トウカイコモウセンゴケ 東海小毛氈苔
Flora of Mikawa
モウセンゴケ科 Droseraceae モウセンゴケ属
別 名 | 関西型コモウセンゴケ |
学 名 | Drosera tokaiensis (Komiya et C.Shibata) T.Nakam. et K.Ueda |
花 期 | 6~8月 |
高 さ | 10~20㎝ |
生活型 | 多年草 |
生育場所 | 酸性の湿地やその周辺、湧水のある崖地など |
分 布 | 在来種(日本固有種) 本州の北陸地方、東海地方、近畿地方~中国地方東部、四国、九州 |
撮 影 | 葦毛湿原 03.6.29 |
トウカイコモウセンゴケはモウセンゴケ科モウセンゴケ属の湿生の食虫植物。
トウカイコモウセンゴケは1950年代後半ごろからコモウセンゴケの関西型といわれてきた。新分類群として記載されたのは1978年である。東海地方の固有種とされ、葉形がコモウセンゴケはヘラ型であり、トウカイコモウセンゴケはスプーン型とされてきた。その後の研究で広く分布することが判明し、1991年にトウカイコモウセンゴケが標準和名として提唱され、認められた。トウカイコモウセンゴケはモウセンゴケ 2n=20とコモウセンゴケ2n=40 との雑種起源の複2倍体で、2n=60で稔性がある。形態はモウセンゴケとコモウセンゴケの中間であり、葉形については近畿地方などではヘラ型のものも多く、両者の形態上の識別点にはならない。形態上の識別点として有効なのは托葉、種子の長さであり、生育場所もやや異なる。モウセンゴケは水に浸かっているようなところに生え、コモウセンゴケは比較的乾燥しているところに生える。トウカイコモウセンゴケはこれらの中間の水分量のやや多いところに生える。
多年草。茎はごく短く、葉は根出状に出てロゼットを形成し、葉柄との境界はあまりはっきりしない。葉はスプーン形~へら形、葉柄も含めて長さ1~2cm[約・長さ11.0㎜×幅3.6㎜、腺毛のある部分の長さ6.1㎜]ほどで、基部はくさび形、漸尖して葉柄状になり、葉の表面には全体に赤色の長い腺毛があるが、基部の葉柄状部には無く、腺毛の生える部分の長さは葉全長の長さの約57%である。腺毛は赤色で、葉身そのものも赤色を帯びる。托葉は薄膜質、コモウセンゴケと同じように5裂し、裂片が不規則に細裂する。花は鮮やかなピンク色、大きさはコモウセンゴケよりやや大きい。萼片は狭卵形から卵形、鈍頭。種子は茶褐色~暗褐色、紡錘形、長さ0.5~0.6mm×幅0.16~0.22mm(幡豆町のものは長さ約0.3㎜)。2n=60。花期は6~9(~11)月。
葉の長さは葉柄部分を含み、葉の腺毛部分は葉に腺毛の生える部分の長さ。
※ 参考5~7
(1) Drosera tokaiensis (Komiya et C.Shibata) T.Nakam. et K.Ueda subsp. hyugaensis Seno ヒュウガコモウセンゴケ
九州で発見されたモウセンゴケとコモウセンゴケの新たな自然雑種、2n= 30。 葉身、托葉、花茎の各形態的特徴が異なり、不稔である。葉の長さ約15.9㎜×幅約5.8㎜、腺毛部分の長さ約6.7㎜。形態がトウカイコモウセンゴケよりコモウセンゴケにより近い。
Drosera
Drosera
Drosera
四国の力ンサイガタコモウセンゴケ
東海丘陵要素の植物地理 : II.トウカイコモウセンゴケの分類学的研究
宮崎県産モウセンゴケ属の新雑種,ヒュウガコモウセンゴケ
九州新産のトウカイコモウセンゴケとその特徴
Drosera adelae F.Muell.
