モウセンゴケ 毛氈苔
Flora of Mikawa
モウセンゴケ科 Droseraceae モウセンゴケ属
中国名 | 圆叶茅膏菜 yuan ye mao gao cai |
英 名 | round-leaved sundew , common sundew |
学 名 | Drosera rotundifolia L. |
花 期 | 6~8月 |
高 さ | 10~20㎝ |
生活型 | 多年草 |
生育場所 | 湿地 |
分 布 | 在来種 本州(東海~近畿)、中国、ロシア、ヨーロッパ、北アメリカ |
撮 影 | 葦毛湿原 03.6.29 新城市 14.9.29 |
北半球温帯地域に広く分布。日本では北海道、本州、四国、九州の湿地に分布する。食虫植物の一種で、葉にある粘毛から粘液を分泌して虫を捕獲する。
多年草、ひげ根はほとんど無い。茎は分枝せず、短い。ミズゴケ中で成長すると、ときに長さ5㎝までになり、冬の間にシュートの先端に球根を形成し、地下には塊茎を形成しない。葉は根生し、密につき、長い葉柄があるスプーン形。托葉は5~7裂し(基部が楕円形、先が細く5裂し、側部の左右に短い2裂片がつく)、長さ6~8㎜、薄膜質、葉柄の基部に接してつく。葉柄は扁平、長さ1~7㎝。葉身は黄緑色~緑色~赤色、円形、ほぼ円形、または弱い腎形、長さ3~10㎜×幅5~20㎜、赤く長い頭状の粘着性のある腺毛がある。花序は直立し、花茎状、細く長さ8.5~30㎝、無毛、さそり形花序(cincinnus(pl. cincinni)扇状集散花序)は1または2個、花が3~30個つく。苞は錐形~線形で小さい。花柄は長さ1~3mm。萼片は5個、基部近くで合着し、緑色、卵形から長円形、約・長さ4㎜×幅1.5㎜、腺があり、縁は鋸歯縁。花弁は白色またはピンク色を帯び、へら形、長さ5~6㎜×幅約3㎜。雄しべは5本、長さ4~5mm。子房は楕円状球形、長さ約3mm、胎座は3個。花柱は3~4本、基部まで深裂し、こん棒形。柱頭は1個。蒴果は3または4バルブ。種子は楕円状球形、種皮は袋のような形で、両端が伸びる。 2n=20。花期は6~8月。
トウカイコモウセンゴケは紅花で、葉柄が短く、葉が立ち上がらない。典型的な「中間湿原」の長ノ山湿原ではトウカイコモウセンゴケは見られず、白花のモウセンゴケだけである。
多年草または一年草、根茎をもち、根はひげ根または塊茎で、地下に垂直の匍匐茎をもつ。茎は非常に短いか、長くて直立、またはよじ登る。葉は根生してロゼットになるか、または互生し、葉柄があり、 腺のあるパピラ状の毛がある。花は両性、放射相称。 萼片は(4~)5(または6~12)個、離生または基部で合着し、宿存する。花弁は5個、離生、花後に閉じてゆがみ、宿存する。 雄しべは花弁と同数。子房は上位、1室、心皮は2~5個。側膜胎座。花柱は(2~)3~5(~6)個、離生または基部で合着、連結、宿存する。 蒴果は裂開し、2~6バルブ。 種子は多数、楕円形または線形、ときに翼がある。英名はsundew。
世界に約100種あり、熱帯からツンドラ地域に分布し、特にオーストラリアに集中している。外来モウセンゴケ属の全種が日本の重点対策外来種に選定されている。
オーストラリア(クイーンズランド州)原産。Lance-leaf sundew。愛知県で野生化したものが確認されたことがある。
葉を拡大すると粘液性腺(mucilaginous glands)が見える。熱帯性の多年草で、根生のロゼットに長い剣形の葉をつける。他のほとんどのモウセンゴケ属の種と同様に、葉は獲物を捕らえる粘液(prey-capturing glue)を分泌する有柄で粘着性のある触手(tentacles)をもつ。この種の触手の動きは、他のドロセラとは異なり、最小限であり、ほとんどわからないほど遅い。葉は狭披針形、普通、長さ10~25㎝×幅7~10㎜、葉の下面は無毛で、葉柄は非常に短いか、または無い。花序は片側性の総状花序(先端が巻いた花茎の外側だけに花をつける鎌形花序)で、長さ35㎝以下。花は多数つき、放射相称、赤色、赤橙色、紅紫色またはクリーム色。花弁は5個、先が尖り、完璧な五角形になる。広がる根から新し不定芽を出し、無性生殖によって急速に繁殖し、大きな塊になる。この種の二倍体染色体数は2n=30であるが、栽培種は2n=28と報告されいる。花期は6~11月(オーストラリア)。
品種) 'Giant'
2 Drosera anglica Huds. ナガバノモウセンゴケ 長葉の毛氈苔
synonym Drosera longifolia L.
