チゴザサ 稚児笹

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Flora of Mikawa

イネ科 Poaceae チゴザサ属

中国名 柳叶箬 liu ye ruo
英 名 swamp millet
学 名 Isachne globosa (Thunb.) O. Kuntze
チゴザサ花序
チゴザサ葉
チゴザサ葉鞘
チゴザサ小花
チゴザサ
チゴザサ小穂
チゴザサ小穂と苞
花 期 6~8月
高 さ 30~50(80)
生活型 多年草
生育場所 水田、溝、湿った場所
分 布 在来種 日本全土、朝鮮、中国、台湾、インド、ブータン、ネパール、スリランカ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、ニューギニア、オーストラリア
撮 影 昭和の森  06.7.9
多年草。地中を横に伸びる。稈は細く、中程度に丈夫で硬く、直立または傾伏し、高さ30~50(80)㎝。下部の節から発根し、節は無毛、腺は無いかまたは輪状の腺をもつ。葉鞘は節間よりも短い葉鞘、外側の不対の縁毛を除いて無毛。葉身は狭披針形、長さ3~10㎝×幅3~8㎜、無毛、ザラつき、基部は円形、先は鋭形。葉舌は長さ1~2mm。円錐花序は開き、外形は卵形、長さ4~11㎝、腺があり、多数の針骨がある(spiculate)。枝と小梗(小花柄)は糸状、曲がりくねる。小梗は長さが様々で、小穂より短いかまたは長い。小穂は楕円状球形、長さ1.5~2(~2.2)㎜、緑褐色または紫褐色。両小花はわずか~明瞭に異なる。下側の小花は雄性、上側小花は雌性。両苞穎はほぼ等しく、小花の長さと同じかまたはそれより短く、広楕円形、5~7(~9)脈があり、普通、無毛、まれに、中間より上に小剛毛があるか細かくザラつき、先は広い円形。下側の護穎は長円形、軟骨質~からほぼ甲殻質で、浅く凸面状、背にはときに溝があり、平滑、無毛。葯は長さ0.8~1.3㎜。上側の護穎は甲殻質、より短く、より凸面状になり、わずかに粗く、背は無毛または微軟毛があり、上側の縁には縁毛がある。穎果は長さ約1.2㎜の倒卵形、光沢のある暗灰色。花期は6~8月。2n=60。
 類似のハイチゴザサは葉の長さが短い。小穂が淡緑色、花柄に腺がない。

チゴザサ属

  family Poaceae - genus Isachne

 一年草または多年生。稈は直立または傾伏または這い、多数の節がある。葉身は狭披針形~卵形、縁はしばしば白色で厚くなる。葉舌は堅い毛の1列の線である。花序は、開きまたは狭くなり、ときに、枝および小梗(小花柄)に黄色の腺のパッチがある。小穂は2個の小花をもつ。両小花とも両性か、または下側の小花が両性または雄性で上側の小花が雄性または雌性になり、短い節間により離れるか、隣接し、各小花の下で関節離断する(disarticulating)。苞穎はほぼ同長、小穂の長さの3/4~1倍、5~9脈がある。下側の護穎は様々で、上側の護穎に似てるか、または大きさと質感が異なる。上側の護穎は円形~広楕円形、紙質~革質、無毛または有毛、短い曲がった毛があり、5~7脈があり、先は鈍形。雄しべは3個。穎果は楕円形またはほぼ球形。
 世界に約105種あり、世界中の熱帯に分布し、主にアジアに多い。

チゴザサ属の主な種と園芸品種

1 Isachne albens Trin. アリサンチゴザサ 
 中国、台湾、ブータン、インド、インドネシア、ミャンマー、ネパール、タイ、ベトナム原産。中国名は白花柳叶箬 bai hua liu ye ruo。

2 Isachne clarkei Hook.f. タイワンチゴザサ 台湾稚児笹
  synonym Isachne beneckei Hack.
 中国、台湾、インド、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、ベトナム原産。中国名は小柳叶箬 xiao liu ye ruo。