トウカイコモウセンゴケは1950年代後半ごろからコモウセンゴケの関西型といわれてきた。新分類群として記載されたのは1978年である。東海地方の固有種とされ、葉形がコモウセンゴケはヘラ型であり、トウカイコモウセンゴケはスプーン型とされてきた。その後の研究で広く分布することが判明し、1991年にトウカイコモウセンゴケが標準和名として提唱され、認められた。トウカイコモウセンゴケはモウセンゴケ 2n=20とコモウセンゴケ2n=40 との雑種起源の複2倍体で、2n=60で稔性がある。形態はモウセンゴケとコモウセンゴケの中間であり、葉形については近畿地方などではヘラ型のものも多く、両者の形態上の識別点にはならない。形態上の識別点として有効なのは托葉、種子の長さであり、生育場所もやや異なる。モウセンゴケは水に浸かっているようなところに生え、コモウセンゴケは比較的乾燥しているところに生える。トウカイコモウセンゴケはこれらの中間の水分量のやや多いところに生える。
多年草。茎はごく短く、葉は根出状に出てロゼットを形成し、葉柄との境界はあまりはっきりしない。葉はスプーン形~へら形、葉柄も含めて長さ1~2cm[約・長さ11.0㎜×幅3.6㎜、腺毛のある部分の長さ6.1㎜]ほどで、基部はくさび形、漸尖して葉柄状になり、葉の表面には全体に赤色の長い腺毛があるが、基部の葉柄状部には無く、腺毛の生える部分の長さは葉全長の長さの約57%である。腺毛は赤色で、葉身そのものも赤色を帯びる。托葉は薄膜質、コモウセンゴケと同じように5裂し、裂片が不規則に細裂する。花は鮮やかなピンク色、大きさはコモウセンゴケよりやや大きい。萼片は狭卵形から卵形、鈍頭。種子は茶褐色~暗褐色、紡錘形、長さ0.5~0.6mm×幅0.16~0.22mm(幡豆町のものは長さ約0.3㎜)。2n=60。花期は6~9(~11)月。
トウカイコモウセンゴケとコモウセンゴケの比較
葉の長さは葉柄部分を含み、葉の腺毛部分は葉に腺毛の生える部分の長さ。
コモウセンゴケ | モウセンゴケ | トウカイコモウセンゴケ | |
---|---|---|---|
学名 | Drosera spatulata | Drosera rotundifolia | Drosera tokaiensis |
染色体数 | 2n=40 | 2n=20 | 2n=60 |
葉形 | へら形 | スプーン形 | スプーン形~へら形 |
葉の長さ平均 mm | 11 | 28 | 11(九州14) |
葉の幅平均 mm | 3.4 | 4.9 | 3.6(九州4.4) |
葉の腺毛部分の長さ/葉の長さ % | 73 | 24 | 57(九州55) |
托葉 | 基部が四角形、先が3裂し、側裂片2個は細くて中裂片より長く、中裂片は3裂する | 基部が楕円形、先が細く5裂し、側部の左右に短い2裂片がつく | 基部が四角形、5裂し、ときに、裂片がさらに不規則に細裂する。 |
花茎の長さ平均 ㎝ | 15 | 22 | 24(九州17) |
花序の長さ平均 ㎝ | 6.0(九州3.3) | 4.3 | 5.2(九州3.3) |
種子の長さ平均×幅平均 ㎜ | 0.37×0.16 | 1.36×0.28 | 0.54×0.19 |
(1) Drosera tokaiensis (Komiya et C.Shibata) T.Nakam. et K.Ueda subsp. hyugaensis Seno ヒュウガコモウセンゴケ
九州で発見されたモウセンゴケとコモウセンゴケの新たな自然雑種、2n= 30。 葉身、托葉、花茎の各形態的特徴が異なり、不稔である。葉の長さ約15.9㎜×幅約5.8㎜、腺毛部分の長さ約6.7㎜。形態がトウカイコモウセンゴケよりコモウセンゴケにより近い。
参考
1) Flora of ChinaDrosera
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=110951
2) Plants of the World Online | Kew ScienceDrosera
http://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30001036-2
3) World Flora Online Drosera
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000012595
4) 植物研究雑誌 第66(2), 126, 1991四国の力ンサイガタコモウセンゴケ
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_066_126_126.pdf
5) 植物地理・分類研究 植物分類,地理 42(2), 125-137, 1991東海丘陵要素の植物地理 : II.トウカイコモウセンゴケの分類学的研究
https://ci.nii.ac.jp/naid/110003760490
6) 植物研究雑誌第78巻 第4号 170-174 2003宮崎県産モウセンゴケ属の新雑種,ヒュウガコモウセンゴケ
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_078_170_174.pdf
7) 植物地理・分類研究 67(1) 53-58(2019)九州新産のトウカイコモウセンゴケとその特徴
https://www.jstage.jst.go.jp/article/chiribunrui/67/1/67_0671-07/_pdf
8) Atlas of Living AustraliaDrosera adelae F.Muell.
https://bie.ala.org.au/species/https://id.biodiversity.org.au/node/apni/2909650