北半球に広く分布する。英名はlong-leaved sundewGreat , English sundew , droséra d'Angleterre , Great sundew。
冬の休息芽(hibernaculae)を作り、ロゼットは直径2~6㎝になる。茎の基部に球茎はもたない。葉は直立する。托葉は全体が葉柄につき、長さ5mm、縁は上部の1/2が房状へりになる。葉柄は葉身から分化し、長さ3~7㎝、無毛またはまばらに腺毛がある。葉身は倒卵形~長いへら形、長さ1.5~3.5(~5)㎝×幅3~7㎜。 花序は花が1~12個つく。花茎は長さ3~25㎝、無毛。 花は直径8~10㎜。 萼片は基部で合着し、長円形、長さ5~6㎜×幅4~5㎜、腺のある細かい小歯がある。花弁は普通、白色、まれに帯ピンク色、へら形、長さ5~6㎜×幅2~3.5㎜。蒴果は長さ4~6㎜、<細かいいぼ状突起がある>。 種子は黒色、S字状紡錘形、長さ1~1.5㎜、<長さは幅の1~2倍>、縦に条線状の小区画(striate-areolate)がある。 2n=40。花期は6~8月。
3 Drosera binata Labill. サスマタモウセンゴケ
synonym Drosera pedata Pers. ヨツマタモウセンゴケ
オーストラリア、ニュージーランド原産。英名はcobweb plant。
品種) 'Extrema' , 'Giant'
4 Drosera burmannii Vahl クルマバモウセンゴケ
中国、台湾、東アジア、東南アジア、オーストラリア原産。中国名は锦地罗 jin di luo。英名はsundew
1年草または2年草、ひげ根はほとんど無い。茎は分枝せず、非常に短く、日陰で成長する場合は長さ1㎝になり、地下に塊茎を作らない。葉は平らなロゼットになり、ほぼ無柄または葉柄がある。托葉は長さ3~7㎜、基部で葉柄と合着し、3裂する。裂片は不規則に細かく切れ込む。葉柄は短いかまたは無い。葉身は黄緑色~赤色~赤紫色、くさび形~倒卵状へら形、長さ6~10㎜×幅5~7㎜、基部は漸尖し、腺のある毛状突起があるかまたは無毛、先は房状へりになる。花序は花茎があり、総状花序は1または2個、長さ6~22㎝、無毛、または白色~赤色~赤紫色の腺があり、花は2~19個つく。苞は単純で、矛形、長さ1~3mm。花柄は直立し、長さ1~7mm。萼片は5個、基部で統合し、薄緑色、赤色、または赤紫色、狭長円形、長さ2~3㎜、条線があり、いぼ状突起があり、内側に短い腺毛と白色の腺がある。花弁は白色~薄赤色~赤紫色、倒卵形、長さ約4㎜×幅2~3㎜。雄しべは5本、長さ約3㎜。子房はほぼ球形、無毛、胎座は5(または6)個。花柱は5(または6)個、糸状、長さ2~3㎜、内向きに曲がる。柱頭は歯状。蒴果は5または6バルブ。種子は暗褐色~黒色、脈がある。花期および果期は通年。2n=20。
品種) 'Humpty Doo'
5 Drosera callistos N.G.Marchant & Lowrie ドロセラ・カリストス
オーストラリア(西オーストラリア州)原産。英名はpygmy sundew , orange pygmy drosera。
品種) 'Brookton'
6 Drosera capensis L. アフリカナガバノモウセンゴケ
南アフリカ原産。英名は Cape sundew。
多年草。初め、細長い紐状の葉を多数、根生し、直径18~25㎝のロゼットをつくる。茎は次第に茎が立ち上がり、高さ約5㎝以下、基部は木質の根茎になり、根がよく発達する。葉は茎に互生し、明瞭な葉柄がある。葉柄は長さ3~10㎝、葉身よりやや幅狭く、中央に浅い縦溝がある。葉身は線形~線状スプーン形、長さ3~6㎝×幅3~4㎜、葉の上面には虫を捕らえる粘液を分泌する赤色の腺毛(触手:tentacles)を密生する。茎の下部は枯れた葉に覆われる。虫が葉に乗ると葉は大きく折り畳んで虫を包捕らえる。花茎は1本、長さ15~25㎝、頂生の総状花序に花が5~40個つく。花は片側性、下から開花し、蕾は下を向く。花はピンク藤色、直径約2㎝。花弁はくさび形、長さ7~11㎜×幅5~8mm。花柱は3本、基部で2分岐する。果実は蒴果、種子は小さく、黒色。花期は5~6月。
品種) 'Albino' , 'Bainskloof' , 'Beet' , 'Big Pink' , 'Montagu Pass' , 'Narrow Red Leaf' , 'Narrow Leaf' , 'Triffid Rose' , 'Wide Leaf'
7 Drosera indica L.
中国、台湾、東アジア、東南アジア、アフリカ、オーストラリア原産。中国名は长叶茅膏菜 chang ye mao gao cai。 以前は日本のナガバノイシモチソウと同じと考えられていたが、現在は別種とされている。
1年草、ひげ根がある。茎は枝分かれしておらず、直立または平伏し、長さ2~50㎝、地下に塊茎を形らず、短い腺毛がある。葉は茎葉、互生し、まばら。托葉は無または減じて毛のようになる。葉柄は長さ5~10mm、扁平または狭く、無毛。葉身は単葉、薄緑色または赤色、細い線形、長さ2~12㎝×幅1~3mm、有毛または無毛、先は鋭形。花序は腋生または葉に対生し、長さ6~50㎝、腺がある。総状花序は花が1~30個つく、花序柄は長さ12cm以下。苞は線形、長さ6~8mm。花柄は長さ0.6-1.5cm。萼片は5個、基部近くで統合し、黄緑色、披針形~狭長円形、長さ3~5mm×1~2mm、腺があり、縁は全縁。花弁は白色、薄赤色、橙色、または赤紫色、倒卵形~倒披針形、長さ5~10mm×幅3~4mm、脈がある。雄しべは5本、長さ3~5mm、パピラがある。子房は円柱形、倒卵形、またはほぼ球形、長さ1~2mm。胎座は3個。花柱は3本、基部近くまで深く2分岐し、普通、内向きに曲がる。柱頭は単純、長さ2~3mm。蒴果は球状卵形、3バルブがあり、長さ4~6mm。種子は黒色、小さく、脈が太く、浅い溝がある。花期および果期は通年。2n=28。
8 Drosera intermedia Hayne ナガエノモウセンゴケ
ヨーロッパ、トルコ、北アメリカ、南アメリカ原産。英名はspoonleaf sundew
品種) 'Cuba'
