ワトソニア・メリアナ

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Flora of Mikawa

アヤメ科 Iridaceae ワトソニア属

英 名 bulbil watsonia , bulbil bugle lily.
学 名 Watsonia meriana (L.) Mill.
ワトソニア・メリアナの花序
ワトソニア・メリアナの花2
ワトソニア・メリアナの花
ワトソニア・メリアナの花3
ワトソニア・メリアナの茎
ワトソニア・メリアナ
ワトソニア・メリアナ花横
ワトソニア・メリアナ葉
花 期 5~6月
高 さ 1~1.5(2)m
生活型 多年草
生育場所 栽培種
分 布 外来種 南アフリカのケープ州原産
撮 影 浜名湖ガーデンパーク 21.4.21
ヒイロヒオウギ属は最近ではワトソニア属と呼ばれている。ヒオウギはアヤメ属のIris domestica、ヒオウギアヤメはIris setosa、ヒメヒオウギズイセンはヒメトウショウブ属のCrocosmia x crocosmiifloraであり、ヒオウギのついた植物はあまり似ていないものである。ワトソニア属はグラジオラスにやや似ていて、花が穂状花序に並んでつき、花の基部に苞がある。花がグラジオラスと違いラッパ形(bugle)で、英名はbugle lilyといわれる。属名となっているヒイロヒオウギ(Watsonia angusta)は花が緋色だけでなく、橙色もあり、花期がやや遅い。
 観賞用として最も広く栽培されているのは花がピンク色のワトソニア・ボルボニカ(Watsonia borbonica)と花が白色のその亜種であるワトソニア・アーデルネイ(subsp. ardernei 'Arderne's White')である。最近のワトソニア属の園芸品種はハイブリッドが多数、作り出され、矮性種も多い。写真は花が橙色であり、花柱が長く、ワトソニア・メリアナとしたが、ハイブリッドの可能性もある。ワトソニア・ピルランシーは花が橙色で似ているが花柱が突き出ない。
 ワトソニア・メリアナはオーストラリア、カリフォルニアなどに帰化。高さ1~1.5(2)m。球茎(corm)は直径4~8㎝。薄皮は網目にある繊維状。小球茎は卵形、先が尖り、4~12個、束生し、穂状花序の仏炎苞の下部の花に置き変わる。根生葉は約5~6枚、剣形、長さ50~60(~)80㎝×幅1~4.5(~6)㎝、中脈は目立つ。穂状花序は普通、分枝せず、長さ20~40㎝。花が10~15個、ほぼ離れてつく。仏炎苞(苞)は三角形~長円形、長さ1.7~2.5㎝草質で上部に赤褐色の薄膜質の部分をもつ。花は左右相称。花被は長さ6~7㎝、橙色~赤色、まれに、ピンク色~紫色。花被の筒部は長さ3.5~4.5㎝、基部で細くなり、曲がって広がった円筒状の部分は長さ2.5~3㎝。花被片は長円形~倒卵形、先は鋭形~短突起状、長さ1.8~2.5㎝×幅約1.3㎝、背側の花被片はフード状になる。花柱は花被片より長く、枝は長さ約0.5㎝、2分岐。蒴果は見られない。花期は5~7月(原産地では10~12月)。2n=18。

ヒイロヒオウギ属(ワトソニア属)

  family Iridaceae - genus Watsonia

 球茎(corm)は扁球形、薄皮は繊維状。花序は穂状花序、下部で分枝又は分枝しない。葉は根生葉と茎葉、剣形、丈夫で繊維状、無毛。。花茎は直立、花序は穂状花序。花は普通、±2列につき、花の苞は緑色、革質。花は放射相称又は左右相称、通常は2唇形。花被は筒部があり、漏斗形又はトランペット形=ラッパ形(bugle)、筒部は曲がる。花被片は±等長又は不等長、長円形又は披針形。花柱の枝は±中間まで分岐し、糸状。果実は球形~円筒形、木質。種子は通常、片端又は両端に翼がある。
 世界に約50種あり、アフリカ南部(主に南アフリカ、わずかにレソト、スワジランド)に分布する。多くの種が観賞用に栽培される。英名はbugle lily。

