草 yi chang tai cao。標高100~1100mの低い丘の上の森林、湿った場所、道端に生える。
 根茎は丈夫で、古い鱗片の繊維状の褐色の残骸で覆われる。稈は高さ10~60㎝、不明瞭な三角形、平滑、根生葉の葉鞘は暗褐色で、繊維状に裂ける。葉は稈より短いかまたは長く、葉身は幅2~4㎜で平らで、縁には棘があります。苞は葉状で、葉身は花序より短く、鞘があり、鞘は長さ5~18㎜。小穂は4~6個。花序柄は直立し、苞葉の鞘にほぼ包まれる。頂生の小穂は雄性、線形、長さ1~4㎝×幅約0.2㎝、花序柄は長さ2~14㎜。側小穂は雌性、長円形~円筒形、長さ12~40×幅2~4mm、上部の小穂は連続し、最下部の小穂は間隔が開く。雌鱗片は淡黄緑色、楕円形、長さ2.5~3㎜(芒を除いて)、緑色の肋に3本の脈があり、長さ2~4 mmのザラつく芒になり、突き出し、先は凹形または鋭形。果胞は緑色、鱗片よりわずかに長く、またはほぼ等長、紡錘形、長さ3.5~4㎜、膜質、微軟毛があり、、多数の脈があり、基部は漸尖して長さ0.5~0.6㎜の短い柄になり、先は漸尖しわずかに反った嘴になり、口部は斜めの切形。小堅果は黄褐色、しっかりと包まれ、紡錘形、長さ約2.5㎜、中央で角(かど)がくびれ、上下に面が掘られ、基部に長さ約1㎜の柄があり、先には短い円筒形の首(嘴)があり、首は先端が浅く凹み、淡黄色、長さ0.4~0.5㎜。花柱の基部はわずかに太くなる。柱頭は3岐。花果期は4~5月。

22 Carex atherodes Spreng. ノゲスゲ 

  synonym Carex orthostachys var. spuria Y.L.Chang & Y.L.Yang

 北半球に広く分布。日本、韓国には自生しない。標高50~2800mの沼地、湿った草原や牧草地、開けた沼地、湿った開いた茂み、開けた小川、池、湖畔、溝、しばしば、水深60~80 cmの水中に生える。(Flora of North America)。日本でも確認されている。
 稈は中空、基部付近は海綿状、断面は三角形、長さ35~125㎝。栄養稈は中空、押すと扁平になり、稔性の稈よりも高い。葉: 基部の鞘は赤紫色、内側の帯は古くなると小繊維で覆われる(fibrillose)。鞘は 内側の帯の先が淡褐色~鈍い赤紫色、毛があるかまたは少なくとも先はザラつき、まれに無毛になる。葉舌は長さ(6~)11~45㎜、葉身は幅3~10㎜、通常疎~中程度に長い毛があり、下面に細かいパピラがあり、上面は無毛。花序は長さ12~60㎝。小穂は直立または斜上し、下部の2~5個の小穂は雌性、頂部の(1~)2~6個の小穂は雄性。雌鱗片は披針形~狭卵形、先は鋭形、目立つザラつく芒があり、無毛または中肋付近はザラつく。雄鱗片は披針形~狭卵形、先は鈍形~尖鋭形、ザラつく芒があり、無毛、またはまれにまばらに毛がある。果胞は12~21脈があり、長さ(6.5~)7~12㎜×幅1.8~3.8㎜、無毛、嘴は長さ2.1~4㎜、無毛(まれに主脈上に少数の開出毛があり)、歯は開出~外側に湾曲し、長さ(1.2~)1.5~3㎜。果期は6~8月。

23 Carex athrostachya Olney ヒメヤガミスゲ 姫八神菅
 カナダ、アラスカ、USA原産。英名はslenderbeak sedge。標高100~4000mの季節的に湿った牧草地、湿地、池、湖の縁に生える。日本に帰化している。
 密に叢生する。稈は高さ(5~)20~80㎝。葉: 鞘の頂部は通常U字形、ときに襟を越えて長さ2.5(~4)㎜まで伸びる。上部の葉舌は長さ1~3(~5)㎜。稔性の稈あたり 3~4(~5)個の葉がつき、葉身は長さ10~20㎝×幅(1.5~)2~3(~5)㎜。花序は直立し、密な、頭状花序状、緑色~褐色、長さ(0.8~)1.5~2.2㎝×幅7~20㎜。下部の節間は長さ1.5~5㎜。2番目の節間は長さ1~3.5㎜。下部の2~3個の苞は葉状で、斜上~広がり、花序よりもはるかに長く、通常幅1.8㎜未満、基部は稈を±取り囲む。小穂は(5~)7~10(~14)個、個々が明瞭または不明瞭、広卵形~卵形、長さ(4.5~)7~10㎜×幅4.5~7(~9)㎜、基部と先は切形~鋭形。雌鱗片は金色~褐色で、帯白色~緑色または黄褐色の中央脈があり、披針形~卵形、長さ2.4~4.3㎜、短く、果胞より狭く、ときに縁は白色になり、幅0.25㎜、先は尖鋭形~芒がある。果胞は斜上~斜上開出し、クリーム色~薄褐色、外側に0~9本の脈が目立ち、内側に0~8本の脈が目立ち、卵形~披針形、平凸形または平坦、長さ(2.8~)3.5~4(~4.8)㎜×幅(0.8~)1~1.5(~1.8)㎜、厚さ0.35~0.45㎜、縁は平ら、翼を含んで幅(0.1~)0.2(~0.5)㎜、果胞の上部の翼は縁毛がある小鋸歯があり、嘴は金色~先が赤褐色、円筒形、翼がなく、外側の縫合線は通常明瞭な白色の縁をもち、嘴の先端から痩果までの距離は長さ1.9~2.5㎜、少なくとも長さ0.4~0.9㎜は全縁。痩果は無柄または短柄があり、卵形~倒卵形、長さ(1~)1.2~1.6㎜×幅0.7~1㎜、厚さ0.3~0.4㎜。2n=68。果期は春の終わり~夏。

24 Carex atrata L. クロボスゲ 黒穂菅 広義
 日本(北海道、本州中部)、韓国、中国(吉林省、青海省、四川省、新疆ウイグル自治区、西蔵、雲南省)、台湾、モンゴル、ロシア、ブータン、インド、ネパール、中央アジア、ヨーロッパ原産。中国名は黑穗薹草 hei sui tai cao。高山の凍土、茂み、高山の牧草地に生える。
 根茎は通常短い。稈は密に叢生し、高さ15~65㎝、三角形、上部がザラつき、頂部がわずかに 傾き、基部は紫赤色の葉身のない鞘で覆われ、わずかに網状の繊維に崩壊する。葉は稈より短く、葉は線形で幅3~5㎜。下部の1~2個の苞は葉状で鞘がなく、上部の苞は剛毛状または鱗片状である。小穂は3~5個、隣接する。頂生の小穂は雌雄性花序(gynaecandrous:雌花が雄花の上につく)、倒卵形または長円形。側小穂は雌性、長円形、長さ10~15㎜×幅5~6㎜、下部の2個は長い花序柄を持ち、垂れ下がる。雌鱗片は褐色、暗褐色、または紫褐色で、卵形~狭卵形、1脈のある淡褐色がかった肋が先端で微突になり、先は鋭形~尖鋭形。果胞は帯褐色、特に上部が帯褐色になり、鱗片とほぼ同長かわずかに短く、または長く、楕円形または卵形、平凸形、長さ3~3.5㎜、微細なパピラがあり、端の2肋を除いて目立った脈はなく、先は急に狭まり、円錐形の短い嘴になり、口部には浅い2歯がある。小堅果は緩く包まれ、倒卵形、三角形、長さ1.5~1.7㎜。花柱は基部が太くない。柱頭は3岐。花期は7~8月。

24-1 Carex atrata subsp. aterrima (Hoppe) S. Yun Liang

 中国(新疆)、モンゴル、ロシア(シベリア)、中央アジア原産。中国名は大桥薹草 da qiao tai cao。
 果胞は長さ4~4.5㎜。
24-2 Carex atrata subsp. atrata クロボスゲ 狭義

  synonym Carex atrata L. subsp. apodostachya (Ohwi) T.Koyama タイワンクロボスゲ 

  synonym Carex atrata L. subsp. japonalpina (T.Koyama) T.Koyama
 日本(北海道、本州中部)、韓国、中国(吉林省)、台湾、ロシア、ブータン、インド、ヨーロッパ原産。中国名は黑穗薹草 hei sui tai cao。高山の凍土、茂みに生える。
 雌鱗片は卵形で、先は鋭形。果胞は無柄、先は急に狭まり円錐形の短い嘴になる。

24-3 Carex atrata subsp. longistolonifera (Kükenthal) S. Yun Liang

 中国(四川省)原産。长匍匐茎薹草 chang pu fu jing tai cao。
 根茎は長く、這う。

24-4 Carex atrata subsp. pullata (Boott) Kükenthal

 中国(四川省、西蔵、雲南省)、台湾、インド(シッキム)、ネパール原産。中国名は尖鳞薹草 jian lin tai cao。標高3000~4800mの高山の牧草地に生える。
 雌鱗片は披針形、先は長く尖鋭形。果胞は短い柄があり、先は急に狭まり非常に短い嘴になるかまたは嘴がなく、開口部は凹形。

25 Carex atrofusca Schkuhr カラフトタヌキラン 
 亜寒帯から温度までの北半球に広く分布。中国などアジアには亜種が分布する。
 高さ10~25㎝。茎は鈍い3角(かど)がある。葉は幅1.5~4㎜、平らで硬い。花序は長さ3~6cm、雌の小穂は2~4個つき、卵形、長さ1~1.5cm、花序柄は長さ2cmまでで、うなずく。雄の小穂は1~2個つく。柱頭は3岐。苞は小さい。鱗片は黒赤色。果胞は最終的に黒色になり、無毛、長さ3.5~5㎜、先は細くなり、小さな嘴がある。花期は7~8月( Flora Helvetica 2018)。

25-1 Carex atrofusca Schkuhr subsp. minor (Boott) T. Koyama

 中国(甘粛省、青海省、四川省、新疆ウイグル自治区、西蔵省、雲南省)、アフガニスタン、ブータン、インド、カシミール、ネパール、中央アジア原産。中国名は黑褐穗薹草 hei he sui tai cao。標高2000~5200mの高山および亜高山の茂みの中、草原に生える。

26 Carex augustinowiczii Meinsh. ex Korsh. ヒラギシスゲ 平岸菅
 北海道、本州(中部以北)、中国、ロシア原産。中国名は短鳞薹草 duan lin tai cao。別名はエゾアゼスゲ。高山の湿地、渓流の水辺に生える。
 多年草、高さ30~60㎝。根茎は短く、密に叢生して、大株になり、ときに匍匐枝を出す。基部の鞘は淡褐色~赤褐色、細裂して繊維状になる。葉は幅2~4㎜、柔らかい。頂小穂は長さ5~15㎜、直立し、雌雄性(gynaecandrous:雌花が雄花の上につく)又は雄性。側小穂の雌性小穂は長さ1~3㎝、3~5個、直立してつき、上部に2~3個ほど集まり、下部にも離れてつき、小穂の基部に雄花をつけることがある。苞は葉状、最下の苞は無鞘。果胞は長さ2.5~3㎜の卵形、無毛、嘴は短く、口部は全縁。雌鱗片は果胞より短く、幅も狭く、黒紫褐色、中肋は緑色。果実は長さ1.5~2㎜の楕円形で3稜形。柱頭は3岐。果期は7~8月。

26-1 Carex augustinowiczii Meinsh. ex Korsh. var. sharensis (Franch.) Ohwi シャリスゲ 斜里菅


27 Carex autumnalis Ohwi オオナキリスゲ 大菜切り菅
 日本(本州の近畿以西、四国、対馬)、中国(福建省、浙江省)原産。中国名は秋生薹草 qiu sheng tai cao。渓谷の日陰の場所に生える。
 根茎は短い。 稈は房叢生し、細く、高さ 50~60(~70)㎝、3稜形、平滑。 葉は根生し、多数つき、稈より短く、葉身は幅2~3mm、±堅く、下部で二つ折りになり、上部は平坦、縁がザラつき、鞘は長さ4~5㎝、膜質部分は通常裂け、基部には暗褐色で葉のない鞘が少数ある。苞は鞘があり、下部の苞は線形または剛毛状、上部の苞には葉身が無い。小穂は3~6個、またはそれ以上つく。頂生の小穂は雄性、線形、長さ2~3㎝。 残りの小穂は雄雌性花序(androgynous)、雄性部は非常に短く、ときに、雄花が1~2個だけつき、まれに雄花が無く、雌花が緩く付き、円筒形、長さ1~2.5㎝、細い花序柄がある。雌鱗片は黄褐色、卵形、長さ約2.5㎜、膜質、1肋があり、先は鈍形または鋭形、ときに微突形。果胞は栗褐色、斜めに開出し、鱗片より長く、広楕円形、平凸形、長さ約3.5㎜、膜質、細い数本の脈があり、脈にはまばらに小剛毛があり、基部は楔形、短い柄があり、先は徐々に狭くなって中型の嘴になり、口部は凹形。小堅果は楕円形、扁平な平凸形、長さ約1.8㎜。花柱は短く基部は太くなる。柱頭は2岐、中程度の大きさ。花果期は9~10月。

28 Carex baccans Nees ヒエボスゲ 稗穂菅
 中国(福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、海南省、四川省、雲南省)、台湾、カンボジア、インド、ラオス、マレーシア、ネパール、タイ、ベトナム原産。中国名は浆果薹草 jiang guo tai cao 。標高200~2700mの森の端、川辺に生える。

29 Carex bebbii (L.H.Bailey) Olney ex Fernald コツブアメリカヤガミスゲ

 北アメリカ(カナダ、アラスカ、USA)原産。標高0~2100mの石灰質または中性土壌の湿った場所、砂利の多い湖岸、川岸、牧草地、森林の湧出帯(seeps)に生える。日本に帰化している。
 密に叢生する。稈は高さ20~90㎝、栄養稈は目立たず、頂部に少数の葉が集まる。葉:鞘は白色透明または緑色の脈があり、ときにパピラがあり、頂部はU字形で、上部は広がらない。上部の葉舌は長さ2.2~6㎜。葉身は稔性の稈あたり3~4枚つき、長さ11~25㎝×幅1.7~4.2㎜。花序はほとんどが密で、褐色、長さ1.1~3㎝×幅5~14㎜。下部の節間は長さ1~4㎜。2番目の節間は長さ1.4~3.4㎜。下部の苞は鱗片状で、剛毛の先端は花序より短い。小穂は3~10個、通常は重なり、卵形~球形、長さ4~10㎜×幅3~7㎜、基部は円形~切形、先は円形。雌鱗片は赤褐色で、通常は緑色または帯白色~褐色の中脈があり、披針形、長さ2.5~3.5㎜、果胞より短くて狭く、先は尖鋭形または鋭形。果胞は斜上~斜上開出し、薄赤褐色~暗赤褐色、外側に明瞭な3本以上の脈があり、内側にかすかにまたは基部に1~3本の脈があり、基部に翼があり、卵形または楕円形、平凸形、長さ2.5~3.8㎜×幅(1~)1.2~2㎜×厚さ0.35~0.45㎜、幅の1.9~2.5倍の長さがあり、縁は平らで翼を含んで幅0.2~0.5㎜、縁に縁毛のある小鋸歯があり、少なくとも上部にはある。嘴の先端は赤褐色、平ら、±縁毛のある小鋸歯があり、外側の縫合線は縁が赤褐色の透明、嘴の先端から痩果までの距離は1.2~2.2㎜。 痩果は卵形または楕円形、長さ1~1.3㎜×幅0.6~0.9㎜、厚さ0.3~0.4mm。 2n=68, 70。果期は初夏。

30 Carex benkei Tak.Shimizu ベンケイヤワラスゲ 弁慶柔菅
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国(安徽省)原産。中国名は东亚薹草 dong ya tai cao。Flora of Chinaの解説と異なり、やや全体に大きく、果期も遅い。
 根茎は短い。稈は叢生し、高さ30~60[60~170]㎝、三角状、滑らかで、基部の鞘は葉身がなく[白色~]薄褐色、繊維状に分解する鞘はほとんど無い。葉は稈より短く、葉身は幅3~4[4~8]㎜、平らでやや硬い。苞は稈より長く、葉状、最下の苞の鞘は長く、上部の苞の鞘はやや短い。小穂は3~4個、かなり離れる。頂生の小穂は雄性、線形、長さ1~2[2~4.5]㎝、短い花序柄がある。側小穂は雌性、長円形または長円状円筒形、長さ1~3[2~4.5×0.8~0.9]㎝、多数の花が密につき、最下の小穂には長い花序柄があり、上部の小穂にはやや短い花序柄がある。雌の鱗片は淡色、披針状卵形、長さ4~5[3~5.5]㎜、膜質、1~3脈があり、先には芒[1~4㎜]がある。果胞は褐緑色、斜めに開出し、成熟すると垂直に開出し、鱗片よりわずかに長く、広倒卵形で、膨らんだ三角形、長さ約4.5[4~6]㎜、膜質、無毛、多数の脈があり、基部に明瞭な柄があり、先は急に狭まり長い嘴になり、口部には2歯がある[凹形]。小堅果は褐色、わずかに緩く包まれ、広楕円形または広倒卵形で、三角形、長さ約2㎜。柱頭は3岐、短い。花果期は4~5[5~6]月(Flora of China、[]は日本産)。

31 Carex bigelowii Torr. ex Schwein. オハグロスゲ お歯黒菅 広義
 日本、朝鮮、中国、チベット、ネパール、モンゴル、ロシア、トルコ、ヨーロッパ北部、北アメリカ、グリーンランド原産。英名はstiff sedge 。
 多年草、叢生または叢生しない。稈は鋭角で、長さ10~50㎝、ザラつく。葉:下部の葉の鞘は無毛、前面には斑点と脈がなく、先は凹形。葉身は幅1.5~4㎜。花序:下部の苞葉は剛毛状(setaceous)または葉状(foliaceous)、花序より短く、幅0.5~3㎜。小穂は直立する。下部の(1~)2~3個の小穂は雌性、長さ0.7~3㎝×幅3~4㎜、基部は楔形または漸尖形。頂生の1(~2)個の小穂は雄性。雌鱗片は黒色、果胞と同長かそれより短く、先は鈍形または鋭形で、芒はない。果胞は斜上し、緑色、先に1/2に紫黒色の斑点があるかまだらになり、脈がなく、やや平らで、痩果をしっかりと包み、楕円形、長さ1.5~3.5㎜×幅0.9~2㎜、鈍く、先は丸いかまたは鋭く、パピラがあり、果柄は長さ0.45㎜まで、嘴は長さ0~0.2(~1)㎜。痩果はくびれず、鈍い。

31-1 Carex bigelowii subsp. arctisibirica (Jurtzev) Á.Löve & D.Löve

 ヨーロッパ北部原産。
31-2 Carex bigelowii subsp. bigelowii
 朝鮮、ロシア、ネパール、トルコヨーロッパ北部、北アメリカ、グリーンランド原産。

31-3 Carex bigelowii subsp. ensifolia (Turcz. ex Gorodkov) Holub

 中国、モンゴル、ロシア、チベット原産。

31-4 Carex bigelowii subsp. lugens (Holm) T.V.Egorova オハグロスゲ お歯黒菅

  synonym Carex lugens Holm
 日本(北海道の大雪山)、ロシア、北アメリカ原産。標高0~1500mの乾燥したツンドラから湿ったツンドラに生える。
 通常、叢生する。稈は高さ10~30㎝。小穂は3~5個つき、頂生の小穂は雄性。下部の雌小穂は長楕円形、密に花がつき、基部は楔形で、たまに漸尖する。鱗片は幅広く、黒褐色。果胞は緑色、先の半分が均一に紫黒色になり、長さ1.5~2.9㎜×幅0.9~2㎜、果柄は長さ0~0.15㎜、先は丸いか鋭く、強く~微細なパピラがある。2n=80(アジア)。花期は7~8月。果期は8~9月

32 Carex bilateralis Hayata ヒラミスゲ 
  synonym Carex acrophila S.T.Blake
  synonym Carex asperinervis T.Koyama
  synonym Carex kotoensis Hayata
  synonym Carex spathaceobracteata Kük.
  synonym Carex subteinogyna Ohwi
 台湾、ニューギニア原産。中国名は台湾薹草 tai wan tai cao。標高1800~2000mの森林、山の斜面の湿った場所に生える。

33 Carex blinii H.Lév. & Vaniot タイホクスゲ 台北菅
  synonym Carex taihokuensis Hayata
 日本(南西諸島[石垣島、沖縄本島、国頭村])、朝鮮、中国(広西チワン族自治区、貴州省、上海)、台湾、タイ、ベトナム、フィリピン原産。中国名は白里薹草 bai li tai cao。標高300~700mの森の常緑樹林の小川に生える。
 根茎は短い。稈は側生、叢生し、高さ3~13㎝、三角形、上部はザラつく。基部の鞘は暗褐色、長さ1~2㎝、繊維状に崩壊する。葉は根生葉、かなり稈を超え、葉身は線形、幅2~7㎜、平らな扇だたみ(plicate)、先は長い尖鋭形。最下の苞は葉状、長さ1.5~2.5㎝、花序を超える。小穂は2~4個、密集してつく。頂生の小穂は雄性、線状こん棒形、長さ3~5㎜。 側小穂は雌性、広楕円形またはほぼ球形、長さ5~7㎜、わずかに密に花がつき、±無柄。雌鱗片は暗褐色または帯白色、三角形~三角状披針形~広卵形、または三角状卵形、長さ1.5~2.7㎜、縁は透明、緑色の3脈があり、肋は突き出して短い微突になり、先は鋭形または尖鋭形。果胞は鱗片より長く、開出し、卵状菱形、三角形、長さ3~4㎜×幅1.6~1.8㎜、粉白色、無毛~微軟毛があり、10~14脈があり、基部には短い柄があり、先は次第に狭まり、円錐形の嘴になり、嘴は長さ約0.6㎜、口部には深い2歯があり、歯は長さ約0.5㎜以下。小堅果はきつく包まれ、広卵形、三角形、面は凹面、長さ2.3~2.4㎜×幅約1.6㎜、花柱の基部が太くなる。柱頭は3岐。

34 Carex bitchuensis T.Hoshino et H.Ikeda ビチュウヒカゲスゲ 備中日陰菅
 日本固有種。岡山県北西部に分布し、石灰岩地域に生える。ビッチュウヒカゲスゲの染色体数は2n=36であり、よく似たヒカゲスゲ(C. lanceolata Boott)2n=72のや、タカヒカゲスゲ(C. pediformis C.A.Meyer)2n=70の染色体数とは異なり、2003年に新種として報告された。
 多年草。 根茎は短く這い、斜上し、灰褐色の葉鞘の繊維状の残骸で覆われる。葉身は線形、ほぼ平ら、開花時に長さ7~12㎝、開花後に伸長し、幅2.5~3㎜、縁はわずかにザラつく。基部の鞘は鉄さび色~栗子色(castaneous)で、平行な繊維状に裂ける。稈は高さ12~23cm、根生葉とほぼ同長かわずかに高く、上部はわずかにザラつく。小穂は3~4個、直立する。頂生の小穂は雄性、線状こん棒形、長さ15~20㎜×幅1.5~3(~3.5)㎜、下部の小穂より高い。鱗片は狭楕円形~広倒披針形、長さ6~7㎜×幅1.4~2.2㎜、先は鋭形または短い芒があり、中央は淡栗子色~鉄さび色、縁は透明で帯白色。側小穂は雌性、線形、長さ5~15㎜、緩く2~5個の花をつける。雌鱗片は卵形~広卵形、長さ3~3.5㎜×幅2~2.5㎜、先は尖鋭形または芒があり、中央は淡栗子色~鉄さび色、縁は透明で帯白色。雌小穂の基部の苞は仏炎苞状(spathaceous)、葉身はなく、長さ5~18㎜、頂部は短い芒があり、透明な帯白色の縁を除いて淡栗子色~鉄さび色。前出葉(prophyll)は仏炎苞状、雌穂状花序を取り囲み、透明で、無毛。花序柄は苞からわずかに突き出し、毛がある。雄しべは3本。花糸は糸状、長さ3.5~4 mm。葯は線形、長さ約3mm×幅0.2~0.4mm。子房は1個、果胞に包まれ、狭倒卵形、長さ1~1.2㎜×幅0.5~0.7㎜、不明瞭な三角形、胚珠は1個。胚珠直性(ovuorthotropous)。花柱1本、3岐、糸状、羽毛状、長さ4~5㎜、果時に脱落する。 果胞は卵形、太い斜めの柄を持ち、長さ2.4~2.6㎜×幅0.8~1.2㎜、不明瞭な三角形、廃れた太い脈があり、密に短毛があり、嘴は非常に短く、長さ0.1~0.2㎜、急に反り返り、鉄さび色、先は全縁。痩果は果胞に包まれ、三角形、長さ2.2~2.4㎜×幅0.7~1.1㎜、無毛。2n=36。果期は11月。

35 Carex biwensis Franch. マツバスゲ 松葉菅
  synonym Carex rara Boott subsp. biwensis (Franch.) T.Koyama
  synonym Carex rara Boott
 本州、四国、九州、朝鮮、中国原産。中国名は松叶薹草 song ye tai cao。湿地に生える。
 多年草、高さ10~40㎝。根茎は短い。葉は幅1~1.5㎜(Carex rara:0.5~1㎜)。直径約1㎜の茎の先に長さ10~20㎜の雄雌性花序(androgynous)の小穂を1個ずつつける。上部は長さ約1㎝(Carex rara:4~12㎜)の細い淡褐色の雄花部、下部は幅約4㎜の黄緑色の雌花部。雌花部は雄花部とほぼ同長(Carex rara:4~10㎜)。果胞は長さ1.5~2㎜(Carex rara:1.5~2.5㎜)、明瞭な6~10脈があり(Carex rara:不明瞭な脈又は基部に明瞭な脈があり、ときに錆のような点がある)、果実をゆるく包み、斜上、ときに平開する。雌花の鱗片は赤褐色で、果胞とほぼ同長~やや小さい(Carex rara:1.5~2㎜、3脈がある)。果実は長さ約1.4㎜(Carex rara:1~2㎜)、三稜形、褐色。柱頭は3岐。花期は4~5月。

36 Carex blepharicarpa Franch. ショウジョウスゲ 猩々菅
 日本固有種。北海道、本州、四国、九州に分布。低地~山地の斜面、草地に生える。和名は、小穂が赤褐色であり、猩々(毛が赤茶色の伝説の獣、オランウータンの漢名)の毛を連想することから。
 多年草、高さ20~50㎝。茎は密に大きく叢生する。基部の鞘は褐色~暗褐色であり、若いうちは光沢があり、後に繊維状に細裂する。前年葉は倒れ、新葉が出て花茎が出る。葉は幅2~4㎜。花時に葉は花茎より短く、花後に花茎より葉が長くなる。茎頂の雄小穂は長さ1~3㎝の棍棒形、淡赤褐色。側小穂は雌性、長さ1~3㎝、やや長い柄があり直立する。苞は小穂より短く、褐色の鞘がある。雄鱗片は先が円形で芒がなく、、2脈のものと1脈のものが混じる。雌鱗片は果胞よりも短く、濃栗褐色、縁は透明、先は円形~凹形で短い芒がある。果胞は長さ4~6㎜、密に毛があり、嘴はやや長く、口部は凹形又は2小歯。柱頭は3岐。果期は4~8月。

36-1 Carex blepharicarpa Franch. var. insularis Nakai タケシマショウジョウスゲ 

36-2 Carex blepharicarpa Franch. var. stenocarpa Ohwi ナガミショウジョウスゲ 

 別名はツクバスゲ。半地表性の細長い根茎がある。果胞の先が長い嘴になり、口部に鋭い明瞭な2歯がある。

37 Carex blinii H.Lév. & Vaniot タツタカスゲ
  synonym Carex tatsutakensis Hayata
  synonym Carex taihokuensis Hayata

  synonym Carex blinii subsp. shanghaiensis (S.X.Qian & Y.Q.Liu) S.Yun Liang & T.Koyama

 朝鮮、中国(広西チワン族自治区、貴州省、上海)、台湾、タイ、ベトナム、フィリピン原産。中国名は白里薹草 bai li tai cao。標高300~700mの常緑樹林、森の中の小川沿いに生える。
 タツタカスゲはタイホクスゲ(Carex taihokuensis Hayata)によく似るが、次により分類できるとされていた。現在はCarex bliniiにまとめられている。
 タツタカスゲは果胞の長さが5~6㎜で表面全体に毛が散生し、基部から中部にかけて脈があるが、中部から先端にかけては無脈であるのに対し、タイホクスゲでは果胞の長さが6~7㎜とやや大きく、表面は無毛か微細な小刺状の毛が散生し、タツタカスゲ同様の脈があるが、一部の脈が嘴部分にまで達することで異なる。

38 Carex bohemica Schreb. カヤツリスゲ 蚊帳吊菅
  synonym Carex cyperoides L.
 日本(北海道、本州の山梨県)、朝鮮、中国(黒竜江省、吉林省、内モンゴル)、モンゴル、ロシア、ヨーロッパ原産。中国名は莎薹草 suo tai cao。 英名はBohemian sedge。標高400~700mの砂質土壌、湿地に生える。
 多年草、根茎は短い。稈は叢生し、高さ25~40㎝、扁平な三角状、平滑。 葉は稈より短く、葉身は淡緑色、線形、幅2~4mm、平らで柔らかい。苞は葉状、花序よりもはるかに長い。花序は頭状花序、球形または卵形、長さ1.5~2㎝×幅1.5~2㎝。小穂は4~15個、雌雄性花序(gynaecandrous)、卵形~長円形、長さ1~1.5㎝。雌鱗片は淡褐色、狭披針形、長さ5~7㎜、1脈があり、先は尖鋭形。果胞は淡緑色または鉄さび黄色、苞頴よりかなり長く、狭披針形、平凸形、長さ7~10㎜、膜質、両面に多数の脈があり、基部に長い柄があり、上縁はザラつく狭い翼があり、先は徐々に狭くなって平らになり、深く2裂した長い嘴をもつ。小堅果はきつく包まれ、長円形、平凸形、約・長さ1.3㎜×幅0.8㎜、基部には短い柄があり、長さ約2㎜。花柱は基部がわずかに太くなる。柱頭は2岐。花果期は[6~]7月。2n=60。

39 Carex bostrychostigma Maxim. ヤマジスゲ 山路菅
 日本(本州の近畿以西、四国、九州、屋久島)、韓国、中国(吉林省、遼寧省、陝西省、浙江省)、ロシア(極東)原産。中国名は卷柱头薹草 juan zhu tou tai cao。標高200~1000mの草原の荒野、水辺、道端の濡れた場所に生える。
 根茎は細長く、木質で、鞘に覆われ、最終的には暗褐色の繊維状に分解する。稈は密に叢生し、高さ20~50㎝、やや細く、鈍い三角形、平滑。 葉は稈より短いかまたはほぼ同長で、葉身は幅3~4㎜、平ら、上面の2本の側脈と下面の肋がザラつき、鞘がある。最下部の1~2枚の苞は葉状で、上部の苞は剛毛状、わずかにザラつき、鞘がある。小穂は5~8個、苞の鞘の中に単生する。頂生の小穂は雄性、線状円筒形、長さ2~4㎝、花序柄は細い。 側小穂は雌性で、間隔は最大6㎝、上部付近はやや短く、狭い円筒形、長さ2~4㎝、緩く多数の花がつく。花序柄はかなり短くて細く、苞の鞘に包まれる。雌鱗片は褐黄色、卵状披針形、長さ4.5~5㎜、膜質、3脈があり、2本の側脈は目立たず、肋はザラつき、縁は広く白色透明、先は鋭形。果胞は黄緑色、ほぼ直立し、鱗片より長く、狭い披針形、三角形、長さ約7㎜、膜質、基部は漸尖し、先は徐々に狭まり長い嘴になり、口部は斜めの切形、縁は白色透明、ときに短い2歯がある。小堅果は黄褐色、きつく包まれ、狭い長円形、三角形、長さ約3.5㎜、基部は短い柄がある。花柱は果胞よりもはるかに長い。柱頭は3岐。花果期は5~7月。

40 Carex brachyanthera Ohwi ナンコスゲ 
  synonym Carex tricuspidata Kük.
 南西諸島、台湾、ニューギニア原産。中国名は垂穗薹草 chui sui tai cao。標高の高い砂地の草原に生える。
 根茎は木質で、かなり太く、通常は匍匐性である。稈は緩く叢生し、高さ30~60㎝、細く、三角形で、上部がザラつき、基部は褐色または暗褐色の鞘で覆われ、繊維状に崩壊する。葉は稈より短く、葉は線形、幅1.5~2.5㎜、わずかに堅く、平らまたは平らなひだ状(扇だたみ)。 最下の苞は葉状で小穂より短く、鞘は長さ3~5㎝、上部の苞は剛毛状である。小穂は3~5個、上部の小穂は隣接~密に隣接して直立し、最下の小穂は非常に遠く離れ、長く突き出た糸状の花序柄につき垂れ下がる。頂生の小穂は雄性、まれに基部に数個の雌花を持ち(androgynous)、こん棒形~線状こん棒形で、長さ2~3㎝。側小穂は雌性、狭い円筒形、長さ2.5~4.5㎝×幅約0.5㎝、ほぼ緩く多数の花をつける。花序柄が突き出し、糸状。雌の鱗片は濃い栗褐色で、上部の縁は淡色、長円形、薄い草質、帯緑色の1脈があり、真っ直ぐなザラつく芒になり、芒は長さ約1㎜、先は切形または浅い凹形。果胞は鱗片よりわずかに長く、直立し、卵状紡錘形、三角形、長さ4.5~5㎜、膜質、基部を除いて密に剛毛があり、縁の2肋を除いてほとんど脈が無く、両端で次第に漸尖し、基部には短い柄があり、先はかなり長い嘴があり、口部は斜めの切形で、2歯がある。小堅果はしっかりと包まれ、卵状楕円形、扁平な三角形、長さ2~2.5㎜、基部には短い柄がある。花柱は基部が太くなる。柱頭は3岐。花果期は7月。

41 Carex breviculmis R.Br. カレックス・ブレビクルミス
 中国、インド、ネパール、ブータン、ミャンマー、ベトナム、フィリピン、インドネシア、ニューギニア、オーストラリア、ニュージーランド原産。中国名は青绿薹草 qing lü tai cao。海岸沿いから山地の開けた草地、低木林地、がれ場の岩上、斜面の崖などにまばらに生える。日本などを分布域に含め、アオスゲの学名とされたこともある。現在のアオスゲの学名はCarex leucochlora Bunge var. leucochlora。
 短い根茎があり、叢生し、通常は低く、密集した明るい緑色のパッチを作る。稈は葉の間に隠れ、通常長さ10~20㎜。基部の鞘は鈍い褐色。葉は稈より長く、幅1.5~3.0㎜、草質、反り返り、溝があり、縁はほぼ全体に密に非常に細かくザラつく。小穂は2~5個、接近し(approximate)、淡緑色。頂生の小穂は雄性、通常は花序柄が無い。残りの小穂は雌性、ときに頂部に数個の雄花を持ち、長さ6~9㎜、±花序柄がある。雄の小穂の丸い基部が集まる。下部につく苞は葉状、非常に狭い線形。最上部の苞はほぼ糸状で、縁は細かくザラつく。雌鱗片は果胞より大きく、卵形、淡緑色、ほぼ白色、膜質、中肋は緑色、硬く、太くなり、丈夫で、細かい剛毛のある芒になる。果胞は約・長さ2.5㎜×幅1.0㎜、両凸形またはほぼ三角形、紡錘形、淡黄緑色、かすかに多数の脈があり、全体に毛がある。嘴はわずかに狭くなり、淡緑色、長さ約0.5㎜、口部は±切形。柄は長さ約0.3㎜、しばしば非常に小さくなる。柱頭は3岐。堅果は長さ約1.5㎜、不明瞭な三角形、長円形、倒卵形、薄褐色、小さな、宿存する、広がった花柱基部が頂部につく。2n=約64。

42 Carex brevicuspis C.B.Clarke オニカンスゲ 鬼寒菅
 中国(安徽省、福建省、湖北省、湖南省、江西省、陝西省、浙江省)、台湾原産。中国名は短尖薹草 duan jian tai cao。標高500~700mの森林に覆われた斜面、川沿いに生える。

43 Carex brevior (Dewey) Mack. ex Lunell ヒレミヤガミスゲ 
 カナダ、USA原産。英名はshortbeak sedge, plains oval sedge, round-fruited sedge。標高0~2700mの草原、牧草地、開けた森、乾いた道路の土手に生える。しばしば石灰質または中性の土壌に生える。日本、スウェーデンに帰化している。
 密に叢生する。根茎はときに短く、古い塊の株では長く見える。稈は高さ15~120㎝。 栄養稈は少なく、目立たず、葉の数は通常15枚未満で、著しく 3列ではない。葉: 鞘は内側が白色透明で、頂部はU字型、またはときに襟を越えて 長さ2㎜まで伸び、円形で平滑。上部の葉舌は長さ2.2~3.5㎜。葉は稔性の稈あたり3~5枚、葉身長さ12~30㎝×幅1.5~3.5㎜。花序は開き、褐色、長さ(1.3~)2.5~5(~6.5)㎝×幅5~18㎜。下部の節間は長さ(3~)6~13(~23)㎜以。2番目の節間は長さ2~12㎜。下部の苞は鱗片状または剛毛状で、花序より短い。小穂は(3~)4~7個、大きな稈に5~7個がつき、遠くに離れ、卵形~楕円形、長さ7~17(~24)㎜×幅4~8(~12)㎜、基部は漸尖し、まれに円形、先は鋭形~円形。頂生の小穂は雌雄性(gynaecandrous)、通常、目立つ雄の基部を持つ。 雌鱗片は白色透明で、赤褐色を帯び、通常は帯白色~淡い金色または緑色の中央の縞があり、広披針形~狭卵形、長さ2.6~4.3㎜、果胞の嘴と同長または0.7~0.9㎜短く、幅は果胞より狭く、縁は薄く、ときに内巻きし、先はほとんど鋭形。果胞は小穂に(10~)15~40(~45)個、斜上して開出し、緑色または赤褐色、脈は無いか、または内側にかすかに不規則な1~5脈があり、円形または広卵形、平凸形、長さ(2.6~)3.4~4.8(~5.2)㎜×幅(2~)2.3~3.2㎜、厚さ0.5~0.6㎜、長さは幅の1.2~1.8倍あり、ほぼ革質、縁は平ら、翼は幅0.3~0.8㎜、少なくとも上部に縁毛のある小鋸歯があり 平滑。嘴の先端は淡い緑色または褐色、平らで、±縁毛のある小鋸歯があり、外側の縫合線は金色または赤褐色の透明な縁を持ち、嘴の先端から痩果までの距離は1.5~2.4㎜。痩果は円形~広卵形、長さ1.5~2.2㎜×幅1.3~1.8mm、厚さ0.5~0.6mm。2n=48, 52, 56, 60, 64, 68。果期は初夏~中旬。

44 Carex breviscapa C.B.Clarke オキナワスゲ 沖縄菅
 日本(沖縄、南西諸島)、中国(福建省、海南省)、台湾、スリランカ、タイ、ベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシア、ニューギニア、オーストラリア(クイーンズランド州)原産。中国名は短葶薹草 duan ting tai cao。標高400~1000mの森林に生える。
 根茎は短い。 稈は高さ10~20㎝、3稜形。 基部の鞘は暗褐色で、繊維状に裂かれる。葉は稈より長く、葉身は幅4~7㎜、平らで平滑、革質。苞は葉状で、花序よりもはるかに長く、鞘がある。花序は3~5節がある。小穂は多く、各節に3~5個ある。頂生の小穂は雄性、線形、長さ17~45㎜×幅1~1.5㎜、短い花序柄がある。側小穂は雌性、またはほとんどが先端に雄性部分を持ち雄雌性(androgynous)、狭い円筒形、長さ3~4.5㎝、太さ約3㎜、花が緩くつき、無柄または短い花序柄がある。雌鱗片は卵状長円形、長さ2.5~3㎜、縁毛があり、先は円形。果胞は緑色、鱗片より長く、菱状紡錘形、三角形、長さ3.5~5 mm、膜質、多数の脈があり、無毛または上部に微軟毛があり、基部は楔形、柄があり、先は次第に漸尖し円錐形の嘴になり、嘴は長さ約1㎜、口部に2歯がある。小堅果は褐色~暗褐色、しっかりと覆われ、菱形、三角形、長さ2.5~3㎜、表面は上部と下部の両方に窪み(excavated)、基部は楔形で、短い柄があり、先は明瞭な長さ0.3㎜の短い首を持つ。首は上部が浅く凹んでいて、首と角(かど)は黄白色。花柱は基部がわずかに太くなる。柱頭は3岐。花期は冬。果期は翌年の春。

45 Carex brownii Tuck. カレックス・ブロウニイー
  synonym Carex striata R.Br.
  synonym Vignea striata Rchb.
 ニューギニア、オーストラリア(クイーンズランド州、ビクトリア州)原産。英名はstream sedge , Brown's Sedge, Brown's Carex, Brownii Carex。別名はアワボスゲ。Carex nipposinica Ohwiがsynonymとされていたが、現在では両者を別種とし、Carex nipposinicaをアワボスゲとする。Flora of ChinaではCarex browniiに統合していた。
 根茎は長く、シュートは緩く房状になる。稈は直立し、三角形、節があり、下部は平滑、上部はザラつき、長さ20~100㎝、直径1~1.3㎜。葉は稈より短い。 葉身は幅4~6㎜。鞘は淡褐色~濃褐色。葉舌は鈍形。花序は直立し、長さ2~20㎝、節に3~4個の小穂が単生し、しばしば最も低い小穂は他の小穂から遠く離れる。最下の苞は花序を越える。小穂は無柄で、連続または離れ、成熟すると直立し、長さ1~2.5㎝。最上部の小穂は雄性、またはまれに中間に雌花をもち両性具有の雌雄同穗(androgynaecandrous)。 下部の小穂は雌性。鱗片は長い鋭形~切形、体と同じかそれを超える長さの微突(芒)があり、帯白色、中肋が緑色。雌の鱗片は長さ3~5㎜。果胞(perigynia , utricles)は長さ3.5~4mm、直径約1.8㎜、倒卵形~広楕円形、膨れ、強く多数の脈があり、無毛、通常は暗灰緑色、ときに淡黄褐色。嘴は長さ0.5~0.8mm、口部にノッチがある。葯は付属体を除き長さ2~3㎜、付属体は長さ0.1mm。花柱は3岐。堅果は楕円形、断面は三角形、黄褐色。花期は春~夏。(Flora of Victoria)
【Flora of Chinaの解説】Carex brownii Tuck.をアワボスゲとする見解。
 Carex nipposinica Ohwi. 亚澳薹草 ya ao tai cao
 根茎は短く、稈は叢生し、高さ30~60㎝、中程度の太さ、3稜形、平滑、基部に葉身のない褐色の鞘があり、少数の鞘が繊維状に分解する。 葉は稈より短く、葉身は幅3~4㎜、平らでやや堅く、鞘がある。苞は稈より長く、葉状、最下の鞘は長く、上部の鞘はやや短い。小穂は3~4個つき、かなり離れる。頂生の小穂は雄性、線形、長さ1~2㎝、短い花序柄がある。側小穂は雌性、長円形または長円状円筒形、長さ1~3㎝、多数の花が密につき、最下の小穂は長い花序柄があり、上部の小穂は花序柄がやや短い。雌鱗片は淡色、披針状卵形、長さ約2.8mm、膜質、1~3脈があり、先は尖鋭形、目立つ芒がある。果胞は褐緑色、斜めに開出し、成熟すると水平に開出し、鱗片よりわずかに長く、広倒卵形で、膨らんだ三角形、長さ約3㎜、膜質、無毛、多数の脈があり、基部は広楔形、柄は無く、先は急に狭まり短い嘴となり、口部には2歯がある。小堅果は淡褐色、角(かど)が黄色がかっており、やや緩く包まれ、ほぼ広楕円形または広倒卵形で、三角形、長さ約2mm。柱頭は3岐、短い。花期と果期は4~5月。標高400~1700の溝の脇、森林、低地の湿った場所に生える。安徽省、甘粛省、河南省、江蘇省、江西省、山西省、四川省、台湾、浙江省に分布。 [インドネシア、日本、韓国。 オーストラリア、太平洋諸島 (ニュージーランド)]。

46 Carex brunnea Thunb. コゴメスゲ 小米菅
 日本(本州の関東地方以西、四国、九州、対馬、伊豆諸島、南西諸島、小笠原諸島)、韓国、中国(安徽省、福建省、甘粛省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、陝西省、四川省、西蔵省、雲南省、浙江省)、台湾、インド、ネパール、チベット、ベトナム、オーストラリア(ニューサウスウェールズ州、ノーフォーク島、クイーンズランド州)、イエメン、アフリカ(エリトリア、エチオピア、ソマリア)、マダガスカル、モーリシャス、ロドリゲス島 、レユニオン原産。中国名は褐果薹草 he guo tai cao。別名はコゴメナキリスゲ。標高200~1800mの山の斜面、森林や谷間の低木の間、川辺、道端の日陰、水辺の日当たりの良い場所に生える。
 根茎は短く、匍匐茎はない。稈は密に叢生し、細く、高さ40~70㎝、3稜形、平滑、基部に多数の葉がある。葉は稈より長いかまたは短く、葉身は幅2~3㎜、下部で二つ折りになり(conduplicate)、上部は次第に平らになり、両面と縁がザラつき、鞘がある。鞘は短く、通常は5㎝未満で、膜質の部分で裂ける。苞は鞘があり、下部の苞は葉状、上部の葉は剛毛状(setaceous)。 鞘は長さ7~20㎜、褐緑色。小穂は数個~10個以上、通常、苞葉の鞘1個に1~2個つき、分枝しない、2つの小穂の間の距離は10㎝以下またはそれ以上。小穂は雄雌性具花序(androgynous:雄花が雌花の上につく)、雄の部分は雌の部分よりかなり短く、円筒形、長さ1.5~3㎝、密に多数の花がつき、花序柄がある。花序柄は上部では短く、下部で長い。雌の鱗片は黄褐色、短い褐色の条線があり、卵形、長さ約2.5㎜、膜質、3脈があり、先は鋭形または鈍形、無突起(muticous)。果胞は褐色、ほぼ直立し、鱗片より長く、楕円形またはほぼ球形、扁平な平凸形、長さ3~3.5㎜、膜質、外側に細い9脈があり、両面に白色の小剛毛があり、基部は急に狭まり短い柄になり、先は急に狭まり、 短い嘴になり、嘴は長さ1㎜未満、口部に2歯がある。小堅果は黄褐色、しっかりと包まれ、ほぼ球形、扁平な両凸形、基部に柄は無い。花柱は基部がわずかに太くなる。柱頭は2岐。花期と果期は6~10月。

47 Carex brunnescens (Pers.) Poir. ヒメカワズスゲ 広義
  synonym Carex brunnescens (Pers.) Poir. subsp. pacifica Kalela

  synonym Carex brunnescens (Pers.) Poir. form. sphaerostachya (Dewey) Akiyama

 北半球の温帯、寒帯に広く分布する。英名はPacific brownish sedge。
 密に叢生し、小さな塊になる。根茎は短い。稈は直立~アーチ状になり、細く、高さ15~90㎝。葉:鞘は比較的しっかりしていて、外側は淡褐色~中程度の褐色、内側の帯は薄くて透明で、しばしば頂部が凹んでいる。葉舌は長さが幅と同じ。葉身は緑色~黄緑色、平ら、長さ10~25(~40)cm×幅0.5~2㎜、稈より短い。 花序は直立してややうなずき、長さ1.5~7cm×幅3~6㎜。下部の苞は剛毛状で長く、小穂を超えず、短い。上部の苞は通常鱗片状。小穂は5~10個、雌雄性花序穗(gynecandrous:雌花が雄花の上につく)、下部の小穂は±離れ、上部の小穂はほぼ接近し、5~10 個の果胞をもち、無柄、球形から短い長円形、長さ3~7㎜×幅3~4㎜。頂部の小穂は長さの1/2未満が雄性、かすかに棍棒形。雌鱗片は白色透明で、中央が緑色で、3脈があり、しばしば、褐色を帯び、卵形で、果胞とほぼ同長~果胞を隠さず、先は鈍形~鋭形。果胞は伏せ~斜上し、成熟すると緩く広がり、緑色または褐色、しばしば、古くなると暗褐色になり、薄く数本の脈があり、楕円状卵形、長さ2~2.5㎜×幅0.8~1.5㎜、中央付近で最も幅が広く、膜質、嘴は短く、縁には小鋸歯がある。痩果は淡褐色~褐色、卵状円形、長さ1.25~1.5㎜×幅0.8~1㎜、光沢がある。 2n=56。
47-1 Carex brunnescens subsp. brunnescens ヒメカワズスゲ 狭義
  synonym Carex brunnescens subsp. pacifica Kalela
  synonym Carex brunnescens subsp. alaskana Kalela
  synonym Carex brunnescens var. laetior (F.Nyl.) Holmb.
 北半球の温帯、寒帯に広く分布する。英名はbrownish sedge。標高0~3500mの湿った、一時的に乾燥した地域、薄い泥炭地、茂み、森林、ヒース林、岩の多い斜面に生える。
 稈は直立、またはうなずき、細く、長さ15~60 cm。葉は緑色~黄緑色または灰緑色、幅(1~)1.5~2.5㎜。花序は直立し、またはときにうなずき、長さ1.5~5(~7)㎝。下部の小穂は長さ0.5~2.5㎝離れる。頂生の小穂は楕円形~ほぼこん棒形。果胞は長さ2~2.5㎜×幅1~1.5㎜。2n=56。果期は5~7月。
 ※Carex brunnescens (Pers.) Poir. subsp. pacifica Kalela ヒメカワズスゲは現在ではsubsp. brunnescensに含められている。

(1) Carex brunnescens (Pers.) Poir. subsp. pacifica Kalela ヒメカワズスゲ 

  synonym Carex brunnescens (Pers.) Poir. form. sphaerostachya (Dewey) Akiyama

 北海道、本州(中部地方以北)、ロシア、アラスカ原産。高層湿原に生える。
 多年草、高さ15~40㎝。根茎は短く、叢生する。葉は細く、幅1~2㎜。最下の苞は刺状の葉身がある。花序は無柄の小穂が2~6個つく。小穂は長さ4~7㎜、雌雄性、基部に短い雄花部がある。鱗片は果胞よりやや短く、淡褐色の膜質、1脈があり、先は長い芒になる。果胞は長さ2~2.5㎜の卵形、淡緑色、短い嘴がある。果実は長さ約1.5㎜の卵形、嘴があり、柱頭は2岐。2n=56。果期は6~8月。

47-2 Carex brunnescens subsp. sphaerostachya (Tuck.) Kalela 

  synonym Carex brunnescens var. sphaerostachya (Tuck.) Kük.
  synonym Carex canescens var. sphaerostachya Tuck.
  synonym Carex sphaerostachya (Tuck.) Dewey
 北アメリカ(カナダ、USA)原産。標高0~3500mの湿った一時的に乾燥する地域、薄い泥炭地、茂み、森林、ヒース、岩の多い斜面に生える。

48 Carex buxbaumii Wahlenb. タルマイスゲ 
 日本(北海道)、朝鮮、ロシア、ヨーロッパ、北アメリカ(カナダ、アラスカ、USA)、グリーンランド原産。英名はclub sedge , Buxbaum's sedge , brown bog sedge。標高20~3000mの湿った牧草地、湿地、沼地に生える。
 叢生し、長い根茎を持つ。稈は高さ25~75㎝、上部はザラつく。葉は幅2~3.5㎜。花序:下部の苞は花序よりも短いか、または花序と同じかまたは花序を超える。小穂は離れ、直立し、短く垂れ下がり、短長円形または細長い、長さ10~25㎜×幅6~10㎜。側部に2~3(~4)個の小穂があり、雌性。頂部の小穂は雌雄性花序(gynecandrous)。雌鱗片は薄褐色~暗褐色、披針形、果胞よりも短いか、かなり長くて狭い、中脈は体より明るい色で、目立ち、しばしば隆起し、顕著で、先は鋭形または尖鋭形、微突形、微突は長さ0.5~3㎜。果胞は斜上し、灰緑色または帯白色、かすかに脈があり、楕円形、長さ2.5~4㎜×幅1.5~2㎜、先には嘴がないか、または急に嘴があり、密にパピラがある。嘴は長さ0.2㎜まで。痩果は果胞をほぼ満たす。2n=約106。果期は5~9月。

49 Carex callitrichos V.I.Krecz. イトヒカゲスゲ 糸日陰菅 広義
  synonym Carex humilis var. callitrichos (V.I.Krecz.) Ohwi
 日本(北海道、本州、四国、九州、対馬)、朝鮮、中国(河北省、黒竜江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル)、ロシア原産。中国名は羊须草 yang xu cao。800~1000メートルのマツ林、混交林、山の斜面に生える。茎や葉は紙やロープの製造に使用される。
 根茎は細長く、匍匐性または斜めに斜上する。稈は緩く叢生し、高さ2~6㎝、毛状(hair-shaped)、鈍角の三角形、平滑。鞘は赤褐色で、基部に宿存する。葉は稈の長さの5~6倍長、葉幅は0.2~0.8(~1)㎜、毛状(hair-shaped)、柔らかく、無毛で、まれに緩く毛がある。苞(総苞片)は仏炎苞状(spathelike)、長さ7~10㎜、平滑、先は鋭形、鞘の口部の縁は膜質、明瞭な苞の葉身は無い。小穂は2~4個、離れてつく。頂生の小穂は雄性、円筒形、長さ5~8㎜×幅1~1.5㎜、花は小数。側小穂は1~3個、雌性、線形、長さ5~7㎜、緩く花が1~3個つく。花序柄は短く、通常は苞の鞘から突き出ず、花序軸は曲がりくねる。 雌の鱗片は側部が鉄さび色または淡い鉄さび色で、中央は緑色、披針形、長さ3~4㎜、1脈があり、縁は広く白色の透明になり、先は尖鋭形または鋭形、微倒形。果胞は帯緑色、鱗片より短く、倒卵形、鈍い三角形、長さ2.5~3㎜、毛があり、側部に明瞭な2脈があり、不明瞭な薄い数本の脈があり、基部は急に狭まり~曲がり、短い柄となり、先は丸くて非常に短い嘴があり、口部は凹形または切形、通常は帯褐色。小堅果は成熟すると褐色、長円状倒卵形、三角形、長さ2.3~2.5㎜、基部は狭まり、短い柄になり、先は丸く、短い嘴がある。花柱は基部がわずかに太くなる。柱頭は3岐。花期および果期は4~7月。

49-1 Carex callitrichos var. callitrichos イトヒカゲスゲ 糸日陰菅

  synonym Carex humilis Leyss. var. callitrichos (V.I.Krecz.) Ohwi

  synonym Carex humilis Leysser f. callitrichos (V. I. Kreczetowicz) T. Koyama

 日本(九州長崎県対馬)、朝鮮、ロシア原産。中国名は羊须草 yang xu cao。標高800~1000mのマツ林に生える。
 雄小穂は花が少数。雄の鱗片は先が鋭形。雌小穂は花が1~3個。

49-2 Carex callitrichos var. nana (H.Lév. & Vaniot) S.Yun Liang, L.K.Dai & Y.C.Tang ホソバヒカゲスゲ 細葉日陰菅

  synonym Carex humilis Leyss. var. nana (H.Lév. et Vaniot) Ohwi

  synonym Carex humilis Leyss. subsp. nana (H.Lév. et Vaniot) T.Koyama

  synonym Carex lanceolata var. nana H.Lév. & Vaniot

  synonym Carex nanella Ohwi
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国(河北省、黒竜江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル)、ロシア原産。中国名は矮丛薹草 ai cong tai cao。別名はヒメヒカゲスゲ。標高1000m以下の山の斜面、混交林またはマツ林など山野の乾いた場所に生える。
 多年草、高さ10~40㎝。根茎は短く、匐枝はなく、叢生する。花茎は短く、長さ3~6㎝、直立し、葉よりかなり低く、葉に隠れる。葉は幅(0.3)0.5~1.5(1.8)㎜、最も狭いものは0.3㎜、最も広いものは1.8㎜ある。小穂は茎の上部に数個つく。頂小穂は雄性、長さ5~10㎜。側小穂は雌性、2~4個の果胞をつけ、長さ5~10㎜。苞は鞘があり、葉身が鱗片状で短い。小穂の軸は上部の稜にわずかに毛があり、雌小穂の軸の基部に膜質の鞘(小苞)がある。鱗片は紫紅色を帯びる。果胞は緑色、短毛が密生し、ほとんど嘴が無く、鱗片より小さく、長さ3~3.2㎜、先の方が太く、基部が海綿質の柄状になる。痩果は長さ2.5~3㎜、3稜形、濃褐色に熟す。柱頭は3岐、花柱は取れやすい。花期は4~5月。
 Flora of Chinaの解説はやや異なり次のとおり。
 雄小穂には花が3~4個つく。雄の鱗片は先が尖鋭形。雌小穂には1または2個の花がつく。花期および果期は4~7月

50 Carex canescens L. ハクサンスゲ 白山菅
 北半球に広く分布し、ニューギニア、アフリカ南部にも分布する。日本(北海道、本州の中部地方以北)や中国(黒竜江省、吉林省、内モンゴル自治区、新疆ウイグル自治区)などの温帯アジアに自生する。英名はsilvery sedge , hoary sedge。中国名は白山薹草 bai shan tai cao。標高900~1100mの沼地、川沿いの湿った場所に生える。
 根茎は短い。稈は叢生し、高さ25~50㎝、直立し、三角形、上部がざらつき、基部は褐色の葉身のない鞘で覆われる。葉は稈より短く、葉身は幅2~3㎜、平らで、縁はザラつく。苞は鱗片状で、下部の苞はときに剛毛状(setaceous)。小穂は4~7個、雌雄性花序(gynaecandrous)、卵形~長円形、長さ6~10㎜×幅3~4㎜。 上部の小穂は密集し、下部の小穂は離れる。雌鱗片は淡色、卵形、長さ約2㎜、膜質、1脈があり、先は鋭形。果胞は緑褐色、わずかに鱗片より長く、卵形または楕円形、平凸形、長さ2~2.2㎜×幅約1.2㎜、膜質、無毛、微細ないぼ状突起があり、両面に褐紫色の5~12本の脈があり、基部は丸く、海綿状、短い柄があり、先は急に狭まりわずかにザラつく短い嘴となり、開口部は凹形。小堅果はしっかりと包まれ、楕円形または卵形、平凸形、長さ約1.5㎜、基部は短い柄がある。花柱は基部が太くならない。柱頭は2岐。花果期は6~8月。2n=56。

51 Carex capillacea Boott ハリガネスゲ 針金菅

  synonym Carex rara subsp. capillacea (Boott) Kük. ex Matsum.

 日本(北海道、本州、四国、九州)、韓国、中国(安徽省、福建省、江西省、雲南省、浙江省)、台湾、千島列島、ロシア、インド(アッサム州)、チベット、ベトナム、フィリピン、インドネシア(ボルネオ島、スラウェシ島、スマトラ島、ジャワ)、ニューギニア、オーストラリア(ニューサウスウェールズ州、タスマニア、ビクトリア州)、ニュージーランド原産。原産。中国名は发秆薹草 fa gan tai cao。英名はhair sedge, yellow-leaf sedge。山の斜面や川岸の湿った草原に生える。
 根茎は短い。稈は叢生し、高さ15~40cm、上部はわずかにザラつく。葉は稈より短く、葉は糸状、幅0.5~1㎜、平らまたは内巻き、平滑。 基部の鞘は褐色の繊維状に裂ける。花序は1個の小穂、頂生、雄雌性(androgynous)。 雄性部分は明瞭、線形、長さ4~7mm、3~7個の花がつく。雌性部は卵形~円形、長さ3~6㎜、密に4~10個の花をつける。雌鱗片は側部が褐色で、中央部の色が薄くなり、楕円状卵形、長さ約2㎜、1~3の脈があり、先は円形~鈍形。果胞は成熟すると水平に開出し、鱗片よりわずかに長く、披針状卵形、膨らみ、三角形、長さ2.5~3㎜、明瞭な辺縁脈と中央にかすかな脈があり、ときにさび色の斑点があり、基部は円状鈍形、先は次第に漸尖し、短い嘴になり、口部はわずかに凹形または細かい2歯がある。小堅果は緩く包まれ、楕円形、三角形、長さ約1.8㎜。花柱は基部が太くなく、宿存性。 柱頭は3岐。花期および果期は4~5月。(Flora of China)。

51-1 Carex capillacea Boott var. capillacea ハリガネスゲ 針金菅

  synonym Carex capillacea Boott var. capillacea
 日本(北海道、本州、四国、九州)、韓国、中国、台湾、インド(アッサム州)、チベット、ベトナム、フィリピン、インドネシア(ボルネオ島、スラウェシ島、スマトラ島、ジャワ)、ニューギニア、オーストラリア(ニューサウスウェールズ州、タスマニア、ビクトリア州)、ニュージーランド原産。低山~亜高山の湿地に生える。
 多年草、高さ10~30㎝。根茎は短く、叢生する。葉は幅1~1.5㎜の糸状。茎は細く、やや硬く、稜は鈍い。茎頂に長さ5~12㎜の雌雄性(androgynous)の小穂を1個つける。小穂は上部に少数の雄花の雄花部があり、下部に少数の雌花の雌花部があり、ほぼ同長。果胞は長さ2~2.8㎜、熟すと平開し、腹面に明瞭な5脈があり、痩果をゆるく包む。鱗片は果胞より短く、褐色、円頭。柱頭は3岐。痩果は褐色、長さ1.6~1.7㎜の3稜がある卵形。2n=60。花期は4~6月。

51-2 Carex capillacea Boott var. sachalinensis (F.Schmidt) Ohwi ミチノクハリスゲ 陸奥針菅

  synonym Carex capillacea Boott var. aomorensis (Franch.) Ohwi

  synonym Carex capillacea Boott subsp. aomorensis (Franch.) T.V.Egorova

 日本、韓国、千島列島、ロシア、フィリピン、インドネシア(ボルネオ島)、ニューギニア原産。
 果胞は長さ2.8~3.5(~4)㎜。

52 Carex capillaris L. タカネシバスゲ 高嶺芝菅

  synonym Carex capillaris subsp. chlorostachys (Steven) Á.Löve, D.Löve & Raymond in Canad. J. Bot. 35: 749 (1957)

  synonym Carex capillaris var. chlorostachys (Steven) Grossh.
 北半球の亜寒帯~温帯に広く分布する。日本(北海道の夕張岳、本州早池峰山・白馬山)、韓国、中国(甘粛省、吉林省、遼寧省、内蒙古、青海省、陝西省、山西省)、ロシア、ヨーロッパ、北アメリカなどに分布する。中国名は细秆薹草 xi gan tai cao。高山の草原や牧草地、山の斜面、川辺、水辺などに生える。Kewscienceは日本を分布域に含めていない。
 根茎は短く、匍匐茎はない。稈は密に叢生し、高さ15~40[~60]㎝[日本のものは高さ10~20㎝]、かなり細く、鈍角の三角形、平滑、基部に褐色の鞘があり、古い鞘は通常繊維状に分解される。葉は稈よりもはるかに短く、稈の高さの1/3~1/2、葉身は幅1.5~2㎜[FNA:長さ2~9㎝×幅(0.75~)1~4㎜]、平らでかなり柔らかく、縁はザラつき、短い鞘がある。苞は葉状、線形、抱く小穂よりも短く、かなり長い鞘がある。小穂は3~4個つき、かなり間隔を開け、わずかに垂れ下がる。頂生の小穂は雄性、ときに、基部または頂部に2~3個の雌花がつき、狭披針形、長さ0.5~1㎝、最上部の雌の小穂を超えない。側小穂は雌性で、狭長円形、長さ0.8~1.5㎝[FNA:0.5~2㎝×幅3~4㎜]、緩く、花が6~10[FNA:6~20]個つく。花序柄は細く、最も長いものが長さ5㎝まで、平滑またはわずかにザラつく。雌鱗片は早落性、黄褐色または褐色、倒卵形、長さ約2.5㎜[FNA:長さ1.8~2.8㎜×幅1~1.5㎜]、膜質、緑色の3脈があり、脈と中肋は凸形、縁は広く白色の透明になり、先は鈍形または鋭形で微突形。果胞は暗黄緑色または褐緑色、ほぼ直立し、鱗片より長く、卵状長円形または狭卵形、鈍い三角形、長さ3.5~4㎜[FNA:長さ2.3~3.5㎜×幅0.8~1.2㎜;嘴の長さ0.5~1㎜]、膜質、脈は無く、基部は徐々に漸尖し、短い柄があり、先は徐々に狭くなって±長い嘴になり、嘴は縁がわずかにザラつき、白色透明で、口部が斜めに切形または凹形になる。小堅果は帯黄色、きつく包まれ、倒卵形、三角形、長さ約1.5㎜[FNA:長さ1.2~1.7㎜×幅0.7~1㎜]。花柱は基部がわずかに太くなる。柱頭は3岐。花期および果期は6~7月。2n=54(FNA)。

53 Carex capricornis Meinsh. ex Maxim. ジョウロウスゲ 上臈菅
  synonym Carex brachystachya (Regel & Maack) Akiyama
 日本(北海道、本州の関東地方以北)、朝鮮、中国(黒竜江省、江蘇省、吉林省、遼寧省)、モンゴル、ロシア(極東)原産。中国名は弓喙薹草 gong hui tai cao。川辺、湖畔、沼地、湿った場所に生える。
 根茎は短い。稈は叢生し、高さ30~70㎝、頑丈、3稜形、上部はザラつき、基部には紫褐色で葉身のない鞘があり、未発達の鞘はときに繊維状に分解する。葉は稈より長いかまたはわずかに短く、葉身は幅3~8㎜、平らでわずかに堅く、2本の明瞭な側脈と短い横の隔壁の節があり、鞘がある。苞は葉状、小穂よりも長く、通常は鞘が無い。小穂は3~5 個、稈の上部に集中し、ときに最下部の小穂はわずかに離れる。頂生の小穂は雄性、通常は隣接する雌小穂を超えないかまたはわずかに長く、こん棒形または線状円筒形、長さ2~3㎝、ほぼ無柄。側小穂は雌性、長円形または短い円筒形、長さ2~3㎝×幅1.5~2㎝、密に多数の花がつき、非常に短い花序柄があるかまたは無柄。 雌の鱗片(glumes)は側部が帯褐色、長円形、長さ4~5㎜、厚い膜質、外側の中央に帯緑色の3本の脈があり、先は尖鋭形で芒があり、芒は鱗片とほぼ同長で、縁はザラつく。果胞は黄緑色、斜めに開出または散開し、鱗片より長く、狭披針形、扁平な三角形、長さ6~8㎜、厚い膜質、平滑、無毛、数本の脈があり、基部は急に狭くなって短い柄になり、先は徐々に狭くなり長い嘴になり、口部には長い2歯があり、歯は長さ約2㎜、両側に向かって反曲する。小堅果は暗褐色、ゆるく包まれ、楕円形、三角形、長さ1~1.5㎜。花柱は細く、曲がりくねり、基部は太くない。柱頭は3岐、かなり短い。花期および果期は5~8月。

54 Carex caryophyllea Latour カレックス・カリオフィレア
  synonym Carex praecox Jacquin
 モンゴル、ロシア、カザフスタン、トルクメニスタン、イラン、トルコ、ヨーロッパ原産。標高0~100mの乾燥した牧草地、墓地に生える。USA(マサチューセッツ州、メイン州)に帰化している。
 稈は三角形、角(かど)は鈍角、長さ4~35cm、上部はザラつく。葉は根生葉。鞘の前面は先が凹形~V字形、無毛。葉身は長さ7~25㎝×幅1.5~3㎜、稈より短い。花序は長さ2~4cm。下部の苞は長さ5㎜×幅1mm以下。小穂は密集する。側小穂は長さ0.5~1.5cm×幅4~5mm。頂部の小穂は長さ1~2㎝×幅4㎜。鱗片は褐色で、中肋は黄褐色、3脈があり、果胞と等長、先は尖鋭形~微凹形(retuse)、長さ2㎜以下のザラつく芒がある。葯は長さ2~3㎜。果胞は黄褐色、しばしば先が赤褐色になり、側面は凸形、長さ2.5~2.8㎜×幅1.5㎜、毛は紫褐色(毛の基部は球根状)。嘴は赤褐色、円錐形、肥厚する。痩果は褐色、無柄、尖帽状(mitrate)、倒卵形、長さ2~2.2mm。果期は6月。2n =58, 62, 64, 66, 68 (ヨーロッパ、日本)。

55 Carex caucasica Steven カレックス・コーカシカ
 中国(新疆)、台湾、モンゴル、ロシア、アフガニスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、北コーカサス、トランスコーカサス、トルコ、イラン原産。中国名は高加索薹草 gao jia suo tai cao。高山の牧草地や草原に生える。
 根茎は短い。 稈は密またはやや緩く叢生し、高さ25~70㎝、三角形、上部がザラつき、基部は繊維状にに崩壊する暗紫色の光沢のある葉身のない鞘で覆われる。葉は稈と同長かそれより短く、葉は幅3~8㎜。最下の苞は葉状で、小穂よりわずかに長く、残りの苞は剛毛状で鞘は無い。小穂は4~7個。頂生の小穂は雌雄性花序(gynaecandrous;雌花が雄花の上部につく)、倒卵形または長円形、長さ15~25㎜×幅5~6㎜。 残りの小穂は雌性で、卵形または長円形~こん棒形、長さ1.5~3㎝×幅0.6~0.8㎝、密に多数の花がつき、花序柄は長さ4~5㎝、一番下の1~2個は垂れ下がり、長い花序柄がある。雌の鱗片は暗紫褐色~紫黒色、披針形、長円形、または披針状楕円形、長さ3.2~3.8 mm、膜質、縁は白色の透明、3脈の帯黄色の肋は、先で微突になり、先は鋭形~尖頭形。果胞は黄緑色、上部は±紫色を帯びまたは全体が鉄さび黄色を帯び、倒卵形~倒卵形楕円形、または扁平な三角形、長さ3~4㎜、基部にかすかに3~5本の脈があるか、外面に7~9本の脈があり、先は急に狭まり、直立した短い嘴になり、口部はほぼ切傾または2歯の凹形。小堅果は緩く包まれ、倒卵形~楕円形、三角形、長さ1.9~2.5㎜。柱頭は3岐。花期および果期は6~7月。
55-1 Carex caucasica subsp. caucasica
 中国(新疆)、モンゴル、ロシア、アフガニスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、北コーカサス、トランスコーカサス、トルコ、イラン原産。中国名は高加索薹草 gao jia suo tai cao。谷間の草原に生える。
 葉身は幅4~8㎜。果胞は長さ3.5~4㎜、基部にかすかに3~5本の脈がある。小堅果は倒卵形、長さ約2.5mm。

55-2 Carex caucasica Steven subsp. jisaburo-ohwiana (T.Koyama) T.Koyama ウマクロボスゲ 馬黒穂菅

  synonym Carex jisaburo-ohwiana T.Koyama
 台湾原産。中国名は大井扁果薹草 da jing bian guo tai cao。高山草原に生える。
 葉身は幅3~5㎜。果胞は長さ3~3.5㎜、外面に5~9脈がある。小堅果は楕円形、長さ1.9~2.1㎜。

