ウツボグサ 靫草

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Flora of Mikawa

シソ科 Lamiaceae ウツボグサ属

別 名 カコソウ 夏枯草
英 名 Asian self-heal
中国名 山菠菜 shan bo cai
学 名 Prunella vulgaris L. subsp. asiatica (Nakai) H.Hara

 synonym Prunella vulgaris L. subsp. asiatica (Nakai) H.Hara var. lilacina Nakai form. asiatica (Nakai) H.Hara

 synonym Prunella vulgaris L. var. lilacina Nakai

 synonym Prunella asiatica Nakai
ウツボグサ花
ウツボグサ花と萼
ウツボグサ雄しべ
ウツボグサ花序
ウツボグサ果期
ウツボグサ果実
ウツボグサ茎
ウツボグサ
ウツボグサ茎上部の葉
ウツボグサ中部の葉
ウツボグサ茎下部の葉
ウツボグサ分果
花 期 6~8月
高 さ 20~60㎝
生活型 多年草
生育場所 草地、道端
分 布 在来種  北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国
撮 影 新城市  05.7.2(花)
豊橋市  14.7.18(果実)
ウツボグサは花に特徴があり、道端で比較的よく見られる。和名は花穂が矢の携帯用収納武具のウツボ(空穂)に似ていることに由来する。また、夏になっても枯れた花が残ることから、夏枯草(カコソウ)とも呼ばれる。中国名の夏枯草はセイヨウウツボグサを指す。
 多年草、高さ20~60㎝、茎は4稜形、稜には上向きの毛があり、下部は這い、上部は直立する。葉は対生し、長さ3~4.5㎝、幅1~1.5㎝の卵形~卵状惰円形、わずかに波状~円鋸歯状の低い鋸歯がある。下部の葉には長さ1~2㎝の葉柄があり、毛が密生する。花穂の長さは3~5(8)㎝。苞は長さ5~8㎜、幅6~8㎜の卵形。花は長さ18~21㎜の唇形花、筒部は長さ約10㎜。上唇は大きく、長さ約9㎜、幅約6㎜の惰円形、稜がある。下唇は長さ約8㎜、幅約9㎜、3裂し、中央裂片の先に歯がある。花の色は紫色だが、色の濃さには個体差がかなりある。萼は長毛があり、長さ約1㎝の2唇形、筒部は長さ約4㎜。萼の上唇は浅い3歯があり、下唇は深い2歯がある。萼の上唇の縁が折れ、下唇を包み、果期にも萼が残る。果実は4分果。分果は長さ約1.5㎜、幅約1㎜、褐色。2n=28。花期は6~8月。
 高山に生えるタテヤマウツボグサは日本固有種。やや大型で、花穂の長さが短く、葉の基部が茎を抱く。
 セイヨウウツボグサ subsp. vulgaris はヨーロッパ、アジア、北アフリカに分布する。日本に自生はない。英名はcommon selfheal。中国名は夏枯草(xia ku cao)。よく栽培され、花穂が長さ2~4㎝と短く、花も長さ約13㎜と小さい。葉は長さ1.5~6㎝、幅0.7~2.5㎝の卵状惰円形~卵形、縁は波状~全縁。2n=28。
 subsp. lanceolata は日本、朝鮮、中国、アメリカに分布する。英名はlance selfheal , American selfheal 。中国名は狭叶夏枯草(xia ye bian zhong)。分布域はPOWOでは日本が原産地に含められているが、日本では認識されてなく、和名もない。Flora of Chinaでは中国だけとして、Ylistにはsubsp. lanceolataが載せられていない。アメリカに自生するとされ、茎葉の葉身の長さが幅の約3倍あり、茎が普通、直立し、subsp. vulgarisは葉の長さが幅の2倍程度で、普通、茎が平伏する。英名はlance selfheal , American selfhealのため、アメリカウツボグサとした方がわかりやすい。

