ユズリハ 譲葉
Flora of Mikawa
ユズリハ科 Daphniphyllaceae ユズリハ属
英 名 | large-stalked daphniphyllum |
中国名 | 交让木 jiao rang mu |
学 名 | Daphniphyllum macropodum Miq. |
花 期 | 3~5(6) |
高 さ | 3~10(~20)m |
生活型 | 常緑高木または低木 |
生育場所 | 温暖な常緑樹林内 |
分 布 | 在来種 本州(福島県以南)、四国、九州、沖縄、朝鮮、中国、台湾 |
撮 影 | 設楽町 12.3.22 豊橋市 15.4.21(花) |
幹は灰褐色で皮目がある。葉は互生し、枝先に集まって垂れ下がるようにつく。葉は中間より先で最も幅が広く、長さ8~20㎝、側脈が10~19対、葉裏が白色を帯び網状脈が目だたない。葉柄は長さ3~6㎝、紅色を帯びることが多い。雌雄別株。総状果花序に花弁のない花を多数つける。雄花は萼片もなく、葯が紫褐色。雌花も萼片がないか小さく、柱頭が紫褐色、子房は長さ約2㎜。果実は長さ約1㎝の惰円形の核果で秋~冬に藍黒色に熟し、垂れ下がる。
ヒメユズリハは葉がやや小さく、側脈が8~10対、葉の網状脈がはっきり見える。雄花には長さ1㎜ほどの小さな萼片がある。果実は垂れ下がらない。
ユズリハ属
family Daphniphyllaceae - genus Daphniphyllum高木又は低木、雌雄異株。小枝には葉痕があり、皮目がある。葉は互生し、普通、小枝の先に密集し、単葉、全縁、葉柄が長く、托葉は無い。花序は総状花序、腋生、単生、基部に苞がある。花は単性、ときに不稔。萼は3~6深裂し、宿存又は脱落性。花弁は無い。雄花は雄しべが 5~12(~18)本、1輪に、放射状につき、花糸は葯より短い。葯は三日月形、側部から縦に裂開し、葯隔は±突き出す。雌花は仮雄しべが無く又は5~10個つく。子房は卵形~楕円形、2室。胚珠は各室に2個、倒生、下垂。花柱はごく短く、花柱の枝は2本、反曲又は渦巻き状、宿存し、内側が柱頭に沿下する。核果は卵形~楕円形、いぼ状又は表面に不明瞭ないぼのあるしわがあり、しばしば粉白を帯びる。中果皮は肉質。核は硬く、種皮は膜質、胚乳は肉質。胚は小さい。子葉は半円柱形、幼根は円柱形。
ユズリハ科は1属だけで、世界に25~30種あり、東アジア、南東アジアを中心に、インド、スリランカ~オーストラリアに分布する。
ユズリハ属の主な種と園芸品種
1 Daphniphyllum glaucescens Blume ダフニフィルム・グラウチセンスsynonym Daphniphyllum neilgherrense (Wight) K.Rosenthal
synonym Daphniphyllum roxburghii Baill
マレーシア、インドネシア(ジャワ島、スラウェシ島)原産。常緑樹林に生える。
落葉中高木、高さ25m以下。幹は真っすぐ、樹皮は平滑、皮目があり、薄灰褐色、内側の樹皮は暗褐色、木材はクリーム色または白色、柔らかい。枝は幹から斜上する。小枝は円柱形、無毛、不規則、皮目があり、葉痕があり、紫緑色。葉は単葉、螺旋状に互生し、長さ5~20㎝×幅1.5~3㎝、披針形または楕円形、先は鋭形~わずかに尖鋭形、基部は鋭形、縁は全縁、反り返り、革質、上面は暗緑色、下面は粉白色、若葉は乾くと帯黒色になる。中肋は上面が平ら、一次脈は単純、羽状になり、二次脈は中肋に対して斜め、広く平行になり、三次脈は細かい網状。葉柄は長く、わずかに溝があり、無毛。托葉は無い。雌雄異株。花は小さく、総状花序に群れて、腋生し、小花柄は長さ0.5㎜より長く、花弁はない。雌花は花柱が2本、反曲する。萼は宿存する。核果は卵形または楕円形、長さ1~1.5㎝x幅約0.8㎝、光沢があり、青緑色、熟すと紫色になり、萼と2分岐する花柱は非常に小さく、宿音する。種子は1個。花期は2~3月。果期は4月。
1-1 Daphniphyllum glaucescens var. blumeanum (Baill. ex Müll.Arg.) J.J.Sm.
synonym Daphniphyllum blumeanum Baill. ex Müll.Arg.
synonym Daphniphyllum acutifolium Müll.
synonym Daphniphyllum zollingeri Müll.
