ヤマイワカガミ 山岩鏡
Flora of Mikawa
イワウメ科 Diapensiaceae イワカガミ属
学 名 | Schizocodon ilicifolius Maxim. var. intercedens (Ohwi) T.Yamaz. Schizocodon intercendens (Ohwi) T.Yamaz. |
花 期 | 4~5月 |
高 さ | 10~20㎝ |
生活型 | 多年草 |
生育場所 | 山地の林内、林縁のやや乾いた場所 |
分 布 | 在来種 本州(中部地方、東海地方)の太平洋岸 |
撮 影 | 北山湿地 05.4.16 |
ヒメイワカガミの変種。冬は紅葉する。
葉は長さ3.5~10㎝の卵円形、基部は心形。葉の縁には刺のついた(7)10~19対の三角状の鋸歯がある。表面は光沢があり、裏面は粉白色。葉柄は長さ3~7㎝。花は直径1~1.5㎝、白色~淡紅色、花冠の先が細かく裂ける。雄しべ5個。仮雄しべ5個は短い。雌しべ1個、柱頭は濃いピンク色。萼片は5個。
ナンカイイワカガミ(=ナンカイヒメイワカガミ)(var .nankaiensis T.Yamaz.)は花が白色で、葉先が尖り、葉の鋸歯が少なく、3~6対。
三河の低山にあるものは白花がほとんどであるが、淡紅色もあり、葉の鋸歯が6~13対程度と多く、ヤマイワカガミとナンカイイワカガミとの中間形といえるものである。これをナンカイイワカガミに含めるという見解もあり、最近ではナンカイイワカガミとしていることもある。
母種のヒメイワカガミは本州(中部地方以北)に分布し、葉の基部に鋸歯がなく、葉の鋸歯が2~5対と少ない。
イワカガミやコイワカガミは山地~高山に分布し、葉が丸い。
常緑の多年草。根茎(又は茎)は木質で細く、匍匐し、分枝し(ramose)、先に数枚の葉が束生する。葉は葉柄が長く、葉身は革質、卵形~円形、縁に鋭鋸歯がある。秋に茎の先端に花芽をつけるが、苞に包まれた花芽の中心に花茎があり、下部の包の脇に1、.2個の葉芽が包まれ、混芽になる。茎の主軸の先端が花序となり、茎の生長はそこで止まって、翌年伸びる主軸は花芽の包に包まれている脇芽から作られる反軸分枝である。束生した葉の中央から長い花柄を伸ばし、総状花序に花をつける。萼片は5個、分離。花冠は5裂した短い漏斗形で、裂片はさらに多数の細い小片に分裂する。雄しべは5本。仮雄しべは線形で花冠の基部よりやや上につく(仮雄しべの性質は種の特徴)。 種皮はカラザの部分が胚乳より飛び出して尖る。胚乳が完成しても胚珠全体に広がらず、胚珠の珠孔の方の一部とその反対側のかなりの部分が、種子が完成した際にも残り、これが種子の突起として附着している。珠皮の表皮層は種皮の外側の表皮層となるが、Shortiaほど細胞膜は厚くならない。
世界に2種あり、日本固有種。
イワカガミ属Schizocodonはイワウチワ属Shortiaに含められていたが、イワウチワ属は花茎に花が単生し、花冠は鐘形で裂片は不規則に裂けるが、細いひも状にはならないなど花が異なり、種子も異なり、近年のDNA分子系統学的解析でも、イワカガミ属とイワウチワ属との関係は側系統であり別属とするのが適当とされている。
synonym Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. illicifolius (Maxim.) Makino
synonym Shortia ilicifolia (Maxim.) Li.