56 Carex cephalotes F.Muell. カレックス・ケファロテス
  synonym Carex pyrenaica var. cephalotes (F.Muell.) Kük.
 オーストラリア(ニューサウスウェールズ州、タスマニア州、ビクトリア州)、ニュージーランド原産。
 根茎は斜上し、厚く束生し、高さ3cmの小さな小型のクッション状から高さ20cmの繁茂した房状になる。稈は高さ(1~)5~10(~20まれに30)㎝×幅約0.5~1mm、円柱形、平滑。基部の鞘は黄褐色、薄褐色または灰褐色。葉舌は丸みを帯びた切形。葉は稈より短く、幅0.5~1.5㎜、基部は内巻き、先に向かって平らで±平凸形、縁は細かくザラつき、先端は鈍形~ほぼ鋭形。花序は単生、頂生し、直立し、1個の小穂をもち、小穂は雄雌性花序(androgynous)、卵形~長円形、雄花部は非常に短く、通常、苞は無く、卵形~長円形、長さ(5~)7~10(~17)㎜×幅5~9㎜。雄花は雌花を越える。鱗片は通常、果胞より小さく、卵形、鋭形、脱落性、膜質、赤褐色、中肋は薄褐色、縁は透明。果胞は長さ(2.5~)3~4(~4.5)㎜×幅約1㎜、平凸形、楕円状披針形、成熟すると強く後屈し、平滑、無毛、淡黄褐色、嘴は長さ約1㎜、赤褐色、口部は斜めで膜質。柄は長さ約1㎜、たまに欠く。柱頭は通常2岐、たまに3岐。堅果は長さ1.5~2㎜、長円形、平滑、柱頭が2岐の果実は両凸形、または柱頭が3岐の果実はほぼ三角形。花期は夏。

57 Carex cespitosa L. カブスゲ 株菅
  synonym Carex humilis Willd. ex Kunth

  synonym Carex cespitosa L. var. minuta (Franch.) Kük. クロメスゲ 黒雌菅

 日本(北海道、本州中部以北)、韓国、中国(黒竜江省、吉林省、内モンゴル自治区、青海省、陝西省、新疆ウイグル自治区)、モンゴル、ロシア、カザフスタン、トルクメニスタン、 南西アジア (コーカサス、トルコ)、ヨーロッパ原産。中国名は丛薹草 cong tai cao。別名はクロオスゲ。湿地、湿った場所に生える。
 根茎は短い。 稈は密に叢生し、高さ40~90㎝、細く、三角形、基部は紫褐色または赤褐色の葉身のない鞘で覆われ、網状の繊維に崩壊する。葉は稈より短く、葉身は線形、幅2~3.5mm、平ら、縁はわずかに外巻きする。苞は剛毛状、穂状花序±に等しく、鞘は無い。小穂は約、3~4個。 頂小穂は雄性、線形または長円形、長さ20~30㎜、残りの小穂は雌性で、たまにいくつかは雄雌性花序(androgynous)となり、頂部に数個の雄花をつけ、長円形または円筒形、長さ5~25㎜×幅3~5㎜、短い花序柄をもつ。雌の鱗片は紫褐色または鉄さび褐色、狭卵形、長さ約2mm、緑色で中央に1本の脈があり、縁は白色の透明、先は鈍形。果胞は卵形、灰緑色または薄緑褐色、卵形~楕円形、±両凸形または平凸形、長さ2~2.5(~3)㎜×幅約1.2㎜、密に微細なパピラがあり、脈はなくまたはわずかに1~3脈があり、基部は次第に漸尖形~楔形に狭くなり、短い柄があり、先は狭まり短い嘴になる。花柱の基部は太くない。柱頭は2岐。花期および果期は6~7月。
※Carex humilis Willd. ex Kunthはsynonymとされる。Carex humilis Leyss.と混同しやすいが、
58 Carex chichijimensis Katsuy. チチジマナキリスゲ 父島菜切り菅
 日本固有種。小笠原諸島に分布。小笠原固有のムニンナキリスゲに似るが、果胞が大きく、ほとんど無毛で、太い脈が多数あることが異なる。
 常緑多年草。根茎は短く、密に叢生する。稈は中央生、高さ40~80㎝、葉よりもかなり長く、三角形で平滑。葉は根生葉と茎葉。葉身は平らで、幅2~4mm、硬く、上面と縁がザラつき、下面は平滑。 基部の鞘には葉身があり、ときに葉身がなく、暗褐色、ほぼ均等に並んだ小繊維で覆われる(fibrillose)。花序は総状花序で、稈の上部の1/5~1/3に3~7個の小穂(spikes)があり、節に単生(まれに2個)する。小穂は雄雌性花序(androgynous)で、雄部は雌部よりわずかに短く、長い花序柄があり、狭い円筒形、長さ1~2㎝×幅3.5~4.5㎜、密に多数の花がつく。胞は鞘があり、上部の葉身は剛毛状(setaceous)、下部は葉状で小穂より長い。雌鱗片は長円状卵形で、果胞よりわずかに短く、長さ3~4㎜、鋭形、中肋は緑色、縁は帯褐色。果胞は直立~斜上し、卵形、両凸形、長さ4~5㎜×幅1.5~2㎜、膜質、強く多脈があり、表面はほぼ無毛、脈がわずかにザラつき、短い柄があり、嘴まで漸尖し、先には2歯がある。痩身は果胞にきつく包まれ、広楕円形~卵形、両凸形、長さ2~2.5㎜×幅1.5~2㎜、成熟すると暗褐色になる。花柱は短く、長さ約1㎜、基部は少し太くなる。柱頭は2岐、長さ5~9㎜、宿存性。2n=60。花期は通年。

59 Carex chinganensis Litw. コウアンスゲ 興安菅
 中国(黒竜江省、吉林省、内モンゴル)、ロシア(極東)原産。中国名は兴安薹草 xing an tai cao。山の斜面にある森林に生える。

60 Carex chinoi Ohwi et T.Koyama タテシナヒメスゲ 蓼科姫菅
 日本固有種。本州に分布。別名はタデシナヒメスゲ。ヒメスゲとの区別は困難とする見解もある。ヒメスゲの種内変異に含められている。

61 Carex chordorrhiza Ehrh. ex L.f. ヒメツルスゲ 姫蔓菅
 朝鮮、モンゴル、ロシア、カザフスタン、ヨーロッパ原産。英名はcreeping sedge , string sedge。

62 Carex chosenica Ohwi チョウセンハリスゲ 朝鮮針菅
 朝鮮、ロシア原産。

63 Carex chrysolepis Franch. et Sav. コイワカンスゲ 小岩寒菅
  synonym Carex chrysolepis var. kiusiuana (Ohwi) Ohwi  日本(四国、九州)、台湾原産。中国名は黄花薹草 huang hua tai cao。山地の草原や岩場、火山裸地に生える。  根茎は短く、匍匐茎は長く伸びる。稈は緩く、房状になり、高さ10~35㎝、細く、直立または±曲がり、平滑で、基部は繊維状に崩壊する黄褐色~暗褐色の鞘で覆われる。葉は稈より長く、葉は線形、幅1.5~3㎜、平らまたはわずかに曲がる。下部の苞は長さ1~1.5㎝の鞘を持ち、最下部には剛毛状の葉身があり、上部は鱗片状である。小穂は2~5個つき、上部では互いに接近し、下部の2~3個はやや離れて直立し、長い花序柄を持つ。頂生の小穂は雄性、線状こん棒形、長さ10~30㎜×幅約5㎜。側小穂は雌性、線状円筒形、長さ1~3㎝×幅0.5~0.8㎝、ほぼ緩く~密に多数の花をつけ、ほとんどが苞の鞘に囲まれた短い花序柄を持つ。雌の鱗片は赤褐色または紫褐色、卵状披針形または倒卵形、やや光沢があり、上部の縁には縁毛があり、緑色の1脈のある肋は微突で終わり、先は鋭形。 果胞は上部が赤褐色になり、鱗片より長く、直立~直立・開出し、卵状披針形、扁平な三角形、長さ4~7㎜、かすかに脈があり、全体に毛があり、縁はほぼ密に小剛毛があり、嘴はかなり長く、口部で深く裂ける。小堅果はきつく包まれ、楕円形。花柱は嘴に似て(beaklike)、基部は太くなる。柱頭は3岐。果期は5~6月。

64 Carex chungii Z.P.Wang カレックス・チュンギー
  synonym Carex kamagariensis K.Okamotoアキイトスゲ 
 朝鮮、中国原産。中国名は仲氏薹草 zhong shi tai cao。

65 Carex ciliatomarginata Nakai ケタガネソウ 毛鏨草
  synonym Carex siderosticta Hance var. pilosa H.Lev. ex T.Koyama
 本州、四国、九州、朝鮮、中国原産。中国名は毛缘宽叶薹草 mao yuan kuan ye tai cao。林内に生える。
 多年草、高さ5~20㎝。根茎は分岐して広がり、疎らに生える。基部の鞘は赤みを帯びる。全体に毛が多い。葉は幅1~2㎝の広披針形で、幅が広い。葉の両面に軟毛があり、縁の毛が目立つ。花茎は有毛、茎葉は退化して苞と同形。苞の基部は鞘状になる。最上部の頂小穂は長さ0.5~1㎝の雄性穂。側小穂は雄雌性花序(androgynous)、上の雄花部は短く、その基部に2~3個の雌花がつく。果胞は2~3個つき、淡緑色、長さ3.5~4㎜、有毛、ほとんど嘴がなく、脈が目立つ。柱頭は3岐。花期は4~5月。

66 Carex cinerascens Kük. ヌマアゼスゲ 沼畦菅
 日本(本州の関東地方、東北地方)、朝鮮、中国(安徽省、黒竜江省、湖北省、湖南省、江蘇省、吉林省、遼寧省、内モンゴル自治区、陝西省)原産。中国名は灰化薹草 hui hua tai cao。湖畔、沼地、湿った場所に生える。
 根茎は短く、長い匍匐枝がある。稈は高さ25~60㎝、房状で、鋭角の三角形で、平滑、花序の下部がザラつき、基部は黄褐色または褐色の葉身のない鞘で覆われ、網状の繊維に崩壊する。葉は稈より短く、平らで、幅2~4㎜。 最下の苞は葉状で、花序より長く、鞘がなく、残りの苞は剛毛である。小穂は3~5個。上部の1~2個の小穂は雄性で、狭い円筒形、長さ2~5㎝。残りの小穂は雌性で、ときに雄雌性花序(androgynous)となり、頂部に数個の雄花を付け、狭い円筒形、長さ15~30㎜×幅2~4㎜、密に多数の花がつく。下部の小穂には花序柄があり、上部は無柄である。雌の鱗片は暗褐色または帯紫色、長円状披針形、長さ約2.5㎜、縁は狭く白色透明、黄緑色の3脈の肋が突き出し、微突になり、先は鋭形、稀に鈍形になる。果胞は灰色、薄緑色、または黄緑色で、鱗片より長く、卵形、長さ約3㎜、膜質、鉄さび色の細点があり、不明瞭な脈があり、基部は狭まり短い柄になり、先は次第に漸尖し、不明瞭な嘴になり、口部は全縁。 小堅果はわずかにきつく包まれ、倒卵形~長楕円形、長さ約1.5㎜。花柱は基部がわずかに太くなる。柱頭は2岐。花期および果期は4~5月。

67 Carex clivorum Ohwi ヤマオオイトスゲ 山大糸菅
 日本固有種。本州(関東地方西部、東海地方)に分布。山地の林内、林縁に生える。
 多年草、高さ20~40㎝。根茎は短く、密に叢生し、大株となり、匍匐枝は出さない。基部の鞘は濃い褐色。葉は硬く、幅2~4㎜、やや硬く、扁平、葉縁の小刺は上向きで鋭い。葉面に波状の凸凹がある。苞は有鞘、葉身は短い。 雄性の頂小穂は長さ約2㎝、緑白色。雌性の側小穂は長さ1.5~2㎝。果胞は長さ約4㎜、嘴が長く、有毛。鱗片は果胞より短く、緑白色。痩果は長さ約2㎜、果胞よりかなり小さい。柱頭は3岐。花期は4~5月。
67-1 Carex canina subsp. collifera (Ohwi) X.F.Jin リュウキュウヒエスゲ 
  synonym Carex collifera Ohwi

68 Carex confertiflora Boott ミヤマシラスゲ 深山白菅
  synonym Carex olivacea subsp. confertiflora (Boott) T.Koyama
  synonym Carex olivacea var. angustior Kük.
 北海道、本州、四国、九州、中国原産。中国名は密花薹草 mi hua tai cao。丘陵、山地の湿地に生える。
 多年草、高さ30~80㎝。匍匐根茎が横に這って広がり、群生する。茎の基部の鞘は淡色。葉は幅.8~12(15)㎜、厚くて柔らかく、3脈が目立つ。葉の下面は粉白色。茎の一番上につく雄小穂は線形で褐色。雌小穂は2~6個がつき、長さ2.5~6㎝の円柱形。苞は葉に似て長く、鞘はない。果胞は長さ約4㎜、熟すと丸く、しわがあり、隙間なく密集し、暗褐色になるのが特徴。鱗片は果胞より短いものが多く、淡緑色、凹頭~鈍頭で、先が長い芒になる。小穂の基部の果胞に鱗片の長いものが見られる。果実は果胞の長さの約半分と小さく、3稜のある倒卵形、頂部は嘴状となる。小さな長惰円形の果実が混ざる。柱頭は3岐。花期は5~7月。

69 Carex conica Boott ヒメカンスゲ 姫寒菅
 北海道、本州、四国、九州、済州島原産。山野の林内に生える。
 多年草、高さ20~50㎝。匐枝を伸ばして広がり、叢生する。基部の鞘は紫褐色。葉は、革質で硬く、幅2~6㎜の線形。葉縁は上端半分は上向きに、下端は下向きにざらつく。小穂はまばらに3~5個つく。1番上が雄小穂、棍棒状で太く、長さ1~2.5㎝。その下に数個付く長さ1~2.5㎝の細い穂が雌小穂。苞は葉身が短く、有鞘、紫褐色を帯びる。鱗片は凹頭~鈍頭、、中肋の先が突き出し、濃色の脈があり、芒状に短く尖る。果胞は長さ2.5~3(3.5)㎜、有毛、赤褐色の脈があり、嘴は外に曲がる。果実は長さ約2.5㎜、3稜のある卵形、柄がある。柱頭は3岐。鱗片の色は赤褐色が濃いものや淡色のものがあり、ときに褐色になる。2n=32, 33, 34, 36, 37, 38 (近畿地方以北は2n=34 )花期は4~6月。
68-1 Carex conica Boott var. conica ヒメカンスゲ 姫寒菅 狭義

68-2 Carex conica Boott var. scabrocaudata (T.Koyama) Hatus. ex T.Hoshino トカラカンスゲ

 鹿児島県宇治群島、南西諸島(トカラ列島)に分布する。別名はウジカンスゲ。
 基本変種のヒメカンスゲより大型で、葉が硬質。雌小穂の先端にしばしば短い雄花をつけ、雌花は密につく。オオシマカンスゲにも似るが、果胞の脈が太く、雌鱗片の芒が短い点が異なる。

68-3 Carex conica var. pallescens T.Hoshino & H.Ikeda ウスイロヒメカンスゲ 薄色姫寒菅

 本州、四国、九州に分布する。とくに瀬戸内海沿岸に広く分布し、乾燥したアカマツ林の林内や向陽地の道端に生える。  叢生し、匐枝は無い。葉は葉は明るい緑色、軟質で縁はわずかにざらつく。苞の鞘は淡緑色。雄鱗片と雌鱗片は淡緑色~淡褐色で、先が凹形で短い芒がある。果胞は雌鱗片よりやや長く、5~7脈があり、まばらに短毛があり、先には短い嘴があり、口部は切形。柱頭は3岐。2n=32。

70 Carex conicoides Honda ワタリスゲ 渡菅
  synonym Carex sachalinensis var. conicoides
 日本固有種。四国、九州に分布。山の斜面などに生える。
 根茎は叢生し、太く、斜めに伸びる。 稈は高さ10~30cm、扁平な3稜形、基部は短い鞘の葉がある。 不稔の稈の葉は稈と同長、幅2~4mm、線形、先は漸尖し、鋭形~尖鋭形、平らで、質が薄く、無毛または細かくザラつき、縁は微細にザラつき、淡緑色。 下部の葉鞘は淡黄色でゆるい。 小穂は3~4個、離れてつき、頂部の小穂は雄性、両側が漸尖し、長さ1.5~2cmの円筒形。側小穂は2~3個離れてつき、雌性、短い円筒形、長さ1~1.5cm、ほぼ基部の小穂は長い花序柄があり直立する。苞は短い葉身があり、帯緑色。 鱗片は卵形~長円形、透明な膜質、先は切形~鈍形、3本の肋が突き出し、粗い剛毛~微突起になる。雄鱗片は黄緑色、長さ7㎜。淡緑色の雌鱗片は長さ3㎜。果胞は鱗片と同長、長さ3㎜、ほぼ直立し、膜質、卵状楕円形、ほぼ膨れた三角形、わら緑色、毛があり、多数の脈があり、基部は斜めに漸尖し柄になり、先は次第に狭まり短い円錐形の嘴になり、口部は2裂し、縁が帯白色になる。堅果はきつく包まれ、卵状長円形。[Bot. Mag. (Tokyo) 42: 506 (1928)]。

71 Carex coriophora Fisch. et C.A.Mey. ex Kunth タワラスゲ 
 中国(甘粛省、河北省、黒竜江省、内モンゴル自治区、青海省、山西省)、モンゴル、ロシア、アラスカ、カナダ、グリーンランド原産。中国名は扁囊薹草 bian nang tai cao。標高700~3500mの川岸の湿った草原、沼地の牧草地、斜面、湿地に生える。

72 Carex crawfordii Fernald クシロヤガミスゲ 釧路八神菅
 カナダ、アラスカ、USA原産。 英名はCrawford sedge。100~1500mのしばしば、停滞水域、湿毛のある場所から湿った場所、開けた砂地、乾燥した荒れ地に生える。日本に帰化が報告されている。
 密に叢生する。稈は高さ25~60(~85)cm。栄養稈(vegetative culms)は 頂部に少数の葉が束生する。葉:鞘は内側が白色透明で、頂部はU字形。上部の葉舌は長さ1.5~6㎜。稔性の稈(fertile culm,)当たり葉は(2~)3~4(~5)枚つき、葉身は長さ7~22㎝×幅2~4㎜。花序は直立し、通常は密で、緑色、金色、または暗褐色、長さ1.8~3㎝×幅8~14㎜、下部の節間は長さ2~3(~5)㎜。2番目の節間は長さ1~3㎜。下部の苞は剛毛状で、花序より短いかまたは花序に等しい。小穂は6~14個、間隔が遠く離れ、卵形~広卵形、長さ8~10㎜×幅4.5~6.5㎜、基部と先は鋭形~切形、無柄、上部に多数の雌花、基部に少数の雄花がつく、雌雄性花序(gynaecandrous)。雌鱗片は金色~暗褐色、中央の縞は帯白色、緑色、または褐色、披針形、長さ3~3.8㎜、果胞より短くて狭く、先は尖鋭形~短い芒がある。果胞は斜上し、白色~金色または淡褐色、外側に0~5脈があり、内側に0~4脈があり、狭披針形~狭卵形、痩果の上を除いて平ら、またはたまに平凸形、長さ3.4~4.1(~4.7)㎜×幅0.9~1.3㎜×厚さ0.15~0.35㎜、縁は平らで、翼を含めて幅0.1~0.2㎜、通常は上部にしわが寄り、嘴の先端は褐色または赤褐色、平ら、±縁毛のある小鋸歯があり、外側の縫合糸は目立たず、嘴の先端から痩果までは長さ(1.8~)2.1~3㎜。痩身は±楕円形、長さ1.1~1.5㎜×幅0.6~0.8㎜×厚さ0.15~0.35㎜。花柱は通常宿存し、曲がりくねる。2n=52, 約66, 70。果期は春の終わり~夏。

73 Carex cruciata Wahlenb. ハナビスゲ 花火菅
 日本(九州の長崎県、熊本県)、中国(福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、海南省、湖北省、江西省、四川省、西蔵、雲南省、浙江省)、台湾、ブータン、インド、ネパール、ミャンマー、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、マダガスカル原産。中国名は十字薹草 shi zi tai cao。別名はジュウモンジスゲ。標高300~2500mの森林縁、草地、道端に生える。
 根茎は太く、木質で、匍匐茎がある。 稈は叢生し、長さ40~90㎝×幅0.3~0.5㎝、三角形、平滑。 葉は根生葉と茎葉で、稈より長く、平らで、幅4~13㎜、下面はザラつき、上面は無毛。鞘は暗褐色、宿存し、繊維状。苞葉は葉状、花序の枝より長く、長い鞘がある。複合円錐花序; 花序の枝は通常単一、稀に双生、卵状三角形、長さ4~15㎝×幅3~6㎝。花序の枝の花序柄は堅く、断面が鈍い三角形で、最下のものは長さ10~18㎝、上部のものは徐々に短くなり、平滑。花序の軸は断面が三角形、毛がある。小苞(bractlets)は鱗片状(glumelike)、長さ約1.5㎜、外面に毛がある。小穂は多数、両性、雄雌性花序(androgynous)、数脈があり、外側に毛があるクラドプロフィル(cladoprophylls)から生じ、水平に開出し、長さ5~12㎜。小穂の雄部分は雌部分とほぼ同長。 雄の鱗片(glumes)は淡褐白色、密に褐色の斑点と短い線があり、披針形、長さ約2.5㎜、膜質、先は尖鋭形、微突形。雌の鱗片(glumes)は卵形、長さ約2㎜、膜質、3脈、先は鈍形、短い芒がある。果胞は淡褐白色で、褐色の斑点と短い線があり、鱗片より長く、楕円形、三角形、膨らみ、長さ3~3.2㎜、平滑または上部は疎に毛があり、数本の隆起した脈があり、ほぼ無柄、先は漸尖し中程度の長さの嘴があり、嘴は果胞の長さの1/3の長さ、側面は毛があるかまたは無毛で、口部は斜めの切形。小堅果は成熟すると暗褐色、卵形~楕円形、三角形、長さ約1.5㎜。花柱は基部が太くなる。柱頭は3岐。花期は秋。

74 Carex cryptostachys Brongn. カクレボスゲ 
 中国(福建省、広東省、広西チワン族自治区、海南省)、台湾、ニコバル諸島、タイ、ベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシア、ニューギニア、オーストラリア(クイーンズランド州)原産。中国名は隐穗薹草 yin sui tai cao。標高100~1200mの密林の湿った場所に生える。

75 Carex cucullata (Kük. ex Matsum. et Hayata) Ohwi ナゴスゲ 
 日本固有種。南西諸島の徳之島以南に分布。林床や林縁に生える。
 密に叢生する。葉は、やや硬く、ザラつく。基部の鞘は、淡褐色で褐色の脈がある。頂小穂は雄性、線形で特に長い。雄鱗片は淡褐色、鋭頭で果胞より短い。雌鱗片は果胞より短く、幅が狭い。雌小穂は疎らに花を付ける。果胞は長さ2.5~3.5㎜、多数の脈が目立ち、疎らに短毛があり、短い嘴があり、口部は凹形。柱頭は3岐。痩果は楕円形、3稜形、頂部に盤状の付属体がある。

76 Carex curvicollis Franch. et Sav. ナルコスゲ 鳴子菅
 日本固有種。北海道(西南部以南)、本州、四国、九州に分布。和名の由来は細い柄から垂れ下がった果穂が鳴子のようであることから。山地の渓流沿いに生える。
 多年草、高さ20~40㎝。叢生し、短い匍枝がある。花茎は平滑。基部の鞘は葉身がなく、淡色。葉は幅2~3.5㎜、柔らかく、縁が少しざらつく。苞は無鞘、葉身は短い。頂生の小穂は雄性、線形、長さ1~2㎝。側小穂は雌性、2~6個、やや接近してつき、円柱形、長さ1.5~4㎝×幅5~8㎜、先が垂れ下がり、下部の小穂のほうが長い。雌鱗片は果胞の長さの1/2以下と小さく紫褐色、ときに色が薄くなる。果胞は長さ4~5㎜、やや扁平な3稜形、緑色、嘴が長く、先が外側へ少し反り返るのが特徴である。果実は果胞に緩く包まれ、倒卵形、3稜があり、長さ約1.5㎜。柱頭は3岐。花期4~5月。

77 Carex daibuensis Hayata ダイブスゲ 
 カナダ、USA北東部、ヨーロッパ北部原産。英名はSaltstarr, Carex Vacillant, Estuarine Sedge, Estuary Sedge, Swinging Sedge, Saltstor。

78 Carex daisenensis Nakai ダイセンスゲ 大山菅
 日本固有種。本州の福井県以西、九州北部に分布する。山地の落葉樹の林内や林縁に生える。
 根茎は短く、密に叢生する。基部の鞘は黒褐色、古くなると繊維状に分解して残る。葉は花茎と同長または長く、幅4~6mm、濃緑色、平滑、柔らかい。花茎(flower−bearing stelns:有花茎ともいう)はすべて側生(lateral)、高さ20~40㎝、平滑で柔らかい。頂小穂は雄性、線形で長さ2~3㎝×幅1.5~2㎜、緑白色。側小穂は雌性、2~4個、間隔が離れてつき、直立し、狭い円柱形で長さ1~2.5㎝。苞は葉状、鞘があり、葉身は小穂と同長またはやや短い。雌鱗片は緑白色、倒卵形、長さ3~3.5㎜、先は鋭形で微突がある。果胞は長さ3.5~4.5㎜、脈が目立ち、毛があり、嘴はやや長く、口部には2歯がある。果実は長さ2~2.5㎜、頂部には環状の付属体がある。柱頭は3岐。果期は4~6月。

79 Carex deweyana Schwein. ホスゲ 広義
 カナダ、アラスカ、USA原産。英名はDewey's sedge, short-scale sedge。北アメリカに2変種ある。
79-1 Carex deweyana Schweinitz var. deweyana
 最長の花序は長さ35~56㎜。最長の下部の節間は(11~)13~34㎜。最長の下部の苞は長さ15~49㎜。2n=54。
79-2 Carex deweyana Schwein. subsp. senanensis (Ohwi) T.Koyama ホスゲ 
 最長の花序は長さ12~32㎜m。最も長い下部の節間は6~10㎜。最長の下部の苞は長さ9~12(~18)㎜。

80 Carex daxinensis Y. Y. Zhou & X. F. Jin カレックス・ダキシネンシス
 中国固有種。2014年に報告された新種(参考8)。
 広西チワン族自治区大新県雷平鎮に分布。標高190~260mの石灰岩の山々の斜面の藪の中に生える。花期および果期は5月。

81 Carex diandra Schrank クリイロスゲ 栗色菅
 北半球の温帯などに広く分布する。日本(北海道、本州の日本海側)、中国(内モンゴル)、モンゴル、ロシア、中部~南西アジア、ヨーロッパ、太平洋諸島 (ニュージーランド)、北アメリカ原産。中国名は圆锥薹草 yuan zhui tai cao。英名はlesser tussock-sedge , lesser panicled sedge。和名は果胞の色と形が少し栗色に似ていることから。高山の湖、沼地、沼地の牧草地に生える。
 多年草。根茎は短く這い、硬化する(indurate)。稈は緩く叢生し、高さ30~45[~90]cm、扁平な三角形、上部はザラつき、基部は褐色~暗褐色の葉身のない鞘で覆われる。葉は稈より短く、葉身は線形、幅2~3㎜、平ら、縁は斑点状、先は尖鋭形。苞は剛毛状で花序より短い。花序は穂状円錐花序、長さ2~3.5cm。 ときに最下の小穂は±分枝する。小穂は雄雌性花序(androgynous)、広卵形、長さ5~7㎜。 雌の鱗片は鉄さび褐色、広卵形、約・長さ3㎜×幅2㎜、3脈があり、縁は淡色透明、先は尖鋭形。果胞は鉄さび褐色、上部は帯緑色、鱗片とほぼ同長、広卵形、平凸形、約・長さ3㎜×幅2㎜、革質、外側の基部に 4~5本の短い脈があり、内側には脈がなく、基部は広いほぼ心形、海綿状、短い柄があり、上部の縁には小歯があり、先は次第に狭まり、小鋸歯縁の狭い翼のある長さ約1㎜の嘴になる。小堅果はきつく包まれ、倒卵形、平凸形、約・長さ1.4㎜×幅1.2㎜、基部は広い楔形で、短い柄がある。花柱は基部がわずかに太い。 柱頭は2岐。花期および果期は7[~9]月。2n=48, 50, 54, 60。

82 Carex dickinsii Franch. et Sav. オニスゲ 鬼菅
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国原産。中国名は朝鲜薹草 chao xian tai cao。別名はミクリスゲ 実栗菅。和名は果胞が大きく、小穂がイガのようなとげとげした様子を鬼に見立てたもの。低地~低山の湿地に生える。
 多年草、高さ20~50㎝。根茎は細長く、匐枝を伸ばして湿地に群生する。葉は幅4~8㎜。茎頂に小穂が3~4個、集まってつく。頂小穂は雄性、長い柄がある。雌小穂は太く、長さ約2㎝の楕円形、果胞が膨らみ、くっつき合って隙間なくつき、ほとんど柄が無い。果胞は長さ9~10㎜、下部が膨らみ、ゆるく果実を包み、先は長い嘴になり、口部に2歯がある。鱗片は短く、果胞の間から先が見える程度。果実は長さ2.5~3㎜の倒卵形、明瞭な3稜があり、果胞に比べて小さく、頂部に長い曲がった紐状の嘴がつく。柱頭は3岐。2n=64。果期は5~7月。

83 Carex dimorpholepis Steud. アゼナルコ 畔鳴子
 北海道、本州、朝鮮、中国、インド、ネパール、スリランカ、タイ、ベトナム、ミャンマー原産。中国名は二形鳞薹草 er xing lin tai cao。別名はアゼナルコスゲ 畔鳴子菅。畔、川岸、湿った林縁、草地に生える。和名は穂が鳴子に似て畔に生えることから。
 多年草、高さ20~80㎝。茎の断面は3角形。葉は黄緑色で幅0.4~1㎝。小穂は4~6個つき、長さ3~7㎝×幅約5㎜、垂れ下がる。最上部を除いて雌花、最上部の小穂の雄花の先にも雌花がつく雌雄性花序(gynaecandrous)であるのが特徴である。果胞は長さ約3㎜の広卵形、扁平、嘴がほとんどなく、表面にパピラ(乳頭状突起)が密生する。パピラはゴウソより低く、やや不明瞭。柱頭は2岐、取れやすい。鱗片は果胞に比べ幅が狭く、先は凹頭、太くて長い芒がつき、芒には鋭い上向きの刺がある。果実は果胞よりかなり小さく、長さ1.8㎜の扁平な倒卵形、褐色~暗褐色。2n=62,76。果期は4~6月。

84 Carex discoidea Boott ヒメアオスゲ 姫青菅
 日本固有種。本州(紀伊半島、広島県)、四国、九州、南西諸島に分布。海岸近くの草地、明るい樹林下暖地の海岸近くの疎林斜面などに生える。
 高さ10~25㎝。全体に繊細、叢生し、地下に細い匍匐枝を出し小群生する。基部の鞘は淡褐色。葉は線形で花茎よりやや長く、幅1~2㎜、柔らかい。下部の苞葉は糸状で花序よりかなり長く、短い鞘がある。小穂は頂部に固まってつく。頂小穂は雄性、1個つき、線形、長さ3~5㎜、無柄。側小穂は1~3個つき、雌性、円柱形、長さ3~6㎜、無柄。雄鱗片は緑白色、先が鋭形。雌鱗片は緑白色、先にやや短い芒がある。果胞は雌鱗片より長く、卵形、長さ1.5~2㎜、細脈があり、短毛があり、嘴は短く、口部は凹形。痩果はきつく果胞に包まれ、倒卵形、長さ1~1.2㎜、頂部に小さい円盤状の付属体がある。柱頭は3岐。果期は4~5月
84-1 Carex discoidea Boott var. discoidea ヒメアオスゲ 狭義

84-2 Carex discoidea Boott var. perangusta (Ohwi) Katsuy. ヤクシマイトスゲ 屋久島糸菅

  synonym Carex perangusta Ohwi
 屋久島以南~南西諸島に分布する。山地の岩場、倒木上、渓流沿い岩上などに生える。
 非常に小さく、繊細、高さ2~10㎝。匐枝を出し叢生する。基部の鞘は淡褐色。葉は糸状、幅約0.5㎜。花序は頂生、雄小穂は1個、長さ2~5㎜。雌小穂は花茎の上部に密集して1~2個つく。苞は小さく目立たないが、普通花序より長い。果胞は長さ約1.5㎜、ほとんど脈は無く、毛がある。果期は4~5月。

85 Carex dispalata Boott カサスゲ 傘菅
 日本(北海道、本州、四国、九州)、韓国、中国(安徽省、河北省、江蘇省、吉林省、遼寧省、内モンゴル、陝西省、山西省、浙江省)原産。中国名は皱果薹草 zhou guo tai cao。標高500~2900mの溝、沼地、湿った場所に生える。
 根茎は厚く、木質で、細長くて太い匍匐茎を持つ。稈は高さ40~80(100)㎝、断面は鋭角の三角形、中程度の太さ、上部の角(かど)がわずかにザラつき、赤褐色で葉身のない鞘があり、鞘はやがて片面が網状繊維に崩壊する。葉は稈とほぼ等長、葉身は硬く、幅4~8㎜、平らで2本の明瞭な側脈があり、両面は平滑、上部の縁はザラつく。下部の葉は長い鞘があり、上部の葉はほとんど鞘がない。苞は葉状で、下部の苞は基部を抱く小穂より長く、上部の苞は小穂より短く、鞘は無い。小穂は4~6(7)個つき、接近し(approximate)、通常は稈の上部では±連続する。頂生の小穂は雄性、円筒形、長さ4~6㎝、花序柄がある。側小穂は雌性、円筒形、長さ3~9㎝×幅約5㎜、密に多数の花がつき、ときに頂部に数個の雄花がつき、ほぼ無柄、最下の小穂は短い花序柄がある。雌鱗片は側部が赤褐色、中央が黄緑色、卵状披針形または披針形、長さ約3㎜、膜質、3脈があり、先は尖鋭形、無突起または微突形。果胞は褐緑色、鱗片よりわずかに長く、成熟すると斜めに開出またはほぼ水平に開出し、卵形、わずかに膨らんだ三角形、長さ3~4㎜、厚い紙質、無毛、横しわがあり、不明瞭な小数な脈があり、基部は丸く、無毛で、先は急に狭まり、中程度の大きさから長い嘴になり、嘴はわずかに反り返り、先端は紫赤色、開口部は斜めの切形または凹形。小堅果はわら色、やや緩く包まれ、倒卵形または楕円状倒卵形、断面は三角形、長さ約2㎜、先は微突形。柱頭は3岐。花期および果期は5~7月。2n=78。

86 Carex disperma Dewey ホソスゲ 細菅

  synonym Carex dominii H.Lév. et Vaniot ナガミノオゼヌマスゲ

 北半球(ユーラシア、北アメリカ)に広く分布する。日本(北海道)にも自生する。沼地、森林の湿った場所に生える。
 根茎は細く、匍匐性で分枝する。 稈は高さ30~50㎝、細く、鋭角形で弱く、上部はザラつく。 葉は稈より短く、葉は明るい緑色、線形、幅1~1.5㎜、平らで柔らかい。苞は基部では剛毛状(setaceous)、上部では鱗片状(glumelike)。小穂は2~5個、雄雌性花序(androgynous)で、離れ、球形で、上部に1~2個の雄花、下部に2~3個の雌花がある。雌鱗片は淡色、卵形、長さ2~2.5㎜、3脈のある肋は短い微突を形成する。果胞は褐色、鱗片よりわずかに長く、楕円形、両凸形、長さ2.5~3㎜×幅1.3~1.5㎜、革質、光沢があり、両面に多数の脈があり、基部は丸く、海綿状で、短い柄があり、先は急に狭まり長さ0.25㎜以下の平滑な嘴になり、口部は凹形。小堅果は赤褐色、きつく包まれ、楕円形、両凸形、長さ1.5~1.8㎜、光沢がある。花柱は基部が太くならない。柱頭は2岐。花期および果期は6~7月。2n=70。

87 Carex dissitiflora Franch. ミヤマジュズスゲ 深山数珠菅
 日本(北海道、本州、四国、九州)、千島列島、台湾原産。山地の湿った林縁や林床、渓流畔などに生える。
 多年草、密に叢生する。根茎は短い。葉は幅3~7mm、柔らかく鮮緑色。花茎は高さ40~80cm。小穂は全て雄雌性花序(androgynous)、各苞に1~2個つき、ときに果胞の先から枝を出し、その先に小穂をつける。苞は葉状で鞘がある。果胞は長さ10~12mm、嘴は非常に長く、細脈があり無毛。柱頭は3岐。果期は5~6月。

87-1 Carex dissitiflora Franch. subsp. taiwanensis (Ohwi) T.Koyama ヒメミヤマジュズスゲ 姫深山数珠菅

  synonym Carex taiwanensis (Ohwi) Akiyama
 台湾に分布。中国名は臺灣疏花薹。
 単生またはまばらに叢生し、根茎は暗褐色、繊維状、細長く斜めになる。稈は細く、高さ10~40㎝、直径0.25~0.5㎜、断面は広楕円形、平滑。 葉は稈につき、長さは稈とほぼ同長、葉身は幅1~2㎜の細長い線形で、葉鞘は繊維状に破砕される。苞は葉状、花序よりもはるかに長く、長い鞘を持つ。小穂は3~5個、離れてつき両性、雄雌性、長さ3~5㎝、短柄がある。雄花部分は線形、長さ1.5~2㎝×幅1.5~2mm。雌花部分はまばらに花が数個つく。雄鱗片は披針形、長さ5~6㎜×幅約2㎜、先は鋭形~円形、雄しべは3本。雌鱗片は卵状披針形、長さ6~8㎜、先は鋭形、柱頭は3岐。果胞は直立し、鱗片より長く、狭紡錘形、長さ8~11㎜、断面は三角形、嘴は長さ約4㎜、口部は切形またはわずかに2歯がある。痩果は楕円形、長さ約3㎜、長さ約1㎜の短い柄がある。花期は5~9月。

88 Carex doenitzii Boeck. コタヌキラン 小狸蘭
 日本固有種。北海道(西南部)、本州(近畿地方以北)、屋久島に分布する。山地から亜高山帯の砂礫地や草地に生える。
 根茎は密に束生し、根は黄褐色の毛で覆われる。茎は高さ30~50cm。基部の鞘は濃赤色、堅く、光沢があり、糸網を生じる。葉は束生し、線形、長さ20cm、幅3~5mm、下面は粉白色になる。小穂は2~4個つく。頂生の小穂1~2個は雄性、太い線形。その下に雌性の小穂がつき、長さ1.5~3cmの楕円形、花序柄は細く、下部では長さ1~2cm。雌鱗片は濃赤色で披針形、先は尖鋭形、ときに芒がある。果胞は長さ4~7㎜、狭卵形~楕円形、やや扁平で、まばらに小剛毛があり、先は細く長い嘴となり、嘴の口部は深く2裂する。果期は6~7月。

89 Carex dolichocarpa C.A.Mey. ex V.I.Krecz. ミタケスゲ 御嶽菅
  synonym Carex michauxiana Boeck. subsp. asiatica Hultén
  synonym Carex michauxiana Bocklr. var. asiatica (Hult.) Ohwi
 日本(北海道、本州の中部地方以北)、千島、ロシア、ニューギニアに分布。高層湿原に生える。
 多年草、高さ20~50㎝。葉は少数つき、幅3~5㎜。頂部の雄性小穂はやや長い柄があり、雌性小穂にも細くて長い柄があり、柄が隠れて目立たない。雌生の小穂は放射状に果胞をつけた金平糖状で、2~4個、上部の穂は頂小穂に接してつき、下部の穂は離れる。苞は葉状で長い。果胞は鱗片の2倍以上の長さがあり、長さ10~13㎜、熟すと開出する。柱頭は3岐。花期は6~7月。

90 Carex dolichostachya Hayata ナガボスゲ 長穂菅
 日本(南西諸島)、中国(安徽省、陝西省、四川省、浙江省)、台湾、フィリピン原産。中国名は长穗薹草 chang sui tai cao。標高800~1600mの森林、山の斜面の溝の側面に生える。
 根茎は丈夫で、鱗片の繊維質の残骸で覆われる。数本の稈が塊状になり、高さ30~60㎝、細く平滑。 基部の鞘には葉身がなく、紫褐色~暗褐色で、通常は繊維状に裂かれる。葉は稈より短いかまたは長く、葉身は幅3~10㎜、平らで革質、堅く、縁に沿っておよび下面がザラつく。苞は鞘があり、鞘は長さ1~3.5㎝、下部の苞は葉状、上部の苞は剛毛状、基部を抱く小穂より短い。小穂は4~5個。頂生の小穂は雄性、線状円筒形、長さ35~50㎜×幅1.5~2㎜。 側小穂は雌性、線状円筒形~円筒形、長さ20~40㎜×幅1.5~3㎜、緩く花がつく。花序柄は細く、直立し、長さ1.5~7㎝。雌鱗片は倒卵形~長円形、長さ2.5~3.5㎜、膜質、1~3本の脈のある緑色の肋が突き出て、微突になり、先は円形。果胞は鱗片より長く、卵状紡錘形、長さ2.5~4㎜、微軟毛またはより密に毛があり、顕著に多くの脈があり、基部は漸尖して短い柄があり、先は漸尖して短い嘴になり、口部には2歯がある。小堅果はきつく包まれ、卵形、三角形、長さ2~2.5㎜、先は円盤状の環がある。花柱は基部が太く、宿存性。柱頭は3岐。

90-1 Carex dolichostachya subsp. trichosperma (Ohwi) T.Koyama オオモエギスゲ 

  synonym Carex trichosperma Ohwi
 台湾に分布。阿里山宿柱薹 a li shan sù tai cao。

91 Carex doniana Spreng. シラスゲ 白菅
  synonym Carex alopecuroides D.Don 

  synonym Carex alopecuroides D.Don var. chlorostachya C.B.Clarke [Ylist]

  synonym Carex alopecuroides var. chlorostachya C.B.Clarke
  synonym Carex chlorostachya D.Don

  synonym Carex japonica subsp. chlorostachys (C.B.Clarke) T.Koyama

  synonym Carex japonica var. chlorostachys (C.B.Clarke) Kük.
 日本、韓国、中国(福建省、広東省、広西チワン族自治区、湖北省、江蘇省、陝西省、四川省、雲南省、浙江省)、台湾、ヒマラヤ東部(ネパール東部、インド北東部、ブータン、中国のチベット自治区・雲南省、ミャンマー北部)、ネパール、フィリピン原産。中国名は签草 qian cao。標高500~3000mの川辺、溝の脇、森林、低木の間、草原の湿った場所に生える。和名のとおり、全体に緑白色、葉の裏面は特に白い。乾くとより白っぽくなる。
 根茎は短く、細い匍匐茎がある。稈は高さ30~60㎝、かなり太く、圧縮された三角状で、角に斑点があり、基部に茶色がかった黄色の鞘があり、鞘は時々繊維状に崩壊する。葉は稈よりわずかに長いかほぼ同じで、葉身は幅5~12mm、平らでやや柔らかく、上面には側部に明瞭な2本の葉脈があり、上部の縁にはザラつきがあり、鞘がある。苞は葉状、上部の苞は線形で、抱く小穂よりも長く、鞘は無い。小穂は2~6個、一番下の1~2個の小穂は離れており、上部の小穂はむしろ稈の上部に集まる(approximate 接近する)。頂生の小穂は雄性、線状円筒形、長さ3~7.5㎝、花序柄が有る(花序柄は長さ0.5~3㎝)。側小穂は雌性、ときに頂部に数個の雄花をつけ(androgynous)、円筒形、長さ3~7㎝、幅約5㎜、密に多数の花があり、下部の小穂は短い花序柄があり、上部の小穂はほぼ無柄である。雌の鱗片は淡黄色または部分的に淡褐色、卵状披針形、長さ約2.5㎜、膜質、緑色の1脈があり、縁に鋸歯があり、先は微突形。果胞は緑黄色、最終的には水平に開出し、鱗片より長く(ほぼ同長)、長円状卵形、わずかに膨らんだ三角形、長さ3.5~4㎜、膜質、不明瞭な数本の脈があり、基部は広楔形またはほぼ円形、先は漸尖し、真っ直ぐで短い嘴になり、口部には短い2歯がある。小堅果は暗黄色、緩く包まれ、倒卵形、断面は三角形、長さ約1.8㎜、先は微突形。花柱は基部が太くない。柱頭は3岐、細く、果胞の長さとほぼ等しく宿存する。花期および果期は4~10月(Flora of China)。

92 Carex drymophila Turcz. ex Steud. モリカサスゲ 森笠菅
  synonym Carex sordida Van Heurck & Müll.Arg.
  synonym Carex amurensis var. drymophila (Turcz.) Kük.
  synonym Carex drymophila var. drymophila
 朝鮮、中国(黒竜江省、吉林省、内モンゴル)、モンゴル、ロシア(極東、東シベリア)原産。中国名は野笠薹草 ye li tai cao。森林地帯の湿った草原に生える。
 根茎が長い。 稈は高さ60~70㎝、鈍角の三角形で、やや上部で、上部は滑らかまたはザラつき、基部は赤褐色の葉身のない鞘で覆われ、鞘は縁が網状の繊維に裂ける。葉は稈より短く、葉身は幅4~6㎜、平らで無毛または鞘の膜質部分のみに毛があり、縁はザラつき、鞘はかなり長い。苞は葉状、下部の1~2個の苞は花序より長く、わずかに長い鞘があり、上部の苞は通常花序より短く、鞘が短い。雄小穂は基部に剛毛状または鱗片状の苞を持つ。小穂は5~7個つき、下部の小穂は離れてつき、上部の小穂は近接する。頂生の2~3個の小穂は雄性、帯状(fasciated)または狭い披針形、長さ2~4㎝、ほぼ無柄。残りの小穂は雌性、長円状円筒形または円筒形、長さ3~5㎝、やや緩く多数の花がつき、基部ではかなり緩く、最下部の花序柄は長さ6~7㎝、直立またはわずかに垂れ下がり、上部の花序柄はかなり短い。雌鱗片は側部が淡い鉄さび色で、中央が帯緑色、狭い卵形または披針形、長さ4~4.5㎜、膜質、3脈があり、縁は白色透明、先は尖鋭形形またはわずかに鋭形で、短い芒がある。果胞はオリーブ色、斜めに開出し、鱗片より長く、卵状円形、断面は膨らんだ三角形、長さ5~7㎜、草質、明瞭な数本の脈があり、基部は丸く、非常に短い柄があり、先は徐々に狭くなり、わずかに幅広で±長い嘴になり、嘴は縁に帯褐色の剛毛があり、口部に鋭くやや長い2歯がある。小堅果は緩く包まれ、倒卵形、断面は三角形、長さ約3㎜、基部には短い柄があり、先は微突形、花柱の基部は太くない。柱頭は3岐。花果期は6~8月。

93 Carex duriuscula C.A.Mey. イトノヤマスゲ 広義
 朝鮮、中国(粛省、河北省、黒竜江省、河南省、吉林省、遼寧省、内モンゴル、寧夏、青海省、陝西省、山東省、山西省、新疆、西蔵)、モンゴル、ロシア、カザフスタン、ニューギニア、北アメリカ(カナダ、アラスカ、USA)原産。中国名は寸草 cun cao。標高(100~)200~700mの草地、斜面、湿った場所、または川岸、道端、半乾燥地、牧草地などの岩場や砂地に生える。
 根茎は細くて長く這い、シュートの束が緩く束生する。稈は高さ5~20㎝、細く平滑で、基部は繊維状に分解する灰褐色の鞘で覆われる。葉は稈より短く、葉は線形、幅1~1.5㎜、内巻きで硬く、縁はわずかにザラつく。苞は鱗片状。花序は卵形または球形、長さ5~15㎜×幅約5㎜。小穂は3~6個、雄雌性花序(androgynous)、卵形、密で、長さ4~6㎜。 雌鱗片は鉄さび褐色、広卵形または楕円形、長さ3~3.2㎜、縁と先は白色透明、先は鋭形または鈍形。果胞は鉄さび色または黄褐色、鱗片より短いかわずかに長く、卵形~卵状楕円形または広卵形、平凸形、長さ3~4.5㎜×幅約2㎜、革質、成熟するとわずかに光沢があり、両面に多数の脈があり、基部は丸く、海綿質で、太い柄があり、先は急に狭まり短いザラつく嘴になり、口部は白色透明で、斜めの切形、外側が浅く裂ける。小堅果はやや緩く包まれ、ほぼ円形または広楕円形、長さ1.5~2㎜×幅1.5~1.7㎜、花柱の基部が太くなる。柱頭は2岐。花期および果期は4~6月。
93-1 Carex duriuscula C.A.Mey. subsp. duriuscula  糸野山菅
 朝鮮、中国(甘粛省、黒竜江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル)、モンゴル、ロシア、カザフスタン、ニューギニア、北アメリカ原産。中国名は寸草 cun cao。標高200~700mの草地、斜面、川岸の湿った場所、道端に生える。
 葉身は線形、内巻き。雌鱗片は鉄さび褐色で、縁は白色透明になる。

93-2 Carex duriuscula C.A.Mey. subsp. rigescens (Franch.) S.Yun Liang et Y.C.Tang ノヤマスゲ 野山菅

 朝鮮、中国(甘粛省、河北省、河南省、吉林省、遼寧省、内モンゴル、寧夏、青海省、陝西省、山東省、山西省)、モンゴル、ロシア原産。白颖薹草 bai ying tai cao。斜面、半乾燥地帯、牧草地に生える。
 葉身は平ら。花序は白色。雌鱗片は通常、果胞より長くまたは果胞と同長で、縁と先は広く白色透明で、先はほぼ鈍形。

94 Carex duvaliana Franch. et Sav. ケスゲ 毛菅
 日本(本州の関東地方以西の太平洋側、四国、九州)、中国(安徽省)原産。中国名は三阳薹草 san yang tai cao。600~1700mの山の斜面の道端、森林の縁に生える。
 根茎は短く、匍匐茎がある。 稈は叢生し、高さ20~35㎝、細長く、鈍角で、毛がある。葉は稈よりわずかに短く、葉は淡い緑色、幅1.5~3㎜、平らで微軟毛がある。基部の鞘は淡黄色~淡褐色で、密に微軟毛がある。下部の苞には葉身があり、それに基部を抱かれる小穂よりも長く、長い鞘があり、鞘は長さ1~4.5㎜。上部の苞は剛毛状で、短い鞘があり、微軟毛がある。小穂は3~5個、間隔が開き、ときに上部の小穂はわずかに連続する。頂生小穂は雄性、円筒形、長さ15~22㎜×幅2~3㎜、花序柄は長さ1.5~2 cm。側小穂は雌性、円筒形、長さ10~20㎜×幅2~3㎜、緩く花がつき、花序柄は苞に包まれているか、または短く突き出る。 雌鱗片は黄白色、倒卵形、長さ約3㎜、緑色の肋に1~3本の脈があり、かなり顕著で突き出し、短い芒になる。果胞は淡い緑色、鱗片より長く、卵状紡錘形、三角形、長さ3.5~4㎜、膜質、多くの脈があり、まばらに微軟毛があり、基部は長さ0.5~1㎜の柄に細くなり、先端は狭まり、長さ約1mmの中型の嘴になり、口部には2歯がある。 小堅果はきつく包まれ、卵形、三角形、長さ1.5~2㎜、基部は短い柄があり、柄はわずかに曲がり、先端は円盤状環形。花柱は短く、基部は円錐形に太くなる。柱頭は3岐。花期および果期は5月。

94-1 Carex duvaliana Franch. et Sav. x C. pisiformis Boott サヤゲホンモンジスゲ 


95 Carex echinata Murray キタノカワズスゲ 北の蛙菅
 日本(北海道、本州中部以北)、朝鮮、ロシア、東ヒマラヤ、ニュージーランド、ニューギニア、太平洋諸島、ヨーロッパ、南西アジア、北アメリカ、中央アメリカ原産。高層湿原や泥炭湿地に生える。
 稈は高さ10~90(~135)㎝。 1本の稈に3~6枚の葉を付ける。鞘はしっかりしていて、内側の帯は透明で、長さ1.8~2.5㎝、先は凹形、無毛。葉舌は長さ0.6~2.5(~4.5)mm、円形~±鋭形。葉は扇だたみ(plicate)、長さ5~40㎝×幅0.7~3.3(~3.8)㎜、最も広い葉は幅1~3.3(~3.8)㎜。花序は長さ0.7~7.8㎝。小穂は(2~)3~8個つく。側小穂は雌性、しばしば下部に少数の雄花をつける雌雄性花序(gynecandrous)、長さ3~15.5㎜、無柄、雄性部分は花が7個、長さ8.2㎜、雌性部分は花が3~32個、長さ2.5~11㎜。基部の2個の小穂は間隔が1.7~42㎜離れる。頂生小穂は雌雄性花序(gynecandrous)、長さ5~24㎜、雄性部分は花が2~17個、長さ2~16.5㎜×幅0.9~2㎜、雌生部分は花が4~26個、長さ2.6~9㎜×幅4.9~9.1㎜。 雌鱗片は卵形、長さ(1.4~)2.1~3.1㎜×幅0.7~2.3㎜、先は鋭形、ときに鈍形になる。雄鱗片は卵状披針形~卵形、長さ1.3~3.8㎜×幅0.8~1.7㎜、基部はこん棒形、先は鋭形。 葯は長さ0.8~1.6(~2)㎜。果胞は開出~後屈し、栗子色(castaneous)~暗褐色、外側に2~14本の脈があり、内側に痩果を越えて0~12本の脈があり、披針形~卵形、長さ(2.65~)2.9~4.75㎜×幅0.8~2.1㎜、長さは幅の(1.7~)1.8~3.2(~3.6)倍。嘴は長さ(0.85~)0.95~2㎜、体長の(0.4~)0.45~0.86倍、小鋸歯があり、歯は長さ(0~)0.15~0.5㎜。 痩果は卵状披針形~菱状卵形、長さ1.3~2.1㎜×幅0.8~1.55㎜。2n=58。

96 Carex eleusinoides Turcz. ex Kunth ヒメアゼスゲ 姫畔菅
 日本(北海道)、朝鮮、中国、モンゴル、ロシア、北アメリカ(アラスカ、カナダ、USA)原産。中国名は蟋蟀薹草 xi shuai tai cao。英名はgoosegrass sedge。標高1700~2500mの高山の凍土、湿った場所に生える。
 根茎は短い。 稈は叢生し、高さ30~40㎝、細く、扁平な三角形で、上部はわずかにザラつき、基部は赤紫色または褐色の葉身のない鞘で覆われ、やがて平行な繊維状に崩壊する。葉は稈より短いかまたはほぼ同長で、葉身は灰緑色、線形、幅2.5~4㎜、平坦、パピラ(乳頭状突起)があり、縁はザラつく。下部の1~2枚の苞(involucral bracts)は葉状で、花序を上回り、鞘はなく、上部は鱗片状(glumelike)。小穂は3~5個、近接し(approximate)、円筒形、長さ10~25㎜×幅約0.5㎜、密に多数の花をつける。頂生小穂は雌雄性花序(gynecandrous)、または先や基部に雄花をもち雌花は中間につく雄雌雄性(androgynaecandrous)。側小穂は雌性、上部の2~3個の小穂は無柄またはほぼ無柄、下部の1~2個の小穂は花序柄が長さ約1.5㎜まで。 雌鱗片は暗紫黒色、長円状楕円形、長さ約2.5㎜×幅1.2~2㎜、明るい中肋をもち、縁は狭く白色透明、先は鈍形。果胞は薄褐色または薄緑色、上部に赤色または紫色の斑点があり、鱗片より長く、ほぼ直立し、楕円形または倒卵状楕円形、平凸形、長さ(2~)2.5~3㎜、膜質、不明瞭な脈があり、基部は短い柄があり、先は急に狭まり、短い円筒形の赤褐色の嘴になり、口部は全縁またはわずかに凹形。小堅果はきつく包まれ、広倒卵形、長さ1.5~1.7㎜×幅約1.3㎜、基部には非常に短い柄があり、花柱の基部は太くならない。柱頭は2岐。2n=84。

97 Carex enervis C.A.Mey. ホソノヤマスゲ 
 中国(甘粛省、黒竜江省、吉林省、内モンゴル、青海省、山西省、四川省、新疆ウイグル自治区、西蔵省、雲南省)、モンゴル、ロシア(シベリア)原産。中国名は无脉薹草 wu mai tai cao。標高2500~4500mの湿った場所、道端、牧草地、沼地に生える。

98 Carex eremopyroides V.I.Krecz. モウコスゲ 蒙古菅
 中国(黒竜江省、吉林省、内モンゴ)、モンゴル、ロシア原産。中国名は离穗薹草 li sui tai cao。湿原、湖畔や川辺の湿った場所に生える。

99 Carex erythrobasis H.Lév. et Vaniot タンナカンスゲ 
 朝鮮、中国(吉林省の長白山)、ロシア原産。中国名は红鞘薹草 hong qiao tai cao。Kewscienceでは中国を分布域から除外している。

100 Carex fangiana X. F. Jin & Y. Y. Zhou カレックス・ファンギアナ
 中国固有種。四川省宝興県鳳通寨の産地でのみ知られる。2014年に報告された新種(参考8)。
 標高1800mの道端に生える。花期および果期は6月上旬。

101 Carex fernaldiana H.Lév. et Vaniot イトスゲ 糸菅
  synonym Carex pisiformis Boott in A. Gray

  synonym Carex sachalinensis subsp. fernaldiana (H.Lév. & Vaniot) T.Koyama

  synonym Carex pisiformis var. koreana (Nakai) T.Koyama
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、台湾原産。Flora of Chinaではホンモンジスゲ(Carex pisiformis Boott)のsynonymとしていた。暗い林の中の岩上に生える。
 高さ15~30cm。根茎はやや叢生し、細い匍匐枝を出す。稈の基部の鞘は淡わら色~褐色。葉は扁平で、柔らかく、特に細く、幅0.3~1㎜、基部のものは内巻きまたは2つ折りになる。花茎は細く、幅0.3~0.5㎜、平滑、ザラつかない。苞は鞘が長さ0.5~1.5cm、先の葉身部は葉状で長さ2.5~4.5㎝、基部を抱く小穂の長さと同長またはやや短い。小穂は2~3個つき、ときに最下の小穂が離れる。頂生の小穂は雄性、線形、長さ1~2㎝×幅1~2㎜、側小穂は雌性で、線状円柱形、長さ0.5~2.5㎝、まばらに雌花をつけ、基部には鞘からほとんど出ない短い花序柄がある。雌鱗片は淡褐色、先は尖鋭形または短い芒となる。果胞は長さ3~3.5㎜×幅0.9~1.1㎜、雌鱗片より長く、狭卵形、鈍三稜形、稜と稜の間に4~5脈があり、面は無毛、先はやや急に狭まって縁のザラつく短い嘴になり、口部には2小歯がある。痩果は倒卵形、淡褐色~褐色、長さ約2㎜。果期は5~6月。

102 Carex fibrillosa Franch. et Sav. ハマアオスゲ 浜青菅

  synonym Carex breviculmis subsp. fibrillosa (Franch. & Sav.) T.Koyama

  synonym Carex breviculmis var. fibrillosa (Franch. & Sav.) Matsum. & Hayata [Flora of China]

 日本(本州、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国(安徽省、甘粛省、陝西省)、台湾原産。中国名は纤维青菅 xian wei qing jian。アオスゲ似ていて海岸の砂地に生えるため、ハマアオスゲといい、スナスゲとも呼ばれる。
 高さ10~30㎝。地下に匍匐枝を出して広がる。葉は普通、茎より長くて硬く、幅3~5㎜。茎の先に3~5個の直立した小穂を固まって付ける。苞は花穂より短いことが多く、長く伸びることもある。最上部は雄小穂、棍棒状で太い。下側の雌小穂は短い円柱状でアオスゲより太く、雌花にはアオスゲ同様に鱗片に長い芒がつく。果胞は長さ3~3.5㎜、太い明瞭な脈が見られ、毛が密生し、熟すと黄白色~黄褐色になり、基部に明瞭な柄がある。果実は3稜形、頂部には柱基が付属体として残る。柱頭は3岐。花期は4~6月。

103 Carex filicina Nees イヌハナビスゲ 広義

  synonym Carex filicina Nees subsp. pseudofilicina (Hayata) T.Koyama イヌハナビスゲ

 中国(福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、海南省、湖北省、江西省、四川省、西蔵、雲南省、浙江省)、台湾、インド、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、ネパール、フィリピン、スリランカ、タイ、ベトナム原産。中国名は蕨状薹草 jue zhuang tai cao。標高1200~2800mの森林、草原に生える。

104 Carex filipes Franch. et Sav. タマツリスゲ 玉釣菅 広義
 日本(本州、四国、九州)、韓国、中国(安徽省、福建省、貴州省、河北省、黒竜江省、湖北省、江蘇省、遼寧省、浙江省)、ロシア原産。中国名は丝柄薹草 si bing tai cao。標高1300~2200mの森林、道端の湿った場所、草地に生える。
 根茎は短いかまたはやや長い。 稈は高さ30~55cm、断面は扁平な三角形、平滑、基部は紫赤色の葉身のない鞘で覆われる。葉は稈より短く、葉は線形、幅2~8㎜、平らで柔らかく、先は鋭形。苞は葉状、花序より短く、長い鞘がある。小穂は3~4個、離れてつく。頂生の小穂は雄性、長円状披針形または円筒形、長さ2~3 cm、長い花序柄を持つ。側小穂は雌性、通常、花が3~6個つき、花序柄は長さ3~6㎜、非常に細く、垂れ下がる。雌鱗片は黄褐色または黄白色、卵形または卵状披針形、長さ5~6㎜、緑色の3脈があり、肋は鋭形の先で終わる。果胞は黄緑色、卵形または楕円形、三角形、長さ5~7㎜、無毛、わずかに多数の脈があり、基部は楔形で、短い柄があり、先は急に狭まり細く長い嘴になり、口部には2歯がある。小堅果はわら色、広倒卵形または卵形、三角形、長さ2.5~3㎜。花柱は基部が太くない。柱頭は3岐。花期および果期は3~5月。

104-1 Carex filipes Franch. et Sav. var. filipes タマツリスゲ 玉釣菅

  synonym Carex filipes Franch. et Sav. var. sparsinux (C.B.Clarke ex Franch.) Kük. シナツリスゲ

 日本(本州、四国、九州)、朝鮮、中国(安徽省、福建省、貴州省、湖北省、江蘇省、浙江省)原産。中国名は丝柄薹草 si bing tai cao。標高1500~2200mの丘陵地や低山地の林内の明るくやや湿った場所、草地に生える。
 多年草、緩く叢生し、高さ30~55㎝。根茎は短く又はわずかに長い。茎は叢生し、三稜形、平滑、基部の鞘が強い赤紫色。葉は茎より短く、質が柔らかく、平坦、葉幅は2~3(5)㎜、先が尖る。苞は花序より短く、鞘は長い。小穂は3~4個、離れてつく。頂小穂は雄性、赤褐色、長さ5~17㎜、楕円状披針形~円柱形、花柄は普通長さ3~15㎜、ときに長く30㎜近いものもある。側小穂は雌性、普通3~6個の花を疎につけ、花柄は細く、長さ3~6㎜、下部の離れてつく小穂の花序柄は長く、垂れ下がる。雌鱗片は黄褐色~黄白色、一部褐色、無毛、果胞より短い。果胞は長さ5~6㎜、卵形、無毛、嘴が長い。果実は長さ2.5~3㎜、広倒卵形~卵形、丸みを帯びた3稜形。柱頭は3岐。果期は4~6月。

104-2 Carex filipes Franch. et Sav. var. arakiana (Ohwi) Ohwi ヒロハノオオタマツリスゲ 広葉の大玉釣菅

 本州の中国地方の日本海側~北陸地方に分布。多雪地帯の山地や丘陵地の林内に生える。
 高さ30~70cm。基部の鞘は赤褐色を帯びる。葉は濃緑色、幅6~12mm。頂生の小穂は雄性、長さ1~2㎝、花序柄が長く、赤褐色を帯びる。雌鱗片は淡緑色、ときに赤褐色を帯びる。果胞は長さ5~6mm、脈があり、無毛、嘴はやや長く、口部は斜めの切形。柱頭は3岐。

104-3 Carex filipes Franch. et Sav. var. kuzakaiensis (M.Kikuchi) T.Koyama オクタマツリスゲ 奥玉釣菅

 東北地方、群馬県尾瀬とその周辺、岐阜県奥飛騨地域に分布。湿り気のある落葉広葉樹林内に生える。とくに攪乱を受けた場所によく見られる。
 雄小穂が通常淡緑色、まれに赤色を帯びる。ヒロハノオオタマツリスゲに比べて短く、雄小穂が長さ18㎜以下、花序柄があるが、長さの変異が大きい。果胞は短く嘴を含めて長さ5mm未満、楕円形。

104-4 Carex filipes var. oligostachys Kük. ハネスゲ

  synonym Carex filipes subsp. kuzakaiensis M.Kikuchi
 朝鮮、中国、ロシア原産。日本には自生しない。
 葉の幅が5~8㎜と広く、果胞が長さ6~7㎜と大きい。

104-5 Carex filipes Franch. et Sav. var. tremula (Ohwi) Ohwi ヒメジュズスゲ 姫数珠菅

  synonym Carex arisanensis var. tremula Ohwi
  synonym Carex tremula (Ohwi) Ohwi
 日本(四国、九州)に分布。タマツリスゲよりも全体が小型で、葉は短く、幅も狭い。頂生する雄小穂はきわめて短く長さ3~5㎜、柄も短いため雌小穂に隠れる。果期は4~6月。

105 Carex finitima Boott アリサンスゲ 
 中国(甘粛省、四川省、雲南省)、台湾、ブータン、インド、インドネシア (スマトラ)、ネパール、ニューギニア原産。中国名は亮绿薹草 liang lü tai cao。標高2000~3000mの森林、小川、道端、水辺の草地に生える。

106 Carex fissa Mack. オオアメリカミコシガヤ 
 USA東南部原産。神奈川県などで確認され、日本に帰化している。
 稈は叢生し、高さ60~100㎝、基部で太さ3~8mm、鋭3稜形、ザラつく。葉:鞘の前面は斑点がなく、白色の膜質、透明な縁の近くでわずかに厚くなり、先は凸形、膜質、横しわがある。葉舌は微凹形または丸く、長さ3㎜まで、自由な拡大部は長さ0.2㎜まで。葉身は長さ約60㎝、幅3~6㎜、花茎より短い。花序は穂状花序で、長さ3~7㎝×幅15~25㎜、10~15本の枝があり、下部の枝ははっきりと分かれず、下部の節間は長さ10㎜まで。小穂は1節に2~3個ずつ、10~20個が密につく。小穂は雄雌性花序(androgynous)、上部に少数の雄花、基部に多数の雌花をつける。苞は剛毛(setaceous,)で、通常は下部の苞のみが目立つ。鱗片は長円形、長さ3~3.5㎜、透明、淡褐色、無色になり、中肋が緑色で、上部の鱗片は鋭頭、下部の鱗片は長さ1mmほどの芒がある。果胞は淡褐色、長さ3.2~4㎜×幅2~2.6㎜、広卵形、平凸形、縁は狭い翼があり、背面に明瞭な3~4脈があり、腹面の3脈は不明瞭、基部は円形または心形、先は急に狭くなり嘴になる。嘴は長さ1.3~1.5㎜、果胞の長さの1/3の長さ、口部は2小歯。痩果は褐色、卵形~卵円形、2稜があり、長さ1.5~1.9㎜×幅1.2~1.6㎜、鈍色、基部には太く短い柄があり、頂部に円錐形の柱基が残る。柱頭は2岐。

107 Carex flabellata H.Lév. et Vaniot ヤマテキリスゲ 山手切菅
 日本(北海道、本州の主に日本海側、四国)、朝鮮原産。山地の湿地や水湿のある山の斜面などに生える。テキリスゲに似るが、葉の下面にパピラ(乳頭状突起)があることで区別される。
 根茎は短く、叢生する。基部の鞘は葉身を欠き、赤褐色で糸網を生じる。葉は幅5~12mm、ほぼ平滑、下面にはパピラ(乳頭状突起)があり、粉白色。花茎は高さ40~60㎝、平滑。苞は葉状、無鞘。小穂は3~6個、やや接近してつく。頂小穂は雄性、線形、長さ3~5㎝。側小穂は雌性、ときに雄雌性(androgynous)、円柱形、長さ2~5㎝×幅3~4㎜、下部の側小穂は長い花序柄があって垂れ下がる。雌鱗片は淡緑色、卵状長円形で先に短い芒があり、果胞より短い。果胞は広卵状楕円形、平滑で細脈があり、熟すと著しく膨らみ、痩果をゆるく包み、長さ2~3㎜、嘴は短く、口部は凹形。痩果は楕円形で断面は平凸形(レンズ形)、長さ約1.5㎜。柱頭は2岐。果期は5~6月。

108 Carex flavocuspis Franch. et Sav. ミヤマクロスゲ 深山黒菅
 本州(中部以北)、ロシア原産。高山の草地に生える。
 多年草、高さ10~50㎝。根茎は短く、やや叢生する。茎、葉ともにざらつかない。葉は幅3~5㎜。頂小穂は雄性。側小穂は2~4個つき、雌性。下部の小穂は長柄につく。鱗片は黒褐色の狭卵形で、長さは果胞とほぼ同じ。中肋の先は短い芒となる。果胞は淡黄緑色の扁平な卵形で、嘴は短く、縁は平滑。痩果は倒卵状楕円形。柱頭は3岐。果期は7~8月。