ヒイロヒオウギ属(ワトソニア属)の主な種と栽培種

1 Watsonia angusta (L.) Ker Gawl.  ヒイロヒオウギ 緋色檜扇
 南アフリカ原産。英名はred watsonia , narrow-leaved bugle lily flower, wandflower , orange bugle lily。
 高さ0.6~0.9(~2)m。地下の球茎(corm)は扁球形、直径20~30mm、薄皮は粗い網目があり灰褐色。ときに下部の葉腋に数個の小球茎(cormlets)をつける。茎は単純又は普通、少数の短い散開する枝をもつ。葉は5個~数個、多少、根生する。しかし、しかし、これらの最上部は茎を覆い、植物の約半分の長さがある。葉は狭披針形で剣形。縁はわずか~中位に厚くなり、透明。葉は乾き、乾期に休眠する。花序は穂状花序、花を疎に18個以下、つける。花は赤色~橙色、長さ約5㎝、長い円筒形の花被筒をもち、花被片は幅4~8mm、上側の花被片はややフード形になり、側花被片は後屈し、下側の花被片は反曲する。果実は長さ35mm以下、紡錘形の蒴果、隙間から裂開し、小さな線形の種子を放出する。花期は夏下旬(11~1月)。
品種) 'Orange' orange bugle lily

2 Watsonia borbonica (Pourr.) Goldblatt ワトソニア・ボルボニカ
 南アフリカ原産。英名はCape bugle lily , rosy watsonia , pink watsonia。花がピンク色で最も、普通に栽培されている。
 多年草、 半耐寒性~耐寒性、高さ2m以下。落葉性、秋~冬~春に成長し、春~夏上旬に開花した後に枯れて、夏の間は休眠する。根茎(rootstock)は球茎(corm)、直径30~40mm、薄皮は灰褐色。5~6(~8以下)枚の光沢のある、幅が広い、幅2~4㎝の剣形の葉の扇を直立してつける。葉は穂状花序の長さの1/3~2/3。葉縁は色が無く(透明)、厚くなる。花茎は普通、上部に2個、又はそれ以上の小さな苞をつけ、分枝し、高さ2m以下になる。穂状花序の主軸に花を20個以下つけ、枝(側穂状花序)に花を10個以下つける。花は大きく、華やか、淡ピンク色~濃ピンク色~薄紫色、かすかに芳香がある。花被片は中央の線が暗色で、基部に白色の条線があり、ごくまれに全体が白色になる。花は左右相称。果実は長円形の蒴果、多少、木質、ときに先が広くなり、割れて、翼のある種子を放出し、長さ8~12mm×幅約2.5mm。花期は5~6月 春下旬~夏上旬(原産地 10~12月上旬、ときに1月まで)。
品種) 'Ablaze' , 'Peach Glow'
2-1 Watsonia borbonica subsp. ardernei ワトソニア・アーデルネイ
 高さ90~150㎝。花は白色。秋植え。
品種) 'Arderne's White'(白色花の普通品種)
3 Watsonia coccinea (Herb. ex Baker) Baker ワトソニア・コッキネア
 南アフリカ、ケープ州原産。  高さ40~50㎝。球茎(corm)は扁球形、直径約3㎝。薄皮は厚く、網目の繊維状、先端は剛毛になる。茎は単純、花序を含めて長さ約30㎝。根生葉は線形、質は硬く、長さ15~22.5㎝。花は穂状花序にごく、疎に4~6個つく。仏炎苞のバルブは長円状披針形、帯褐色、硬く、下側の苞は長さ2.5~3.8㎝。花被は鮮やかな深紅色。筒部は曲がり、長さ3.8~5㎝、上半分は広がり、のど部は 直径8mm。花被片は長円状へら形、先鋭形、長さ2.5㎝、最下の花被片は他より少し長く、より広がる。花柱は花被片の先に達する。秋植え種。花期は3~5月。
4 Watsonia laccata (Jacq.) Ker Gawl. ワトソニア・ラッケイタ
 南アフリカ原産。花が橙色の矮性種。
高さ30~40㎝の矮性種。葉は光沢のある剣形、縁が少し厚くなり、幅6~15mm、長さは高さの約1/2。花茎は球茎から出て、直立し、穂状花序をつける。花は華やかでピンク色、紫色、白色又は橙色。花期は秋。