日本固有種(関東地方、中部地方、紀伊半島の主に太平洋側)。山地の岩場に生える。
常緑多年草。根茎(又は茎)は細く、這い、茎の先端に数枚の葉が束生する。葉柄は長い。葉身は革質、光沢があり、卵円形、長さ1~5(7)㎝×幅0.7~4㎝、基部は浅い心形~切形、縁は粗大な波状縁~低い鈍鋸歯縁、歯は基部に無く、2~5対つき、広三角形、歯先は鈍形、羽状脈。花茎は細く、直立し、高さ10~20㎝、頂部の総状花序に花を2~7個つける。花は横向きに咲き、淡紅紫色又は白色(普通、関東北部では白色、関東南部以西では帯赤色)。萼片は5個、裂片は長楕円形。花冠は漏斗形、長さ1~1.5㎝、直径1.5~2㎝、5裂し、裂片の縁はさらに多数の細かい裂片に裂ける。雄しべは5個、花冠裂片に互生し、花冠の筒部につく。仮雄しべは5個、花冠筒部の基部近くにあり、花托を被う。子房は3室、胚珠は各室に多数、中軸胎座。雌しべは1個、花柱は細く、先端は3浅裂する。蒴果は球形、直径3~4㎜、胞背裂開、3室があり、多数の種子をもつ。種子は小さく、長楕円形、両端に突起状の翼がある 花期は4~5月
1-1 Schizocodon ilicifolius Maxim. f. akaishialpinus T.Yamaz. タカネヒメイワカガミ
秩父山地、赤石山脈に分布する。高山帯に生える。
ヒメイワカガミとほぼ同形であるが、葉は小さく、鋸歯が1~2(~3)対で、花序に花が1~2(~3) 個つき、花は赤色。
1-2 Schizocodon ilicifolius Maxim. var. australis T.Yamaz. アカバナヒメイワカガミ
synonym Schizocodon ilicifolius Maxim. f. purpureiflorus (Makino) Takeda
奥多摩~箱根、静岡県東部に分布する。山地に生える。
葉は大きく、卵円形~円形、長さ2~5㎝×幅1.5~4㎝、鋸歯は3~6対、歯は全長の2/3から上部につく 。花序は花が(1~)2~4個つく。花は赤色、まれに白色もある(静岡県の愛鷹山)。貧栄養の場所では全体が小形になることもあり、 ヒメイワカガミと区別しにくい個体もある。
1-3 Schizocodon ilicifolius Maxim. var. intercedens (Ohwi) T.Yamaz. ヤマイワカガミ 山岩鏡
synonym Schizocodon intercedens (Ohwi) T.Yamaz.
本州(中部地方、東海、山梨地方)の太平洋岸に分布する。
多年草。高さ10~20㎝。葉は大きく卵形、長さ3~8(10)㎝×幅2.5~6㎝、先は円形~鈍形で点状突起の部分はやや凹み(まれに尖るものもある)、基部は心形、葉縁には刺のついた(7)10~19対の三角状の鋸歯があり、上面は光沢があり、下面は粉白色。葉柄は長さ3~7㎝。花序は花が4~9個つく。花はやや小型、直径1~1.5㎝、白色~淡紅色、花冠の先が細かく裂ける。雄しべ5個。仮雄しべ5個は短い。雌しべ1個、柱頭は濃いピンク色。萼片は5個。果時には花序は伸長し、まばらに果実をつける。花期は4~5月。
1-4 Schizocodon ilicifolius Maxim. var. nankaiensis T.Yamaz. ナンカイヒメイワカガミ
本州中部の静岡県西部~愛知県、 紀伊半島分布する。別名はナンカイイワカガミ。林下の岩上などに生える。
高さ10~20㎝。葉はやや小さく長さ2~6㎝×幅1.5~5㎝、卵円形~円形、基部は心形、葉先は尖り、鋸歯は少なく、3~6対、主脈の基部に下部の側脈が集まらない。花は4~5個つき、鐘形、白色、ときに赤味を帯び淡紅色。花期は5月。
2 Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc イワカガミ 岩鏡 [広義]
synonym Shortia soldanelloides (Siebold & Zucc.) Makino
日本固有種(北海道、本州、四国、九州)。山地の草地や岩場に生える。