ウツボグサ属

  family Lamiaceae - genus Prunella

 多年草。葉は羽状中裂~ほぼ全縁。輪散花序は花が6個つき、頂生の卵形~卵状球形の穂状花序になる。苞は膜質、縁毛があり、重なる。小苞は小さいか又は無い。花柄は非常に短いか又は無い。萼は筒状鐘形、背腹側が±扁平になり、不規則な10脈があり、脈の間が網状になり、2唇形、基部に毛があり、のど部は無毛。上唇は平ら、切形、短い3歯がある。下唇は唇の1/2まで2裂し、歯は披針形、果時には口を閉じる。花冠筒部は片側で次第に広がり、突き出し、のど部はわずかにくびれ、内側に環状に鱗片があり、拡大部は2唇形。上唇は真っすぐ、かぶと形(galeate)、縁は全縁。下唇は3裂し、中裂片は大きく、凹面、小歯がある。側裂片は長円形、後屈する。雄しべは4本、前側の2本は長く、上唇の下に斜上し、平行、離生。花糸の先は歯がある。葯室は2個、両方に広がる。子房は無毛。花柱は無毛、先は等しく2裂し、裂片は錐形。小堅果は褐色、ほぼ球形、卵形、又は長円形、無毛、平滑又はいぼ状突起があり、先は丸い。英名はself-heal。
 世界に約8種があり、アフリカ、アジア、ヨーロッパ、北アメリカに分布する。

ウツボグサ属の主な種と園芸品種

1 Prunella grandiflora (L.) Jacq. タイリンウツボグサ 大輪靫草

  synonym Prunella grandiflora subsp. pyrenaica (Gren. & Godr.) A.Bolòs & O.Bolòs

 西~中央アジア、ヨーロッパ原産。中国名は大花夏枯草 da hua xia ku cao。英名はlarge-flowered self-heal , big-flowered elf-Heal。世界で広く栽培されている。
 茎は斜上し、高さ15~60㎝、絨毛~粗毛がある。葉柄は長さ2.5~4㎝、剛毛がある。葉身は卵状長円形、長さ3.5~4.5㎝×幅2~2.5㎝、まばらに粗毛があり、下面はほぼ無毛、繊毛があり、基部はほぼ円形、縁は全縁、先は鈍形。穂状花序は長さ約4.5㎝、長円形、花序柄がある。花の葉(floral leaves)は無柄、長円状披針形。苞は多数、微突形、脈上にまばらに絨毛がある。花柄は長さ約1mm。萼は長さ約8㎜、脈にまばらに粗毛があり、萼筒は長さ約3㎜。上唇はほぼ円形、約・長さ5mm×幅5mm、広三角形の歯があり、刺があり、側歯は長い。下唇は長円形、約・長さ6mm×幅3mm、歯は披針形、刺がある。花冠は青色、長さ2~2.7㎝、花冠筒部は長さ約9mm、曲がる。上唇は長円形、約・長さ12㎜×幅7㎜、反曲し、下唇の中裂片は波状の小裂片がある。側裂片は垂れ下がる。小堅果はほぼ球形、わずかにいぼ状突起があり、黒色、縁に目立つ溝がある。花期は9月。果期は10月。
品種) 'Alba' , 'Altenberg Rosa' , 'Anderson's Variegated' (v) , 'Bella Blue' , 'Bella Blue' , 'Bella Deep Rose' , 'Blue Loveliness' , 'Carminea' , 'Freelander' , 'Freelander Blue' , 'Freelander Mix' , 'Gerhard Rudolf' , 'Gruss aus Isernhagen' , 'Little Red Riding Hood' , 'Loveliness' , 'Pagoda' , 'Pink Loveliness' , 'Rose Pearl' , 'Rosea' , 'Rotkäppchen' , 'Rubra' , 'Senior' , 'White Alba' , 'White Loveliness'