9 Drosera leucoblasta Benth.
オーストラリア(西オーストラリア州)原産。英名はwheel sundew。
品種) 'Brookton Form'
10 Drosera makinoi Masam. シロバナナガバノイシモチソウ 白花長葉の石持草
synonym Drosera indica L. var. makinoi (Masam.) Tamura
synonym Drosera indica L. var. albiflora (Makino) Makino
synonym Drosera indica L. f. albiflora Makino
日本固有種(愛知県(壱町田湿地)、茨城県、栃木県)
2007年からの研究で、愛知教育大の渡辺幹男教授が白花は赤花とは別種であることを突き止めた。種子の模様が違い、遺伝子配列が大きく違い、互いの交配ができない。種名は過去に命名され、synonymとされていたDrosera makinoi Masam.が採用された。赤花もDrosera indica とは違い日本固有種であることが判明している。
1年草。高さ7~20㎝。葉は長さ4~7㎝、腺毛が密生する。腺毛から出る粘液は芳香をがあり、昆虫を誘引捕捉する。葉に対生し、長さ約5㎝の総状花序を伸ばし、まばらに3~7個の花をつける。花弁は5個、白色、長さ6~8㎜の長楕円形。雄しべ5個。花柱は3個、先が2深裂。花期は7~8月。
11 Dionaea muscipula Ellis ハエジゴク 蝿地獄
北アメリカ原産。英名はvenus fly trap , venus flytrap。別名はハエトリグサ。
多年草、高さ15~45cmの食虫植物。葉は直径20㎝以下のロゼットになり、葉柄は扁平で、葉身は緑色、2裂し、裂片は向かい合って2枚貝のような虫を捕らえるトラップになる。トラップは直径約2cm、中央がしばしば赤みがかり、トラップの側面には、トラップが閉じるとかみ合う14~20本の硬い櫛のような剛毛が並ぶ。花茎は無葉、長さ15~45cm、。花は頂生の散形花序に花が5~10個、上向きにつく。花は直径約1㎝、白色、放射相称。萼片は5個。花弁は5個、長さ約12㎜、白色、緑色の細い条線がある。雄しべは15~20本。雌しべは1個。果実は球形の蒴果。種子は小さく、多数、黒色。花期は5月下旬~6月。
12 Drosera natalensis Diels
南アフリカ、スワジランド、ジンバブエ、マダガスカル原産。英名はrosette sundew。
品種) 'Alba'
13 Drosera peltata Thunb. イシモチソウ 石持草
synonym Drosera lunata Buch.-Ham. ex DC. イシモチソウ
synonym Drosera peltata Thunb. var. nipponica (Masam.) Ohwi
synonym Drosera peltata Thunb. var. lunata (Buch.-Ham. ex DC.) C.B.Clarke
中国、台湾、東アジア、東南アジア、オーストラリア、ニュージーランド原産。中国名は茅膏菜 mao gao cai。 多年草、初夏の数ヶ月間だけ気中(水上)部分を形成する。茎は直立またはよじ登り、上部で分枝し、地下に長さ9~32㎝×直径8㎜の塊茎を形り、無毛または黒色のパピラ状の腺がある。根生葉は密に輪生し、または一部の個体群には無く、黄緑色~緑色。葉柄は長さ2~8mm。葉身は盾状、円形~ほぼ円形、長さ2~4㎜×幅6~8㎜、いくつかの葉は小さくなり、線形、長さ約2mm。茎葉は互生し、離れ、 無托葉、黄緑色。葉柄は長さ0.8~1.3cm。葉身は、盾状、三日月形または半円形、長さ2~3㎜×幅4~5㎜、縁に腺毛がある。花序は頂生、さそり形花序(cincinnus)、長さ2~6㎝、花が3~22個つく。苞はくさび形~倒披針形または錐形。花柄は長さ0.6~2cm。萼片は5~7個、基部近くで統合し、黄緑色、披針形~卵形、長さ2~4㎜×幅約1.5㎜、無毛~腺毛があり、先は5~7裂する。花弁は普通、白色、まれにピンク色または赤色、長円状くさび形、長さ4~6㎜×幅2~3mm。雄しべは5本、長さ2~4mm。子房はほぼ球形、直径約1.5mm。胎座は3個。花柱は3本、2~5分岐し、長さ約0.8㎜。柱頭は2または3裂する。蒴果はほぼ球形、(2~)3(~5)バルブがあり、長さ2~4㎜。種子は楕円状卵形~球形、長さ約0.4㎜、脈は浅い溝がある。花期および果期は6~9月。2n=16(オーストラリア産) , 32, 40(日本産)。
14 Drosera regia Stephens
南アフリカ原産。英名はking sundew
品種) 'Big Easy'
15 Drosera rotundifolia L. モウセンゴケ 毛氈苔
北半球温帯地域に広く分布。日本では北海道、本州、四国、九州の湿地に分布する。英名はround-leaved sundew , common sundew。中国名は圆叶茅膏菜 yuan ye mao gao cai。食虫植物の一種で、葉にある粘毛から粘液を分泌して虫を捕獲する。
多年草、ひげ根はほとんど無い。茎は分枝せず、短い。ミズゴケ中で成長すると、ときに長さ5㎝までになり、冬の間にシュートの先端に球根を形成し、地下には塊茎を形成しない。葉は根生し、密につき、長い葉柄があるスプーン形。托葉は5~7裂し(基部が楕円形、先が細く5裂し、側部の左右に短い2裂片がつく)、長さ6~8㎜、薄膜質、葉柄の基部に接してつく。葉柄は扁平、長さ1~7㎝。葉身は黄緑色~緑色~赤色、円形、ほぼ円形、または弱い腎形、長さ3~10㎜×幅5~20㎜、赤く長い頭状の粘着性のある腺毛がある。花序は直立し、花茎状、細く長さ8.5~30㎝、無毛、さそり形花序(cincinnus(pl. cincinni)扇状集散花序)は1または2個、花が3~30個つく。苞は錐形~線形で小さい。花柄は長さ1~3mm。萼片は5個、基部近くで合着し、緑色、卵形から長円形、約・長さ4㎜×幅1.5㎜、腺があり、縁は鋸歯縁。花弁は白色またはピンク色を帯び、へら形、長さ5~6㎜×幅約3㎜。雄しべは5本、長さ4~5mm。子房は楕円状球形、長さ約3mm、胎座は3個。花柱は3~4本、基部まで深裂し、こん棒形。柱頭は1個。蒴果は3または4バルブ。種子は楕円状球形、種皮は袋のような形で、両端が伸びる。 2n = 20。花期は6~8月。
16 Drosera scorpioides Planch.
オーストラリア(西オーストラリア州)原産。英名はshaggy sundew。
品種) 'Giant'
17 Drosera spatulata Labill. コモウセンゴケ 小毛氈苔
日本、中国、台湾、マレーシア、インドネシア、フィリピン、オーストラリア東部(タスマニアを含む)、太平洋諸島(ニュージーランド)原産。中国名は匙叶茅膏菜 chi ye mao gao cai。