常緑多年草。根茎は細く、地を這い、根茎の端に葉が束生する。葉は長い葉柄がある。葉身は厚く、表面に強い光沢があり、葉身は円形、長さ0.6~12㎝(ヒメコイワカガミ:0.6~1.5㎝、コイワカガミ:1~4㎝、イワカガミ:3~6㎝、オオイワカガミ:8~12㎝)又は卵形(ナガバイワカガミ:4~8㎝)、基部は心形~円形、先は円形~先端はほぼ切形状小凹形~短く尖り、縁は低い波状縁~低い三角状鋸歯縁~鋭鋸歯、裏側に巻く、歯は少数~多数(ヒメコイワカガミ:1~3対、コイワカガミ:3~12対、イワカガミ:3~12対、オオイワカガミ:11~27対、ナガバイワカガミ:11~20対)ある。葉は秋には暗赤紫色に紅葉する。葉脈は掌状、葉の基部の側脈は基部の1か所に集まる。 花茎は直立し、高さ10~20㎝、先で分枝し、花を少数~多数((ヒメコイワカガミ:1~2個、コイワカガミ:1~5個、イワカガミ:3~10個、オオイワカガミ:3~12個、ナガバイワカガミ:3~12個)、総状につける。花は紅紫色~ピンク色(ライラック色)又は白色。萼片は5個で、裂片は長楕円形。花冠は狭い漏斗形~漏斗形、長さ1.5~2㎝×幅1~1.5㎝、5裂し、裂片の縁はさらに細かく裂ける。雄しべは5個、わずかに花冠筒部から突き出る。花糸は長さが葯の約3倍。。仮雄しべは5個、線形。雌しべは1個。蒴果は球形、直径3~4㎜。花期は4~7月。
2-1 Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. soldanelloides イワカガミ 岩鏡 [狭義]
低山~亜高山に分布し、全体にコイワカガミより大きく、葉は強い光沢があり、円形、直径3~6㎝。花は花序に3~10個つく。。
2-1-1 Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. soldanelloides f. leucanthus H.Hara シロバナイワカガミ
イワカガミの白花品種。イワカガミともヒメイワカガミとも葉形が変わり、花が白色。
2-2 Schizocodon soldanelloides Sieb. et Zucc. form. alpinus Maxim コイワカガミ 小岩鏡
synonym Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. soldanelloides form. alpinus Maxim.
本州(中部地方、大峰山)に分布。高山の岩場、草地、ハイマツ林に生える。
イワカガミの高山型。根茎は丈夫、長く、這い、葉は直径1~3(4)㎝の円形~広卵形、光沢がある。花は茎の先に1~5個下向きにつく。イワカガミは全体に大きく、花の数が3~10個と多い。
各地に中間型があり、最近はイワカガミと区別しない。
2-2 Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. magnus (Makino) H.Hara オオイワカガミ
北海道南部、本州の東北地方、中部地方の日本海側に分布する。ブナ林などの落葉広葉樹林下に群生する。
多年草。高さ20㎝以下。根茎は丈夫、長く匍匐し、分枝し(ramose)、根を出す。葉柄は長く、長さ8~15㎝。葉身は大型で円形、長さ4~12㎝×幅2.5~12㎝、基部は心形、縁には11~27対の鋭く低い三角形の鋸歯があり、先はほぼ切形状小凹形 、革質。花茎は長い。花序はしばしば、ほぼ円錐花序状。花はピンク色(ライラック色)又は白色、花冠は長さ10~15(~18)㎜。花期は5~7月。
2-2-1 Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. magnus (Makino) H.Hara f. niveus H.Hara シロバナオオイワカガミ
オオイワカガミの白花品種。
2-3 Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. longifolius (T.Yamaz.) T.Shimizu ナガバイワカガミ 長葉岩鏡
synonym Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. magnus (Makino) H.Hara f. longifolius T.Yamaz
静岡県、長野県(南アルプス南部、中央アルプス南部)に分布。
オオイワカガミに似るが、葉は卵形、長さ4~8×2.5~6.5㎝、11~17(20)対又はそれ以上の鋭鋸歯がある。葉柄は長さ4~10㎝。花は紅紫色~淡いピンク色。
2-3-1 Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. longifolius (T.Yamaz.) T.Shimizu f. albiflorus T.Shimizu シロバナナガバイワカガミ