2 Prunella laciniata (L.) L. プルネラ・ラキニアタ
  synonym Prunella alba Pall. ex M.Bieb.
  synonym Prunella grandiflora var. laciniata (L.) Trevir.
  synonym Prunella vulgaris subsp. laciniata (L.) Čelak.
 地中海沿岸地域(アルバニア、アルジェリア、オーストリア、バレアレス諸島、ベルギー、ブルガリア、コルシカ、チェコスロバキア、東エーゲ海諸島、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イラン、イタリア、クリティ、クリム、レバノン・シリア、モロッコ、北コーカサス、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、サルデーニャ、シチリア、スペイン、スイス、トランスコーカサス、チュニジア、トルコ、ヨーロッパのトルコ、ウクライナ、ユーゴスラビア)原産。英名はcutleaf selfheal。P. vulgaris に似ているが、かなり密に毛があり、花は黄白色。葉は少なくとも部分的に羽状葉になる。
 多年草。枝は 30 cm まで垂れ下がり、不定根を持つことが多く、密に毛が生える。葉身は長さ1.4~7㎝×幅1~3㎝、下部の葉身は卵形、基部は切形、上部の葉身は羽状中裂~羽状浅裂し、葉柄は長さ0~4㎝。花序は長さ1~1.5㎝。萼片は長さ8~11㎜、下唇には線形~卵形の歯がある。花冠は長さ15~17(20)㎜、黄白色、まれにバラ色または紫色。2n=28。花期は6~8月(オーストラリアでは11~4月)。

3 Prunella prunelliformis (Maxim.) Makino タテヤマウツボグサ 立山靫草

  synonym Prunella prunelliformis f. albiflora Mizush. シロバナタテヤマウツボ 

 日本固有種(本州の中部地方以北)。亜高山~高山の草地に生える。
 多年草。ウツボグサに比べ、全体に大型、高さ20~50㎝。葉は対生し、長さ3~8㎝、幅1.5~4㎝の狭卵形~広卵形、葉柄がほとんどなく、基部が茎を抱き、先が尖り、鋸歯縁。花柄が短く、花穂がウツボグサほど長くならず、短い。花冠は長さ2.5~3㎝、青紫色~赤紫色。花期は6~8月。
3-1 Prunella prunelliformis (Maxim.) Makino f. albiflora M.Mizush. シロバナタテヤマウツボ 
 白花品種。

3-2 Prunella prunelliformis (Maxim.) Makino f. lilacina (Nakai) Honda  ウスイロハクサンウツボ 


4 Prunella vulgaris L. ウツボグサ [広義]
 ユーラシア、北アフリカ、アメリカ原産。英名はselfheal , heal-all。
 茎は高さ20~30㎝、斜上し、基部で多数分枝し、赤紫色、まばらに剛毛があるか、ほぼ無毛。葉柄は長さ0.7~2.5㎝、上部の葉柄は短い。葉身は披針形~卵形、長さ1.5~6㎝×幅0.6~2.5㎝、無毛~わずかに絨毛があり、基部は切形~広くさび形状で沿下し、縁は波打ち~全縁、先は鈍形~円形。穂状花序は長さ2~4㎝、無柄。花の葉は茎葉に似て、無柄又は短柄、類卵形。苞は帯紫色、広心形、約・長さ7㎜×幅11㎜、先端が鋭く尖り、脈にまばらに剛毛がある。萼は鐘形、長さ約1㎝、まばらに剛毛があり、萼筒は長さ約4㎜。上唇は類扁円形、類切形。下唇は幅が狭く、葉が尖鋭形。花冠は帯紫色又は白色、長さ約1.3㎝、わずかに突き出し、無毛。科か筒部は長さ約7㎜×基部の幅約1.5㎜、次第に広がり、のど部で幅約4㎜。上唇は類円形、直径約5.5㎜、±かぶと形(galeate)、凹形。下唇は上唇の長さの約1/2、中裂片は類心形、縁がある。側裂片は長円形、広がり、微小。前側の雄しべは非常に長い。小堅果は長円状卵形、約・長さ1.8㎜×幅0.9㎜、わずかに1本の溝がある。花期は4~6月。果期は7~10月。(Flora of Chna :subsp. asiaticaは除外)
【Jepson eFloraの解説】
 茎は高さ10~50㎝、無毛~短毛がある。葉は下部では葉柄があり、葉柄は長さ5~30mm。上部ではほぼ無柄、葉身は長さ2~7㎝、普通幅1~4㎝、卵形~楕円形~披針形、基部は普通、くさび形。花序は長さ2~6.5㎝。苞は縁毛があり、±赤色。花は萼が長さ7~11mm、暗緑色~±紫色。花冠は両性花では長さ12~15mm、雌花では長さ8~11mm、±ブルーバイオレット色、たまにピンク色又は白色。2n=28,32。
1. 茎葉の葉身長は幅の約3倍、茎は直立たまに傾伏..... var. lanceolata
1' 茎葉の葉身長は幅の約2倍、茎は平伏たまに傾伏~直立..... var. vulgaris