5 Watsonia marginata (L. f.) Ker-Gawl.  ワトソニア・マルギナータ
 南アフリカ原産。英名はbroad-leaf watsonia。カリフォルニアなどで栽培中に逸出がある。
 高さ1.2~1.5m。球茎(corm)をもち、落葉、夏に休眠する。葉は秋に3~4枚生じ、青緑色、長さ45~80㎝、幅が広く5㎝以下、縁は厚くなり、帯黄色、中脈が目立つ。多くの枝を直立し、長さ約50㎝の穂状花序を出し、全体で花を30~50個つける。花は放射相称、藤色、ピンク色、又は白色、芳香がある。花被は長さ3.5~4.5㎝。裂片は長さ1~1.5㎝、卵状長円形。蒴果は木質、数個の種子をもつ。種子は角(かど)があり、帯褐色、目立つ膜質のうねがある。花期は3~6月。
品種) 'Alba' , 'Star Spike'

6 Watsonia meriana (L.) Mill. ワトソニア・メリアナ
  synonym Watsonia bulbillifera J.W. Mathews & L. Bolus
  synonym Watsonia fulgens (Andrews) Pers.
  南アフリカのケープ州原産。英名はbulbil watsonia , bulbil bugle lily.。オーストラリア、カリフォルニアなどに帰化。
 高さ1~1.5(2)m。球茎(corm)は直径4~8㎝。薄皮は網目にある繊維状。小球茎は卵形、先が尖り、4~12個、束生し、穂状花序の仏炎苞の下部の花に置き変わる。根生葉は約5~6枚、剣形、長さ50~60(~)80㎝×幅1~4.5(~6)㎝、中脈は目立つ。穂状花序は普通、分枝せず、長さ20~40㎝。花が10~15個、ほぼ離れてつく。仏炎苞(苞)は三角形~長円形、長さ1.7~2.5㎝草質で上部に赤褐色の薄膜質の部分をもつ。花は左右相称。花被は長さ6~7㎝、橙色~赤色、まれに、ピンク色~紫色。花被の筒部は長さ3.5~4.5㎝、基部で細くなり、曲がって広がった円筒状の部分は長さ2.5~3㎝。花被片は長円形~倒卵形、先は鋭形~短突起状、長さ1.8~2.5㎝×幅約1.3㎝、背側の花被片はフード状になる。花柱は花被片より長く、枝は長さ約0.5㎝、2分岐。蒴果は見られない。花期は5~7月(原産地では10~12月)。2n=18。