ナガバイワカガミの白花品種。
2-4 Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. minimus (Makino) H.Hara ヒメコイワカガミ
synonym Schizocodon ilicifolius Maxim. var. minimus (Makino) T.Yamaz
屋久島固有種。
全体に小型。高さ2~5㎝。葉は0.6~1.5㎝、縁の歯は低く、普通、1~3対、葉の基部は切形~円形。花は花序に1~2個つき、ピンク色~白色。
多年草、常緑、無毛、群生し、花茎をもつ。根茎は木質、分枝し、這い、卵形で羽状脈のある鱗片をもつ。葉は多数、根茎の端に根生又はロゼット状につき、長い葉柄がある。花茎は上部の葉腋に1本、又は2~6本つき、直立し、分枝せず、花後に長くなり、数個の苞をもつ。葉は根生し、根茎の芽からロゼットになり、長さ3~8㎝、葉柄がある。葉身は円形~楕円状円形~卵状長円形、~卵形、縁は粗い、円鋸歯状鋸歯、先は凹形~切形、面は無毛、羽状脈。花茎は苞があり、花後に長くなる。花序は花が単生ほぼ頂生、直立又は下向き。咢は分離、宿存する。花弁は下部の1/4~1/2が合着し、花冠は鐘形~漏斗形、長さ15~25㎜、花冠裂片は白色~ローズ・パープル色、縁は鈍い歯~不規則な房状(laciniate,)、波状~円鋸歯状。雄しべは花冠筒部の基部につく。葯は2室、縦に裂開する。花糸は花冠筒部につき、短いか又は無い。仮雄しべは5個又は無い。子房は3室。果実は蒴果、球形。種子は小さく、長楕円形、種子の両端に翼がない。x=6。
世界に5種があり、東アジア、北アメリカ東部に分布する。
【イワウチワ属の種】
Shortia galacifolia Torr. & A.Gray -北アメリカ南東部
Shortia rotata Gaddy & Nuraliev-ベトナム(2017年記載の新種)
Shortia rotundifolia (Maxim.) Makino シマイワウチワー日本(奄美大島、琉球諸島)、台湾
Shortia sinensis Hemsl.-中国、ベトナム
Shortia uniflora (Maxim.) Maxim. イワウチワ-日本(本州の東北~中国地方)
Shortia
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=130272
2) Plants of the World Online | Kew Science
Schizocodon
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:14158-1
3)GRIN
Schizocodon
http://www.tn-grin.nat.tn/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=16422
4)植物研究雑誌 第91巻 第5号J. Jpn. Bot. 91(5): 263-284 (2016)
Siebold and Zuccarini’s Type Specimens and Original materials from Japan,
Part 9. Angiosperms. Dicotyledoneae 8
Schizocodon soldanelloides Siebold & Zucc.
5)Barnes-Botany.co.uk
A Summary of the genus Shortia(Diapensiaceae)
http://www.barnes-botany.co.uk/shortia.html
6)Bulletin of the American Rock Garden Society Vol. 51(2)
The Diapensia family 103 Schizocodon
https://nargs.org/sites/default/files/free-rgq-downloads/VOL_51_NO_2.pdf
7)植物研究雑誌 1(2): E5-8(1916)
A Contribution to the Knowledge of the Flora of Japan. (Continued from p. 4.)