品種) 'Alba' , 'Gleam' (v) , 'Inner Glow' (v) , 'Magdalena' , 'Marbled White' (v) , 'Rose Pearl' , 'Rosea' , 'Ruth Wainwright' (v) , 'Saintlow' , 'Under the Sea , 'Voile'

4-1 Prunella vulgaris L. subsp. asiatica (Nakai) H.Hara ウツボグサ 靫草

  synonym Prunella vulgaris L. var. lilacina Nakai
  synonym Prunella vulgaris auct. non L.
  synonym Prunella japonica auct. non Makino
  synonym Prunella asiatica Nakai [Flora of China]
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国(安徽省、黒竜江省、江蘇省、江西省、吉林省、遼寧省、山東省、山西省、浙江省)原産。中国名は山菠菜 shan bo cai。英名はAsian self-heal。 標高0~1700mの芝生の斜面、湿った場所、藪、草地、道端に生える。
 多年草。高さ20~60㎝。茎は4稜形、稜には上向きの毛があり、下部は這い、上部は直立する。葉は対生し、下部の葉には長さ1~2㎝の葉柄があり、毛が密生する。葉身は長さ3~4.5㎝×幅1~1.5㎝の卵形~卵状長円形、上面には伏した軟毛があるかほぼ無毛、下面には脈上にまばらに軟毛があり、基部は楔形~漸尖形、縁はわずかに波状~円鋸歯状の低い鋸歯があり、先は鈍形~鋭形。穂状花序は長さ3~5(8)㎝。花葉(花序の中につく葉)は緑色、半無柄または短い葉柄があり、広披針形。苞は長さ5~8㎜×幅6~8㎜の卵形、苞は赤色を帯び、先が尾状に尖り、脈に軟毛があり、上部の苞は小さくなる。花は長さ18~21㎜の唇形花、筒部は長さ約10㎜。上唇は大きく、長さ約9㎜、幅約6㎜の惰円形、稜がある。下唇は長さ約8㎜、幅約9㎜、3裂し、中央裂片の先に歯がある。花の色は紫色だが、色の濃さには個体差がかなりある。萼は苞と同色、長毛があり、長さ約1㎝の2唇形、筒部は長さ約4㎜。萼の上唇は浅い3歯があり、下唇は深い2歯がある。萼の上唇の縁が折れ、下唇を包み、果期にも萼が残る。果実は4分果。分果は長さ約1.5㎜×幅約1㎜、褐色、先は丸く、無毛。2n=28。花期は5~8月。果期は8~9月。
 5亜種があり、Ylistでさらに細かく分類している下位分類は使われなくなってきている。

4-1-1 Prunella vulgaris L. subsp. asiatica (Nakai) H.Hara var. lilacina Nakai f. asiatica (Nakai) H.Hara ウツボグサ 靫草 狭義

4-1-2 Prunella vulgaris L. subsp. asiatica (Nakai) H.Hara f. leucocephala K.Ohashi, H.Ohashi et Yonek. シロバナウツボグサ 白花靫草

  synonym Prunella vulgaris L. subsp. asiatica (Nakai) H.Hara f. albiflora Nakai

  synonym Prunella vulgaris L. subsp. asiatica (Nakai) H.Hara f. candida Yonek.

  synonym Prunella asiatica Nakai f. albiflora (Nakai) Kitag.

  synonym Prunella vulgaris f. leucocephala K.Ohashi, H.Ohashi & Yonek.

 POWOではPrunella vulgaris L. subsp. asiaticaのsynonymとされている。

4-1-3 Prunella vulgaris L. subsp. asiatica (Nakai) H.Hara var. aleutica Fernald ミヤマウツボグサ 深山靫草

  synonym Prunella vulgaris auct. non L.
  synonym Prunella vulgaris L. var. japonica (Makino) Kudô
  synonym Prunella japonica Makino
  synonym Prunella vulgaris var. aleutica Fernald
 花後に茎の基部から匍匐枝を出さない。
 POWOではPrunella vulgaris L. subsp. asiaticaのsynonymとされている。

4-1-4 Prunella vulgaris L. subsp. asiatica (Nakai) H.Hara var. lilacina Nakai f. lilacina (Nakai) Yonek. ベニバナウツボグサ 紅花靫草

  synonym Prunella asiatica Nakai f. lilacina (Nakai) Kitag.