3 Isachne globosa (Thunb.) Kuntze チゴザサ 稚児笹
  synonym Isachne globosa (Thunb.) Kuntze var. brevispicula Ohwi
  synonym Isachne miliacea Roth コウトウチゴザサ 
  synonym Isachne subglobosa Hatus. et T.Koyama  オオチゴザサ 
 日本全土、韓国、中国、台湾、バングラデシュ、ブータン、インド、インドネシア、マレーシア、ネパール、ニューギニア、フィリピン、スリランカ、タイ、ベトナム、 オーストラリア、太平洋諸島原産。中国名は柳叶箬 liu ye ruo。英名はswamp millet。別名はコツブチゴザサ。和名の由来は葉がササの葉に似ていて小さいことから。水田、溝、湿った場所に生える。
 多年草。地中を横に伸びる。稈は細く、中程度に丈夫で硬く、直立または傾伏し、高さ30~50(80)㎝。下部の節から発根し、節は無毛、腺は無いかまたは輪状の腺をもつ。葉鞘は節間よりも短い葉鞘、外側の不対の縁毛を除いて無毛。葉身は狭披針形、長さ3~10㎝×幅3~8㎜、無毛、ザラつき、基部は円形、先は鋭形。葉舌は長さ1~2mm。円錐花序は開き、外形は卵形、長さ4~11㎝、腺があり、多数の針骨がある(spiculate)。枝と小梗(小花柄)は糸状、曲がりくねる。小梗は長さが様々で、小穂より短いかまたは長い。小穂は楕円状球形、長さ1.5~2(~2.2)㎜、緑褐色または紫褐色。両小花はわずか~明瞭に異なる。下側の小花は雄性、上側小花は雌性。両苞穎はほぼ等しく、小花の長さと同じかまたはそれより短く、広楕円形、5~7(~9)脈があり、普通、無毛、まれに、中間より上に小剛毛があるか細かくザラつき、先は広い円形。下側の護穎は長円形、軟骨質~からほぼ甲殻質で、浅く凸面状、背にはときに溝があり、平滑、無毛。葯は長さ0.8~1.3㎜。上側の護穎は甲殻質、より短く、より凸面状になり、わずかに粗く、背は無毛または微軟毛があり、上側の縁には縁毛がある。穎果は長さ約1.2㎜の倒卵形、光沢のある暗灰色。花期および果期は夏~秋。2n=60。
 ※ オオチゴザサはやや大きくて紫を帯びず、2つの小花のうち下方のものが雄生で結実しないもの。チゴザサに含められている。

4 Isachne lutchuensis Hatus. et T.Koyama ケナシハイチゴザサ 
 日本固有種。沖縄島(北部)、西表島に分布する。
 一年草または短命の多年草、叢生し、緩く株立する(clumped)。稈は膝状に曲がり、斜上し、細く、長さ10~25cm×直径0.5~0.8mm、下部の節から発し、節間は平滑、上部は無毛、側枝がまばらにつく。葉鞘は長さ1.5~3cm、ほとんどの場合、隣接する稈の節間より短く、表面が平滑、外側の縁は無毛、口部の毛は乏しい。葉舌は毛のフリンジである。葉身は披針形、長さ15~40cm×幅3~7 mm、薄緑色、5~7本脈があり、二次があり、表面は平滑、縁は厚くならず、縁は全縁または波打ち、先は鋭形。円錐花序は開き、卵形、長さ2~5cm×幅2~5cm、一次枝は斜上または開出し、1本つく、長さ1~4.5cm、各下部の枝に4~12個の稔性の小穂がつっく。花序軸は4~7節がある。小穂は単生し、稔性の小穂は小梗がある。小梗は糸状。小穂は2個の稔性の小花からなり、小軸の伸長はなく、円形または卵形、背側が扁平、1~1.3 mm×幅0.8~1mm、熟すと別れ、各稔性の小花の下で関節離断する。苞穎は脱落性、2苞穎は似ていて、小穂より短く、稔性の護穎より薄い。第1苞穎は披針形または卵形、小穂の長さの0.8~0.9倍、膜質、縁がかなり薄く、竜骨はなく、5~9脈があり、表面に剛毛があり、上部に毛があり、先は鈍形または鋭形。第2苞穎は披針形または卵形、小穂の長さの0.8~0.9倍、膜質、縁が透明、竜骨はなく、5~9脈があり、表面に剛毛があり、上部に毛があり、先は鈍形または鋭形。稔性の護穎は楕円形または卵形、長さ1~1.3㎜、硬化し、薄緑色、竜骨はなく、側脈は不明瞭、表面は無毛または有毛、縁は内巻き、先は鈍形。内穎は硬化し、2脈がある。穎果は果皮が付着性。

5 Isachne myosotis Nees ダイトンチゴザサ 
  synonym Isachne nipponensis Ohwi var. minor (Honda) Nemoto
  synonym Isachne debilis Rendle
 中国、台湾、インドネシア、ニューギニア、フィリピン原産。中国名は荏弱柳叶箬 ren ruo liu ye ruo。別名はヒメハイチゴザサ、ヒナチゴザサ。タイトンチゴザサ。