108-1 Carex flavocuspis Franch. et Sav. var. platycarpa (Kük.) Akiyama チャイロタヌキラン 


109 Carex foenea Willd. タマノヤガミスゲ 
  synonym Carex aenea Fernald
 北アメリカ(カナダ、アラスカ、USA)原産。英名はstraw sedge。標高10~1000mの乾燥した場所から湿った場所、酸性の砂地、砂利、荒れた開けた場所、草地、開けた森林に生える。日本に帰化している。
 密に叢生する。稈は高さ20~120㎝。 葉: 鞘は内側が白色透明または緑色と白色のまだらで、パピラがあり、頂部はU字形で襟を越えて短く伸びる。上部の葉舌は長さ2~3㎜。稔性の稈ごとに葉身が3~6枚つき、緑色、耳は無く、花茎より短く、長さ8~30㎝×幅2~4㎜、しなやか。花序は開き、通常は間隔が広く小穂がつき、柔軟で、褐色または緑褐色、長さ1.5~8㎝×幅7~15㎜。下部の節間は長さ5~25㎜。2番目の節間は長さ4~12㎜。下部の苞は鱗片状、ときに長さ1㎝までの剛毛状。小穂は3~7(~11)個、通常は遠く離れ、長円形~楕円形(卵形)、長さ(5)7~25㎜×幅(3)5~7㎜、基部はこん棒形~漸尖形、先は通常円形、雌雄性花序(gynecandrous)、上部に雌花、下部に少数の雄花がつく。雌鱗片は通常赤褐色、または日陰で緑色または金色、緑色または褐色の中央の縞が3本あり、卵形、長さ4~5㎜、果胞と同長、ほぼ果胞を覆い、先は鋭形~尖鋭形。果胞は直立して斜上し、緑色または褐色、外側に4~9本の目立つ脈があるかまたは脈がないか、または外側に目立つ不均等な4~8本の脈があり、卵形~平凸形または凹凸形(嘴を含め全体では披針形)、縁は平らで、幅0.2~0.4㎜の翼を含んで、長さ3.3~5㎜×幅(1.5~)1.7~2.5㎜ 、厚さ0.6~0.8㎜、少なくとも上部の体は平滑または縁毛のある小鋸歯がある。嘴は白色または褐色、先は縁が白色、平ら、±縁毛のある2小鋸歯があり、外側の縫合線は不明瞭または白色の縁があり、嘴の先端から痩果までの距離は(1.4~)1.7~2.5㎜。痩果は成熟すると暗褐色、卵状円形、長さ1.3~2.1㎜×幅1.2~1.7㎜、厚さ0.5~0.6㎜、長さは幅の1~1.4(~1.5)倍。 2n=82, 84。果期は晩春から初夏。

110 Carex foliosissima F.Schmidt オクノカンスゲ 奥の寒菅
 日本(北海道、本州、四国の愛媛県、九州北部) 、千島列島、サハリン原産。丘陵地や山地の林内に生える。
 根茎はやや伸長し、まばらに叢生し、匐覆枝を伸ばす。新葉の基部の鞘は長く、黒紫色、光沢がある。葉は常緑、カンスゲほど硬くなく、幅5~20㎜、上面の2脈が強く、断面がM字形になる。苞は鞘があり、葉身は針状。花茎は高さ15~40㎝。小穂は4~5個つく。頂生の小穂は雄性、長円形~ややぼ棍棒形、長さ1.5~4cm、花序柄がある。側性の小穂は雌性、2~4個つき、円柱形、長さ2~4㎝×幅4~5㎜、花序柄がある。雄鱗片は長卵形、長さ1~2㎝、濃褐色で半透明、先には短い芒があり突き出る。雌鱗片は長卵形、長さ4~6㎜、果胞よりも明瞭に長く、縁は半透明で中肋付近は赤褐色~紫褐色、先は尖鋭形~鋭形で長い芒がある。果胞は淡緑色、広卵形、長さ2.5~3.5mm、多数の脈があり、平滑、先は急に狭まり長い嘴になり、反り返り、縁は平滑、口部には鋭い2歯がある。痩果は果胞にきつく包まれ、広卵形、鈍い3稜形、長さ1.5~2mm、頂部の付属体は非常に小さい。柱頭は3岐。果期は5~6月。
110-1 Carex foliosissima F.Schmidt var. foliosissima オクノカンスゲ 
110-2 Carex foliosissima F.Schmidt var. pallidivaginata J.Oda et Nagam. ウスイロオクノカンスゲ 薄色奥の寒菅
 北海道、本州の日本海側の多雪地帯の山形県~富山県に分布。ブナ帯からシラビソ帯に生える。
 葉の基部の鞘の色が淡色で、淡緑色~淡褐色。葉は質がやや薄い。果胞の脈が不明瞭。

111 Carex forficula Franch. et Sav. タニガワスゲ 谷川菅

  synonym Carex forficula Franch. et Sav. var. scabrida Kük. オオタニガワスゲ

 北海道(西南部)、本州、四国、九州、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は溪水薹草 xi shui tai cao。河畔、水辺に生える。
 多年草、高さ30~70㎝。根茎は短く、匐枝を出さず、叢生して、大株になる。基部の鞘は葉身がなく、濃褐色、糸網を生じる。葉は幅が2~4㎜。葉表は濃緑色で葉裏が粉白色。苞は無鞘。頂小穂は長さ2~4㎝、雄性。雌性の側小穂は長さ2~5㎝で直立する。果胞は長さ3.5~4㎜、扁平、嘴は長く、縁に小歯があり、口部は鋭い2歯。鱗片は果胞より短く、側面が黒紫色で、中肋は緑色。果実は長さ約2㎜、倒卵形、断面はレンズ形。柱頭は2岐。2n=72,78。果期は4~6月。
【Flora of Chinaの解説】果期がやや異なる
 根茎は短い。稈は密に叢生し、高さ40~90㎝、三角状、鱗状で、基部は黄褐色のわずかに光沢のある葉身のない鞘で覆われ、網状の繊維に崩壊する。 葉は稈と同じかそれよりわずかに長く、葉は緑色、線形、幅2.5~4㎜、平らで、縁は外巻きする。苞葉(総苞片)は葉状で花序より短く、鞘はない。小穂は3~5個つく。頂生の小穂は雄性、線形、長さ3~4㎝、花序柄を持つ。側小穂は雌性、狭い円筒形、長さ1.5~5cm、密に多数の花がつき、ときに基部にわずかに緩く花がつき、下部の小穂には短い花序柄があり、その他は無柄である。雌苞頴(鱗片)は暗鉄さび色または紫褐色、披針形または長円形、長さ約3㎜、緑色の3脈の肋がザラつく微突起を作る。果苞は黄緑色、苞頴より長く、倒卵形または卵形、扁平な両凸形、長さ3~4㎜、脈はほとんどなく、ときに細かいわずかな脈があり、基部は切形で、上縁はザラつき、頂部の嘴は開口部が深く2裂する。小堅果(痩果)はきつく包まれ、卵形~広倒卵形、ほぼ両凸形、長さ2~2.5㎜、基部は広い切形。花柱は基部が太くない。柱頭は2岐。花期と果期は7~8月。標高700~900mの森、川辺、湿った場所に生える。安徽省、河北省、吉林省、遼寧省、陝西省[日本、韓国、ロシア(極東)]。

112 Carex foraminata C.B.Clarke カレックス・フォルアミナタ
 朝鮮、中国(安徽省、福建省、貴州省、江西省、浙江省)原産。中国名は穿孔薹草 chuan kong tai cao。標高300~800mの山の斜面の林縁、谷の岩近くの日陰の場所、溝の側面に生える。
 根茎は丈夫で、古い鱗片の繊維状の残骸で覆われる。稈は高さ40~70㎝で、かなり丈夫で、三角形、平滑、基部は暗褐色の葉身のない鞘に囲まれ、鞘は通常繊維に崩壊する。葉は稈より長く、葉身は幅4~7㎜、平らで、革質、平滑、縁はザラつく。下部の苞葉は短い葉状で、上部の苞葉は剛毛状、抱く小穂よりも短く、鞘は長さ2~5㎝。小穂は4~6個。頂生の小穂は雄性、円筒形、長さ50~80㎜×幅3~5㎜、花序柄は長さ4~6㎝。 側小穂は雌性、間隔をあけてつき、円筒形、長さ50~80㎜×幅3~5㎜、密に花がつき、頂部で±うなずき、花序柄は長さ2~4cm、わずかに突き出るが、上部は苞葉の鞘に包まれる。雌の鱗片は両面の上側が淡褐色、長円形、長さ3~3.5㎜、肋は淡緑色で、中肋が明瞭で、先は鋭形。果胞は鱗片より短く、倒卵形、長さ2~2.5㎜(柄を含む)、明瞭な多数の脈があり、微軟毛があり、基部には柄があり、先には短い嘴があり、嘴はわずかに反曲し、口部は凹形。小堅果はわら色、きつく包まれ、短い長円形、長さ1.5~2㎜、中央で角(かど)が狭くなり、基部は短く曲がった柄があり、先は急に狭まり短い円筒形の嘴になる。花柱の基部はわずかに太くなり、ほとんどの部分は宿存しない。柱頭は3岐。花期と果期は4~5月。

113 Carex formosensis H.Lév. et Vaniot タイワンスゲ 台湾菅

  synonym Carex ligata subsp. formosensis (H.Lév. & Vaniot) T.Koyama

  synonym Carex ligata var. formosensis (H.Lév. & Vaniot) Kük
  synonym Carex kelungensis Hayata
  synonym Carex shimotsukensis Honda
 日本(本州、四国、九州)、朝鮮、中国東南部、台湾、フィリピン原産。別名はオオミヤマカンスゲ、キイルンスゲ。やや乾いた明るい林内や林縁に生える。
 高さ30~60㎝、根茎は短くて匍匐枝はなく、密に叢生し大株となる。葉は線形、幅2~6㎜、硬く、ややザラつく。基部の鞘は褐色~暗褐色で、やや繊維状に崩壊する。花茎は平滑。頂小穂は雄性、線形、淡緑色、長さ1~2㎝×幅1~1.5㎜。雄鱗片は淡褐色で、その先は鈍形~円形、縁が合着して僧房状になる。側小穂は3~7個つき、雌性、直立し、上部では接近してつき、下部ではやや離れてつき、狭い円柱形、長さ1~41㎝×幅2~3㎜、花序柄は短く苞葉の鞘から出ない。苞葉は鞘があり、葉身は発達し、小穂よりやや長い。雄鱗片は淡褐色、先は円形~鈍形。雌鱗片は緑白色、先は鈍形で短い芒があり、果胞よりやや短く、長さ2~3㎜。果胞は直立し、長卵形~卵状紡錘形、長さ3~3.5㎜、中間で浅くヒョウタンのようにくびれ、脈が多く、まばらに細毛があり、嘴の口部は凹形。痩果は長さ2~2.5㎜、鈍い3稜形、稜の上の中央部が深く凹み、頂部は長さ0.3~0.5㎜×直径約0.5㎜の円柱形になる。柱頭は3岐。花期は4~5月。

114 Carex frankii Kunth エノコロスゲ 狗尾菅
  synonym Carex stenolepis Torrey
 カナダ、USA原産。標高は0~1500mの湿った牧草地や森、湖や池の泥だらけの縁、道路脇の溝に生える。日本に帰化している。
 叢生し、短い根茎をもつ。稈は長さ18~80㎝。 葉は幅2.5~11.5mm、斑点が少ない。小穂は3~7(~9)、直立。 側穂には雌しべがあり、基部に少数の雄花があり、まれに頂部にも花があり、狭い楕円形、長さ12~50㎜×幅7~13㎜。頂生の小穂は通常雄性、ときに雌雄性(gynecandrous)~雌性、または不稔、長さ6~45㎜×幅2~6㎜。雌鱗片は狭く、体は不明瞭で、長さ3.6~9(~11)㎜×幅0.1~0.4㎜、先には果胞を超える長いザラつく芒がある。雄鱗片は緩く~不規則に覆瓦状になり、先は広がり、線形、長さ4.3~15㎜×幅0.3~0.8㎜、先端には長いザラつく芒がある。果胞は水平につき、長さ3.5~6㎜×幅1.4~2.6㎜、微細な膿疱状(pustulate)、嘴は 長さ1.3~2.2㎜、平滑。 痩果は倒卵形、側面は強く凹み、長さ1.4~2.1㎜×幅1~1.4㎜、長さは幅の2倍未満。花柱は脱落性、真っ直ぐまたは曲がりくねる。果期は夏。

115 Carex fuliginosa Schkuhr ヒメタヌキラン 姫狸蘭
  synonym Carex misandra R.Br.
 朝鮮、ロシア、ヨーロッパ、北アメリカ(カナダ、アラスカ、USA)、グリーンランド原産。英名はshort-leaved sedge, carex fuligineux。標高50~2000mのツンドラ、ガレ場、スゲ草原に生える。標高50~2000mのツンドラ、ガレ場、スゲ草原に生える。
 密に叢生する。根茎は不明瞭。稈は高さ30㎝まで。葉は葉身が幅1.5~3.5㎜。花序は1~12㎝、下部の節間は5~50㎜。下部の小穂は花序柄が長さ5cmまで。下部の苞は葉身が長さ0~15(~40)㎜、鞘は円筒形、長さ(3~)4~22㎜、口部は幅0.5~1.2㎜。小穂は(2~)3~4(~5)個。側小穂は雌性、下部では傾きまたは垂れ下がり、長さ6~21㎜×幅3~6㎜。頂生の小穂は雌雄性(gynecandrous)、まれに雄性、垂れ下がり、長さ8~10㎜×幅3.5~5㎜。 雌鱗片は黒色または褐色、淡色の弱い中脈と非常に狭い薄膜質の縁を持ち、卵形、長さ2.8~4.2㎜×幅1.4~2.4㎜、先は鈍形~尖鋭形。雄鱗片は褐色~黒色で、淡色の中脈と薄膜質の縁があり、長円状倒卵形~倒卵形、長さ3~5㎜×幅1.4~1.8㎜。葯は長さ1.2~2.7㎜。果胞は斜上、下部では淡褐色、上部は黒色または暗褐色、脈は不明瞭、披針形、長さ3.3~5.5㎜×幅0.9~1.3(~1.4)㎜、縁は縁毛があり、無毛、嘴は不明瞭。痩果は倒卵形、長さ1.5~2㎜×幅0.9~1㎜。果期は夏。

116 Carex fulta Franch. ニッコウハリスゲ 日光針菅
 日本固有種。北海道、本州に分布。ブナ帯の向陽~半日陰の湿地、流水の縁などに生える。
 根茎は短く叢生する。稈は基部の鞘は淡褐色。葉は花茎より短く、幅2~3mm。花茎は針金状、高さ20~40cm、鋭角の3稜形、柔らかく、上部は著しくザラつく。花序は1小穂。小穂は1個だけを頂生し、雄雌性花序(androgynous)、長さ3~7mm。雄花部はごく短く、雄鱗片は先が鈍形。雌花部は短い円柱形、雌鱗片は先が鈍形、淡緑色、下部の鱗片1(~2)個は先に短い芒がある。果胞は完熟すると開出し、雌鱗片よりやや長く、広卵形、長さ2~2.5mm×幅1.5mm、稜間の脈は明瞭、無毛、平滑、嘴は短く、口部は切形。痩果は果胞にゆるく包まれ、楕円形~卵形、3稜形、長さ約1.5mm。柱頭は3岐。2n=56。果期は5~7月。

117 Carex fulvorubescens Hayata チャイロスゲ 茶色菅
 台湾原産。中国名は茶色薹草 cha se tai cao。
117-1 Carex fulvorubescens subsp. fulvorubescens
 山地の砂地または岩場の斜面に生える。

117-2 Carex fulvorubescens subsp. longistipes (Hayata) T.Koyama タイワンカンスゲ 台湾寒菅

  synonym Carex longistipes Hayata
 中国名は长梗扁果薹草 chang geng bian guo tai cao。山地の植生の少ない岩や砂の斜面に生える。

118 Carex glareosa Schkuhr ex Wahlenb. カレックス・グラレオサ
 ユーラシア、北アメリカ原産。英名は lesser saltmarsh sedge , Glareosa sedge。
 密に叢生し、小さな塊になる。根茎は短い。稈はしばしば弓状になり、弱く、高さ10~40(~60)㎝。葉: 鞘は外側が淡褐色~褐色、内側の帯は薄く透明、頂部は凹形(concave)。葉舌は長さが幅と同じで2~8㎜。 葉は通常灰緑色で、平ら~溝があり、長さ5~15㎝×幅1~2 mm、通常は稈より短い。 花序は直立し、長さ1~2cm×幅5~12mm。下部の苞葉は通常鱗片状で穂より短い。小穂は2~4個、密に接近し、個々に離れ。下部の側小穂は雌性、5~10(~15)個の果胞をもち、長円状線形。頂生の小穂は雌雄性花序(gynecandrous)、10(~20)個の果胞をもち、棍棒形。雌鱗片は淡色から赤褐色で、中央は黄褐色、縁は白色透明で、長円状卵形、果胞にほぼ等しく、先は鈍形。果胞は斜上し、薄褐色~淡褐色、しばしば熟すと灰褐色になり、わずかにまたは不明瞭な数本の脈があり、広楕円状倒卵形~披針形、長さ1.5~3.5×幅1~1.5 mm、中央付近で最も幅が広く、ほぼ革質、嘴は短く、全縁。 痩果は褐色~赤褐色、楕円形、長さ約1.5㎜×幅1~1.25㎜、鈍く~わずかに光沢がある。2n=66。3亜種がある。
118-1 Carex glareosa subsp. glareosa ベットブスゲ 
  synonym Carex amphigena (Fernald) Mackenzie
  synonym Carex cryptantha Holm
  synonym Carex glareosa var. amphigena Fernald
  synonym Carex glareosa subsp. chishimana (Ohwi) Vorosch.
  synonym Carex chishimana Ohwi ベットブスゲ 
 ヨーロッパ北部、ロシア(極北部)、アラスカ~カナダに分布。
葉は幅1~2㎜。雌鱗片は長さ2~3㎜。

119 Carex genkaiensis Ohwi ゲンカイモエギスゲ 玄海萌黄菅
  synonym Carex formosensis var. vigens (Kük.) Ohwi
  synonym Carex mitrata var. vigens Kük.
 日本(本州の大阪府、九州の福岡県・佐賀県・長崎県、小豆島)、朝鮮、中国原産。中国名は玄界萌黄薹草。山地の疎林内,林縁に稀に生える。
 多年草。根茎は短く、木質。茎は束生し、三角形、高さ25~35cm、平滑、基部の鞘は灰褐色、古くなると繊維状に裂ける。葉は茎より短く、幅2~3mm、平らで上部の縁はザラつく。下部の苞は葉状、上部の苞は短い葉状または剛毛状、鞘があり、鞘の長さは5~25㎜、最下の苞の鞘が最も長く、上に行くほど短くなる。小穂は4~5個。頂生の小穂は雄性、線状円筒形、長さ5~15㎜×直径1~2mm、柄は非常に短く、その下の雌小穂に近い。側生する小穂は雌性、円筒形、長さ1~2㎝×直径2~3.5㎜、花はやや密につき、苞葉の中に小穂が包まれる。雄鱗片は薄褐色、狭い倒卵状楕円形、長さ約5㎜、先端は円形~鈍形、外面(背面)に褐色に1脈がある。雌鱗片は淡黄褐色、卵形~広卵形、長さは2~2.5㎜、先急な尖鋭形または短い芒があり、外面に緑色の脈が3本ある。果胞は雌鱗片より長く、卵球形、鈍3稜形、長さ3~3.5㎜、細い脈が多数あり、まばらに短毛で覆われ、基部は漸尖し、上部は狭まり、短い嘴になり、口部は微凹形。痩果は果苞にびっしりと詰まっており、菱状卵球形、3稜形、熟すと栗色、長さ約2mm、基部に柄があり、上部に長さ約0.2mmの短円柱形(環状で円柱状ではない)の嘴があり、3稜は中間でくびれ、3個の面の上下が凹み、柱基はわずかに太い。柱頭は3岐。

120 Carex gentilis Franch. カレックス・ゲンティリス
 中国(重慶市、貴州省、江西省、陝西省、四川省、西蔵、雲南省)、台湾原産。中国名は亲族薹草 qin zu tai cao。標高1300~2200mの森林、溝の脇、川辺、山の斜面、岩の隙間、草地に生える。
120-1 Carex gentilis var. gentilis
 中国(江西省、四川省、雲南省)に分布。標高約1500mの森林、溝の縁、川辺に生える。

120-2 Carex gentilis Franch. var. nakaharae (Hayata) T.Koyama ナカハラスゲ 中原菅

  synonym Carex nakaharae Hayata
 台湾に分布。中国名は短喙亲族薹草 duan hui qin zu tai cao。標高約2200mの山の斜面に生える。

121 Carex gibba Wahlenb. マスクサ 桝草
 本州、四国、九州、朝鮮、中国原産。中国名は穹隆薹草 qiong long tai cao。別名はマスクサスゲ。道端や林縁などで普通に見られるスゲの1種。
 多年草。根茎は短く、叢生する。茎は直立し、断面は稜の鈍い三角形。葉は幅2~5㎜、やや柔らかく、カーブする。茎の上部に長さ0.5~1㎝の無柄の小穂を数段に離れてつける。小穂の基部には葉よりやや細い苞をつける。苞は上部では短く、下部では花序より著しく長い。小穂は雌雄性、多数の雌花と基部に少数の雄花をつける。果胞は長さ3~3.5㎜、扁平な広卵形で、縁に幅の広い翼がつき、翼の縁には鋸歯がある。果胞には短い嘴があり、口部は2歯。雌鱗片は果胞より短い。果実は長さ約2.2㎜、幅約1.5㎜の広楕円形~円形、柱基(花柱の基部)は小さい盤状になる。柱頭は3岐。果期は4~6月。
【Flora of Chinaの解説】
 根茎は短い。稈は叢生し、高さ20~60㎝、直立し、鈍角の三角形、平滑で、基部は繊維状に分解する褐色の鞘で覆われる。葉は稈より長く、葉は線形、幅3~4㎜、平らでやや柔らかい。苞は葉状で花序より長い。穂状の花序は上部はでかなり密で、下部では途切れ、最も低い穂状花序で分岐することもある(長さ3~8㎝)。小穂は雌雄性(gynaecandrous)、卵形または長円形、長さ5~12㎜×幅3~5㎜、密に花がつく。雌鱗片は帯白色、ほぼ心形、緑色の3本の脈のある肋が芒状に突き出し、芒は長さ0.7~1㎜、先はほぼ楔形。果胞は帯緑色、苞頴より長く、ほぼ円形または広卵形、平凸形、長さ3.2~3.5㎜×幅約2㎜、膜質、平滑、脈がなく、基部は狭まり、楔形、縁に翼があり、上部はザラつき、先は急に狭まり短い嘴となり、開口部には2歯がある 小堅果は帯緑色、きつく包まれ、広卵形で、両凸形、約・長さ2.2㎜×幅1.5㎜、先に円盤形の付属体(柱基)を備える。柱頭は3岐。花期および果期は4~8月。標高200~1300mの谷沿い、草原の斜面、森林などの湿った場所に生える。安徽省、福建省、甘粛省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、遼寧省、陝西省、山西省、四川省、浙江省[日本、韓国]。

122 Carex gifuensis Franch. クロヒナスゲ 黒雛菅

  synonym Carex gifuensis Franch. var. koreana Nakai アカヒナスゲ 赤雛菅

 本州(茨城県、栃木県、群馬県、岐阜県、三重県)、四国(愛媛県)、九州(鹿児島県)、朝鮮原産。山地のやや乾燥した林内に生える。
 小型の多年草、高さ10~30㎝。やや叢生する。根茎は分枝して広がり、群生する。葉は果時に花茎より高くなり、葉は細長く、長さ20~30㎝×幅1.5~2.5㎜、短い毛があり、ザラつく。葉舌は薄い膜質、突出し、長さ2~3㎜、先は2裂する。葉の基部の鞘は赤褐色、長さ1~3cm。花茎は高さ10~30cm、ザラつく。小穂は2~3個ですべて花茎の先端に集まってつく。頂小穂は雄性で線柱形をしており長さ1~2cm。雄鱗片は赤褐色で先端は丸くなっている。側小穂は雌性で短円柱形、長さは0.5~1cm、柄はない。小穂の下の苞は針状で、鞘はほとんどない。雌鱗片は果胞より短く、黒褐色で先端は小さく突き出し、先端近くの縁には小さな歯牙状の突起がある。果胞は楕円形、長さ3.5~4mm×幅0.9~1.1mmで、稜の間には太い脈が走り、表面には短毛が生えており、上部は次第に狭まって短い嘴状に突き出し、その先にある口部の縁は平滑、緑色だが先端の口部の周囲のみ黒褐色を帯びる。痩果は果胞にほぼ密着して包まれ、長倒卵形で長さ2mm。柱頭は3つに分かれる。花期は4~5月。

123 Carex glabrescens (Kük.) Ohwi スナジスゲ 砂地菅
 日本(岩手県、宮城県、山形県、栃木県、群馬県、茨城県、長野県、愛知県)、朝鮮、ロシア原産。愛知県は絶滅危惧ⅠA類に指定されているが、最近は確認されていない。ビロードスゲに似るが雌小穂が密に接してつき、果苞の嘴が急に細くならず、次第に狭まる。河川敷に生える。
 多年草。長い匍匐枝を出し、株を作る。茎は高さ30~50㎝、3稜があり、上部はザラつく。基部の鞘は赤褐色を帯び、糸網を生じる。葉は細い線形、幅3~4㎜。苞は長い葉身があり、鞘は短い。小穂は3~6個つく。先の1~3(4)個の小穂は雄性、線形で長さ1.5~3.5cm、密着してつき、雄鱗片は先が鋭形~鈍形、淡褐色。雄小穂から離れて雌性の側小穂が2~3(5)個つき、広線形~狭円柱形、長さ1.5~6㎝、無柄~短柄、最下の小穂は離れてつき、短い柄がある。雌鱗片は濃褐色~黒褐色、中肋は緑色、太く、芒がある。果胞は卵形、雌鱗片よりやや長く、緑色、長さ4~5㎜、表面には脈があり、密~まばらに毛があり、先は次第に狭まり、長い嘴になり、口部に深い2歯がある。柱頭は3岐。痩果は長さ約2㎜、倒卵形、鈍3稜形。果期は4月下旬~6月。

124 Carex glareosa Wahlenb. ススヤスゲ 
 ヨーロッパ北部~ロシア(極東)、北アメリカ、グリーンランド、アイスランド原産。英名はlesser saltmarsh sedge . Glareosa Sedge。
124-1 Carex glareosa subsp. glareosa
  synonym Carex ushishirensis Ohwi ウシシルスゲ 
 ヨーロッパ北部~ロシア(極東)、北アメリカ、グリーンランド、アイスランド原産。

125 Carex glauciformis Meinsh. コメツブスゲ 米粒菅
 朝鮮、中国( 黒竜江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル)、ロシア原産。中国名は米柱薹草 mi zhu tai cao。山の斜面、川沿い、渓谷沿いなどの濡れた場所に生える。

126 Carex globularis L. トナカイスゲ 
 日本(北海道)、朝鮮、中国(黒竜江省、吉林省、内モンゴル)、モンゴル、ロシア、ヨーロッパ北部原産。中国名は玉簪薹草 yu zan tai cao。山の斜面の草地、森林の湿った場所、沼地に生える。茎や葉は、羊、牛、馬の良い牧草となる。
 根茎は斜めに斜上し、匍匐性。 匍匐茎(ストロン)は細く、赤褐色の葉鞘で覆われる。稈は緩く叢生し、高さ20~60㎝、細く、3稜形、上部はわずかにザラつき、基部は赤褐色で葉身のない鞘に覆われ、膜質部分の鞘は通常、網状繊維に崩壊する。葉は稈と同じ長さかそれよりわずかに短く、葉身は幅1~2㎜、やや柔らかく、無毛、縁は外巻きし、上部の縁はザラつく。鞘はかなり長く、上面は小剛毛がある。下部の苞は葉状、線形、花序より短く、ほとんど鞘がない。上部の苞は鱗片状、鞘が無い。小穂は3~4個。頂生の雄小穂と最上部の雌小穂は近接し、残りの小穂は離れる。頂生小穂は雄性、線形、長さ1~2㎝、無柄。側小穂は雌性、長円形~卵形またはほぼ球形、長さ0.5~1.2㎝、花は少数。 最下部の小穂は非常に短い花序柄があり、上部の小穂は無柄。雌鱗片は中央部が黄褐色、卵形、長さ約2㎜、膜質、3脈があり、ときに2本の側脈が不明瞭、縁は黄白色、先は鈍形、無突起。果胞は緑褐色、斜めに開出し、鱗片より長く、広倒卵形または広楕円形、三角形、長さ2.5~3㎜、膜質、密に小剛毛があり、多数の脈があり、基部は広楔形で、先は急に狭まり短い嘴になり、口部は凹形。小堅果は暗褐色、きつく包まれ、倒卵形または広倒卵形、三角形、長さ1.8~2㎜、先は微突形。花柱の基部は太くない。柱頭は3岐。花期と果期は6~8月。

127 Carex gmelinii Hook. et Arn. ネムロスゲ 根室菅
 日本(北海道、本州の青森県・岩手県)、朝鮮、ロシア、北アメリカ(カナダ、アラスカ)原産。標高0~10mの海岸の崖、海辺の牧草地、砂丘、湿地、砂利に生える。
 密に叢生する。稈は20~60cm、上部はザラつく。葉は幅2~4㎜。花序:下部の苞は花序と同長またはそれを超える。小穂は離れ、短長円形または細長く、長さ10~30㎜×幅5~10㎜。下部の小穂はときに広がり、長く垂れ下がる。上部の小穂は直立し、短く垂れ下がる。側小穂は雌性、2~4個が連続してつき、長さは同長さ。頂生小穂は雌雄性花序(gynecandrous) 。雌鱗片は縁まで暗褐色または黒色で、披針形、果胞よりわずかに短く、または同長、または果胞を超えて、果胞の幅と同じであり、中脈は色が体より明るく、目立ち、隆起し、目立ち、微突形。果胞は斜上し、褐色、脈があり、楕円形、長さ3.5~5㎜×幅2~3㎜、先は次第にまたは急に狭まり嘴になり、嘴は長さ0.2~0.3㎜、切形または不明瞭な2歯があり、平滑。痩果は果胞の体をほぼ満たす。2n=約62。果期は6~9月。

128 Carex gotoi Ohwi コウライヤワラスゲ 
  synonym Carex sukaczovii V. I. Kreczetowicz.
 朝鮮、中国(甘粛省、河北省、黒竜江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル自治区、陝西省)、モンゴル、ロシア(極東)原産。中国名は叉齿薹草 cha chi tai cao。標高1000~1300mの川辺、草地などの湿った場所に生える。

129 Carex grallatoria Maxim. ヒナスゲ 雛菅 広義
 日本、台湾原産。

129-1 Carex grallatoria Maxim. var. grallatoria ヒナスゲ 雛菅

 日本(本州、四国、九州、対馬)に分布。沿岸の明るい森林の林床や岩上に生える。
 多年草、小形高さ5~15(20)cm。根茎は繊細で短く分枝し、叢生する。基部の鞘は灰褐色または赤紫色で、わずかに糸網になる。稈は糸状3稜形で、上部はザラつき、下部は平滑。葉は糸状で、上面に刺毛が散生する。雌雄異株だが、外見的にはあまり違いはなく、小穂の姿も果胞が膨らむまではよく似ている。小穂は稈頂に単生する。雄小穂は、線形、長さ1~1.5㎝、赤褐色。雌小穂は広線形、長さ0.5~1㎝、まばらに3~6個の雌花をつける。鱗片は雄鱗片、雌鱗片とも先が尖らず、半透明で中央が赤褐色を帯びる。果胞は鱗片と同長かまたはやや短く、長さ2~2.5㎜、楕円形、3稜形、淡黄緑色、まばらに短毛があり、両側に2肋脈があり、先は嘴になり外側に反曲し、口部は切形。柱頭は3岐。花期は4~6月。

129-2 Carex grallatoria Maxim. var. heteroclita (Franch.) Kük. ex Matsum. サナギスゲ 蛹菅

 日本(本州の関東地方~近畿地方、四国、九州)、台湾原産。中国名は异型菱果薹 yi xing ling guo tai。草原、林縁に生える。
 根茎は細く、太さ約1㎜、赤褐色の鱗片で覆われる。稈は高さ5~20 cmの糸状、上部はザラつく。葉は多数 、根生し、花後に長くなり、稈よりも長く、葉身は幅2~3㎜、平ら、柔らかい。 鞘は血紅紫色(sanguineous-purple)またはくすんだ褐色(dusky-brown)、網状の繊維に裂ける。雌雄同株。花序は1個の小穂、頂生し、雄雌性花序(androgynous)。雄性部は線形~線状長円形、幅1~1.5 mm、数個の花がつく。雌性部は長さ1~2㎝、3~8個の花を疎につける。雌鱗片は側部が淡色、上半分または1/3で血紅褐色(sanguineous brown)に染まり、長円形~倒卵状長円形、長さ約3.5㎜、膜質、帯緑色の肋は1本、または不明瞭な3脈があり、基部は小軸(rachilla)を抱き、先は鈍形~ほぼ切形。果胞は帯淡緑色~帯淡黄色、鱗片よりもわずかに長く、直立開出~開出し、倒卵状長円形~倒卵状楕円形、三角形、長さ3.5~4㎜、薄い草質~膜質、上半分はまばらに粗毛があり、2肋を除いて脈がなく、基部は次第に先細りになり、短い柄になり、先は急に狭まり、短い反曲する円錐形の嘴になり、口部は歯が無い。小堅果はきつく包まれ、倒卵状長円形、三角形、長さ2~2.5㎜。柱頭は3岐。2n=22。

130 Carex gravida L.H.Bailey サヤシロスゲ 鞘白菅
 北アメリカ(カナダ、USA)原産。英名はheavy sedge。標高100~1400mの草原、溝、湿地、開けた森林、通常は石灰質土壌に生える。川崎市や東京都で確認されている。
 目立った根茎がない。稈は高さ(20~)30~100㎝、基部の幅2.5~8㎜、上部の幅0.7~1.6㎜、鋭3稜形で、稜はザラつく。葉:鞘は通常緩く、下部に緑色と白色の縞模様があり、白色斑点はなく、背面に目立つ横脈があり、前面(腹面)は透明、ときに横しわができ、赤い斑点があり、質が薄く、白色または透明で口部が壊れやすい。葉舌は長さ2~7 mm、長さは幅より短いかまたは長い。葉は稈(花茎)より短く、最も広い葉身は幅(3~)4~8㎜。花序は5~15個の小穂を1節に1個ずつ密集してつけ、長さ1~5cm×幅8~15㎜、たまに複合し、その後やや大きくなる。苞は発達しないが、下部の苞は長さは3cmまで。小穂は上部に少数の雄花、下部に多数の雌花をつける。5~15個の果胞をもち、果胞は斜上~開出する。下部の節間は下部の小穂の長さの1.5倍未満である。雌鱗片は透明または褐色、中央に1~3本の緑色の脈があり、卵形、長さ2.6~4.4㎜×幅1.3~2.4㎜、果胞より短い~わずかに長く、先は尖鋭形~短い芒がある。葯は長さ1.5~3㎜。果胞は淡緑色~淡褐色、脈はなく、または外側に3~7(~12)脈あり、まれに内側に脈があり、卵形~広卵形、平凸レンズ形、長さ3.5~5.5㎜×幅 2~3㎜、体はやや海綿状で、基部は厚くなり、上部の縁には小鋸歯がある。嘴は長さ0.6~1.6mm(果体の1/3~1/4)、縁はザラつき、先の歯は長さ0.3~1㎜。痩果は円形~楕円形(卵円形)、2稜があり長さ1.8~2.1㎜×幅1.6~2㎜、基部に短い柄があり、先端に円錐状の柱基が残る。花柱は長さ1~1.5㎜、基部は円錐状に太くなる。柱頭は2岐。果期は晩春。

131 Carex gynocrates Wormskjöld ex Drejer カンチスゲ 寒地菅

  synonym Carex dioica Linneaus subsp. gynocrates (Wormskjöld ex Drejer) Hultén

 日本(北海道の根室・釧路、本州の岩手県)、千島、サハリン、シベリア、ロシア中部、北アメリカ(アラスカ、カナダ、USA)、グリーンランド原産。標高0~3100mの湿った泥炭質の地面、通常は針葉樹の湿地や針葉樹の広葉樹林の開口部、まれに貧弱な沼地、沼沢地(flarks)、ハンノキの茂み、また亜高山の牧草地、ツンドラ、流出砂利や浸出地域に生える。通常は石灰質の基質上に生える。KewscienceではCarex nardina (Hornem.) Fr.のsynonymとしている。
 根茎は水平に伸び、糸状、直径0.3~0.8㎜。稈は単独または2~3本一緒に発生し、±円柱形、ほとんど溝がなく、長さ2~30㎝。側不稔シュートは、多くの場合、しばしば平伏または湾曲した基部を持つ。葉身は糸状、長さ2~15cm×幅0.3~0.7㎜。花序は雄雌性(14%)、完全に雄性(12%)、または完全に雌性(74%)。雄小穂は長さ8~16㎜。 雌小穂は密に±4~15(~18)個の花がつき、横に広い長楕円形~卵状長円形または長円形、長さ5~14㎜×幅4~8㎜。雌鱗片は均一な明るい褐色~暗褐色、または淡緑色または緑色の中脈を持ち、縁は薄膜質、狭いものから広いものまである。果胞は散開するか、わずかに後屈し、黄色、オリーブ色、または熟すと栗色、不明瞭~明瞭な17~20本の条線があり(縁の肋はほとんど目立たない)、長円状卵形、両凸形、長さ2.9~3.4㎜×幅1.2~1.7㎜、嘴は長さ0.5㎜、縁は無毛またはまばらにざらつく。痩果は長さ1.5~1.7㎜×幅1~1.2㎜。2n=46, 48。果期は夏(亜寒帯のケベック州とグリーンランドでは 6~8、9月)。
 北アメリカと東アジア(シベリア)の個体群の分類学的ランクについては意見が分かれており、これらの個体群は染色体数が2n=48, 50, 70 であり、おそらく 亜種 Carex dioica subsp. gynocrates (E. Hultén 1962)として分類するのが最適であると考えらる。後者はユーラシア亜種との区別がほとんどなく、subsp. dioica は染色体数が2n=52, 60 で、雌雄異株があまり強くない傾向があり、雌鱗片がより淡く、果胞の腹側がより凸形になる。(Flora of North America)

132 Carex hachijoensis Akiyama ハチジョウカンスゲ 八丈寒菅
 日本固有種。伊豆諸島(八丈島、御蔵島)に分布する。山地の林内に生える。
 多年草。高さ20~40㎝。葉の断面がM字形になる。果胞が熟すとかなり膨らむ。果期は4~5月。

133 Carex hakkodensis Franch. イトキンスゲ 糸金菅
 日本(北海道、本州中部以北)、千島列島、ロシア原産。高山帯の湿り気のある草地や斜面に生える。
 密に稈や葉を叢生し、高さ15~40㎝、全体に軟弱。根茎は匍匐して屈曲する。葉は広線形、稈より短く、幅約2㎜、平滑。稈は直立し、細く、3稜柱、頂部近くはザラつき、やや傾いて頂部に1小穂をつける。小穂は雄雌性(androgynous)、ときに雌性、淡茶褐色になり多少光沢がある。上部は雄花部、細くて短く、多くは早落性。雌花部は長楕円形、長さ約3㎝、長い果胞をややまばらにつける。雌鱗片は淡茶褐色、披針状楕円形、先は切形、下部の鱗片には長い芒がある。果胞は斜開し(直立ともいわれる)、極めて長く、はるかに鱗片を超え、長披針形、長さ約7㎜、鱗片と同色で平滑、上部は漸尖し、基部には柄(長さ約2㎜)がある。柱頭は3岐。花期は6~8月。果期は7~8月。

134 Carex hakonemontana Katsuy. ハコネイトスゲ 箱根糸菅
 日本固有種。箱根、愛鷹山、伊豆天城山などに分布する。標高500m以上のやや暗い林床や表面がコケに被われている岩上などに生える。
 多年草、根茎と細い匍匐枝を持つ。稈は高さ10~20㎝、扁平な3稜形、平滑。基部の鞘は帯褐色。葉は稈より短いか、長さ10~25㎝、非常に繊細、幅0.5㎜以下、下面の1脈のみで、上面が多少弧を描いて凹むが,内巻したり二つ折れすることはなく、常に上面が見える。葉の上面には刺状突起はきわめて少ない。小穂は2~3個(1個のものが多く、まれに基部近くにやや根生状の雌小穏をつける)、頂生の雄性小穂は線形、黄色、長さ6~15mm、柄がある。側小穂は雌性、短く狭い円筒形で直立し、長さ4~8㎜、花が緩く、離れてつき、柄がある。雌小穂の柄は上部のものでは苞の鞘と同長かやや長い程度で、外から柄の部分が目立つことはない。ただし,根生状の雌小穂には長い柄がある。苞は小穂より短く刺状、棘状の葉身は長さ2~7㎜、鞘は長さ5~10㎜。雌鱗片は長さ2~3㎜、淡色の長円状卵形。果苞は小穂に多くは3~4個で最大でも6個まで、鱗片より長く、長さ2.5~3.5mm、鈍卵形、3稜形、淡緑色、無毛、基部で大きく漸尖し、先には狭くまたは中程度の嘴がある。痩果は密に包まれ、長さ約1.5㎜、先は拡張した輪状にくびれる。柱頭は3岐。

135 Carex hakonensis Franch. et Sav. コハリスゲ 小針菅
 北海道、本州、四国、九州、朝鮮原産。別名はコケスゲ。山地のブナ帯からシラビソ帯の林床に生える。  多年草。叢生し、小型で高さ10~20㎝、根茎は短い。稈は鈍い稜があり、上部はザラつくかまたは平滑。葉は幅0.7~1.2mm、鮮緑色、両縁はややざらつく。基部の鞘は淡褐色。花序は小穂が1個が頂生し、雄雌性(androgynous)、長さ3~5mm×幅3~5mm。先の雄花部は細く、ごく短く、雄鱗片は淡褐色、先は鈍形、脱落しやすい。雌鱗片は先が鈍形~鋭形、脱落しやすい。果胞は数が少なく、長さは雌鱗片の長さの約3倍、長卵形、熟すと開出し、長さ2~2.5mm×幅1~1.2mm、不明瞭な多数の細脈があるが、ほとんど見えず、膜質で半透明、無毛、先には短い嘴があり、口部は凹形。痩果は果胞に密着してに包まれ、楕円形~卵形、長さ約1.5mm。柱頭は3岐。2n=60,62。花期は6~8月。

136 Carex hancockiana Maxim. クロカワスゲ 
  synonym Carex alpina f. longipedunculata Kük.
  synonym Carex komaroviana A.I.Baranov & Skvortsov
 朝鮮、中国(甘粛省、河北省、吉林省、内モンゴル、青海省、陝西省、山西省、新疆ウイグル自治区)、モンゴル、ロシア原産。中国名は点叶薹草 dian ye tai cao。英名はHancock's sedge。標高400~2700mの森林草原、湿った場所、高山草原に生える。

137 Carex hashimotoi Ohwi サヤマスゲ 
 日本固有種。本州の長野県、岐阜県、滋賀県に分布。森林、林縁の斜面、岩場に生える。
 まばらに叢生し小さいがまとまった株を作り、ときに短く匍匐枝を出す。基部の鞘は淡色。葉は幅3~5㎜。花茎は高さ5~15㎝、葉より低い。苞は鞘があり、葉身は発達せず棘状。頂小穂は雄性、線状円柱形で長さ0.5~1㎝、柄がある。雄鱗片は緑白色で先は鈍形。側小穂は雌性、楕円形、長さ0.5~1.5㎝、離れてつく基部の小穂には長い柄がある。雌鱗片は果胞より短く、緑白色、先は尖鋭形。果胞は長さ3.5~4㎜、楕円形で明瞭な脈があり、表面には短毛が密にあり、基部は長い柄状になり、先には短い嘴があり、口部は凹形。痩果は果胞に密着し、卵形、長さ約2㎜、基部に長柄があり、頂部に付属体はない。柱頭は3岐。花期は4~5月。

138 Carex hattoriana Nakai ex Tuyama ムニンナキリスゲ 無人菜切り菅
  synonym Carex mokkwaensis Akiyama タイワンナキリスゲ 
 小笠原諸島、台湾、フィリピン、キャロライン島原産。中国名は长叶薹草 chang ye tai cao。±低標高の森林または森林縁に生える。
 根茎は短い。稈は叢生し、高さ60~100㎝、3稜形、上部の角(かど)がザラつく。葉は根生葉、稈より長く、葉身は幅3~5㎜、下部で二つ折り、上部で次第に平らになり、基部は鞘に覆われる。鞘は暗褐色で、通常は裂ける。苞は鞘があり、最下の苞の葉身は葉状で、基部を抱く小穂を超え、上部の苞の葉身は剛毛状、最上部の苞は鞘状で小穂より短い。小穂は10個以上、苞の各鞘に1~3個つき、ときに下部の小穂は分枝し、離れて上向きにやや集合してつき、雄雌性花序(androgynous)、雄部分が雌部分より長く、狭い披針形、長さ1.5~3㎝、雌花がやや密につく。下部の小穂には細い花序柄があり、上部の小穂にはかなり短い花序柄がある。雌鱗片は鉄さび褐色、長円形、長さ約4㎜、膜質、細い数本の脈があり、先は尖鋭形。果胞は赤褐色、直立し、鱗片と同じかわずかに長く、楕円形、断面は扁平な三角形、長さ4~4.5㎜、膜質、外側に細い数本の脈があり、基部は急に狭まり短い柄となり、先は次第に狭まってわずかに長い嘴となり、口部には2歯がある。小堅果はきつく包まれ、楕円形、レンズ形。花柱の基部はわずかに太くなる。柱頭は2岐、±長い。花期は3月。

139 Carex hebecarpa C.A.Mey. タイワンサツマスゲ 
 中国(福建省、広東省、湖南省)、台湾、ブータン、インド、ネパール、ベトナム、インドネシア原産。中国名は蔬果薹草 shu guo tai cao。山地の谷間、林内、道端などの湿った場所に生える。

140 Carex heterolepis Bunge ヤマアゼスゲ 山畔菅
 日本(北海道、本州、九州)、韓国鮮、中国(河北省、黒竜江省、湖北省、江西省、吉林省、遼寧省、内モンゴル、陝西省、山東省、山西省)原産。中国名は异鳞薹草 yi lin tai cao。標高500~1900mの湿地、水辺に生える。
 根茎は短く、長い匍匐茎がある。稈は高さ40~70㎝、断面は三角形で、上部はザラつき、基部は黄褐色の鞘で覆われ、網状の繊維に崩壊する。葉は稈とほぼ同長で、葉身は線形、幅3~6㎜、平ら、縁はザラつく。苞は葉状で、最下の苞は花序を上回り、鞘は無い。小穂は3~6個つく。頂生の小穂は雄性、円筒形、長さ20~40㎜×幅約4㎜、花序柄は長さ0.8~2㎝。側小穂は雌性、円筒形、直立し、長さ10~45㎜×幅約6㎜、しばしば無柄で、最下のものだけに短柄がある。雌鱗片は、薄褐色、狭い披針形または狭い長円形、長さ2~3㎜、緑色の1~3本の脈のある肋が突き出し、微突になる。胞果は薄褐色で、鱗片よりわずかに長く、倒卵形または楕円形で、断面は扁平な両凸形、長さ2.5~3㎜、微細なパピラがあり、基部は切形で、先は急に狭まり、長さ約0.5㎜の嘴になり、口部には2歯がある。小堅果は暗褐色、きつく包まれ、広倒卵形または倒卵形、長さ2~2.2㎜。花柱の基部は太くない。柱頭は2岐。花期と果期は4~7月。

141 Carex heterostachya Bunge ブンゲスゲ 
 韓国、中国(黒竜江省、河南省、吉林省、遼寧省、陝西省、山東省、山西省)原産。中国名は异穗薹草 yi sui tai cao。標高300~1000mの乾燥した山、草原、道端に生える。

142 Carex hirtifructus Kük. ツクバスゲ 筑波菅
 日本固有種。本州(近畿以北)、四国、九州。別名はホソミショウジョウスゲ。山地の山頂付近の岩上、渓流沿いの岩場などに生える。ショウジョウスゲに似るが、全体に小型で、果胞の嘴が長く、口部の2歯がやや深くて鋭い。
 まばらに叢生し、半地表性の細長い根茎(匍匐枝)がある。葉は幅1~3㎜。花茎は高さ10~50㎝、小穂は間隔を開けてつく。頂小穂は雄性、側小穂は雌性。ともに長さ1~3㎝。最下の雌小穂はときに根生状につき長い花序柄がある。雄鱗片は褐色を帯びる。雌鱗片は暗褐色~赤紫褐色、果胞は長さ4~6㎜、先が長い嘴になり、口部にやや深くて鋭い2歯がある。痩果は長さ3~3.5mm。花期は4~6月。

143 Carex holotricha Ohwi オアズマスゲ 大東菅
 朝鮮、ロシア原産。英名はhairy-awned sedge , hairy-awned fox sedge , holotrichous sedge。高山の日当たりの良い岩の上や岩の隙間、登山道周辺に生える。観賞用に使用される。
 多年草。全体に開出する毛ある。下部の葉鞘は赤褐色、古い鞘で覆われる。葉は比較的、幅が広い。苞葉は鞘があり、葉身は針状。 頂生の小穂は長い花序柄があり、長さ5~8㎜、円柱形。他の小穂は雌性、下部の苞から出る小穂は花序柄がある。雄鱗片は赤褐色。雌鱗片は暗赤褐色、先に短い芒がある。果胞は、鱗片より長く、楕円形、長さ4~5㎜、表面に毛があり、嘴は短く、扁平。柱頭は3岐。花期は4~5月。

144 Carex hondoensis Ohwi アイズスゲ 会津菅
 日本固有種。本州の福島県、新潟県~福井県の主に日本海側に分布し、栃木県にも分布する。山地のやや湿り気の強い草地に生える。
緩く叢生する。根茎は短く横に這うか、斜上し、高さ40~70㎝。根生葉は花茎より短く、細く、幅3~5㎜。基部の鞘は淡褐色、繊維状に細かく裂ける。花序は小が4~5個つき、頂部の1~3個の小穂は雄性、その下側の小穂は雌性。苞は葉身がよく発達し、基部には短い鞘がある。雄小穂は線形、長さ1~3㎝、青みがかった白色~淡褐色で柄がある。雄鱗片は青みがかった白色、中肋は鮮緑色、先は突き出て鋭く尖る。雌小穂は円柱形、長さ2~6㎝、長い柄があり垂れ下がり、多数の花をややまばらにつける。雌鱗片は果胞よりやや短く、緑白色、中肋は鮮緑色、先は突き出して鋭く尖るか、または短い芒になる。果胞は長さ4~5㎜、楕円形、脈はなく。無毛、先は長い嘴となり、口部に深い2歯がある。柱頭は3岐、長さ約10mm、宿存する。花期は5~6月。

145 Carex hoozanensis Hayata ホウザンスゲ 
  synonym Carex hexinensis S.Yun Liang & Y.Z.Huang。
 日本(南西諸島)、中国、台湾、ベトナム原産。中国名は凤凰薹草 feng huang tai cao。別名はホウオウスゲ。森林に生える。
 根茎は太く、斜上する。稈は密に叢生し、細く、高さ5~20㎝、太さ1.2~1.5㎜、平滑、直立し、ほぼ全長が葉身のある鞘で覆われる。葉は稈よりも数倍長く、葉は幅5~15㎜の広線形、平らで革質、3肋があり、かなり目立つ淡黄褐色の横の細脈があり、短い鞘がある。苞は葉状で花序を超え、短い鞘がある。小穂は2~3個あり、ほぼ箒状、直立する。頂生小穂は雄性、線形、長さ1.5~3㎝。側小穂は雌性、長円形、長さ1.5~3㎝×幅0.7~0.8㎝、やや緩く多数の花がつき、無柄または短柄がある。雌鱗片は淡色、卵状楕円形~卵状長円形、長さ約3㎜、膜質、幅が広く、緑色の3本の脈のある肋がほぼ鋭形の先に尖点を作る。果胞はオリーブ緑色、鱗片より長く、開出し、卵状紡錘形、長さ7~8㎜、草質、無毛、細かい多数の脈があり、両端が次第に狭くなり、先の嘴は狭円錐形、口部は2裂する。小堅果はきつく包まれ、倒卵形、長さ4~5㎜、三角形で、通常は角(かど)が細かくくびれ、基部は環状になる。花柱は基部に向かって次第に幅が広くなる。小堅果には嘴状の付属体が宿存する。柱頭は3岐。

146 Carex humbertiana Ohwi フトボアゼスゲ 

  synonym Carex appendiculata var. sacculiformis Y.L.Chang & Y.L.Yang

 朝鮮、中国(吉林省、内モンゴル。)原産。中国名は小囊灰脉薹草 xiao nang hui mai tai cao。湿地や湿った場所に生える。

147 Carex humilis Leyss. ヒナタスゲ 日向菅
 中国(安徽省、河北省、遼寧省、山西省)、ロシア、イラン、ヨーロッパ原産。中国名は低矮薹草 di ai tai cao。標高100~1000mのマツ林または クスドイゲ属の林(Xylosma forests)、山の斜面の日当たりの良い場所、海の近くの山に生える。Kewscienceでは日本を分布域に含めない。
 根茎は短い。 稈は密に叢生し、高さ2~5㎝、ほぼ円筒形、平滑、褐色で基部が宿存する鞘に覆われる。葉は稈と同長、3~5枚つき、平らで、幅1~2㎜、柔または硬く、緩く、毛がある。苞は赤褐色、仏炎苞状、鞘口に広い白色透明の縁があり、苞の葉身は剛毛状。小穂は2~5個、離れる。頂生の小穂は雄性、線状円筒形、長さ1~1.4㎝×幅約2㎜、花が多数つく。側小穂は1~2個つき、雌性、卵形~長円形、長さ5~7㎜、緩く、花が2~7個つく。花序柄は短く、鞘に包まれるか、最下の小穂はわずかに突き出す。花序軸は曲がりくねる。雌の鱗片は側部が赤褐色、中央は緑色、卵形、長さ約4㎜、1脈があり、縁は広く白色透明で、基部は花序軸を抱き、先は鋭形。果胞は帯緑色、鱗片よりわずかに短く、倒卵形~長円形、三角形、長さ3~3.2㎜、膜質、疎に鉄さび色の細点があり、密に毛があり、側部に2本の脈があり、明瞭な細い脈は無く、基部は急に狭まり短い柄になり、先はほぼ丸く、短い嘴があり、嘴は赤紫色、口部が切形。 小堅果は成熟すると暗褐色、楕円形~倒卵形~長円形、断面は三角形、長さ2.5~3㎜、基部は漸尖して短い柄に細くなり、先には曲がった短い嘴がある。花柱は基部がわずかに太い。柱頭は3岐。花期および果期は5~6月。
147-1 Carex humilis var. humilis

  synonym arex callitrichos V. I. Kreczetowicz var. austrohinganica Y. L. Chang & Y. L. Yang.

  synonym Carex buschiorum V.I.Krecz. ex Kolak.
 中国、ロシア、ヨーロッパ原産。中国名は低矮薹草 di ai tai cao。標高100~1000mのマツ林または クスドイゲ属の林(Xylosma forests)、山の斜面の日当たりの良い場所に生える。
 葉は柔らかく、幅1~1.5㎜。穂状花序は2~3個。 雌穂には花が2~4個つく。

147-2 Carex humilis var. scirrobasis (Kitagawa) Y. L. Chang & Y. L. Yang

  synonym Carex scirrobasis Kitag.
 中国(河北省、遼寧省、山西省)原産。中国名は雏田薹草 chu tian tai cao。標高100~1000mの海の近くの山、山の斜面のハイマツ林に生える。
 葉はわずかに硬く、約・長さ15cm×幅2㎜。穂状花序は4~5個。 雌穂には花が4~7個つく。花期および果期は5~6月。
※現在ではKewscienceは次のホソバヒカゲスゲをイトヒカゲスゲ(Carex callitrichos V.I.Krecz.)の変種に分類し、ヒナタスゲ(Carex humilis Leyss.)は分布域に日本(北海道、本州、四国、九州)を含まない。また、Carex humilis Willd. ex Kunthはカブスゲ(Carex cespitosa L.)のsynonymとされている。

147-3 Carex humilis Leyss. var. nana (H.Lév. et Vaniot) Ohwi ホソバヒカゲスゲ 細葉日陰菅

  synonym Carex humilis Leyss. subsp. nana (H.Lév. et Vaniot) T.Koyama

  synonym Carex humilis Leyss 広義
 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は低矮薹草 di ai tai cao。別名はヒメヒカゲスゲ。山野の乾いた場所に生える。Flora of Chinaではこの変種は基準変種に含める。ている。
 多年草、高さ10~40㎝。根茎は短く、匐枝はなく、叢生する。花茎は短く、長さ3~6㎝、直立し、葉よりかなり低く、葉に隠れる。葉は幅(0.3)0.5~1.5(1.8)㎜、最も狭いものは0.3㎜、最も広いものは1.8㎜ある。小穂は茎の上部に数個つく。頂小穂は雄性、長さ5~10㎜。側小穂は雌性、2~4個の果胞をつけ、長さ5~10㎜。苞は鞘があり、葉身が鱗片状で短い。小穂の軸は上部の稜にわずかに毛があり、雌小穂の軸の基部に膜質の鞘(小苞)がある。鱗片は紫紅色を帯びる。果胞は緑色、短毛が密生し、ほとんど無嘴、鱗片より小さく、長さ3~3.2㎜、先の方が太く、基部が海綿質の柄状になる。痩果は長さ2.5~3㎜、3稜形、濃褐色に熟す。柱頭は3岐、花柱は取れやすい。花期は4~5月。

148 Carex hymenodon Ohwi ヤマクボスゲ 山窪菅
 日本固有種。栃木県、宮城県に分布する。別名はヒメミクリスゲ。ウマスゲやオニスゲに似る。低地丘陵帯~山地の泥湿地に生える。
 稈は叢生し、短い走出枝を出す。葉は幅が広く、幅約2㎝、下面は淡緑色。稈の上部に3~4個の小穂をつける。雄省穂は密にやや多数の花がつく。果胞は短く、広卵形。痩果は楕円形。果期は5~6月。

149 Carex idzuroei Franch. et Sav. ウマスゲ 馬菅
 日本(本州の東地方以西、四国、九州)、朝鮮、中国(福建省、江蘇省、浙江省)原産。中国名は马菅 ma jian。川辺、湖畔、湿気の多い場所に生える。
 根茎は細くて分枝した匍匐茎を持つ。稈はゆるく叢生し、高さ30~60㎝、三角形、平滑、基部に長い鞘がある。葉は通常、下部の葉が稈より短く、上部の葉は稈より長く、葉身は幅4~9㎜、平ら、2本の側脈が明瞭、葉脈間に短い横の隔節があり、基部には紫褐色の長い鞘がある。 苞は葉状、小穂よりも長く、通常は鞘がない。小穂は4~5個。頂部の1~ 2個の小穂は雄性、線状円筒形、長さ2~4㎝、花序柄がある。 残りの小穂は雌性、長円形、長さ2~3㎝×幅1~1.2㎝、花が密に多数つき、上部の小穂は無柄、最下部の小穂は短い花序柄を持つ。雌鱗片は暗黄色、披針状卵形、長さ5~6㎜、膜質、緑色の3脈があり、先端は尖鋭形、微突形。果苞は黄褐色、斜めに開出し、鱗片よりもかなり長く、長円状卵形、膨らんだ三角形、長さ9~12㎜、薄い革質、無毛、数本の葉脈があり、基部は丸く、短い柄があり、先は徐々に狭まって長い嘴になり、口部にはわずかに長い2歯がある。小堅果は黄褐色、かなり緩く包まれ、倒卵形、三角形、長さ約4㎜、基部は短い柄がある。花柱は下部で太くなり、宿存し、わずかに硬い。柱頭は3岐、かなり短い。花期および果期は4~5月(日本では5~7月)。

150 Carex imbecillis (Ohwi) Katsuy. ヤワラミヤマカンスゲ 
  synonym Carex multifolia var. imbecillis Ohwi
  synonym Carex dolichostachya f. imbecillis (Ohwi) T.Koyama
 日本固有種。九州(宮崎県・鹿児島県)に分布。別名はウスバミヤマカンスゲ。ミヤマカンスゲ(Carex multifolia)の変種として分類されていることが多い。
 地下性の細長い匍匐根茎がある。雄鱗片、雌鱗片は淡緑色。基部の鞘は淡色。

151 Carex inagawaensis J.Oda et M.N.Tamura イナガワハリスゲ 猪名川針菅

 日本固有種。本州(兵庫県)の猪名川流域だけに分布する。温暖な標高約180mの田んぼの畦に生える。ニッコウハリスゲに似るが、花茎が長く横走する根茎上に間隔をあけてつく。葉は幅1.5~2㎜。
 多年草。 根茎は長く、匍匐性。稈は直立し、高さ10~20cm、断面は鋭角な三角形で剛毛がある。 基部の鞘は薄褐色。 葉は花時に稈より短く、後に長さ20cm以下、幅1.5~2mm、断面がV形になる。小穂は単生し、雄雌性花序(androgynous)、長さ5~10㎜×幅5~7㎜、上部は雄性、下部は雌性(雄性部より長い)。雄花は3~5個つき、雄しべは3本、鱗片は狭い卵形、淡緑色、長さ 1.8~2.2㎜×幅0.4~0.6㎜。 雌花は5~10個つき、柱頭は3岐、鱗片は卵形、淡緑色、長さ1.6~1.8㎜×幅1~1.2㎜。果胞は広卵形、薄緑色、さび色の斑点がなく、長さ1.8~2.2㎜×幅1.4~1.6㎜、2~4本の明瞭な脈があり、嘴に向かって徐々に先細り、嘴は長さ約0.5㎜まで、口部はわずかに凹む。痩果は卵形、断面は三角形、淡褐色、長さ1.2~1.3㎜×幅0.7~0.8㎜、柄は長さ0.1~0.2㎜。

152 Carex incisa Boott カワラスゲ 河原菅
 日本、千島列島、朝鮮原産。別名はタニスゲ。山野の道端、草地に生える。やや湿ったところを好み、河原や谷に多いことから河原菅とか別名の谷菅と呼ばれる。
 多年草、高さ20~50㎝。根茎は短く、叢生する。茎は3稜形で柔らかく平滑。基部の鞘は淡褐色、糸網をつくらない。葉は幅3~6㎜、柔らかく、春の初期はやや粉白を帯びる。花期には葉と花茎とはほぼ同長、その後、花茎が伸びる。小穂は4~6個、やや近接してつき、細くて長い柄がつき、稔るほど垂れ下がる。苞は無鞘。頂小穂は普通、雄性、長さ2~4㎝、先に短い雌花部をつけ雌雄性となることも多い。側小穂は雌性、円柱形、長さ3~7㎝。雌小穂の鱗片は果胞より短く、白色、凹頭又は円頭、中肋は太く、緑色、先が短い芒になる。果胞は長さ2.5~3㎜、扁平、平滑。柱頭は2岐。果実は長さ1.5~2㎜、レンズ形、惰円形。花期は5~6月。

153 Carex indica L. ナンヨウハナビスゲ 南洋花火菅
  synonym Carex fuirenoides Gaudich.
  synonym Carex fuirenioides var. gracilis Hosok.
 中国(広西チワン族自治区、貴州省)、インド、スリランカ、東ヒマラヤ、アンダマン諸島、カンボジア、バングラデシュ、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア(ボルネオ、ジャワ、)、フィリピン、オーストラリア(クイーンズランド州)、太平洋諸島原産。中国名は印度薹草 yin du tai cao。標高800~900mの坂道に生える。
153-1 Carex indica var. indica ナンヨウハナビスゲ 狭義
153-2 Carex indica var. microcarpa T.Koyama
 タイ原産。

154 Carex insaniae Koidz ヒロバスゲ 広葉菅 広義
 日本(北海道、本州、九州)、千島列島原産。別名はコヒロバスゲ。山地~亜高山帯のやや湿った林内や林縁に生える。
154-1 Carex insaniae Koidz. var. insaniae ヒロバスゲ 広葉菅
 日本(北海道、本州、九州)、千島列島原産。別名はコヒロバスゲ。山地~亜高山帯のやや湿った林内や林縁に生える。
 まばらに叢生し、匐枝はない。基部の鞘は淡褐色、繊維状に細かく裂ける。葉は長さは30~40cm×幅8~15(20)mm、花茎よりも高く、やや厚くやや柔らかい革質、濃緑色で、光沢があり、縦にひだがある。花茎は高さ10~30cm、ときに短いものは曲がりくねり、葉の基部に隠れる。頂小穂は雄性、棍棒形、長さ1~3cm×幅3~4mm。雄鱗片は淡褐色、ときに赤色を帯び、先は短く芒状に突き出す。側小穂は雌性、1~3個、互いに離れてつき、やや太い円柱形、長さ0.6~2cm。雌鱗片は先が円形、短突起がある。苞は鞘があり、葉身は小穂より短い。果胞は果胞は斜めに斜上開出し、長さ5~6mm、暗緑色で微毛があり、多数の細脈があり、嘴は短く、口部は凹形。痩果は3稜形、稜の中央付近に深い凹みがあり、長さ3~4mm、頂部の付属体は環状、基部に太い柄がある。果期は5~6月。

154-2 Carex insaniae Koidz. var. papillaticulmis (Ohwi) Ohwi アオバスゲ 青葉菅

  synonym Carex papillaticulmis Ohwi
 本州の関東地方以西、四国、九州に分布する。標高500m以上の低山~山地の林内の日陰の渓流畔、山道の道端に生える。
 まばらに叢生し、匍匐枝はない。基部の鞘は淡緑色。葉は常緑でやや硬く、幅4~8㎜、濃緑色。花茎は高さ15~45cm。頂小穂は雄性、長さ1~2cm、線状披針形。雄鱗片はときに赤褐色を帯びる。側小穂は雌性、2~3個、互いに離れてつき、長さ0.6~2cm。苞は鞘を持ち、葉身は葉状で、小穂よりも短い。果胞は長さが5.5~6.5mm、多数の細脈があり、毛があり、先は長い嘴があり、口部には鋭い2歯がある。痩果は長さ2.5~3mm、3稜形で、稜の中央は凹みがないかまたは浅くくぼみ、頂部の柱基の付属体は直立し嘴状になる。果期は5~6月。

154-3 Carex insaniae Koidz. var. subdita (Ohwi) Ohwi アオヒエスゲ 青稗菅

  synonym Carex subdita Ohwi
  synonym Carex kiyozumiensis Akiyama
  synonym Carex nankaiensis Honda
  synonym Carex tosana Makino
 本州(関東地方以西)、四国に分布する。低山地の林縁など明るい林内に生える。アオヒエスゲはアオバスゲに比し、全体小さく、茎の高さが低く10~30㎝、葉は幅が2~4㎜。両種の中間的な個体もあり形態の変異は連続しているともいわれる。
 叢生し、根茎は短い。茎の高さ10~30㎝。基部の鞘は淡緑色、繊維状に細裂する。葉の幅も狭くて2~4㎜。頂生の雄小穂は雄鱗片が緑白色。側生の雌小穂は卵形、長さ0.5~1㎝、緑白色、花序柄がある。雌小穂は緑白色、雌鱗片には短い芒がある。果胞は雌鱗片より長く、熟すと開出し、短毛があり、嘴は長く、口部には鋭2歯がある。痩果は3稜形、稜の中央部は凹み、頂部は長くわずかに円盤形。柱頭は3岐。花期は4~5月。

155 Carex ischnostachya Steud. ジュズスゲ 数珠菅
 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国原産。中国名は狭穗薹草 xia sui tai cao。林縁、湿った道端に生える。和名は果胞が並び、数珠(じゅず)のように見えることから。
 多年草、高さ30~40㎝。根茎は太くて短く、叢生し、匐枝はない。基部の鞘は赤紫色を帯び、葉身が無い。葉は幅5~10㎜、柔らかい。頂小穂は雄性、長さ2~3㎝、幅約1㎜と細く、側小穂の上端とほぼ同じ高さになるのが特徴。雌小穂は長さ2~5㎝、幅約3.5㎜、2~5個つき、、茎頂に数個、固まり、下部にも離れてつく。苞は葉状、葉身が長く、鞘も長い。雌鱗片は果胞よりかなり小さく、長さ1.5~1.8㎜、芒はない。果胞は無毛、長さ4~5㎜、5~7脈があり、乾くと縦縞が入り、黒褐色に変し、長い嘴を持つ。果胞は少数つき、熟すと開出し、ほぼ直立し、膨らみ、中の果実は小さい。果実は長さ1.8~2.2㎜の3稜形、黄褐色~褐色、表面に微細な凸凹がある。柱頭は3岐。果期は5~6月。

155-1 Carex ischnostachya Steud. var. fastigiata T.Koyama オキナワジュズスゲ 沖縄数珠菅

 関東地方以西に分布する。
 小穂が細長く、側小穂も上部に集まってつく。果胞が3~3.5㎜と小さい。基部の鞘が強く暗赤色を帯びる。
155-2 Carex ischnostachya Steud. var. ischnostachya ジュズスゲ 

156 Carex jacens C.B.Clarke ハガクレスゲ 葉隠れ菅
 日本(北海道、東北、本州中部の日本海側)、千島列島原産。主に針葉樹林帯の林縁や路傍に生える。別名はケハガクレスゲ、ムツアオスゲ。和名は下方の雌小穂が根際につき、葉の聞に隠れることから。
 叢生し短い匍匐枝を生じる。花茎は高さ7~20cm。葉は幅1.5~3㎜でほとんどが花茎より短い。雄小穂は長さ5~10mm×幅1~2mm。雌小穂は3~6個で最下の1~2個の小穂は常に根生状になり、葉の聞に隠れる。雌小穂は卵形~円柱形で長さ5~10mm×幅約2.5mm。苞葉は葉状で茎より低くつく。果胞は長さ2~2.5㎜と小さく、3稜が明瞭で果胞の面が膨れることはない。嘴は短いが、口部はかなりはっきりとした2歯があり、普通は毛がないが、微毛を有するもの、疎らに短毛を有するものなどもある。ハガクレスケの果胞の表面に毛がある型がケハガクレスゲとされたがが、毛の量は変化が多く、明確な区別は困難である。

157 Carex jaluensis Kom. チョウセンカサスゲ 朝鮮傘菅
 朝鮮、中国(河北省、吉林省、遼寧省)、ロシア原産。中国名は鸭绿薹草 ya lü tai cao。標高400~1500mの谷間の川辺、溝の脇や森林の湿った場所に生える。

158 Carex japonica Thunb. ヒゴクサ 肥後草
 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国原産。中国名は日本薹草 ri ben tai cao。道端、草地に生える。
 多年草、高さ20~40㎝。細長い根茎を横に伸ばし、まばらに叢生する。茎は三稜形、ざらつく。葉は幅2~4㎜、裏面はやや粉白色。小穂は長い柄があり、2~4個つく。頂小穂は雄性、長さ1.5~3㎝の線形。雌性の側小穂は、長さ1~2㎝、幅6~7㎜の円柱状。花期には小穂は直立し、果期には垂れ下がる。花期に雌小穂から長い柱頭が突き出しているのが特徴であり、花後も残る。果胞は長さ3.5~4㎜、長い嘴があり、嘴の先に微刺(やや不明瞭な果胞もある。)があり、口部は2歯。雌鱗片は果胞よりやや短く鋭尖頭。果実は長さ約2㎜の3稜のある倒卵形、柱頭は3岐。2n=62。花期は4~6月。