マレーシア、インドネシア(ジャワ島、小スンダ列島、スラウェシ島)原産。
1-2 Daphniphyllum glaucescens var. glaucescens
マレーシア、インドネシア(ジャワ島、スラウェシ島)原産。
1-3 Daphniphyllum glaucescens var. lancifolium (Hook.f.) Rafidah
マレーシア原産。
2 Daphniphyllum macropodum Miq. ユズリハ 譲葉
synonym Daphniphyllum himalaense (Benth.) Mull.Arg. subsp. macropodum (Miq.) T.C.Huang
synonym Daphniphyllum membranaceum Hayata日本(本州の福島県以南、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国、台湾原産。中国名は交让木 jiao rang mu。英名はlarge-stalked daphniphyllum。温暖な常緑樹林内に生える。
常緑高高木または低木、高さ3~10(~20)m。幹は灰褐色で皮目がある。小枝は丈夫で、暗褐色、円形の葉痕がある。葉は互生し、枝先に集まって垂れ下がるようにつく。葉柄は長さ3~6㎝、紫赤色。 葉身は中間より先で最も幅が広く、長円形または倒披針形、長さ(7~)14~25㎝×幅(2.5~)3~6.5㎝、革質、薄緑色で下面が薄く粉白になり、上面は濃緑色で光沢があり、基部は楔形または広楔形、先は尖鋭形、側脈は細くて密で、12~18(16~22)対あり、両面ともに明瞭。総状花序に花弁のない花を多数つける。雄花: 花序は長さ5~7㎝。小花柄は長さ約5㎜。萼はない。雄しべは8~10本。花糸は非常に短く、長さ約1㎜。葯は長さ約2㎜。雌花:花序は長さ4.5~8㎝。小花柄は長さ3~5㎜。萼はないか小さい。仮雄しべは10本、子房の周りにつく。子房は卵形、長さ約2㎜、粉白色。花柱の枝は反曲する。核果は楕円形、約・長さ10㎜×幅5~6㎜、紫褐色(藍黒色)、いぼ状突起があり、粉白色。花柱の枝は宿存する。花期は3~5(6)月。果期は8~10月
品種) 'Variegatum'
2-1 Daphniphyllum macropodum Miq. f. variegatum (Bean) Rehder フイリユズリハ 斑入譲葉
斑入り品種。2-2 Daphniphyllum macropodum Miq. f. viridipes (Nakai) Ohwi アオジクユズリハ 青軸譲葉
別名はイヌユズリハ(犬譲葉)、アオユズリハ(青譲葉)。葉柄が淡緑色の品種。2-3 Daphniphyllum macropodum Miq. subsp. humile (Maxim. ex Franch. et Sav.) Hurus. エゾユズリハ 蝦夷譲葉
synonym Daphniphyllum macropodum Miq. var. humile (Maxim. ex Franch. et Sav.) K.Rosenthal
synonym Daphniphyllum humile Maxim. ex Franch. et Sav.北海道、本州の中北部の日本海側に分布する。
低木、高さ1~3m。枝はしなり、折れにくく、多雪にも耐える。葉柄は長さ3~5㎝。葉身は楕円形~倒卵状長円形、長さ9~20㎝×幅3~6㎝、側脈は12~17対(葉長10~15㎝のもの)、基部は円形または楔形、先は短い尖鋭形、縁は全縁で、上面は光沢があり、下面はやや緑白色を帯びる。核果は卵形。花期は5~6月。果期は10~11月。
3 Daphniphyllum teijsmannii Zoll. ex Kurz ヒメユズリハ 姫譲葉
synonym Daphniphyllum amamiense Hurus.
synonym Daphniphyllum teijsmannii Zoll. ex Kurz var. amamiense (Hurus.) Hurus.
synonym Daphniphyllum teijsmannii Zoll. ex Kurz f. ovatifolium Hurus.
synonym Daphniphyllum pentandrum Hayata var. okinawaense (Hurus.) Hurus.