多年草、1または2本の黒色のひげ根がある。ミズゴケ中で成長するときは茎が短く、ときに長さ0.5㎝までになり、温暖な気候の冬の間はしっかりとロゼット状の球根を形成し、地下に塊茎を形らない。葉は密で平らなロゼットを形成し、若いときは托葉に向かって渦巻き状に1つ折りになり、葉柄と葉身の境が不明瞭なヘラ形。托葉は薄い赤色、狭く、長さ4~8㎜、薄膜質、先は3裂し、側裂片が細くて長く、中裂片は短く、先がさらに3裂し、全体として繊維状、剛毛がある。葉柄は扁平、上部が徐々に広がり、長さ8~10㎜、腺毛がある。葉身は倒卵形、へら形、またはくさび形、長さ0.9~2.8㎝×2~5㎜、腺毛がある。花序は1~6個、花茎状、ときに分枝し、長さ4~25㎝。花序柄には密に腺毛がある。総状花序は片側に、花が10~20個つく。苞は錐形~線状披針形、長さ2㎜以上、3分裂する。花柄は長さ0.5~3㎜。萼片は5個、基部で結合、緑色、披針形または狭卵形、長さ1.5~4㎜、縁は全縁または1個の歯があり、外面に密に腺毛がある。花弁は白色~ピンク色~赤紫色、倒卵形、長さ2~6㎜またはそれ以上。雄しべは5個、長さ2.5~6㎜。花糸は扁平、長さ約5㎜。葯は長円形、長さ約1.5mm。子房は楕円状球形。胎座は3(または4)個。花柱は3(または4)本、長さ約2.5㎜、各花柱基部まで深く2分岐し、ときに、再び上部で分岐する。柱頭は単純、宿存する。蒴果は3(または4)バルブがあり、長さ約1.5㎜。バルブは倒三角形、内向きに曲がる。種子は黒色、卵形または楕円形、小さい、脈は太く、浅い溝がある。花期および果期は3~9月2n = 20、40(日本)、60。
17-1 Drosera spatulata Labill. f. chionantha K.Nakaj. シロバナコモウセンゴケ
白花品種。
18 Drosera tokaiensis (Komiya et C.Shibata) T.Nakam. et K.Ueda トウカイコモウセンゴケ 東海小毛氈苔
18-1 Drosera tokaiensis (Komiya et C.Shibata) T.Nakam. et K.Ueda subsp. tokaiensis トウカイコモウセンゴケ 東海小毛氈苔
synonym Drosera spatulata Labill. subsp. tokaiensis Komiya et C.Shibata
日本固有種(本州の北陸地方、東海地方、近畿地方~中国地方東部、四国、九州)。酸性の湿地やその周辺、湧水のある崖地などに生える。別名は関西型コモウセンゴケ。
トウカイコモウセンゴケは1950年代後半ごろからコモウセンゴケの関西型といわれてきた。新分類群として記載されたのは1978年である。東海地方の固有種とされ、葉形がコモウセンゴケはヘラ型であり、トウカイコモウセンゴケはスプーン型とされてきた。その後の研究で広く分布することが判明し、1991年にトウカイコモウセンゴケが標準和名として提唱され、認められた。トウカイコモウセンゴケはモウセンゴケ 2n=20とコモウセンゴケ2n=40 との雑種起源の複2倍体で、2n=60で稔性がある。形態はモウセンゴケとコモウセンゴケの中間であり、葉形については近畿地方などではヘラ型のものも多く、両者の形態上の識別点にはならない。形態上の識別点として有効なのは托葉、種子の長さであり、生育場所もやや異なる。モウセンゴケは水に浸かっているようなところに生え、コモウセンゴケは比較的乾燥しているところに生える。トウカイコモウセンゴケはこれらの中間の水分量のやや多いところに生える。
多年草。茎はごく短く、葉は根出状に出てロゼットを形成し、葉柄との境界はあまりはっきりしない。葉はスプーン形~へら形、葉柄も含めて長さ1~2cm[約・長さ11.0㎜×幅3.6㎜、腺毛のある部分の長さ6.1㎜]ほどで、基部はくさび形、漸尖して葉柄状になり、葉の表面には全体に赤色の長い腺毛があるが、基部の葉柄状部には無く、腺毛の生える部分の長さは葉全長の長さの約57%である。腺毛は赤色で、葉身そのものも赤色を帯びる。托葉は薄膜質、コモウセンゴケと同じように5裂し、裂片が不規則に細裂する。花は鮮やかなピンク色、大きさはコモウセンゴケよりやや大きい。萼片は狭卵形から卵形、鈍頭。種子は茶褐色~暗褐色、紡錘形、長さ0.5~0.6mm×幅0.16~0.22mm(幡豆町のものは長さ約0.3㎜)。2n=60。花期は6~9(~11)月。
葉の長さは葉柄部分を含み、葉の腺毛部分は葉に腺毛の生える部分の長さ。
※ 参考5~7
18-2 Drosera tokaiensis (Komiya et C.Shibata) T.Nakam. et K.Ueda subsp. hyugaensis Seno ヒュウガコモウセンゴケ
九州で発見されたモウセンゴケとコモウセンゴケの新たな自然雑種、2n= 30。 葉身、托葉、花茎の各形態的特徴が異なり、不稔である。葉の長さ約15.9㎜×幅約5.8㎜、腺毛部分の長さ約6.7㎜。形態がトウカイコモウセンゴケよりコモウセンゴケにより近い。
19 Drosera toyoakensis M. Watanabe ナガバノイシモチソウ 長葉の石持草
日本固有種(愛知県、三重県)。自生地は少なく、保護地にしか残存しない。愛知県内ではこの豊橋市内のほか豊明市内と白花の壱町田湿地の3箇所に限られる。日本のナガバノイシモチソウは中国、台湾などアジア、アフリカ、オーストラリアに広く分布するDrosera indicaであると長い間、考えられてきたが、最近の研究で日本固有種であることが解明され、新しい種名が与えられた(2013年)。白花も別種であり、別の名が与えられている。
1年草。高さ7~35㎝。4月下旬に発芽する。葉は互生し、長さ3~10㎝、幅0.5~3㎜の狭線形、先は線状になる。葉に緑色の腺毛があり、腺毛の先端から粘液を出し、付着した虫を腺毛で捕らえ、消化酵素を出して消化する。葉に対生して長さ4~12㎝の総状花序を伸ばし、花を3~10個つける。花は直径10~12㎜、淡紅色、花弁は5個、長さ6~8㎜、へら状楕円形。萼片は長さ約3㎜、幅約1㎜、狭楕円形。雄しべ5個。花柱は3個、先が2深裂。蒴果は約140個の種子を入れ、3裂開する。種子は直径0.2~0.4㎜。花期は7~10月。
20 Drosera x obovata Mert. et W.D.J.Koch サジバモウセンゴケ 匙葉毛氈苔
モウセンゴケとナガバノモウセンゴケの自然交雑種。
21 Drosera 'Nagamoto' ナガモトモウセンゴケ
ナガバノモウセンゴケ (Drosera longifolia)♀×関西型コモウセンゴケ♂の人口交雑種。2n=50,43。
22 その他ハイブリッド
品種) 'Andromeda' , 'Ivan's Paddle' , 'Marston Dragon' , 'Rhodesian Beauty'
Drosera
Drosera
Drosera
四国の力ンサイガタコモウセンゴケ
東海丘陵要素の植物地理 : II.トウカイコモウセンゴケの分類学的研究
宮崎県産モウセンゴケ属の新雑種,ヒュウガコモウセンゴケ
九州新産のトウカイコモウセンゴケとその特徴
Drosera adelae F.Muell.
