シャク 杓
Flora of Mikawa
セリ科 Apiaceae シャク属
別 名 | ヤマニンジン、コジャク、ワイルドチャービル、コニンジン |
中国名 | 峨参 e shen |
英 名 | wild chervil, woodland chervil, cow parsley |
学 名 | Anthriscus sylvestris (L.) Hoffm. subsp. sylvestris |
花 期 | 5~6月 |
高 さ | 80~140 |
生活型 | 多年草 |
生育場所 | 平地や山地の草原、谷間や林内の日陰や、少し湿った場所 |
分 布 | 在来種 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、千島列島、サハリン、モンゴル、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、イラン、イエメン、トルコ、ヨーロッパ、北アフリカ(アルジェリア、チュニジア、モロッコ)、アフリカ中部(エチオピア、ケニア、ルワンダ、タンザニア、ウガンダ、ザイール)原産 |
撮 影 | 豊橋市 15.4.16 東栄町 05.5.15 |
多年草[2年草または短命の多年草]。直根が太くなる。茎は中空、単純、長さ80~140㎝、直立し、上部で枝分かれし、無毛または基部に後屈する白色の毛がある。根生葉は長い葉柄があり、葉身は緑色、草質、長さ20~50㎝、三角形、2~3回3出複葉、羽状深裂し、最終裂片は[長さ1~3㎝、幅0.5~1.5㎝、卵形~楕円状卵形、]鋭形または尖鋭形、縁に歯があり、下面の少なくとも脈上に開出する白色の小剛毛(setulose)がある。茎葉は似ており、上部で徐々に小さくなり、上部の葉柄は白色の細柔毛のある鞘になる。散形花序は多数、無毛、総苞はなく、小散形花序は5~12[4~15]個、無毛、大散形花序の柄(rays)は長さ3~4㎝、花数はやや多く、小総苞の小苞は4~8個、反曲し、淡緑色、膜質、長円形~披針形、急に尾状の尖鋭形になり、長さ3~8㎜、縁毛がある。小花柄は平滑、先近くに短い小剛毛(setulose)がある。[花弁は白色、5個、外側の花弁が大きく、大きさが不揃い。子房は無毛。]果実は披針形、熟すと暗灰色でわずかに光沢があり、長さ5~8㎜、無毛、または短い斜上するカロースの疣状突起があり、長さは小花柄と同長~1/2。花期は5~6月。果期は6~7月。[2n=16]。
ドクニンジン Conium maculatum (poison hemlock) はヨーロッパ原産。中国、北アフリカ、北アメリカなどに帰化し、日本でも全国的に広がりつつある。花がよく似ている。花期は7~9月、全体に悪臭があり、有毒。茎や葉柄に紫紅色の斑点がある。果実は無毛、幅が広く、分果はほぼ球形、直径約3.5㎜。
ノハラジャク Anthriscus caucalis はやや小型、大散形花序の柄は3~6本、長さ1~2.5㎝m無毛、花はまばらにつく。小総苞は全縁、反曲する。花弁が狭く、ヤブジラミのように子房に短毛がある。果実は長さ3~4㎜の卵形、短い鉤状の刺毛がある。2n=14。
ヤブジラミ Torilis japonica は花期が同じ。果実に長い湾曲した刺を密生。
シャク属
family Apiaceae - genus Anthriscus2年草または多年草。直根は細くまたは太い。 茎は直立し、枝分かれし、中空。葉身は2~3回3出羽状複葉または羽状複葉。最終の裂片は、歯状または羽状中裂。散形花序は緩く複合し、頂生および側生。 苞はない。大散形花序の柄(ray)は少数、広がる。小苞は数個、縁毛があり、後屈する。花柄(pedicels)は広がる。花は雌雄混株(polygamous)。萼歯は廃れる。花弁は白色または黄緑色、長円形またはくさび形で先は細く内側に曲がる。外側の花弁はときに大きくなる(放射状)。柱下体(stylopodium)は円錐形。花柱は短い。 果実は長い卵形~線形、先は漸尖して嘴になり、横方向に扁平になり、合成面(commissure)でしばしばくびれ、平滑または剛毛があり、うねは廃れる。油管は不明瞭~廃れる。種子は断面がほぼ円柱形、表面に深い溝がある。英名はChervil。
世界に約15種があり、温帯アジア、ヨーロッパに分布する。
シャク属の主な種と園芸品種
1 Anthriscus caucalis M.Bieb. ノハラジャク 野原杓synonym Anthriscus vulgaris Pers.
synonym Anthriscus scandicina Mansf.