8)植物研究雑誌 43(3): 81-90(1968)
山崎敬*. イワウチワ属とイワカガミ属について
Schizocodon yunnanensis
9)植物研究雑誌 65(10): 309-319(1990)
山崎敬 : イワカガミ属・イワウチワ属の追記
10)Acta Phytotax. Geobot. 65 (3): 147-151 (2014)
Reclassification of Schizocodon soldanelloides var. minimus (Diapensiaceae)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/apg/65/3/65_KJ00009868524/_pdf/-char/en
葉は長さ3.5~10㎝の卵円形、基部は心形。葉の縁には刺のついた(7)10~19対の三角状の鋸歯がある。表面は光沢があり、裏面は粉白色。葉柄は長さ3~7㎝。花は直径1~1.5㎝、白色~淡紅色、花冠の先が細かく裂ける。雄しべ5個。仮雄しべ5個は短い。雌しべ1個、柱頭は濃いピンク色。萼片は5個。
ナンカイイワカガミ(=ナンカイヒメイワカガミ)(var .nankaiensis T.Yamaz.)は花が白色で、葉先が尖り、葉の鋸歯が少なく、3~6対。
三河の低山にあるものは白花がほとんどであるが、淡紅色もあり、葉の鋸歯が6~13対程度と多く、ヤマイワカガミとナンカイイワカガミとの中間形といえるものである。これをナンカイイワカガミに含めるという見解もあり、最近ではナンカイイワカガミとしていることもある。
母種のヒメイワカガミは本州(中部地方以北)に分布し、葉の基部に鋸歯がなく、葉の鋸歯が2~5対と少ない。
イワカガミやコイワカガミは山地~高山に分布し、葉が丸い。
イワカガミ属
family Diapensiaceae - genus Schizocodon常緑の多年草。根茎(又は茎)は木質で細く、匍匐し、分枝し(ramose)、先に数枚の葉が束生する。葉は葉柄が長く、葉身は革質、卵形~円形、縁に鋭鋸歯がある。秋に茎の先端に花芽をつけるが、苞に包まれた花芽の中心に花茎があり、下部の包の脇に1、.2個の葉芽が包まれ、混芽になる。茎の主軸の先端が花序となり、茎の生長はそこで止まって、翌年伸びる主軸は花芽の包に包まれている脇芽から作られる反軸分枝である。束生した葉の中央から長い花柄を伸ばし、総状花序に花をつける。萼片は5個、分離。花冠は5裂した短い漏斗形で、裂片はさらに多数の細い小片に分裂する。雄しべは5本。仮雄しべは線形で花冠の基部よりやや上につく(仮雄しべの性質は種の特徴)。 種皮はカラザの部分が胚乳より飛び出して尖る。胚乳が完成しても胚珠全体に広がらず、胚珠の珠孔の方の一部とその反対側のかなりの部分が、種子が完成した際にも残り、これが種子の突起として附着している。珠皮の表皮層は種皮の外側の表皮層となるが、Shortiaほど細胞膜は厚くならない。
世界に2種あり、日本固有種。
イワカガミ属Schizocodonはイワウチワ属Shortiaに含められていたが、イワウチワ属は花茎に花が単生し、花冠は鐘形で裂片は不規則に裂けるが、細いひも状にはならないなど花が異なり、種子も異なり、近年のDNA分子系統学的解析でも、イワカガミ属とイワウチワ属との関係は側系統であり別属とするのが適当とされている。
イワカガミ属の主な種
1 Schizocodon ilicifolius Maxim. ヒメイワカガミ 姫岩鏡synonym Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. illicifolius (Maxim.) Makino
synonym Shortia ilicifolia (Maxim.) Li.