6 Isachne nipponensis Ohwi ハイチゴザサ 這稚児笹
 日本(本州の関東地方以西、四国、九州)、韓国(済州島)中国、台湾原産。中国名は日本柳叶箬 ri ben liu ye ruo。日陰の湿った場所に生える。 多年草。緩いマットを形成し、高さ5~15㎝。全体に毛が多い。稈は細く、地表を這い、節から根を出し、分枝して広がる。茎の節々から、1~数本の細い茎を立てる。花のつく枝は高さ15㎝以下。葉はチゴザサより短く、披針状卵形、長さ(0.8)2~3.5㎝×幅(2.5)5~9㎜、下面は無毛または直軟毛があり、上面は長毛が散生し、縁は白色、細かくざらつき、基部は鈍形、先は短い尖鋭形。葉舌は長さ約1㎜、短毛。葉鞘は薄く毛があり、外側の縁に長い白色の縁毛がある。円錐花序は外形が広卵形、長さ2~8㎝、腺はなく、ややまばらに分枝し、小穂は10~50個つき、枝と小梗は広く、広がり、非常に細く、細かくザラつく。小穂は広楕円形、長さ(1.3~)1.5~1.8㎜、緑色、まれに紫色を帯びる。小花はほぼ同形の2個からなる。向い合った2個の小花を2個の苞頴が包む。苞頴は大きさが小穂にほぼ等しいか、または第1苞穎がわずかに短く、卵状楕円形、苞頴の上半部分には普通、短い白色の剛毛が散生し、先は鈍形。第1苞穎は3~5脈、第2苞穎は5~7脈がある。護穎は広楕円形、革質、縁近くと先に薄く毛がある。2n=40。花期は9~10月。

7 Isachne pauciflora Hack. コタイワンチゴザサ 小台湾稚児笹
 台湾、フィリピン原産。中国名は瘦脊柳叶箬 shou ji liu ye ruo。

8 Isachne pulchella Roth メンテンチゴザサ 
  synonym Isachne dispar Trin.
  synonym Isachne heterantha Hayata
 中国、台湾、バングラデシュ、インド、マレーシア、ネパール、タイ、ベトナム原産。中国名は矮小柳叶箬 ai xiao liu ye ruo。

9 Isachne repens Keng アツバハイチゴザサ 厚葉這稚児笹
  synonym Isachne commelinifolia auct. non Warb.
  synonym Isachne kunthiana auct. non (Wight et Arn. ex Steud.) Miq.
  synonym Isachne schmidii auct. non Hack.
  synonym Isachne kunthiana (Wight et Arn. ex Steud.) Miq. var. nudiglumis (Hack.) T.Koyama
  synonym Isachne kunthiana (Wight et Arn. ex Steud.) Miq. subsp. nudiglumis (Hack.) T.Koyama
 日本(琉球諸島)、中国、台湾原産。中国名匍匐柳叶箬 pu fu liu ye ruo。林内の湿った場所に生える。
 一年草または短命の多年草。細く匍匐する。稈は匍匐枝を出し、下部の節から1または2本の針金状の根を持ち、花をつける枝は高さ25㎝以下、節に毛がある。葉鞘は無毛または剛毛があり、外側の縁に縁毛があり、葉舌の近くは剛毛になる。葉身は披針形、長さ5~7㎝×幅1~1.8㎝、下面は無毛またはパピラ状剛毛があり、上面は無毛または薄く直軟毛があり、基部は鈍形~円形、先は尖鋭形。葉舌は長さ1~2㎜。円錐花序は外形が楕円形~卵形、長さ3~5.5㎝、腺は無い。枝は斜上~広がり、枝と小梗は丈夫で、平滑、側小梗は小穂よりも短い。小穂は広楕円形、長さ2.1~2.4㎜、緑色。小花は似ている。苞穎は小穂に等しいか、または上側の苞穎はわずかに短く、下側の苞穎(第1苞穎)は狭く、7~9脈がある。上部の苞穎(第2苞穎)は9~11脈があり、密にザラつく小剛毛があり、小穂(spicules)は先が長くなる。護穎は淡色、卵形~ほぼ円形で、弱く凸面状で、革質、平滑、先の縁が内巻きになり、毛がある。上側の小花の内穎は微軟毛がある。花期および果期は10~12月。

参考

1) Flora of China
 Isachne
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=116518
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Isachne
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:18278-1
3) World Flora Online
 Isachne
http://worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000019204;jsessionid=1C2B088A5477DC77210AFFDE565336F2
4) World Checklist of Vascular Plants
 Isachne
https://wcvp.science.kew.org/
5) GRIN
 Isachne
http://www.tn-grin.nat.tn/gringlobal/taxon/taxonomyspecieslist?id=6081&type=genus