ヤブジラミ 藪虱

mark

Flora of Mikawa

セリ科 Apiaceae ヤブジラミ属

[中国] 小窃衣 xiao qie yi
英 名 erect hedgeparsley , upright hedge-parsley , Japanese hedge parsley
学 名 Torilis japonica (Houtt.) DC.
ヤブジラミの花
ヤブジラミの開花前の花
ヤブジラミの未熟な果実
ヤブジラミの果実拡大
ヤブジラミの熟した果実
ヤブジラミの茎
ヤブジラミ
ヤブジラミ花
ヤブジラミ葉
ヤブジラミ葉裂片の裏
花 期 5~7月
高 さ 30~70㎝
生活型 2年草
生育場所 野原、道端に普通
分 布 在来種 日本全土、台湾、朝鮮、中国、アジア、ヨーロッパ、モロッコ
撮 影 形原港  07.6.18
やぶに生え、果実にカギ状に曲がった刺があり、シラミのように衣類にくっつくことからこの名がつけられた。世界に広く分布する。
 葉は長さ5~10㎝の2~3回羽状複葉で、小葉は細かく切れ込み、先端の小葉が長い。葉の両面に毛が多い。枝先の複散形花序に小花を多数つける。花弁は5個、白色~わずかに淡紅紫色、大きさは不揃いで、外側の花弁が大きい。蕾のときには花弁が縦に外側に2つに折りたたまれ、花弁の先端のスリットの部分は内側に折たたまれている。雄しべ5個、葯は淡紅紫色~白色。果実は長さ2.5~4(4~5)㎜の卵状長楕円形、基部から湾曲した刺を密性し、短毛は少なく、熟すと淡褐色になり、2分果に分かれて落ちる。2n=16。
 類似のオヤブジラミは花期が早く、葉の裂片が細かい。花は普通、淡紅紫色を帯び、花数が少ない。果実は大きく、白色の短毛が多く、刺が紅紫色を帯びて先だけ曲がり、熟すと黒色になる。
 ヤブニンジンの小葉は卵形で、果実の基部が細くて先が太い長さ約2㎝のこん棒状である。

ヤブジラミ属

  family Apiaceae - genus Torilis

 多年草、本質的に無毛(葉脈に沿って細かくザラつく)。根茎は小さく、塊茎があり、枝分かれする。茎は円柱形、分枝し、帯紫色、基部に鞘の残骸はない。葉は葉柄がある。鞘は長円形、膜質、膨れる。葉身は3出複葉。小葉は菱状卵形または類心形、基部は広くさび形またはくさび形、縁は鋭い重鋸歯。複散形花序、全体で円錐花序になり、頂生する。花序の枝と大散形花序の柄(ray)は花時に曲がり、果時に硬くなる。苞および小苞は有または無。大散形花序の柄は数本、非常に不等長。小散形花序(umbellules)は花が少ない。花柄(pedicels)は非常に不等長。萼歯は小さく、三角形。花弁は白色、倒卵形、先が内曲する。柱下体(stylopodium)は長い円錐形、先細になり、短く、直立した花柱に分かれる。果実は長く、長円形、わずかに背側が扁平、先は急に細くなり、基部は丸く、無毛。隆条は5本、明瞭、淡色。油管(vittae)は各溝に1~3個、合成面(commissure)に4個。種子は表面が平坦、分果柄(carpophore)は基部まで2分岐。
 世界に6種があり、アフリカ、東アジア、ヨーロッパ、北アメリカに分布する。

ヤブジラミ属の主な種と園芸品種

1 Torilis japonica (Houtt.) DC.  ヤブジラミ 藪虱
  synonym Torilis anthriscus (L.) C.C.Gmel.
 日本全土、台湾、朝鮮、中国、アジア、ヨーロッパ、モロッコ原産。中国名は小窃衣 xiao qie yi。英名はerect hedgeparsley , upright hedge-parsley , Japanese hedge parsley。やぶに生え、果実にカギ状に曲がった刺があり、シラミのように衣類にくっつくことからこの名がつけられた。世界に広く分布する。
 2年草、高さ30~70㎝。葉は長さ5~10㎝の2~3回羽状複葉で、小葉は細かく切れ込み、先端の小葉が長い。葉の両面に毛が多い。枝先の複散形花序に小花を多数つける。花弁は5個、白色~わずかに淡紅紫色、大きさは不揃いで、外側の花弁が大きい。蕾のときには花弁が縦に外側に2つに折りたたまれ、花弁の先端のスリットの部分は内側に折たたまれている。雄しべ5個、葯は淡紅紫色~白色。果実は長さ2.5~4(4~5)㎜の卵状長楕円形、基部から湾曲した刺を密性し、短毛は少なく、熟すと淡褐色になり、2分果に分かれて落ちる。2n=16。花期は5~7月。