日本固有種(関東地方、中部地方、紀伊半島の主に太平洋側)。山地の岩場に生える。
常緑多年草。根茎(又は茎)は細く、這い、茎の先端に数枚の葉が束生する。葉柄は長い。葉身は革質、光沢があり、卵円形、長さ1~5(7)㎝×幅0.7~4㎝、基部は浅い心形~切形、縁は粗大な波状縁~低い鈍鋸歯縁、歯は基部に無く、2~5対つき、広三角形、歯先は鈍形、羽状脈。花茎は細く、直立し、高さ10~20㎝、頂部の総状花序に花を2~7個つける。花は横向きに咲き、淡紅紫色又は白色(普通、関東北部では白色、関東南部以西では帯赤色)。萼片は5個、裂片は長楕円形。花冠は漏斗形、長さ1~1.5㎝、直径1.5~2㎝、5裂し、裂片の縁はさらに多数の細かい裂片に裂ける。雄しべは5個、花冠裂片に互生し、花冠の筒部につく。仮雄しべは5個、花冠筒部の基部近くにあり、花托を被う。子房は3室、胚珠は各室に多数、中軸胎座。雌しべは1個、花柱は細く、先端は3浅裂する。蒴果は球形、直径3~4㎜、胞背裂開、3室があり、多数の種子をもつ。種子は小さく、長楕円形、両端に突起状の翼がある 花期は4~5月
1-1 Schizocodon ilicifolius Maxim. f. akaishialpinus T.Yamaz. タカネヒメイワカガミ
秩父山地、赤石山脈に分布する。高山帯に生える。
ヒメイワカガミとほぼ同形であるが、葉は小さく、鋸歯が1~2(~3)対で、花序に花が1~2(~3) 個つき、花は赤色。
1-2 Schizocodon ilicifolius Maxim. var. australis T.Yamaz. アカバナヒメイワカガミ
synonym Schizocodon ilicifolius Maxim. f. purpureiflorus (Makino) Takeda
奥多摩~箱根、静岡県東部に分布する。山地に生える。
葉は大きく、卵円形~円形、長さ2~5㎝×幅1.5~4㎝、鋸歯は3~6対、歯は全長の2/3から上部につく 。花序は花が(1~)2~4個つく。花は赤色、まれに白色もある(静岡県の愛鷹山)。貧栄養の場所では全体が小形になることもあり、 ヒメイワカガミと区別しにくい個体もある。
1-3 Schizocodon ilicifolius Maxim. var. intercedens (Ohwi) T.Yamaz. ヤマイワカガミ 山岩鏡
synonym Schizocodon intercedens (Ohwi) T.Yamaz.
本州(中部地方、東海、山梨地方)の太平洋岸に分布する。
多年草。高さ10~20㎝。葉は大きく卵形、長さ3~8(10)㎝×幅2.5~6㎝、先は円形~鈍形で点状突起の部分はやや凹み(まれに尖るものもある)、基部は心形、葉縁には刺のついた(7)10~19対の三角状の鋸歯があり、上面は光沢があり、下面は粉白色。葉柄は長さ3~7㎝。花序は花が4~9個つく。花はやや小型、直径1~1.5㎝、白色~淡紅色、花冠の先が細かく裂ける。雄しべ5個。仮雄しべ5個は短い。雌しべ1個、柱頭は濃いピンク色。萼片は5個。果時には花序は伸長し、まばらに果実をつける。花期は4~5月。
1-4 Schizocodon ilicifolius Maxim. var. nankaiensis T.Yamaz. ナンカイヒメイワカガミ
本州中部の静岡県西部~愛知県、 紀伊半島分布する。別名はナンカイイワカガミ。林下の岩上などに生える。
高さ10~20㎝。葉はやや小さく長さ2~6㎝×幅1.5~5㎝、卵円形~円形、基部は心形、葉先は尖り、鋸歯は少なく、3~6対、主脈の基部に下部の側脈が集まらない。花は4~5個つき、鐘形、白色、ときに赤味を帯び淡紅色。花期は5月。
2 Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc イワカガミ 岩鏡 [広義]
synonym Shortia soldanelloides (Siebold & Zucc.) Makino
日本固有種(北海道、本州、四国、九州)。山地の草地や岩場に生える。
常緑多年草。根茎は細く、地を這い、根茎の端に葉が束生する。葉は長い葉柄がある。葉身は厚く、表面に強い光沢があり、葉身は円形、長さ0.6~12㎝(ヒメコイワカガミ:0.6~1.5㎝、コイワカガミ:1~4㎝、イワカガミ:3~6㎝、オオイワカガミ:8~12㎝)又は卵形(ナガバイワカガミ:4~8㎝)、基部は心形~円形、先は円形~先端はほぼ切形状小凹形~短く尖り、縁は低い波状縁~低い三角状鋸歯縁~鋭鋸歯、裏側に巻く、歯は少数~多数(ヒメコイワカガミ:1~3対、コイワカガミ:3~12対、イワカガミ:3~12対、オオイワカガミ:11~27対、ナガバイワカガミ:11~20対)ある。葉は秋には暗赤紫色に紅葉する。葉脈は掌状、葉の基部の側脈は基部の1か所に集まる。 花茎は直立し、高さ10~20㎝、先で分枝し、花を少数~多数((ヒメコイワカガミ:1~2個、コイワカガミ:1~5個、イワカガミ:3~10個、オオイワカガミ:3~12個、ナガバイワカガミ:3~12個)、総状につける。花は紅紫色~ピンク色(ライラック色)又は白色。萼片は5個で、裂片は長楕円形。花冠は狭い漏斗形~漏斗形、長さ1.5~2㎝×幅1~1.5㎝、5裂し、裂片の縁はさらに細かく裂ける。雄しべは5個、わずかに花冠筒部から突き出る。花糸は長さが葯の約3倍。。仮雄しべは5個、線形。雌しべは1個。蒴果は球形、直径3~4㎜。花期は4~7月。