ヨーロッパ、コーカサス、トルコ、レバノンシリア、モロッコ、アルジェリア原産。英名は burr chervil , bur-chervil。 別名はアレチゼリ、チャービル。
1年草、高さ15~80㎝。葉は1~2回羽状複葉、濃緑色、最終裂片は長さ3~8mm、先が尖り、まばらに小剛毛がある。散形花序は緩く、大散形花序の柄(ray)は3~5本、長さ1~2㎝、無毛。小総苞片は2~5個、披針状卵形、縁毛があり、芒があり、長さ2~3㎜。花柄は伸びて、大散形花序の柄よりも太くなる。花は白色。果実は卵形、長さ3~4㎜、短く太い鉤状突起のある刺で覆われ、短く上部な嘴は刺が無い。2n=14。花期は6~7月。
2 Anthriscus cerefolium (L.) Hoffm. アンスリスクス・ケレフォリウム
ヨーロッパ、西南アジア原産。英名はgarden chervil , chervil。1年草、高さ30~75㎝。茎は直立し、上部または下部でよく分枝し、条線があり、またはやや溝があり、ほとんどが無毛だが、しばしば、節の上に毛がある。葉は薄緑色、優美で繊細、全体的に同形、3~4回羽状複葉、葉身は三角状卵形または広三角形、裂片は短い長円形または披針形、上面は無毛、下面はやや毛がある。下部の葉は葉柄が長く、上部の葉は無柄。小散形花序は花が4~10個、花柄(pedicels)は長さ2~6㎜。花は直径2㎜、明らかな放射状では無く、小総苞片(involucel)は2~3個つき、披針形。苞は縁毛があり、長さ2~4㎜。散形花序は数個つき、無茎または花序柄が長さ2.5(~3)cm以下、しばしば、横方向で葉に対生する。大散形花序の柄(ray)は3~5本、毛があり、長さ1.5~3(~3.5)㎝。総苞(苞)は無い。花柄は先に毛の輪がない。柱下体は円錐形で、徐々に細くなって花柱(1㎜以下)になり、区別がつかない。花盤は短い円筒形、長さが幅よりも長い。果実は長さ7~10㎜×幅±1.5mm、線形、境界が明瞭な嘴は果実の体の長さの約半分であり、無毛または剛毛があり、くちばしを除いて肋はほとんど見えない。花期は春下旬~夏。
品種) 'D'Hiver de Bruxelles' , 'Vertissimo'
3 Anthriscus nemorosa (M.Bieb.) Spreng. オニジャク 鬼杓
synonym Anthriscus sylvestris (L.) Hoffm. subsp. nemorosa (M.Bieb.) Koso-Pol. [Flora of China, YList]
synonym Anthriscus aemula (Woronow) Schischk. f. hirtifructus (Ohwi) Kitag.
synonym Anthriscus aemula (Woronow) Schischk.synonym Anthriscus aemula (Woronow) Schischk. var. hirtifructus (Ohwi) Kitag.
synonym Anthriscus sylvestris (L.) Hoffm. var. hirtifructus (Ohwi) H.Hara
synonym Anthriscus sylvestris (L.) Hoffm. f. hirtifructus (Ohwi) H.Ohba
synonym Anthriscus nemorosa (M.Bieb.) Spreng. var. hirtifructus Ohwisynonym Anthriscus nemorosa var. glabriuscula Nasir [Flora of Pakistan]
日本(北海道、本州、四国、九州)、中国(吉林省、遼寧省、河北省、陝西省、四川省、内モンゴル自治区、甘粛省、新疆ウイグル自治区、西蔵)、ロシア、インド、ネパール、パキスタン、アフガニスタン、カザフスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、イラン、イラク、レバノン・シリア、トルコ、ヨーロッパ(アルバニア、ブルガリア、ルーマニア、ギリシャ、イタリア、クレタ島、クリミア半島、シチリア、北コーカサス、トランスコーカサス、ユーゴスラビア)、アフリカ(タンザニア)原産。中国名は刺果峨参 ci guo e shen 。別名はケジャク、オニシャク。標高1620~3800mの丘陵地帯や森林の下の草地に生える。北アジアや東ヨーロッパにも分布する。