多年草、ひげ根はほとんど無い。茎は分枝せず、短い。ミズゴケ中で成長すると、ときに長さ5㎝までになり、冬の間にシュートの先端に球根を形成し、地下には塊茎を形成しない。葉は根生し、密につき、長い葉柄があるスプーン形。托葉は5~7裂し(基部が楕円形、先が細く5裂し、側部の左右に短い2裂片がつく)、長さ6~8㎜、薄膜質、葉柄の基部に接してつく。葉柄は扁平、長さ1~7㎝。葉身は黄緑色~緑色~赤色、円形、ほぼ円形、または弱い腎形、長さ3~10㎜×幅5~20㎜、赤く長い頭状の粘着性のある腺毛がある。花序は直立し、花茎状、細く長さ8.5~30㎝、無毛、さそり形花序(cincinnus(pl. cincinni)扇状集散花序)は1または2個、花が3~30個つく。苞は錐形~線形で小さい。花柄は長さ1~3mm。萼片は5個、基部近くで合着し、緑色、卵形から長円形、約・長さ4㎜×幅1.5㎜、腺があり、縁は鋸歯縁。花弁は白色またはピンク色を帯び、へら形、長さ5~6㎜×幅約3㎜。雄しべは5本、長さ4~5mm。子房は楕円状球形、長さ約3mm、胎座は3個。花柱は3~4本、基部まで深裂し、こん棒形。柱頭は1個。蒴果は3または4バルブ。種子は楕円状球形、種皮は袋のような形で、両端が伸びる。 2n=20。花期は6~8月。
トウカイコモウセンゴケは紅花で、葉柄が短く、葉が立ち上がらない。典型的な「中間湿原」の長ノ山湿原ではトウカイコモウセンゴケは見られず、白花のモウセンゴケだけである。
モウセンゴケ属
family Droseraceae - genus Drosera多年草または一年草、根茎をもち、根はひげ根または塊茎で、地下に垂直の匍匐茎をもつ。茎は非常に短いか、長くて直立、またはよじ登る。葉は根生してロゼットになるか、または互生し、葉柄があり、 腺のあるパピラ状の毛がある。花は両性、放射相称。 萼片は(4~)5(または6~12)個、離生または基部で合着し、宿存する。花弁は5個、離生、花後に閉じてゆがみ、宿存する。 雄しべは花弁と同数。子房は上位、1室、心皮は2~5個。側膜胎座。花柱は(2~)3~5(~6)個、離生または基部で合着、連結、宿存する。 蒴果は裂開し、2~6バルブ。 種子は多数、楕円形または線形、ときに翼がある。英名はsundew。
世界に約100種あり、熱帯からツンドラ地域に分布し、特にオーストラリアに集中している。外来モウセンゴケ属の全種が日本の重点対策外来種に選定されている。
モウセンゴケ属の主な種と園芸品種
1 Drosera adelae F.Muell. ツルギバモウセンゴケオーストラリア(クイーンズランド州)原産。Lance-leaf sundew。愛知県で野生化したものが確認されたことがある。
葉を拡大すると粘液性腺(mucilaginous glands)が見える。熱帯性の多年草で、根生のロゼットに長い剣形の葉をつける。他のほとんどのモウセンゴケ属の種と同様に、葉は獲物を捕らえる粘液(prey-capturing glue)を分泌する有柄で粘着性のある触手(tentacles)をもつ。この種の触手の動きは、他のドロセラとは異なり、最小限であり、ほとんどわからないほど遅い。葉は狭披針形、普通、長さ10~25㎝×幅7~10㎜、葉の下面は無毛で、葉柄は非常に短いか、または無い。花序は片側性の総状花序(先端が巻いた花茎の外側だけに花をつける鎌形花序)で、長さ35㎝以下。花は多数つき、放射相称、赤色、赤橙色、紅紫色またはクリーム色。花弁は5個、先が尖り、完璧な五角形になる。広がる根から新し不定芽を出し、無性生殖によって急速に繁殖し、大きな塊になる。この種の二倍体染色体数は2n=30であるが、栽培種は2n=28と報告されいる。花期は6~11月(オーストラリア)。
品種) 'Giant'
2 Drosera anglica Huds. ナガバノモウセンゴケ 長葉の毛氈苔
synonym Drosera longifolia L.
北半球に広く分布する。英名はlong-leaved sundewGreat , English sundew , droséra d'Angleterre , Great sundew。
冬の休息芽(hibernaculae)を作り、ロゼットは直径2~6㎝になる。茎の基部に球茎はもたない。葉は直立する。托葉は全体が葉柄につき、長さ5mm、縁は上部の1/2が房状へりになる。葉柄は葉身から分化し、長さ3~7㎝、無毛またはまばらに腺毛がある。葉身は倒卵形~長いへら形、長さ1.5~3.5(~5)㎝×幅3~7㎜。 花序は花が1~12個つく。花茎は長さ3~25㎝、無毛。 花は直径8~10㎜。 萼片は基部で合着し、長円形、長さ5~6㎜×幅4~5㎜、腺のある細かい小歯がある。花弁は普通、白色、まれに帯ピンク色、へら形、長さ5~6㎜×幅2~3.5㎜。蒴果は長さ4~6㎜、<細かいいぼ状突起がある>。 種子は黒色、S字状紡錘形、長さ1~1.5㎜、<長さは幅の1~2倍>、縦に条線状の小区画(striate-areolate)がある。 2n=40。花期は6~8月。
3 Drosera binata Labill. サスマタモウセンゴケ
synonym Drosera pedata Pers. ヨツマタモウセンゴケ
オーストラリア、ニュージーランド原産。英名はcobweb plant。
品種) 'Extrema' , 'Giant'
4 Drosera burmannii Vahl クルマバモウセンゴケ
中国、台湾、東アジア、東南アジア、オーストラリア原産。中国名は锦地罗 jin di luo。英名はsundew
1年草または2年草、ひげ根はほとんど無い。茎は分枝せず、非常に短く、日陰で成長する場合は長さ1㎝になり、地下に塊茎を作らない。葉は平らなロゼットになり、ほぼ無柄または葉柄がある。托葉は長さ3~7㎜、基部で葉柄と合着し、3裂する。裂片は不規則に細かく切れ込む。葉柄は短いかまたは無い。葉身は黄緑色~赤色~赤紫色、くさび形~倒卵状へら形、長さ6~10㎜×幅5~7㎜、基部は漸尖し、腺のある毛状突起があるかまたは無毛、先は房状へりになる。花序は花茎があり、総状花序は1または2個、長さ6~22㎝、無毛、または白色~赤色~赤紫色の腺があり、花は2~19個つく。苞は単純で、矛形、長さ1~3mm。花柄は直立し、長さ1~7mm。萼片は5個、基部で統合し、薄緑色、赤色、または赤紫色、狭長円形、長さ2~3㎜、条線があり、いぼ状突起があり、内側に短い腺毛と白色の腺がある。花弁は白色~薄赤色~赤紫色、倒卵形、長さ約4㎜×幅2~3㎜。雄しべは5本、長さ約3㎜。子房はほぼ球形、無毛、胎座は5(または6)個。花柱は5(または6)個、糸状、長さ2~3㎜、内向きに曲がる。柱頭は歯状。蒴果は5または6バルブ。種子は暗褐色~黒色、脈がある。花期および果期は通年。2n=20。
品種) 'Humpty Doo'
5 Drosera callistos N.G.Marchant & Lowrie ドロセラ・カリストス
オーストラリア(西オーストラリア州)原産。英名はpygmy sundew , orange pygmy drosera。
品種) 'Brookton'
6 Drosera capensis L. アフリカナガバノモウセンゴケ
南アフリカ原産。英名は Cape sundew。
多年草。初め、細長い紐状の葉を多数、根生し、直径18~25㎝のロゼットをつくる。茎は次第に茎が立ち上がり、高さ約5㎝以下、基部は木質の根茎になり、根がよく発達する。葉は茎に互生し、明瞭な葉柄がある。葉柄は長さ3~10㎝、葉身よりやや幅狭く、中央に浅い縦溝がある。葉身は線形~線状スプーン形、長さ3~6㎝×幅3~4㎜、葉の上面には虫を捕らえる粘液を分泌する赤色の腺毛(触手:tentacles)を密生する。茎の下部は枯れた葉に覆われる。虫が葉に乗ると葉は大きく折り畳んで虫を包捕らえる。花茎は1本、長さ15~25㎝、頂生の総状花序に花が5~40個つく。花は片側性、下から開花し、蕾は下を向く。花はピンク藤色、直径約2㎝。花弁はくさび形、長さ7~11㎜×幅5~8mm。花柱は3本、基部で2分岐する。果実は蒴果、種子は小さく、黒色。花期は5~6月。
品種) 'Albino' , 'Bainskloof' , 'Beet' , 'Big Pink' , 'Montagu Pass' , 'Narrow Red Leaf' , 'Narrow Leaf' , 'Triffid Rose' , 'Wide Leaf'