2-1 Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. soldanelloides イワカガミ 岩鏡 [狭義]
低山~亜高山に分布し、全体にコイワカガミより大きく、葉は強い光沢があり、円形、直径3~6㎝。花は花序に3~10個つく。。
2-1-1 Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. soldanelloides f. leucanthus H.Hara シロバナイワカガミ
イワカガミの白花品種。イワカガミともヒメイワカガミとも葉形が変わり、花が白色。
2-2 Schizocodon soldanelloides Sieb. et Zucc. form. alpinus Maxim コイワカガミ 小岩鏡
synonym Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. soldanelloides form. alpinus Maxim.
本州(中部地方、大峰山)に分布。高山の岩場、草地、ハイマツ林に生える。
イワカガミの高山型。根茎は丈夫、長く、這い、葉は直径1~3(4)㎝の円形~広卵形、光沢がある。花は茎の先に1~5個下向きにつく。イワカガミは全体に大きく、花の数が3~10個と多い。
各地に中間型があり、最近はイワカガミと区別しない。
2-2 Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. magnus (Makino) H.Hara オオイワカガミ
北海道南部、本州の東北地方、中部地方の日本海側に分布する。ブナ林などの落葉広葉樹林下に群生する。
多年草。高さ20㎝以下。根茎は丈夫、長く匍匐し、分枝し(ramose)、根を出す。葉柄は長く、長さ8~15㎝。葉身は大型で円形、長さ4~12㎝×幅2.5~12㎝、基部は心形、縁には11~27対の鋭く低い三角形の鋸歯があり、先はほぼ切形状小凹形 、革質。花茎は長い。花序はしばしば、ほぼ円錐花序状。花はピンク色(ライラック色)又は白色、花冠は長さ10~15(~18)㎜。花期は5~7月。
2-2-1 Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. magnus (Makino) H.Hara f. niveus H.Hara シロバナオオイワカガミ
オオイワカガミの白花品種。
2-3 Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. longifolius (T.Yamaz.) T.Shimizu ナガバイワカガミ 長葉岩鏡
synonym Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. magnus (Makino) H.Hara f. longifolius T.Yamaz
静岡県、長野県(南アルプス南部、中央アルプス南部)に分布。
オオイワカガミに似るが、葉は卵形、長さ4~8×2.5~6.5㎝、11~17(20)対又はそれ以上の鋭鋸歯がある。葉柄は長さ4~10㎝。花は紅紫色~淡いピンク色。
2-3-1 Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. longifolius (T.Yamaz.) T.Shimizu f. albiflorus T.Shimizu シロバナナガバイワカガミ
ナガバイワカガミの白花品種。
2-4 Schizocodon soldanelloides Siebold et Zucc. var. minimus (Makino) H.Hara ヒメコイワカガミ
synonym Schizocodon ilicifolius Maxim. var. minimus (Makino) T.Yamaz
屋久島固有種。
全体に小型。高さ2~5㎝。葉は0.6~1.5㎝、縁の歯は低く、普通、1~3対、葉の基部は切形~円形。花は花序に1~2個つき、ピンク色~白色。