synonym Daphniphyllum glaucescens Blume subsp. teijsmannii (Zoll. ex Kurz) T.C.Huang var. iriomotense (Hurus.) T.C.Huang
synonym Daphniphyllum glaucescens Blume subsp. teijsmannii (Zoll. ex Kurz) T.C.Huang var. buergeri (Mull.Arg.) T.C.Huang
synonym Daphniphyllum glaucescens Blume subsp. teijsmannii (Zoll. ex Kurz) T.C.Huang var. amamiense (Hurus.) T.C.Huang
synonym Daphniphyllum glaucescens Blume subsp. teijsmannii (Zoll. ex Kurz) T.C.Huang
日本(本州の福島県以南、四国、九州、沖縄)、朝鮮原産。温暖な海岸地域常緑、高さ5~10m。幹は灰褐色で皮目が散生する。葉は互生し、枝先に集まってつく。葉は長さ4~15㎝×幅2~4.5㎝、側脈は8~16対(葉長6~12㎝のもの)、葉の網状脈がはっきり見える。葉柄は長さ1.5~5㎝、紅色を帯びることもある。雌雄別株。雄花は花弁がなく、葯が紫褐色、長さ1㎜ほどの小さな萼片がある。雌花も花弁がなく、柱頭が黄色、子房は長さ1~1.5㎜、小さな萼片がある。果実は長さ約1㎝の惰円形の核果、冬に藍褐色に熟し、垂れ下がらない。花期は5~6月。
3-1 Daphniphyllum teijsmannii Zoll. ex Kurz var. hisautii Hurus. スルガヒメユズリハ 駿河姫譲葉
synonym Daphniphyllum glaucescens Blume subsp. teijsmannii (Zoll. ex Kurz) T.C.Huang var. hisautii (Hurus.) T.C.Huang
本州の静岡県、和歌山県、伊豆諸島、四国、九州に分布する。葉はしばしば長く、先は鋭形、基部はときに鈍形~円形。葉柄は長い。花序は下垂する。果序の軸は細く、間隔が広く開く。
4 Daphniphyllum pentandrum Hayata シマユズリハ
synonym Daphniphyllum teijsmannii Zoll. ex Kurz var. oldhamii (Hemsl.) Hurus.
synonym Daphniphyllum glaucescens Blume subsp. oldhamii (Hemsl.) T.C.Huang var. kengii (Hurus.) T.C.Huang
synonym Daphniphyllum pentandrum Hayata var. oldhamii (Hemsl.) Hurus.
synonym Daphniphyllum oldhamii (Hemsl.) K.Rosenthal [Flora of China]
synonym Daphniphyllum glaucescens Blume subsp. oldhamii (Hemsl.) T.C.Huang
中国、台湾、カンボジア、ベトナム原産。中国名は虎皮楠 hu pi nan。林内に生える。高さ4~15mの高木または低木。 小枝は細く、暗褐色。 葉柄は長さ2~3.5㎝、細い。 葉身は披針形、倒卵状披針形、長円形、または長円状披針形、長さ9~14㎝×幅2.5~4㎝、紙質、下面は光沢があり、粉白色、小さなパピラがあり、乾いた状態で上面は暗緑色、基部は楔形または鈍形、縁は外巻き、先は鋭形、尖鋭形、または短い尾状、側脈は 8~15対あり、細く、両面で明瞭、網状脈は上面で明瞭。雄花:花序は長さ2~4㎝。 小花柄は細く、長さ約5㎜。萼は小さく、不規則に4~6深裂し、裂片は三角状卵形、長さ0.5~1㎜。雄しべは7~10本。花糸は長さ約0.5㎜。葯は卵形、長さ約2㎜。雌花:花序は長さ4~6㎝。小花柄は細く、長さ4~7㎜。萼片は披針形。子房は長卵形、長さ約1.5㎜、粉白を帯びる。花柱の枝は反曲しまたは巻く。核果は楕円形または倒卵状球形、約・長さ8㎜×幅6㎜、暗褐色、いぼ状突起がある。萼はないか、またはまれに宿存する。花柱の枝は宿存する。花期は3~5月。果期は8~11月。
ユズリハ、エソユズリハ、ヒメユズリハの判別(参考4)
ユズリハ葉身は長さ7~21㎝×幅2.5~6.5㎝
葉柄は長さ4~5㎝
側脈16~22対.(葉長15~20㎝のもの)
気孔数は約150-200個(葉の1.0mm2あたり)
エソユズリハ
葉身は長さ9~18㎝×幅3~5.5㎝
葉柄は長さ4~5㎝
側脈は12~17対(葉長10~15㎝のもの).
気孔数は約240-300個(葉の1.0mm2あたり)
ヒメユズリハ
葉身は長さ4~15㎝×幅2~4.5㎝
.葉柄は長さ2~4㎝
側脈は8~16対(葉長6~12㎝のもの)
気孔数は約330~400個(葉の1.0mm2あたり)
参考
1) Flora of ChinaDaphniphyllum
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=110810
2)Plants of the World Online | Kew Science
Daphniphyllum
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:15293-1
3) 植物研究雑誌 18(5): 261-276(1942)
日本産ユズリハ属の種類に就て(其二)
4)植物研究雑誌70(4): 218-224(1995)
日本民間生薬「ゆずり薬」の生薬学的研究