4-1-5 Prunella vulgaris L. subsp. asiatica (Nakai) H.Hara var. nanhutashanensis S.S.Ying ナンコウツボグサ 南湖靫草

  synonym Prunella vulgaris L. subsp. asiatica (Nakai) H.Hara f. taiwanalpina T.Yamaz.

  synonym Prunella vulgaris var. nanhutashanense S.S.Ying
 POWOLではPrunella vulgaris L. subsp. asiaticaのsynonymとされている。中国名は南湖大山夏枯草または高山夏枯草。

4-1-6 Prunella vulgaris L. subsp. asiatica (Nakai) H.Hara var. taiwaniana S.S.Ying タイワンウツボグサ 台湾靫草

  synonym Prunella vulgaris f. taiwanalpina T.Yamaz.
  synonym Prunella vulgaris var. taiwaniana T.Yamaz.
  synonym Prunella vulgaris var. taiwaniana S.S.Ying
 POWOではPrunella vulgaris L. subsp. asiaticaのsynonymとされている。

4-2 Prunella vulgaris subsp. estremadurensis Franco
 ポルトガル原産。詳細不明。

4-3 Prunella vulgaris subsp. hispida (Benth.) Hultén プルネラ・ブルガリス・ヒスピダ

  synonym  Benth. [Flora of China]
  synonym Prunella vulgaris var. hispida (Benth.) Benth.
  synonym Prunella cinerea Raf.
  synonym Prunella stolonifera H.Lév. & Giraudias
 中国(四川省、西蔵省、雲南省)、インド、ブータン原産。中国名は硬毛夏枯草 ying mao xia ku cao(コウモウカコソウ)。標高1500~3800mの森林の縁、草地の斜面に生える。
 茎は基部が平伏し、長さ15~30㎝、条線があり、密に毛がある。葉柄は長さ0.5~1.5㎝。葉身は卵形~卵状披針形、長さ1.5~3㎝×幅1~1.3㎝、密に髭があり、基部は円形、縁は波状鋸歯~円鋸歯状鋸歯があり、先は鋭形。穂状花序は長さ2~3㎝×幅2㎝。花葉はほぼ無柄。苞はほぼ心形で幅8~10㎜、急に尖鋭形になり、密に毛があり、縁に髭がある。小花柄は長さ1㎜未満。萼片は紫色、筒状鐘形、長さ約1㎝、髭は脈上につく。上唇はほぼ円形、約・長さ6㎜×幅5㎜、下唇は幅約3㎜、萼歯は披針形で刺がある。花冠は暗紫色~青紫色、長さ1.5(~1.8)㎝、無毛、花冠筒部は長さ約1cm、基部で幅約1.5㎜、徐々に広がり喉部で幅4㎜になり、上唇は長楕円形、約・長さ5㎜×幅4㎜、竜骨があり、凹面形、先は凹形、裏面に剛毛がある。下唇は約・長さ5㎜×幅6㎜、中裂片はほぼ円形、波状小裂片があり、側裂片は長円形、微細で、下に垂れる。前側の雄しべは非常に長い。小堅果は卵形、約・長さ1.5㎜×幅1㎜、外側がわずかに平ら、先は丸く、無毛。花期と果期は6月~1月。

4-4 Prunella vulgaris subsp. lanceolata (W.P.C.Barton) Piper & Beattie プルネラ・ブルガリス・ランセオラータ

  synonym Prunella vulgaris var. lanceolata (W.P.C.Barton) Fernald
  synonym Prunella canadensis Mill.
  synonym Prunella caroliniana Mill.

  synonym Prunella vulgaris f. albiflora Nakai in Bot. Mag. (Tokyo) 35: 192 (1921), nom. illeg.