159 Carex jubozanensis J.Oda et A.Tanaka サンインヒエスゲ 山陰稗菅
 日本固有種。本州の福井県~広島県の日本海側に分布する。アカマツ林などの乾いた樹林内に生える。
 多年草、活発に匍匐枝を出す。稈は側生、三角形、高さ20~40㎝、不稔の稈がしばしば観察される。基部の鞘は淡褐色、繊維状に崩壊しない。葉は薄緑色、線形、稈とほぼ同じ高さで、幅4~8㎜、側肋が2本あり、水疱状細胞は単層につく。小穂は2~3個。頂生の小穂は雄性、淡褐色、こん棒形~狭いこん棒形、長さ2~3㎝、長い花序柄がある。側小穂は雌性、1~2個つき、少数の花を離れてつけ、長さ1.5~2㎝。 苞は長さ2~4cm、鞘があり、小穂を超えない短い葉身を持つ。雄鱗片は狭倒卵形、緑色の中央と淡緑色の縁を除いて明るい錆び褐色で、3脈があり、先は凹形で短い芒があり、芒に縁毛がある。雄しべは3本。葯は長さ5㎜。雌鱗片は卵形、淡緑色~薄褐色、中央は緑色、3本の脈があり、長さ6~7㎜、先は凹形で短い芒があり、芒には縁毛がある。果胞は卵形、無毛、かなり長い嘴があり(長さ3~3.5㎜)、三角形、長さ5.5~8㎜、しばしばく嘴の側面がザラつき、かなり深い2歯があり、脈は多いが不明瞭。痩果は倒楕円形、3本の尾根の中央は凹んでいない三角形で、短く湾曲した柄があり、しばしば花柱を繋ぐ先(基部)が強く湾曲する。柱頭は3岐。果期は5~6月。

160 Carex kabanovii V.I.Krecz. ヤリスゲ 槍菅
 日本(北海道の大雪山)、サハリン原産。高山の湿地に生える。
 葉は硬く、カンチスゲに似るが、葉の幅が広い。花序は雌雄異株で単性、まれに雌雄同株で雄雌性花序。小穂は長く、少し光沢のある黄栗色。果胞は成熟すると斜めに開出し、雌鱗片より長く、背面に少数の脈があり、基部は海綿状に肥厚し、先は狭まり長い嘴となり、口部にはやや深い2歯がある。柱頭は3岐。花期は6~7月。

161 Carex kagoshimensis Tak.Shimizu セトウチスゲ 瀬戸内菅
 日本固有種。本州、九州原産。別名はカゴシマスゲ。海岸の近くの常緑広葉樹またはモウソウチク(Phylloostachys pubescens)が混ざった林内または林縁に生える。
 多年草、常緑。 根茎は木質で節が太く、暗褐色の繊維で密に覆われる。稈は高さ37~85㎝、太さ0.8~1.8㎜、パピラがあり、断面は円形または鈍角の三角形、やや中空、基部の鞘は淡褐色または薄褐色、後に褐色の繊維状に裂ける。葉は線形~広線形、長さ35~55㎝×幅6.5~18.5㎜、暗緑色または淡褐色で平滑。小穂は2~4個つき、頂生の小穂は雄性、ときに最下部に雌花がつき、線形、長さO.8~4.2㎝×幅1.3~4㎜、赤褐色。花序柄の長さは0.1~11㎝。 側小穂は雌性(通常、上部に雄花を伴う)、花が間隔を開けてつき、長円状円筒形~狭長円状円筒形、長さ1.7~4.8cm×幅8~10㎜、花序柄の長さ0~0.5(~20)㎜、最下の小穂には33~57個の果胞があり、ときに根生に近いものもある。最下の苞は長さ2.5~14㎝、鞘は長くて平滑、葉身は葉状、幅3~7㎜。雄鱗片は狭倒卵形または狭楕円形で、先は凹形で、短い芒があり(芒は長さ0.6~0.8㎜)、長さ5~6.5㎜、淡赤褐色。雌鱗片は狭楕円形または狭卵形で、先は鋭形またはやや凹形、短い芒があり(長さ1~2㎜)または芒が無く、長さ4~5㎜(芒を除く)、中央に暗緑色のゾーンがある。果胞は鱗片よりも長く、広卵形または広楕円形で、まばらに毛があり、断面は不明瞭な三角形、長さ5.3~7.4㎜、30~35本の明瞭な脈があり、基部には短い柄があり、嘴は長く、深く2裂する(長さ2.2~3.3㎜)。痩果は広菱形または広倒卵形、断面は鈍三角形、稜の中央に深い裂け目があり、嘴と柄を除き長さ2.3~2.7㎜、柄は強く曲がり、嘴も強く曲がる。柱頭は3岐。

162 Carex karashidaniensis Akiyama イセアオスゲ 伊勢青菅
 日本固有種。本州(関東地方西南部、東海地方、紀伊半島)に分布する。山地の林内の斜面や岩場に生える。
 小型で叢生する。稈は大変短く、長さ5~10㎝、葉より短い。基部の鞘は淡緑色。葉は幅1~2.5㎜。小穂は3~5個つき、頂生の小穂は雄性、長さ3~6㎜。側小穂は雌性、長さ4~8mm、花はまばらに2~6個つく。最下の小穂は根生する。苞は花序より長い。果胞は長さ3~3.5mm、雌鱗片より長く、短毛があり、嘴が長く、口部には2小歯がある。痩果は密に果胞に包まれ、頂部に小型の盤状付属体がある。柱頭は3岐。果期は5~6月。

163 Carex karoi (Freyn) Freyn コツブスゲ 小粒菅
 中国(河北省、遼寧省、内モンゴル、山西省)、モンゴル、ロシア、インド、パキスタン、アフガニスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン原産。中国名は小粒薹草 xiao li tai cao。雑木林、川辺、沼地などの湿った場所に生える。

164 Carex kiotensis Franch. et Sav. テキリスゲ 手切り菅
  synonym Carex phaeopoda Ohwi タカサゴテキリスゲ
 北海道、本州、四国、九州、中国、台湾原産。中国名は褐柄薹草 he bing tai cao。和名の由来は葉の縁が著しくざらつき、手が切れるほど痛いことから。タカサゴテキリスゲは日本では栽培種。
 多年草、高さ30~70㎝。根茎は短く叢生する。基部の鞘は濃褐色、糸網を生じる。葉は硬く、幅4~8㎜、縁に上向きの小歯があり、著しくざらつく。小穂は質が柔らかく、先端に集まって4~7個つき、垂れ下がる。頂部の淡褐色の雄小穂は線形、短い雌花を先端につけることがある。側小穂は雌性で、淡緑色、長さ3~10㎝、先端に短い雄花をつけることも多い。雌小穂は幅3~4㎜、長さ3~10㎝。雌小穂の鱗片は淡緑色、倒卵形、凹頭~円頭、短い芒があり、果胞とほぼ同長、短い場合も多い。果胞は長さ2~2.5㎜、広卵形、無脈、短い嘴があり、口部は短い2歯、熟すと膨らみ緩く痩果を包む。痩果は長さ1~1.5㎜の卵円形、レンズ形、柱頭は2岐。花期は5~6月。

165 Carex kirganica Kom. ムシャスゲ 武者菅
  synonym Carex rugulosa Kük. var. graciliculmis (Ohwi) Kitag.
  synonym Carex graciliculmis Ohwi
 朝鮮、中国(黒竜江省、内モンゴル)、ロシア原産。原産。中国名は显脉薹草 xian mai tai cao。シラスゲもムシャスゲと呼ばれる。沼地、草原に生える。

166 Carex kobomugi Ohwi コウボウムギ 弘法麦
 北海道(西南部)、本州、四国、九州、朝鮮、中国、台湾、ロシア原産。中国名は筛草 shai cao。英名はAsiatic sand sedge, Japanese sedge。別名はフデクサ 筆草。海岸の砂地に生える。海岸の砂浜で普通に見られ、北アメリカに帰化している。
 多年草、高さ10~20㎝。全体に硬くて強い。根茎は太く、長く伸びる。稈は鈍い3稜形で、1綾だけがざらつき、硬い。葉は幅約5㎜の線形。稈の頂部に長さ約5㎝の卵形~長楕円形の太い筆のような花序をつける。雌雄異株まれに雌雄同株。雄小穂の方が雌小穂より細い。雌の鱗片は縁が淡黄色の緑色で、先が尖る。果胞は長さ約1㎝、先に長い嘴があり、縁に狭い翼があり、翼の縁に鋸歯がある。果胞の表面は硬く、果胞の内側には硬質発砲ウレタン樹脂のような層(海綿質)があり、中の痩果は小さく、ツルナの果実のように海流散布されることを推測させる。痩果は長さ約6㎜、柱基は宿存する。柱頭は3岐。2n=84。花期は4~7月。

167 Carex koyaensis J.Oda et Nagam. コウヤハリスゲ 高野針菅
 日本(本州の福井県以西)。山地の日向~半日陰の湿地、小川の縁に生える。
 多年草、匍匐根茎があり、長く這いマット状になる。基部の鞘は淡褐色。葉は花茎より短く、幅0.8~2㎜、鮮緑色で、柔らかく、曲がることが多い。ときに、外側の葉は横断面がV字形になる。花茎は鈍い3~4稜があり、平滑、針金状、高さ10~25㎝。花序が小さく、小穂は頂生し、雄雌性(androgynous)で1個だけつき、長さ4~6㎜×幅3~4㎜、雄花部はきわめて短く2~3個の雄花がつく。雄鱗片は先が鈍形、淡褐色。雌鱗片は長さ1.3~1.6㎜、卵形、先が鈍形。果胞は雌鱗片より長く、楕円形~卵形、長さ2~2.3㎜×幅1.1~1.3㎜、平滑、不明瞭な5~7脈があり、先は次第に狭まり短い嘴になり、口部は凹形、熟すと開出する。痩果は果胞にやや緩く包まれ、3稜があり、楕円形、長さ1.2~1.5mm。柱頭は3岐。果期は5~6月。

168 Carex krascheninnikovii Kom. ex V.I.Krecz. チシマミヤマクロスゲ 

  synonym Carex flavocuspis Franch. et Sav. subsp. krascheninnikovii (Kom. ex V.I.Krecz.) T.V.Egorova

 千島列島、ロシア原産。

169 Carex kujuzana Ohwi クジュウツリスゲ 久住吊菅
 日本(本州の東北地方、関東地方、中部地方(長野県)、九州)、朝鮮原産。別名はツリスゲ。山地の草原、明るい林内に生える。
 高さ50~60㎝になる。根茎は花後に横に這い伸び、まばらに稈を出す。稈は弱く、平滑。基部の鞘は葉身がなく、長く、濃赤紫色を帯びる。葉は線形、幅3~5㎜、柔らかく、緑白色、ややザラつく。頂小穂は雄性で長い花序柄がある。側小穂は雌性、2~3個つき、短円柱形、長さ1~1.5㎝、まばらに4~8個の果胞をつけ、長い花序柄があり、垂れ下がる。苞葉は葉状で長い鞘がある。雌鱗片はときに赤褐色を帯び、先は鋭形、果胞より少し短い。果胞は広倒卵形、長さ約6㎜、無毛、細い脈があり、嘴は長く、口部は斜めの切形。柱頭は3岐。花期は5~6月。

170 Carex lachenalii Schkuhr タカネヤガミスゲ 
 日本(北海道、本州の中部地方)、朝鮮、モンゴル、ロシア、ヨーロッパ、北アメリカ(カナダ、アラスカ、USA)、グリーンランド、アイスランド、ニュージーランド原産。 標高0~3700mの北半球の寒帯に広く分布し、高山の牧草地、泥炭地、苔むした小川の岸辺に生える。  ±緩く叢生し、小さな塊状になる。根茎は短い。稈は弱く直立し、ときにわずかに湾曲し、高さ10~40㎝、平滑かまたはそれに近い。葉鞘は外側が淡褐色、内側の帯は透明、わずかに赤みを帯び、頂部は凹む。葉舌は短い。葉身は緑色~暗緑色、平らで、長さ5~15㎝×幅1~2㎜、通常は稈より短い。花序は直立し、長さ1~2.5㎝×幅5~12㎜。下部の苞は鱗片状で、通常長さ2~8㎜、小穂より短い。小穂は2~5個、側小穂は雌雄性花序(gynecandrous)、接近し、または下部の1~2個がわずかに離れ、10~20個の果胞をもち、短長円形~ほぼ円形。雌鱗片は赤褐色、中央は淡褐色、縁は白色透明で、長円形、果胞とほぼ同長で、先は鈍形。果胞は斜上し、褐緑色、または熟すと褐黄色、わずかにまたは不明瞭に数本の脈があり、倒卵形、長さ2~3.5㎜×幅1~1.5㎜、基部は丸く先細り、膜質。嘴の外側の縫合線が明瞭で、全縁または少数の歯が縁にある。痩果は淡褐色~褐色、楕円形、長さ1.2~1.5㎜×幅約1㎜、鈍色からわずかに光沢がある。2n=64。果期は7~8月。

171 Carex laevissima Nakai ヒメミコシガヤ 姫神輿茅
 日本(本州の兵庫県、岡山県)、朝鮮、中国(黒竜江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル)、ロシア原産。中国名は假尖嘴薹草 jia jian zui tai cao。標高500~1800mの牧草地、林縁に生える。
 根茎は短く、硬い。 稈は叢生し、高さ25~50㎝、わずかにザラつき、基部は淡褐色の葉身のない鞘で覆われる。葉は稈より短く、葉身は線形、長さ約20㎝、幅約2㎜、平ら、縁はザラつき、先は長い尖鋭形。葉鞘の膜側は横しわがある。苞は鱗片状(glumelike)、卵形または長円形で、先には芒がある。穂状花序は、無柄の小穂を密につけ、円筒形、長さ3~4.5㎝×1~1.3㎝、上部に小穂が密につき、下部ではややまばら。小穂は通常、雄雌性(androgynous)、まれに一部が単性で、長さ5~8㎜。雌鱗片は褐色がかった鉄さび色で、卵形または卵状長円形、長さ約3㎜、緑色、中央に3本の脈があり、縁は淡色透明、先は尖鋭形。果胞は淡黄緑、鱗片より長く、狭卵形または披針状卵形、平凸形、長さ3~3.5㎜×幅約1㎜、膜質、鉄さび色ではない細点があり、両面に多数の脈があり、基部は丸く、縁は翼がなく、肥厚し、先は次第に狭まり長い嘴になり、縁は鋭く通常平滑で、ときにわずかにザラつき、口部には2歯がある。小堅果は褐色、ゆるく包まれ、楕円形、平凸形、長さ1~1.2㎜、光沢があり、基部には短い柄がある。花柱は褐色で、細く、基部は太くならない。柱頭は2岐。花期および果期は6~7月。

172 Carex laevivaginata (Kük.) Mack. セイタカカワズスゲ 
 カナダ(オンタリオ州)、USA東部原産。標高0~1500mの湿った牧草地、湿地、干潟の端、沼地、または沖積底地に生える。日本に帰化している。  基部に前年の鞘を持つ植物は宿存しない。稈は長さ80cm以下×幅2mm以下、全体にザラつく。葉:鞘はすべて葉身があり、前側は平滑で斑点がなく、脈はなく、先は黄色、厚く、切形、軟骨質、全縁。葉舌は鋭形、長さ5㎜まで、自由な拡大部は長さ0.5㎜まで。葉身は黄緑色、上面気孔(epistomic)、長さ60cm×幅6mm・以下、上面にパピラ(乳頭状突起)がある(25×)。花序は密な穂状花序、円筒形で細長く、6~15本の識別可能な分枝があり、長さ3~6㎝×幅1.5㎝。下部の節間は長さ10㎜まで。下部の苞は剛毛状で、明瞭。鱗片は透明。果胞は淡褐色、上部では赤褐色、赤褐色の脈があり、外側に10~12本の脈があり、内側に7本の脈があり、長さ6mm×幅2.6㎜・以下、基部は下部がわずかに膨れ、心形、柄は長さ0.2mmまで、嘴は長さ2.5㎜、縁には小鋸歯状がある。痩果は卵形、長さ2㎜×幅1.3 ㎜・まで、柄は長さ0.3㎜まで、宿存する花柱の基部は円筒形、長さ0.3㎜。2n=46。果期は5~6月。

173 Carex lanceolata Boott ヒカゲスゲ 日陰菅
 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、モンゴル、ロシア原産。中国名は大披针薹草 da pi zhen tai cao。和名は日陰だが、日の当たる乾いたところを好む。
 多年草、高さ10~40㎝。花茎は3稜形で、細く、上部に上向きの毛があり、葉より長く直立する。葉は幅1.5~2㎜。苞は鞘があり、葉身は芒状。小穂は茎の上部に互いに離れて3~6個つく。頂小穂は褐色、雄性で長さ1~1.5㎝。側小穂は雌性で長さ1~2㎝。雄小穂より最上部の雌小穂の方が高くなることもある。小穂の軸には上部は上向き、、下部は下向きの短毛が生え、軸の基部には苞に隠れた鞘(小苞)がある。雌小穂の鱗片は赤褐色を帯び、中肋は緑色で先端が芒状になる。果胞は長さ約3㎜、緑色、短毛が密生し、ほとんど無嘴、鱗片より小さく、先の方が太く、基部が海綿質の柄状になる。柱頭は3岐。果実は長さ2.5~2.8㎜、3稜形、濃褐色に熟す。花期は4~6月。2n=72。
173-1 Carex lanceolata Boott var. laxa Ohwi カラフトヒカゲスゲ 

174 Carex lasiocarpa Ehrh. コムジナスゲ 小狢菅
 日本、朝鮮、中国(黒竜江省、内モンゴル)、モンゴル、ロシア、カザフスタン、ヨーロッパ、北アメリカ(カナダ、アラスカ、USA、メキシコ)原産。毛薹草 mao tai cao。英名はSlender Sedge , woollyfruit sedge , wiregrass。沼地や草原の荒野に生える。
 根茎は匍匐性。 稈は緩く叢生し、高さ50~100㎝、鈍角の三角形で硬く、上部はわずかにザラつき、基部には赤褐色の葉身のない鞘があり、鞘は後に網状の繊維に裂ける。葉は稈より短いかほぼ同長で、葉身は幅1~2㎜、縁は内巻きし、わずかに扇だたみになり硬く、葉脈の間に横向きの隔壁節があり、かなり長い鞘がある。苞は葉状、線形、花序とほぼ同長かわずかに長く、下部の苞は長さ5㎜以下の鞘があり、上部の苞はほとんど鞘がない。小穂は3~5個つき、頂生の1~3個の小穂は雄性、接近し、線状円筒形、長さ2~3㎝、ほぼ無柄。残りの小穂は雌性で、離れてつき、卵形または長円状円筒形、長さ1.5~3㎝×幅5~6㎜、密に多数の花がつき、短い花序柄があり、上部の小穂は無柄。雌鱗片は側面が褐色または赤褐色、中央が緑色、長円状卵形または披針形、長さ4.5~5mm、膜質、3脈があり、先は尖鋭形で微突形。果胞は黄緑色、斜めに開出し、鱗片よりわずかに短いかまたはほぼ同長、卵形または長円状卵形、わずかに膨らんだ三角形、長さ4~5㎜、革質、密に褐灰色の綿毛があり、不明瞭な脈があり、基部は鈍く丸く、先は次第に狭まり、やや幅広の短い嘴になり、口部はわずかに反り返り、2歯がある。小堅果はかなりしっかりと包まれており、倒卵形、三角形、長さ約2㎜、基部には短い柄がある。花柱は短く、通常は湾曲しており、基部は太くない。柱頭は3岐。花期および果期は6~7月。2n=56。
174-1 Carex lasiocarpa var. americana Fernald
 北アメリカ(カナダ、アラスカ、USA、メキシコ)原産。英名はAmerican woollyfruit sedge。
 葉は中肋に沿って折りたたまれ、幅0.7~2.0(~2.2)mmになる。稈は鈍角で、通常は平滑。雌小穂の苞の基部にはしばしば耳があり、しばしば口部がV字型になる。中間の雄鱗片は狭い鋭形。
174-2 Carex lasiocarpa Ehrh. subsp. lasiocarpa コムジナスゲ 狭義
 中国(黒竜江省、内モンゴル)、モンゴル、ロシア、カザフスタン、ヨーロッパ、北アメリカ(カナダ、アラスカ、USA、メキシコ)原産。

174-3 Carex lasiocarpa Ehrh. subsp. occultans (Franch.) Hultén ムジナスゲ 狢菅

 日本(北海道、本州の中部地方以北)、朝鮮、千島列島、サハリン原産。高層湿原や湖沼の縁に生える
。  根茎はやや太い長い匍匐枝がある、花茎は高さ60~100㎝、3稜形で硬く、上部はザラつく。基部の鞘は葉身がなく、濃赤紫色で糸網を生じる。葉は幅1.5~3㎜、溝があり、硬く、濃緑色、花茎より高くなる。頂生の1~3(4)個の小穂は雄性、長さ2~5㎝。その下の1~3個の小穂は雌性、長さ2~4㎝×幅約5㎜、離れてつき、無柄。苞葉は葉身が小穂より長く、鞘は無い。雌鱗片は濃褐色~黒褐色、先は尖鋭形、果胞とほぼ同長。果胞は卵形、長さ4~5㎜、革質で木質化し、普通は褐色の毛があるが、ときにほぼ無毛になり、先は次第に狭まり短い嘴となり、口部は鋭2歯。柱頭は3岐。果期は5~8月。

175 Carex lasiolepis Franch. アズマスゲ 東菅
 日本固有種。北海道(日高・十勝)、本州、四国(徳島県)、九州(北部)。乾いた明るい樹林内や草地に生える。
 小型、叢生する。全体に開出するビロード状の軟毛が密生する。茎は高さ5~15㎝。葉は柔らかく、幅3~5㎜、茎より長い。基部の鞘は淡褐色、前年度の葉が残る。小穂は2~3個つき、頂小穂は雄性、長い柄がある。側小穂は雌性、長い柄があり、最下の小穂は根生する。雌鱗片は紫褐色~赤褐色で短い芒があり、短毛がある。果胞はやや開出し、少数つき、雌鱗片より長く、長さ4~4.5㎜、長円形、短毛があり、嘴は短い、基部は太い柄となる。柱頭は3岐。

176 Carex latisquamea Kom. ハタベスゲ 
 日本(北海道・本州(中部地方以北)・九州)、朝鮮、ロシア原産。湧水地などの湿性地や林縁の湿草地に生える。
 多年草、高さ30~80cm。根茎は短く、ゆるく叢生する。基部の鞘は暗赤褐色で、短軟毛がある。葉は柔らかく、幅3~6㎜、扁平で、縁などに開出する短軟毛がある。小穂は3~4個つき、頂小穂は雄性、長さ15~25㎜。側小穂は2~3個つき雌性で、長さ1~2cm、密に多数の花をつける。果胞は広卵形、長さ5~6.5㎜、雌鱗片よりも大きく、斜めに開出し、黄褐色で、脈があり、無毛、先は次第に狭まりやや長い嘴となり、口部は2歯。柱頭は3岐。花期は4~5月。

177 Carex laxa Wahlenb. イトナルコスゲ 糸鳴子菅
 日本(北海道、本州の中部地方以北)、朝鮮、中国( 黒竜江省、遼寧省、内モンゴル)、モンゴル、ロシア、ヨーロッパ、アラスカ、カナダ原産。中国名は稀花薹草 xi hua tai cao。沼地、湖畔や川辺の湿った場所に生える。
根茎は細長い匍匐性。 稈は高さ25~35 cm、細く、頂部がときにわずかに垂れ下がり、鈍角の3稜形、平滑で、帯褐色、基部は鞘に覆われる。葉は稈より短く、葉身は幅1~2㎜、平らで、ときに縦の溝があり、わずかに柔らかく、縁はザラつき、鞘がある。苞は葉状で、長い鞘と短い葉身を持つ。小穂は通常3個で、かなり離れてつく。頂生の小穂は雄性、線状披針形。側小穂は雌性、長円形、長さ1~2cm、花は少し密集し、花序柄は細く、垂れ下がる。雌鱗片は黄褐色、卵形または長円形、長さ約3㎜、膜質、緑色の1脈があり、先は鈍形で微突形。果胞は帯緑色、直立し、鱗片よりわずかに長く、長円形で、断面は不明瞭な三角形、長さ約3.5㎜、革質、無毛、密にパピラ(乳頭状突起)があり、脈はほとんどなく、基部は徐々に狭くなり楔形、短い柄があり、先は急に狭まり短い嘴になり、嘴は鉄さび褐色で、開口部は切形。小堅果は果胞にかなりきつく包まれ、倒卵形、三角形。 花柱は果胞から出ており、基部は太くならない。柱頭は3岐。花果期は6~8月。

178 Carex leavenworthii Dewey リーベンボルシースゲ 
 北アメリカ東部(カナダのオンタリオ州、USA)原産。英名はLeavenworth's sedge。標高100~300mの乾燥した草原、道端、開けた森林、林縁、芝生に生える。日本に帰化している。
 目立った根茎のない植物。稈は高さ10~80cm、基部の幅は1~2.4㎜、上部の幅は0.5~1㎜。 葉: 鞘はしっかりつき、緑色、またはときに緑色と白色のまだら模様があり、前面は透明。葉舌は長さ2㎜まで、通常は幅より長い。最も広い葉身は幅1.1~3(~4)mm。 花序は密な頭状花序を形成し、3~8個の小穂があり、長さ0.7~2cm×幅4.5~9㎜。下部の苞は長さ2cmまで。小穂は果胞が6~10個、斜上または開出してつく。雌鱗片は透明、緑色の中脈があり、卵形、長さ1.5~2.5㎜×幅0.9~1.2㎜、果胞の長さの1/2以下、先は鋭形~尖頭形。葯は長さ0.6~1.7㎜。果胞は淡緑色、外側に脈がないか、または弱い脈があり、長さ2.5~3.5㎜×幅1.5~2.1㎜、卵形、体長の0.25~0.4で最も幅が広く、縁は平滑または上部に小鋸歯があり、嘴は長さ0.3~0.8㎜、先端の歯は長さ0.1~0.3㎜。 痩果は円形、長さ1~1.5㎜×幅1~1.5㎜。果期は晩春。

179 Carex lehmannii Drejer センジョウスゲ 仙丈菅
 日本(南アルプスの仙丈岳、長野県伊那市長谷)、朝鮮、中国(甘粛省、河南省、湖北省、青海省、陝西省、山西省、四川省、西蔵、雲南省)、ネパール原産。中国名は膨囊薹草 peng nang tai cao。標高2800~4100mの山の斜面、草原、森林、川辺に生える。
 根茎は匍匐性。 稈は高さ15~70㎝、細長い三角形で、基部は紫褐色の鞘で覆われる。葉は稈とほぼ同長、葉身は線形、幅2~5mm、平らで柔らかい。苞葉は葉状で花序より長い。小穂は3~5個つく。頂生小穂は雌雄性花序(gynaecandrous)、長円形、長さ5~8㎜。側小穂は雌性、卵形または長円形、長さ5~9㎜。 上部の小穂は短い花序柄があるかまたは無柄で、最下の低い花序柄は長さ1~4㎝。雌鱗片は暗紫色または暗褐色、広卵形、長さ約1.2㎜、1脈があり、先は鈍形またはほぼ鋭形。果胞は黄緑色で、鱗片より長く、倒卵形または倒卵状楕円形、断面は三角形、長さ2~2.2㎜、膨らみ、脈があり、先は急に狭まり短い嘴になり、口部は凹形または切形。小堅果は倒卵形、断面は三角形、長さ1.2~1.7㎜。花柱は短い。柱頭は3岐。花期と果期は7~8月。

180 Carex leiorhyncha C.A.Mey. ヤマミコシガヤ 山神輿茅
 朝鮮、中国(河北省、黒竜江省、山西省)、ロシア原産。中国名は尖嘴薹草 jian zui tai cao。標高400~1000mの草が生い茂った道端や山の登山道脇に生える。

181 Carex lenta D.Don. ナキリスゲ 菜切菅
  synonym Carex brunnea Thunb. var. nakiri Ohwi
 本州(茨城県、富山県以西)、四国、九州、朝鮮、インド、ネパール、パキスタン、スリランカ、ベトナム、フィリピン、インドネシア、マレーシア、ニューギニア、オーストラリア原産。平地、山地の林内に生える。和名の由来は葉が硬く、菜が切れそうなことから。秋に普通に見られるスゲ。Flora of China ではコゴメスゲ Carex brunnea に含めている。
 多年草、高さ40~80㎝。根茎は短く、叢生する。葉は幅2~3㎜の線形、暗緑色で硬く、葉の縁がざらつく。スゲ属のほとんどは春に開花するが、秋に開花する。花序には小穂が約10個つき、茎が細く、垂れ下がる。小穂は長さ1~3㎝、幅3~4㎜、雄雌性(androgynous)で、小穂の先に短い雄花がつく。果胞は長さ3~3.5㎜の広卵形、縦脈があり、開出毛が多い。果実は卵形、レンズ形。柱頭は2岐。果期は8~10月。
 Kewscienceでは変種を認めず、センダイスゲを別種としている。
181-1 Carex lenta D.Don var. lenta ナキリスゲ 狭義

182 Carex leporina L. カレックス・レポリナ
 中国(新疆)、ロシア、ヨーロッパ原産。中国名は卵形薹草 luan xing tai cao。標高約1400mの湖畔に生える。
 根茎は見られない。稈は細く、高さ50~80㎝、太さ0.8~1㎜、三角形、下部は平滑、上部はザラつき、基部近くに葉がある。葉は3~4枚、平ら、幅約1.5㎜、稈よりもかなり短く、縁はザラつく。苞は苞頴状、最下の苞には長い芒がある。花序は長さ2~2.5㎝×幅0.8~1.3㎝。小穂は4~7個、雌雄性花序(gynaecandrous)、褐色、卵形~長円形、長さ5~10㎜×幅3~6㎜、連続し、無柄。 雌鱗片は黄褐色[または赤味がかった]褐色、卵形、約・長さ3㎜×幅1.5㎜、1脈があり、淡黄色の中肋と広い透明な縁を持ち、先は鋭形。果胞は薄褐色、卵形、平凸形、長さ3.5~4㎜×幅1~1.5㎜、平滑、外側に4~6本の脈があり、肩から頂部にかけてかなり広い翼があり、縁は上部近くがザラつき、下部は海綿状で厚くなり、嘴は長さ約1㎜、外側が深く2裂する。小堅果は褐色、倒卵状長円形、扁平な両凸形、約・長さ2㎜×幅1㎜、平滑、わずかに光沢があり、短い嘴があり、柄がある。柱頭は2岐。果期は8月。2n=66, 74。

183 Carex leucochlora Bunge アオスゲ 青菅 広義

  synonym Carex breviculmis var. leucochlora (Bunge) Makino

  synonym Carex breviculmis auct. non R.Br.
 日本(北海道、本州、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国(黒竜江省、内モンゴル、遼寧省、吉林省)、台湾、モンゴル、ロシア、アフガニスタン、パキスタン、インド原産。中国名は青绿薹草 qing lü tai cao。英名はshort-stem sedge。6変種に分類されている。

183-1 Carex leucochlora Bunge var. leucochlora アオスゲ 青菅 

  synonym Carex breviculmis auct. non R.Br.

  synonym Carex breviculmis R.Br. var. leucochlora (Bunge) Makino

 日本(北海道、本州、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国(黒竜江省、内モンゴル、遼寧省、吉林省)、台湾、モンゴル、ロシア、アフガニスタン、パキスタン、インド原産。中国名は青绿薹草 qing lü tai cao 。英名はshort-stem sedge。別名はアキアオスゲ、イワアオスゲ。日当たりの良い草地や林縁に生える。
 多年草、茎は高さ15~25(~50)cm。根茎は短く、叢生し、ストロンは出さない。全体が緑色、硬く、基部の葉鞘は淡褐色、やや光沢があり、古くなると繊維状に分解する。葉は花茎とほぼ同長、幅2~3㎜。苞は花序と同じ高さかまたはやや高く、ほとんど鞘は無い。小穂は3~4個つく。頂小穂は1個、雄性、こん棒形、長さ1~2cm、多数の花をつける。雌性の側小穂は2~3個で、互いに接近してつき、多数花を密生し、長さl~2㎝×幅3~4㎜。根際に雌小穂をつけることはない。雌鱗片は長円形、長円状倒卵形、または卵形、長さ2~2.5㎜、中央は薄緑色、両側部は緑白色または黄緑色、膜質、先は凹形~鋭形、長い芒があり、3本の脈がある。果胞は倒卵状楕円形または楕円状披針形、長さ2~3㎜、鈍い3稜があり、薄緑色または緑白色で、まばら~上部に密に毛があり、4~5本の脈があり、上部は鋭く尖り、短い嘴があり、口部はわずかに凹形。小堅果は果胞に密着し、長円状披針形~倒卵形、長さ約1.7㎜、3肋があり、頂部に柱基の宿存した環状の付属体があり、柱基は拡大した円錐形、柱頭は3岐。果期は4~5月。
 Carex breviculmis R.Br.は中国、インド、ブータン、ネパール、ミャンマー、ベトナム、インドネシア、フィリピン、ニューギニア、オーストラリア、ニュージーランド原産。Flora of ChinaではCarex leucochloraを含めていたが、現在は別種に分類されている。
 根茎は短い。 シュートが密に叢生する。稈は直立し、円柱形~断面が三角形、平滑またはザラつき、長さ3~10(まれに20まで)cm、直径約0.7mm。 葉は稈を超えて長さ35cmまで、幅2~3mm。鞘は黄褐色。 葉舌は鈍形~切形。 花序は狭く、直立しており、長さ約4cm、節に2~5個の小穂が単生する。最下の苞は花序を越える。小穂は無柄で隣接してつき、成熟すると直立し、長さは1.2~1.8cm。 最上部の小穂は雄性。下部の小穂は雌性。鱗片は先が鈍形~尖鋭形、しばしば微突形(微突は長さ2㎜以下)、帯白色~淡褐色、緑色の中肋がある。雌鱗片は長さ2.5~4.5mm。果胞は長さ2~3.3㎜、直径1.0~1.5㎜、楕円形、多数の脈が目立ち、剛毛があり、淡緑色~黄褐色、嘴は長さ約0.5㎜、口部にノッチがある。花柱は3岐。堅果は倒卵形~楕円形、断面は三角形、淡黄色、拡大した円盤状の結合部を持ち、花柱基部が宿存する。花期は春~夏(Flora of Victoria)。

183-2 Carex leucochlora Bunge var. aphanandra (Franch. et Sav.) T.Koyama ニイタカスゲ 新高菅

  synonym Carex aphanandra Franch. & Sav.
  synonym Carex morrisonicola Hayata

  synonym Carex breviculmis R.Br. f. aphanandra (Franch. et Sav.) Kük.

 日本(本州中部の主に太平側)、朝鮮、中国(吉林省)、台湾原産。
 多年草。やや硬く、高さ4~10㎝。叢生して比較的大きな株になる。斜上する短いが、ストロンは出さない。葉は大きさの割に幅が広く、通常は幅2~3㎜、ときに4㎜になり、直立せず多少弓なりに地面に広がる。花茎も果胞が熟す頃には弓なりにしなる。雄小穂は小さい。雌小穂は2~3個つき、1~2個は雄小穂に接し、最下の1個は離れて根際に生じ、長柄がある。雌小穂は花がまばらに1個以下つく。雄花の鱗片は芒がある。雌花の鱗片は芒が短い。果胞はイトアオスゲやメアオスゲとほぼ同じ。

183-3 Carex leucochlora Bunge var. candolleana (H.Lév. et Vaniot) Katsuy. メアオスゲ 雌青菅

  synonym Carex candolleana H.Lév. & Vaniot
  synonym Carex geihokuensis K.Okamoto

  synonym Carex breviculmis R.Br. f. longearistata Kük.

  synonym Carex breviculmis R.Br. f. aphanandra sensu Kük.

 日本(本州、四国、九州)、朝鮮に分布。疎林や草地、林縁に生える。
 多年草。茎は叢生し、根茎が分岐すると大株となるが、ストロンは出さない。全体に小型で細く柔らかく、高さ5~20㎝。葉は直立し花茎よりもやや高く、通常、糸状、幅1~2㎜、稀に幅4㎜になる。基部の鞘は光沢がなく、淡褐色~褐色、繊維状に分解する。頂部の雄小穂は線形で長さ5~15㎜。雌小穂は2~3個つき、上部の1~2個は雄小穂に接してつき、最下の1個は根際に生じる。苞は花序と同じ高さ、短い明瞭な鞘がある。雌小穂は花を数個つけ、長さ1㎝以下。雌鱗片は先が鈍形、長い芒がある。果胞は長さ2.5~3㎜、脈は不明瞭、まばらに毛がある。果期は4~5月。

183-4 Carex leucochlora Bunge var. gracillima (Akiyama) Katsuy. イトアオスゲ 糸青菅

  synonym Carex breviculmis R.Br. var. puberula (Boott) T.Koyama

  synonym Carex breviculmis R.Br. f. filiculmis seusu Kük.

 日本(北海道、本州)、朝鮮、ロシア原産。別名はコアオスゲ、ヒメイトアオスゲ。低山地の疎林や草地、林縁に生える。
 棄は直立し、幅が狭い。普通、根際に雌小穂はつけない。雌花の鱗片の芒は短い。小穂は花が比較的少い。
 多年草、叢生し、高さ10~30㎝、稀に高さ50cmになる。根茎は短く、ストロンは出さない。全体に細く軟らかく、葉は直立し、花茎よりよりもやや短く、幅1~2㎜。基部の鞘は褐色を帯びるがアオスゲよりもやや色が淡色。雄小穂は線形で、ときにきわめて短く、長さ5~20㎜、生育の良いものでも幅1.5㎜以下。雌小穂は2~3個、離れてつき、最下の小穂は長さ5~20㎜、普通,根際に雌小穂はつけないが、稀につける。花は少なく10個まで。苞葉は花茎よりも短く、最下の苞葉には短いが明らかな鞘がある。雌花の鱗片の芒は短い。果胞は長さ2.5~3㎜、脈は不明瞭、まばらに毛があり、口部は凹形。果実は橙褐色、頂部に柱基の宿存した付属体がある。果期は4~5月。

183-5 Carex leucochlora Bunge var. horikawae (K.Okamoto) Katsuy ミセンアオスゲ 

  synonym Carex leucochlora Bunge var. setouchiensis K.Okamoto

 日本(本州)に分布。別名はセトウチコアオスゲ。乾燥した林内や崖に生える。
 高さ15~40㎝。叢生し、ス卜ロンは出さない。全体にきわめて細い。基部の鞘は比較的淡色。苞は葉身が刺状かまたはほとんど無く、短いが顕著な鞘がある。葉は花茎よりも短く、幅1~2㎜。雄性の頂小穂は顕著な柄があり、線形、長さ5~10㎜、しばしば赤褐色を帯びる。雌性の側小穂は1~3個つき、互いに離れてつく。小穂は花が少なく、数個つく。雌花の鱗片の芒は短く、ときにやや褐色を帯びる。果胞は毛のあるものが多い。

183-6 Carex leucochlora var. meridiana Akiyam イソアオスゲ 磯青菅

  synonym Carex meridiana (Akiyama) Akiyama
  synonym Carex tosaensis Akiyama [YList]
 本州(福井県以西)、九州、沖縄に分布。海岸の崖地や岩上に生える。
 多年草、高さ5~20㎝。しばしば顕著な短くて細い半地上性の根茎(ストロン)を出す。基部の鞘は褐色でやや光沢がある。葉や茎はアオスゲのようにザラつかない。葉はほぼ直立し、花茎よりも高く、幅1.5~4㎜。雄小穂は細く、線形、長さ5~10㎜。雌小穂は2~4個で,下部の小穂は少し離れ、しばしば、柄が根生し根際につく。苞は長く、花茎よりも著しく高い。雌小穂は花が少なく、10個以下。雌花の鱗片の芒は短い。果胞は長さ2.5~3㎜、熟すと面が膨れて丸くなり、脈はやや太いが、数が少なく、毛もまばら。果実の頂部には柱基が残る。果期は4~5月。

184 Carex ligulata Nees サツマスゲ 薩摩菅

  synonym Carex ligulata Nees var. austrokoreensis (Ohwi) Ohwi ウスイロサツマスゲ

 日本(本州の関東地方以西、四国、九州、対馬、トカラ列島)、朝鮮、中国(福建省、貴州省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、陝西省、山西省、四川省、雲南省、浙江省)、台湾、インド、スリランカ、ネパール原産。中国名は舌叶薹草 she ye tai cao。標高600~2000mの山の斜面の森林、草地、谷の側溝、川辺の湿った場所に生える。
 根茎は太くて短く、木質で、匍匐茎はなく、かなり多くの小根がある。稈は緩く叢生し、高さ35~70㎝、3稜形、かなり丈夫で、上部の角(かど)がザラつき、基部は赤褐色の葉身のない鞘で覆われる。上部の葉は稈より長く、下部の葉は稈より短く、葉身は幅6~12㎜、ときに幅15㎜までになり、平らで、ときに縁が内巻し、わずかに柔らかく、下面の葉脈間にはっきりとした横隔節がある。鞘は鉄さび色、葉舌があり、長さ6㎝以下。苞は葉状で花序より長く、下部の苞は長い鞘があり、上部の苞は短い鞘があるかまたは鞘が無い。小穂は6~8個、下部では離れ、上部では近接し、頂生の小穂は雄性、線状円筒形、長さ1~2㎝、短い花序柄があるかまたはほぼ無柄。側小穂は雌性、円筒形または長円状円筒形、長さ2.5~4㎝×幅5~6㎜、密に多数の花がつき、花序柄があり、上部の花序柄はかなり短い。雌鱗片は黄褐色、短い鉄さび色の条線があり、卵形または広卵形、長さ約3㎜、膜質、無毛、緑色の1肋があり、先は鋭形、通常は微突形。果胞は緑褐色、短い鉄さび色の条線があり、直立し、鱗片より長く、倒卵形、断面は鈍三角形、長さ4~5㎜、密に白色の小剛毛があり、側部に2本の脈があり、基部は楔形、先は急に狭まり、わずかに短い嘴になり、口部には短い2歯がある。小堅果は褐色、しっかりと包まれ、楕円形、断面は三角形、長さ2.5~3㎜、平滑。花柱は短く、基部はわずかに太くなる。柱頭は3岐。花期と果期は5~7月。

185 Carex limosa L. ヤチスゲ 谷地菅
 日本(北海道、本州の近畿地方以北)、朝鮮、中国、モンゴル、ロシア、カザフスタン、トルコ、ヨーロッパ、北アメリカ(カナダ、アラスカ、USA)、ベネズエラ原産。中国名は湿生薹草 shi sheng tai cao。英名は bog-sedge, mud sedge, shore sedge。沼地、水辺の草原に生える。
 根茎は長い。 稈は高さ20~45㎝、3稜形、かなり細く、上部はザラつき、基部は赤褐色の鞘に覆われ、ときに鞘は繊維状に崩壊する。葉は稈より短く、葉身は幅1.5~2.5㎜、わずかに扇だたみになり、中央に溝があり、縁はザラつき、鞘がある。苞は葉状で、短い葉身があり、鞘は短い。小穂は2~3個、離れてつく。頂生の小穂は雄性、直立し、線形、長さ2~2.5㎝、花序柄がある。側小穂は雌性、ときに先に少数の雄花をつけ、長円形または卵形、長さ1~2cm、多数の花が密につき、花序柄は細く、しばしば垂れ下がる。雌鱗片は黄褐色、卵形または披針状卵形、長さ4~6㎜、中央は緑色、1~3本の脈があり、先は硬い微突形。果胞は直立し、鱗片よりわずかに短く、卵形または楕円形で、断面は扁平な三角形、長さ3.5~4㎜、革質、無毛、密に細点があり、数本の脈があり、基部は丸く、短い柄があり、先は急に狭まり、非常に短い嘴になり、口部は切頭または凹形。小堅果は果胞にわずかに緩く包まれ、楕円形、断面は扁平な三角形、長さ約2㎜。花柱は果胞につき、宿存性、基部は太くない。柱頭は3岐。花期と果期は5~7月。

186 Carex lithophila Turcz. アサマスゲ 浅間菅
  synonym Carex distichoidea H.Lév. & Vaniot
 日本(本州の関東地方、長野県)、朝鮮、中国(甘粛省、河北省、黒竜江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル自治区、陝西省、山東省、山西省、新疆ウイグル自治区)、モンゴル、ロシア原産。中国名は二柱薹草 er zhu tai cao。標高100~700(~1700)mの沼地、川岸、牧草地に生える。
 根茎は長く這い、ほぼ円筒形。稈は高さ10~60cm、断面は鋭角の三角形で、上部はザラつき、基部は葉身のない鞘で覆われる。葉は稈より短く、葉身は線形、幅2~4㎜、平ら、縁はザラつき、先は尖鋭形。苞は鱗片状。穂状花序は円筒形またはほぼ円錐形、長さ2~5.5cm×幅0.7~1.5cm、通常は下部で途切れる。小穂は10~20個。頂部と下部の小穂は雌性、中間と上部の小穂は雄性または雄雌性(androgynous)、または完全に雌生、卵形、長さ5~9㎜×幅2~3㎜。雌小穂は広卵形、長さ7~10㎜×幅5~7㎜。雌鱗片は淡い鉄さび褐色、卵状披針形または長円形、長さ約3.5㎜、縁は白色透明、先は鋭形。果胞はわら色、鱗片より長く、広卵形、平凸形、長さ3.5~4㎜×幅1.8~2㎜、薄い膜質、海綿状、細く、両面に数本の脈があり、基部は丸く、上部の縁には小鋸歯のある翼があり、先は急に狭まり嘴になり、口部には2歯がある。小堅果は黄褐色、緩く包まれ、楕円形または長円形、断面は平凸形、長さ1.5~1.8㎜、基部には短い柄がある。花柱の基部はわずかに太くなる。柱頭は2岐。花期と果期は5~6月。

187 Carex liui T.Koyama et T.I.Chuang カレックス・リウイ
 中国(浙江省)、台湾原産。中国名は台中薹草 tai zhong tai cao。英名はLiu's Sedge。標高約2900mの山の斜面にある森林に生える。

188 Carex livida (Wahlenb.) Willd. ムセンスゲ 無線菅
 日本(北海道)、朝鮮、ロシア、ヨーロッパ北部、北アメリカ(カナダ、アラスカ、USA原産)、南アメリカ(コロンビア、エクアドル、ペルー)原産。標高0~1100mの北方の沼地、石灰質の浮遊マットに生える。  群落を形性し、長い根茎をもつ。稈は高さ15~55㎝、上部は平滑~ザラつく。葉:下部の鞘は淡褐色~暗褐色、たまに赤みを帯び、太さ4.5~8(~10)㎜。葉舌は長さ1.2~3.9㎜、通常は幅の 0.6~1.5倍の長さ。 葉身は強く粉白色を帯び、溝があり、長さ4.5~40㎝×幅1.5~3.5(~6.5)㎜、革質。 花序は長さ2.2~8.59(~12)㎝、下部の苞の長さの0.6~1.8倍。下部の苞は長さ0.8~11㎝、鞘は長さ0~1.2㎝、葉身は長さ0.8~10㎝。 雌小穂は密に花がつき、卵形~短円筒形、長さ0.7~2.5cm×幅4~5.5㎜。 側小穂は堅い花序柄の上に直立または斜上する。雌鱗片は淡褐色~暗紫褐色、緑色の広い中央部と透明な狭い縁を持ち、鈍形~鋭形。果胞は小穂で強く斜上し、粉白色、紡錘形、長さ3~4.8(~5)㎜×幅(1 ~)1.3~2㎜、パピラが多く、嘴はないかまたはかすかで、直立し、真っすぐ。痩果は淡褐色~暗褐色、長さ2.1~2.5㎜×幅1.2~1.8㎜。2n=32。果期は晩春~初夏。

189 Carex loliacea L. アカンスゲ 阿寒菅
 日本(北海道、本州の中部地方以北)、朝鮮、ロシア、カザフスタン、ヨーロッパ北部、北アメリカ(カナダ、アラスカ)原産。英名はryegrass sedge。標高 0~1000mの沼地、湿った森林、苔むした川岸、低地に生える。
 緩く叢生し、根茎は長くて細い。稈は直立し、弱く、高さ15~40cm。 葉: 鞘は外側が淡褐色、内側の帯はしっかりして、透明、先は切形。葉舌は短く、幅も長さも同じ。葉身は淡緑色、平ら、長さ5~15cm×幅1~2mm。 花序は直立し、長さ1~2.5cm×幅4~6㎜。下部の苞は鱗片状で、通常 長さ2~8㎜、小穂より短い。小穂は2~5個つき、雌雄性花序(gynecandrous)、下部では離れ、下部の2個の小穂は少なくとも1㎝離れ、上部の小穂は近接し、3~8個の果胞をもち、ほぼ丸い。雌鱗片は白色透明、緑色の中肋があり、卵形で、果胞より明らかに短く、先は鈍形。果胞は淡緑色または古くなると淡褐色、多数の脈が目立ち、倒卵状楕円形、長さ2.5~3.5㎜×幅1.25~1.5㎜、ほぼ革質、嘴はない。痩果は赤褐色、長円形、長さ1.75㎜×幅1㎜、光沢がある。2n=54。果期は6~7月。

190 Carex lonchophora Ohwi オオアオスゲ 大青菅

  synonym Carex leucochlora var. lonchophora (Ohwi) Akiyama

  synonym Carex breviculmis R.Br. var. lonchophora (Ohwi) T.Koyama

 日本固有種。本州の関東地方以西に分布する。疎林の林床、林縁に生える。
 多年草、高さ30~60cm。密に叢生し、匍匐枝は無い。茎は直立し、断面は三角形、基部の鞘は淡褐色、脈が隆起して太く、光沢はない。葉は茎と同長以下、幅の広い葉は幅4~6㎜に達する。頂小穂は1個、雄性、線形、長さ1~3㎝、稀に雌花部が上部につく。側小穂は雌性、長さ1~3㎝の円柱形、2~5個つき、上部のものは近接し、下部のものは離れてつく。苞は花序より長く、苞の基部は明瞭な鞘がある。鞘は上部のものは長さ0.4~0.8㎝程度、下部のものは長さ1~2㎝、長いものは3㎝近くになる。雌鱗片の芒は長い。果胞は嘴が長く、長さ3~3.5㎜、毛が多く、太くて明瞭な脈があり、口部は2歯。果苞は熟しても緑色、緑色のうちに落果する。果期は4~5月。

191 Carex longii Mack. アサハタヤガミスゲ 麻機八神菅
 北アメリカ、中央アメリカ、西インド諸島、南アメリカ原産。標高0~800mの湿った砂質の土壌、野原、藪、溝、池の端、開けた森、たまに沼地に生える。ハワイ、ニュージーランド、日本などに帰化している。
 密に叢生する。稈は高さ30~120(~140)㎝。栄養稈は頂部に少数の葉が束生する。葉:鞘は、内側に襟近くまで明瞭な緑色の脈があり、襟に狭い透明な帯または鋭いY字形の透明な部分があり、内側は堅く、頂部はU字形で、細かいパピラがある。上部の葉舌は長さ1.8~4.4(~6)㎜。稔性の各稈(花茎)に葉身は2~4(~6)枚つき、長さ8~30㎝×幅2~4.5㎜。花序は稈頂部に±直立し、通常開き、緑色~褐色、長さ1~4.5(~6)cm×幅5~14㎜、小穂が3~10個つき、下部の節間は長さ1~14㎜、2番目の節間は長さ3~8㎜。下部の苞は鱗片状で、しばしば先端に剛毛がある。小穂は雌雄性(gynecandrous)、楕円形~卵形、長さ6~13(~17)㎜×幅3.8~7㎜、基部は円形または鈍形、先は鈍形~広鋭形。雄花部分は小さく、長さ2mm以下。雌鱗片は白色透明で、古くなると淡い銀褐色になり、中央は淡緑色または緑色、広披針形、長さ2.2~3.7mm、果胞より短くて狭く、先は鈍形。果胞は伏して斜上し(appressed-ascending)、緑色~くすんだ褐色、各面に明瞭な5本~多数の脈があり、倒卵形、痩果の上を除いて平ら、長さ3~4.6㎜×幅1.6~2.6(~2.8)㎜、厚さ0.4~0.5㎜、縁は平らで、翼を含んで幅0.5~0.8㎜、嘴の先端は緑色~褐色、平ら、広三角形、縁毛のある小鋸歯があり、外側の縫合線は明瞭な白色透明の縁をもつ。嘴の先端から痩果までの距離は1.4~2.2㎜。痩果は長円形、長さ1.3~1.7㎜×幅0.7~1㎜、厚さ0.4~0.5㎜、尖った先端部は長さ0.4mm未満。花柱は真っすぐ。2n=58, 62。果期は6~7月。

192 Carex longerostrata C.A.Mey. ヒエスゲ 稗菅
  synonym Carex longirostrata C.A.Mey. ヒエスゲ 
 日本、朝鮮、中国(河北省、黒竜江省、吉林省、遼寧省、陝西省、山西省、浙江省)、ロシア原産。长嘴薹草 chang zui tai cao。標高400~2500mの草の斜面、山の雑木林、水辺、森林、草地、崖の上に生える。
 根茎は短くまたは長く、這い、斜上し、木質。 稈は房状で、細長く、高さ15~50㎝、断面は扁平な三角形、上部はわずかにザラつき、若い時には基部が薄緑色の鞘で覆われ、やがて暗褐色になり、繊維状に崩壊する。苞は短い葉身があり、花序より短く、鞘がある。 小穂は通常2個、まれに3個つく。頂生の小穂は雄性、帯褐色、棍棒形、長さ1~2.5㎝、密に花がつく。側小穂は雌性、卵形または長円形、長さ1~1.7㎝、花が6~10個つき、花序柄は鞘からほとんど出ない。雌鱗片は薄い鉄さび色で、狭楕円形または披針形、長さ約6.5㎜、緑色の3脈のある肋は、先が切形または鈍形でザラつく長い芒が突き出るか、または先に芒がない。果胞は緑色または淡褐色、鱗片よりわずかに長く、斜めに開出し、倒卵形、断面が鈍三角形、長さ7~8㎜(嘴を含む)、膜質、まばら粗毛があるかまたは無毛、多数の脈があり、基部は狭くなり、先は急に狭まりザラつく長い嘴になり、口部は深く2裂し、歯が長い。小堅果はきつく包まれ、倒卵形、鈍三角形、長さ約3㎜、面は基部が凹状で、基部は短い柄があり、花柱は宿存して基部がわずかに太くなり、湾曲または直立する。柱頭は3岐。花期と果期は4~6月。
192-1 Carex longerostrata subsp. longerostrata
  synonym Carex bispicata Hook. & Arn.
  synonym Carex camschatcense Kunth
  synonym Carex guniuensis S.W.Su
  synonym Carex longerostrata var. recurvifolia Kük.
  synonym Carex longirostrata C.A.Mey. var. longirostrata
 日本、朝鮮、中国(河北省、黒竜江省、吉林省、遼寧省、陝西省、山西省)、ロシア原産。標高1200~2500の草地の斜面、山地の雑木林、水辺、森林に生える。
 根茎は短く、斜め。雌鱗片は芒がある。果胞はまばらに粗毛がある。花柱の基部は湾曲する。

192-2 Carex longirostrata C.A.Mey. var. tenuistachya (Nakai) Yonek.

  synonym Carex tenuistachya Nakai チュウゼンジスゲ 
  synonym Carex fuscofibrosa Ohwi
  synonym Carex longerostrata var. pallida (Kitag.) Ohwi
 中国(吉林省、遼寧省)に分布。中国名は细穗薹草 xi sui tai cao。森林、草原に生える。
 根茎が長く這う。雌鱗片は芒がある。果胞にはまばらに粗毛がある。花柱の基部は湾曲する。

192-3 Carex longerostrata subsp. tsinlingensis (K.T.Fu) X.F.Jin 

  synonym Carex longerostrata var. tsinlingensis K.T.Fu
  synonym Carex wushanensis S.Yun Liang
 中国(甘粛省)に分布。中国名は武山薹草 wu shan tai cao。標高約1600mの坂道に生える。
 根茎は長く、斜めに斜上し、木質。稈は高さ28~40㎝、細く、基部は繊維に分解する茶色の鞘で覆われる。 葉は稈より短く、葉身は線形、幅1.5~3㎜、平ら。苞には短い葉身があり、長い鞘がある。小穂は2~3個、離れてつく。頂生の小穂は雄性、円筒形、長さ2~3㎝、花序柄は長さ6~10㎝。 側小穂は雌性、ときに頂部に数個の雄花を付け、長円形、長さ1.5~1.8㎝、雌花が2~4個つき、花序柄は長さ1.5~2.5cm。雌鱗片は淡色、長円形、緑色の3脈のある肋が突き出し、微突になる。果胞は褐緑色、鱗片より長く、斜めに開出し、長円形、断面が三角形、長さ約9㎜、膜質、毛があり、多数の脈があり、基部は楔形、先は急に狭まり長い嘴になり、口部には2歯がある。小堅果はしっかりと包まれ、長円形、長さ約4㎜、無柄、先の嘴は約・長さ4㎜×幅1.3㎜。花柱の基部は太くなる。柱頭は3岐。果期は6月。

193 Carex lyngbyei Hornem. ヤラメスゲ 

  synonym Carex lyngbyei Hornem. var. prionocarpa (Franch.) Kük. カラフトヤラメスゲ 

 日本(北海道、本州の東北地方、北陸地方)、朝鮮、ロシア、北アメリカ(アラスカ、カナダ、USA)、グリーンランド、アイスランド原産。標高0~10mの海岸の塩性湿地、汽水湿地に生える。
 叢生しない。稈は角(かど)が鈍いまたは鋭く、高さ25~130㎝、無毛。葉:基部の鞘は赤褐色。下部の葉鞘は無毛、前面には斑点と脈がなく、先端はU字形。 葉身は下面気孔(hypostomic)、幅3~8㎜、下面にはパピラがある。下部の苞は花序より長く、幅3~6㎜。小穂は通常垂れ下がる。雄小穂は2~3個、雌小穂は2~4個つく。下部の雌小穂は長さ1.8~5㎝×幅5~7㎜、基部は鈍形。雌鱗片は赤褐色~暗紫褐色、果胞より長く、先は尖鋭形、芒はない。果胞は散開し、黄褐色で先の1/2に淡褐色の斑点があり、各面に5~7脈があり、やや膨らみ、痩果を緩く包み、長さ2.5~3.5㎜×幅1.6~2.5㎜、革質、鈍色、基部には長さ0.5㎜までの柄があり、先は鈍形または丸く、パピラがあり、嘴は太く、長さ0.1~0.3㎜。痩果は片側または両側の縁がくびれ、先は丸い。花柱の基部は真っすぐ。2n=68, 70, 72。果期は7~8月。

194 Carex maackii Maxim. ヤガミスゲ 八神菅
 北海道、本州、四国、九州、中国(安徽省、黒竜江省、河南省、江蘇省、吉林省、遼寧省、浙江省)、ロシア原産。中国名は卵果薹草 luan guo tai cao。河川敷や小川などの湿地や湿った草地に生える。
 多年草。根茎は短く、硬い。稈は叢生し、高さ20~70㎝、直立し、断面は鋭角の三角形、上部はザラつき、基部は葉身のない褐色の鞘で覆われる。葉は稈より短く、または稈と同長で、葉は線形、幅2~4㎜、平らで柔らかく、縁には小鋸歯がある。苞は基部では剛毛状、その他の苞は鱗片状。穂状の花序(spicate inflorescence)は円筒形、長さ2.5~6㎝。小穂(spikes)は10~16(~20)個つき、雌雄性(gynaecandrous)で基部に少数の雄花を付け、淡緑色、卵形、長さ5~10㎜×幅4~6㎜、密に花がつく。上部の小穂は連続してつき、下部の小穂は離れてつく。雌鱗片(female glumes)は淡褐色、卵形、長さ2.2~2.8㎜、緑色の1脈があり、先は鋭形、果胞は雌鱗片より長く、卵形または卵状披針形、平凸形、曲がり、長さ3.4~3.7㎜、膜質、海綿質、外側に5~7本の脈があり、内側に4~5本の脈があり、基部は丸く、縁はザラつく非常に狭い翼があり、先は徐々に狭まり、±長い嘴になり、開口部には2歯がある。小堅果は淡褐色、緩く包まれ、長円形または長円状卵形、わずかに両凸形、長さ約1.5㎜、基部は楔形、短い柄がある。花柱は基部が太くない。柱頭は2岐。 花期と果期は5~6月。2n=68。

195 Carex mackenziei V.I.Krecz. ノルゲスゲ 
 日本(北海道)、朝鮮、ロシア、ヨーロッパ北部、北アメリカ(アラスカ、カナダ、USA)、グリーンランド、アイスランド原産。別名はカラフトスゲ。標高0~600mの海岸および河口の湿地、ほとんどが汽水土壌、海岸に生える。
 緩く叢生し、根茎は短く、匍匐茎があり、しばしば長いなる。稈はときに湾曲し、細く、高さ10~40cm。 葉:背軸方向に灰褐色から淡褐色の鞘があり、内側の帯は薄く、硝子質で、多くの場合赤味を帯び、頂上は長く、凹形です。 小舌は幅と同じ長さ。 葉身は黄緑色から淡灰緑色、平ら、5~20cm×1~3㎜、稈と同等かそれより短く、柔らかい。 花序は長さ1.5~5cm×幅7~12㎜。下部の苞は鱗片状、ときに剛毛状で小穂より短い。小穂は3~6個、雌雄性花序(gynecandrous)、下部の小穂は離れ、通常、1~1.5㎝の間隔でつき、上部は近接し(approximate)、個別に離れ、5~15(~20)個の果胞をもち、長円形、長さ5~15㎜×幅4~6㎜。頂小穂は基部で雄花が目立ち、長いこん棒形、長さ10~20㎜。 雌鱗片は淡赤褐色で、中央が明るく、縁が狭い透明、卵形、ほぼ等しく、果胞を隠し、先は鈍形。果胞は伏せ~斜上し、灰緑色、しばしば帯赤色の斑点があり、しばしば古くなると淡褐色になり、細かく、数本の脈があり、長円状楕円形、長さ2.5~3.3㎜×幅1.5~2㎜、中央付近で最も幅が広く、革質、嘴は全縁、または縁に少数の歯がある。痩果は淡褐色~灰褐色、長円形、長さ1.75~2㎜×幅1.25~1.5㎜、光沢が無く鈍い。2n=64。果期は6~8月。

196 Carex macloviana D'Urv. パラムシロスゲ 
 ヨーロッパ(フィンランド、ノルウェー、スウェーデン)、ロシア、グリーンランド、アイスランド、北アメリカ(アラスカ、カナダ、USA、メキシコ)、南アメリカ(アルゼンチン、ボリビア、チリ、ペルー、)、フォークランド諸島原産。英名はthickhead sedge。

197 Carex macrocephala Willd. ex Spreng. エゾノコウボウムギ 蝦夷の弘法麦

 日本(北海道)、ロシア、北アメリカ(カナダ、アラスカ、USA)原産。標高0mの海岸沿いの砂浜、湾、入り江、特に砂丘に生える。
 稈は角(かど)が鋭形、上部で少なくとも1つの角(かど)に小鋸歯がある。花序は長さ10~35㎝×幅2.5~5㎝の雌性の頭状花序をもつ。下部の小穂は斜上開出~開出する。雌鱗片は帯赤色~褐色、中央は緑色または金色、ときに上部の縁は白色または淡い金色になり、幅は0.1~0.3(~0.5)㎜、先は短く先細り、長さ1.2~4㎜の芒がある。葯は長さ2.5~5㎜。果胞は斜上~斜上開出し、ときに開出し、幅0.7~1.7㎜の深くギザギザの翼を持ち、基部は心形、嘴は±真っ直ぐ、先端から痩果までの長さ6.5~9mm、先は内側に長さ0.7~1.5㎜のノッチがある。痩果は長さ3~4.5㎜×幅2.3~3㎜。2n=74, 78。果期は春~夏。

198 Carex macroglossa Franch. & Sav. コジュズスゲ 小数珠菅

  synonym Carex parciflora Boott var. macroglossa (Franch. et Sav.) Ohwi

  synonym Carex jackiana var. macroglossa (Franch. et Savat.) Kukenthal

 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮原産。主に開けた乾いた場所に生える。湿った樹林内、草地、湿地、水田畔にも生える。
 多年草、根茎は短く、匐枝を出さず、叢生し、高さ10~40㎝。最も長い稈は長さ15~39(~48)㎝。基部の鞘は淡褐色。葉は柔らかく、幅2~10㎜、粉緑色。苞は有鞘、花序の上に出る葉身がある。頂小穂は雄性、長さ5~12㎜、緑白色。雌性の側小穂は長さ10~15㎜、頂小穂近くに1~2個、茎の中部近くまで離れてつく。上部の小穂は直立又は斜上し、下部の小穂には細くて長い柄があり垂れ下がる。長い柄は苞の鞘から4.5㎝突き出し、鞘の長さ5㎝、柄の長さはときに合計で約10㎝ある。上部の小穂には果胞が2~10個つき、下部の小穂には5~12個程度つくものが多い。鱗片は果胞のほぼ半長、鋭頭。果胞は長さ5~6㎜、無毛、ゆるく果実を包み、先は次第に細くなり、長い嘴がある。痩果は長さ2.1~2.4㎜、3稜のある倒卵形~広倒卵形。痩果は淡褐色~黄褐色、乾くと褐色になる。痩果の基部に海綿質の部分があり、果胞にしっかり包まれ、果胞はダブついている割に取れにくい。果胞は熟しても緑色であり、褐色になるまで軸に残っているものは少ない。花柱は全体的に真っすぐ。柱頭は3岐。2n=36,40,46~48, 50。果期は5~6月。

198-1 Carex macroglossa f. subsessilis Ohwi ムギスゲ 麦菅

  synonym Carex parciflora Boott var. macroglossa (Franch. et Sav.) Ohwi f. subsessilis

 日本(北海道、本州、九州)、朝鮮に分布。林内に生える。
 果胞が非常に大きい品種で、長さ8~9㎜、常に少数(2~4個)のグループで花序柄の先に放射状につく。
 高さ15~25㎝。雌雄同株、全体緑鮮色、無毛で軟弱。茎は叢生し、直立し、3稜形。根生葉は束生し、長さ約10㎝、茎葉は互生し、茎より長い。葉身は線形、細い。頂生の雄小穂は淡褐色、線形、直立する。雌小穂は1~2個つき、淡緑色。雌小穂の花序柄の基部には長い包がつく。雌鱗片は果胞より小さく、先は円形、微突形。果胞は花序柄の先に2~4個が束生して放射状につき、非常に大きく長さ(6)8~9㎜、緑色、無毛、長い嘴がある。柱頭は3岐。花期は初夏。

199 Carex maculata Boott タチスゲ 立菅
 日本(本州の関東地方以西、四国、九州、沖縄)、中国、台湾、インド、インドネシア、スリランカ、オーストラリア原産。中国名は斑点果薹草 ban dian guo tai cao。低地の湿地に生える。和名は茎が直立し、小穂も直立する姿から。
 多年草、高さ30~50㎝。全草が白っぽく緑白色に見えるのが特徴。葉は柔らかく、幅3~6㎜、下面が粉白色。苞は長く、基部が有鞘。雌小穂は幅約4㎜の円柱状、果胞を密につけ、先端に短い雄花部をつけることが多い。果胞は広卵形、やや扁平で、数個の隆起した縦の脈があり、短い嘴があり、口部は全縁。果胞や小穂の柄にゴウソと同じようなパピラ(乳頭状突起)が密につき、乾燥すると、ときに赤褐色に変色する。鱗片は果胞より短く、白色、中肋は緑色、鈍頭、先は芒にならない。痩果は3稜形。柱頭は3岐。果期は5月。

199-1 Carex maculata Boott var. tetsuoi (Ohwi) T.Koyama リュウキュウタチスゲ 琉球立菅

 沖縄に分布。タチスゲに比べると全面にパピラが無く、白っぽく見えない。果胞が扁平。花期は3~4月。

200 Carex magellanica Lam. ダケスゲ 広義
 北半球北部、南アメリカ南部に広く分布。
200-1 Carex magellanica subsp. magellanica
 南アメリカ(アルゼンチン南部、チリ中部~南部、フォークランド諸島)原産。

201-2 Carex magellanica Lam. subsp. irrigua (Wahlenb.) Hiitonen ダケスゲ 岳菅

  synonym Carex paupercula subsp. irrigua (Wahlenb.) Á.Löve & D.Löve

 本州(中部以北)、ユーラシア大陸、北アメリカ原産。英名はboreal bog sedge。亜高山帯の高層湿原に生える。
 多年草、高さ10~30㎝。匐枝があり、疎生する。葉は鮮緑色で、幅は1.5~3㎜。苞は無鞘。頂小穂は長さ0.7~1㎝、雄性。側小穂は2~4個つき、雌性、長さ0.7~1.5㎝、長柄について垂れ下がる。鱗片は果胞より長く、濃褐色、中肋は緑色で先は鋭い芒となる。果胞は長さ2.5~3㎜の広楕円形、嘴がほとんどなく、断面が扁平な3綾形。果胞の全表面にはゴウソと同じように微細な乳頭状突起がある。柱頭は3岐。2n=60。果期は7~8月。(FNA)

201 Carex makinoensis Franch. イワカンスゲ 岩寒菅
  synonym Carex makinoana Franch.
  synonym Carex shimadae Hayata オオバケイスゲ
  synonym Carex shikokiana Makino
  synonym Carex warburgiana Kük.
 日本(四国、九州)、朝鮮、台湾原産。中国名は牧野薹草 mu ye tai cao。低山や海岸近くの岩場、草原に生える。コイワカンスゲやミヤマイワスゲに似るが、雄小穂が長く黒褐色。学名はCarex makinoana Franch.ともされるが、Kewscience、GBIFなどはCarex makinoensisとしている。YListではCarex makinoana。
 Kewscienceでは分布域は日本、朝鮮、中国としているが、日本固有種とする説もある。
 根茎は短く、匍匐枝は出さず、密に叢生し大株となる。全体に質が硬い。有花茎は高さ20~50㎝になり、三角形で硬く、上部(花序の下)がザラつく。基部の鞘は暗褐色または紫褐色、黒褐色、やがて平行な繊維状に細かく裂ける。葉は幅1.5~2.5㎜、質が硬く、ザラつく。頂小穂は雄性、1個つき、長さ3~8(~10)㎝、線状円柱形、黒褐色、花序柄がある。雄鱗片は濃褐色で先は尖鋭形。側小穂は雌性、2~4個、上部にやや近接してつき、円柱形、長さ1.5~3㎝×幅4~5㎜、下部の雌小穂には長い柄があり、上部の雌小穂は短柄がある。雌鱗片は濃褐色、先には短い芒がある。苞は長い鞘があり、葉身は針状。果胞は雌鱗片より長く、披針形、長さ4.5~7㎜、表面には短毛が密にあり、基部には短い柄があり、先は長い嘴になり、口部には鋭い2歯があるかまたは2裂し、先端は褐色になる。痩果は果胞にきつく包まれ、狭楕円形、長さ3.5~4.5㎜、基部に柄がある。柱頭は3岐。花期は4~5月。
【Flora of Chinaの解説】
 根茎は短い。 稈は密に叢生し、高さ20~80㎝、細く、三角形で硬く、ほぼ平滑だが花序の下ザラつき、基部は暗褐色~紫褐色の鞘で覆われ、やがて平行な繊維状に崩壊する。葉は稈より長く、葉身は線形、幅2~5㎜、±硬く、扇だたみになる。 最下の苞(involucral bract)には葉状の葉身があり、他の苞にはほとんど葉身がないか、または短い剛毛状の葉身がある。小穂は3~7個、上部の小穂は近接し、下部の2~3個の小穂は離れる。頂生の小穂は雄性、紫褐色、線状円筒形、長さ4~10㎜×幅約2.5㎜。側小穂は雌性または雄雌性(androgynous)、円筒形または線状円筒形、長さ3~7㎝×幅0.4~0.6㎝、多数の花が緩く直立し、ほとんどが苞に包まれたかなり短い花序柄を持つ。雌鱗片(glumes)は暗褐色~栗色、ときに薄褐色、卵形または卵状長円形、膜質、上部の縁には縁毛があり、淡色の3脈のある肋が先に微突を形り、先は鋭形。果胞は鱗片より長く、披針形、断面は扁平な三角形、ほぼ直立し、長さ4~6㎜、膜質、上半分にまばらに毛があり、細かい多数の脈があり、先の嘴は短く、口部は鋭く2裂する。小堅果はしっかりと包まれ、楕円形または長円形、断面は三角形、長さ2.5~3㎜、両端が狭くなり、基部に柄がある。花柱の基部は太くない。柱頭は3岐。