7 Drosera indica L.
中国、台湾、東アジア、東南アジア、アフリカ、オーストラリア原産。中国名は长叶茅膏菜 chang ye mao gao cai。 以前は日本のナガバノイシモチソウと同じと考えられていたが、現在は別種とされている。
1年草、ひげ根がある。茎は枝分かれしておらず、直立または平伏し、長さ2~50㎝、地下に塊茎を形らず、短い腺毛がある。葉は茎葉、互生し、まばら。托葉は無または減じて毛のようになる。葉柄は長さ5~10mm、扁平または狭く、無毛。葉身は単葉、薄緑色または赤色、細い線形、長さ2~12㎝×幅1~3mm、有毛または無毛、先は鋭形。花序は腋生または葉に対生し、長さ6~50㎝、腺がある。総状花序は花が1~30個つく、花序柄は長さ12cm以下。苞は線形、長さ6~8mm。花柄は長さ0.6-1.5cm。萼片は5個、基部近くで統合し、黄緑色、披針形~狭長円形、長さ3~5mm×1~2mm、腺があり、縁は全縁。花弁は白色、薄赤色、橙色、または赤紫色、倒卵形~倒披針形、長さ5~10mm×幅3~4mm、脈がある。雄しべは5本、長さ3~5mm、パピラがある。子房は円柱形、倒卵形、またはほぼ球形、長さ1~2mm。胎座は3個。花柱は3本、基部近くまで深く2分岐し、普通、内向きに曲がる。柱頭は単純、長さ2~3mm。蒴果は球状卵形、3バルブがあり、長さ4~6mm。種子は黒色、小さく、脈が太く、浅い溝がある。花期および果期は通年。2n=28。
8 Drosera intermedia Hayne ナガエノモウセンゴケ
ヨーロッパ、トルコ、北アメリカ、南アメリカ原産。英名はspoonleaf sundew
品種) 'Cuba'
9 Drosera leucoblasta Benth.
オーストラリア(西オーストラリア州)原産。英名はwheel sundew。
品種) 'Brookton Form'
10 Drosera makinoi Masam. シロバナナガバノイシモチソウ 白花長葉の石持草
synonym Drosera indica L. var. makinoi (Masam.) Tamura
synonym Drosera indica L. var. albiflora (Makino) Makino
synonym Drosera indica L. f. albiflora Makino
日本固有種(愛知県(壱町田湿地)、茨城県、栃木県)
2007年からの研究で、愛知教育大の渡辺幹男教授が白花は赤花とは別種であることを突き止めた。種子の模様が違い、遺伝子配列が大きく違い、互いの交配ができない。種名は過去に命名され、synonymとされていたDrosera makinoi Masam.が採用された。赤花もDrosera indica とは違い日本固有種であることが判明している。
1年草。高さ7~20㎝。葉は長さ4~7㎝、腺毛が密生する。腺毛から出る粘液は芳香をがあり、昆虫を誘引捕捉する。葉に対生し、長さ約5㎝の総状花序を伸ばし、まばらに3~7個の花をつける。花弁は5個、白色、長さ6~8㎜の長楕円形。雄しべ5個。花柱は3個、先が2深裂。花期は7~8月。
11 Dionaea muscipula Ellis ハエジゴク 蝿地獄
北アメリカ原産。英名はvenus fly trap , venus flytrap。別名はハエトリグサ。
多年草、高さ15~45cmの食虫植物。葉は直径20㎝以下のロゼットになり、葉柄は扁平で、葉身は緑色、2裂し、裂片は向かい合って2枚貝のような虫を捕らえるトラップになる。トラップは直径約2cm、中央がしばしば赤みがかり、トラップの側面には、トラップが閉じるとかみ合う14~20本の硬い櫛のような剛毛が並ぶ。花茎は無葉、長さ15~45cm、。花は頂生の散形花序に花が5~10個、上向きにつく。花は直径約1㎝、白色、放射相称。萼片は5個。花弁は5個、長さ約12㎜、白色、緑色の細い条線がある。雄しべは15~20本。雌しべは1個。果実は球形の蒴果。種子は小さく、多数、黒色。花期は5月下旬~6月。
12 Drosera natalensis Diels
南アフリカ、スワジランド、ジンバブエ、マダガスカル原産。英名はrosette sundew。
品種) 'Alba'
13 Drosera peltata Thunb. イシモチソウ 石持草
synonym Drosera lunata Buch.-Ham. ex DC. イシモチソウ
synonym Drosera peltata Thunb. var. nipponica (Masam.) Ohwi
synonym Drosera peltata Thunb. var. lunata (Buch.-Ham. ex DC.) C.B.Clarke
中国、台湾、東アジア、東南アジア、オーストラリア、ニュージーランド原産。中国名は茅膏菜 mao gao cai。 多年草、初夏の数ヶ月間だけ気中(水上)部分を形成する。茎は直立またはよじ登り、上部で分枝し、地下に長さ9~32㎝×直径8㎜の塊茎を形り、無毛または黒色のパピラ状の腺がある。根生葉は密に輪生し、または一部の個体群には無く、黄緑色~緑色。葉柄は長さ2~8mm。葉身は盾状、円形~ほぼ円形、長さ2~4㎜×幅6~8㎜、いくつかの葉は小さくなり、線形、長さ約2mm。茎葉は互生し、離れ、 無托葉、黄緑色。葉柄は長さ0.8~1.3cm。葉身は、盾状、三日月形または半円形、長さ2~3㎜×幅4~5㎜、縁に腺毛がある。花序は頂生、さそり形花序(cincinnus)、長さ2~6㎝、花が3~22個つく。苞はくさび形~倒披針形または錐形。花柄は長さ0.6~2cm。萼片は5~7個、基部近くで統合し、黄緑色、披針形~卵形、長さ2~4㎜×幅約1.5㎜、無毛~腺毛があり、先は5~7裂する。花弁は普通、白色、まれにピンク色または赤色、長円状くさび形、長さ4~6㎜×幅2~3mm。雄しべは5本、長さ2~4mm。子房はほぼ球形、直径約1.5mm。胎座は3個。花柱は3本、2~5分岐し、長さ約0.8㎜。柱頭は2または3裂する。蒴果はほぼ球形、(2~)3(~5)バルブがあり、長さ2~4㎜。種子は楕円状卵形~球形、長さ約0.4㎜、脈は浅い溝がある。花期および果期は6~9月。2n=16(オーストラリア産) , 32, 40(日本産)。