2 Torilis leptophylla (L.) Rchb.f. セイヨウヤブジラミ
 地中海沿岸地域、南西アジア原産。英名はbristlefruit hedgeparsley。
 1年草、直立または傾伏・直立、高さ(5~)15~40cm。茎は非常に薄く下向き伏せた小剛毛をもち、円柱形、細かい条線があり、基部から上に向かって少数~多数の枝がある。葉はすべて似ていて2~ほぼ3回羽状複葉。最終裂片は短くて狭く、線形、長さ1.5~4㎜×幅1㎜、上向きの伏毛がある。下部の葉は葉柄が長さ2~5㎝、葉身は外形が楕円状長円形または三角状長円形。上部の葉はより三角形で無柄。葉はすべてかなり長く、広がり、白色の縁の鞘がある。総苞(苞)は無い。小散形花序は花が6~8個。花柄は短く、長さ(0~)1~4mm。散形花序が多数、葉に対生し、花序柄は基部につく葉の長さとほぼ同じかそれより短く、まれに超え、長さ1.5~3(~8)mm。大散形花序の柄は2~3[5]本、やや不等長、長さ(2~)4~15㎜、薄く伏毛がある。小総苞は約6個の披針状卵形[線形]の小苞をもち、花柄よりも短い。花は白色または帯ピンク色、小さい。果実は長さ4~6㎜×幅1.5~2㎜、線状長円形[楕円形~卵形]、宿存するかなり目立つ萼歯が上につき、2次隆条は、長い(分果の直径より長い)、帯白色~帯紫色のほぼ鈎状の刺[bristles subglochidiate]をもつ。小散形花序の中心に1個の無柄の果実があり、普通、残りの部分よりも刺がかなり短く、外側の果実の花柄は長いため目立つ。柱頭は無柄または花柱が非常に短い。花期と果期は4~6月。
品種) 
3 Torilis nodosa (L.) Gaertn. タマヤブジラミ
 地中海沿岸地域、南西アジア原産。英名はknotted hedgeparsley , short sock-destroyer。
 1年草、直立、傾伏、または平伏、高さ5~35cm。茎は円柱形、細かい条線があり、下向きの伏した小剛毛が薄くあり、基部から上に向かって長い斜上する枝がある。下部の葉は葉柄があり、葉柄は長さ10㎝以下。葉身は外形が広三角状卵形または三角状長円形、2~ほぼ3回羽状複、伏毛がある。最終裂片は披針形、長さ2~8㎜×幅1~2㎜、鋭形。上部の葉は似てるが、無柄で、より広い三角形、鞘は長く、縁が白色で、狭く広がる。散形花序は多数、葉に対生し、普通、ほぼ花序柄は無いが、まれに散形花序の直径と同じ長さの太い花序柄を発達させる(果時にまれに長さ20㎜を超える)。大散形花序の柄は2~3本、普通、非常に短い。花柄も非常に短いので、散形花序は非常に密でコンパクトである。小散形花序は5~12個の花がつく。小苞は1~3個、長さ果実の長さの1/3まで。花は小さく、帯ピンク色または白色。果実は卵形、刺を除いて長さ2~3㎜×幅2~2.5㎜。分果の二次隆条に2列の鈎状刺(glochidiate spines)がある。普通、外側の果実では異なり、外側の分果の刺は長く、その直径に等しく、内側の分果の刺は短くしばしば突起。内側の果実は普通、全体に突起状の剛毛がある。まれにすべての分果が長い刺を持つ。萼はないか、非常に小さくて淡色。1次隆条は縦に1列または2列の伏毛をもつ。柱頭はほぼ無柄。花期と果期は4~6月。

4 Torilis scabra (Thunb.) DC. オヤブジラミ 雄藪虱
 日本全土、朝鮮、台湾、中国原産。中国名は窃衣 qie yi。英名はrough hedgeparsley。
 2年草。高さは30~70㎝。茎は直立し、紫色を帯び、下向きの短毛が多い。葉は長さ2~15㎝、幅2~8㎝、2~3回羽状複葉、小葉は深裂し、先が尖り、紫色を帯びる。葉柄は長3~10㎝。葉柄や葉身に上向きの短い伏毛が多い。花は複散形花序につき、大散形花序の柄は2~5本と少なく、総苞片0~2個。小花柄は長短不揃い。花弁は5個、やや長短があり、白色~淡紅紫色。果実は長さ4.5~6(6~8)㎜の長楕円形、白色の伏した短毛があり、先だけがカギ状に曲がった刺が紅紫色を帯び、熟すと黒色になる。2n=16。花期は4~5月。

参考

1) Flora of China
 Torilis
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=133141
2) Plants of the World Online | Kew Science
 Torilis
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:40615-1
3) World Flora Online
 Torilis
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000038583;jsessionid=F08EF258F81618AAD3A36EFC48A63B2D
4) 植物研究雑誌 J. Jpn. Bot. 76: 137-150(2001)
 山崎敬 : 日本のセリ科植物Ⅰ
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_076_137_150.pdf