202 Carex mandshurica Meinsh. マンシュウスゲ 満州菅
 朝鮮、ロシア(満州を含む)原産。
 根茎は長く伸びる。稈は高さ30~60㎝、硬く、3稜形、ザラつく。葉は幅3~4㎜。小穂は3~5個。頂生小穂は雄性、円筒形、長さ1.5~2.5㎝。側小穂は雌性、2~4個、卵形~長円状卵形、長さ1~1.5㎝、無柄~離れた小穂は短柄がある。苞は短く、狭い葉状。雌鱗片は長円状卵形。果胞は長さ約3㎜、3稜形、密に剛毛があり、先は急に狭まり、やや長い嘴があり、口部には2歯がある。柱頭は3岐、長い。

203 Carex manca Boott カレックス・マンカ
 中国(安徽省、広東省、湖北省)、台湾原産。中国名は弯柄薹草 wan bing tai cao。
 根茎は太くて短く、木質。稈は側生し、高さ30~70㎝、三角形、細長く、滑らかで、基部は葉身のない鞘で覆われる。 葉は稈より長く、まれに短く、広線形、幅2~10㎜、平らで革質、基部は扇だたみ、上縁はザラつき、先は尖鋭形。 苞には短い葉身があり、長い鞘がある。小穂は2~3個、遠く離れてつく。頂生の小穂は雄性、線状円筒形、長さ(1~)4~5㎝、花序柄は長さ約5㎝。側小穂は雌性、長円状円筒形、長さ2~3cm、やや密に花がつき、花序柄は短い。雌鱗片はわら色、長円状披針形または卵状披針形、緑色の3脈のある肋が突き出し、微突になる。果胞は黄緑色、鱗片より長く、斜めに開出し、菱状楕円形、断面は三角形、長さ6~8㎜、ほぼ革質、まばらに毛があり、細く、多数の脈があり、基部は短い柄があり、先は急に狭まり平滑な長い嘴になり、口部には2歯がある。小堅果は黄褐色、しっかりと包まれ、卵形、長さ約2.5㎜、断面は中央でくびれた角(かど)を持つ三角形、面の基部は凹面、基部には湾曲した柄があり、先は急に狭まり円筒形の湾曲した嘴になる。花柱の基部は太くなる。柱頭は3岐。

203-1 Carex manca subsp. takasagoana (Akiyama) T.Koyama タイワンヒエスゲ 台湾稗菅

  synonym Carex takasagoana Akiyama
 台湾に分布。中国名は梦佳薹草 meng jia tai cao。標高の高い森林に生える。
 葉は稈より長く、幅は3~5㎜。果胞は長さ7~8㎜。小堅果は頂端の嘴が短く直立する。

204 Carex matsumurae Franch. キノクニスゲ 紀の国菅
  synonym Carex viridissima Nakai タケシマカンスゲ 
 本州(富山県、三河湾以西)、四国、九州、朝鮮原産。別名はキシュウスゲ。暖地の海岸に生える。和名の由来は紀伊で知られるようになったことから。三河を太平洋岸の北限とし、天然記念物の竹島に群生がある。田原市や西尾市など三河湾の海岸で稀に見られる。国の準絶滅危惧種、愛知県でも準絶滅危惧種に指定されている。
 多年草、高さ30~50㎝。暖地性で、密に叢生し、大株をつくる。葉は光沢があり、厚く、平滑で、あまりザラつかない。葉は長く、幅0.8~1.2㎝。最上部の雄性小穂は長さ3~6㎝、雌性の側小穂は3~4個つき、長さ2~4㎝で、小さな雄花部を先端につけるときもあり、基部に長さ約1㎝の小さな雌小穂の枝をつけることもある。苞は葉身が短く、長い鞘がある。雌鱗片は淡緑色、先が尖鋭形、果胞よりやや短く、基部付近の小穂では果胞とほぼ同長のものもある。果胞は長さ3.5~4.5㎜の長卵形、明瞭な脈が多数あり、無毛、先が嘴状に尖り、口部には2歯があり、果胞が厚く、中の果実は小さい。果実は長さ2~2.5㎜のやや厚いレンズ形、頂部の付属体は短い柄のある環状。柱頭は普通、2岐。花期は2~3月。

205 Carex maximowiczii Miq. ゴウソ 長刀茅
 日本全土、千島列島、朝鮮、中国原産。中国名は乳突薹草 ru tu tai cao。別名はタイツリスゲ 鯛釣菅。湿地、池沼のほとり、畔に生える。
 多年草、高さ30~50㎝。根茎は短く、叢生する。茎は3稜形。葉は幅3~6㎜。小穂は1~5(普通2~4)個つき、細い柄の先に垂れ下がる。最頂部の細い小穂は雄性。下部小穂は雌性、太く、長さ1.5~3.5㎝の円柱形。果胞は長さ4~5㎜、表面に細かいパピラ(乳頭状突起)が密生し、ビロード状に見える。このパピラがないものは、変種のホシナシゴウソとして分類されている。鱗片は褐色を帯び、緑色の太い中肋の先が長い芒になる。痩果は果胞よりかなり小さく、長さ2~3㎜の円形、扁平。柱頭は2分岐。花期は5~6月。
205-1 Carex maximowiczii Miq. var. maximowiczii ゴウソ 狭義

206-2 Carex maximowiczii Miq. var. levisaccus Ohwi ホシナシゴウソ 星無長刀茅

 日本全土、朝鮮、中国原産。湿地に生える。ゴウソの変種で、ゴウソより全体に大きいものが多い。外観はゴウソと全く変わらない。
 多年草、高さ40~60㎝。和名のとおりホシナシゴウソの果胞には乳頭状突起がない。これに対し、ゴウソでは果胞の表面に細かい乳頭状突起があり、ビロード状にやや白っぽく見える。他の様子はゴウソと変わらない。鱗片には芒があり、痩果は円形で、レンズ状。果期は5~6月。

206 Carex mayebarana Ohwi ケヒエスゲ 毛稗菅
  synonym Carex pisiformis var. mayebarana (Ohwi) T.Koyama
 日本固有種。四国(愛媛県、高知県)、九州(中部地方以南)。別名はケクサスゲ。山地の林内や林縁に生える。
 多年草、まばらに叢生し、短い匍匐枝(走出枝)がある。全体に毛があり、とくに基部の鞘に密生するがその他の部分は毛がまばら。基部の鞘は淡褐色、軟毛が密にある。茎は3稜形で細く、ほぼ平滑、高さ20~30㎝。葉は平ら、幅2~3㎜。葉鞘には毛がある。小穂は3~4個。頂小穂は雄性。側小穂は雌性、直立し、花をまばらに少数つける。苞は小穂よりも少し長く、基部にやや長い鞘があり、短毛がある。果胞は鱗片よりわずかに長く、倒卵形、先が急に狭まり長い嘴になり、口部は2小歯がある。痩果はきつく果胞に包まれ、倒卵形、頂部に盤状の付属体がある。柱頭は3岐。花期は5~6月。

207 Carex media R.Br. ex Richards. ミヤマクロボスゲ 深山黒穂菅
  synonym Carex angarae Steud. [Flora of China]
  synonym Carex brachylepis Turcz. ex Besser
  synonym Carex alpina subsp. inferalpina (Wahlenb.) K.Richt.
 朝鮮、中国( 黒竜江省、吉林省、内モンゴル)、モンゴル、ロシア、ヨーロッパ北部、北アメリカ(カナダ、アラスカ、USA)原産。中国名は圆穗薹草 yuan sui tai cao。英名はalpine sedge, carex moyen, closed-head sedge, intermediate sedge。

208 Carex melanocarpa Cham. ex Trautv. タカネヒメスゲ 高嶺姫菅
 日本(北海道の夕張岳)、ロシア原産。高山の乾いた原野や高山帯の砂礫地の草原に生える。
 高さ5~15㎝、硬く、強い。葉は多数つき、株になり、短く、光沢がある。小穂は2~3個つき、頂小穂は雄性で側小穂は雌性。側小穂はほとんどが無柄で、頂小穂の下に1~2個が密着してつく。雌鱗片は先が円形、縁毛がある。果胞は長さ約2㎜。果期は7~8月。

Carex meridiana  Akiyama 209 Carex mertensii Presc. ex Bong. カレックス・メルテンシィ 広義
 北アメリカ(カナダ、アラスカ、USA)原産。英名はMerten's sedge。標高0~2000mの開けた森林、牧草地、川岸に生える。
 多年草、叢生する。稈は高さ30~80㎝、上部はザラつく。葉は根生葉と茎葉、幅4~8㎜。下部の葉は鞘状になる。花序:下部の苞は通常花序を超え、たまに花序より短い。小穂は離れ、しばしば、下部の小穂は遠く離れ、垂れ下がり、長く、円筒形またはこん棒形、長さ10~40㎜×幅7~9㎜。頂生の小穂は雌雄性(gynaecandrous)。側小穂は4~6(~9)個つき、雌性。雌鱗片は縁まで暗褐色または黒色で、卵形~披針形、果胞よりも著しく短くて狭く、中脈は体より明るい色で、目立ち、しばしば隆起し、顕著で、微突形。果胞は斜上し、緑色、淡黄色または褐色になり、かすかに脈があり、卵形、長さ4~5㎜×幅2.5~3.5㎜、先は次第に嘴になり、平滑、嘴は長さ0.3~0.4㎜、先は切形または不明瞭な2歯があり、平滑。痩果は果胞の下部1/2またはそれ以下を満たす。2n=62。果期は6~8月。
209-1 Carex mertensii var. mertensii カレックス・メルテンシィ 狭義
  synonym Carex columbiana Dewey
 北アメリカ(カナダ、アラスカ、USA)原産。

209-2 Carex mertensii Presc. ex Bong. var. urostachys (Franch.) Kük. キンチャクスゲ 巾着菅

 北海道、本州(東北、中部地方)、南千島原産。別名はイワキスゲ。高山~高山の草地に生える。
 多年草、高さ30~60㎝。根茎は短く、叢生する。葉は柔らかく、幅4~8㎜。小穂は雌雄性(gynaecandrous)、基部に短い雄花部がある。小穂は4~8個、固まってつき、垂れ下がる。鱗片は果胞より短く、黒褐色、中肋は緑色で先は長い芒となる。果胞は長さ4~5㎜の広楕円形、断面が扁平な3綾形、短い嘴がある。果実は長さ約1.7㎜の長倒卵形、基部に短い柄がある。柱頭は3岐。果期は7~8月。

210 Carex metallica H.Lév. フサスゲ 房菅
 日本(本州の静岡県以西、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国(福建省)、台湾原産。中国名は锈果薹草 xiu guo tai cao。海に近い地域の砂地や草原に生える。
 根茎は短く、匍匐茎は無い。稈は密に叢生(房状)し、高さ15~50㎝、三角形、平滑、基部は繊維状に分かれた鞘で覆われる。葉は稈よりわずかに長く、ときにわずかに短く、葉身は幅3~5㎜、平らで、縁はザラつく。鞘は通常、膜質の部分で裂ける。下部の苞は葉状、鞘がある。上部の苞は葉身が剛毛状、鞘がない。小穂は5~8個。頂生の小穂は雌雄性(gynaecandrous)、まれに雄性、棍棒状円筒形。側小穂は雌性、または基部に少数の雄花を持ち、通常は苞の鞘から1~2個の小穂が突き出し、円筒形、長さ2.5~4.5㎝、密に多数の花がつく。花序柄は細く、上部では徐々に短くなる。雌鱗片は黄白色、卵状披針形、長さ約4.8㎜、膜質、1脈があり、先は微突形。果胞はわら色、鱗片よりも長く、直立し、楕円形、断面が平凸形、長さ約7㎜、膜質、赤褐色の細点があり、わずかに光沢があり、不明瞭な5脈があり、基部は急に狭まり短い柄になり、先は徐々に狭まって長い嘴になり、上部と嘴の縁ザラつき、口部には浅い2歯がある。小堅果はわら色、非常に緩く包まれ、楕円形、三角形、長さ約2㎜、基部には短い柄がある。花柱は細い。柱頭は3岐。果期は4~5月。

211 Carex meyeriana Kunth ヌマクロボスゲ 沼黒穂菅
 日本(本州、九州)、朝鮮、中国(黒竜江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル自治区、四川省)、モンゴル、ロシア原産。中国名は乌拉草 wu la cao。湿地に生える。
 根茎は短く、密に叢生する。稈は房状で、高さ20~50㎝、幅1~1.5㎜、細く、不明瞭な三角形で、硬く、平滑、基部は繊維状に崩壊する栗色の光沢のある葉身のない鞘で覆われる。葉は稈より短く、または稈とほぼ同長、葉身は剛毛で覆われ、屈曲し、やや硬く、折り畳まれ、縁はザラつく。苞は鞘がなく、一番下のものは剛毛状、上部のものは鱗片。小穂は2~3個、接近してつく(approximate)。頂生の小穂は雄性、円筒形、長さ1.5~2㎝。 側小穂は雌性、球形または卵形、長さ5~12㎜×幅約0.5㎜、密に花がつく。雌の苞頴は暗紫色または赤褐色、卵状長円形、長さ2.8~3.5㎜、かすかに3本の脈があり、縁は狭く白色透明で、先は鈍形。果胞は青緑色~灰色、鱗片と同長またはそれに近い長さで、卵形または楕円形、扁平な三角形、長さ2.5~3㎜、細かい5~6本の脈があり、密にパピラがあり、基部には短い柄があり、先は急に狭まり円筒形の全縁の嘴になる。小堅果は褐色、きつく包まれ、倒卵状楕円形、扁平な三角形、長さ1.5~2㎜、基部は短い柄があり、先は丸い。花柱は基部が太くならない。柱頭は3岐。花期および果期は6~7月。

212 Carex michauxiana Boeck. カレックス・ミショウキシアナ
  synonym Carex rostrata Michx.
  synonym Carex abacta L.H.Bailey
  synonym Carex xanthophysa var. minor Dewey
  synonym Carex xanthophysa var. nana Dewey
 カナダ、USA原産。英名はMichaux's sedge、yellowish sedge。
 ミタケスゲはCarex michauxiana Boeck. subsp. asiatica Hultenとされていたが、Carex dolichocarpa C.A.Mey. ex V.I.Krecz.と改められた。

213 Carex micropoda C.A.Mey. コキンスゲ 
 北アメリカ西部、ロシア(極東)原産。英名はtimberline sedge , small-foot sedge , small-foot carex , small-foot fox sedge。

214 Carex microptera Mack. クロヤガミスゲ 黒八神菅
  synonym Carex limnophila F.J.Herm.
 カナダ、アラスカ、USA、メキシコ原産。標高200~3400mの適度に湿った場所から乾燥した牧草地、斜面、水路沿い、撹乱された場所に生える。日本に帰化している。
 密に叢生する。稈は高さ20~110㎝。葉: 鞘は内側が白色透明、頂部は通常U字形で、たまに襟を越えて3㎜まで伸びる。上部の葉舌は長さ(1~)2~3(~6)㎜。稔性の稈当たり葉身は(2~)3~7枚、長さ10~50㎝× 2~5㎜。 花序は通常密で、明るい茶色から濃い茶色および緑色、長さ(0.8 ~)1.1~2.6㎝× 9.5~17.5㎜。下部の間は長さ0.5~3(~4)㎜。2番目の節間は長さ0.5~2(~3)㎜。下部の苞は鱗片状、またはまれに葉状、ときに剛毛状になり、花序より短い。小穂は4~10(~14)個、密に集合してつき、個々は不明瞭、通常は広卵形、長さ5~9(~11)㎜× 4.3~7㎜、基部と先は円形、またはときに鋭形になる。雌鱗片は褐色、しばしば赤色、紫色、または銅色を帯び、淡色または緑色の中央の縞があり、卵形、長さ2.4~3.5㎜、果胞より短く狭いかまたは幅が果胞と同じで、白色の縁は幅0~0.1 mm、先は鋭形。果胞は斜上~開出し、成熟すると緑色または麦わら色~褐色になり、外側に(0~)3~8(~11)本の脈が目立ち、内側に0~8本の脈が目立ち、脈は通常、痩果の上端に達せず、卵形~広卵形 、痩果部分以外は平坦、または内部に空気があるため±平凸形、長さ(2.8~)3.4~4.5(~5.2)㎜×幅1.1~2.4㎜×厚さ0.3~0.5㎜、縁は平ら、翼を含んで幅0.2~0.5㎜、縁毛のある小鋸歯があり、 少なくとも上部には小鋸歯があり、金属光沢はなく、鈍い~わずかに光沢がある。嘴は先端が金色または赤褐色~褐色、円筒形、翼は少なくとも1mmあり、±0.2~0.6(~0.9)㎜が全縁、外側の縫合線は目立たないか、または白色の縁があり、嘴の先端から痩果までの距離は1.5~2.5(~2.8)㎜。痩果は卵形~倒卵形、長さ1.1~1.6㎜×幅0.7~1.2㎜×厚さ0.3~0.5㎜。2n=80, 90。果期は晩春~秋。

215 Carex microtricha Franch. チャシバスゲ 茶芝菅

  synonym Carex caryophyllea Latour. var. microtricha (Franch.) Kük.

 北海道、本州(中部以北)、朝鮮、ロシアに分布する。
 雌鱗片に褐色部分があり、果胞が長さ約3㎜。本州中部のものは雌鱗片の褐色部分がはっきりしない。愛知県の準絶滅危惧種に指定され、三河地方では見られない。

216 Carex middendorffii F.Schmidt トマリスゲ 泊菅
 日本(北海道、本州の中部以北)、ロシア原産。別名はホロムイスゲ(幌向菅)、クロスゲ。高層湿原ミズゴケ湿原に生える。
 高さ30~70㎝、根茎は斜上し、密に叢生する。基部の鞘は葉身が無く、光沢のある褐色で糸網を生ずる。葉は花茎よりやや短く、幅2~4㎜、硬く、灰緑色。花茎は直立し、鋭3稜形。小穂は3~5個つき、上部の1~3個は雄性、長さ2~3㎝。下部の小穂は雌性または雄雌性で先端に短く雄花部があり、長さ1.5~4㎝×幅3~8㎜、最下の小穂は離れ、長い柄がある。苞葉は短い葉身があり、鞘は無い。雌鱗片は長円形で先は鋭形~鈍形、果胞と同長または少し短く、濃褐色~黒褐色。果胞は広卵形、灰緑色、平凸ンズ形、長さ4~5㎜、表面に数脈があり、密に微細なパピラ(乳頭状突起)がある。嘴は短く、口部は全縁。痩果は広卵形、レンズ形、長さ2.5~3mm、柱頭は2岐。果期は6~7月。

217 Carex mira Kük. サワヒメスゲ 沢姫菅
 日本(本州の静岡県西部以西、四国、九州の宮崎県)、朝鮮原産。河岸で増水したら水につかるような岩上、あるいは河原の石の間に生える。
 根茎は短く、叢生する。稈は直立し、高さ15~40 cm。基部の鞘は褐色~赤褐色を帯びる。葉は密につき、長さ10~25㎝×幅1~2㎜、やや堅く、ザラつく。小穂は2~4個、接してつく。頂生の小穂は雄性、長さ15~20㎜×幅2~4mm。側小穂は雌性、長円形、長さ5~10㎜×幅約6㎜、無柄。雌鱗片は黒赤褐色で光沢があり、楕円形、長さ2.5~3mm。果胞は卵状紡錘形~卵状披針形、背面の丸い3稜形、長さ3~3.5㎜、脈は無く、まばらに伏毛があり、両端は次第に狭まり、先の嘴は黒紫色で短い。柱頭は3岐。花期は4月中旬~下旬。

218 Carex mitrata Franch. ヌカスゲ 糠菅

218-1 Carex mitrata Franch. var. mitrata ヌカスゲ 糠菅 狭義

 日本(本州の関東以西、四国、九州)、朝鮮、中国原産。中国名は灰帽薹草 hui mao tai cao。明るい林内、林縁に生える。
 多年草、高さ10~30㎝。根茎は短く、大きく叢生する。基部の鞘の褐色部分が光沢があって長く、ほとんど繊維状に分解しない。葉は幅1.5~2㎜。苞は短い鞘があり、葉身は短い。小穂は頂部に3~4個かたまってつき、根際にも柄の長い小穂をつける。雄小穂は茎頂につき、長さ10~17㎜、きわめて細く、褐色。側小穂は雌性。果胞は長さ約2.5㎜、細く、ほとんど無毛、嘴は短く、先がやや曲がり、口部は平切形。鱗片は果胞より短く、芒が短い。果実は3稜形、頂部に付属体がある。果期は3~5月。

218-2 Carex mitrata Franch. var. aristata Ohwi ノゲヌカスゲ 芒糠菅

 本州(福島県以南)、四国、九州、朝鮮、中国原産。中国名は具芒灰帽薹草 ju mang hui mao tai cao。草地、明るい林内、林縁、道端に生える。和名はヌカスゲに似て、芒が長いことによる。アオスゲに似たような場所に生え、アオスゲのように雌鱗片に長い芒がある。苞葉も長く、花序から上に伸び目立つ。普通に見られる。
 多年草、高さ20~25㎝。根茎は短く、大きく叢生する。基部の鞘の褐色部分がヌカスゲと同じように光沢があって長く、繊維状に分解しない。苞は長さ約3㎜の鞘があり、葉身も長く、花序の上に出る。雄小穂は線形で、楕円状の線形、きわめて小さく、雌小穂に埋もれてしまうことも多い。雌性の側小穂は茎の上部に集まってつく。果胞は小さく、ほとんど毛がなく、短毛がまばらにあり、口部は2歯。雌鱗片に長い芒がある。果期は4~5月。

219 Carex miyabei Franch. ビロードスゲ 広義
 日本(北海道、本州、九州)、千島列島、中国原産。
219-1 Carex miyabei var. miyabei ビロードスゲ 
 日本(北海道、本州、九州)原産。河川敷、砂質の湿地や林道脇などに生える。
 多年草、地下に横走する長い根茎があり、まばらに生える。基部の鞘は葉身がなく、硬く光沢があり、赤褐色、前面に糸網を生じる。花茎は高さ30~70cm、上部はややザラつき、下部は平滑。葉は幅3~8mm、濃緑色、縁は上向きにザラつく。苞は小穂の基部につき、葉状、葉身がよく発達し、基部には鞘がないか、ごく短い鞘がある。花序は3~9個の小穂が総状につく。頂小穂から1~4個の小穂は雄性で密接してつき、線形、長さ1~3cm。残りの側小穂は雌性、円柱形、長さ1.5~6cm、無柄~花序柄があり、上部はほぼ無柄、下部の花序柄は長い。雄鱗片は赤褐色、先は鈍形~鋭形。雌鱗片は濃褐色~黒褐色で中肋は緑色で太く、先に芒がある(Floraof China; 微突がなく無突起)。果胞は密につき、鱗片と同長かまたはやや長く、卵形、長さ4~5mm、脈があり、密に小剛毛があり(hispidulous)、先は急に狭まり長い嘴となり、口部は深い2歯。痩果はややゆるく果胞に包まれ、倒卵形、長さ約2mm、3稜形。柱頭は3岐、宿存性。2n=90。花期は5~7月。

219-2 Carex miyabei Franchet var. maopengensis S. W. Su

 中国(安徽省)原産。中国名は毛果薹草 mao guo tai cao。道路脇の濡れた場所に生える。
 根茎は長い茎状で、かなり太い。稈は高さ30~60㎝、三角形で上部がザラつき、基部に赤褐色の葉身ない鞘があり、鞘は後に内側が網状の繊維に裂ける。葉は稈より長く、葉身は幅3~5㎜、平らでやや硬く、縁と上面がザラつく。下部の苞は葉状で、花序より長く、鞘が無く、ときに最下の苞に短い鞘がある。小穂は5~6個。頂生の2~4個の小穂は雄性、ほぼ線形、長さ1.5~3㎝×太さ約2㎜、通常1~3個の雌花がつく。残りの小穂は雌性、2個の小穂の間の距離は4~6cm、円筒形、長さ2~6㎝×太さ4~5㎜、花が密に多数つき、小穂の基部では緩い。上部の小穂は短い花序柄があり、下部の小穂は長い花序柄があり、わずかにザラつく。雌鱗片は側面が暗赤褐色、中央が帯褐色、披針形、長さ3.5~5㎜、膜質、3脈があり、縁は白色透明、先は微突形または芒がある。果胞は斜めに開出し、広倒卵形、三角形、長さ3~4㎜、膜質、白色の毛があり、上部では毛がかなり密になり、不明瞭な脈があり、基部は楔形、先は急に狭まりかなり長い嘴になり、口部には2歯がある。小堅果はしっかりと包まれ、広倒卵形、三角形、長さ約2㎜、先は曲がった微突がある。花柱は基部がわずかに太くなる。柱頭は3岐、±長い。

220 Carex mochomuensis Katsuy. アキザキバケイスゲ 
 日本固有種。屋久島の標高50~100mの岩の多い斜面や川沿いの岸壁に生える。
 常緑多年草。 根茎は短く、丈夫で、密に叢生する。稈は中央生、細く、硬く、高さ30~70㎝、葉よりわずかに短く、鈍角の三角形で、平滑。葉は根生葉と茎葉。葉身は平らで、幅3~5㎜、硬く、上面と縁がざらつき、下面は平滑。基部の鞘は葉身があり、暗褐色、強くほぼ均等に並んだ小繊維で覆われる(fibrillose)。花序は総状花序で、3~5個の小穂があり、稈の上部1/2につき、間隔が離れ、各節に単生する。頂生の小穂は雄性、線形、長さ6~15㎝×幅2~3㎜。 側小穂は雌性、花序柄はかなり短く、鞘に囲まれ、直立~斜上し、線状円筒形、長さ2~10㎝×幅3~4㎜、まれに基部に短い枝があり、ほぼ密に多数の花つく。苞は長い鞘を持ち、上部の葉身は剛毛状(setaceous)、下部の苞の葉身は短い葉状。雄鱗片は狭楕円形、長さ5~9㎜、尖鋭形、膜質、中肋は広い薄緑色~淡褐色、両側は帯褐色、縁は広く薄膜質、まばらに縁毛がある。雌鱗片は楕円形、長さ3~5 mm、果苞より短く、鋭形~尖鋭形、短い芒があり、芒および中肋はザラつき、中肋は薄緑色、両側は帯褐色、縁は広く薄膜質、まばらに縁毛がある。果胞は直立し、長円状楕円形、扁平な三角形、長さ5~6㎜×幅約1.2㎜、草質、多数の脈があり、密に剛毛があり、基部に柄があり、柄は長さ1~1.5㎜、やや長い嘴があり、嘴は長さ1~1.5㎜、口部には深い2歯~2裂がある。痩果はきつく包まれ、楕円形、鈍角の三角形、長さ3~4㎜×幅約1㎜、柄は長さ1~1.5㎜、先はわずかに環状になる。花柱は長さ約1㎜、基部はわずかに太くなるか、または太く無い。柱頭は3岐、長さ約3㎜、かなり宿存する。2n=28 (Yano et al. 2007、C. warburgiana として)。 花期は10~12月。

221 Carex mollicula Boott ヒメシラスゲ 姫白菅
 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、台湾原産。中国名は柔果薹草 rou guo tai cao。山地の林内、湿った場所、草地に生える。シラスゲに似ていてやや小形。
 多年草、高さ15~30㎝。匐枝を出して増える。基部の鞘は淡褐色。葉は幅4~8㎜と広く、柔らかく、脈が目立つ。茎頂に、小穂を3~6個、固まってつける。小穂の柄は普通、ほとんどない。先端の雄小穂は雌小穂に隠れるほど小さい。雌小穂は長さ1.5~3㎝、幅4~5㎜の円柱形。果胞は長い嘴がつき、長さ3~4㎜。鱗片は先が鋭く、果胞より明瞭に小さい。果実は長さ約1.8㎜の倒卵形、頂部に短い曲がった嘴がある。柱頭は3岐。果期は5~7月。

222 Carex mollissima Christ ex Scheutz フクロスゲ 袋菅
  synonym Carex divaricata Kük.
  synonym Carex yingkiliensis A.I.Baranov & Skvortsov
 朝鮮、中国( 黒竜江省、内モンゴル)、ロシア原産。中国名は柄薹草 bing tai cao。高山地帯の沼地に生える。

223 Carex morii Hayata モリスゲ 森菅
 台湾原産。中国名は森氏薹草 sen shi tai cao。標高500~1000mの熱帯林に生える。

224 Carex morrowii Boott カンスゲ 寒菅
 日本固有種、本州(福島県以西)の太平洋岸、四国、九州に分布する。英名はMarrow's sedge , Japanese sedge。山地の林内に生える。和名の由来は寒中も葉が緑色をしていることから。
 多年草、高さ30~50㎝。根茎は広がらず、叢生し、匐枝は出さない。基部の鞘は光沢のない黒紫色。葉は硬く、幅6~15㎜、断面がM字形とならず、脈が明瞭、葉縁の小刺は鋭い。 雄性の頂小穂は長さ3~4㎝、赤褐色。雌性の側小穂は長さ1.5~3.5㎝、幅約6㎜。果胞は長さ3~3.5㎜、嘴が長く、口部の鋭い2歯の特徴がある。果胞は熟すと膨れ、嘴が外曲する。鱗片は果胞とほぼ同長、肩がなくて先が鋭く尖り、褐色である。痩果は長さ約2㎜、果胞よりかなり小さく、不規則に凹み、嘴は直立する。柱基の付属体は小さく、柱頭は3岐。花期は4~5月。

224-1 Carex morrowii Boott f. expallida (Ohwi) T.Koyama フイリカンスゲ 


225 Carex multifolia Ohwi ミヤマカンスゲ 深山寒菅 広義
 日本固有種。北海道、本州、四国、九州に分布。丘陵地から山地の林下や林縁に生える。  常緑多年草。根茎はやや伸長するが、叢生し、顕著な匍匐枝は出さない。日本海側の多雪地では伸長した根茎が数年分残り、ときに放射状に株が繋がり、これが匍匐枝と誤認される。基部の鞘はやや長く、光沢のある紫褐色。葉はやや柔らかく、平滑、幅5~10㎜、常緑であるが、果期には前年の葉が枯れ始め、新しい葉が目立つようになる。前年の葉の中央には無花茎がつき花茎はすべて腋生する。苞は鞘状、長さ約3cm、先の葉身は棘状になる。花茎は高さ20~50cm。花序は頂小穂が雄性で1個、側小穂は雌性で2~4個が離れてつき、特に下部の小穂は離れる。雄小穂は狭線形、長さ2~4cm、花序柄が1~4cm、苞頴は赤褐色で先は尖鋭形または短い芒となる。雌小穂は線形、まばらに果胞をつけ、長さ1.5~3cm×幅2mm、雌鱗片は褐色を帯びるが、色の濃淡には変異がある。果胞は楕円形、長さ2.5~4.5mm、短毛があり、先は急に狭まり嘴となるが、嘴の長短には大きな変異があり、口部は凹形。痩果は果胞に密着して包まれ、楕円形、長さ約2mm、先端には小さな盤状の付属体(柱基)がある。柱頭は3岐。果期は4~6月。
225-1 Carex multifolia Ohwi var. multifolia ミヤマカンスゲ 
 鞘は紫褐色で光沢がある。果胞に毛がある。

226 Carex multifolia Ohwi ミヤマカンスゲ 深山寒菅
  synonym Carex dolichostachya subsp. multifolia (Ohwi) T.Koyama
  synonym Carex dolichostachya f. multifolia (Ohwi) T.Koyama
 日本固有種。北海道、本州、四国、九州に広く分布する。丘陵地や山地の林内、林縁に生える。
 常緑性の多年草。根茎はやや伸長するが、叢生し、顕著な匍匐枝は出さない。日本海側の多雪地では伸長した根茎が数年分残り、放射状に株が繋がっていることがあり、これが匍匐と誤解されることがある。基部の鞘はやや長く伸び、光沢のある紫褐色。葉はやや柔らかく平滑、幅5~10mm、常緑であるが、果期には前年の葉は枯れ、新しい葉と入れ替わる。前年の葉の中央から花茎が出て、前年の葉は枯れ、腋生に見える。花茎は高さ20~50cm。雄小穂は線形、長さ2~4cm。雌小穂は2~4個つき、まばらに果胞をつけ、長さ1.5~3cm×幅2㎜。雄鱗片や雌鱗片は褐色を帯びるが、色の濃淡には変異がある。果胞は基部は楕円形、長さ2.5~4.5mm、雌鱗片より長く、短毛または無毛、先は嘴となるが、嘴の長短には大きな変異があり、口部は凹形。柱頭は3岐。花果期は4~6月。
 有花茎のつき方により分類される。

 A-1 側生の有花茎が葉腋に常に単生する(ミヤマカンスゲ,コミヤマカンスゲ,マルミノミヤマカンスゲ)

 A-2 しばしば複数の有花茎を持つ(アオミヤマカンスゲ)
 B-1 有花茎は常に中央生かつ側生のタイプ(キンキミヤマカンスゲ)

 B-2 通常は中央生のみだが時に側生の有花茎も持つ(ニシノミヤマカンスゲ)

 B-3 中央生で側生の有花茎を特たない(ツルミヤマカンスゲ)

226-1 Carex multifolia Ohwivar. multifolia ミヤマカンスゲ 深山寒菅 狭義

  synonym Carex atroviridis Ohwi ヤクシマスゲ
  synonym Carex multifolia var. globosa マルミノミヤマカンスゲ
  synonym Carex yakusimensis Masam ヤクシマスゲ
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮に分布する。別名はヤクシマスゲ。丘陵地から山地の林下や林縁に生える。
 茎は叢生し、匍匐枝は出さない。根茎が数年間残存し、これが横に伸び匍匐枝と似ている。花茎は高さ20~50㎝。葉は長く、幅5~10㎜。葉の基部を包む鞘は紫褐色で光沢がある。葉は感触が平滑、常緑ではあるが果時には前年の葉が枯れ、新しい葉と入れ替わる。花序は頂小穂が雄性で1個、側小穂は雌性で2~4個つき、全部が集中して着かず、特に下部の小穂は離れてつく。苞は鞘があり、鞘は長さ約3cm、葉身は刺状。雄小穂は線形、長さ2~4cm、柄は長さ1~4cm。雄鱗片は赤褐色、濃淡の変異があり、先は尖鋭形または短い芒が突き出る。雌小穂は線柱形で長さ1~3cm×幅約2mm、まばらに果胞を付け、長さ1~5㎝の柄がある。下部の小穂は長い柄を持ち、上部の先端近くの小穂はときに柄がない。雌鱗片は淡い赤褐色、先は尖鋭形。果胞は長さ2.5~4.5mm×幅0.9~1.1mm、鱗片より長く、楕円形、先は急に狭まってやや長い嘴になり、口部は凹形、表面にはまばらに短い毛があり、また稜の間に7~9本の脈がある。痩果は果胞に密着して包まれ、長さ約2mm、楕円形、先端には小さな盤状の付属体がある。柱頭は3岐。花果期は4~6月。

226-2 Carex multifolia Ohwi var. stolonifera Ohwi ツルミヤマカンスゲ ⇒Carex sikokiana Franch. & Sav.

226-3 Carex multifolia Ohwi var. imbecillis Ohwi ニシノミヤマカンスゲ(別名:ヤワラミヤマカンスゲ)

226-4 Carex multifolia Ohwi var. glaberrima Ohwi  ケナシミヤマカンスゲ 

 紀伊半島南部に分布。別名はキンキミヤマカンスゲ
 鞘は紫褐色。果胞に毛がなくて細長い。

226-5 Carex multifolia Ohwi var. pallidisquama Ohwi アオミヤマカンスゲ 

  synonym Carex dolichostachya f. pallidisquama (Ohwi) T.Koyama
 本州、四国、九州に分布。別名はウスイロミヤマカンスゲ、クロシマナガボスゲ
 鞘は淡褐色。苞頴(雄および雌花鱗片)は淡緑色。2n=70。

226-6 Carex multifolia Ohwi var. toriiana T.Koyama コミヤマカンスゲ 小深山寒菅

  synonym Carex teramotoi T.Koyama
 日本固有種。本州(千葉県、神奈川県、静岡県、長野県、愛知県、岐阜県、三重県、滋賀県、福井県、京都府)に分布。樹林内に生える。  多年草、高さ20~50㎝。地中に匐枝を伸ばして広がり、叢生する。基部の鞘は光沢のある紫褐色。葉は、やや柔らかく、幅3~6㎜、脈が明瞭で、上向きの刺が縁にまばらにある。苞は葉身が短く、有鞘、紫褐色を帯びる。小穂はまばらに3~5個つく。頂小穂は雄小穂、線形、長さ2~4㎝、暗褐色、苞の鞘部まで色が着くことがある。側小穂は雌性、2~4個つき、細く、長さ1.5~3㎝。鱗片は褐色を帯び、凹頭、芒は無く、あっても微凸端。果胞は長さ3.5~4㎜、有毛、嘴はやや外側に曲がる。果実は長さ2~2.5㎜、3稜のある卵形。柱頭は3岐。花期は4~5月。

227 Carex muskingumensis Schwein. カレックス・ムスキングメンシス
  synonym Carex scoparia Torr.
 カナダ、USA原産。英名はMuskingum sedge, palm sedge。標高100~400mの湿気のある場所~湿った場所、落葉樹の氾濫原、低地の森林、茂みに生える。
 密に叢生する。稈は高さ40~4100㎝。 栄養稈が目立ち、葉身が茎に沿って均等に広がる。葉:鞘は内側の襟の3㎜以内までに緑色の脈があり、内側がしっかりしており、頂上は通常褐色がかっており、U字型またはV字型で厚い。上部の葉舌は長さ2㎜まで。葉身は稔性の稈あたり7~12枚つき、長さ12~25㎝×幅3~5㎜。 花序は少なくとも下部で開き、褐色、長さ(4~)5~9㎝×幅10~20㎜。下部の節間は長さ(4~)5~15㎜。2番目の節間は長さ(3~)5~11㎜。下部の苞は鱗片状。 穂状花序は5~12個、遠く離れ、披針形、長さ12~28㎜×幅3.5~7㎜、基部は先細り、先は鋭形。雌鱗片は白色透明または淡褐色で、淡褐色の中央に縞があり、長円状卵形、長さ4~5mm、長さは果胞の1/2で、果胞より狭く、先は鋭形。果胞は伏せ~直立し、淡褐色、外側に5~7本の脈が目立ち、内側に3~7本の脈が目立ち、披針形、平ら~平凸形、長さ6~9㎜×幅(1.5~)2~2.5㎜、厚さ0.3㎜、縁は平ら、幅0.2~0.4㎜の翼を含みもつ。嘴の先端は平ら、縁毛のある小鋸歯があり、外側の縫合線はは目立たず、嘴の先端から痩果までの距離は3.1~4.5㎜。痩果は細長い長円形、長さ2~2.7㎜×幅0.8~0.9㎜、厚さ0.3㎜。2n=80。果期は初夏~中旬。

228 Carex myosuroides Vill. ヒゲハリスゲ 髭針菅
  synonym Kobresia myosuroides (Vill.) Fiori [FOC, FNA]
 日本(北海道、本州中部の高山)、朝鮮、中国(甘粛省、河北省、吉林省、内モンゴル、寧夏、青海省、山西省、四川省、新疆、西蔵)、モンゴル、ロシア、カザフスタン、ヨーロッパ、北アメリカ(カナダ、アラスカ、UJSA)、グリーンランド、アイスランド原産。中国名は嵩草 song cao。標高1500~4500mの石灰質土壌、高山の牧草地、岩の上、乾いた尾根、草が茂った斜面、低木の間の湿ったまたは乾燥した開けた場所に生える。
 根茎は短い。基部の鞘は明瞭でかつ宿存し、赤褐色~暗褐色、鈍くまたはわずかに光沢があり、縁と先はときに均等に小繊維で覆われ(fibrillose)、乾燥した葉身を残していない。稈は密に叢生し、直立し、わずかに硬く、鈍い三角形またはほぼ円柱形、高さ3~30(~40)㎝、直径0.5~1mm。葉は根生葉は稈の長さより短いか、またはほぼ同長。葉身は堅く直立し、糸状(断面が筒状)、幅0.25~0.7㎜。 花序は密な穂状花序で、赤褐色~褐色、狭い円筒形、長さ1~3㎝×幅0.2~0.3㎝、最も下側の小穂はときにわずかに離れる。最下の苞は鱗片状、先は芒があるか、または無い。 少数の頂小穂は雄性であり、その他は両性である(下部のものはたまに雌性のみになる)。両性の小穂は基部に雌花と1(~2)個の雄花を持つ。鱗片は黄褐色または赤褐色から暗褐色、淡色の中脈を持ち、卵形または長円状卵形、長さ2~4㎜×幅1.2~2.7㎜、ほぼ膜質、中脈は非常に狭く、縁は広い透明か、透明では無いかまたは狭く透明になり、先は鋭形または円形。前出葉(prophylls)は下面が淡色、上面が褐色、長円形または長円状卵形、長さ2.2~3.5㎜×幅1~1.4㎜、膜質、2本の竜骨があり、竜骨はわずかにザラつき、縁は下1/3または基部近くまで自由、上縁は透明、先は丸いかまたは鋭形。小堅果は褐色~暗褐色、わずかに光沢があり、長円状倒卵形、三角形または扁平三角形、長さ1.8~3(嘴を含む)㎜×幅0.8~1㎜、短い嘴があり、無柄。 柱頭は2岐または3岐(同じ植物に両方ある場合もある)。花果期は5~9月。2n=56。

229 Carex nachiana Ohwi キシュウナキリスゲ 紀州菜切り菅
 日本(本州、四国、九州)、中国原産。海岸近くの丘陵地の林内に生える。  常緑性、根茎緩く叢生し、匍匐枝はない。稈は直立し、硬く、高さ80~120cm、3稜があり、角はザラつく。基部の葉鞘は黒褐色で、繊維に分解する。葉は1~2枚つき、灰緑色で硬く、細い線形、稈より短く、幅2.5~4㎜、平ら、縁はわずかに内巻きする。花序は緩い円錐花序を形成し、直立し、長さ15~30㎝。小穂は多数つき、いずれも雌雄性(両性具有)、花序柄があり、線状楕円形、長さ1.5~3cm×幅約3㎜、先端部には雄花、中下部には雌花がややまばらにつく。苞葉は小さい葉状、基部は緑色の長い鞘となる。上部の苞葉は先が膜質の鞘になり、葉身は短い剛毛状になる。果胞は長卵形~広卵形~広楕円形、長さ3.5~4.5mm、粗い縁を除いて平滑、先端は次第に細まってやや長い嘴となる口部は鋭い2歯がある。堅果は密に包まれ、円状卵形、平凸形で長さ約2㎜。花柱は真っすぐで、基部は短く太くなる。柱頭は2岐、長さ約3㎜。果期は 9~10月。

230 Carex nakasimae Ohwi ハシナガスゲ 
 朝鮮原産。

231 Carex nardina (Hornem.) Fr カレックス・ナルディナ
  synonym Carex gynocrates Wormsk. ex Drej. カンチスゲ
 ロシア、ノルウェー、スウェーデン、北アメリカ(カナダ、アラスカ、USA)、グリーンランド、アイスランド原産。英名はspike sedge , nard sedge。標高50~3300mの北極および高山の露出したツンドラ、通常は石灰質土壌、崖、岩の多い斜面、尾根、頂上に生える。Kewscienceではカンチスゲ(Carex gynocrates)をこの広義のCarex nardinaに含めている。しかし日本は分布域に含めていない。
 多年草。葉は糸のように細くて全体的に繊細。雌鱗片は褐色で、上部の縁は広く透明で卵形、幅と長さは果胞と同長、またはそれよりわずかに短く、中脈はわずかに隆起する。果胞は緑色で、成熟すると薄褐色になり、長さ3~5㎜×幅1.4~2㎜、上部に鋸歯があり、嘴の先端は褐色または透明。 2n=68, 70。果期は7~8月。2変種がある。
231-1 Carex nardina var. nardina
  synonym Carex elyniformis A.E.Porsild
 ノルウェー、スウェーデン、北アメリカ(カナダ、アラスカ、USA)、グリーンランド、アイスランドに分布。
 果胞は形状が卵形または紡錘形、長さ(3~)3.5~5㎜×幅1.4~1.6㎜、嘴は次第に狭まり、長さ0.5㎜、柄は明瞭、長さ0.5~1㎜。
231-2 Carex nardina Carex nardina var. hepburnii (Boott) Kük.
  synonym Carex hepburnii Boott
  synonym Carex nardina var. atriceps Kük.
  synonym Carex stantonensis M.E.Jones
 ロシア、北アメリカ(カナダ、アラスカ、USA)、グリーンランドに分布
 果胞は形状が倒卵形または広楕円形、 長さ3~5㎜×幅1.5~2㎜、嘴は不明瞭、長さ0.4㎜以下、柄は不明瞭、長さ0.2㎜未満。

232 Carex nasuensis K.T.Takah., T.Nog. & M.N.Tamura ナスタマツリスゲ 那須玉吊菅
 日本固有種。本州の栃木県、茨城県、京都府に分布。標高30~1100mの林縁の開けた場所に生える。
 多年草、叢生する。根茎は長さ1~3㎜。 稈は長さ20~50cm、直立し、断面は三角形、平滑。 葉は根生し、長さ10~35cm×幅3~10㎜、稈より短く、淡緑色、鞘の基部は淡褐色。 苞は葉状で小穂より長く、長い鞘がある。小穂は3(~4)個。頂生の小穂は雄性、線形、長さ5~8㎜×幅1~1.5㎜、花が4~8個つき、短い花序柄があり、直立する。雄鱗片は倒卵形、長さ3~4㎜、鋭形、淡緑色、中肋は緑色。側小穂は雌性、楕円形~短円筒形、長さ5~10㎜×幅5㎜、花が2~4個つき、短または長の花序柄があり、わずかに垂れ下がり、最上部の小穂と2番目の雌小穂の間の距離は(3.6~)6.1~14.3(~17.5)㎝。雌鱗片は倒卵形、長さ2~3(~3.5)㎜、鋭形、淡緑色、中肋は緑色。果胞は鈍角の三角形、長さ6.5~8㎜×幅1.5~2㎜、平滑、数本の脈があり、長い嘴は先に向かって先細になる。痩果は果胞に緩く包まれ、楕円形、断面が三角形、長さ2~2.5㎜。柱頭は3岐。花期は4~5月。

233 Carex nebrascensis Dewey, ネブラスカスゲ 
  synonym Carex jamesii var. nebrascensis (Dewey) L.H.Bailey
  synonym Carex jamesii Torr.
  synonym Carex nebrascensis var. eruciformis Suksdorf
  synonym Carex nebrascensis var. praevia L. H. Bailey
  synonym Carex nebrascensis var. ultriformis L. H. Bailey
  synonym Carex Carex nebraskensis Dewey
 カナダ、USA原産。英名はNebraska sedge , Nebraskensis Sedge , Nebraska Fox Sedge。標高0~2500mの湿った牧草地に生える。日本に帰化している。
 叢生しない。稈は鋭角で、長さ20~90cm、ザラつく。葉:下部の鞘は褐色。根生葉の鞘は無毛、前面には斑点と脈がなく、先はU字形。葉身は両面に気孔があり(amphistomic)、幅3~12㎜、無毛。 下部の苞葉は花序と同長、、幅3~7.5㎜。小穂は直立し、雄小穂は1~3個。雌小穂は2~4個。下部の雌小穂は長さ3~5.5 cm×幅5~8㎜、基部は楔形。雌鱗片は赤褐色、果胞より長く、先は鋭形、芒があり、芒は長さ0.5㎜まで。果胞は散開し、褐色で先の1/2に赤褐色の斑点があり、、両面に各5~9本の脈があり、やや膨らみ、緩く痩果を包み、楕円形または倒卵形、長さ2.6~4㎜×幅1.6~2.5㎜、革質、鈍色、先は丸くまたは鈍形 、無毛。 嘴は褐色、長さ0.3~0.6㎜、革質、2歯があり、歯は長さ0.5㎜まで。痩果はくびれず、鈍形。2n=66, 68。果期は7~8月

234 Carex nemostachys Steud. アキカサスゲ 秋傘菅
 日本(本州の近畿地方・中国地方、四国、九州、沖縄)、中国(徽省、福建省、広東省、貴州省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、雲南省、浙江省)、台湾、インド、バングラデシュ、カンボジア、ミャンマー、タイ、ベトナム原産。中国名は条穗薹草 tiao sui tai cao。標高300~1600mの川辺、荒野、森の中の日陰や湿った場所に生える。
 根茎は太くて短く、木質、匍匐性。 稈は高さ40~90cm、太く、三角形、上部はザラつき、基部の鞘はやがて黄褐色の繊維状に崩壊する。 葉は稈より長く、葉身は幅6~8㎜、かなり硬く、基部近くでひだ状になり、上部では平らになり、側部に2本の脈がはっきりとあり、葉脈と縁がザラつく。苞葉は稈より長いかまたは短く、下部の苞葉は葉状、上部の苞葉は剛毛状で鞘がない。小穂は5~8個、稈の上部では連続して配置する。頂生の小穂は雄性、線形、長さ5~10cm、無柄。 側小穂は雌性、円筒形、長さ4~12cm、密に多数の花がつき、花序柄は無いかまたは下部では短い花序柄がある。雌鱗片(glumes)は淡色、狭披針形、長さ3~4㎜、膜質、緑色の1~3本の脈があり、先には芒があり、芒の縁はザラつく。果胞は褐色、開出し、鱗片よりわずかに短く(芒の長さを含む)、卵形または広卵形、鈍角三角形、長さ約3㎜、膜質、小剛毛があり、脈はほとんどなく、基部は楔形、先は急に狭まり細く曲がった嘴となり、開口部は斜めの切形、ときに微細な2歯がある。小堅果は黄褐色、緩く包まれ、広倒卵形またはほぼ楕円形、三角形、長さ約1.8㎜。柱頭は3岐。花期と果期は9月~12月。

235 Carex nemurensis Franch. ホソバオゼヌマスゲ 細葉尾瀬沼菅
北海道~本州中部以北(青森県、尾瀬ヶ原、霧ヶ峰、上高地など)、千島列島、サハリン、カムチャッカ原産。泥炭湿地や湿原に生える。
多年草、密に叢生し、高さ40~70㎝、根茎は短い。葉は幅2~3㎜、濃緑色で縁はザラつく。花序は4~7個の無柄の小穂をやや離れてつけ、長さ4~8㎝。苞は鱗片状、下部の苞は葉身が刺状になる。小穂はすべて雌雄性、長さ5~10㎜、数個の雌花と少数の雄花をつけ、栗褐色でやや光沢がある。雌鱗片は長さ2.5~3㎜、卵形で先が鋭形、栗褐色で緑色の1脈があり、果胞とほぼ同長。果胞は卵状楕円形、長さ2.5~3㎜。上部は急に狭まり、短い嘴があり、縁はザラつき、口部は凹形または微細な2歯がある。果実は長さ約1.7mm。柱頭は2岐。花期および果期は6~7月

236 Carex nervata Franch. et Sav. シバスゲ 芝菅
 北海道、本州、四国、九州、対馬、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は截嘴薹草 jie zui tai cao。山地の林内に生える。
 多年草、高さ10~30㎝。根茎は短く、横に這う。匐枝を出し、広がり、疎生する。基部の鞘は淡褐色、著しく繊維に分解する。葉は幅2~3㎜、柔らかく、扁平、花茎よりかなり短い。小穂は茎頂に集まってつく。 苞の葉身は短く、刺状。雄性の頂小穂は黄褐色、長さ10~15㎜、棍棒状。雌性の側小穂は2~3個つき、長さ7~12㎜、幅約4㎜。果胞は長さ2~2.55㎜、短嘴、脈が目立ち、有毛。鱗片は果胞より短く、芒はない。果実は長さ約1.8㎜、3稜形。柱頭は3岐。花期は4~5月。

237 Carex neurocarpa Maxim. ミコシガヤ 御輿茅
 日本(本州の近畿地方以北)、韓国、中国(安徽省、甘粛省、河北省、黒竜江省、河南省、江蘇省、吉林省、遼寧省、内モンゴル、陝西省、山東省、山西省)、ロシア(極東)原産。中国名は翼果薹草 yi guo tai cao。標高(~)100~1700mの池や川沿いの湿った場所、草地に生える。
 根茎は短く、硬い。 全体に鉄さび色の細点がある。稈は叢生し、扁平で平滑、基部はピンクがかった鉄さび色の葉身のない鞘で覆われる。葉は稈より短いかまたは長い、葉身は線形、幅2~3㎜、平ら、縁は±内巻き、ザラつき、先は尖鋭形。 葉鞘の膜側は鉄さび色。下部の苞葉(総苞片)は葉状、花序をはるかに超え、鞘がなく、上部の苞葉は剛毛状(setaceous)。穂状の花序は密で、ピラミッド形状円筒形、長さ2.5~8㎜×幅1~1.8㎜。 小穂は多数、雄雌性(androgynous)、卵形、長さ5~8㎜。 雌の苞頴(鱗片)は鉄さび黄色、鉄さび色の斑点があり、卵形~長円状楕円形、長さ2~4㎜×幅約1.5㎜、先は鋭形、短い芒がある。果胞は鉄さび色の斑点があり、苞頴より長く、ほぼ準直立、卵形または広卵形、平凸形、長さ2.5~4㎜、膜質、両面に多くの脈があり、上部に密に鉄錆色の細点があり、中央から頂部の縁には小鋸歯のある広い翼があり、頂部は次第に狭まり、嘴になり、口部には2歯がある。小堅果は淡褐色、緩く包まれ、卵形または楕円形、平凸形、長さ約1㎜、平滑で光沢がある。柱頭は2岐。花期および果期6~8月。2n=108。

238 Carex nipposinica Ohwi アワボスゲ 粟穂菅
  synonym Carex rigens Boott
  synonym Carex striata var. japonica Koidz.
 日本(北海道、本州、四国、九州、対馬)、朝鮮、中国、台湾、西ヒマラヤ(インド、パキスタン)原産。中国名は。草地や林の縁などに稀に生える。
 多年草。匍匐枝はなく、小さい株をつくる。茎は高さ30~80cm、3稜がある。基部の葉鞘は暗紫褐色。葉は細い線形、幅3~5㎜。小穂は3~4個、上部のものは接近し、下方のものは離れてつく。頂小穂は雄性、線形、長さ1.5~3cm×幅約2㎜。側小穂は雌性、円柱形、長さ1.5~3cm×幅約5㎜、ほぼ直立する。最下の小穂はしばしばやや離れてつき、長い花序柄がある。苞は葉状で、最下のものの基部は長い鞘となる。鱗片は雌雄ともに先が凹形で芒があり、雌鱗片は芒を含め果胞と同長またはやや長い。果胞は卵形~広卵形、開出し、長さ3~3.5㎜、脈があり、無毛、乾くと黒変し、先は急に狭まり長さ1㎜以下の短い嘴となり、口部は2歯。柱頭は3岐。痩果は倒卵形、3稜形、長さ約2㎜。花期は4~6月。
【Carex browniiとの違い】
 Flora of Chinaではアワボスゲ(Carex nipposinica)はカレックス・ブロウニイー(Carex brownii Tuck.)のsynonymとされていたが、果胞の嘴が1mm以下と短く、口部が2歯。
 Carex brownii は基部の鞘が淡褐色~濃褐色。葉は幅3~5㎜。果胞は倒卵形~広楕円形、脈が明瞭、長さ3.5~4mm、嘴は0.5~0.8㎜と短く先にノッチがある。苞頴(鱗片)は長い鋭形~切形、体と同じかそれを超える長さの微突があり、帯白色、中肋が緑色。雌の苞頴は長さ3~5㎜。果期は4~6月。

239 Carex nodaeana A.I.Baranov & Skvortsov ヒエスゲモドキ 稗菅擬
  synonym Carex pseudolongerostrata Y.L.Chang et Y.L.Yang
 中国(甘粛省、吉林省)原産。中国名は假长嘴薹草 jia chang zui tai cao。標高1800~2300mの高山の凍土、草原、まばらな森林の牧草地に生える。

240 Carex noguchii J.Oda et Nagam. シモツケハリスゲ 下野針菅
 日本固有種。本州(栃木県)に分布。2011年に報告された新種(Acta Phytotax. Geobot. 61: 148 2011)。ハリガネスゲによく似ているが、葉幅が約4㎜と広く、及び果実表面の微細構造が異なる。
 多年草、根茎は短い(abbreviated)、稈は中央にあり、糸状、不規則な三角形~四角形、平滑、長さ25~40㎝、直径0.8~1㎜。生殖枝(reproductive shoot)の葉は長さ5cm×幅約1㎜・以下、有花茎(flowering stem)が出る前に枯れる。 開花後に成長する栄養芽(vegetative shoot)の葉は長さ60㎝×幅4㎜・以下。 外側の葉の断面はV字型。 内側の葉は3稜形、基部の鞘は暗褐色。小穂(spike)は単生、頂生し、雄雌性(androgynous)、狭卵形、長さ10~16㎜、雄性部分は花が8~15個、雌性部分は花が15~23個。雄鱗片は楕円形、先は鈍形、錆褐色、早落性、長さ2.1~2.5㎜。 雄しべは3本。雌鱗片は卵形、先は鈍形、錆褐色、早落性、長さ1.5~2㎜。果胞は円状卵形、長さ1.8~2.0㎜×幅1.3~1.5㎜、ほぼ切形、急に先細りし非常に短い嘴になり、内側の脈は明瞭、外側は不明瞭、腺点は無い。柱頭は3岐。痩果は卵形、三角形、上半分は果胞に緩く包まれ、薄褐色、熟すと暗褐色、長さ1.3~1.5㎜。 表皮(epidermis)のシリカ体(silica bodies)の先は切形、衛星体(satellite bodies)は存在せず、背斜壁(anticlinal walls)はわずかに波打つ。

241 Carex nubigena D.Don カレックス・ヌビゲナ
  synonym Carex nubigena D. Don ex Tilloch & Taylor
 日本、中国(重慶市、甘粛省、貴州省、湖北省、寧夏回族自治区、内モンゴル、陝西省、四川省、西蔵[チベット]、雲南省)、台湾、パキスタン、インド、スリランカ、ネパール、ブータン、ベトナム、フィリピン、インドネシア原産。中国名は云雾薹草 yun wu tai cao。標高(1100~)1300~3700mの小川のほとり、林縁、斜面の道端、芝生の斜面、湿った場所に生える。
根茎は短く、硬い。 稈は叢生し、高さ10~70㎝、断面は三角形、上部はザラつき、基部は褐色の葉身のない鞘で覆われる。葉は稈より短く、葉身は線形、幅1~2㎜、平らまたは扇だたみになり、先は尖鋭形。葉鞘の膜質側には横しわがなく、赤紫色の斑点がある。下部の苞葉は1~2枚が葉状、緑色、花序をはるかに上回り、上部の苞葉は剛毛状。 穂状の花序は長円筒形、長さ2.5~50㎝×幅0.7~1㎝、先で密になり、下部では離れる。小穂は多数、雄雌性(androgynous)、卵形、長さ5~9㎜×幅4~6㎜、ときに基部で枝分かれする。雌鱗片は淡緑色、卵形、長さ2.5~2.8㎜、膜質、緑色の1脈があり、先は鋭形で芒がある。果胞は淡緑色、まれに赤褐色を帯び、鱗片より長く、卵状披針形または長円形、断面が平凸形、長さ2.5~3.5㎜×幅約1㎜、膜質、両面に多数の脈があり、無毛、基部は短い柄があり、縁は厚くなり、翼はなく、先は徐々に狭まり、長い嘴になり、口部には2歯がある。小堅果は淡褐色、きつく包まれ、広楕円形またはほぼ円形、平凸形、長さ約1.2㎜、基部には短い柄がある。柱頭は2岐。花期と果期は6~8月。
241-1 Carex nubigena subsp. nubigena
 中国(重慶市、湖北省、内モンゴル、西蔵[チベット])、インド、パキスタン、ジャワ、ネパール、ブータン、スリランカ、チベット、ベトナム、インドネシア原産。中国名は云雾薹草 yun wu tai cao。

241-2 Carex nubigena D. Don ex Tilloch et Taylor subsp. albata (Boott ex Franch. et Sav.) T. Koyama ミノボロスゲ 蓑襤褸菅

  synonym Carex albata Boott ex Franch. & Sav. [Kewscience]
  synonym Carex nubigena subsp. albata (Kük. ex Matsum.) T.Koyama
 日本(北海道の西南部、本州の中部地方以北)、朝鮮、中国(重慶市、湖北省)、千島列島原産。中国名は褐红脉薹草 he hong mai tai cao。標高約1900mの山地の斜面、道端、草地、湿地に生える。KewscienceではCarex albataとしている。
 高さ20~60㎝。根茎は短く、叢生する。茎は稜が鋭く、ざらつき、基部の葉鞘は赤褐色~黒褐色。葉は幅2~3㎜、花茎より短い。茎頂に円柱形の花序を1個つける。花序は長さ2~5㎝、雄雌性の小穂を多数、密につける。苞は細く、長さがバラつき、花序より短いものが多い。小穂は無柄、長さ5~8㎜、雌花が多数つき、頂部に雄花がつく。果胞は長さ4~5㎜、上面が平らな卵状披針形(広披針形)、赤褐色を帯び、長い嘴があり、縁に狭い翼がつき、ザラつき、口部は2歯。鱗片は果胞より短く、褐色、中肋は緑色、縁は薄膜質。痩果は褐色、光沢があり、長さ約1.3㎜の卵円形。柱頭は2岐。果期は5~7月。2n=112。

241-3 Carex nubigena var. franchetiana Ohwi ツクシミノボロスゲ 筑紫蓑襤褸菅

  synonym Carex nubigena D.Don subsp. albata (Boott ex Franch. et Sav.) T.Koyama var. franchetiana Ohwi

  synonym Carex phaeoleuca Ohwi
 本州(中国地方)、九州に分布。山地や高原の草地、湿地に生える。
 高さ15~40cm、根茎は短く叢生し、大株となる。基部の鞘は黄緑色。葉は幅1.5~2.5mm、有花茎より短い。有花茎は平滑、花序は穂状花序、円柱形、長さ1.5~3cm、無柄の小穂がやや密につく。苞は葉身が線形。小穂は雄雌性、長さ5~8mm。雄鱗片は緑白色。雌鱗片は緑白色、果胞よりやや短く、先は鈍形~鋭形。果胞は雌鱗片よりやや長く、痩果は卵状円形、長さ約1.2~1.5mm。柱頭は2岐。2n=112。

241-4 Carex nubigena D.Don subsp. pseudoarenicola (Hayata) T.Koyama ニイタカカワズスゲ 

  synonym Carex pseudoarenicola Hayata
 台湾、フィリピンに分布。中国名は聚生穗序薹 ju sheng sui xu tai。高所の濡れた場所に生える。
 小穂は3~5個、間隔を開けず、密集してつく。

242 Carex ochrochlamys Ohwi ヒメホスゲ 
 朝鮮原産。

243 Carex odontostoma Kük. ミヤマイワスゲ 深山岩菅
  synonym Carex odontostoma var. glabrior Ohwi
  synonym Carex chrysolepis var. odontostoma (Kük.) Ohwi

  synonym Carex chrysolepis Franch. et Sav. var. glabrior (Ohwi) Ohwi カンサイイワスゲ

  synonym Carex glabrior (Ohwi) Akiyama
 日本固有種。本州(近畿地方)、四国、九州、対馬、屋久島。別名はカンサイイワスゲ。山地の岩場に生える。
 根茎は短く、叢生する。花茎は高さ15~35cm、上部はややザラつく。基部の鞘は暗褐色、古くなると繊維状に裂ける。葉は花後に伸張し、幅1.5~2.5mm、硬く、ザラつく。苞葉は葉身が刺状。頂生の小穂は雄性、まれに基部に雌花をつけ、こん棒形、長さ1~1.6cm、無柄または短い花序柄があり、雄鱗片は淡褐色、鈍頭。側小穂は雌性で疎らに果胞を付け、短い円柱形、長さ1~2.5cm、下部の小穂には明瞭な柄があり、雌鱗片は淡褐色、先が鋭形、果胞より短い。果胞は披針形、長さ6~7㎜、まばらに短毛があり、縁には細鋸歯があり、基部には短い柄があり、先には非常に長い嘴があり、口部は鋭2歯がある。痩果はしっかり果胞に包まれ、狭楕円形、長さ2.8~3mm、基部に長い柄がある。柱頭は3岐。果期は5~6月。
 カンサイイワスゲは学名はミヤマイワスゲに統合されたが、形態に明瞭な違いがあるとされていた。

243-1 Carex chrysolepis Franch. et Sav. var. glabrior (Ohwi) Ohwi カンサイイワスゲ

  synonym Carex odontostoma var. glabrior Ohwi
 多年草、叢生し、匍匐枝がない。花茎は高さ30~40cm。基部の鞘は淡褐色、繊維状に分解する。葉は有花茎と同じか長い。頂小穂は雄性、褐色。側小穂は雌性で長さ1~3cm、2~3個が離れてつき、下部のものは花序柄が長い。雄鱗片は淡褐色、先が鋭形。果胞は鱗片より長く、狭長円形、長さ5~6mm、まばらに短毛があり、嘴は長く、口部は2歯。柱頭3岐。果期は5~6月。

244 Carex oederi Retz. カレックス・オエデリ
  synonym Carex flava var. oederi (Retz.) DC.
  synonym Carex viridula subsp. oedocarpa (Andersson) B. Schmid [FNA]
 日本、ロシア、南西アジア、ヨーロッパ、モロッコ、北アメリカ原産。英名はOeder's sedge , small-fruited yellow-sedge。ニュージーランド、タスマニアに帰化。標高0~200mの湿った、開けた、酸性の海岸平地、牧草地に生える。石灰を多く含む土壌には見られない。FNAではCarex viridula subsp. oedocarpaとし、Carex oederi Retz.はbasionymとしている。
 稈は弓形またはわずかに曲がりくねり、長さ10~35cm。花茎の葉は同じ稈よりも短く、幅は1.4~4.6㎜で、上部の茎葉の葉舌は通常廃れる。花序: 頂生の雄性小穂は花序柄が長さ(1~)3~28㎜。下部の雌性小穂は(1~)2~5個つき、近接し、下部では通常遠くに離れ、花序柄があり、楕円形、幅5.3~8.5㎜。頂生の雄性の小穂は花序柄があり、長さ9~23.8㎜×幅1.3~3.3㎜。果胞は濃いオリーブ色~緑色、長さ(2.7~)3.2~3.8(~4.2)㎜× 幅1.1~1.7㎜、先は徐々に狭まり平滑かまたはわずかにザラつき、真っ直ぐまたはわずかに湾曲した(28°未満)嘴になる。嘴は長さ0.7~1.7mm。 痩果は長さ1.1~1.5㎜×幅0.9~1.2㎜。果期は7~8月。
244-1 Carex oederi var. oederi エゾサワスゲ 蝦夷沢菅
  synonym Carex viridula Michx. [YList]
 叢生する。稈は真っ直ぐまたは弓なりになり、さは2~85cm。花茎の葉は稈より短い~超え、長さ20㎝×幅0.8~5.4mm・以下。上部の茎葉の葉舌は、通常は廃れる(Carex viridula subsp. brachyrrhyncha を除く)。 花序:頂生の雄性小穂の花序柄は長さ0~28mm。 苞葉は長さ18㎝×幅0.6~3.4mmまで。鞘の内側の帯はは凹面または切形。小穂:下部の雌性小穂は1~8個、連続または下部では離れ、無柄または短い花序柄があり、球形~短円筒形、長さ4~17.5㎜×幅3~11㎜。頂生の雄性小穂は無柄または花序柄があり、長さ5~25㎜×幅1~3.6㎜。 鱗片: 雌鱗片は淡褐色~赤褐色、長さ1.4~3.2㎜×幅0.8~1.7㎜、縁は淡く狭く、透明。 鱗片は赤褐色、披針形~卵形、長さ2.3~5.2㎜×幅0.7~2㎜、縁は狭く淡色の透明、先は鈍形~尖鋭形。 葯は長さ0.9~3.1㎜。果胞は広がり、黄色~暗オリーブ色、長さ1.8~4.2㎜×幅0.8~2㎜、先は徐々にまたは急に狭まる。嘴は真っすぐまたは20°未満で反り返り、長さ0.3~2.1㎜、ザラつくかまたは平滑。痩果は長さ1~1.8㎜×幅0.7~1.4㎜(FNA)。
244-2 Carex oederi var. bergrothii (Palmgr.) Hedrén & Lassen
  synonym Carex bergrothii Palmgr.
 ヨーロッパ北部、イギリスに分布。
 高さ17~35(60)cm、茎はまっすぐで、薄緑色。葉は幅1~2mm、平らで、乾くと黄色になる。苞葉は 長さ(4)6.5~9.5(12)㎝、鞘は長さ0.5~1.5㎝、または無い。花序は(1)2~3個の下部の雌小穂からなる。上部の雄小穂は1個、長さ0.7~1.3㎝。小穂の間隔は0.5~1.5(5)㎝離れ、 下部の小穂は長さ1㎝まで花序柄の上につく。果胞は薄緑色、後に黄色になり、膨れ、長さ3~3.8mm×幅1.8~2mm、明瞭な脈があり、そのうち1~2本はより明瞭、嘴は真っ直ぐで、長さ1~1.5㎜、先端にノッチがあり、平滑。雌小穂の鱗片は卵形、明るい褐色で、縁が狭い白色。雄小穂は長さ1.0~2.2㎝、無柄または長さ1.5㎝までの花序柄がある。正常に発達した堅果に加えて、不捻の個体が発見され、これはおそらく交雑によるものである(ロシア)。

245 Carex okamotoi Ohwi チイサンタガネソウ 
 朝鮮原産。

246 Carex okuboi Franch. シマタヌキラン 島狸蘭
 日本固有種。伊豆諸島に分布する。湿った岩の斜面、荒地などに生える。
 大株となり叢生する。稈は断面が円形。基部の鞘は赤褐色。花序は小穂が4~7個、集まって密に接してつき、柄が短く、普通垂れ下がる。頂生の小穂は雄性、その他の小穂は雌性。果胞は縁が肥厚し、嘴が長く、口部は深い2歯となる。痩果は緩く果胞に包まれ、花柱は宿存し、長く、果胞の中で果胞の口部につかえて湾曲することが多い。柱頭は2岐。

247 Carex oligosperma Michx. カレックス・オリゴスペルマ
 カナダ、USA原産。英名はfewseed sedge, few-seeded sedge, few-fruited sedge。

248 Carex olivacea Boott カレックス・オリバケア
 中国(四川省、雲南省)、インド、ブータン、バングラデシュ、インドネシア原産。中国名は榄绿果薹草 lan lü guo tai cao。標高1200~3000mの湿地、湿地帯に生える。