14 Drosera regia Stephens
南アフリカ原産。英名はking sundew
品種) 'Big Easy'
15 Drosera rotundifolia L. モウセンゴケ 毛氈苔
北半球温帯地域に広く分布。日本では北海道、本州、四国、九州の湿地に分布する。英名はround-leaved sundew , common sundew。中国名は圆叶茅膏菜 yuan ye mao gao cai。食虫植物の一種で、葉にある粘毛から粘液を分泌して虫を捕獲する。
多年草、ひげ根はほとんど無い。茎は分枝せず、短い。ミズゴケ中で成長すると、ときに長さ5㎝までになり、冬の間にシュートの先端に球根を形成し、地下には塊茎を形成しない。葉は根生し、密につき、長い葉柄があるスプーン形。托葉は5~7裂し(基部が楕円形、先が細く5裂し、側部の左右に短い2裂片がつく)、長さ6~8㎜、薄膜質、葉柄の基部に接してつく。葉柄は扁平、長さ1~7㎝。葉身は黄緑色~緑色~赤色、円形、ほぼ円形、または弱い腎形、長さ3~10㎜×幅5~20㎜、赤く長い頭状の粘着性のある腺毛がある。花序は直立し、花茎状、細く長さ8.5~30㎝、無毛、さそり形花序(cincinnus(pl. cincinni)扇状集散花序)は1または2個、花が3~30個つく。苞は錐形~線形で小さい。花柄は長さ1~3mm。萼片は5個、基部近くで合着し、緑色、卵形から長円形、約・長さ4㎜×幅1.5㎜、腺があり、縁は鋸歯縁。花弁は白色またはピンク色を帯び、へら形、長さ5~6㎜×幅約3㎜。雄しべは5本、長さ4~5mm。子房は楕円状球形、長さ約3mm、胎座は3個。花柱は3~4本、基部まで深裂し、こん棒形。柱頭は1個。蒴果は3または4バルブ。種子は楕円状球形、種皮は袋のような形で、両端が伸びる。 2n = 20。花期は6~8月。
16 Drosera scorpioides Planch.
オーストラリア(西オーストラリア州)原産。英名はshaggy sundew。
品種) 'Giant'
17 Drosera spatulata Labill. コモウセンゴケ 小毛氈苔
日本、中国、台湾、マレーシア、インドネシア、フィリピン、オーストラリア東部(タスマニアを含む)、太平洋諸島(ニュージーランド)原産。中国名は匙叶茅膏菜 chi ye mao gao cai。
多年草、1または2本の黒色のひげ根がある。ミズゴケ中で成長するときは茎が短く、ときに長さ0.5㎝までになり、温暖な気候の冬の間はしっかりとロゼット状の球根を形成し、地下に塊茎を形らない。葉は密で平らなロゼットを形成し、若いときは托葉に向かって渦巻き状に1つ折りになり、葉柄と葉身の境が不明瞭なヘラ形。托葉は薄い赤色、狭く、長さ4~8㎜、薄膜質、先は3裂し、側裂片が細くて長く、中裂片は短く、先がさらに3裂し、全体として繊維状、剛毛がある。葉柄は扁平、上部が徐々に広がり、長さ8~10㎜、腺毛がある。葉身は倒卵形、へら形、またはくさび形、長さ0.9~2.8㎝×2~5㎜、腺毛がある。花序は1~6個、花茎状、ときに分枝し、長さ4~25㎝。花序柄には密に腺毛がある。総状花序は片側に、花が10~20個つく。苞は錐形~線状披針形、長さ2㎜以上、3分裂する。花柄は長さ0.5~3㎜。萼片は5個、基部で結合、緑色、披針形または狭卵形、長さ1.5~4㎜、縁は全縁または1個の歯があり、外面に密に腺毛がある。花弁は白色~ピンク色~赤紫色、倒卵形、長さ2~6㎜またはそれ以上。雄しべは5個、長さ2.5~6㎜。花糸は扁平、長さ約5㎜。葯は長円形、長さ約1.5mm。子房は楕円状球形。胎座は3(または4)個。花柱は3(または4)本、長さ約2.5㎜、各花柱基部まで深く2分岐し、ときに、再び上部で分岐する。柱頭は単純、宿存する。蒴果は3(または4)バルブがあり、長さ約1.5㎜。バルブは倒三角形、内向きに曲がる。種子は黒色、卵形または楕円形、小さい、脈は太く、浅い溝がある。花期および果期は3~9月2n = 20、40(日本)、60。
17-1 Drosera spatulata Labill. f. chionantha K.Nakaj. シロバナコモウセンゴケ
白花品種。
18 Drosera tokaiensis (Komiya et C.Shibata) T.Nakam. et K.Ueda トウカイコモウセンゴケ 東海小毛氈苔
18-1 Drosera tokaiensis (Komiya et C.Shibata) T.Nakam. et K.Ueda subsp. tokaiensis トウカイコモウセンゴケ 東海小毛氈苔
synonym Drosera spatulata Labill. subsp. tokaiensis Komiya et C.Shibata
日本固有種(本州の北陸地方、東海地方、近畿地方~中国地方東部、四国、九州)。酸性の湿地やその周辺、湧水のある崖地などに生える。別名は関西型コモウセンゴケ。
トウカイコモウセンゴケは1950年代後半ごろからコモウセンゴケの関西型といわれてきた。新分類群として記載されたのは1978年である。東海地方の固有種とされ、葉形がコモウセンゴケはヘラ型であり、トウカイコモウセンゴケはスプーン型とされてきた。その後の研究で広く分布することが判明し、1991年にトウカイコモウセンゴケが標準和名として提唱され、認められた。トウカイコモウセンゴケはモウセンゴケ 2n=20とコモウセンゴケ2n=40 との雑種起源の複2倍体で、2n=60で稔性がある。形態はモウセンゴケとコモウセンゴケの中間であり、葉形については近畿地方などではヘラ型のものも多く、両者の形態上の識別点にはならない。形態上の識別点として有効なのは托葉、種子の長さであり、生育場所もやや異なる。モウセンゴケは水に浸かっているようなところに生え、コモウセンゴケは比較的乾燥しているところに生える。トウカイコモウセンゴケはこれらの中間の水分量のやや多いところに生える。