 日本、朝鮮、中国(満州)、北アメリカ(アラスカ、カナダ、USA、メキシコ)、ハイチ、ドミニカ、ジャマイカ原産。分布域はFlora of Chinaでは中国だけ。中国名は狭叶夏枯草 xia ye bian zhong。英名はlance selfheal , American selfheal(アメリカウツボグサ) , American heal all , common selfheal。日本では認識されていないため、和名もない。
 短い根茎または拡大した茎の基部から生える、在来のひげ根を持つ多年草、高さ10~50㎝になる。茎は四角く、葉は対生する。茎は一般に分枝せず、上部にわずかに毛があり、単独または束生する。葉は披針形、長さ2~7㎝、微細な毛があるかまたは無毛、下部の葉には短い葉柄があり、縁は平滑またはわずかに鋸歯がある。茎頂の長さ2.5~5㎝、幅約2.5㎝の密な穂状花序に花が多数つく。花は6輪ずつ仮輪につき、各仮輪は2個の広がった尖った葉状の苞葉の上につく。花は小さく(長さ約1.3㎝)、紫色~ピンク色または白色、キンギョソウ(snapdragon)に似ている。短い小花柄がある。花冠は筒状で、大きなフード状の上唇と、縁飾りのある大きな3裂の下唇がある。花は下端から上端に向かって順に咲く。花期は緯度と標高により異なるが、4~9月。各花から4個の平滑な卵形の小堅果を生じ、これらは宿存萼片に保持される。小堅果は主に流水、草を食む哺乳類、鳥類によって散布される。(USDA NRCS Plant Fact Sheet)
 葉は披針形~長円状披針形、長さ1.5~4㎝×幅0.6~1㎝、縁は全縁、無毛~まばらに絨毛がある(Flora of China)。
 北アメリカ自生種(P. vulgaris var. lanceolata)は茎葉が披針形~長円形、長さは幅の2~5倍(平均3倍) 、基部がくさび形。ユーラシアのP. vulgaris var. vulgarisは中央の茎葉が卵形~卵状長円形、長さは幅の1.5~2.5倍(平均2倍)、基部は円形。下部の葉は長い葉柄があり、葉身は長さ約5×幅約2.7㎝、菱状卵形。花序は長さ約2㎝。苞は幅約4㎜、ほぼ円形、先が鋭い小突起形。萼は2唇形、長さ6.5~8㎜、上唇は先が不明瞭に波状、下唇は3裂し、裂片は錐形。花期は5~9月。(Fernald 1913b 参考4、参考5)

4-5 Prunella vulgaris L. subsp. vulgaris セイヨウウツボグサ 西洋靫草

  synonym Prunella vulgaris L. var. hispida Benth.
  synonym Prunella hispida Benth.
 韓国、中国、台湾、ブータン、インド、カザフスタン、キルギスタン、ネパール、ブータン、パキスタン、ロシア、アフガニスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、ベトナム、北アフリカ、南西アジア、ヨーロッパ、アイスランド原産。中国名は夏枯草 xia ku cao。英名はcommon selfheal。アメリカ、ニュージーランドなどに帰化。標高20~2040mの牧草地、湿った場所、ときに沼地に生え、土壌を選ばない。
 高さ5~60cm、根茎があり、匍匐性または直立性。発根した茎は、ときに稜が赤みを帯び、表面が褐色で、特に稜に散在する毛があり、上部ではより密に毛がある。葉は長さ1.7~9.6㎝×幅0.4~3.6㎝、卵形~三角状卵形または楕円形、先は鋭形~円形、縁は全縁、ときに未成熟な歯または波状(scalloped)の歯があり、上面にはまばらに毛が生え、下面はほとんど無毛または脈上に毛があり、上面は暗緑色、下面は薄緑色。葉柄は長さ0.2~2.2㎜。花序は長さ1.3~7.5㎝×幅1~1.5㎝、4~11個の仮輪からなり、一般に円筒形で、下部に一対の突き出た葉があります。苞は長さ6~13㎜×幅8~15㎜、広卵形、尖鋭形または千枚通し形(awl-shaped)、長さ2~3.5㎜の千枚通し(awl)があり、網状脈があり、下側に毛があり、縁毛があり、色は+紫色。 小花柄は長さ約2㎜。萼は長さ7~9㎜、長さの少なくとも半分が苞から突き出し、萼筒は背部に12本の脈があり、横脈がある。唇弁は長さ約5㎜、上側の歯は長さ約1㎜、上部は紫色、下側の歯の間の隙間は2~2.5㎜あり、縁毛がある。花冠は長さ11~12㎜、紫色、基部は白色。上唇は長さ4~5㎜。下唇は長さ2~3.5㎜、側裂片は中央裂片よりも小さくて狭い。小堅果は長さ2.2~2.3㎜×幅0.9~1.1㎜、楕円形、明瞭な帯白色の尖端をもち、薄褐色で光沢があり、暗い縦脈がある。2n=28, 30。[Flora Iberica]
 葉は卵状長円形~卵形、長さ1.5~6㎝×幅0.7~2.5㎝、縁は不明瞭に波打ち~ほぼ全縁、上面は微細剛毛があるか又はほぼ無毛、下面はほぼ無毛。[Flora of China]