249 Carex omiana Franch. ヤチカワズスゲ 広義
 日本(北海道、本州、四国、九州)、千島列島、中国(遼寧省)原産。
249-1 Carex omiana Franch. et Sav. var. omiana ヤチカワズスゲ 谷地蛙菅
 日本(北海道、本州、四国、九州)、千島列島、中国(遼寧省)原産。中国名は星穗薹草 xing sui tai cao。湿原、湿地に生える。和名の由来はカエルの住むような湿地に生えることから。
 多年草、緩く叢生し、高さ30~60㎝。葉は幅1.5~2.5㎜、花茎より短い。茎頂部に(2)3~5個の小穂をつける。小穂は雌雄性(gynaecandrous)で、長さ6~15㎜、褐色~緑色。頂小穂は基部の雄花部が長く、他は雄花部が短く、下方の小穂ほど雌花部が長くなる。雌鱗片は果胞よりも短く、先は鋭形または鈍形、茶褐色。果胞は熟すと褐色になり、開出~反り返り、長さ4~5㎜、下部が海綿質で、厚く丸くなり、先は次第に細くなって長い嘴となり、内面(腹面)が平ら、外面(背面)は丸く、脈がある。痩果は長さ約2㎜、下部だけにときにやや三稜があるレンズ形の卵状披針形。柱頭は2岐。
249-2 Carex omiana Franch. et Sav. var. monticola Ohwi カワズスゲ 蛙菅
 北海道、本州(中部地方以北)に分布。亜高山帯の湿原に生える。
 ヤチカワズスゲの高山型の変種。ヤチカワズスゲより小型。多年草、高さ10~30㎝、果胞は長さ3.5~4㎜。果期は6~7月。
249-3 Carex omiana Franch. et Sav. var. yakushimana Ohwi チャボカワズスゲ 矮鶏蛙菅
 屋久島の高地に自生し、高さ10㎝以下。

250 Carex omurae T.Koyama スルガスゲ 駿河菅
 日本固有種。静岡県の安倍峠、山梨県の西沢渓谷にのみ分布する。山地ブナ帯の樹林内の急斜面や岩場に生える。
 根茎は短く叢生し、匍匐枝は無い。茎は高さ15~20㎝。基部の鞘は暗紫褐色。葉は果期にも有花茎より著しく低く、幅3~5㎜、縁に上向きの小剛毛(歯)があり、常緑で深緑色、硬く光沢があり、先端が急に狭まり、両縁がザラつく。先端部の雄小穂は赤紫色、長さ1.5~3㎝。その下の雌小穂はやや先端寄りにつき、長さ1.5~3㎝、花がまばら。雌小穂の鱗片は先は鋭形、芒は無い。果胞は雌鱗片より長く、無毛で数本の脈があり、先に嘴があり、口部に浅い2歯がある。柱頭は3岐。2n=32。果期は6月。
 ヒメカンスゲに似るが、鱗片の先は鋭形で凹形とならない。

251 Carex onoei Franch. et Sav. ヒカゲハリスゲ 日陰針菅
 日本(北海道南部、本州の中部以北)、朝鮮、中国(甘粛省、河北省、黒竜江省、吉林省、遼寧省、陝西省、浙江省)、ロシア原産。中国名は针叶薹草 zhen ye tai cao。標高500~1600mの森林、湿った草原、川岸に生える。
 根茎は短い。稈は叢生し、高さ20~40㎝、柔らかく、角がわずかにザラつき、基部は淡褐色の根生葉の鞘に囲まれる。葉は稈より短く、葉身は幅1~1.5㎜、平らで柔らかい。花序は1個の小穂が、頂生し、雄雌性花序(androgynous)、広卵形~球形、長さ5~7㎜。雄部分は離生ではなく、2~3個の花がつく。ほとんどが雌小穂で、通常は5~6個の花がつく。雌鱗片は側部が淡褐色、広卵形、長さ約2㎜、膜質、3脈のある肋は淡色。果胞は成熟すると水平に開出し、卵状長円形、断面は不明瞭な三角形、長さ2.5~3㎜、膜質、特に外側に明瞭な側脈があり、基部は丸く、先は急に狭まり短い嘴になり、口部には微細な2歯がある。小堅果はしっかり包まれ、倒卵状長円形~楕円形、断面は三角形、長さ約2㎜、花柱の基部は太くなく、宿存性。柱頭は3岐。

252 Carex orthostemon Hayata アリサンモエギスゲ 
 台湾原産。中国名は直蕊薹草 zhi rui tai cao。山地の森林の開けた草地に生える。

253 Carex oshimensis Nakai オオシマカンスゲ 大島寒菅
 日本固有種。伊豆諸島に分布。海岸近くから山頂付近まで広範囲に生える。
 常緑、密に叢生し、大きな株を作り、高さ20~50㎝。葉は幅が広く、硬い。頂小穂は雄性、円柱形、濃赤褐色、初春に開くと白っぽいタヌキの尻尾のように見える。側小穂は数個つき、通常、雄雌性(androgynous)で上部に小さい雄花部がある。鱗片は濃褐色、長い芒がある。果胞は雌鱗片より長く、倒卵形、まばらに毛があり、乾くと稜間に7~9脈があり、先の嘴は短く。口部は2歯。柱頭は3岐。花期は3~5月。

253-1 Carex oshimensis Nakai f. variegata Hid.Takah. フイリオオシマカンスゲ 

 葉が斑入りの園芸品種、ベアグラスの名前で流通している。

254 Carex otaruensis Franch. オタルスゲ 小樽菅

  synonym Carex otaruensis Franch. var. kadzuoana T.Koyama ミカワナルコ

 北海道、本州、四国、九州、中国原産。中国名は鹞落薹草 yao luo tai cao。別名はヒメテキリスゲ。山地の湿った場所、水辺に生える。
 多年草、高さ40~60㎝。株は叢生し、基部の鞘は葉身を欠き、濃褐色、糸網を生じる。茎の稜に小刺があり、ざらつく。葉は幅3~6㎜、縁に上向きの小刺があり、著しくざらつく。苞は長く、無鞘。小穂は4~5個つき、頂部の雄小穂は線形、直立する。側小穂は雌性、幅3~4㎜、長さ3~6㎝、細くて長い柄があり、垂れ下がる。側小穂の先に雄花をつける小穂も多い。果胞は長さ2.5~3㎜、狭卵形~狭長楕円形、両面凸形、平滑、やや嘴があり、口部は凹形、熟しても膨れない。鱗片は淡緑色で短い芒があり、果胞より幅が狭く、長さはほぼ同長で、やや短いものや、やや長いものが混ざる。痩果は長さ1.5~2㎜、倒卵形、断面はレンズ形。柱頭は2分岐。果期は5~6月。

255 Carex otayae Ohwi ナガエスゲ 長柄菅
 日本固有種、本州の秋田県~福井県に渡る日本海側の多雪地域にのみ分布する。低地から山地帯上部の斜面の湿性の草地に生える。
 多年草。比較的大型で、高さ70~120cm。根茎は短く横に這い、全体に柔らかい。茎は密に叢生する。葉は茎より長く、幅4~10㎜、縁はザラつき、下面は灰緑色、上面には主脈の両側の2脈が目だつ。基部の鞘は葉身が発達せず、赤褐色、古い鞘は繊維状に細かく裂ける。花茎は上部がザラつき、下部は平滑。小穂は5~7個つき、頂部と上部の合わせて2~4個の小穂は雄性で、長い柄がある。下部の小穂は雌性、ときにその先端部に雄花部があり、雄雌性となり、長い柄があり垂れ下がる。苞葉は葉状、長さ10~25cm、葉身がよく発達し、鞘はない。雄小穂は線形、長さ3~4cm、花序柄は長さ1~2cm。雄鱗片は赤褐色で先端は鋭く尖る。雌小穂は狭円柱形、長さ3~10cm、雌花は20~40個つく。花序柄は長さ1~4cm。雌鱗片は果胞より長く、緑白色、縁が赤褐色になり、先は尖鋭形または通常長さ0.8~1㎜の芒となり、特に最下の雌鱗片の芒は長さ6~8mmにもなる。花期は5~7月。

256 Carex oxyandra (Franch. et Sav.) Kudô  ヒメスゲ 姫菅
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、台湾、千島、サハリン、ロシア原産。ブナ帯以上の地域の山地の草地や林下に生える。
 多年草。稈は叢生し、細い匍匐枝も伸ばし、高さ10~50cm。基部の鞘は糸網を生じない。葉は花茎より短い。花茎の先端に無柄の小穂を固まってつける。頂生の雄小穂は線形、側生の雌小穂は短い円柱形~楕円形、小さく長さ5~7㎜×幅2㎜。雌鱗片は暗赤紫色。果胞は倒卵形、長さ2.5~3.5㎜、熟すと白っぽくなる。花期は5~7月。

256-1 Carex oxyandra (Franch. et Sav.) Kudô var. lanceata (Kük.) Ohwi ナガミヒメスゲ 長実姫菅

 日本に分布。果胞の特に嘴が長い。

257 Carex oxyphylla Franch. カタスゲ 硬菅
  synonym Carex macrandrolepis H.Lév.
 日本(本州の千葉県・伊豆諸島以西)、四国、九州)、朝鮮、中国(四川省、雲南省)、台湾、ベトナム、フィリピン、インドネシア、インド、スリランカ原産。中国名は尖叶薹草 jian ye tai cao。標高1300~3000mの照葉樹林、林縁に生える。
 根茎は匍匐性。 稈は高さ20~40㎝、平滑。葉は稈を超え、葉身は線形、幅2~4㎜、平ら、縁はザラつき、先は長い尖鋭形。 苞は葉状、下部の苞は鞘があり、上部の苞は短い鞘があるか、または無い。小穂は3~5個、最も下部の小穂は遠く離れ、上部の小穂は近接してつく。頂生の小穂は雄性、円筒形、ほぼ鋭形、長さ約2㎝、短い花序柄がある。側小穂は雌性、しばしば数個の雄花をつけ、長円形または円筒形、短い花序柄がある。雌鱗片は淡い白色、卵状披針形または卵形、緑色の1脈のある肋が芒状に突き出る。果胞は緑褐色、鱗片と同長、卵状三角形、長さ約3㎜、先は急に狭まり短い嘴となり、口部には2歯がある。小堅果は倒卵形または広卵形、長さ約1.2㎜、断面は三角形、面は凹面で表面に透明な粒があり、先は丸い。花柱の基部は太くない。柱頭は3岐。花期と果期は5~6月。

258 Carex pachygyna Franch. et Sav. ササノハスゲ 笹の葉菅
 日本(本州の近畿以西、四国)原産。山地の樹林内、林縁に生える。
 根茎は匍匐して、肥厚する。茎は柔らかく、基部に淡色の鞘がある。葉舌は膜質、淡紅色を帯びる。葉は披針形、幅1~2cm、無毛、果期には前年の葉が枯れずに残る。花茎は高さ15~30cm。花茎の葉は退化して苞と同形になり、苞は卵形で基部は長い鞘となる。1個の苞に2~3個の小穂をつける。小穂は雄雌性、球形で長さ4~5mm。雌鱗片は広卵形で円頭、緑白色、果胞より短い。果胞は長さ2~2.5mm、3稜形、無毛。柱頭は太く短く、3岐。果期は5~6月。

259 Carex pallescens L. ウスイロスゲ 薄色菅
  synonym Carex pallida C.A.Mey.
  synonym Carex chalcodeta V.I.Krecz.
  synonym Carex leucantha Schur
  synonym Carex microstoma Franch.
 北海道・本州(北部)、東南アジア(北部)原産。別名はエゾカワズスゲ。低地から山地の湿性な草原や林床に生える。
 多年草、高さ30~60cmになる。根茎は地下を横に長く這い、緩く叢生する。花茎は上部がザラつき、3稜形。基部の鞘は褐色で、ときに繊維状に細裂する。小穂は4~10個が上部では密に、下部ではやや間隔を開けてつく。小穂は雄雌性で、上部の小穂は雄花、下部の小穂は雌花のみのことが多く、ときに雄花と雌花が混じる。苞には葉身がない。果胞は雌鱗片とほぼ同長、卵形~狭倒卵形で、少数の微細な脈があり、疎らに伏した短毛があり、両縁は狭い翼があり細鋸歯状、先は次第に狭まってやや長い嘴となり、口部は2歯。柱頭は2岐。

260 Carex pansa L.H.Bailey マキバクロカワズスゲ 牧場黒蛙菅

  synonym Carex arenicola subsp. pansa (L. H. Bailey) T. Koyama & Calder

 北アメリカ西部原産。英名は sand dune sedge。標高0~30mの砂丘や砂地の開けた場所に生える。日本に帰化している。
 根茎は粗く、太さ1.8~2.6㎜、通常は長く分岐していない部分があり、そこから数節ごとにシュートが単独で生じる。稈は鋭角な三角形で、長さ8~40㎝、上部の角がザラつく。葉:基部の鞘は暗褐色。鞘は内側に透明な帯があり、先は長くならず、無毛。葉舌は長さ0~1.2㎜。葉身は幅1.7~3.8㎜。花序は長さ1.2~2.5cm。穂状花序は3~12個、通常は単性。雄の穂状花序は披針形。雌の穂状花序はコンパクトな卵形。雌鱗片は暗赤褐色~ほぼ紫黒色、広い透明な縁を持ち、卵形、先は鋭形~尖鋭形で芒があり、光沢がある。葯は長さ1.7~3.1㎜、尖端(apiculus)は剛毛状 (30×)。果胞(perigynia)は成熟すると暗褐色からほぼ黒色、本質的に内面に脈がなく、通常±無毛、卵形、平凸形、長さ3.1~4.2㎜×幅1.3~1.8㎜、鈍形、嘴は長さ0.7~1.5㎜、先は±透明、不明瞭な2歯がある。果期は5~7月。

261 Carex papulosa Boott エゾツリスゲ 蝦夷吊菅
 日本(北海道、本州の東北地方・関東地方・長野県、九州の大分県、熊本県、宮崎県)、朝鮮、モンゴル、ロシア原産。林内のやや湿った草地、湿地に生える。
 高さ30~60㎝、緩く叢生し、根茎は横に短く伸びる。花茎は柔らかい。基部の鞘は白色で脈が緑色。葉は幅3~7㎜、柔らかく、全体に緑白色を帯び、下面には白色の細点が密にある。苞には短い葉身がある。小穂は2~3個、離れてつく。頂小穂は雄性、黄褐色~褐色、長さ1.5~3㎝、長い柄がある。側小穂は雌性、長さ1~2㎝、少数の果胞を付け、長い柄があって垂れ下がる。雌鱗片は中央が緑白色、縁は淡褐色~黄褐色を帯び、先は鋭形で芒があり、果胞と同長かやや長い。果胞は紡錘状卵形、長さ5~6㎜、無毛、先は次第に嘴となり、口部はやや斜めの切形。柱頭は3岐。果期は4~5月。

262 Carex parciflora Boott グレーンスゲ 
  synonym Carex jackiana subsp. parciflora (Boott) Kük.
  synonym Carex kamikochiana Nakai
 日本、千島列島、サハリン原産。山地の湿った樹林内や林縁、湿地などに生える。
 根茎は短く、叢生する。稈は高さ40~80cm、平滑。葉は稈より短く、幅5~12mm、鮮緑色、平滑。基部の鞘は淡褐色。苞の葉身は葉状、ゆるく包む鞘がある。頂小穂は雄性、紡錘形、長さ1~1.5cm、短い柄がある。雄鱗片は緑白色、先が鋭形。側小穂は雌性、短い円柱形、長さ1~3cm、花序柄があり、まばらに花が5~8個つく。雌鱗片は緑白色、果胞の長さの2/3以上の長さがあり、通常先は尖鋭形~短い芒がある。果胞は雌鱗片よりも長く、倒卵形、長さ3.4~4.5㎜、成熟すると斜上し(花序軸に対し上向きに45°になり)、稜間に脈があり、無毛、嘴は長い。痩果は果胞にしっかり包まれ、楕円形、長さ2~2.5mm。柱頭は3岐。2n=38~40,42,44,46,48。

263 Carex pauciflora Lightf. タカネハリスゲ 高嶺針菅
 日本(北海道、本州の吾妻山、尾瀬、苗場山)、朝鮮、ロシア、ヨーロッパ、北アメリカ(カナダ、アラスカ、USA)原産。標高0~1500mのミズゴケ湿原や酸性泥炭(湿った苔むしたツンドラ、乾燥したヒース、高山の泥沼、湿った森林)、通常は開けたミズゴケマット上に生え、針葉樹の部分的な日陰にも生える。
 根茎は長さ0.2~10cm、直径0.6~1.2mm。 稈は単独で、または2~6(~12)本、長さ10~40(~60)cm、緩く叢生し、先はわずかにザラつく。葉: 下部の1~4個は葉身のない、またはほぼ葉身のない鞘になる。葉は稈ごとに1~2(~3)個つき、葉舌は幅と長さがほぼ同じ。葉身は主に長さ1~3(下部の葉身)㎝または5~13(上部の葉身)㎝×幅0.5~1.6 ㎜。小穂は(1~)2~4個の雄花と(1~)2~6(~7)個の雌花がつく細い頂生の円錐形、長さ3~10(しばしば5~8)㎜×幅2~8(未熟な果実)、または長さ17(成熟した果実)mmまで。雌鱗片は長さ3.7~5.9㎜、果胞より幅が広く、長さは果胞の2/3。雄鱗片は密着する。果胞は薄緑色で、麦わら色または淡褐色になり、披針状錐形~狭い細長い長円形、長さ(5~)5.9~7.8㎜×幅0.7~1.1㎜、長く先細り、嘴は不明瞭、小軸は痕跡。痩果は長さ2~2.4㎜×幅0.8~1 ㎜。花柱は嘴の口部から、長さ0.2~1.3㎜が 突き出る。2n=約74, 76。果期は5月下旬~9月上旬。

264 Carex paxii Kük. キビノミノボロスゲ 吉備の蓑襤褸菅
 日本(岡山県の吉備津彦神社)、朝鮮、中国(江蘇省、江西省)原産。紫疣薹草 zi you tai cao。斜面や草地などの湿った場所に生える。
 根茎は短く、斜めで、硬い。稈は叢生し、高さ12~55㎝、断面は三角形、上部はザラつき、基部は繊維状に崩壊する暗褐色の鞘で覆われる。葉は稈より短いかまたは長く、葉身は線形、幅1.5~2.5㎜、平ら、縁はザラつき、先は長い尖鋭形。下部の苞葉は剛毛状、上部は鱗片状。穂状の花序は長い円筒形、長さ3~6.5㎝×幅5~10㎜。小穂は多数つき、雄雌性(androgynous)、卵形、長さ5~7㎜。雌鱗片は黄褐色、卵形、長さ2.2~3㎜×幅1.5~2㎜、膜質、中央に緑色の3脈がある。果胞は黄褐色、卵状円錐形、平凸形、長さ2.5~3.2㎜、ほぼ革質、両面に多数の脈があり、外側に数個の紫赤色のいぼ状突起があり、基部はほぼ丸く、海綿状で、短い柄があり、縁は中央から先まで、小歯のある狭い翼があり、先は徐々に狭まって嘴になり、口部は2歯。小堅果は緩く包まれ、卵形またはほぼ楕円形、両凸形、長さ1~1.2㎜×幅約1㎜、光沢があり、基部には短い柄がある。柱頭は2岐。花期と果期は6~9月

265 Carex pediformis C.A.Mey. タカヒカゲスゲ 高日陰菅
 朝鮮、中国(甘粛省、河北省、黒竜江省、吉林省、内モンゴル、陝西省、山西省、新疆)、モンゴル、ロシア、アジア西部、ヨーロッパ原産。中国名は柄状薹草 bing zhuang tai cao。標高500~2000mの草原、山の斜面、緩い森林に生える。
 根茎は短く斜上するものの密に叢生する。稈は著しくざらつく。葉は幅1.5~2.5㎜、葉の上面にパピラ(乳頭状突起)が密にある。雌鱗片は長さ 4-5 mm。果胞は長さ約3㎜。果胞は通常、脈が無いか、または外側に不明瞭な短い脈があり、側部に2本の脈があり、内側に細い数本の脈があり、または短い脈があり、まれに両面に脈が無い。2n=70。

265-1 Carex pediformis C.A.Mey. var. pedunculata Maxim. オオヒカゲスゲ 大日陰菅

 朝鮮、中国(黒竜江省、吉林省、内モンゴル)、ロシア原産。中国名は柞薹草 zuo tai cao。標高500~600mの森林に生える。
 果胞は通常、両面に凸状の脈が数本ある。花期と果期は5~6月。

266 Carex peiktusani Kom. マンシュウクロカワスゲ 満州黒川菅
 日本(本州の八ヶ岳、南アルプス)、朝鮮、中国(河北省、黒竜江省、遼寧省、山東省、山西省)、ロシア原産。中国名は白头山薹草 bai tou shan tai cao。標高1000~1700mの森、川辺に生える。
 根茎は短い。 稈は高さ30~60㎝、断面は三角形で、基部は紫色の鞘で覆われ、繊維状にわずかに崩壊する。葉は稈より長く、葉身は灰緑色、線形、幅2~4.5㎜、平ら、縁はザラつき、先は尖鋭形。苞葉は葉状で、花序より長く、鞘はない。小穂は3~4個。 頂小穂は雌雄性(gynaecandrous)、長さ2~2.5㎝、円筒形、花序柄は長さ0.7~1㎝。側小穂は雌性、長さ1.8~2.5㎜、長楕円形または長い円筒形、最も低い穂は長さ2~3㎝、わずかに垂れ下がる。雌鱗片は淡い鉄さび色または緑白色、披針形または卵状披針形、長さ3~4㎜、3本の脈がある。果胞は黄緑色で、斜めに開出し、鱗片と同長かそれよりわずかに長く、楕円形、断面は三角形、長さ3.5~4㎜、5~6本の脈があり、先は徐々に狭まって短い嘴になり、口部には2歯がある。小堅果は倒卵形または倒卵状楕円形、断面が三角形、長さ約2㎜、基部は短い柄がある。柱頭は3岐。花期と果期は6~8月。

267 Carex pellita Muhl. ex Willd. ヒメビロードスゲ 
 北アメリカ(カナダ、アラスカ、USA、メキシコ)原産。英名はwoolly sedge。標高0~2900mの湿~乾いた牧草地、湿地、川岸、湖岸、開けた車道や森林地帯、低い砂丘、溝、その他の通常湿った場所、特に石灰質土壌の地域に生える。日本に帰化している。
 群落をつくり、根茎が長く這う。稈は側生、断面が三角形、長さ15~100㎝、平滑または角がわずかにザラつく。葉: 基部の鞘は赤紫色、通常は小繊維で覆われ、葉身はなく、内側の帯の先は無毛。葉舌は長さ(1.2~)2~12㎜。葉身は緑色で、基部と先端を除いて平らまたはM字形、葉の中脈と鋭く尖った竜骨を形る。下部の苞は幅(2~)2.2~4.5(~6)㎜、先端は長くなく、無毛。 花序は5~30cm。頂生の小穂の花序柄は長さ(0.8~)2~9 cm。下部の1~3(~4)個の小穂は雌性、斜上する。上部の小穂は直立する。頂部の1~3個の小穂は雄性。雌鱗片は披針形~卵形、先は鋭形~尖鋭形で芒があり、無毛または先の縁がザラつく。果胞は斜上し、広卵形、長さ2.4~5.2㎜×幅1.7~2.8㎜、密に毛があり、細胞の詳細と脈を覆い隠し、嘴は長さ(0.6~)0.8~1.6㎜、堅く、2小歯があり、歯は真っすぐで、長さ0.4~0.8㎜。2n=78。果期は5~8月。

268 Carex perakensis C.B.Clarke ダンスゲ 
 中国(福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、海南省、四川省、雲南省)、台湾、インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム原産。中国名は霹雳薹草 pi li tai cao。標高700~1800mの森林内の日陰で湿った場所に生える。

269 Carex persistens Ohwi キンキカサスゲ 近畿笠菅
  synonym Carex dispalata var. takeuchii Ohwi
 日本固有種。本州の近畿以西に分布する。山地の河畔や湿地に生える。
 地下に横走する長い根茎があり、群生する。高さ30~70㎝。基部の鞘は淡色で一部赤紫色を帯びることがあり、わずかに糸網を生じる。葉はやや柔らかく幅4~8㎜、断面はM字形。頂小穂は雄性、線状円柱形、長さ3~7㎝。側小穂は雌性、円柱形、長さ3~12㎝、密に花がつく。雌花および雄花の鱗片には赤紫色の部分があり、先は鋭形で芒があり、果胞とほぼ同長かやや長い。果胞は卵形、長さ3~4㎜、無毛まれに有毛、熟してもあまり膨らまず、乾くとやや褐色に変色し、嘴は短く、花柱は細長く、宿存する。柱頭は3岐。果期は5~6月。
269-1 Carex persistens Ohwi var. watanabei Ohwi フクイカサスゲ 
 フクイカサスゲは果胞の剛毛が密にある。果胞に剛毛の無いものもあり(var. takeuchii)、毛の変異は連続的であり、変種とは認められていない。

270 Carex phacota Spreng. ヒメゴウソ 姫郷麻
  synonym Carex shichiseitensis Hayata
 日本全土、朝鮮、中国(安徽省、福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、海南省、湖南省、江蘇省、江西省、山東省、四川省、雲南省、浙江省)、台湾、インド、スリランカ、ネパール、ミャンマー、マレーシア、タイ、ベトナム、インドネシア原産。中国名は镜子薹草 jing zi tai cao。別名はアオゴウソ。草地、溝、川岸、道端の湿った土壌に生える。
 根茎は短い。稈は叢生し、高さ20~75㎝、断面は鋭角の三角形で、基部は黄褐色または暗黄褐色の鞘で覆われ、網状の繊維状に崩壊する。葉は稈とほぼ同長。葉身は線形、幅3~5㎜、平らで、縁は外巻きする。下部の苞葉は葉状で、花序をはるかに上回り、鞘がなく、上部の苞は剛状。小穂は3~5個、近接する。頂生の小穂は雄性、まれに頂部に数個の雌花を付け、狭い円筒形、長さ45~65㎜×幅1.5~2㎜、花序柄がある。 側小穂は雌性、まれに頂部に数個の雄花がつき、長い円筒形、長さ2.5~6.5㎜×幅3~4㎜、密に多数の花がつき、細くてわずかにザラつく花序柄があり、最下の花序柄は長さ2~3cm、垂れ下がる。雌鱗片は淡色、鉄さび色の斑点があり、長円形、長さ約2㎜(芒を除く)、緑色の3脈のある肋が先で突き出し、切形~凹形の先のザラつく芒になる。果胞は暗褐色、鱗片より長く、広卵形または楕円形、両凸形、長さ2.5~3㎜×幅約1.8㎜、密にパピラがあり、縁の2肋を除いて脈はなく、広凸形で、先は急に狭まり短い嘴になり、口部は全縁または凹形。小堅果は褐色、わずかに緩く包まれ、ほぼ球形または広卵形、長さ約1.5㎜、密にパピラがあり、花柱は長く、基部は太くない。柱頭は2岐。花期と果期は3~5月。果胞の脈の見え方で変種に分類されていたが、最近は分類しない。
270-1 Carex phacota Spreng. var. phacota ホナガヒメゴウソ 
 果胞の脈が不明瞭なもの。
270-2 Carex phacota Spreng. var. gracilispica Kük. ヒメゴウソ 狭義
 果胞の脈が見えるもの。

271 Carex phaeodon T.Koyama ハシナガカンスゲ 嘴長寒菅
 日本固有種。本州(山梨県~静岡県)に分布する。和名は果胞の嘴が長いことによる。林縁や岩上に生える。
 高さ15~35㎝、まばらに叢生し、長い匍匐枝がある。基部の鞘は赤褐色。葉は常緑、幅2~5mm。頂小穂は雄性、紫褐色、長さ1.5~3㎝。側小穂は2~4個つき、雌性、長さ1~2.5㎝。果胞は長さ4~4.5mm、雌鱗片より長く、無毛、長い嘴があり、完熟すると外側に曲がり、口部は2歯。柱頭は3岐。2n=30。果期は4~5月。

272 Carex phaeothrix Ohwi イワナルコスゲ 
 朝鮮原産。

273 Carex phyllocephala T.Koyama テンジクスゲ 天竺菅
 中国(福建省)原産。中国名は密苞叶薹草 mi bao ye tai cao。別名はヤシスゲ。標高500~1000mの森林、道端、谷間の湿った場所に生える。日本でよく栽培されている。
 根茎は短く、やや太く、木質で、匍匐茎はない。稈は高さ20~60㎝、やや丈夫で、断面は鈍角の三角形、下部は赤褐色の葉身のない鞘で覆われる。葉は連続してつき、稈より長く、葉身は幅8~15㎜、±硬く、縁で外巻きし、下面の葉脈の間に明確な横隔節があり、わずかに長い鞘がある。鞘は±重なり、明瞭な葉舌があり、帯赤色。苞葉は葉状で、稈の上部に集まり、花序より長く、かなり短い鞘がある。小穂は6~10個、稈の上部に集まる。頂生小穂は雄性、線状円筒形、長さ1~2.5㎝、短い花序柄がある。側小穂は雌性、ときに先に雄花が少数つき、狭円筒形、長さ2~3㎝、密に多数の雌花がつき、花序柄がある。 雌鱗片は中央が緑色、側部は淡色で、ごく短い鉄さび色の条線があり、広倒卵形、長さ約1.8㎜、膜質、3脈があり、先は鋭形で微突形。果胞は草緑色、ごく短い鉄さび色の条線があり、斜めに開出し、鱗片より長く、広倒卵形、断面は三角形、長さ2.8~3.5㎜、膜質、密に白色の小剛毛があり、側部に明らかに2本の脈があり、基部は楔形、先は急に狭まりかなり短い嘴になり、口部には短い2歯がある。小堅果は倒卵形、三角形、長さ約2㎜、無柄、花柱の基部はわずかに太くなる。柱頭は3岐。花期と果期は6~9月。
品種) 'Spark Plug'
273-1 Carex phyllocephala f. nigra クロジクテンジクスゲ 黒軸天竺菅
 稈が黒色を帯びる園芸品種。

274 Carex pilosa Scop. サッポロスゲ 
  synonym Carex pilosa var. densiflora Schur
 日本、朝鮮、中国(黒竜江省、遼寧省)、ヨーロッパ、ロシア原産。中国名は毛缘薹草 mao yuan tai cao。森林に生える。Kewscienceでは日本、朝鮮、中国を分布域に含めていない。
 根茎は長い匍匐茎があり、細い。稈は高さ30~60㎝、断面は扁平な三角形、通常緩い直軟毛があり、基部は紫赤色の葉身のない鞘で覆われ、まばらに直軟毛がある。葉は稈より短く、葉身は広線形、幅5~8mm、葉脈や縁にはまばらに直軟毛がある。苞は葉状で、通常、直軟毛があり、花序より短く、鞘は長さ2~5㎝。小穂は3~4個、離れてつく。頂生小穂は雄性、長円形または線状こん棒形、長さ2~3㎝、長い花序柄が次の小穂をはるかに越える。側小穂は雌性、狭い円筒形、長さ2~4cm、緩く8~12個の花がつく。花序柄は通常平滑、最下のものは長さ12㎝まで。雌鱗片は紫色または鉄さび色、卵形または楕円形、緑色の3本の脈のある肋が突き出し微突になり、先はわずかに鈍形。果胞は薄緑色、黄色になり、鱗片より長く、卵形またはほぼ楕円形、断面は膨らんだ三角形、長さ4~5mm、膜質、無毛またはまばらに直軟毛があり、多数の脈があり、基部は狭まり短い柄になり、先は急に狭まり長い円錐形の嘴になり、嘴は曲がり、斜めの切形、凹形、口部は紫赤色、2歯がある。小堅果はしっかりと包まれ、倒卵形、断面は鈍三角形、長さ約2.5mm、花柱の基部は太くない。柱頭は3岐。花期と果期は4~5月。2n=44。

275 Carex pisiformis Boott ホンモンジスゲ 本門寺菅
 日本全域、中国(安徽省、河北省、遼寧省、山東省)原産。中国名は豌豆形薹草 wan dou xing tai cao。和名は最初の採取地の池上本門寺(東京都大田区)に因む。標高400~1400mの山の斜面や道端の森に生える。Kewscienceでは日本固有種としている。
 根茎は短いか、茎が多い。 稈は叢生し、高さ15~50㎝、細く、扁平な三角形で、平滑またはわずかにザラつく。基部の鞘は淡黄褐色~錆褐色。葉は稈より短いか長く、葉身は幅2~3(~4)㎜、で平らで、縁には棘がある。 苞は鞘があり、鞘は長さ5~18㎜、下部の葉身は葉状、上部は剛毛状、花序より短いかそれに等しい。小穂は2~4個、間隔をあけてつく。頂生の小穂は雄性、狭円筒形、長さ15~20㎜。 側穂は雌で、頂部に雄花が付く場合もあり、長楕円筒形または狭い円筒形、長さ10~30㎜×幅2~3㎜、緩く花がつき、花序柄は苞葉の鞘に包まれているか、またはわずかに突き出る。雌鱗片は淡色または淡褐色、倒卵形、緑色の肋は1~3本の脈があり、突き出し微突になり、先は切形である。果胞は淡黄緑色、鱗片より長いかまたはほぼ同長、卵状楕円形、鈍角の三角形、長さ約3㎜、密に微軟毛があり、かすかに多数の脈があり、基部は漸尖して短い柄になり、先は漸尖し、円錐形の嘴になり、開口部は2歯。熟した小堅果は灰黒色、しっかりと包まれ、卵形、三角形、長さ約1.5㎜、基部は短い柄があり、先は円盤状環形。柱頭は3岐。花期および果期は5~6月。

276 Carex planata Franch. et Sav. タカネマスクサ 高嶺升草 広義
 日本固有種。北海道、本州、四国、九州に分布。平地~低山地の日当たりの良い湿った場所や湿地などに生える。
 根茎は短く密に叢生する。葉は幅1.5~2.5mm。花茎は高さ30~80cm、鈍い三角形、平滑。花序に小穂が3~7個、やや間隔を開けてつき、小穂は無柄。苞は葉状、抱く小穂より長く、下部では花序より著しく長い。小穂は雌雄性、多数の雌花と基部に少数の雄花をつけ、卵形~卵円形、長さ6~10㎜×幅4~6mm。雌鱗片は淡緑色、果胞より短い。果胞は広卵形で扁平、長さ3.5~4.5mm、広い翼がある(マスクサの果胞より大きい)。痩果は長さ約1.5㎜。柱頭は2岐。果期は5~7月。

276-1 Carex planata Franch. et Sav. var. planata タカネマスクサ 高嶺升草 狭義

276-2 Carex planata Franch. et Sav. var. angustealata Akiyama ホザキマスクサ 穂咲升草

 本州(愛知県以西)に分布。河川敷や湿地などの水辺の林の林下や林縁に生える。
 根茎は短く、密に叢生する。花序につく小穂は8~12個(タカネマスクサは3~7個)。小穂は雌雄性で、下部の小穂は離れて付き、楕円形、長さ6~8mm。上部では小穂は小さくなり、次第に互いに接して付く。果胞は長卵形、扁平、長さ3.5~4㎜、縁に狭い翼がある(タカネマスクサの翼は広い)。雌鱗片は果胞より短く、先は鋭形、先に芒は無いか、あってもごく短い。

277 Carex planiculmis Kom. ヒカゲシラスゲ 日陰白菅
 日本(北海道、本州の中部地方以北)、朝鮮、中国(河北省、黒竜江省、吉林省、遼寧省、陝西省)、ロシア(極東)原産。中国名は扁秆薹草 bian gan tai cao。標高1100~1900mの川辺、溝の脇、森林の湿った場所に生える。
 根茎は太く、やや細長く、細い匍匐茎を持ちます。 稈は叢生し、高さ30~45㎝、かなり太く、扁平な三角形で、2角(かど)に翼があり、1角が不明瞭で、角がザラつき、基部に葉身のない鞘が少数ある。葉は稈よりわずかに短く、葉身は幅5~10㎜、平らでかなり柔らかく、葉脈と縁がザラつき、±長い鞘がある。鞘は褐黄色で、やがて膜質の部分で裂ける。下部の苞は葉状、基部を抱く小穂よりも長く、上部の苞は芒状で、通常は基部を抱く小穂より短く、脈と縁がザラつき、鞘は無い。小穂は4~6個、最下の小穂はかなり離れ、その他の小穂は稈の上部で連続する。頂生の小穂は雄性、ときに頂部にいくつかの雌花をつけ、狭い円筒形、長さ2.5~3.5㎝、短い花序柄がある。 側小穂は雌性、円筒形、長さ1.5~4.5㎝、多数の花が密につき、基部はやや緩く花がつき、最下の小穂は花序柄がかなり長く、上部の小穂は花序柄が短い。雌鱗片は褐黄色~帯黄色、卵形または長円状卵形、長さ約2.5㎜、膜質、1脈があり、先は尖鋭形で微突形。果胞は黄緑色、斜めに開出し、成熟するとさらに散開し、鱗片より長く、卵形または狭い卵形、不明瞭な三角形、長さ3.5~4㎜、膜質、光沢があり、無毛、外側に5脈があり、基部はほぼ丸く、先は漸尖し中程度~長い反曲した嘴になり、口部は凹形。小堅果は褐色、やや緩く包まれ、倒卵形またはほぼ楕円形で、三角形、長さ約2㎜、花柱の基部わずかに太くなる。柱頭は3岐。花期と果期は4~8月。

278 Carex poculisquama Kük. アカネスゲ 茜菅
 日本(本州の福岡県・栃木県・山口県)、朝鮮、中国(安徽省、江蘇省、浙江省)原産。中国名は杯鳞薹草 bei lin tai cao。側溝や湖畔の湿った場所に生える。
 根茎は短い。稈は密に叢生し、高さ30~50㎝、3稜形、やや細く、硬く、上部はザラつき、下部は葉身のないかまたは短い葉身のある鞘で覆われる。上部の葉は稈より長く、下部の葉は稈より短く、葉身は幅3~4㎜、上面の中肋に溝があり、縁は外巻きし、縁と下面はザラつき、かなり長い鞘がある。苞は葉状、花序とほぼ同じかそれより長く、かなり短い鞘がある。小穂は3~4個、上部の小穂はほぼ近接し、下部の小穂はわずかに離れる。頂生の小穂は雄性、線形、長さ1~2㎝、短い花序柄がある。側小穂は雌性、狭い円筒形、長さ1~3㎝、10個以上の花が緩くつき、かなり細い花序柄がある。雌鱗片は帯黄色で、鉄さび色の細点があり、広卵形、長さ約4㎜、膜質、1肋があり、基部は合着し、花序軸を抱き、先は鋭形、短い芒がある。果胞は灰緑色、斜めに開出し、鱗片より長く、菱状楕円形、断面は三角形、長さ約5㎜、紙質、無毛、細い数本の脈があり、基部は徐々に狭くなり、柄があり、縁は小剛毛があり、先は徐々に狭くなり、わずかに広くて短い嘴になり、口部には2歯がある。 小堅果はしっかりと包まれ、楕円形、断面は三角形、長さ約3㎜、無柄、先端はわずかに長い尖形。花柱は短く、花柱の基部がわずかに太くなる。柱頭は3岐。花期と果期は5月~6月。

279 Carex podogyna Franch. et Sav. タヌキラン 狸蘭
 日本固有種。北海道西南部、本州の東北地方、関東地方、中国地方に分布する。山地の水湿斜面や湿地に生える。  叢生し、大株を作る。根茎は太くて丈夫で横に短く伸び、茎をやや間隔を開けて出す。花茎は高さ40~100㎝、上部はざらつき、下部は平滑、茎の基部は肥大して直径5~10㎜のほぼ円柱形となり、赤褐色~紫褐色の葉身のない鞘が基部を覆う。葉は花茎より低く、幅5~12㎜、縁はザラつき、下面には密にパピラがある。花序は総状花序、苞は各小穂の基部につき、鞘がなく、下部の苞は葉身が葉状、長さ5~20㎝、上部の苞は鱗片状。頂小穂とそれに続く1~2個の小穂は雄性、棍棒形、長さ2~5㎝、花序柄は長さ1~3㎝。雄鱗片は楕円形、濃赤褐色、先端には長さ1~2㎜の芒がある。側雌小穂は2~4個つき、楕円形、長さ3~4.5㎝×幅1~2㎝、花序柄は細く、長さ3~4.5㎝、垂れ下がる。雌鱗片は披針形、濃赤褐色、先は尖鋭形または短い芒がある。果胞は雌鱗片より長く、長さ12~14㎜(柄を含めて)×幅1.2~1.4㎜、披針形、脈は不明瞭、長く柔らかい毛を密生し、基部には長さ5~6㎜の柄があり、先は次第に狭まって嘴になり、口部は浅い2歯がある。果胞の柄は初めはやや短く、痩果の成熟するにつれて長く太くなり、上部が濃赤褐色になる。痩果は倒卵形、長さ2~2.5㎜、緩く果胞に包まれる。柱頭は2岐、早落性。花期は6~8月。

280 Carex polyschoena H.Lév. et Vaniot シロホンモンジスゲ 白本門寺菅

  synonym Carex pisiformis f. polyschoena (H.Lév. & Vaniot) Kük.

 日本(九州の長崎県、対馬)、朝鮮全域、中国原産。英名はmany-shoed sedge。林内や草地、道端に生える。Flora of Chinaではホンモンジスゲ(Carex pisiformis)に含めている。
 高さ30~50㎝。叢生し、地中の匍匐根茎はない。基部の鞘は薄褐色でわずかに繊維状になる。葉は茎より短く、幅1.5~3.5㎜。最下の苞は葉状で鞘がある。上部の苞は短い針状。頂小穂は雄性で、線形、長さ1.5~3㎝、白っぽく、柄がある。側小穂は雌性、円筒形、長さ1.5~3㎝、花はやや離れる。雄鱗片は緑白色。雌鱗片は薄褐色、広卵形、短い芒があり、果胞より短い。果胞は狭楕円形、長さ1.8~2㎜、表面に密に毛があり、短嘴、口部は鋭い2歯。痩果の頂部に盤状付属体がある。柱頭は3岐。2n=52。花期は5~6月。

281 Carex pseudoaphanolepis Ohwi アイノコシラスゲ 合いの子白菅
 日本、朝鮮原産。丘陵~山地の湿った林縁や明るい林床に生える。
 原記載ではシラスゲとエナシヒゴクサの雑種とされたが、現在ではシラスゲの別種とされる。シラスゲは葉の下面に微細なパピラが密にあるため、粉白色となり、側小穂の多くは垂れ下がり、果胞はシラスゲよりも嘴が短い。
 高さ30~80㎝。やや叢生し、地中に匍匐根茎の枝を出す。基部の鞘は淡色で、わずかに糸網を生じる。葉は幅5~10㎜、下面はシラスゲほど白味を帯びず、淡緑色。苞は葉身が発達し、鞘はない。頂小穂は雄性、長さ3~6cm、直立する。側小穂は2~4個つき、雌性、長さ3~6cm、斜上し、ほとんど垂れ下がらない。雌鱗片は黄緑色、先が鋭形。果胞は長さ3~4㎜、膨れ、先は急に狭まり短い嘴になり、口部は凹形、表面は光沢が強い。柱頭は3岐。果期は5~6月。

282 Carex pseudocuraica F.Schmidt ツルスゲ 蔓菅

  synonym Carex chordorrhiza Ehrhart ex Linnaeus f. var. pseudocuraica (F. Schmidt) Trautvetter.

 日本(北海道、本州の東北地方、滋賀県)、朝鮮、中国(黒竜江省、吉林省、内モンゴル)、ロシア(極東、東シベリア)原産。漂筏薹草 piao fa tai cao。沼地、湖畔に生える。
 根茎はかなり太く、短く、長くて断面が三角形の水平なかなり太い匍匐茎(stolons)を持つ。 稈は高さ15~40㎝、断面は扁平な三角形、上部はザラつき、灰褐色の葉身のある鞘で覆われる。葉は稈より短く、葉身は帯緑色、線形、幅1.5~3㎜、平ら。苞葉は鱗片状。花序はわずかに緩い、長円状円筒形、長さ1.5~3㎝。小穂は5~10個つき、通常、雄雌性花序(androgynous)、まれに単性でまれに完全に雌性、楕円状卵形、長さ4~10㎜。 雌鱗片は鉄さび黄色、鱗片状、卵形または楕円状卵形、長さ2.5~4㎜×幅約1.5㎜、縁は白色透明、先は鋭形。果胞は淡褐色またはわら色、鱗片と同長かそれより長く、卵形または楕円形、平凸形、長さ2.5~4㎜、膜質、海綿状、外側に6~7本以上の脈があり、まれに内側にわずかに脈があり、基部は円形または楔形、 短い柄があり、上側の縁には狭い翼があり、先は急に狭まり短く扁平な嘴となり、口部は淡い透明で、斜めの切形、内側にわずかに2歯がある。小堅果はやや緩く包まれ、卵形または楕円形、平凸形、長さ1.2~1.7㎜、基部には短い柄がある。花柱の基部はわずかに太くなる。柱頭は2岐。果期は6月。

283 Carex pseudocyperus L. クグスゲ 莎草菅
 日本(北海道、本州の青森県・群馬県・長野県)、朝鮮、中国、ロシア、インド、パキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、フィリピン、トルコ、レバノン、シリア、パレスチナ、ニュージーランド、ヨーロッパ、チュニジア、モロッコ、北アメリカ(カナダ、USA)原産。中国名は似莎薹草 si suo tai cao。標高約1300mの溝側、水辺に生える。
 根茎は短く、匍匐茎はない。稈は叢生し、高さ30~70㎝、かなり丈夫、断面は三角形、上部の角がザラつく。葉は稈より長く、葉身は幅5~8㎜、平らでやや硬く、長い鞘があり、鞘の基部は帯褐色。下部の苞は葉状で小穂より長く、最下部のものは短い鞘があり、最上部のものは芒状で鞘がない。小穂は3~5個、稈の上部に集中し、最下部の小穂はわずかに離れる。頂生の小穂は雄性、狭い円筒形、長さ2~3㎝、花序柄がある。側小穂は雌性、円筒形または短円筒形で、長さ1.5~5㎝、密に多数の花がつき、花序柄がある。雌鱗片は淡色、長円状卵形、長さ約5㎜(芒を含み)、膜質、帯緑色の3脈があり、先は鋭形で芒があり、芒は長さ3~3.5㎜、縁に小剛毛がある。果胞は黄緑色、斜めに開出し、後に水平に分岐または湾曲し、鱗片の長さの2~3倍の長さ(芒を除いて)、楕円形、断面は三角形、長さ4~5㎜、ほぼ革質、無毛、明瞭な数本の脈があり、基部は急に狭まり短い柄になり、先は次第に狭まり、中~長の嘴になり、嘴は真っ直ぐで、口部で2歯に深く裂け、歯は長さ約1㎜、真っすぐ、±堅く、側面に向かって曲がらない。小堅果は帯黄色、やや緩く包まれ、広倒卵形、断面は三角形、長さ約1.2㎜。花柱は細く、曲がりくねり、基部は太くない。柱頭は3岐、かなり短い。花期と果期は9~11月。

284 Carex pseudololiacea F.Schmidt ヒロハイッポンスゲ 広葉一本菅
 日本(北海道、本州の福島県吾妻山)、千島列島、カラフト、ロシア原産。別名はオオツルスゲ 、セイタカツルスゲ。ミズゴケ湿原に生える。
 ゆるく叢生し、根茎が目立つ。葉や花茎にはパピラ(乳頭状突起)が密にある。葉は幅1.5~3㎜。花序は長い花茎の先に頂生し、柄の無い頭状の小穂を2~4個頂生する。小穂は雌雄性(gynaecandrous)、基部に小さい雄花がある。雌鱗片は淡色。果胞は雌鱗片より長く、長さ3.5~4mm、稜間は赤褐色の脈が多数あり目立ち、無毛、厚い膜質、平滑、上部は次第に狭まって嘴がほとんど無く、口部は凹形で腹面に切れ込む。痩果は楕円形。柱頭は2岐。果期は夏。

285 Carex pudica Honda マメスゲ 豆菅
 日本固有種。本州(宮城県以西)、伊豆諸島(神津島)に分布する。湿原周辺や草地に生える丘陵地の疎林や疎林下の湿地に生える。
 匍匐枝は出さず、小さくまとまった小柄な株を作る。高さ20~25㎝、花茎は低く、高さ2~7㎝、葉の間に完全に隠れる。葉は幅2~3㎜。基部の鞘は暗紫色、後に細かく繊維状に裂ける。苞は葉状、葉身が長さ1~3㎝。頂小穂は雄性、長い花序柄があり、直立し、長円形、長さ4~7㎜。雄鱗片は外側が透明、内側は栗色~褐色、先は円形またはわずかに鋭形。側小穂は雌性、花序柄が短く、雄小穂からかなり離れ、根元に集まってつき、長円形、長さ5~10mm。。雌鱗片は半透明から淡褐色で先端は尖鋭形または短い芒がある。果胞は雌鱗片より長く、楕円形、長さ約3㎜、表面にまばらに短毛があり、稜間に13~18本の脈があり、先は次第に狭まり短い嘴になり、口部は全縁~わずかに凹形。痩果は卵形、長さ約2㎜、果胞にしっかり包まれ、先端には小さな盤状の付属体がある。柱頭は3岐。花期は4~6月。

286 Carex pumila Thunb. コウボウシバ 弘法芝
 日本全土、朝鮮、中国、台湾、ロシア、オーストラリア、ニュージーランド、チリ原産。中国名は矮生薹草 ai sheng tai cao。英名はstrand sedge, dwarf sedge。海岸の砂地に生える。
 多年草、高さ10~20㎝。根茎は細く、長く横に広がる。葉は硬く、M形、表面は光沢があり、幅1.5~3.3㎜。葉舌は長さ0.2~1.3㎜。小穂は3~6個、雄小穂は上部に1~3個つき、長さ1.5~3.5㎝、細く、茶褐色。雌小穂は下部につき、長さ1.5~2.5㎝、幅約0.8㎝の惰円形~円柱形。雌鱗片は長さ約5.5㎜、披針形~卵形、果胞とほぼ同長。果胞は長さ4.5~8㎜、幅2~3.5㎜の広卵形、黄色~黄褐色、無毛、嘴は長さ0.8~1.6(2)㎜、口部は鋭2歯。果実は3稜形、長さ約3㎜。柱頭は3岐。2n=82。花期は4~7月。

287 Carex purpureotincta Ohwi タロコカサスゲ 太魯閣傘菅
  synonym Carex retrofracta subsp. retrofracta
  synonym Carex haematorrhyncha Ohwi & T.Koyama
  synonym Carex purpureotincta Ohwi
  synonym Carex purpureotincta var. sphaerocarpa Ohwi
  synonym Carex purpureotincta var. sphaerocarpa Ohwi ex T.Koyama
  synonym Carex xiangxiensis Z.P.Wang
 台湾原産。中国名は太鲁阁薹草 tai lu ge tai cao。鬱蒼とした森に生える。Flora of Chinaでは日本を分布域に含める。
 根茎は短く、匍匐茎は無い。稈は高さ60~90㎝、かなり太く、3稜形、平滑、赤褐色の葉身のない鞘で覆われる。葉は稈より短いかまたはわずかに長く、葉身は幅7~12㎜、平らでわずかに堅く、下面には微軟毛があり、鞘がある。苞(総苞片)は葉状で、抱かれる穂状花序よりも長く、下部の苞は鞘が短く、上部の苞はほとんど鞘が無い。小穂は4個つき、やや稈の上部に集まるか、または最下部の小穂がわずかに離れてつく。頂生の小穂は雄性、ほぼ線形、長さ7~10㎝、短い花序柄がある。他の小穂は雌性、円筒形、長さ6~10cm、やや緩く多数の花がつき、ときに少数の雄花がつき、最下の小穂は花序柄があり、上部の小穂はほぼ無柄。雌鱗片(glumes)は淡色、側面はわずかに紫赤色を帯び、卵形、長さ約3.5㎜(約2.3㎜の芒を含む)、膜質、3脈があり、先は鈍形で長い芒があり、芒の縁はザラつく。果胞(utricles)は褐緑色、斜めに開出し、穂鱗片よりわずかに長く、楕円形、やや膨らんだ三角形、長さ約4㎜、膜質、無毛、紫赤色の細点があり、多数の脈があり、基部は楔形、先は急に狭まり嘴になり、嘴の縁はザラつき、口部は切形。小堅果は緩く包まれ、卵形、三角形、長さ約2㎜。花柱は基部がわずかに太い。柱頭は3岐。花果期は5~7月。

288 Carex pyrenaica Wahlenb. カレックス・ピレナイカ br>   synonym Carex cephalotes F.Muell.
 スペイン、フランス、ブルガリア、ルーマニア、ユーゴスラビア、北コーカサス、トランスコーカサス、トルコ原産。英名はPyrenean sedge。
 斜上する根茎から厚く叢生し、高さ3㎝の小さめのコンパクトクッション~高さ20㎝の繁茂した房状まで様々になる。稈は高さ(1~)5~10(~20)㎝×幅0.5~1㎜、円柱形、平滑。基部の鞘は薄褐色~灰褐色。葉は通常、稈より短く、幅0.5~1.5㎜、基部が内巻きし、先に向かって平らになり、±平凸形、縁は細かくザラつき、先は鈍形~ほぼ鋭形。 花序は単生し、頂生で、雄雌性、通常、苞が無く、小穂は卵形~長円形、長さ(5~)7~10(~17)㎜×幅5~9㎜。雄花は雌花の上につく。鱗片は通常、果胞より短く、卵形、鋭形、脱落性、膜質、赤褐色、中肋は薄褐色、縁は透明。果胞は長さ(2.5~)3~4(~4.5)㎜×幅約1mm、平凸形、楕円状披針形、成熟すると強く後屈し、平滑、無毛、淡黄褐色、嘴は長さ約1㎜、赤褐色、口部は斜め、膜質。柄は長さ約1mm、たまに欠く。柱頭は通常2岐、たまにいくつかの花では3岐。小堅果は長さ1.5~2mm、長円形、平滑、柱頭が2岐の花では両凸形、または柱頭が3岐の花ではほぼ三角形になる。

289 Carex quadriflora (Kük.) Ohwi アカスゲ 赤菅
 日本(北海道)、朝鮮、中国(河北省、黒竜江省、遼寧省)、ロシア原産。中国名は四花薹草 si hua tai cao。標高800~1400mのキシロスマ属またはマツ林に生える。
 根茎は短く、斜上する。稈は密に叢生し、側生し、高さ15~30㎝、太さ1㎜以下、3稜形、上部はザラつき、基部は紫赤色の鞘に覆われる。葉は稈より短く、果時には稈とほぼ等長、葉身は幅2~4㎜、柔らかく、平らで、平滑、紫赤色で、鞘は宿存する。苞は赤褐色、仏炎苞状、縁は膜質、先は切形、苞の葉身は芒状。小穂は2~3個、離れてつく。頂生小穂は雄性、隣接する雌小穂より短く、線形、長さ4.5~10㎜×幅1~2㎜。側小穂は1~2個、雌性、線形、長さ1~1.5㎝×幅2~2.5㎜、緩く2~4(~6)個の花がつき、花序柄は糸状で、長さ1~3㎝、柔らかい。花序軸は 曲がりくねる(tortuous)。雌鱗片は側部が鉄さび色で、中央は緑色、倒卵形~長円形、長さ約3㎜、1脈があり、縁は広く白色透明になり、先は円形で微突形。果胞は黄緑色、鱗片より長く、倒卵形、断面は鈍三角形、ほぼ平凸形、長さ4~5㎜、緩く毛があり、側部に2脈があり、明瞭ではない細い脈があり、基部は急に狭まり短い柄になり、先は丸く短い嘴となり、嘴は鉄さび色で、口部は切形。小堅果は成熟すると淡い鉄さび色で、倒卵形、断面が三角形、長さ3.5~4㎜、基部は狭まり短い柄になり、先は急に狭まり短い嘴になる。花柱は短く、基部は太くない。柱頭は3岐。花果期は5~6月。

290 Carex raddei Kük. コノゲスゲ 
 朝鮮、中国(河北省、黒竜江省、江蘇省、吉林省、遼寧省、内モンゴル)、モンゴル、ロシア(極東)原産。锥囊薹草 zhui nang tai cao。川辺の砂地、山の斜面の湿った場所、野原、水辺、湿った草地などに生える。

291 Carex rafflesiana Boott コウトウオニスゲ 
  synonym Carex cruciata var. rafflesiana (Boott) Noot.

  synonym Carex rafflesiana Boott subsp. scaberrima (Boeck.) T.Koyama

 台湾、タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア(ボルネオ島、スマトラ島、ジャワ島、スラウェシ島、小スンダ島、マルク島)、ニューギニア、パプアニューギニア(ビスマルク諸島)、インド(ニコバル島)、オーストラリア(クイーンズランド州)原産。中国名は红头薹草 hong tou tai cao。

292 Carex ramenskii Kom. ウシオスゲ 潮菅
 日本(北海道島北部沿岸)、ロシア、ヨーロッパ北部、北アメリカ(カナダ、アラスカ)、グリーンランド、アスランド原産。英名はRamensk's sedge。 Kewscienceでは日本を分布域に含めていない。標高0~10mの塩水または汽水湿地、海岸に生える。
 叢生しない。稈は鈍角または鋭角の三角形、高さ10~50㎝、無毛。葉:基部の鞘は褐色。下部の葉の鞘は無毛、前面には斑点と葉脈がなく、先端はU字形。葉身は通常、両面気孔(amphistomic)であり、幅2~4㎜、パピラがあるかまたは平滑。下部の苞は花序と同じ長さかそれより長く、幅1.5~3.5㎜。小穂は直立し、雄小穂が1~2個、雌小穂が1~4個つく。下部の雌小穂は長さ1.6~2.4㎝×幅4~7㎜、基部は楔形または漸尖形。雌鱗片は暗紫褐色、長さ2~5.5㎜×幅1.2~1.8㎜(芒を含めて)、果胞より狭く、中脈は先端に達しまたは届かず、幅が鱗片の幅の1/10~1/2、先は鋭形~尖鋭形、まれに芒があり、芒は無毛またはザラつく。果胞は斜上し、淡褐色、各面に不明瞭な脈または少数の目立つ脈があり、やや膨らみ、痩果を緩く包み、卵形~楕円形、長さ2.7~3.5㎜×幅1.6~2.4㎜、革質、光沢がなく鈍く、基部は丸く、先は鋭形、無毛である。嘴は広い円錐形で果胞の体にほぼ連続し、全縁、長さ0.1~0.2(~0.3)㎜×幅0.30~0.45㎜。 痩果は全縁または片面が強く狭まり、または縁が不規則にくびれ、先は切形~微凹形、鈍色。花柱の基部は真っ直ぐだが、ときに曲がる。2n=80(ロシア)。果期は6~8月。

293 Carex rara Boott カレックス・ララ
 中国、インド、ネパール、ブータン原産。中国名は松叶薹草 song ye tai cao。英名はpine-leaf sedge。標高1000~3000mの森林、林縁、渓流のほとり、日陰や湿った草が茂った場所に生える。Flora of ChinaではCarex biwensis Franchetをsynonymとし、日本、朝鮮を分布域に含めている。KewscienceではCarex biwensisを独立種としている。
 根茎は短い。稈は密に叢生し、高さ20~30㎝、上部は平滑~わずかにザラつく。葉は稈より短いかわずかに長く、葉身は幅0.5~1㎜、平らまたは内巻きし、上部の縁は平滑またはわずかにザラつく。基部の鞘は灰褐色の繊維状に分裂する。花序は1個の穂状花序、頂生し、雄雌性(androgynous)。雄花部分は明確に分かれ、線形、長さ4~12㎜、花が5~17個つき、雌花部分は長円形~短い円筒形、長さ4~10㎜、6~18個の花が密につく。雌鱗片は褐色だが、上縁が色が薄くなり、長円状卵形、長さ1.5~2㎜、3本の脈があり、先は円状鈍形。果胞は成熟すると水平に開出し、鱗片よりわずかに長く、広卵形~楕円状卵形、わずかに膨らみ、3角形、長さ1.5~2.5㎜、基部付近にかすかに脈があり、または明瞭な脈があり、ときに錆び色の斑点があり、基部は円状鈍形、先は次第に漸尖し、短い嘴になり、口部はほぼ切形。小堅果はきつくい包まれ、楕円形~卵形、断面は三角形、長さ1~2㎜。花柱の基部は太くなく、宿存する。柱頭は3岐。花期と果期は4~5月。 293-1 Carex rara subsp. rara カレックス・ララ 狭義
  synonym Carex oldhamii C.B.Clarke
  synonym Carex pseudobiwensis Kitag.
  synonym Carex rara f. macrolepis Franch.
 中国、インド、ネパール、ブータン原産。
 多年草、高さ20~30㎝。根茎は短い。葉は幅0.5~1㎜。直径約1㎜の稈の先に長さ10~20㎜の雌雄性(androgynous)の小穂を1個ずつつける。上部は長さ4~12㎜の細い淡褐色の雄花部、下部は長さ4~10㎜×幅約4㎜の黄緑色の雌花部。果胞は長さ1.5~2.5㎜、不明瞭な脈又は基部に明瞭な脈があり、ときに錆のような斑点があり、果実をゆるく包み、斜上~平開する。雌花の鱗片は赤褐色で、長さ1.5~2㎜、3脈がある。果実は長さ1~2㎜、3稜形、褐色。柱頭は3岐。花期は4~5月。
293-2
Carex rara subsp. patanicola T.Koyama
 インド、スリランカ原産。湿った流れの縁に稀に生える。
 大きく群生し、密に叢生する。根茎はごく短い。稈は細く、高さ15~45㎝、鋭い3稜があり、平滑、基部だけに葉がある。葉は稈より長く、断面は三日月形、縁は平滑、下面には1肋があり、先端はほぼ急なほぼ鋭形、鞘は長さ1~8㎝、膜質。花序は1個の頂生の穂状花序。苞は無い。小穂は雄雌性(androgynous)、直立し、長円状円筒形、長さ0.7~2㎝×幅3~3.5㎝。雄性部は線形、雌性部より短く、長さ3~7㎜×幅1㎜。雌性部は長さ0.4~1.5㎝、多数の花がつく。雌鱗片は卵状楕円形、浅い舟形、長さ1.5~2㎜×幅1~1.2㎜、膜質、3脈の肋があり、先は微突形。果胞は開出し、広卵形、長さ2~2.7㎜×幅1㎜、鈍い3角形、わずかに膨れ、無毛、背面に7~9脈がある。痩果は卵形、3稜形、長さ1.2~1.5㎜×幅0.8㎜、先はほぼ鋭形。花柱の基部は太くない。柱頭は3岐。花果期は10~11月。

294 Carex rariflora (Wahlenb.) Sm. チシマスゲ 千島菅
 千島列島、サハリン、ロシア、ヨーロッパ北部、北アメリカ(カナダ、アラスカ)、グリーンランド、アイスランド原産。標高0~500mの開けた沼地、牧草地、浸透斜面、ヒースの荒れ地に生える。
 稈は基部だけに葉がつき(phyllopodic)、基部に枯れ葉が残り、長さ5~35cm。葉身は幅1~2.5㎜、ときに縁は内巻きし、先がザラつく。花序:下部の苞は長さ0.5~2 cm、花序よりもはるかに短い。側小穂は長さ6~15㎜×幅3.5~5㎜、果胞は2~10 個つく。頂生の小穂は長さ6~20㎜×幅1~2.5㎜。 雌鱗片は円状卵形、長さ3~4.8㎜×幅2.2~3.4㎜、果胞と同長で幅が広く、先は鈍形ときに微突形。雄鱗片は倒披針形~倒卵形、長さ3.2~4.8㎜×幅1.5~2㎜、先は鋭形~鈍形。 葯は長さ2~2.5㎜。果胞は長さ2.5~4.5㎜×幅1.6~2㎜、先端は丸く、嘴がない。 2n=52。果期は夏。

295 Carex reinii Franch. et Sav. コカンスゲ 小寒菅
 日本固有種。本州、四国、九州に分布。別名はナンブスゲ。丘陵地の林内に生える。
 多年草、高さ30~60㎝。匐枝を伸ばして広がり、葉鞘は暗褐色、繊維状に分解する。葉は硬く、幅3~7㎜、縁がひどくざらつく。葉縁の上半部には上向き、下半部には下向きに小歯がある。葉表は暗緑色、葉裏はやや白味を帯びる。苞は短く、有鞘、鞘部は長い。小穂はまばらに4~10個。一番上が雄小穂。すべての側小穂は上に雄、下に雌の雄雌性が特徴。側小穂には長い柄がある。側小穂は長さ2~5㎝、雄部が雌部より長い。鱗片は褐色、果胞の長さの1/2以下である。果胞は長さ5~6㎜、有毛、背面が丸い扁3稜形、先が細く、基部が太い柄になる。痩果の頂部に盤状の付属体があり、基部は柄状。柱頭は3岐。花期は4~5月。

296 Carex remotiuscula Wahlenb. イトヒキスゲ 糸引菅
 日本(北海道、本州の長野県)、朝鮮、中国(安徽省、甘粛省、河北省、黒竜江省、河南省、吉林省、遼寧省、陝西省、山西省、四川省、雲南省)、ロシア(極東)原産。中国名は丝引薹草 si yin tai cao。標高900~3700mの斜面の湿った草原、牧草地に生える。  根茎は短い。 稈は叢生し、高さ30~50㎝、細く、通常は弱く、わずかにザラつく。葉は稈より短く、葉身は淡緑色、線形、幅1~2㎜、平らで柔らかい。下部の苞は葉状で花序を超え、上部の苞は剛毛状または鱗片状。小穂は4~10個つき、雌雄性花序(gynaecandrous)、卵形(卵円形)、長さ4~6㎜×幅4~5㎜、上部の3~5個の小穂は密集してつき、残りの小穂は離れる。雌鱗片は薄鉄さび色で、狭卵形、長さ約2.5㎜、緑色の1脈があり、縁は広く白色透明。果胞は緑色、成熟すると黄緑色、鱗片より長く、披針形または卵状披針形、長さ約3㎜、膜質、両面に明瞭な多数の脈があり、上部の縁は細かくザラつく翼があり、先は次第に狭まり嘴になり、嘴は外側にかなり深く裂け、口部に2歯がある。小堅果はしっかりと包まれ、楕円状卵形、平凸形、長さ約1.5㎜、基部は短い柄があり、先はほぼ丸く、花柱の切部は太くなる。柱頭は2岐。花期と果期は6~7月。

297 Carex remotistachya Y. Y. Zhou & X. F. Jin カレックス・レモティスタチア

 中国固有種。浙江省中部の県潘安市尚湖鎮でのみ知られる。2014年報告の新種(参考8)。
 標高450mの川沿いの湿った場所に生える。穂状花序は上部に集まらず、離れる。花期および果期は5月中旬~6月上旬。

298 Carex reptabunda (Trautv.) V.I.Krecz. オクノヤマスゲ 奥の山菅
 中国(黒竜江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル、陝西省)、モンゴル、ロシア原産。中国名は走茎薹草 zou jing tai cao。湿った草原に生える。

299 Carex rhizopoda Maxim. シラコスゲ 白子菅
 北海道、本州、四国、九州、対馬、中国原産。中国名は根足薹草 gen zu tai cao。林内、林縁の水辺、湿地に生える。
 多年草、高さ20~40㎝。根茎は短く、叢生する。茎は柔らかく、3稜形、上部の稜に上向きの小刺がある。葉は幅2~4㎜、柔らかく、花茎より低い。葉の基部は長い鞘になる。茎の先に雌雄性の小穂を1個ずつつける。小穂は長さ1.5~4㎝。先端の雄花部は細く、3~15個の小花がつく。雌鱗片は長さ4~5㎜、淡緑色、後に淡褐色、3脈があり、鋭頭、果胞より短い。果胞は長さ5~6㎜、細脈があり、嘴は長さ2~3㎜、鋭く尖り、口部は斜めに切形。熟しても果胞は開出しない。果実は長さ2~2.5㎜、3稜のある倒卵形、褐色~暗褐色。柱頭は3岐。花期は5~6月。

300 Carex rhynchachaenium C.B.Clarke ex Merr. トックリスゲ 徳利菅
 日本(沖縄諸島)、台湾、フィリピン、ベトナム原産。中国名は喙果薹草 hui guo tai cao。
 小さな群落に密生する。根茎は短く、硬い暗褐色の繊維に覆われる。稈は非常に低く、葉に隠れ、高さ5~10㎝。葉は狭線形で非常に細長く、長さ15~28㎝、幅2~3mm、先は次第に先細りになり長い鋭形になる。下部の2~3個の苞は葉状で、花序をはるかに上回り、長さ20㎝以下になり、短い鞘がある。小穂は 3~6個、最下部を除いてほぼ箒状(subfastigiate)になり、直立する。頂生の小穂は雄性、線形、長さ1~2㎝、続く雌小穂より短い。側小穂は雌性、短い円筒形、長さ1~2㎝、ほぼ緩く連続して少数の花がつき、花序柄は鞘に包まれる。 雌鱗片はわら色、長円状楕円形、硬い膜質、廃れた3脈の肋の傍に細い多数の脈があり、縁毛があり、先は切形~円形、ときに微突形。果胞は直立し、フラスコ形(lageniform)で中央に弱いくびれがあり、長さは鱗片の2倍、長さ5~6.5㎜、厚い膜質、全体に毛があり、細い多数の脈があり、基部には柄があり、先は次第に狭まって短い嘴が直立し、口部には浅い2歯がある。小堅果はしっかりと包み込まれ、卵状菱形、長さ約4㎜、断面は三角形、基部が楔形、先に首があり、首は約・長さ1㎜×幅0.7㎜、頂部が切形。花柱は短く、基部は太くなる。柱頭は3岐、短い。

301 Carex rhynchophysa C.A.Mey. オオカサスゲ 大笠菅
 北海道、本州(中部地方以北)、朝鮮、中国、モンゴル、ロシア原産。中国名は大穗薹草 da sui tai cao。亜高山帯~高山帯の高層湿原に生える。
 多年草、高さ60~100㎝。匍枝を伸ばし、群生する。葉は幅8~15㎜。上部に3~7個の雄性の小穂、下部には2~5個の雌性の小穂を離れてつける。雄小穂が3~7個、頂部に固まってつくのが特徴。果胞は長さ6.5~7㎜、脈があり、先は急に細く嘴状になり、口部は2歯。雌鱗片は長さ約4.2㎜、褐色、果胞と同長かやや短く、先が尖る。果胞は熟すと膨らんで開出する。痩果は長さ約2㎜。柱頭は3岐。花期は6~8月。
 低地のカサスゲは雄小穂が1個だけつく。