多年草。茎はごく短く、葉は根出状に出てロゼットを形成し、葉柄との境界はあまりはっきりしない。葉はスプーン形~へら形、葉柄も含めて長さ1~2cm[約・長さ11.0㎜×幅3.6㎜、腺毛のある部分の長さ6.1㎜]ほどで、基部はくさび形、漸尖して葉柄状になり、葉の表面には全体に赤色の長い腺毛があるが、基部の葉柄状部には無く、腺毛の生える部分の長さは葉全長の長さの約57%である。腺毛は赤色で、葉身そのものも赤色を帯びる。托葉は薄膜質、コモウセンゴケと同じように5裂し、裂片が不規則に細裂する。花は鮮やかなピンク色、大きさはコモウセンゴケよりやや大きい。萼片は狭卵形から卵形、鈍頭。種子は茶褐色~暗褐色、紡錘形、長さ0.5~0.6mm×幅0.16~0.22mm(幡豆町のものは長さ約0.3㎜)。2n=60。花期は6~9(~11)月。
トウカイコモウセンゴケとコモウセンゴケの比較
葉の長さは葉柄部分を含み、葉の腺毛部分は葉に腺毛の生える部分の長さ。
コモウセンゴケ | モウセンゴケ | トウカイコモウセンゴケ | |
---|---|---|---|
学名 | Drosera spatulata | Drosera rotundifolia | Drosera tokaiensis |
染色体数 | 2n=40 | 2n=20 | 2n=60 |
葉形 | へら形 | スプーン形 | スプーン形~へら形 |
葉の長さ平均 mm | 11 | 28 | 11(九州14) |
葉の幅平均 mm | 3.4 | 4.9 | 3.6(九州4.4) |
葉の腺毛部分の長さ/葉の長さ % | 73 | 24 | 57(九州55) |
托葉 | 基部が四角形、先が3裂し、側裂片2個は細くて中裂片より長く、中裂片は3裂する | 基部が楕円形、先が細く5裂し、側部の左右に短い2裂片がつく | 基部が四角形、5裂し、ときに、裂片がさらに不規則に細裂する。 |
花茎の長さ平均 ㎝ | 15 | 22 | 24(九州17) |
花序の長さ平均 ㎝ | 6.0(九州3.3) | 4.3 | 5.2(九州3.3) |
種子の長さ平均×幅平均 ㎜ | 0.37×0.16 | 1.36×0.28 | 0.54×0.19 |
18-2 Drosera tokaiensis (Komiya et C.Shibata) T.Nakam. et K.Ueda subsp. hyugaensis Seno ヒュウガコモウセンゴケ
九州で発見されたモウセンゴケとコモウセンゴケの新たな自然雑種、2n= 30。 葉身、托葉、花茎の各形態的特徴が異なり、不稔である。葉の長さ約15.9㎜×幅約5.8㎜、腺毛部分の長さ約6.7㎜。形態がトウカイコモウセンゴケよりコモウセンゴケにより近い。
19 Drosera toyoakensis M. Watanabe ナガバノイシモチソウ 長葉の石持草
日本固有種(愛知県、三重県)。自生地は少なく、保護地にしか残存しない。愛知県内ではこの豊橋市内のほか豊明市内と白花の壱町田湿地の3箇所に限られる。日本のナガバノイシモチソウは中国、台湾などアジア、アフリカ、オーストラリアに広く分布するDrosera indicaであると長い間、考えられてきたが、最近の研究で日本固有種であることが解明され、新しい種名が与えられた(2013年)。白花も別種であり、別の名が与えられている。
1年草。高さ7~35㎝。4月下旬に発芽する。葉は互生し、長さ3~10㎝、幅0.5~3㎜の狭線形、先は線状になる。葉に緑色の腺毛があり、腺毛の先端から粘液を出し、付着した虫を腺毛で捕らえ、消化酵素を出して消化する。葉に対生して長さ4~12㎝の総状花序を伸ばし、花を3~10個つける。花は直径10~12㎜、淡紅色、花弁は5個、長さ6~8㎜、へら状楕円形。萼片は長さ約3㎜、幅約1㎜、狭楕円形。雄しべ5個。花柱は3個、先が2深裂。蒴果は約140個の種子を入れ、3裂開する。種子は直径0.2~0.4㎜。花期は7~10月。
20 Drosera x obovata Mert. et W.D.J.Koch サジバモウセンゴケ 匙葉毛氈苔
モウセンゴケとナガバノモウセンゴケの自然交雑種。
21 Drosera 'Nagamoto' ナガモトモウセンゴケ
ナガバノモウセンゴケ (Drosera longifolia)♀×関西型コモウセンゴケ♂の人口交雑種。2n=50,43。
22 その他ハイブリッド
品種) 'Andromeda' , 'Ivan's Paddle' , 'Marston Dragon' , 'Rhodesian Beauty'
参考
1) Flora of ChinaDrosera
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=110951
2) Plants of the World Online | Kew ScienceDrosera
http://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30001036-2
3) World Flora Online Drosera
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000012595
4) 植物研究雑誌 第66(2), 126, 1991四国の力ンサイガタコモウセンゴケ
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_066_126_126.pdf
5) 植物地理・分類研究 植物分類,地理 42(2), 125-137, 1991東海丘陵要素の植物地理 : II.トウカイコモウセンゴケの分類学的研究
https://ci.nii.ac.jp/naid/110003760490
6) 植物研究雑誌第78巻 第4号 170-174 2003宮崎県産モウセンゴケ属の新雑種,ヒュウガコモウセンゴケ
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_078_170_174.pdf
7) 植物地理・分類研究 67(1) 53-58(2019)九州新産のトウカイコモウセンゴケとその特徴
https://www.jstage.jst.go.jp/article/chiribunrui/67/1/67_0671-07/_pdf
8) Atlas of Living AustraliaDrosera adelae F.Muell.
https://bie.ala.org.au/species/https://id.biodiversity.org.au/node/apni/2909650