5 Prunella yakushimanum(Prunella sp.) ヤクシマウツボグサ 屋久島靫草

 来歴が不明の栽培種。別名は姫ウツボグサ、紅花姫ウツボグサ。
 小型で、高さ約10㎝。ウツボグサより全体に毛が少ない。葉は葉柄があり、やや細い卵形。花は幅2cm弱、桃色、まれに紫色。紅花姫ウツボグサが販売されている。花期は4~8月。
品種) 'Icing Sugar'

6 Prunella × dissecta Wender. プルネラ・ディセクタ
  synonym Prunella × bicolor Beck
  synonym Prunella × giraudiasii Coste & Revol
 オーストリア、チェコスロバキア、フランス、ドイツ、スペイン、スイス、ウクライナ原産。
 タイリンウツボグサ(P. grandiflora)とプルネラ・ラキニアタ(P. laciniata)の自然交雑種。

7 Prunella × intermedia Link プルネラ・インテルメディア
  synonym Prunella vulgaris var. intermedia (Link) Willd.
  synonym Prunella × hybrida Knuf.
  synonym Prunella × intermedia Stankov
  synonym Prunella × pinnatifida Pers.
 ヨーロッパ(アルバニア、オーストリア、ブルガリア、チェコスロバキア、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、北コーカサス、ポルトガル、スペイン、ユーゴスラビア)原産。
 プルネラ・ラキニアタ(P. laciniata)とウツボグサ(P. vulgaris)の自然交雑種。

8 Prunella × webbiana N.Taylor プルネラ・ウェッビアナ
 栽培種 英名はhybrid self-heal , Webb's self-heal , purple ornamental prunella。
 Prunella grandiflora と Prunella grandiflora subsp. pyrenaicaの交配種である。タイリンウツボグサに非常に似ているが、やや背が高く、半常緑で丈夫。'Rosea'は花が淡ピンク色~藤色がかった淡ピンク色。根を張る匍匐性の茎から斜上または直立し、枝分かれして広がり、高さ20~30㎝になる。葉は葉柄があり、葉身は緑色、卵形、絨毛があり、幅約3㎝、全縁または鋸歯があり、目立つ脈がある。穂状花序は葉の上に出て花を密につけ、幅約2㎝の円筒形。花期は5~9月。
品種) 'Gruss aus Isernhagen' , 'Pink Loveliness' . 'Rosea'

9 その他ハイブリッド
品種) 'Binsumdaz' , 'Blue Pearl' , 'Hareknoll Magenta' , 'Inshriach Ruby' , 'Rose Pearl' , 'Rotkäppchen' , Summer Daze ('Binsumdaz'PBR)

参考

1) Flora of China
 Prunella
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=126862
2) Plants of the World Online | Kew Science
 Prunella
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:21152-1
3) World Flora Online
 Prunella
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000031279
4) Species Page - New York Flora Atlas
 Prunella vulgaris ssp. lanceolata
https://newyork.plantatlas.usf.edu/Plant.aspx?id=7201
5) The Jepson Herbarium
 Prunella vulgaris var. lanceolata
https://ucjeps.berkeley.edu/eflora/eflora_display.php?tid=64497
6) USDA NRCS Plant Fact Sheet
 LANCE SELFHEAL Prunella vulgaris L. ssp. lanceolata (W. Bartram) Hultén
https://plants.usda.gov/DocumentLibrary/factsheet/pdf/fs_prvul2.pdf
7) Flora Iberica
 Prunella vulgaris L.
http://www.floraiberica.es/floraiberica/texto/pdfs/12_140_30_Prunella.pdf