302 Carex rochebrunei Franch. et Sav. ヤブスゲ 藪菅
 日本(本州、四国)、中国(安徽省、甘粛省、広西チワン族自治区、貴州省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、陝西省、山西省、四川省、雲南省、浙江省)、台湾、インド、ブータン、ネパール、スリランカ、インドネシア原産。中国名は书带薹草 shu dai tai cao。森林、湿った草原、湿地、標高の高い草原、藪に生える。
 根茎は短く、丈夫で、硬い。 稈は叢生し、高さ25~50㎝、細く、断面は三角形で平滑、基部は繊維状に崩壊する褐色~淡褐色の葉身ない鞘で覆われる。葉は稈より短いかまたは長く、葉身は線形、幅2~3㎜、平らで柔らかい。葉鞘の膜側が口部で突き出し、舌状の付属体を形成するかまたはしない。下部の苞は葉状で、花序を上回る。小穂は5~10個、雌雄性花序(gynaecandrous)、長円形、長さ5~15㎜×幅3~4㎜、上部の小穂は近接し、下部の小穂は離れてつく。雌鱗片は淡色、長円形、長さ2.5~3㎜、緑色の3脈のある肋が突き出し、ザラつく短い芒になり、先は鋭形。果胞は緑色または黄緑色、鱗片より長く、披針形または卵状披針形、長さ3~4㎜、両面に目立つ脈があり、外側に多数の脈があり内側にはほとんど脈がなく、または脈がなく、基部は楔形で、短い柄があり、縁の上半分には狭い ザラつく翼があり、先は徐々に細くなって長い嘴となり、口部には2歯がある。小堅果はきつく包まれ、平凸形、長さ1.5~2㎜、基部は狭まり短い柄があり、頂部は丸い。花柱は基部が太くなる。柱頭は2岐。花期と果期は5月~8月。
302-1 Carex rochebrunii subsp. rochebrunii
 日本、中国(安徽省、河南省、江蘇省、浙江省)、ブータン、インド、インドネシア、ネパール、スリランカ原産。中国名は书带薹草 shu dai tai cao。森林、湿った草原に生える。
 葉: 葉鞘の膜質側が口部で突き出ず、舌のような付属体を形成しない。果胞は両面に脈がある。

302-2 Carex rochebrunei Franch. et Sav. subsp. remotispicula (Hayata) T.Koyama マバラスゲ

 中国(甘粛省、広西チワン族自治区、貴州省、湖北省、湖南省、陝西省、山西省、四川省)、台湾に分布。中国名は高山穗序薹草 gao shan sui xu tai cao。標高の高い草地や雑木林に生える。
 葉: 葉鞘の膜質側は口部で突き出ず、舌のような付属物を形成しない。果苞は外側に数本の脈があり、内側にはほとんど脈がない。花期と果期は6~7月。

302-3 Carex rochebrunii subsp. reptans (Franchet) S. Yun Liang & Y. C. Tang

 中国(甘粛省、湖北省、陝西省、四川省、雲南省)に分布。中国名は匍匐薹草 pu fu tai cao。標高1600~3700mの湿った草原、湿地に生える。
 葉: 葉鞘の膜質側が口部で突き出て、舌のような付属体を形成する。果胞は無が無い。花期と果期は6~8月。

303 Carex rostrata Stokes カラフトカサスゲ 樺太笠菅
  synonym Carex ampullacea Goodenough.
 日本(北海道の雨竜沼湿原、越後沼湿原)、朝鮮、中国(黒竜江省、吉林省、内モンゴル)、モンゴル、ロシア、ヨーロッパ、北アメリカに広く分布。中国名は灰株薹草 hui zhu tai cao。別名はオオヌマスゲ。標高約2400mまでの高山地帯などの沼地や牧草地に生える。
 根茎は長くてやや太い匍匐茎を持つ。稈は緩く叢生し、高さ40~100㎝、やや丈夫、断面は鈍角の三角形、平滑、葉身のない鞘が基部にあり、未発達の鞘は通常、繊維状に崩壊する。葉は稈より長く、葉身は灰緑色、幅2~5㎜、平らで±硬く、葉脈の間に横の隔壁の節があり、縁はザラつく。苞は葉状で、下部の苞は小穂より長く、短い鞘があるか、または無い。上部の苞は鞘がない。小穂は3~6個つく。末端の小穂は2~4個まれに1個だけが雄性、接近してつき、線状円筒形、長さ1~3.5㎝、無柄またはほぼ無柄。残りの小穂は雌性、下部の小穂は離れてつき、円筒形、長さ3~6㎝×幅0.7~0.8㎝、密に多数の花つき、無柄または下部の小穂なは短柄がある雌鱗片は鉄さび色または淡い鉄さび色、長円状披針形、長さ3.5~4㎜、膜質、緑色の肋があり、縁は白色透明、先は鋭形または鈍形。果胞は黄緑色、鱗片よりわずかに長く、または同長、斜めに開出し、やがてわずかに散開し、卵形または広卵形、断面は膨らんだ三角形、長さ約4㎜、膜質、無毛、光沢があり、外側に4~6本の脈があり、基部は丸く、短い柄があり、先は急に狭まり中型の嘴となり、口部には短い2歯がある。小堅果は褐色で、非常に緩く包まれ、広倒卵形、断面は三角形、長さ約1.5㎜、基部には短い柄がある。花柱は細く、屈曲し、基部は太くない。柱頭は3岐、かなり短い。花期と果期は6月~7月。

304 Carex rotundata Wahlenb. コヌマスゲ 小沼菅
 日本(北海道の大雪山)、朝鮮、ロシア、ヨーロッパ北部、北アメリカ(アラスカ、カナダ)原産。周極地域の標高0~900mの沼地(fen)、泥炭質湿原(bog)、湿ったツンドラに生える。大雪山の平ヶ岳南方湿原には日本で唯一確認されている永久凍土帯に分布するパルサ(泥炭質の永久凍土丘)があり、ここで確認されている。
 叢生し、長い根茎がある。 稈の断面は丸く、高さ17~48cm、上部は平滑。葉は基部の鞘が褐色で、まれに赤みを帯びる。葉舌は幅より長さが短い。葉身は緑色~暗緑色、針状、糸状似内巻きし、断面は円形、幅1.3~3(~3.2)㎜、無毛。花序は長さ2~14cm。下部の苞は長さ0.7~10(~16)cm、花序より短いかまたは同長。下部の1~2(~3)個の小穂は雌性、直立する。頂部の1~2(~3)個の小穂は雄性。 雌鱗片は卵形、長さ2.4~4㎜×幅1.3~2.1㎜、長さは果胞と同じかそれより短く、縁は全縁、先は鈍形または鋭形、芒はない。果胞は開出~後屈し、脈が不明瞭で、嘴まで伸びず、楕円形、長さ2.5~3.9(~4.2)㎜×幅1.4~2.3㎜、先は急に狭まり、膜質、嘴は長さ0.4~0.8(~0.9)㎜、不明瞭な2小歯があり、平滑、歯は真っすぐで、長さ0.3㎜。 柱頭は3岐。痩果は黄色、三角形、平滑。2n=80。果期は7~8月。

305 Carex rouyana Franch. オオタマツリスゲ 大玉釣菅
  synonym Carex filipes var. rouyana (Franch.) Kük.
  synonym Carex filipes subsp. rouyana (Franch.) T.Koyama
 日本固有種。本州(東北地方南部~近畿地方)に分布。丘陵地や低山地の林内の明るくやや湿った場所に生える。愛知県絶滅危惧ⅠB類に指定されている。三河では確認されていない。以前はタマツリスゲ(Carex filipes)の変種に分類されていた。
 多年草、高さ30~50㎝。基部の葉鞘は淡褐色、ときに一部が赤褐色になる。葉は柔らかく、粉緑色、花茎より短く、幅3~6(8)㎜。前年の葉はほとんど残らない。苞は花序より短く、有鞘、最下のものは長い鞘となる。小穂は茎の上部に数個つく。頂小穂は雄性、長さ1~2(3)㎝、赤色を帯び、長い柄があり抽出する。側小穂は雌性、まばらに3~6(7)個の果胞をつけ、長さ1.5~2㎝。最下の側小穂は細長い柄があり、垂れ下がる。雌鱗片は一部褐色を帯び、果胞より短い。果胞は長さ6~7㎜、無毛、わずかに脈があり、嘴は著しく長く、口部は2歯(斜めの切形)。果実は長さ2.5~3㎜。柱頭は3岐。果期は4~6月。

306 Carex rugata Ohwi クサスゲ 草菅
 日本(北海道、本州、九州)、朝鮮、中国(安徽省、福建省)原産。中国名は横纹薹草 heng wen tai cao。山の斜面や林縁の道端に生える。
根茎は細く短く、叢生し、匍匐茎がある。 稈は葉腋から生じ、高さ20~50㎝、細長く、鈍角の三角形で平滑、基部は古い根生葉の鞘の繊維状の残骸で覆われる。葉は稈よりわずかに短いかほぼ同じで、葉身は幅2~4(~5)㎜、平らで無毛、縁はザラつく。苞には葉身があり、小穂よりも長く、鞘があり、鞘は長さ0.5~2.5㎝。小穂は4~5個、上部の小穂は連続してつき、下部の小穂は間隔をあけてつく。頂生の小穂は雄性、線状円筒形、長さ(5~)10~20㎜×幅1.5~2㎜、無柄または短い花序柄があり、続く雌小穂を上回る。側小穂は雌性、線状円筒形、長さ(5~10)15~28㎜×幅2~2.5㎜、密に花がつき、花序柄は苞の鞘に包まれるか、短く突き出る。雌鱗片は黄白色、長円形、長さ2.5~3㎜、緑色の肋が1本あり、先は楔形で微突形(芒状に短く尖る)。果胞は淡緑色、鱗片より長く、菱状長円形、中央部が波打つように凹み、断面は鈍角の三角形、長さ約3㎜、薄い膜質、無毛、多数の脈があり、先は徐々に細くなって円錐状の短い嘴になり、嘴は長さ約0.5㎜、口部に微細な2歯がある。小堅果はきつく包まれ、長円形、長さ約2㎜、上部と下部の両面が掘られ、角(かど)で狭くならず、基部は短い柄があり、頂点には円板状環の付属体がある。花柱の基部はわずかに太くなる。柱頭は3岐。花期と果期は4~6月。

307 Carex rugulosa Kük. オオクグ 大莎草
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国(河北省、黒竜江省、吉林省、内モンゴル)、ロシア(極東)原産。中国名は粗脉薹草 cu mai tai cao。川辺、湖畔の草原、浜辺に生える。
 根茎はかなり太い匍匐茎(stolons)を持つ。稈は高さ50~80㎝、断面は鈍角の三角形、下部は平滑、上部はザラつき、基部は赤褐色の葉身のない鞘で覆われ、残った鞘は通常、網状繊維に崩壊する。葉は稈とほぼ同長で、葉身は幅3~5㎜、平らで硬く、鞘がある。苞は葉状で、最下部の苞は花序と同じかわずかに長く、上部の苞はやや短く、短い鞘がある。小穂は4~6個、頂部の2~3個の小穂は雄性、小穂間の距離は短く、狭い披針形、長さ1~3.5㎝、ほぼ無柄。 残りの小穂は雌性、離れてつき、円筒形または長円状円筒形、長さ2~4㎝×幅約1㎝、密に多数の花がつき、基部では緩く花がつき、花序柄は長さ1㎝。雌鱗片は側部が淡い鉄さび色、卵形、長さ3.5~4㎜、膜質、3脈があり、先は鋭形。果胞は褐緑色または褐黄色、斜めに開出し、鱗片より長く、楕円形または卵状楕円形、断面は鈍角の三角形、長さ5~6㎜、コルク質、無毛、外側に数本の脈があり、基部は丸く、先は急に狭まりわずかに幅広で短い嘴になり、口部は半円形の凹形で、短い2歯がある。小堅果はわずかにきつく包まれ、楕円形または卵状楕円形、断面は三角形、長さ約3㎜、基部は短い柄がある。花柱はわずかに長く、屈曲しており、宿存し、基部は太くない。柱頭は3岐。花期と果期は6~7月。

308 Carex rupestris Bellardi ex All. カラフトイワスゲ 樺太岩菅
 日本(北海道、本州)、サハリン、朝鮮、モンゴル、ロシア、ヨーロッパ、北アメリカ(カナダ、アラスカ、USA)、グリーンランド、アイスランド原産。標高0~2000mの乾燥した荒地から中性の荒野、牧草地、岩の露出部、崖錐の斜面に生える。
 根茎は褐色または黒色で、鱗片がある。稈は高さ4~20㎝。葉身は溝があり、先端はすぐに褐色になって乾き、長さ2~12㎝×幅1~3㎜。小穂は茎頂に単生し、雄雌性花序(androgynous)、長さ8~20×幅1.5~4㎜、頂部には少数の雄花、基部には3~15個の雌花がつく。雄鱗片は褐色、縁は透明、中脈は淡色、長円状披針形~倒卵形、長さ2.5~3.5㎜×幅1.4~2㎜、先は鋭形または鈍形。雌鱗片は褐色、縁は透明、中脈はより淡く、円状卵形、長さ2.5~4㎜×幅1.4~2.6㎜、先は鈍形、しばしば果胞を隠す。果胞は雌鱗片と同長、長さ2.5~4㎜×幅1~2㎜、長倒卵形、背面に5~7脈があり、無毛、嘴はほとんどなく、口部は全縁。痩果は長円形、果胞にゆるく包まれ、長さ2.2~2.5㎜×幅約1.5mm。柱頭は3岐。2n=52。果期は春の終わり~夏。

309 Carex ruralis J.Oda et Nagam. サトヤマハリスゲ 里山針菅
 日本固有種。本州の愛知県、岐阜県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県に分布する。低山~山地の半日陰~日陰の湿地、細流脇に生える。
 根茎は短く、叢生する。古い株は根茎が残り、ゆるく叢生しているように見える。基部の鞘は淡褐色。葉は糸状で細く、幅0.4~0.8㎜、縁は少し内曲する。花茎は針金状、高さ20~30cm、鈍い不整な3~4稜形、平滑、しばしば捻じれる。小穂は1個が頂生して直立し、長さ4~6㎜、雄雌性花序(androgynous)、上部には2~3個の雄花が短くつき、下部には雌花が(2~)4~6(~8)個つく。雄鱗片は狭楕円形、先は鈍形、鉄さび色、脱落しやすく、長さ1.5~1.8mm。雌鱗片は楕円形、先は鈍形、脱落しやすく、長さ1.3~1.6mm。最下の雌鱗片にはしばしば短い芒がある。果胞は狭卵形~卵形、長さ2.5~2.8mm×幅1.1~1.3mm、表面に腺点はなく、明瞭な脈があり、断面は3角形、先は次第に細くなり先は短い嘴があり、口部は2小歯。痩果は果胞にきつく包まれ、狭卵形、断面は三角形、長さ1.3~1.6mm、茶褐色。柱頭は3岐。

310 Carex sabynensis Less. ex Kunth カミカワスゲ 上川菅
  synonym Carex umbrosa subsp. sabynensis (Less. ex Kunth) Kük.
  synonym Carex hypochlora Freyn [FOC]

  synonym Carex sabynensis Less. ex Kunth var. leiosperma Ohwi チイサンシバスゲ

 日本(北海道、本州北部)、韓国、中国、モンゴル、ロシア、北コーカサス、トランスコーカサス原産。中国名は绿囊薹草 lu nang ti cao。  叢生し、株立になり、稈は高さ20~45㎝、細く、鈍い三角形。葉鞘の基部は暗褐色、繊維状になる。葉は茎より長く、幅1~2.5㎜、縁はザラつく。最下部の苞は葉状、小穂より長く、鞘は長さ1~1.5㎜。小穂は2~3個つき、頂生の小穂は雄性、棍棒形、長さ0.8~1.5㎝×幅3~4㎜、花序柄は長さ5~9 mm。側小穂は雌性、球形~楕円形~長円形、長さ4~7㎜、花は密につき、花序柄は長さ2~4㎜、雌鱗片は広楕円形または倒卵形~長円形、先にはザラつく短い芒があり、長さ約2.5mm、膜質、淡褐色、背面中央は緑色、1脈がある。果胞は菱状楕円形または広卵形、断面は鈍角の三角形、長さ約2.5㎜、淡黄緑色、毛があり、腹面には不明瞭な脈があり、背面には明らかな脈があり、非常に短い柄があり、先には円錐形の嘴があり、口部には2歯がある。痩果は小さな果胞の中にきつく詰まり、楕円形、断面は三角形、長さ約1.5 mm、淡褐色で、長部には環形の付属体がある。2n=40, 54, 56, 60 ,76。花果期は5~6月。

310-1 Carex sabynensis Less. ex Kunth var. sabynensis カミカワスゲ 

  synonym  Carex sabynensis Less. ex Kunth

310-2 Carex sabynensis Less. ex Kunth var. rostrata (Maxim.) Ohwi ツルカミカワスゲ 蔓上川菅

  synonym Carex subebracteata (Kukenth.) Ohwi [FOC]
  synonym Carex pisiformis Boott var. subebracteata Kükenthal
 日本(本州、九州)、韓国、中国(黒竜江省、内モンゴル)、モンゴル、ロシア(極東、東シベリア)原産。中国名は喧叶薹草 xiao bao ye tai cao。森林内の湿った場所に生える。
 根茎は細い匍匐茎を持つ。稈は叢生し、高さ15~30㎝、細長く、断面は扁平な三角形で、平滑。基部の鞘は淡褐色または褐色で、繊維状に裂かれる。葉は稈より短く、葉身は幅1.5~2.5㎜、平らで、下面と縁に沿ってザラつく。苞は剛毛状で、抱く小穂よりも短く、鞘があり、鞘は5~7㎜。小穂は 2~3個、間隔をあけてつく。頂生の小穂は雄性、ときに隣の雌小穂に近接し、狭い円筒形または棍棒形で、長さ12~18㎜×幅2~3㎜、花序柄は長さ0.4~2.5㎝。側小穂は雌性、円筒形または楕円形、長さ6~12㎜×幅約3㎜、かなり密に花がつき、花序柄は苞の鞘に包まれているか、またはわずかに突き出す。雌鱗片は鉄錆び色、倒卵形または卵形、縁は白色の膜質、緑色の肋があり、明瞭に中肋が突き出し、ザラつく微突になり、先は鋭形。 果胞は淡緑色、鱗片より長いか、またはほぼ等長、倒卵形または広倒卵形、断面は鈍い三角形、長さ2~2.7㎜、まばらに毛があり、わずかに少数の脈があり、基部は漸尖して短い柄になり、先は急に狭まり円錐形の嘴になり、嘴はわずかに反り返り、外側が凹形、口部で内側方向が切形になる。小堅果はきつく包まれ、広倒卵形、断面は鈍角の三角形、長さ1.2~1.5㎜、基部には短い柄があり、頂部には円盤状環形の付属体がある。柱頭は3岐。花果期は7月。

311 Carex sachalinensis F.Schmidt サハリンイトスゲ 広義
 日本、千島列島、サハリン原産。3変種に分類されている。

311-1 Carex sachalinensis F.Schmidt var. sachalinensis サハリンイトスゲ 

 日本(北海道、本州の岩手県早池峰山など)、千島列島、サハリンに分布する。別名はゴンゲンスゲ。山地の林内や林縁に生える。
 高さ15~30cm。根茎は叢生せず、短い細い匍匐枝を出す。花茎の上部はわずかにザラつく。基部の鞘は淡褐色~褐色。葉は扁平でやや硬く、前年の葉が果期にも残る。小穂は2~4個、間隔を開けて直立する。果胞はやや密につき、淡暗緑色で、後に帯褐色となり、倒卵形、断面は鈍い3稜形、無毛、脈があり、頂部はきわめて短い嘴となり、口部には2歯がある。痩果は密に果胞に包まれ、頂部に盤状の付属体がある。柱頭は3岐。

311-2 Carex sachalinensis F.Schmidt var. iwakiana Ohwi コイトスゲ 小糸菅

  synonym Carex sachalinensis F.Schmidt var. pineticola (Ohwi) Ohwi

  synonym Carex sachalinensis F.Schmidt var. sachalinensis sensu Akiyama, p. p.

  synonym Carex sachalinensis F.Schmidt var. pineticola (Ohwi) Ohwi f. calvescens Hiyama

 本州(東北~東海地方)に分布。別名はゴンゲンスゲ。山地の林下、林縁や草地に生える。
 まばらに叢生し、細長い匍匐枝を出す。有花茎は高さ15~30㎝。基部の鞘は淡黄褐色。葉は幅1.5~2㎜、夏緑性で果期には前年の葉は枯れる。頂小穂は雄性、雄鱗片は淡黄褐色。側小穂は雌性、やや密に果胞をつけ、長い柄があり、苞葉よりも長い。苞は葉身が刺状で短い。雌鱗片は淡黄褐色、中肋は淡緑色、先には短い芒がある。果胞は長卵形、長さ2~3㎜、表面は無毛かまばらに短毛があり、嘴は短い。痩果は3稜形、表面は光沢がある。花期は5~6月。

311-3 Carex sachalinensis F.Schmidt var. longiuscula Ohwi ミヤマアオスゲ 深山青菅

 本州中部(栃木県、長野県、岐阜県)、四国に分布。林内に生える。
 まばらに叢生し短い地下茎がある。花茎は高さ15~25㎝、鞘は褐色。葉は花茎より短く、幅1.5~2.5㎜。果胞には長さ1.5~1.7㎜の嘴がありややザラつく。痩果は狭卵形。柱頭は3岐。花期は6~7月。

312 Carex sacrosancta Honda ジングウスゲ 神宮菅
 日本固有種。本州(伊豆諸島以西)、四国、九州に分布。低山地の林内や林縁に生える。愛知県の準絶滅危惧種に指定されている。
 常緑性。匍匐枝はなく、小さい株を作る。茎は高さ20~50cm、3稜形。基部の葉鞘は淡褐色~褐色、繊維状に分解する。葉は細い線形、幅1.5~2.5mm。小穂は 4~6個つき、全て雄雌性(androgynous)、花序柄があり、線状楕円形、長さ1~2.5㎝、上部には雄花、下部には雌花がまばらにつく。苞は刺状~小さい葉状、基部に鞘があり、鞘は長さ0.7~1.5㎝。果胞は紡錘状卵形、長さ約4mm、脈上にまばらに短い刺状毛があり、先はやや長い嘴となる。柱頭は2岐。果期は9~10月。

313 Carex sadoensis Franch. サドスゲ 佐渡菅
 日本(北海道、本州の中部地方以北)、千島列島、サハリン、中国(安徽省)原産。中国名は美丽薹草 mei li tai cao。渓谷沿いや小川沿いに生える。
 根茎は短く、匍匐枝がある(stoloniferous)。稈は叢生し、高さ30~60㎝、断面は鋭角の三角形、平滑またはザラつき、基部は黄褐色の光沢のある葉身のない鞘で覆われ、わずかに繊維状に崩壊する。 葉は稈と同長かそれよりわずかに短く、葉身は灰緑色、線形、幅2~4㎜、平らでやや柔らかく、密に微細なパピラがあり、縁は内巻き。苞は葉状で、花序の高さに等しく、鞘は無い。小穂は4~5個。頂生の小穂は雄性、線状円筒形、長さ20~40㎜×幅3~4㎜、花序柄がある。側小穂は雌性、円筒形、長さ20~70㎜×幅3~5㎜、密に多数の花がつき、短い花序柄かあるかまたは無柄。雌鱗片は赤褐色、狭卵状披針形、長さ約3㎜、光沢があり、緑色の3本の脈のある肋が先端~突き出し、先は切形または凹形。果胞は薄緑色またはわら色、通常は微小な斑点があり、鱗片より短いが幅が広く、長円形または倒卵形、両凸形、長さ約3㎜、膜質、2本の辺縁の肋を除いて脈はなく、基部は狭まり短い柄があり、先は急に狭まり、しばしば縁がザラつく嘴となり、口部には2歯がある。小堅果はきつく包まれ、長円形または倒卵形、両凸形、長さ1.5~1.8㎜。 花柱は非常に短く、長さ約0.2㎜、基部は太くならない。柱頭は2岐、長くて細く、宿存する。花期は5~7月。

314 Carex sampsonii Hance オオムギスゲ 大麦菅
  synonym Carex cavaleriei H.Lév. & Vaniot
  synonym Carex hancei C.B.Clarke

  synonym Carex laticeps C.B.Clarke ex Franch. [Flora of China]

 日本(本州の中部以西の太平洋側)、朝鮮、中国(安徽省、福建省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、浙江省)原産。中国名は弯喙薹草 wan hui tai cao。樹林の斜面、道端、川辺に生える。
 根茎は短く、木質で、硬く、匍匐枝がある。稈は高さ30~40㎝、細く、断面は三角形で、まばらに毛があり、基部は繊維状に崩壊する茶色の鞘で覆われる。葉は稈より短く、葉身は灰緑色、線形、幅3~5㎜、平ら、外巻きし、毛があり、先は鋭形。 苞には短い葉身があり、毛があり、長い鞘がある。小穂は2または3個、離れてつき、花序柄には毛がある。頂生の小穂は雄性、こん棒形、長さ1.5~2.5㎝、花序柄は長さ4~9㎜。側小穂は1~2個つき、雌性、長円形または長円状円筒形、長さ2~2.5㎝×幅1~1.4㎝、密に花がつく。雌鱗片は黄白色、卵状披針形、長さ5~6㎜、緑色の1脈の肋が突き出し芒になる。果胞は褐緑色、鱗片より長く、卵形、断面は三角形、長さ7~8㎜(嘴を含む)、毛があり、多数の脈があり、先は急に狭まり、円筒形の嘴になり、長さ約3㎜、口部は深く2裂し、長い鋭い歯がある。小堅果は成熟すると黒色、きつく包まれ、卵形、長さ3~4㎜、断面は三角形、中央でくびれた角(かど)を持ち、面は基部で凹み、基部に短い湾曲した柄があり、頂部に短い湾曲した嘴があり、花柱の基部は太くなる。柱頭は3岐。花果期は3~4月。

315 Carex satsumensis Franch. et Sav. apiculate アブラシバ 油芝
  synonym Carex nikoensis Franchet & Savatier
  synonym Carex satsumensis var. longiculma Hayata
  synonym Carex satsumensis var. nakaii Hayata
 日本(本州の福島以西、四国、九州)、台湾、ベトナム、フィリピン原産。中国名は砂地薹草 sha di tai cao。砂地、山地の風化した砂礫地、川原に生える。
 根茎は伸び匍匐すする。稈は緩く叢生し、断面は三角形、長さ7~20㎝×幅約0.15㎝、無毛、条線がある。葉は稈より短いかまたは長く、平らで、幅1.5~7㎜、わずかに硬く、無毛。根生葉の鞘は黒褐色、繊維状。苞は線形で花序より短く、鞘はない。花序は穂状花序、頂生、長円状円筒形、長さ3~8㎝×幅1~1.7㎝。小穂は多数つき、雄雌性(androgynous)で、密につき、開出し、長円形、クラドプロフィル(cladoprophylls)から生じ、発達した雌花をもち、基部の数個の花がときに分岐する。小穂の雄性部分は小さく、長さ2~3㎜、4~5個の花を持つ。 雌性部分には多数の花が密につく。雄鱗片は淡黄色または淡褐色、披針形、長さ2.5~3㎜、膜質、先は尖鋭形。雌鱗片は側面が淡黄色または淡褐色、卵形、長さ2~2.5㎜、膜質、1本の中肋があり、縁は透明、先は鋭形。果胞は熟すと淡黄褐色になり、開出し、鱗片よりわずかに長く、長円状披針形、断面は鈍い三角形、長さ2.5~3㎜、膜質、2本の隆起した側脈と外側に数本の細い脈があり、内側は脈がなく、より淡く、基部は急に狭まり、 柄は短く、先は漸尖して長い嘴になり、口部は斜めの切形。 熟した小堅果は淡黄色、長円形、断面は鈍い三角形、長さ約1.5㎜、基部は漸尖し、先には短突起がない。花柱の基部はわずかに太くなる。柱頭は3岐。果期は5~7月。

316 Carex saxatilis L. チシマナルコ 千島鳴子
  synonym Carex vesicaria subsp. saxatilis (L.) Kük.

  synonym Carex saxatilis var. laxa (Trautv.) Ohwiチシマナルコ 

  synonym Carex saxatilis L. var. major Olney オオチシマナルコ 

 モンゴル、ロシア、ヨーロッパ北部、北アメリカ(カナダ、USA)、グリーンランド、アイスランド原産。千島列島は分布域に含められていない。標高0~3700mの沼地(fen)、沼原(bog)、湿ったツンドラ、道路脇の溝、湖岸、池、および浅瀬にある穏やかな流れの小川に生える。
 通常、緩く叢生する。根茎は短く、密集する。稈は断面が三角形、長さ8~90cm、上部はザラつく。葉は基部の鞘が赤褐色、葉舌は長さが幅と同じかそれよりわずかに長く、葉身は緑色~暗緑色、V 字形、ときに縁が外巻きし、幅0.9~6.3㎜、無毛。 花序は長さ2.5~14(~20)cm。下部の苞は長さ0.6~16(~29)cm、花序より短いかそれに等しい。下部の1~3個の小穂は雌性、直立するか、または下部の小穂はしばしば垂れ下がる。頂部の1~3個の小穂は雄性。雌鱗片は卵形、長さ1.9~4.3(~5)㎜×幅0.9~2.1㎜、果胞と同長かまたは短く、縁は全縁、先は鈍形または鋭形、芒はない。果胞は斜上し、しばしば暗色で、脈は不明瞭、嘴まで脈は走らす、痩果はきつく入り、楕円形、長さ2.2~5.5㎜×幅1.1~2.9㎜、先は急に狭まり、嘴は長さ0.2~0.8㎜、2小歯があり、歯は真っ直ぐで長さ0.3㎜ まで。 柱頭は2岐。痩果は黄色、両凸形、平滑。2n=78, 80。果期は夏。

317 Carex scabrifolia Steud. シオクグ 
 日本全土、朝鮮、中国、台湾、ロシア原産。中国名は糙叶薹草 cao ye tai cao。海岸の塩湿地に生える。
 多年草、高さ30~60㎝。地下茎で群生する。基部の鞘は赤紫色を帯び、糸網を生じる。葉は茎より長く、幅約2㎜の線形。小穂は3~4個つき、上部の線形小穂は雄性、下部の長楕円形は雌性。雄性小穂は枝分かれして複数つくこともあり、雌性小穂との間は離れている。果胞は長さ6~8㎜の長楕円形、縦縞があり、先が短い嘴状。口部は2歯。鱗片は果胞の長さの約1/2。柱頭は3分岐。コウボウムギなどと同じように果胞は厚く、中の痩果は長さ約4㎜と小さく、海流散布されることを推測させる。花期は6~7月。

318 Carex scaposa C.B.Clarke カレックス・スカポサ
 朝鮮、中国、ベトナム原産。中国名は花葶薹草 hua ting tai cao。

319 Carex schmidtii Meinsh. シュミットスゲ 
 日本(北海道)、朝鮮、中国(黒竜江省、吉林省、内モンゴル)、モンゴル、ロシア原産。中国名は瘤囊薹草 liu nang tai cao。湿地、川辺、森林限界に生える。
 根茎は短い。 稈は密に叢生し、高さ30~80㎝、細く、三角形、ザラつき、基部は 栗子褐色(castaneous-brown)の葉身のない鞘で覆われ、網状の繊維にわずかに崩壊する。葉は稈より短く、葉身は幅2~3㎜、平ら、縁は外巻きする。最下の苞葉は葉状で、下部の花序には鞘が無い。小穂は3~5個。上部の1~3個の小穂は雄性、近接し(approximate)、ほぼ線形または狭円筒形、長さ1~3㎝。残りの小穂は雌性、円筒形、長さ12~30㎜×幅4~6㎜、下部の小穂は短い花序柄を持ち、上部の小穂は無柄。雌鱗片は栗子褐色、披針形、長さ約3㎜、縁は狭く白色透明、粘膜に突き出た3本の静脈のある肋骨、先端は鋭形。果胞は褐緑色または栗子褐色、鱗片よりわずかに短いかまたは同長で、幅は鱗片の幅の2倍、広倒卵形またはほぼ円形、膨らみ、長さ2~3㎜、微細なパピラがあり、2本の縁脈を除いて脈はなく、基部には短い柄があり、上部の縁はわずかにザラつき、まれに平滑、先は急に狭まり、短い嘴になり、口部は全縁。小堅果は茶色で、しっかりと包まれ、倒卵状円形で、両凸形、幅約1.8㎜、花柱の基部は太くない。柱頭は2岐。花期と果期は6~7月。

320 Carex scita Maxim. ミヤマアシボソスゲ 広義
 日本、千島列島、サハリン、ロシア(カムチャッカ半島)に分布。

320-1 Carex scita Maxim. var. scita ミヤマアシボソスゲ 深山足細菅

 日本固有種。本州(八ケ岳、南アルプス、中央アルプス、木曽御嶽)原産。高山の草地に生える。
 多年草、高さ20~70㎝。根茎は短く、粗に叢生する。基部の鞘は葉身を欠き、濃紫褐色。葉は幅2~5㎜、花序より低い。苞は無鞘。頂小穂は雄性、側小穂は雌性、ときに上部の側小穂の先にも短い雄花部がある。雌小穂は長さ1~3㎝、長い花柄があり、垂れ下がる。鱗片は果胞より少し短く、紫褐色、中肋は緑色、先が長い芒になり、果胞の倍近くつき出る。果胞は長さ4~5㎜の扁平な長い楕円形、先は漸尖し嘴はなく、口部は凹形、縁に小剛毛がある。痩果は長さ約2.5㎜の長円状の3綾形、基部に長い柄がある。柱頭は3岐。花期は7~8月。

320-2 Carex scita Maxim. var. brevisquama (Koidz.) Ohwi シロウマスゲ 白馬菅

  synonym Carex tenuiseta Franch. var. brevisquama Koidz. in Bot. Mag. (Tokyo) 32: 54 (1918)

 本州の中部地方~東北地方の日本海側の高山に分布する。和名は北アルプスの白山にあることによる。標高2000~3200mの高山の岩場や草原に生える。
 高さ40~70㎝、根茎は短く、緩く叢生する。葉は茎より短く、幅3~6㎜、弓なりに先が垂れ下がる。花茎は細く、上部が弓なりになり、茶褐色~黒紫褐色の小穂が垂れ下がる。頂小穂は雄性。側小穂は雌性、3~6個つく。雌鱗片は濃赤紫色、長さ3~5㎜、先に長さ約2㎜の短い芒がある。果胞は長さ5~7㎜、長円状卵形、基部に短い柄があり、先は次第に狭まり、先端に短い嘴があり、口部は不明瞭な2小歯またはほぼ全縁、縁に小剛毛がある。痩果は果胞に緩く包まれる。花柱の基部は太くならない。柱頭は3岐。花期は6~8月。

320-3 Carex scita Maxim. var. parvisquama T.Koyama ダイセンアシボソスゲ 大山足細菅

  synonym Carex scita Maxim. subsp. parvisquama (T.Koyama) T.Koyama
 鳥取県の大山に分布する。大山の山頂付近の崩壊地の草地に生える。
 ややまばらに叢生する。花茎は高さ約30㎝。花茎は平滑。基部の鞘は濃赤紫色、繊維状に細裂する。葉身は幅3~4.5㎜、下面にパピラが密にある。頂小穂は雄性、1個、長円形。側小穂は数個つき、雌性、楕円形、黒紫褐色、柄があり下垂する。雌鱗片は赤紫色、長い芒がある。果胞は基本変種より幅が広く、雌鱗片より長く、長さ4~4.5㎜、広楕円形、5~6本の細脈があり、嘴はない。柱頭は3岐。果期は7月。

320-4 Carex scita Maxim. var. riishirensis (Franch.) Kük. リシリスゲ 利尻菅

  synonym Carex scita Maxim. var. koraginensis (Meinsh.) Kük. キタチシマスゲ 

  synonym Carex ciliolata Franch
 日本(北海道)、千島列島、サハリン、ロシア(カムチャッカ半島)に分布。
 花茎の上部がザラつく。鱗片は濃赤紫色~濃赤褐色。果胞はシコタンスゲより短く、雌鱗片よりやや長く、長さ4.5~5㎜×幅1.5~2 mm、稜間に3~4本の細脈があり、濃赤紫色の斑点があり、両側に小剛毛があり、先は次第に狭まり短い嘴となり、口部は凹形。柱頭は3岐。

320-5 Carex scita Maxim. var. scabrinervia (Franch.) Kük. シコタンスゲ 色丹菅

  synonym Carex scita Maxim. subsp. scabrinervia (Franch.) T. Koyama

 日本(北海道の根室・釧路・礼文島)、千島列島、サハリンに分布。海岸に生える。
 花茎は高さ40~80㎝。葉は下面にパピラが密にある。頂部の1~2個の小穂は雄性、側小穂は雌性、長さ1.5~3㎝、長い柄があり下垂する。雌鱗片は紫褐色、芒がある。果胞は幅がシコタンスゲより広く、楕円形~広楕円形、雌鱗片よりやや長く、縁に著しい鋸歯状の小剛毛があり、嘴は短く、口部は凹形。花柱は基部が湾曲する。柱頭は3岐。果期は7~8月。

320-6 Carex scita Maxim. var. tenuiseta (Franch.) Yonek. アシボソスゲ 足細菅

  synonym Carex tenuiseta Franch

  synonym Carex scita Maxim. subsp. brevisquama (Koidz.) T.Koyama

 本州の山形県と秋田県界にある鳥海山、北アルプスの日本海側に分布する。高山帯の草地に生える。シロウマスゲと混同され、別名はシロウマスゲ。
 高さ20~40㎝。基部の鞘は濃赤紫色。葉の幅は3~6mm、下面にパピラがあり、柔らかく先端が垂れる。小穂は細い枝先に付き、茶褐色~黒褐色、垂れ下がる。頂生の雄小穂は1~2個つき、線状円柱形。雌小穂は卵状円柱形、長さ1~3㎝。果胞はミヤマアシボソスゲに似るが、果胞の嘴の口部が凹まない。花期は6~8月。果期は8~9月。[J. Jap. Bot. 86: 239 (2011)]

321 Carex sclerocarpa Franch. タイヘイスゲ 
 中国(安徽省、湖南省、四川省)、台湾原産。中国名は硬果薹草 ying guo tai cao。標高900~1700mの森林に生える。

322 Carex scoparia Schkuhr ex Willd. アメリカヤガミスゲ 
 北アメリカ(カナダ、USA)原産。英名はbroom sedge , pointed broom sedge。日本やヨーロッパ、ニュージーランドへなどへの帰化が報告されている。
 密に叢生する。稈は高さ20~100㎝、栄養稈は先に少数の葉が集まる。葉鞘の頂部はU字形。上部の葉舌は長さ2.3~4.8 mm。稔性の稈あたり3~5枚の葉身がつき、長さ10~32㎝×幅1.4~3(~3.5)㎜。花序はアーチ状またはうなずき、密集または開いており、成熟すると緑色、黄色または褐色、長さ1.5~6㎝×幅5~20㎜。下部の節間は長さ2~12㎜。2番目の節間は長さ2~13㎜。下部の苞葉は鱗片状で、先に剛毛がある。小穂は3~10個、離れ、楕円形、長さ7~16㎜×幅3~9(~13)㎜、基部は鋭形~短い漸尖形、先は鋭形~円形。雌鱗片は透明な褐色、ときに緑色または金色の中央の縞があり、披針形、長さ3.4~4㎜、果胞より短くて狭い、先は尖鋭形。果胞は斜上または稀に広く開出し、金褐色、各面に顕著に5脈または外側に少数の脈があり、基部まで翼があり、披針形で、痩果の部分を除いて平坦、長さ4.2~6.8㎜×幅1.2~2㎜、長さは幅の少なくとも3倍あり、厚さ0.35~ 0.55㎜、縁は平らで、翼を含めて幅0.2~0.6㎜。嘴は先端が淡褐色~金褐色、平らで、縁毛のある小鋸歯があり、外側の縫合線は白色または金褐色の透明な縁があり、嘴の先端から痩果までの距離は2.2~4.8㎜。痩果は卵形または楕円形、長さ1.3~1.7㎜×幅0.7~0.9㎜、厚さ0.3~0.4㎜。果期は晩春~夏。

323 Carex sedakowii C.A.Mey. ex Meinsh. ヒメオノエスゲ 
 日本、朝鮮、中国、モンゴル、ロシア原産。中国名は沟叶薹草 gou ye tai cao。Kewscienceでは日本、中国を分布域から除いている。
 根茎は短い。稈は密に叢生し、高さ8~40㎝、細く、鈍三角形、平滑。葉は根生葉、稈の高さの1/3~1/2、葉身は幅約1㎜、内巻きし、髪の毛状になり、葉身はの上面が溝状で、縁はザラつき、鞘は長さ約1㎝、通常膜質部分が裂開し、下部は赤褐色、上部はわら色。最下部の苞(総苞片)は葉状で、細く、小穂を超え、上部の苞の葉身は剛毛状か、または葉身のない鞘になり、小穂より短く、鞘は長さ0.8~2㎝。小穂は2~4個、離れてつき、苞の鞘ごとに1個つく。頂生の小穂は両性具有(androgynous)、長さ0.7~1㎝、上部に少数の雄花があり、下部に3~4個の雌花がある。側小穂は雌性で、狭い長円形または卵形、長さ5~8㎜、緩く3~5花がつく。花序柄は細い。雌鱗片は褐黄色~赤褐色、卵形、長さ約2㎜、膜質、1脈があり、早落性、先は鈍形、無突起。 果胞は成熟すると鉄さび褐色、直立し、鱗片よりわずかに長く、倒卵形、鈍い三角形、長さ約2.5㎜、膜質、無毛、±地味な光沢をもち(nitid)、不明瞭な脈があり、基部は漸尖して短い柄になり、先は急に狭まりかなり長い嘴になり、口部は白色透明で、斜めの切形。小堅果は褐色、角(かど)がわら色、かなりしっかりと包まれ、楕円形、三角形、長さ約2㎜。花柱は宿存し、基部が太くなる。柱頭は3岐。花期と果期は6月~8月。標高600~3200mの草が生い茂った山の斜面、森の中の泥沼、川沿いに生える。分布は中国(黒竜江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル)[日本、韓国、モンゴル、ロシア(極東、シベリア)](Flora of China)。
 [Hideki Takah., Pl. Kuril Isl.: 141 (2015)]によると,北千島からカムチャツカにかけて本種に当てられている植物はC. williamsii Britt.であるという。Katsuyama (2020)が色丹島からC. sedakowiiとして報告している植物もC. williamsiiかもしれない。(YList)

324 Carex semihyalofructa Tak.Shimizu ユキグニハリスゲ 雪国針菅
 日本固有種。本州の北陸以北の日本海側多雪地に生える。
 根茎が長く伸び、ゆるく叢生する。花茎は高さ20~45㎝、3稜形、ザラつく。葉は幅1.7~2.8㎜。小穂は1個頂生し、長さ5~8㎜、上部の雄花部は小さい。鱗片は雌雄とも褐色を帯びる。果胞は完熟すると斜開し、水平に開出せず、卵形~広卵形、長さ2.4~3.1㎜、嘴は短い。花期は7~8月。

325 Carex sendaica Franch. センダイスゲ 仙台菅
  synonym Carex lenta D.Don var. sendaica (Franch.) T.Koyama
 日本(本州の宮城県以南、四国、九州)、朝鮮、中国(貴州省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、陝西省、四川省、浙江省)原産。中国名は仙台薹草 xian tai tai cao。標高100~1900mの雑木林、草地、山の斜面の湿った場所、谷の側溝、岩の隙間、畑の土手に生える。
 根茎は細く、匍匐枝を出す(stoloniferous)。 稈は密に叢生し、高さ10~35㎝またはそれ以上[30~40㎝]、細く、3稜形、平滑、先付近はザラつく。葉は根生し、稈より短いか、または稈と同長で、葉身は幅2~3㎜、平ら、またはわずかに二つ折りになり、縁はザラつき、鞘がある。鞘は長さ2~3㎝で、通常は裂ける。苞は鞘があり、下部の葉身は線形、上部の葉身は剛毛状。 鞘は長さ5~10㎜、鞘の側部は膜質、褐色。小穂は3~4(~8)個、幅3.5~4㎜、苞の鞘に1個ずつつき、 間隔は最大 5.5㎝、最上部の2個はほぼ連続し、雄雌性花序(androgynous)。頂小穂は雄性部分が雌性部分より長い。側小穂は雌性部分が雄性部分より長く、楕円形、長さ8~15㎜、雌部分はわずかに密集して数個~10個以上の花をつけ、花序柄が細い。雌鱗片は赤褐色、卵形、長さ2~2.5㎜、膜質3脈あり、先は鋭形、無突起。果胞は赤褐色、直立し、鱗片より長く、広楕円形または広卵形、平凸形、長さ3~3.5㎜、膜質、外側に細い数本の脈があり、基部は急に狭まり短い柄になり、先は急に狭くなって短い嘴になり、嘴は長さ1㎜未満、縁に小剛毛があり、口部は短い2歯がある。小堅果は帯黄色、しっかり包まれ、ほぼ円形、断面は扁平な平凸形(レンズ形)、長さ約2㎜、基部に柄は無い。花柱の基部はわずかに太くなる。柱頭は2岐、突出部分は果胞より長い。花期と果期は8~10(11)月。
325-1 Carex sendaica var. sendaica センダイスゲ 狭義

  synonym Carex brunnea Thunberg var. sendaica (Franchet) Kükenthal

  synonym Carex lenta D. Don var. sendaica (Franchet) T. Koyama

  synonym Carex longistolon C. B. Clarke ex Franchet.
 日本、中国(貴州省、湖北省、江蘇省、江西省、陝西省、四川省、浙江省)に分布。標高100~1900mの雑木林、草地、山の斜面の湿った場所、谷の側溝、岩の隙間に生える。
 稈は高さ10~35㎝。小穂は3~4個、長円状円筒形。花期と果期は8~10月。

325-2 Carex sendaica var. pseudosendaica T. Koyama センダイスゲモドキ 仙台菅擬

  synonym Carex lenta D.Don var. lenta f. simplex (Kük.) T.Koyama

  synonym Carex lenta D.Don var. pseudosendaica (T.Koyama) T.Koyama ex Ohwi

 日本(本州、四国、九州)、中国(貴州省、河南省、湖南省、江蘇省、四川省)に分布する。中国名は多穗仙台薹草 duo sui xian tai tai cao。野原の土手、藪、海岸や低山地の疎林に生える。
 高さ35㎝以上。根茎は短く、太く、直径1~2㎝、緩く叢生する。茎は葉とほぼ同長。小穂は7~8個つき、雌雄性、短い円筒形、幅3.5~4㎜。花期と果期は(8)9~10月。

326 Carex shimidzensis Franch. アズマナルコ 東鳴子
 北海道、本州、九州、朝鮮、中国、インド、ネパール、ミャンマー、スリランカ、タイ、ベトナム原産。中国名は二形鳞薹草 er xing lin tai cao。山地の湿った場所、渓流に生える。
 多年草、高さ40~80㎝。根茎は短く、叢生する。基部は太く、鞘は葉身を欠き、淡褐色(地下の部分は色が濃い)。葉は幅5~12㎜、柔らかく、縁に上向きの小刺があり、ざらつく。苞は長く、無鞘。小穂は茎の上部に集まって3~6個つき、垂れ下がる。頂部の雄小穂は長さ4~10㎝の線形。側小穂は雌性、幅4~5㎜、長さ3~12㎝、細くて長い柄があり、垂れ下がる。側小穂の先に小さな雄花をつける小穂も多く、基部に雄小穂をつけることもある。果胞は長さ2.5~3㎜、狭卵形~卵形、平滑、嘴は短く、口部は凹形、熟すと膨らむ。雌鱗片は淡緑色で短い芒があり、果胞より幅が狭く、長さはほぼ同長かやや短いこともある。痩果は長さ約1.5㎜、広卵形、褐色、断面はレンズ形、表面に微細な凸凹がある。柱頭は2岐。果期は5~6月。

327 Carex siderosticta Hance タガネソウ 鏨草
 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は宽叶薹草 kuan ye tai cao。英名はcreeping broad-leaf sedge。和名は葉が鍛冶屋の使うタガネに似ていることから。林内に生える。
 多年草、高さ10~40㎝。根茎は匍匐し、疎らに生える。全体にほとんど無毛。葉は広く幅1~3㎝の披針形。花茎は根生葉と離れて出る。苞は有鞘、鞘部が長い。小穂はすべて雌雄性、長さ1~2㎝、頂部が雄性。雌鱗片は卵形で、果胞と同長。果胞は長さ約3㎜、淡緑色で、無毛。柱頭は3岐、淡紅紫色。2n=12, 24。花期は5~6月。

327-1 Carex siderosticta Hance f. variegata (Akiyama) T.Koyama フイリタガネソウ 

327-2 Carex siderosticta Hance var. stenophylla (Kitag.) Kitag. ホソバタガネソウ 


328 Carex sikokiana Franch. et Sav. ツルミヤマカンスゲ 蔓深山寒菅
  synonym Carex multifolia Ohwi var. stolonifera Ohwi
  synonym Carex pisiformis var. sikokiana (Franch. & Sav.) T.Koyama
  synonym Carex sachalinensis var. sikokiana (Franch. & Sav.) Ohwi
 日本固有種。本州(関東南部から近畿)、四国、九州(北部)に分布。山地に生える。
 地上性の太い匍匐根枝を伸ばし、マット状になる。花茎は常に中央生、高さ20~35㎝。葉は常緑、幅4~8㎜。基部の鞘は赤褐色~紫褐色。頂小穂は雄性、赤褐色、長さ1.5~2.5㎝。側小穂は雌性で2~4個つき、狭い円柱形、ややまばらに果胞をつける。最下の小穂はときに根生する。果胞はやや大きく、長さ3.5~4㎜、無毛、嘴が長く、口部は全縁または不明瞭な2歯がある。痩果は倒卵形。果期は5~6月。

329 Carex siroumensis Koidz. タカネナルコ 高嶺鳴子
 日本(本州の中部地方)、朝鮮、中国(吉林省)原産。中国名は冻原薹草 dong yuan tai cao。標高2000~2400mの高山の草原、岩の裂け目、崖に生える。
 根茎は短く、木質、斜めになる。稈は密に叢生し、高さ10~22㎝、細く、扁平な三角形、わずかにザラつき、基部は薄褐色の鞘で覆われ、やがて平行な繊維状に崩壊する。葉は稈と同長かそれより短く、葉身は線形、幅1~2㎜、平らでときに螺旋状になり、縁はザラつき、先は尖鋭形。下部の苞葉は葉状、花序より短く、鞘は長さ1~2㎜。上部の苞葉は鱗片状(glumelike)。小穂は3~7個つき、頂生の小穂は雌雄性(gynaecandrous)、まれに雄性、こん棒形、長さ1.4~1.8㎝。 残りの小穂は雌性、円筒形、長さ1~2㎝、上部の1~2個の小穂は近接し、無柄またはほぼ無柄で、最下の小穂はわずかに離れ、長い花序柄を持つ。雌鱗片は紫褐色、楕円状卵形、長さ2.5~3.5㎜、縁は白色透明、黄緑色の1本の脈のある肋が突き出し、微突になり、先は鋭形。果胞は黄緑色または先が紫褐色、鱗片より長く、長円状披針形、断面は扁平な三角形、長さ4~5.5㎜、膜質、粗毛があり、かすかに脈があり、基部は楔形、縁はザラつき、先は次第に狭まり、嘴になり、口部に2歯がある。小堅果は淡褐色、ゆるく包まれ、長円形、断面は扁平な三角形、長さ2~2.5㎜、基部の柄は長さ約1mm。花柱は直立し、基部は太くない。柱頭は3岐。花期と果期は7~8月。

330 Carex sociata Boott タシロスゲ 田代菅
 日本(四国、九州)、台湾原産。中国名は伴生薹草 ban sheng tai cao。草原、森林に生える。
 根茎は短い。稈は叢生し、高さ20~50㎝、細く、滑らかです。 基部の鞘には葉身がなく、暗褐色で繊維状に分解される。葉身は幅3~6㎜、平らで、やや硬めから草質、鞘はかなり短い。下部の2~4個の苞葉は葉状で、花序とほぼ同長で、一番下のものはかなり長い鞘を持つ。小穂は4~8個、間隔をあけて配置するか、上部 2~3個を連続させる。頂生の小穂は雄性、緑色、線状円筒形、長さ1.5~3㎝。 側小穂は雌性で、まれに両性具有か、ごくまれに基部に数個の雄花を持ち、各節に単生または双生し、緑色、円筒形または長円状筒形、長さ15~40㎜×幅3~4㎜、密に花がつく。花序柄は苞葉の鞘からわずかに突き出ているか、鞘に包まれる。雌鱗片は長円形、長さ約3㎜(芒を含む)、膜質、1~3本の脈のある緑色の肋が突き出し、長さ0.7~1㎜の短い芒になる。果胞は楕円状紡錘形、三角形、長さ約2.5㎜、毛があり、多数の脈があり、両端が急に狭まり、先には短い嘴があり、開口部には浅い2歯がある。小堅果はしっかりと包まれ、長さ約1.5㎜、三角形、両端が急に狭まり、先には円盤状の環がある。花柱は基部が太くなる。柱頭は3岐。

331 Carex sordida Heurck et Müll.Arg. アカンカサスゲ 阿寒傘菅
  synonym Carex akanensis Franch.
  synonym Carex amurensis Kük.

  synonym Carex drymophila var. abbreviata (Kük.) Ohwi [Flora of China]

  synonym Carex drymophila var. akanensis (Franch.) Kük.
 日本(北海道)、朝鮮、ロシア原産。別名はエゾカサスゲ。中国名は毛果野笠薹草 mao guo ye li tai cao。
 多年草、群生する。長い匍匐茎を横に伸ばし、茎をまばらに直立するか、または少数の束生する。高さ60~100cm。栄養茎は茎葉が多数つき、葉がやや短い。基部の鞘は葉身が発達せず、暗赤褐色で毛があり、糸網を生じる。葉は幅4~8㎜、濃緑色、下面がザラつき、下面~鞘にかけて毛があり、特に鞘口に毛が多い。花序は頂生する。上部の4~6個の小穂は雄性、隣接し、線形、長さ2~5㎝。その下の2~3個の小穂は雌性、やや離れてつき、円柱形、長さ3~7㎝、花序柄があり、下部の小穂ほど花序柄が長い。小穂の基部につく苞葉は短い鞘があるか、または鞘がなく、葉身がある。雄鱗片は赤褐色で先は尖鋭形。雌鱗片は果胞よりやや短く、淡緑色で中肋は緑色、太く、先は尖るか中肋が突き出して芒となる。果胞は長卵形、長さ5~6mm、緑色、厚い膜質、太い脈があり、毛がり、先は狭まり長い嘴となり、口部には2歯があるか、または2深裂する。痩果は緩く果胞に包まれ、楕円形~倒卵形、長さ2~2.5㎜、基部には短い柄がある。柱頭は3岐。花期は6~7月。

332 Carex splendentissima U.Kang et J.M.Chung  カレックス・スプレンデンティッシマ
 韓国原産。

333 Carex stenantha Franch. et Sav. var. stenantha イワスゲ 広義
 日本、ロシア原産。

333-1 Carex stenantha Franch. et Sav. var. stenantha イワスゲ 岩菅

  synonym Carex schmidtii Boeckeler
  synonym Carex stenantha var. yatsugatakensis Akiyama
 本州の中部地方以北に分布。別名はタカネスゲ(高嶺菅)。高山帯の砂礫地に生える。
 高さ15~40㎝。茎は断面が鈍い3稜形、ほぼ直立し、先は垂れる。葉は茎よりも短く、幅3㎜以下。基部の鞘は褐色で下部は暗赤色。小穂は3~5個つき、長さ約3㎝。苞葉は細長い鞘をもつ。頂生の小穂は雄性、他の側性の小穂は雌性、長い花序柄があり、垂れ下がる。雌鱗片は楕円形で先は急に尖り、芒となる。花期は7~8月。

333-2 Carex stenantha Franch. et Sav. var. taisetsuensis Akiyama タイセツイワスゲ 大雪岩菅

 北海道に分布。高山帯の乾いた砂礫地に生える。
 基準種に比べ、果胞は幅が広く、長円形、短い嘴がある。

334 Carex stenophylla Wahlenb. カレックス・ステノフィラ
 中国、モンゴル、ロシア、インド、パキスタン、チベット、アフガニスタン、カザフスタン、キルギスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、イラン、レバノン・シリア、トルコ、イエメン、ヨーロッパ、北コーカサス、トランスコーカサス原産。
 多年草、叢生または緩く叢生し、高さ10~40 cm。根茎は斜上または垂直になり、灰色~暗褐色の鱗片で覆われ、繊維状に分解される。茎は鈍角の三角形で、平滑、またはときに上部でわずかにザラつく。葉は茎の長さの1/2から同長まで、またはときに超える。鞘は長さ15~40㎜、暗褐色、光沢があり、薄膜質側の縁は真っすぐ。葉舌は長さ0.2~0.3㎜。葉身は長さ1~2.5㎜、直立し、わずかに鎌形、平坦または二つ折り、長く漸尖し、平滑または先に向かって縁がザラつく。花序は長さ5~20㎜×幅5mm、球形~細長い楕円形、小穂の密集した小型の群になる。苞葉は鞘がなく、鋭く、鱗片状(glume-like)、または最下部の苞葉はそれが抱く小穂と同長。小穂は雌雄性(androgynous)で球形。雌鱗片(glumes)は長さ3~4.5㎜x幅1~2.2㎜、薄~暗褐色、卵形、先は鋭形、または長さ0.4㎜までの微突があり、先と縁は一般に薄膜質。果胞は長さ3~5㎜x幅1.5~2.4㎜、広卵形、平凸形、薄褐色、光沢があり、+/-明瞭な脈があり、基部は白色、紙質、上部は後にコルク状になり(suberous)、一般に狭くてザラつく縁を持ち、長い間、緑色のままになり、柄は長さ0.7㎜まで、嘴は長さ約0~0.9㎜、円錐形、褐色~暗褐色、平滑またはわずかにザラつき、小さな開口部(ostiole)は不明瞭に2裂または斜めの切形で、縁が薄膜質。堅果は長さ1.6~2.1㎜×幅1.4~1.6㎜、卵形~倒卵形、平凸形、帯黄色~褐色、最後には光沢があり、不明瞭な網目~パピラがある。
334-1 Carex stenophylla subsp. stenophylla
 中国(新疆)、ロシア、カザフスタン、ヨーロッパ(オーストリア、チェコスロバキア、フランス、ドイツ、ハンガリー、イタリア、北コーカサス、ポーランド、ルーマニア、スイス、ウクライナ、 ユーゴスラビア)原産。

334-2 Carex stenophylla subsp. stenophylloides (V.I.Krecz.) T.V.Egorova ホソバノヤマスゲ 細葉の山菅

  synonym Carex duriuscula C.A.Mey. subsp. stenophylloides (V.I.Krecz.) S.Yun Liang et Y.C.Tang

 中国(甘粛省、内モンゴル、陝西省、新疆、西蔵)、モンゴル、ロシア、西ヒマラヤ、パキスタン、チベット、アフガニスタン、カザフスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、キルギス、イラン、レバノン・シリア、トルコ、イエメン、ヨーロッパ(北コーカサス、ザコーカサス)原産。中国名は细叶薹草 xi ye tai cao。標高450~3300mの山の牧草地、湿った、しばしばやや塩分の多い牧草地、草原、川岸の岩場、砂地に生える。
 subsp. stenophyllaは高さ30㎝までであり、それよりも密に叢生する。葉身は平ら、しばしば青緑色になる。花序は帯褐色、長さ10~20㎜×幅5㎜、ほとんどが細長い楕円形で、最下の苞葉は通常その抱く小穂と同長である。雌鱗片は帯褐色、通常は果胞より短く、稀に果胞よりも長くなり、縁が狭く透明、先は鋭形。果胞は長さ5㎜まで、柄は長さ0.7㎜まで。花期は3~7月。

335 Carex stenostachys Franch. et Sav. ニシノホンモンジスゲ 西の本門寺菅

 日本固有種。本州(東北地方西部~近畿、中国地方)、四国に分布する。草地、林縁、落葉広葉樹林内などに生える。
 根茎は短く、ほとんど匍匐枝を出さず、密に叢生し、大株になる。基部の鞘はやや長く、暗褐色から濃褐色、後にやや繊維状に分解する。葉は花茎と同長または長く、幅2~3mm。花茎は高さ30~50cm、下部は平滑、上部はザラつく。頂小穂は雄性、線状円柱形で長さ2~3.5cm×幅2mm、褐色、短い花序柄がある。側小穂は2~4個、やや離れてつき、雌性、細い円柱形で直立し、長さ1~3cm×幅3~4㎜、下部のものには柄がある。苞は有鞘、葉身は小穂と同長またはやや短い。雌鱗片は暗褐色~濃褐色、倒卵形、長さ2~3mm、先は円形で微突形または鋭形。果胞は雌鱗片より少し長く、長さ3~3.3mm、卵形、脈があり、密に毛があり、先は急に狭まって短い嘴になり、口部には2小歯がある。痩果は卵形、長さ約2mm、頂部には盤状環形の付属体がある。柱頭は3岐。花果期は4~6月。

335-1 Carex stenostachys Franch. et Sav. var. stenostachys ニシノホンモンジスゲ 

 匍匐枝を出さず、大きな株を作り、全体に無毛だが果胞に毛があり、雄小穂と葉の基部の鞘が濃褐色であることが特徴。

335-2 Carex stenostachys Franch. et Sav. var. cuneata (Ohwi) Ohwi et T.Koyama ミチノクホンモンジスゲ 

 本州の東北地方~関東地方北部に分布する。
 匍匐枝を出し、大きな株にならない。

336 Carex stipata Muhl. ex Willd. オオカワズスゲ 大蛙菅
 日本(北海道~本州の中部地方以北)、朝鮮、中国( 湖北省、吉林省)、ロシア、北アメリカ(カナダ、アラスカ、USA)原産。中国名は海绵基薹草 hai mian ji tai cao。標高700~1700mの混交林、湿地帯の牧草地に生える。
 根茎は短い。 稈は叢生し、高さ40~70㎝、扁平な三角形、上部はザラゆき、中央または下部には葉があり、基部は繊維状に崩壊する黒褐色の葉身のない鞘で覆われる。葉は稈より短いかまたは長く、葉身は淡緑色、幅6~7㎜、平らで柔らかく、縁には小鋸歯があり、先は尖鋭形。葉鞘の膜質側は通常横しわがある。下部の苞は剛毛状、上部の苞葉は鱗片状。花序は円筒形、ときにわずかに分枝し、長さ3.5~5㎝×幅1~1.5㎝。小穂は雌雄性(androgynous)、わずかに星形に開出し、上部は単純、下部では分枝する。雌鱗片は淡緑色、卵形、長さ3~4㎜×幅約1.8㎜、緑色の1本脈のある肋が長さ0.5~1.2㎜の芒状に突き出る。果胞は淡鉄さび色、鱗片より長く、楔状披針形、平凸形、長さ4~5㎜、膜質、光沢があり、外側に多数の脈があり、基部は海綿状、短い柄があり、上側の縁は狭い鋸歯状の翼があり、先は徐々に狭くなって鋸歯状の縁の長い嘴になり、嘴は外側が裂け、開口部に2歯がある。小堅果はしっかりと包まれ、広卵形、平凸形またはわずかに両凸形、長さ1.5~1.7㎜、基部には短い柄があり、花柱の基部はわずかに太くなる。柱頭は2岐。花期と果期は7月。2n=48, 52。

337 Carex stylosa C.A.Mey. ラウススゲ 
 日本(北海道の知床)、ロシア、ノルウェー、北アメリカ(アラスカ、カナダ)、グリーンランド原産。標高0~1300mの牧草地、ヒース、沼地、湖畔に生える。
 叢生する。稈は高さ15~50㎝、上部はわずかにザラつく。葉の幅は2~4㎜。下部の胞葉は花序よりも短いか、または花序を超える。小穂は離れ、短い長円形または細長く、長さ7~20㎜×幅4.5~8㎜。下部の小穂は遠く離れることが多く、開出するか垂れ下がり、非常に長い花序柄がある。上部の小穂は直立し、花序柄がある。側小穂は(1~)2~3(~4)個つき、雌性で、等長。頂生の小穂は雄性または果胞をもち、全体が雌性化(gynecandrous)でも雌雄性(androgynous)でもない。雌鱗片は褐色で、縁が透明で、披針形、果胞より短くて狭い、中脈は体よりも明るい色で、しばしば隆起し、目立つ。果胞は開出し、緑色または金色、褐色になり、脈がなく、楕円形、長さ2.5~3.5㎜×幅1.5~1.75㎜、先に嘴がないか、または急に嘴になり、パピラがある。嘴は長さ0.2~0.3㎜、切形、平滑。痩果は果胞をほぼ満たす。2n=52。果期は6~9月。

338 Carex subcernua Ohwi ツクシナルコ 筑紫鳴子
 日本(本州の紀伊半島、四国の徳島県、九州)、中国(浙江省)原産。中国名は武义薹草 wu yi tai cao。池の縁、斜面に生える。
 根茎は短い。 稈は叢生し、高さ40~65㎝、断面が鋭角の三角形、平滑、上部がザラつき、基部は葉身の無い暗褐色の鞘で覆われ、一部の鞘は崩壊して網状繊維になる。 葉は稈より長く、葉は線形、幅3~5㎜、平ら。苞は葉状、最下の苞は花序を上回る。小穂は4個。頂生の小穂は雄性、狭い円筒形、約・長さ50㎜×幅2㎜。側小穂は雌性で、まれに基部または先に雄花がつき、円筒形、長さ45~50㎜×幅4~5㎜。 雌鱗片は鉄さび色、長円形、長さ約2.8㎜、緑色の3脈の肋は、先の円形の先端に短い芒を作る。果胞は、鱗片よりわずかに長いかまたは幅が広く、楕円形、約・長さ3㎜×幅2㎜、密なパピラがあり、顕著な脈があり、基部は広い楔形、先は急に狭まり短い嘴になり、口部は全縁。小堅果は褐色、やや緩く包まれ、倒卵形、約・長さ2㎜×幅1.5㎜。柱頭は2岐。花期と果期は4月。

339 Carex subfilicinoides Kük. アカハナビスゲ 
 中国(湖北省、四川省、雲南省)原産。中国名は近蕨薹草 jin jue tai cao。標高1200~2900mの常緑樹林、日陰の斜面、道端に生える。

340 Carex subspathacea Wormsk. ヒメウシオスゲ 姫潮菅
 日本(北海道、本州の青森県)、朝鮮、ロシア、ノルウェー、北アメリカ(カナダ、アラスカ、USA)、グリーンランド、アイスランド原産。別名はネブカスゲ。標高0~300mの塩水海岸、塩性湿地、主に小さなプールの縁に生え、まれに開けたツンドラに生える。
 叢生しない。稈は鈍角、高さ3~15㎝、無毛。 基部の鞘は褐色。下部の葉の鞘は無毛、前面には斑点と脈がなく、先端はU字形、葉身は上面に気孔があり(epistomic)、強く内巻き、幅1~2㎜、上面にパピラがある。下部の苞葉は花序より長く、幅1~3㎜m、基部が仏炎苞状で小穂を囲む。小穂は直立し、雄性の小穂は1(~2)個。雌性小穂は1~3個。下部の雌小穂は長さ0.5~1.4cm×幅2~4㎜、基部は楔形。雌鱗片は薄褐色~暗紫褐色、長さ2~3.6㎜×幅0.9~1.5㎜、果胞より幅が広く、中脈は頂点に達し、鱗片の幅の1/5~1/2、先は鋭形まれに尖鋭形、微突形~短い芒がある。果胞は斜上し、淡褐色、ときに先の1/2に紫褐色の斑点があり、脈がなく、やや膨らみ、痩果を緩く取り囲み、狭い楕円形~狭卵形、長さ2.7~3.3(~3.6)㎜×幅1~1.8㎜、革質、鈍色、 基部には長さ0.3㎜までの柄があり、先は鋭形、短いパピラがあり、嘴は広い円錐形、長さ0.1~0.3㎜×幅0.3~0.5㎜。痩果は全縁から縁がわずかにくびれ、先は切形~微凹形、鈍色。花柱の基部は真っ直ぐで、まれに曲がる。2n=78, 80–83。果期は6~8月。

341 Carex subtransversa C.B.Clarke ニイタカヒゴクサ 新高肥後草
 日本、中国(浙江省)、台湾、フィリピン原産。似横果薹草 si heng guo tai cao。標高1300~2500mの湿った林床、森林内の草が茂った場所に生える。
 根茎は短く、細い匍匐茎がある。稈は密に叢生し、高さ15~30㎝、わずかに細く、三角形で、上部の角(かど)はザラつき、基部には帯褐色の葉身ない鞘が少数ある。葉は通常稈より短く、葉身は幅2~4㎜、平らでわずかに硬く、側部にはっきりと2本の葉脈があり、かなり長い鞘がある。下部の苞は葉状で、基部を抱かれる小穂よりも長く、上部の苞は線形でかなり短く、通常は鞘がない。小穂は3~5個、下部の1~2個の小穂はかなり離れており、上部2~3個の小穂は集中する。頂生の小穂は雄性、線形、長さ1~5㎝、短い花序柄がある。側小穂は雌性で、短い円筒形またはほぼ楕円形、長さ1~3㎝、密に多数の花がつき、ときに少数の雄花があり、下部のものには短い花序柄があり、上部のものはほぼ無柄。雄鱗片は帯褐色、披針形、長さ2~2.5㎜、厚い紙質、1脈があり、先は鋭形で微突形。雌鱗片は帯褐色、長円形、長さ2~2.5㎜、紙質、1脈があり、先は鋭形で微突形。果胞は緑色または黄緑色で、直立し、楕円形、三角形、長さ3~3.5㎜、膜質、無毛、多数の脈があり、基部は広楔形またはほぼ円形で、先は急に狭まり、わずかに長い嘴となり、口部は短い2歯になる。小堅果はゆるく包まれ、広卵形、断面は三角形、長さ1~1.5㎜。花柱の基部は太くない。柱頭 は3岐。 花期と果期は6~10月。

342 Carex subtumida (Kük.) Ohwi カツラガワスゲ 桂川菅
 日本(四国の愛媛県)、中国(安徽省、江蘇省、江西省)原産。肿胀果薹草 zhong zhang guo tai cao。標高800~1000mの渓谷沿い、水辺、山の斜面の道端に生える。
 根茎は短いか細長い。 稈は高さ45~75㎝、やや太く、断面は三角形、平滑、少数は紫褐色で、基部に葉身のない鞘がある。 葉は稈よりわずかに短く、葉身は幅6~7㎜、平らでやや硬く、上面に2本の顕著な側脈があり、両面と縁の葉脈はザラつく。鞘は長く、最下の鞘は紫褐色で、通常は後に裂ける。苞は葉状で、下部を抱く小穂をはるかに上回っており、下部のものはわずかに長い鞘があり、上部のものは短い鞘があり、最上部はほとんど鞘がない。小穂は4~6個、最下の1~2個は離れてつき、上部の3~4個は稈の頂部で連続する。頂生の小穂は雄性、線形、長さ2.5~3㎝、無柄。 側花小穂は雌性で、長い円筒形、長さ3.5~7㎝、密に多数の花がつく。最下の1~2個の小穂に長い花序柄があり、上部の小穂は無柄。 雌鱗片は帯黄色または褐黄色、卵形、長さ約1㎜、膜質、1脈があり、先は尖鋭形。果胞は褐緑色で、後に水平に開出し、鱗片よりもかなり長く、楕円状倒卵形、断面は鈍い三角形、長さ3.2~3.5㎜、膜質、多数の脈があり、基部は丸く、先は急に狭まりかなり短い嘴になり、口部は短い2歯になる。小堅果は層状、楕円形、三角形、長さ約1.5㎜、無柄、先は微倒形。花柱は太くならない。柱頭は3岐。花期と果期は4~5月。

343 Carex subumbellata Meinsh. ミヤケスゲ 三宅菅 広義 
 日本(北海道、本州の早池峰山)、朝鮮、千島列島、サハリン原産。和名は植物学者の三宅勉に由来する。高山の砂礫地、草地に生える。
 高さ20~30cm、根茎はやや叢生し、ときに細い匍匐枝を伸ばす。基部の鞘は黄褐色、繊維状に分裂しない。葉は花茎よりも短く、やや細い。雄小穂は短い。雌小穂は1~3個、上部まとまってつき、根生状の長い柄の雌小穂もつける。雌鱗片は短い芒がある。果胞は密につき、雌鱗片より長く、鈍い3稜形、脈が不明瞭で、まばらに微細な毛があり、嘴は短く、口部は凹形。柱頭は3岐。花期は6~7月。

343-1 Carex subumbellata Meinsh. var. subumbellata ミヤケスゲ 狭義

 日本(夕張岳)、サハリンに分布。

343-2 Carex subumbellata Meinsh. var. koreana Ohwi チョウセンクモマシバスゲ 

 朝鮮に分布。下方の小穂に長柄がある変種。

343-3 Carex subumbellata Meinsh. var. verecunda Ohwi クモマシバスゲ 

 本州(中部地方以北の白馬岳・妙高山・八ヶ岳・北岳・白山・至仏山等)に分布し、小穂が稈頂に集まり、根生状小穂がない。苞が超出する変種。

344 Carex supina Wahlenb. ホソバスゲ 細葉菅 広義
 朝鮮、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、トルクメニスタン、インド、パキスタン、ネパール、トルコ、ヨーロッパ、北アメリカ(カナダ、アラスカ、USA)、グリーンランド原産。英名はweak arctic sedge, Lying-back sedge, spreading arctic sedge。
344-1 Carex supina var. supina
 ロシア、カザフスタン、キルギスタン、トルクメニスタン、インド、パキスタン、ネパール、トルコ、ヨーロッパに分布。
344-2 Carex supina Wahlenb. var. costata Meinsh. ホソバスゲ 
 朝鮮、ロシア、北アメリカ(カナダ、アラスカ、USA)、グリーンランドに分布。

345 Carex suifunensis Kom. チョウセンゴウソ

  synonym Carex maximowiczii Miq. var. suifunensis (Kom.) Nakai ex Kitag.