イワウチワ属
family Diapensiaceae - genus Shortia多年草、常緑、無毛、群生し、花茎をもつ。根茎は木質、分枝し、這い、卵形で羽状脈のある鱗片をもつ。葉は多数、根茎の端に根生又はロゼット状につき、長い葉柄がある。花茎は上部の葉腋に1本、又は2~6本つき、直立し、分枝せず、花後に長くなり、数個の苞をもつ。葉は根生し、根茎の芽からロゼットになり、長さ3~8㎝、葉柄がある。葉身は円形~楕円状円形~卵状長円形、~卵形、縁は粗い、円鋸歯状鋸歯、先は凹形~切形、面は無毛、羽状脈。花茎は苞があり、花後に長くなる。花序は花が単生ほぼ頂生、直立又は下向き。咢は分離、宿存する。花弁は下部の1/4~1/2が合着し、花冠は鐘形~漏斗形、長さ15~25㎜、花冠裂片は白色~ローズ・パープル色、縁は鈍い歯~不規則な房状(laciniate,)、波状~円鋸歯状。雄しべは花冠筒部の基部につく。葯は2室、縦に裂開する。花糸は花冠筒部につき、短いか又は無い。仮雄しべは5個又は無い。子房は3室。果実は蒴果、球形。種子は小さく、長楕円形、種子の両端に翼がない。x=6。
世界に5種があり、東アジア、北アメリカ東部に分布する。
【イワウチワ属の種】
Shortia galacifolia Torr. & A.Gray -北アメリカ南東部
Shortia rotata Gaddy & Nuraliev-ベトナム(2017年記載の新種)
Shortia rotundifolia (Maxim.) Makino シマイワウチワー日本(奄美大島、琉球諸島)、台湾
Shortia sinensis Hemsl.-中国、ベトナム
Shortia uniflora (Maxim.) Maxim. イワウチワ-日本(本州の東北~中国地方)
参考
1) Flora of ChinaShortia
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=130272
2) Plants of the World Online | Kew Science
Schizocodon
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:14158-1
3)GRIN
Schizocodon
http://www.tn-grin.nat.tn/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=16422
4)植物研究雑誌 第91巻 第5号J. Jpn. Bot. 91(5): 263-284 (2016)
Siebold and Zuccarini’s Type Specimens and Original materials from Japan,
Part 9. Angiosperms. Dicotyledoneae 8
Schizocodon soldanelloides Siebold & Zucc.
5)Barnes-Botany.co.uk
A Summary of the genus Shortia(Diapensiaceae)
http://www.barnes-botany.co.uk/shortia.html
6)Bulletin of the American Rock Garden Society Vol. 51(2)
The Diapensia family 103 Schizocodon
https://nargs.org/sites/default/files/free-rgq-downloads/VOL_51_NO_2.pdf
7)植物研究雑誌 1(2): E5-8(1916)
A Contribution to the Knowledge of the Flora of Japan. (Continued from p. 4.)
8)植物研究雑誌 43(3): 81-90(1968)
山崎敬*. イワウチワ属とイワカガミ属について
Schizocodon yunnanensis
9)植物研究雑誌 65(10): 309-319(1990)
山崎敬 : イワカガミ属・イワウチワ属の追記
10)Acta Phytotax. Geobot. 65 (3): 147-151 (2014)
Reclassification of Schizocodon soldanelloides var. minimus (Diapensiaceae)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/apg/65/3/65_KJ00009868524/_pdf/-char/en