7 Watsonia pillansii L.Bolus ワトソニア・ピルランシー
  synonym Watsonia beatricis J.W.Mathews & L.Bolus
 南アフリカのケープ州~クワズール・ナタール州原産。英名はPillans’ watsonia, summer watsonia, bugle lily, Beatrice watsonia
 高さ0.5~1.2m、常緑、夏緑性、丈夫で群生する。球根は球茎(corm)、直径30~45㎜、薄皮は灰褐色、厚く被う。茎は普通、分枝しないが、直立する短い枝を1~3本もつ。葉は披針形~線形に近く、幅1~18mm、薄緑色。花序は穂状花序、花は20~35個つき、鮮やかな橙色~赤橙色。花は長く狭い筒状、長さ35~50mm×幅は基部で2~3mm、口部で6mm。花被片は6個、広がり、狭く、長さ20~26mm、筒部に90度でほぼつく。花が完全に開くと最上部の花被片はややフード状で直立する。葯の下の花糸は長さ30~40㎜、上側の花被片のすぐ下に束につき、紫色~クリーム色。花柱は高さが葯の中間になり、枝は長さ約7mm。花筒の基部は長い苞に包まれる。苞は長さ19~33㎜、緑色又は部分的に赤色を帯び、しばしば乾いて先が薄褐色になる。花は香りが無く、蜜腺をもつ。花期は夏の6~7月(原産地では12~1月、たまに11~2月)。春植え。

8 Watsonia wilmaniae J.W.Mathews & L.Bolus  ワトソニア・ウィルマニアエ
 南アフリカ原産。
 高さ0.5~1m。葉は根生し、1~2枚つき、狭い線形で縁がひどく厚くなる。花は小型、左右相称、淡黄色~クリーム色~あずき色~赤紫色、穂状花序に花が密集し、主軸に25~50個又はそれ以上つく。外側の苞は基部が緑色、基部だけを抱き、内側の苞は褐色で深く2又に分かれる。花は蜜腺をもつ。花期は原産地で(12)1~3月。
品種) 'Ice Angel'

9 ハイブリッド
 Watsonia meriana系のハイブリッドが多く、他の矮性種も多く作り出されている。
品種) 'Adelaide' , 'Apricot Queen' , 'Aurora' , 'Australia' , 'Ballarat' , 'Ballyrogan Early Pink' , 'Barbie' , 'Bedazzled' , 'Best Red' , 'Brighton' , 'Bronze Beauty' , 'Cape Shell' , 'Carlsbad' , 'Cherry Splash' , 'Clunes' , 'Curly Blooms' , 'Curviflora' , 'Dart Sea Trout' , 'Dazzler' , 'Double Vision' , 'Early Dawn' , 'Flamboyant' , 'Flame' , 'Gigantea' , 'Hobart' , hybrid 674/76 , 'Ida Edwards' , 'Indian Orange' , 'Ivory Towers' , 'Jessica' , 'Jessie' , 'Leng' , 'Lilac Towers' , 'Maitland' , 'Malvern' , 'Malvern' , 'Melbourne' , 'Mount Congreve' , 'Mrs. Bullard's White' , 'Orange' , 'Orange Beauty' , 'Peach Glow'ピーチグロー , 'Peachy Pink Orphan' , 'Portland' , 'Raspberry Delight' , 'Rubra' , 'Sale' , 'Snow Bell' , 'Snow Queen' , 'Special Red' , 'Stanford Scarlet' , 'Stanfords' , 'SuiLan' , 'Treco Dwarf Pink' , 'Tresco Dwarf Pink' , 'Tresco Mauve' , 'White Dazzler'

参考

1)PlantZAfrica
 Watsonia angusta Ker Gawl.  
http://pza.sanbi.org/watsonia-angusta
2) NEW SOUTH WALES FLORA ONLINE
 Genus Watsonia  
https://plantnet.rbgsyd.nsw.gov.au/cgi-bin/NSWfl.pl?page=nswfl&lvl=gn&name=Watsonia
3) The Jepson Herbarium
 Watsonia meriana  
https://ucjeps.berkeley.edu/eflora/eflora_display.php?tid=48519
4) Plants of the World Online | Kew Science
 Watsonia  
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:328242-2
5) Flora of Victoria
 Watsonia  
https://vicflora.rbg.vic.gov.au/flora/taxon/bbd53e80-8ff1-44c1-8dc6-0c193731a39b
6) GRIN
 Watsonia  
https://gringlobal.irri.org/gringlobal/taxon/taxonomygenus?id=12788