 朝鮮、中国、ロシア原産。

346 Carex tabatae Katsuy. アマミナキリスゲ 奄美菜切菅
 日本固有種。奄美大島に分布。標高50~200mの川沿いの岩の上に生える。
 常緑の多年草。根茎は短く、密に叢生する。稈は高さ15~60㎝、葉よりわずかに長く、鋭角の三角形で平滑。葉は根生葉と茎葉。葉身は平らで、幅1.5~3㎜、硬く、平滑。基部の鞘は葉身があり、暗褐色、繊維状になる。花序は頂生、総状花序、稈の上部1/5~1/3に3~6個の小穂があり、節に単生(まれに2個)する。小穂は雄雌性花序(androgynous)、雄花部分は雌花部分よりも短い。下部の小穂はときに枝分かれし、狭い円筒形、長さ1~2.5㎝×幅約2㎜、ほぼ密に多数の花がつく。苞は葉状で鞘があり、上部の葉身は短く、下部の葉身は小穂より長い。雌鱗片は楕円形で、果胞より短く、長さ1.5~2㎜、鈍形~鋭形、帯褐色。果胞は直立~斜上し、楕円形、両凸形、長さ2.5~3㎜×幅約1㎜、膜質、細かい数本の脈があり、無毛、短い柄があり、柄は長さ約0.3㎜、先は急に狭まり嘴になり、嘴は長さ1㎜まで、口部は2歯。痩果は果胞にしっかり包まれ、楕円形、両凸形、長さ約1.5 mm×幅約0.8mm、熟すと暗褐色または黒色。花柱は長さ1㎜まで、基部は太くなる。柱頭は2岐、長さ2~3㎜、早落性。花期は9~10月。

347 Carex tamakii T.Koyama オキナワヒメナキリスゲ 沖縄姫菜切菅
  synonym Carex sacrosancta var. tamakii (T.Koyama) T.Koyama
 日本固有種。沖縄島(北~中部),石垣島・西表島に分布。別名はオキナワヒメナキリ。山地の渓流沿いに生える。
 根茎は短く横に這い、密に叢生する。花茎は高さ20~60cm。葉は花茎より短く、長さ35~50cm×幅2~3㎜、硬く、ザラつき、基部の鞘は濃褐色で繊維状に細裂する。下部の1~2個の包は狭い葉状、長さは花序の約半分。小穂は1~3個、直立し、全て雄雌性(androgynous)、頂部に少数の雄花をつけ、狭円柱形、 雌花は5~10個つき、長い花序柄がある。雄鱗片は褐色、先が鋭形。雌鱗片は褐色、先が鋭形。果胞は雌鱗片より長く、卵形、長さ2~2.8㎜、稜間に太い脈があり、 脈上に短毛がある。嘴は短く、口部は2歯。痩果はきつく果胞に包まれ、楕円形、長さ約1.5㎜。柱頭は2岐、長さ2~3㎜。果期は8~9月。

348 Carex tashiroana Ohwi ノスゲ 野菅
 日本固有種。本州の岡山県、広島県、島根県、山口県に分布。歩道脇や林縁に株立ちとなって生える。
 高さ20~30㎝。密に叢生し、匐枝はない。基部の鞘は、褐色、繊維状に細裂。葉は細く幅1.5~2.5㎜。頂生する雄小穂は独立し、線形で緑白色。雌小穂は、線状円柱形、淡褐色で花は少ない。果胞は雌鱗片より長く、稜間に4~5脈あり、まばらに毛があり、先は急に狭まり短嘴となり外曲し、口部には2小歯がある。痩果の断面は三角形。柱頭は3岐。花期は4~5月。

349 Carex tegulata H.Lév. et Vaniot アワツブスゲ 
 朝鮮、ロシア原産。

350 Carex teinogyna Boott フサナキリスゲ 房菜切菅
 日本(本州の近畿以西、四国、九州、屋久島、種子島)、朝鮮、中国(安徽省、広東省、広西チワン族自治区、湖南省、江西省、雲南省、浙江省)、インド、ブータン、ネパール、ヒマラヤ東部、ミャンマー、タイ、ベトナム、インドネシア原産。中国名は长柱头薹草 chang zhu tou tai cao。標高 500~2000mの谷の疎林、川沿い、溝の脇や岩、砂の上の湿った場所に生える。
 根茎は短い。稈は密に叢生し、高さ25~60(~90)㎝、細く、3稜形、わずかにザラつき、少数の葉身のない鞘で覆われる。葉は稈より短いかまたは等しく、葉身は幅2.5~3㎜、基部で二つ折りになり、中肋表面が縦溝になり、上部で平らになり、葉脈と縁がザラつき、基部の鞘は通常繊維状に崩壊する。苞は花序より短いか花序と同長で、下部の苞は葉状、上部の苞は剛毛状、縁がザラつき、鞘がある。鞘は長さ5~30㎜。小穂は多数、各苞の鞘に1~3個つき、雄雌性花序(androgynous)、線形、長さ1~5㎝、雄部分は雌部分より短く、下部の小穂はときに分岐し、緩く花がつき、細いかかなり短い花序柄がある。雌鱗片は褐黄色または黄褐色、長円形、長さ4~5㎜、膜質、緑色の3脈があり、先は鋭形、芒があるかまたは微突があり、ときに無突起、芒の縁に小剛毛がある。果胞は暗褐色、鱗片より短く、長円形または狭い楕円形、平凸形、長さ約4.5㎜、膜質、小剛毛があり、数本の脈があり、基部は急に狭まり短い柄になり、先は徐々に狭まってかなり長い嘴になり、口部には細かい2歯がある。小堅果は帯黄色、きつく包まれ、楕円形、断面は扁平な両凸形、長さ約2㎜、無柄、花柱の基部はかなり太くなる。柱頭は2岐、細く、宿存する。果期は9~11月。

351 Carex temnolepis Franch. ホソバカンスゲ 細葉寒菅
  synnym Carex morrowii var. temnolepis (Franch.) Ohwi
 日本固有種。本州(岩手県、東北地方南部~兵庫県の日本海側、愛知県)。別名はサドカンスゲ。山地の林内に生える。愛知県の準絶滅危惧種。
 常緑性、匍匐枝はなく、株を作る。茎は高さ25~40cm、3稜形、基部の葉鞘は褐色で多少繊維状に分解する。葉は質が硬く、濃緑色で光沢があり、線形、長さ 20~40cm×幅3~6mm、葉縁は上半部に上向きの微少な鋸歯がありザラつき、下部の縁は下向きにざらつく。小穂は3~5個つき、下部の小穂は互いに離れる。頂小穂は雄性、線形、長さ2.5~4.5cm。側小穂は雌性、円柱形、長さ1.5~3cm、最下のものには長い花序柄があり、上部のものにはやや短い花序柄がある。2n=38。果期は5~6月。
品種) 'Silk Tassel'

352 Carex tenuiflora Wahlenb. イッポンスゲ 一本菅
 日本(北海道、本州の栃木県・長野県)、朝鮮、中国(吉林省、内モンゴル)、モンゴル、ロシア、ヨーロッパ、北アメリカ原産。中国名は细花薹草 xi hua tai cao。標高約900mの沼地に生える。
 根茎は短く、匍匐茎は短い。稈は緩く叢生し、高さ20~50 cm、細く、三角形で、わずかに硬く、平滑またはほぼ平滑。 葉は稈より短く、葉は線形、幅1~1.5 mm、平らまたは内巻きし、わずかにザラつく。苞葉は鱗片状(glumelike)。小穂は2~4個あり、雌雄性花序(gynaecandrous)、球形、長さ3~4㎜、少数の花が頭状または穂状の花序につく。雌の鱗片(glumes)は淡黄色、卵形、長さ2~2.5㎜、淡褐色の中肋があり、縁は透明である。果胞は黄緑色、鱗片の長さとほぼ同長、卵形または楕円形、平凸形、長さ2~2.5㎜×幅約1.1㎜、ほぼ革質、微細な白色のいぼ状突起があり、両面に褐紫色の5~9脈があり、基部は丸く、ほぼ柄が無く、先端は嘴がなく、口部は凹形。小堅果はしっかりと包まれ、楕円形または広楕円形、両凸形、長さ約1.2㎜、基部は丸く~楔形。花柱の基部は太くならない。柱頭は2岐。花期と果期は7月。2n=58。

353 Carex tenuiformis H.Lév. et Vaniot オノエスゲ 尾上菅
 日本(北海道、本州の中部地方以北)、千島列島、朝鮮、中国(黒竜江省、内モンゴル)、ロシア原産。中国名は细形薹草 xi xing tai cao。森林、林縁、藪の中の草原、ときに山の斜面にも生える。
 根茎は短い。 稈は密に房状で、高さ20~40㎝、かなり細く、鈍角の三角形で、平滑、上部がわずかにザラつき、基部は帯褐色または赤褐色の閉じた鞘があり、古い鞘は通常繊維状に分解される。葉は稈よりわずかに短く、葉身は幅2~2.5㎜、平らでかなり柔らかく、縁はザラつき、かなり長い鞘がある。苞葉は葉状で、通常は基部につく小穂よりも短く、鞘があり、雌小穂よりかなり長い。小穂は3個、かなり遠く離れ。頂生の小穂は雄性、披針形または広線形、長さ1.2~1.7 ㎝、隣接する雌小穂より著しく長い。雌性の側小穂は広線形または長円形、長さ1.5~2㎝、ゆるく、10個以上の花がつく。花序柄は細く、長さ6㎝以下、わずかにザラつき、わずかに垂れ下がるかまたは直立する。雌の鱗片は鉄さび色、楕円形または倒卵状長円形、長さ2.5~3㎜、膜質、緑色の1脈があり、縁は上部で広く透明になり、先は鈍形または鋭形。 果胞は黄緑色、直立し、鱗片より長く、長円状披針形、扁平な三角形、長さ3.5~4.5㎜m、膜質、脈は無くまたは側部に2脈があり、基部は漸尖して短い柄があり、先は次第に狭まり長い嘴になり、嘴の縁はザラつき、口部は斜めの切形、わずかに鉄さび色。 小堅果はかなり緩く包まれており、倒卵形、三角形、長さ約2㎜、先は微突形。花柱の基部はわずかに太くなる。柱頭は3岐。花期と果期は6~7月。
353-1 Carex tenuiformis var. tenuiformis
  synonym Carex koreana Kom.
 日本、千島列島、朝鮮、中国、ロシア原産。
353-2 Carex tenuiformis H.Lév. et Vaniot var. neofilipes (Nakai) Ohwi ex Hatus. ミヤマイトスゲ 
  synonym Carex neofilipes Nakai
 朝鮮原産。

354 Carex tenuinervis Ohwi ツルナシオオイトスゲ 蔓無大糸菅
 日本固有種。四国、九州に分布する。シイ、カシ~ブナ帯の林下、林縁、道端に生える。
 密に叢生し、大株となり、匍匐枝は出さない。高さ20~50㎝。基部の鞘は白色~褐色、ときに繊維状に細かく裂ける。葉は線形、幅2~3㎜。頂小穂は雄性で線形、側小穂は雌性で雄小穂にやや接近してつき、細く、線状円柱形、雌小穂の柄は短い。苞の葉身は雌小穂と同長かやや長く、有鞘。雄鱗片は緑白色、雌鱗片も緑白色で、果胞よりやや短い。果胞は長さ3~3.5㎜、無毛、嘴は短~中程度の長さで、縁はザラつき、口部には2小歯がある。柱頭は3岐。花期は4~5月。

355 Carex tenuior T.Koyama et T.I.Chuang コバケイスゲ 
 日本固有種。奄美諸島~沖縄諸島に分布する。山地の岩場や岩混じりの斜面に生える。  高さ30~80㎝、根茎は短く、密に叢生し、匐枝を伸ばさない。基部の鞘は暗褐色~黒褐色、古くなると著しく繊維状に細裂する。葉は花茎より長く、幅2~5㎜、やや平滑、縁はザラつく。苞は刺状~鱗片状、鞘は長さ1~7㎝、淡褐色。頂小穂は雄性で線形、長さ4~10cm×幅2~3㎜、花序柄は長さ1~3㎝。側小穂は雌性、2~4個つき、狭線状円柱形、長さ1.5~5㎝×幅3~4㎜、花序柄は長さ1~3㎝。雌花は7~15個つく。雄鱗片、雌鱗片とも卵形で先が鋭形~鋭尖傾、褐色~暗褐色、長さ3~4㎜、果胞より短い。果胞は開出し、長円形、長さ3.5~4.5mm×幅1.2~1.4mm、稜間に5~7脈があり、短軟毛があり、基部に短い柄があり、先には短い嘴があり、口部は褐色、2歯がある。痩果はしっかり果胞に包まれ、長円形~卵状楕円形、やや扁平な3稜形、長さ3~3.5mm、基部は次第に狭まって短い柄となる。柱頭は3岐。果期は3~4月。

356 Carex thunbergii Steud. アゼスゲ 畔菅 広義
 日本(北海道、本州)、中国原産。中国名は陌上菅 mo shang jian。畔、川岸に生える。和名の由来は田の畔に多いことから。
 多年草、高さ20~80㎝。茎は3稜形で、ざらつく。葉は幅1.5~4㎜。茎の先に3~5個の小穂が直立してつく。上部の茶色は雄小穂、黄緑色に見える側小穂が雌小穂。雌小穂は長さ1.5~5㎝の円柱形。果胞は緑色で表面に細粒点がある。鱗片は暗紫色で、長さの変化が多い。果実はほぼ円形で、柱頭は2岐。2n=78。果期は4~6月。
356-1 Carex thunbergii Steud. var. thunbergii アゼスゲ畔菅
356-2 Carex thunbergii Steud. var. appendiculata (Trautv. et C.A.Mey.) Ohwi オオアゼスゲ 大畦菅
 北海道、本州の中部以北に分布する。山地の湿地に生える。
 茎や葉が多数密生して大きな谷地坊主となる。

357 Carex tokarensis T.Koyama フサカンスゲ 房寒菅
 日本固有種。トカラ列島(中之島、黒島)に分布。日当たりの良い山地の岩場の斜面に生える。
 高さ40~100㎝。根茎は短く、叢生する。基部の鞘は淡褐色、脈は紫褐色。葉は幅5~10㎜、平滑、縁は多少ザラつく。花茎は葉より高く、5~8節あり、各節に3~8個の小穂が束生する。小穂は雄雌性(androgynous:同じ花序内に雄花と雌花をもち、雌花の上に雄花がつく)、長さ3~6㎝、長い花序柄があり、上部の雄花部は雌花部の長さの1~2倍の長さ、とくに上部の節につく小穂は雄花部が長くなり、ときに雄花だけとなる。雄鱗片は長さ4~5㎜、栗褐色、雌鱗片は長さ3~4㎜、栗褐色、先は尖鋭形。果胞は長さ5~7㎜、鱗片より長く、黄緑色、多数細脈があり、有毛、先は急に狭まり短い嘴となり、口部には鋭2歯があり褐色を帯びる。痩果は長卵形、長さ約4㎜、基部は太い柄状になり、先には小さい円柱状付属体がある。柱頭は3岐。果期は4~5月。

358 Carex tokuii J.Oda et Nagam. ナガボクサスゲ 長穂草菅
 日本(四国の愛媛県南西端、九州の長崎県・対馬・鹿児島県・桜島)、朝鮮原産。湿り気の少ない場所に生える。
 多年草。 根茎は束生し、まれに、短く斜上し、大きな植物になる。稈は中央生または側生、多数あり、鈍角の三角形、高さ30~55cm、太さ1~2㎜。葉は線形、幅(3~)3.5~5㎜。基部の鞘は薄褐色。花序は総状花序。頂生の小穂は雄性、側生の小穂は雌性、基部に葉のある苞の鞘をもつ。雄小穂は単生、線形、長さ(10~)15~25㎜×幅約1㎜、淡緑色。雄鱗片は3脈があり、淡緑色、中心が帯緑色、長円形、先が鋭形、長さ(3.3~)3.5~4.5(~4.7) mm。 雄しべ3本。雌小穂は(3~)4~5個つき、長円形~線形、長さ(12~)15~30(~35)㎜×幅約2㎜、鈍い緑色。 雌鱗片は3脈があり、淡緑色、中央は帯緑色、倒卵形、短い芒があり、長さ(1.9~)2.0~2.5(~2.6)㎜、突き出す芒は長さ0.2~0.5㎜。果胞は倒卵形、無毛、10~13本の脈があり、膜質、やや急に先細りして短い2歯の嘴になり、長さ2.5~3.2㎜、鈍い緑色。痩果は薄褐色、3うねがあり、長円形、3面の中央にしわがあり、長さ1.6~2.0(~2.1)㎜×幅0.8~0.9㎜。柄は通常基部まで真っすぐ、花柱の基部の付属体がつき、表皮細胞上のシリカ体(silica bodies)は凹形で、中心体はよく発達し、曲がりくねった垂層壁(anticlinal wall)がある。 柱頭は3岐。

359 Carex toyoshimae Tuyama セキモンスゲ 石門菅
  synonym Carex augustini Tuyama ウミノサチスゲ 
 日本固有種。小笠原諸島原産。標高約300m以上の林内に生える。
 高さ30~70㎝。葉は茎より高く、幅3~10㎜、平滑。花茎は長さ20~40㎝。頂部の小穂1個は雄性、線形、長さ2~4㎝。側性の小穂は2~4個つき、雌性、円柱形~狭円柱形、長さ1.5~4㎝。雌鱗片は長さ4~5㎜、緑白色。果胞は無毛、披針形、長さ4~5㎜×幅約1㎜、下半部が白色になり、細脈がある。痩果は長さ2卵状楕円形、両凸形または三角形、果期は1~3月。

360 Carex traiziscana F.Schmidt ヒロハオゼヌマスゲ 広葉尾瀬沼菅
 日本(北海道、本州の群馬県尾瀬ヶ原)、千島列島、ロシア(サハリン、カムチャッカ)原産。湿原や付近の草地に生える。ホソバオゼヌマスゲ(Carex nemurensis Franch.)は葉の幅が2~3㎜。
 多年草、高さ40~70㎝。根茎は短く、叢生する。葉は線形、幅3~4mm、灰緑色、平滑。花序は長さ4~8㎝、4~7個の無柄の小穂をやや離れてつける。苞は鱗片状、下部の苞は葉身が刺状。小穂は雌雄性、長さ5~8㎜、上部に数個の雌花をつけ、基部に少数の雄花をつける。雌鱗片は卵形、先が鈍形、果胞より短く、栗褐色で緑色の1脈がある。果胞は卵状楕円形、長さ3~3.5㎜、先は急に狭まり短い嘴となり、縁はザラつき、口部は凹形または2小歯。果実は長さ約2㎜。柱頭は2岐。果期は6~7月。

361 Carex transversa Boott ヤワラスゲ 柔菅
 日本(本州、四国、九州)、朝鮮、中国原産。中国名は横果薹草 heng guo tai cao。和名の由来は柔らかそうに見えることから。平地、丘陵、山地の湿地、草地に生える。
 多年草、高さ20~70㎝。根茎は短く、匐枝はない。茎の基部の鞘は濃赤色を帯びる。葉は幅2.5~5.5㎜、柔らかく、曲がって垂れ下がる。小穂は茎の上部に3~4個直立してつき、最上部の雄穂は長さ1~3㎝、幅2.5~5.5㎜の線形。下の雌小穂は長さ2~3㎝の円柱形、一番下の小穂は離れてつき、長い柄があり、苞に鞘がある。果胞は4.5~6.5㎜、長い嘴がつき、口部は斜形~やや2歯、乾くと褐色になる。鱗片は長い芒があり、果胞と同長。果胞が丸く膨らむと鱗片の芒が目立つ。花柱は3岐。痩果は長さ約2㎜の3稜のある卵形、黄褐色~淡褐色。花期は4~6月。

362 Carex tristachya Thunb. モエギスゲ 萌黄菅
 本州(関東地方以西)、四国、九州、朝鮮、中国、台湾原産。中国名は三穗薹草 san sui tai cao。和名の由来は小穂が萌黄(もえぎ)色であることから。山地の乾草地、林縁に生える。
 多年草、高さ20~40㎝。茎は直立し、3稜形で、ざらつく。基部の鞘は褐色の繊維状。葉は幅2~5㎜の線形。小穂は3~6個上部に固まって、ほとんど接してつき、ときに下部の1個が離れる。雄小穂は長さ1~4㎝、幅1~1.5㎜。雌小穂は長さ1~3㎝、幅2~3㎜。雄小穂の鱗片は質が厚く、鈍頭で、軸に圧着する。雄しべの花糸は離生して糸状。果胞は長さ3~3.5(実測2.1~2.7)㎜で、多数の縦脈があり、有毛、頂部は嘴状に尖る。果実は長さ2~2.5(実測1.5~2)㎜、頭の先が環状に膨れる。花期は4~5月。
362-1 Carex tristachya Thunb. var. pocilliformis (Boott) Kük. ヒメモエギスゲ 姫萌黄菅
 雄小穂が細く、雌小穂はモエギスゲよりやや離れてつく。また、雄小穂の鱗片がコップ状になるのが特徴である。雄しべの花糸が平らで合着する。

363 Carex truncatigluma C.B.Clarke ヒロハヒョウタンスゲ 
  synonym Carex gracilispica Hayata
 中国(安徽省、福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、海南省、湖南省、江西省、四川省、雲南省、浙江省)、台湾、マレーシア、フィリピン、ベトナム原産。中国名は截鳞薹草 jie lin tai cao。標高500~1200mの森林、山の斜面の草原、川沿いに生える。

364 Carex tschonoskii V.I.Krecz. キンスゲ 金菅
  synonym Carex pyrenaica Wahlenb. var. altior Kük.
 日本固有種。北海道、本州(中部地方以北)に分布。別名はセイタカキンスゲ。高地の砂礫地や、やや湿った草地に生える。
 密に叢生し、茎は直立し、高さ10~40㎝。葉は硬くて細くほとんど糸状、幅1~2㎜。花序には小穂が茎頂に1個だけつき、上部に雄花、下部に雌花がつく(androgynous)。果胞は、雌鱗片より長く、脈は無く、無毛、膜質、基部に長さ0.5~1㎜の短い柄があり、先は狭まり長い嘴となり、口部は全縁で暗褐色、完熟後は開出し、脱落しやすくなる。痩果の基部に小柄がある。柱頭は3岐。花期は7~8月。

365 Carex tsuishikarensis Koidz. & Ohwi ホロムイクグ 
  synonym Carex oligosperma Michx. subsp. tsuishikarensis (Koidz. et Ohwi) T.Koyama et Calder
 日本固有種。北海道、本州(中部地方以北)に分布。湿原に生える。
 高さ30~50cmの多年草。根茎はまばらに叢生し、長く匐枝を伸ばす。基部の鞘は灰褐色で、少し繊維状に裂ける。葉は細く、三角柱状で灰緑色、肉質で厚くて溝がある。基部の鞘は灰白色を帯びる。頂生の小穂は雄性、1個つき、長い花序柄がある。側小穂は雌性、花序柄が短く、1~2個が離れてつき、果胞は密につく。苞葉は葉状で、上部の苞葉は鞘がなく、下部の苞葉には鞘がある。鱗片は、暗茶色~赤紫色。果胞は雌鱗片より長く、倒広卵形、多数の脈があり、無毛、熟すと膨れ、先はやや急に狭まり、短い嘴となり、口部は浅い2歯で赤紫色~濃褐色。柱頭は3岐。

366 Carex tsukudensis (T.Koyama) K.T.Takah. & M.N.Tamura ヒロハノコジュズスゲ 広葉の小数珠菅
  synonym Carex parciflora Boott var. tsukudensis T.Koyama   synonym Carex jackiana var. tsukudeusis (T. Koyama) T. Koyama
 日本(本州の三河地方、信濃地方)、朝鮮原産。コジュズスゲ(Carex macroglossa)と似ていて、変種とされていた。日陰の湿地帯に生える。
 稈は最も長いものは長さ(31~)60~84㎝。果胞は短い嘴があり、通常2~5個のグループにつき、幅広で、厚くて短く匍匐する根茎があり、大きな葉舌をもち、目立つ粉白色の色がこの変種の特徴である。花柱は基部が捻じれる。2n=34, 36, 38。

367 Carex tsushimensis (Ohwi) Ohwi ツシマスゲ 対馬菅
 九州(長崎県、佐賀県、鹿児島県)、朝鮮原産。カンスゲ類に似ているが、鱗片は褐色を帯びない。カンスゲよりも日当たりのよい乾いた場所に生える。
 多年草、高さ20~60㎝。根茎は短く、密に叢生する。基部の鞘は褐色を帯びる。葉は線形、幅3~8mm、やや平滑。頂小穂は雄性、長さ2~5㎝、長い花序柄がある。側小穂は3~5個、雌性、ときに先端や基部に少数の雄花をつけ、間隔を開け、離れて直立し、円柱形、長さ2~5㎝、長い花序柄がある。雌鱗片は緑白色、先は凹形で長い芒がある。果胞は長さ約3㎜、脈は太く肋になり、有毛。果実は菱形で長さ1.5~2mm、3稜形、基部の側面がやや凹み、頂部の付属体は環状に膨らむ。果期は4~5月。

368 Carex tumidula Ohwi イワヤスゲ 岩屋菅
 日本固有種。四国(愛媛県)に分布する。和名は上浮穴郡の岩屋山に由来する。森林の林内や林縁に生える。
 長い赤紫色の根茎があり、地下に長く匍匐茎を伸ばし、小さな株を作り、まばらに群生する。花茎は高さ30~50㎝、ザラつかない。基部の鞘は赤紫色。葉は花茎より長く、幅は2~3㎜、質は柔らかく、ザラつく。花序は長さ5~15㎝、小穂が4~6個つく。苞は短い苞が仏縁苞状、長い苞が葉状になり、長さ0.3~2㎝、1つの苞の基部から小穂が1~3個つく。小穂はほぼ同形、雄雌性花序(androgynous:同じ花序内に雄花と雌花をもち、雌花の上に雄花がつく)で、上部の雄花部が長く、基部には短い柄がある。ときに頂小穂は雄性となり、長さ0.5~1㎝。側小穂は雄雌性で長さ1~1.5cm。上部の雄花部は花が多数つき長く、基部の雌花部は雌花が1~3個つくだけで短い。雄鱗片は長円形、先が円形、細かな縁毛がある。雌鱗片は雄鱗片と同形で長さが雄鱗片より少し長い。果胞は雌鱗片とほぼ同長で、約・長さ3mm×幅1.5㎜、卵形、平滑、先には短い嘴があり、口部は凹形。痩果は果胞にしっかり包まれ、広倒卵形、約・長さ2㎜×幅1㎜。柱頭は3岐、短く赤紫色。2n=12。

369 Carex tuminensis Kom. ミツマタスゲ 三又菅
 朝鮮、ロシア原産。

370 Carex uber Ohwi ツクシスゲ 筑紫菅
 日本固有種。四国(高知)、九州(中南部)に分布。平地から丘陵地にかけての林縁や林内に生える。
 根茎は短く、密に叢生し、高さ20~50cm。基部の鞘はやや褐色を帯び、古くなると繊維状に分解する。基部の鞘を除いて地上部が全体に緑色。葉は幅が3~8mmで、やや柔らかくて平滑。苞葉には鞘があり、葉身部もよく発達して小穂より遙かに長く、花序全体より長い。花序の頂小穂は雄性、1個つき、線形で長さ2~4㎝、短い柄がある。側小穂は3~4個あり、雌性、ときに側小穂の先端や基部に少数の雄花がつき、円柱形、長さ2~5cm、直立する。雌鱗片は緑白色、先が凹形、果胞より著しく長い芒がある。果胞は長さ約2㎜、脈があり、有毛。痩果は菱形、長さ1~1.5㎜、面の基部がやや凹み、頂部の付属体は嘴状で先端がわずかに環状に膨れる。花期は4~5月。

371 Carex uda Maxim. エゾハリスゲ 蝦夷針菅
 日本(北海道、本州の中部以北)、朝鮮、中国(黒竜江省、吉林省)、ロシア原産。中国名は大针薹草 da zhen tai cao。広葉樹林やハイマツ混交林内の湿った場所に生える。  根茎は短い。 稈は叢生し、柔らかく、平滑、下部1/3に葉がある。茎葉は稈より短い。葉身は幅2~3㎜、平らで平滑。花序は1個の小穂、頂生し、雄雌性花序(androgynous)、楕円状卵形、長さ6~12㎜。 雄部分は非常に短く、3~5個の花がつく。雌部分が雄部分より長く、7~15(~23)個の花がつく。 雌鱗片は淡褐色、長円状披針形~楕円状披針形、長さ約3㎜、わずかに3脈があり、先は鋭形~わずかに鈍形。果胞は成熟すると水平に開出するか後屈し、長円状披針形、三角形、長さ3.5~4㎜、膜質、両面に多数の明瞭な細い脈があり、基部は丸く、柄は非常に短く、先は次第に狭まり、嘴になり、口部はほぼ切形。小堅果はゆるく包まれ、長円形、三角形、長さ約2mm。花柱の基部は太くない。柱頭は3岐。花期と果期は6~7月。

372 Carex ulobasis V.I.Krecz. マンシュウクロヒナスゲ 満州黒雛菅
 朝鮮、中国(黒竜江省、内モンゴル)、ロシア原産。中国名は卷叶薹草 juan ye tai cao。緩い森林、日当たりの良い山の斜面、牧草地の低木の間に生える。

373 Carex unilateralis Mack. カタガワヤガミスゲ 
 北アメリカ(カナダ、USA)西部原産。標高0~1000mの季節的に湿った場所に生える。日本に帰化している。
 密に叢生する。 稈は35~75㎝。 葉: 鞘の頂部はU字形で、ときに襟を越えて長さ2mmまで伸びる。上部の葉舌は長さ2.5~8㎜。 稔性の稈ごとに葉身が3~5枚つき、長さ15~45㎝×幅2~3(~4)㎜。花序は斜上し、密、緑色~金色または褐色、長さ(1~)1.4~2.5㎝×幅9~17㎜。下部の節間は長さ1.5~4 ㎜。2番目の節間は長さ1~4㎜。下部の2~3個の苞は直立~斜上し、葉状で、下部の苞は花序より長く、しばしば幅2㎜以上、基部は±稈を取り囲む。 小穂は5~11個、±個々は不明瞭、卵形~広卵形、長さ7~13㎜×幅5~9㎜、基部は円形~鋭形、先は切形~鋭形。雌鱗片は淡い金色~赤褐色、淡緑色~緑色の中央の縞があり、披針形~卵形、長さ3.3~4.8㎜、果胞より短くて狭い、縁はときに白色になり、幅0.1~0.2㎜、先は尖鋭形~芒状。果胞は斜上~斜上開出し、緑色、金色、ときに銅色、外側に 0~11 本の脈が目立ち、内側に 0~8本の脈が目立ち、卵形~披針形、通常は平ら、長さ3.5~5㎜×幅1.3~1.75㎜、厚さ0.3~0.5㎜、縁は平ら、翼を含めて幅0.2~0.3㎜。嘴は通常、先端が金色または赤褐色、通常は平らで翼があり、±縁毛のある小鋸歯があり、またはときに円筒形で翼がなく、±0.5~0.6㎜が全縁、長さ(1.4~)1.7~2.5㎜、外側の縫合線が目立たないか、嘴の先端から痩果までの距離に白色の縁がある。 痩果は卵形~倒卵形、長さ(1.2~)1.5~1.9㎜×幅0.75~1(~1.2)㎜、厚さ0.3~0.4㎜。果期は晩春~夏。

374 Carex urelytra Ohwi カワリナンブスゲ 
 台湾原産。中国名は扁果薹草 bian guo tai cao。高山の林床に生える。

375 Carex ussuriensis Kom. チョウセンイトスゲ 朝鮮糸菅
 朝鮮、中国(黒竜江省、吉林省、内モンゴル自治区、陝西省)、ロシア原産。中国名は乌苏里薹草 wu su li tai cao。針葉樹林、日陰、湿った場所に生える。

376 Carex vaginata Tausch サヤスゲ 鞘菅
 日本(北海道、本州の焼石岳)、韓国、中国(黒竜江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル)、モンゴル、ロシア、ヨーロッパ原産。中国名は少花薹草 shao hua tai cao。亜高山帯や寒冷地にある森林、雑木林、草原、草原の縁、ミズゴケ湿原に生える。
 根茎は細長い匍匐性。 稈は高さ20~50㎝、細く、鈍い三角形、平滑、下部に葉が多い。葉は稈よりもはるかに短く、葉は幅3~5㎜以上で、平らで、わずかに柔らかい。 鞘は褐色、ときに紫赤色。苞葉は長い鞘をもち、かなり短い葉身がある。小穂は2~4個、通常は3個、かなり離れる。頂生の小穂は雄性、ほぼこん棒形、長さ1~1.5㎝。 側小穂は雌性で、長円状円筒形または長円形、長さ1~2.5㎝、緩く数個の花がつく。花序柄は長く、直立する。雌鱗片は鉄さび色がかった褐色、広卵形、長さ約3㎜、膜質、緑色の3脈があり、縁は透明、先は鈍形または鋭形。果胞は黄緑色、斜めに開出し、鱗片より長く、卵形、膨らんだ三角形、長さ4~6㎜、ほぼ革質、無毛、脈が不明瞭、基部は広楔形、先は急に狭まって短または中型の嘴になり、口部は凹形または2歯がある。小堅果は果胞にかなり緩く包まれ、倒卵形、三角形、長さ約2.5㎜、基部は短い柄がある。花柱は基部がわずかに太い。柱頭3岐。花期と果期は5~7月。

377 Carex vanheurckii Müll.Arg. ヌイオスゲ 
 日本(北海道、本州の中部地方以北)、朝鮮、中国(黒竜江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル)、モンゴル、ロシア(極東、東シベリア)原産。中国名は鳞苞薹草 lin bao tai cao。別名はシロウマヒメスゲ。標高約1200mの高山帯の砂礫地や山の斜面の森林または草原などに生える。ヒメスゲに似るが、頂生する雄穂状花序が長い。
 根茎は細く、暗褐色の葉身のない鞘で覆われ、匍匐枝がある。稈は叢生し、高さ10~30㎝、細く、鈍い三角形で、上部はザラつき、基部は褐色の鞘に覆われ、鞘は繊維状に分解する。葉は稈よりわずかに短く、葉身は幅1~2mm、平らで上面と縁がザラつき、乾くと縁がわずかに外巻きし、長い鞘がある。苞葉は鱗片状で、まれに最下部の苞が錐形で、緑色、長い芒がある。小穂は2~3個あり、稈の上部に集中し、ときに最下部の小穂はわずかに離れる。頂生の小穂は雄性、線形または紡錘形、長さ0.7~1.5㎝、ほぼ固着性。 側小穂は雌性、球形または卵形、長さ4~7mm、花は少数、固着性。 雌鱗片は側部が褐色で、卵形、長さ約12.5 mm、淡色の中肋があり、上部の縁は透明、先は尖鋭形、微突形。果胞は黄緑色、上部はわずかに褐色、斜めに開出し、鱗片とほぼ同長、楕円形または倒卵形、平凸三角形、長さ2.5~3mm、緩く小剛毛があり(hispidulous)[後に無毛になり]、脈は無く、基部は楔形、先は急に狭まり短い嘴になり、嘴の縁に小剛毛があり、口部は凹形。小堅果は果胞にきつく包まれ、広倒卵形、三角形、長さ約1.7mm。花柱は基部が太くない。柱頭は3岐。花期と果期は5~6月。

378 Carex vaniotii H.Lév. ナガボノコジュズスゲ 長穂の小数珠菅
  synonym Carex parciflora Boott var. vaniotii (H.Lév.) Ohwi
  synonym Carex jackiana van. vaniotii (Leveille) T. Koyama
 日本固有種。本州の沿岸地域に分布。別名はアオジュズスゲ。亜高山の湿った森林に生えるが、泥炭湿原には生育しない。
 高さ20~50cm。根茎は短く叢生する。基部の鞘は淡色。生体は全体が黄緑色。葉は鮮緑色、幅2~5mm。果胞は成熟すると直立し(花序軸に平行)、長さ4.5~5.5㎜×幅1.5~1.7㎜。

379 Carex vesicaria L. オニナルコスゲ 鬼鳴子菅

  synonym Carex vesicaria L. var. dichroa Andersson ジュズナルコスゲ 

 日本(北海道、本州、九州)、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、イラン、トルコ、北コーカサス、トランスコーカサス、ヨーロッパ、北アメリカ原産。英名はBlister Sedge, Laurent's Sedge。標高0~3300mの湿地、湿った茂み、森林の湿った窪地、沼地、スゲの牧草地、沼地、小川、池、湖畔に生える。しばしば春には浸水し、夏には乾燥した場所に生える。
 叢生する。根茎は短い。 稈は断面が三角形、長さ15~105㎝、上部の角(かど)はザラつく。葉:基部の鞘は赤褐色~赤紫色で、厚く、海綿状では無い。葉舌は幅よりも長い。葉身は中程度~濃い緑色、V型~W型、最も広い葉は幅1.8~6.5㎜、平滑。花序は長さ7.5~45㎝。下部の苞は長さ10~50㎝、花序を超えるが、花序の長さの2.5 倍以下。下部の1~3個の小穂は雌性、直立または下部で斜上し、約20~150 花がつき、円筒形。頂部の1~3個の小穂は雄性、離れた雌の小穂の頂上を超えて十分に高くなる。雌鱗片は披針形~狭卵形、長さ2.4~5.8㎜×幅1.2~1.7㎜、果胞より短く、縁は全縁、先は鋭形~尖鋭形、芒は無い。果胞は斜上し、しばしば緑色またはわら色、7~12脈があり、脈は嘴に走り、卵形、長さ(3.6~)4~7.5(~8.2)㎜×幅1.7~3.5(~4.5)㎜、長さは幅の2~3.5倍 、紙質、先はくびれ、明瞭な嘴となり、嘴は長さ1.1~2.6㎜、口部に2小歯があり、平滑、歯は真っすぐで長さ0.3~0.9㎜。柱頭は3岐。痩果は黄色~淡褐色、対称、凹みがなく、三角形で平滑。2n=70, 74, 82, 88。果期は5~8月。

379-1 Carex vesicaria L. var. vesicaria f. tenuistachya (Kük.) T.Koyama ホソボナルコスゲ 狭義


380 Carex vulpinoidea Michx. ナガバアメリカミコシガヤ 
 カナダ、USA,メキシコ原産。標高0~1800mの季節的に湿るまたは水没する土地、湿った牧草地、湿地、道路脇の溝などに生える。ヨーロッパ、ニュージーランドに帰化し、日本の本州(神奈川県、埼玉県、愛知県、富山県、岡山県など)、九州(福岡県)にも帰化している。
 稈は100㎝×2㎜、ザラつく。 葉:鞘の前面は赤褐色または淡褐色の斑点があり、先は切形または短凸形、膜質または透明、しわがある。葉舌は微凹形または円形、長さ2㎜まで、自由な拡大部は長さ0.2㎜まで。葉身は長さ120㎝×幅5㎜・以下、花茎より長い。花序は穂状で、長さ(3~)7~10㎝ ×幅約15㎜、10~15本の枝があり、下部の枝は明瞭に離れる。下部の節間は長さ25㎜まで。苞は剛毛状で、少なくとも下部の側枝の基部を抱く苞が目立つ。鱗片は淡褐色、透明、芒は長さ3㎜まで。果胞は緑色~淡褐色、両面に脈はなく、または外側に3脈があり、体は卵形または楕円形、長さ2~3.2㎜×幅1.3~1.8㎜、基部は鈍形。嘴は長さ0.8~1.2mm、長さは果苞の長さの1/3~1/2。痩果は赤褐色、卵形、長さ1.2~1.4㎜×幅約1mm、光沢がある。2n=52。果期は7~8月。

381 Carex wahuensis C.A.Mey. ヒゲスゲ 鬚菅

  synonym Carex wahuensis C.A.Mey. var. bongardii (Boott) Franch. et Sav.

 日本(本州の千葉県・石川県以西)、朝鮮、中国、台湾、ハワイ原産。別名はイソスゲ。和名は花序から鱗片の芒が突き出し鬚状に見えることに由来する。ヒゲスゲはvar. bongardii とされていたが、基準種に含められた。
 多年草、強健、高さ30~80㎝。根茎は短く、匍匐枝は無く、叢生して大きな株になる。茎は3稜形で硬く、上部はザラつく。基部の鞘は栗褐色の条線があり、古くなると縦に繊維状に分解する。葉は花茎より長く、線形、幅5~10㎜、硬く、光沢があり、濃緑色、縁はザラつく。頂性の小穂は雄性、円柱形、長さ3~6㎝。側小穂は2~4個つき、短い円柱形、長さ3~6cm×幅8mm、雄雌性(androgynous)。雄花部は通常、先端側に短くつき、花序の長さの1/3~3/4と様々であり、ときに全部が雌花となる。雌鱗片は果胞より短く、褐色~濃褐色、先端に長い芒があり、雌小穂から芒が突き出す。果胞は楕円形、長さ5~6㎜×幅1.7~2㎜、革質、10~13脈があり、無毛またはまばらに短毛があり、先は次第に狭まって細い嘴となり、縁はザラつき、口部には大きな2歯があり、歯が外側に反り返る。果実は倒卵形、長さ2.2~2.5㎜×幅1.6~1.9mm、しっかりと包まれ、先端に横に曲がった柱基の付属体がある。柱頭は3岐、宿存する。花期は2~4月、果期は4~6月。南西諸島や小笠原諸島では通年。
381-1 Carex wahuensis subsp. wahuensis
  synonym Carex boottiana Hook. et Arm.
 ハワイ原産。英名はO'ahu sedge。ヒゲスゲ(var. bongardii)とほぼ等しい。

381-2 Carex wahuensis subsp. robusta (Franch. & Sav.) T.Koyama シマイソスゲ 

  synonym Carex boninensis Koidz.

  synonym Carex qingdaoensis F. Z. Li et S. J. Fan 青岛薹草

 日本(沖縄、小笠原諸島)、朝鮮、中国(香港)、台湾原産。中国名は健壮薹草 jian zhuang tai cao 。海岸、安定した砂地、岩の間に生える。
 密に叢生し、太い根茎が。根茎は斜めで、汚褐色の繊維で覆われる。稈は1~数本の塊になり、直立または斜めに斜上し、高さ20~100㎝、太さ1~2㎜、三角形で堅く、上部の角(かど)がザラつく。葉は稈を超え、葉は広線形、幅3~12㎜、平らで革のようで堅く、鞘はかなり短く、青白く、茶色または紫茶色の葉脈があり、最終的にはほこりっぽい茶色の平行な繊維に崩壊します。 下部の苞葉(総苞片)は長い鞘があり、葉身は葉状で、抱く穂状花序をはるかに上回るが、花序より短く、上部の苞葉は鞘が短く、剛毛状の葉身をもつ。小穂は3~6個、上部の2~3個の小穂は接近しており(approximate)、残りの小穂は離れるか、またはすべて離れる。頂生の小穂は雄性、狭いこん棒形またはほぼ円筒形、長さ3~7㎜×幅3~6㎜。側小穂は通常雌性、ときに雄雌性花序(androgynous)となり、雄部分は小穂の長さの半分以下、長さ2~6㎜×幅0.6~0.8㎜、密に多数の花がつき、直立した花序柄を持つ。雌の苞頴(鱗片)は淡色、またはわずかに錆褐色、卵形または披針状卵形、長さ4~5㎜、膜質、縁は白色透明、薄緑色の3本の脈がある肋が突き出し、±長さ約5mmの真っすぐな芒になり、先は鈍形または浅い凹形。果胞は苞頴と同長、開出し、卵状球形、膨らんだ三角形、長さ5~6㎜、草質、無毛、多数の脈があり、両端がくびれ、先の嘴は直立し、縁に小棘があり、開口部は深く2裂し、鋭く湾曲した歯は長さ1~2㎜。小堅果はかなりしっかりと包まれ、広倒卵形で三角形、中央で浅くくびれた角(かど)を持ち、基部にはほぼ環状の嘴が冠される。花柱は基部が拡大する。柱頭は3岐、長くなり、±宿存性。

381-3 Carex wahuensis subsp. sakonis (T.Koyama) X.F.Jin サコスゲ

  synonym Carex sakonis T.Koyama
 奄美諸島、沖縄諸島、トカラ列島(宝島)に分布。海岸近くの岩場、砂地に生える。
 根茎は短く、葡匐枝はなく、密に叢生する。花茎は高さ30~70㎝、断面は三角形、上部はややザラつく。基部の鞘は黒色~濃紫褐色、著しく繊維状に分解する。葉は多数、線形、長さ70~90㎝×幅3.5~7㎜、硬く、濃緑色で表面に光沢があり、先は尖鋭形、扁平で中央部に稜があり、縁は上部がザラつく。花序は円錐花序、長さ30~40㎝。頂生の雄小穂は1個。側生の側小穂は雄雌性(androgynous)、上部から1/3~3/4は雄花、雌花は10~15個つく。雄鱗片は暗褐色~褐色、先の芒は長さ2~3㎜。雌鱗片は褐色~濃栗色、先の芒は長さ3~4㎜。果胞は鱗片より長く、楕円形、長さ3.5~4.5㎜、稜間に10~13脈があり、無毛、口部は深く2裂し外曲する。痩果は倒卵形、長さ2.2~2.5㎜。花柱基部は曲がる。柱頭は3岐。花期は12月~1月。果期は2月頃。

382 Carex makinoensis Franch. イワカンスゲ 岩寒菅
  synonym Carex shikokiana Makino
  synonym Carex shimadae Hayata
  synonym Carex warburgiana Kük. バケイスゲ
 日本(四国、九州)、朝鮮、台湾原産。中国名は牧野薹草 mu ye tai cao。低山や海岸近くの草原に生える。
 根茎は短い。 稈は密に叢生し、高さ20~80㎝、細く、三角形で硬く、ほぼ平滑だが花序の下はザラつき、基部は暗褐色または紫褐色の鞘で覆われ、やがて平行な繊維状に崩壊する。葉は稈より長く、葉は線形、幅2~5㎜、±硬く、ひだ折れ状。 最下部の苞葉には葉状の葉身があり、残りの苞葉にはほとんど葉身がないか、短い剛毛状の葉身がある。小穂は3~7個、上部の小穂は接近し(approximate)、下部の2~3個の小穂は離れている。頂生の小穂は雄性、紫褐色、線状円筒形、長さ4~10㎝×幅約0.25㎝。側小穂は雌性または両性具有、円筒形または線状円筒形、長さ3~7㎝×幅0.4~0.6㎝、多数の花が緩く直立し、かなり短くてほとんどが苞の鞘に囲まれた花序柄を持つ。雌の鱗片は暗褐色~栗色、ときに淡褐色、卵形または卵状長円形、膜質、上部の縁に縁毛があり、淡色の3脈のある肋が先端に微突を形り、先は鋭形である。果胞は鱗片より長く、披針形、扁平な三角形、直立し、長さ4~6㎜、膜状、上半分にまばらに毛が生え、細かく多くの脈があり、先の嘴は短く、開口部は鋭く2裂する。小堅果はしっかりと包まれ、楕円形または長円形、三角形、長さ2.5~3㎜、両端が狭まり、基部に柄があり、花柱の基部は太くない。柱頭は3岐。2n=28。

383 Carex xiphium Kom. ヒロハヒエスゲ 
 朝鮮、中国(吉林省)、ロシア原産。中国目は稗薹草 bai tai cao。森林に生える。Kewscienceでは分布域から中国を除いている。

384 Carex yakushimensis (Katsuy. et J.Oda) J.Oda et M.N.Tamura コケハリガネスゲ 苔針金菅

  synonym Carex koyaensis var. yakushimensis Katsuy. & J.Oda
 日本固有種。屋久島に固有で、標高1500m 以上の高地の湿地に生える。
 屋久島産のコケハリガネスゲは外観が矮小型ハリガネスゲであり、ハリガネスゲとは痩果の表面の模様が異なることを両者の大きな相違点としている。ハリガネスゲではプラットフォーム上の垂層に沿って13~20個の周辺体があるが、コウヤハリスゲでは中央体のみで周辺体がなく、しばしば垂層壁がハチの巣状になる。コケハリガネスゲは痩果の表面の模様がこのコウヤハリスゲと類似する。
 多年草。根茎は匍匐性で、緩く叢生する。稈は高さ2~7cm、葉より長く、厚さ0.2~0.3mm、鈍三角、角(かど)は平滑。葉は幅0.5 mmまでで、ときに内巻きし、平滑。基部の鞘は淡褐色。花期は5~6月。花序は単一の頂生の雄雌性の小穂(androgynous spike)からなる。小穂は広楕円形、長さ3~4 mm×幅約3mm。雄花が2~3個、雌花が2~5個ある。雄鱗片は卵形~楕円形、長さ1.5~2㎜、鈍形、中肋は緑色~淡褐色、両面とも褐色。雌鱗片は広卵形、鈍形~円形、長さ1.2~1.5㎜、果胞の長さの1/2~2/3の長さで、膜質、中肋は緑色~淡褐色、両面とも褐色。果胞は成熟して開出するまでは斜上し、楕円形~卵形、扁平な三角形、長さ約2mm×幅約1.2㎜、草質、外側に数本の脈が強くあり、無毛、成熟するとかなり膨らみ、基部は丸く、中程度の嘴があり、口部にはノッチがある。痩果はかなり緩く包まれ、楕円形、断面三角形、嘴を含めて長さ1.5~1.8㎜、幅約0.8㎜、嘴は細く、長さ0.3~0.4㎜。柱頭は3岐。

385 Carex yamatsutana Ohwi ヒメアサマスゲ 
  synonym Carex diplasiocarpa V.I.Krecz.  マスノスゲ
 朝鮮、中国(黒竜江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル)、モンゴル、ロシア原産。中国名は山林薹草 shan lin tai cao。森林に生える。

386 Carex yasuii Katsuy. ムニンヒョウタンスゲ 無人瓢箪菅。
 日本固有種。小笠原諸島の父島に生える。
 長さ4.5 mm 以上の瓢箪型の果胞と、 柄が太く先が円柱状の痩果が、 台湾のヒロハヒョウタンスゲ C. gracilispica Hayata やトックリスゲ C. rhynchachaenium C. B. Clarke に似るが、花茎が長く、雌鱗片が狭卵形で鋭尖頭または短芒頭であること。 果胞が無毛であることにより容易に区別できる.
 常緑多年草。根茎は短く、密に叢生する。稈は中央生、細く、高さ20~40 cm、葉と同長で、三角形、平滑。葉は根生葉。葉身は平らで、幅2~4 mm、暗緑色、下面と縁に沿ってザラつく。基部の鞘は葉身があり、わら色~帯褐色、均等に並んだ小繊維で覆われる(fibrillose)。花期は4~5月。花序は総状花序で、3~5個の小穂があり、稈の上部の1/4~1/2につき、節に単生し、離れる。頂生の小穂は雄性、線形、長さ2~5cm×幅1~1.5 mm。 側小穂は雌性または雄雌性(androgynous)で、上部に短い雄状部分があり、直立し、有茎で、狭い円筒形、長さ1~3 cm×幅3~4 mm、密に多数の花がつく。苞は上部では剛毛状、下部の苞には葉身があり、葉身は小穂と同長で、短い鞘がある。雄鱗片は倒披針形、長さ5~6 mm、白色~淡褐色、中肋は緑色、鋭形~短い有芒形。雌鱗片は狭卵形、長さ3~4 mm、果胞より短く、白色~淡褐色、中肋は緑色、尖鋭形~短い微突起がある。果胞は直立し、瓢箪状の披針形、鋭形、長さ4.5~5.5mm×幅1~1.2mm、膜質、細かい多数の脈があり、無毛、柄があり、先は狭まり嘴になり、嘴の縁はザラツキ、先には2歯がある。 痩果は果胞にしっかりと包まれ、披針形、断面は三角形、長さ3.5~4㎜、熟すと褐色になり、基部はしっかりした柄があり、柄はわら色、長さ約1mm、円筒形の首まで漸尖し、首はわら色、長さ約0.5mm、直径約0.7 mm、先は切形、乾くと浅く凹む。花柱は短く、基部は太くなる。柱頭は3岐、長さ約2㎜、早落性。

ハイブリッド

(1) Carex x akitaensis Fujiw. カヅノスゲ 
 トマリスゲ(Carex middendorffii)×サドスゲ(Carex sadoensis)。別名はカズノスゲ。
(2) Carex x akiyamana Ohwi エチゴスゲ 越後菅
 ヤマテキリスゲ(Carex flabellata)×アズマナルコ(Carex shimidzensis)。
(3) Carex x aniaiensis Fujiw. et Y.Matsuda アニアイスゲ 阿仁合菅
 タヌキラン(Carex podogyna)×サドスゲ(Carex sadoensis)。
(4) Carex x arakanei T.Koyama フトボタニガワスゲ 太穂谷川菅
 タニガワスゲ(Carex forficula)×ヤマアゼスゲ(Carex heterolepis)。
(5) Carex x bosoensis Yashiro イソハマアオスゲ 磯浜青菅
 ハマアオスゲ(Carex fibrillosa)×イソアオスゲ(Carex leucochlora var. meridiana)。
(6) Carex x caudatifrons Akiyama オオタヌキラン 大狸蘭
 ミヤマクロスゲ(Carex flavocuspis)×タヌキラン(Carex podogyna)、またはミヤマクロスゲ×ヤマタヌキラン(Carex angustisquama)。
(7) Carex x ciliatifructus Ohwi ヒラギシスゲモドキ 平岸菅擬
 ヒラギシスゲ(Carex augustinowiczii)×リシリスゲ(Carex scita var. riishirensis)。
(8) Carex x dandoensis T.Koyama ミカワオオイトスゲ 三河大糸菅
 ヒメカンスゲ(Carex conica)×オオイトスゲ(Carex alterniflora)。
(9) Carex x enshuensis T.Koyama エンシュウカワラスゲ 遠州川原菅
 アゼナルコ(Carex dimorpholepis)×カワラスゲ(Carex incisa)。
(10) Carex x furusei T.Koyama ハシナガアワボスゲ 
 アワボスゲ()×ジュズスゲ(Carex ischnostachya)、またはアワボスゲ×ヤワラスゲ(Carex transversa)。
(11) Carex x goroi T.Koyama ゴウソモドキ 
 ゴウソ(Carex maximowiczii)×ヒメゴウソ(Carex phacota)。
(12) Carex x goyozanensis M.Kikuchi et Mochizuki ゴヨウザンスゲ 
 ヒラギシスゲ(Carex augustinowiczii)×オタルスゲ(Carex otaruensis)。別名はヒラギシスゲモドキ。
(13) Carex x hanasakensis T.Koyama ネムロゴウソ 
 カワラスゲ(Carex incisa)×ゴウソ(Carex maximowiczii)。
(14) Carex x hokariensis T.Koyama ホカリヒゴクサ 
 エナシヒゴクサ(Carex aphanolepis)×ヒメシラスゲ(Carex mollicula)。
(15) Carex x hosoii T.Koyama タヌキナルコ 
 ナルコスゲ(Carex curvicollis)×タヌキラン(Carex podogyna)。
(16) Carex x inaensis T.Koyama イナテキリスゲ 伊那手切菅
 アゼナルコ(Carex dimorpholepis)×テキリスゲ(Carex kiotensis)。
(17) Carex x insolita T.Koyama ケヒメカンスゲ 毛姫寒菅
 ヒメカンスゲ(Carex conica)×ケスゲ(Carex duvaliana)。
(18) Carex x kattaeana Kük. ザオウスゲ 蔵王菅
 コタヌキラン(Carex doenitzii)×ミヤマクロスゲ(Carex flavocuspis)。別名はキタタヌキラン、カッタタヌキラン。
(19) Carex x ketonensis Akiyama ケトンヤラメスゲ 
 ヤラメスゲ(Carex lyngbyei)×ミツマタスゲ(Carex tuminensis)。
(20) Carex x kurilensis Ohwi ノトロスゲ 
 カブスゲ(Carex cespitosa)×ヤラメスゲ(Carex lyngbyei)。
(21) Carex x leiogona Franch. オニアゼスゲ 鬼畔菅
 トマリスゲ(Carex middendorffii)×オオアゼスゲ(Carex thunbergii var. appendiculata )。別名はキタアゼスゲ、キリガミネスゲ、ヤシマヤチスゲ。
(22) Carex x macilenta Fr. エゾシロハリスゲ 蝦夷白針菅
 ハクサンスゲ(Carex canescens)×アカンスゲ(Carex loliacea)。別名: アッケシスゲ。
(23) Carex x mihashii T.Koyama アイノコナルコ 
 アゼナルコ(Carex dimorpholepis)×ヒメゴウソ(Carex phacota)。
(24) Carex x moriyoshiensis Fujiw. et Y.Matsuda モリヨシスゲ 
 ナルコスゲ(Carex curvicollis)×サドスゲ(Carex sadoensis) 。
(25) Carex x musashiensis Ohwi タカオスゲ 高尾菅
 ナルコスゲ(Carex curvicollis )×ヤマアゼスゲ(Carex heterolepis)、またはナルコスゲ×タニガワスゲ(Carex forficula)。
(26) Carex x nikaii T.Koyama シラホウマスゲ 白穂馬菅
 ウマスゲ(Carex idzuroei)×フサスゲ(Carex metallica)。
(27) Carex x okushirensis Akiyama オクシリカンスゲ 奥尻寒菅
 ヒメカンスゲ(Carex conica)×オクノカンスゲ(Carex foliosissima)。ヒメカンスゲの1型にすぎないという見解もある。
(28) Carex otaruenis Franch. x C. thunbergii Steud. オタルアゼスゲ 小樽畔菅
(29) Carex x paludicola (Ohwi) Ohwi ヤシマスゲ 
 サドスゲ(Carex sadoensis)×アゼスゲ(Carex thunbergii)。
(30) Carex x pseudosadoensis Akiyama サドスゲモドキ 佐渡菅擬
 ヤマタヌキラン(Carex angustisquama)×サドスゲ(Carex sadoensis)。
(31) Carex x rikuchiuensis Akiyama フイリミチノクアゼスゲ 斑入陸奥畔菅
 ヤマアゼスゲ(Carex heterolepis)×サドスゲ(Carex sadoensis) 。
(32) Carex x sakaguchii Ohwi クロシマシバスゲ 黒島芝菅
 アオスゲ(Carex breviculmis)×シバスゲ(Carex nervata)。
(33) Carex x scitiformis Kük. マシケスゲモドキ 
 タヌキラン(Carex podogyna) x アズマナルコ(Carex shimidzensis)またはナガエスゲ(Carex otayae)。別名はオオタヌキラン。
(34) Carex x shakushizawensis Akiyama タニガワタヌキラン 谷川狸蘭
 コタヌキラン(Carex doenitzii)×タニガワスゲ(Carex forficula)。
(35) Carex x shinanoana Nakai ex Akiyama ミヤマテキリスゲ 深山手切菅
 ヤマアゼスゲ(Carex heterolepis)×オタルスゲ(Carex otaruensis)。
(36) Carex x sumikawaensis Fujiw. et Y.Matsuda スミカワスゲ 
 ヤラメスゲ(Carex lyngbyei)×トマリスゲ(Carex middendorffii)。
(37) Carex x takoensis Y.Endo et Yashiro ムジナクグ 貉莎草
 ムジナスゲ(Carex lasiocarpa)×オオクグ(Carex rugulosa)。
(38) Carex x toshironis T.Koyama オニアゼナルコ 鬼畔鳴子
 アゼナルコ(Carex dimorpholepis)×ゴウソ(Carex maximowiczii)。
(39) Carex x uzenensis Koidz. オクタヌキラン 奥狸蘭
 タニガワスゲ(Carex forficula)×タヌキラン(Carex podogyna)。別名はオオオクタヌキラン。
(40) arex x xenostachya T.Koyama オゼクロスゲ 尾瀬黒菅
 ヒラギシスゲ(Carex augustinowiczii)×トマリスゲ(Carex middendorffii)。

参考

1) Flora of China
 Carex
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=105644
2) GRIN
 Carex
https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=2083
3)Flora of North America
 Carex
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=105644#KEY-1-2
4)Flora of Pakistan
 Carex
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=5&taxon_id=105644
5)Plants of the World Online | Kewscience
 Carex
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:330029-2
6)Bull. Kanagawa prefect. Mus.(Nat.Sci.), No.22, pp.53-67, 1993
 勝山輝男;日本産アオスゲ類の再検討
https://nh.kanagawa-museum.jp/www/contents/1600215771764/simple/bull22_53-67_katsuyama.pdf
7)Acta Phytotaxonomica et Geobotanica(APG) 70巻 2号 69–85(2019)
 日本産スゲ属(カヤツリグサ科)の系統分類 I. ハリスゲ節
https://www.jstage.jst.go.jp/article/chiribunrui/67/2/67_0672-11/_pdf
8)Phytotaxa 164 (2): 133–140(2014)
 Notes on Carex (Cyperaceae) from China: three new species
https://www.researchgate.net/figure/Carex-daxinensis-Y-Y-Zhou-X-F-Jin-sp-nov-A-habit-B-staminate-scale-C_fig3_285644505
9)植物地理・分類研究(J. Phytogeogr. Taxon.)第67巻 2 号 160
 水澤玲子 著 · 2019
https://www.jstage.jst.go.jp/article/chiribunrui/67/2/67_0672-12/_pdf/-char/ja
10)Bull. Kanagawa prefect.(Nat.Sci.), No.42, pp.7-12, 2013
 勝山輝男;静岡県麻機遊水地で発見された 日本新産帰化植物アサハタヤガミスゲ
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11)分類 7巻 2号 p.121-130 2007年
 織田 二郎, 永益 英敏;ミヤマカンスゲ(カヤツリグサ科)の有花茎の着く位置
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12)植物研究雑誌 78巻 1号 p.24-28 2003年
 岡山県産カヤツリグサ科スゲ属の1新種,ビッチュウヒカゲスゲ
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13)Acta Phytotax.Geobot. 61 (3):145-150 (2011)
 Carex noguchii (sect. Rarae,Cyperaceaej,a New Speciesfrom Japan
https://www.jstage.jst.go.jp/article/apg/61/3/61_KJ00007062772/_article/-char/ja/
14)Acta Phytotax. Geobot. 70 (2): 69–85 (2019)
 Phylogeny and Taxonomy of Carex (Cyperaceae) in Japan I. C. sect. Rarae
https://www.jstage.jst.go.jp/article/apg/70/2/70_201821/_pdf
15)神奈川自然誌資料(21)1-4,Mar. 2000
 神奈川県で採集された日本新産を含む 4種の帰化植物
https://nh.kanagawa-museum.jp/www/pdf/nhr21_001_004katsuyama.pdf
16)VICFLORA Flora of Victoria
 Carex brownii Tuck.
https://vicflora.rbg.vic.gov.au/flora/taxon/0e9d9c7e-0d94-4315-986c-e5914eb1f088
17)植物研究雑誌 83巻 6号 p.331-338(2008)
 勝山輝男:小笠原諸島産スゲ属(カヤツリグサ科)の2新種
  チチジマナキリスゲ Carex chichijimensis とムニンヒョウタンスゲ C. yasuii
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/83/6/83_83_6_10081/_article/-char/ja/
18)植物研究雑誌 84巻 3号 p.191-193(2009)
 勝山輝男:コウヤハリスゲの屋久島産新変種,コケハリガネスゲ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/84/3/84_84_3_10138/_article/-char/ja/
19)植物研究雑誌 84巻 1号 p.008-012(2009)
 勝山輝男:屋久島産スゲ属(カヤツリグサ科)の1新種,アキザキバケイスゲ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/84/1/84_84_1_10093/_article/-char/ja/
20)植物分類, 地理 2巻 2号 p.102-108 (1933)
 大井 次三郎:東亜植物誌資料(VIII) サヤマスゲ, フトホアゼスゲ, キシウナキリ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bunruichiri/2/2/2_KJ00002594059/_article/-char/ja/
21)植物研究雑誌 69巻 5号 p.327-329 (1994)
 黒沢高秀, 庄子邦光:ヤマクボスゲの分布.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/69/5/69_69_5_8931/_pdf/-char/ja
22)神奈川県立博物館研究報告(自然科学)No32 p1-6, (2003)
 勝山輝男:カヤツリグサ科スゲ属3種の日本新産帰化植物
https://nh.kanagawa-museum.jp/www/contents/1600215407483/simple/bul32-1.pdf
23)浙江大学学报(理学版)第43卷 第4期 2016年7月
 中国薹草属(莎草科)植物资料增补Ⅲ 中国分布新记录 Carex genkaiensis Ohwi
http://lunwen.zhiwutong.com/91/AC4ACA41-6AD3-4D8A-B958-35F59F6BCA7B.html
24)植物研究雑誌 92 (3), 148-156, (2017)
 スゲ属ヌカスゲ節(カヤツリグサ科)の新種ナガボクサスゲ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/92/3/92_92_3_10784/_article/-char/ja
25)植物研究雑誌 86 巻 4 号 p.193-196 (2011)
 奄美大島産スゲ属(カヤツリグサ科)ナキリスゲ節の1 新種,アマミナキリスゲ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/86/4/86_86_4_10297/_article/-char/ja/
26)神奈川県立博物館研究報告(自然科学)No20 p1-9 (1991)
 勝山輝男:日本産スゲ属の1新種 ハコネイトスゲ
https://nh.kanagawa-museum.jp/www/contents/1600215828751/simple/bull20_1-9_katsuyama.pdf
27)植物研究雑誌 83 巻 6 号 p. 331-338 (2008)
 勝山輝男:小笠原諸島産スゲ属(カヤツリグサ科)の2新種
 チチジマナキリスゲ C. chichijimensis とムニンヒョウタンスゲ C. yasuii
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/83/6/83_83_6_10081/_article/-char/ja/
28)植物地理・分類研究(J. Phytogeogr. Taxon.)APG 70 (2): 69–85 (2019)
 日本産スゲ属(カヤツリグサ科)の系統分類 I. ハリスゲ節 Carex inagawaensis
https://www.jstage.jst.go.jp/article/apg/70/2/70_201821/_pdf/-char/ja
29)神奈川県立博物館研究報告(自然科学)No.21. pp.73-80 (1992)
 勝山輝男:イセアオスゲとハガクレスゲの分布
https://nh.kanagawa-museum.jp/www/contents/1600215801345/simple/bull21_73-80_katsuyama.pdf
30)Acta Phytotaxonomica et Geobot 54巻 2号 p.127-135(2003)
 Carex jubozanensis (Cyperaceae), a New Species from Japan
https://www.jstage.jst.go.jp/article/apg/54/2/54_KJ00004623220/_article/-char/ja/
31)Acta Phytotaxonomica et Geobot 59巻 1号 p. 67-72(2008)
 Carex kagoshimensis, a New Species of Carex (sect. Rhomboidales) from Japan
https://www.jstage.jst.go.jp/article/apg/59/1/59_KJ00004899889/_article/-char/ja
32)Australian Systematic Botany 8 125-305 1995
Sedge genera of the world: Relationships and a new classification of the Cyperaceae
https://www.academia.edu/30829033/Sedge_genera_of_the_world_Relationships_and_a_new_classification_of_the_Cyperaceae
33)Bot. Mag. Tokyo, Vol.70, Nos.833-834 1957
 小山鐵夫:カヤツリグサ科の分類学的研究 7
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jplantres1887/70/833-834/70_833-834_347/_pdf
34)Acta Phytotax. Geobot. 72 (2): 81–92 (2021)
 Biosystematic Studies of Carex (Cyperaceae) I.
Molecular Phylogenetic Analysis of the C. macroglossa Complex with Reference to Variation in Morphology, Chromosomal Features and Species Delimitation
https://www.jstage.jst.go.jp/article/apg/72/2/72_202019/_pdf/-char/ja
35)植物研究雑誌 31巻 6号 p.192(1956)
 大山敏朗、小山鐵夫:マンシュウクロカワスゲ日本に産す
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/31/6/31_31_6_4009/_article/-char/ja/
36)The Botanical Magazine Vol.LIII No.628 p.169-175(1930)
 秋山茂雄:邦産ずげ属植物ノ葉ノ解剖分類學的研究XX
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jplantres1887/53/628/53_628_169/_pdf/-char/ja
37)金沢大学学術情報リポジトリKURA
藤原陸夫、松田義徳:秋田県阿仁合(阿仁町)スゲ属の新雑種 アニアイスゲ
https://kanazawa-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=49386&item_no=1&attribute_id=26&file_no=1
38)植物研究雑誌 85巻 2号 p.74-78(2010)
 イソアオスゲとハマアオスゲの推定雑種 イソハマアオスゲ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/85/2/85_85_2_10193/_article/-char/ja/
39)Bunrui 17(1): 15-24 (2017)
 織田二郎:オオイトスゲ(カヤツリグサ科)の葉鞘口部と刺毛の形態
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bunrui/17/1/17_01701-03/_pdf/-char/ja
40)J. Econ. Taxon Bot Vol.35 No.4 652-653 (2011)
Carex rara Boott ssp. patanicola Koyama (Cyperaceae); A New Distributional Record for India