Flora of ChinaやYListではシャクに似ていて、果実が密に毛や剛毛で覆われるだけであり、シャクの亜種に分類している。POWOやFlora of PakistanではオニジャクをAnthriscus nemorosaとし、POWOでは2年草または多年草、高さ50~120㎝。茎は円筒形で、溝があり、太く、中空、平滑、下部に短い軟毛があり、上部の枝は互生、対生または輪生する。葉身は、外形が広三角形、長さ7~12㎝またはそれ以上、2~3回羽状分裂し、最終裂片は披針形または長円状披針形、縁は深い鋸歯状、両面または下面の脈上に毛があるか、または毛がない。最上部の茎葉は葉柄が鞘状になり、上部と縁に白色の軟毛がある。複散形花序は頂生、総苞片は0または1個。大散形花序の柄(rays)は6~12本、長さ2~5cm、無毛。小苞は3~7個、卵状披針形~披針形、縁は白色、軟毛があり。小散形花序には花が3~11個つく。花は白色、基部は狭く、先は内側に曲がる。柱下体(stylopodium:花柱の基部の肥大)は円錐形、花柱は柱下体より長い。双懸果は線状長円形、長さ6~9㎜、表面に疣や細かい刺がある。花期と果期は6~9月[中国植物志 (FRPS)]。
高さ1~3m。茎は太く、条線があり、分枝する。葉は長さ20~40センチ、無毛から軟毛があり、2回羽状複葉。小葉は披針形~楕円形、羽状全裂する。花序柄は長さ3~8㎝。総苞は苞が1~2個の線形、またはない。大散形花序の柄は10~15本、不等長、長さ2~5㎝。小総苞は小苞が5~6個、披針形~楕円形または卵形、縁は全縁または縁毛があり、脈が目立つ。花弁は白色、外側の花弁の方が大きい。果実は披針形~長円形、黒色、長さ約1㎝、嘴があり、疣状突起~堅い剛毛(hispid)または密な剛毛があり(bristly)、溝には1~2個の油管(vittae)があり、油管は微細である[Flora of Pakistan]。
シャクに似ているが、果実は密に毛や剛毛で覆われる。
(1) Anthriscus nemorosa var. glabriuscula Nasir
ヒマラヤに分布する。果実はほとんど無毛、またはわずかに剛毛がある。
4 Anthriscus sylvestris (L.) Hoffm. シャク 杓 広義
日本、朝鮮半島、中国(安徽省、甘粛省、河北省、河南省、湖北省、江蘇省、江西省、吉林省、遼寧省、内モンゴル、陝西省、山西省、四川省、新疆ウイグル自治区、西蔵、雲南)、千島列島、サハリン、モンゴル、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、イラン、イエメン、トルコ、ヨーロッパ(アルバニア、オーストリア、バルト諸国、ベラルーシ、ベルギー、ブルガリア、チェコスロバキア、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イギリス、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ウクライナ、クリミア半島、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スペイン、スウェーデン、スイス、北コーカサス、トランスコーカサス、ユーゴスラビア)、北アフリカ(アルジェリア、チュニジア、モロッコ)、アフリカ中部(エチオピア、ケニア、ルワンダ、タンザニア、ウガンダ、ザイール)原産。中国名は峨参 e shen。英名はlady's lace , wild chervil。POWOでは日本を分布域から除いているが、Flora of Chinaでは日本を含めている。海抜4500m付近までの森林、谷間、山腹の草地に生える。世界の分布は広く、南北アメリカに帰化している。根が薬用に使われ、栽培されている国もある。柔らかい葉は食べられる。
多年草、高さ0.6~1.5mの植物。 茎は丈夫で、無毛または下部には細かい毛がある。根生葉は長い葉柄がある。葉柄は長さ10~30㎝、鞘は約・長さ4㎝×幅1㎝。葉身は外形が卵形、長さ10~30cm。 一次羽片は長い小葉柄があり、卵形~楕円状卵形、長さ4~12㎝×幅2~8㎝。最終裂片は卵形~楕円状卵形、長さ1~3㎝×幅0.5~1.5㎝、鋸歯または歯があり、下面にまばらに毛があり、上部の茎葉はほぼ無柄。散形花序は幅2.5~8㎝。大散形花序の柄(ray)は4~15本、不等長。 小苞(小総苞片)は5~8個、卵形~披針形、先は尖鋭形、花柄より短く、花柄の先は普通、果実の白色の剛毛に囲まれる。花柱は柱下体の長さの約2倍。果実は長さ5~10㎜×幅1~1.5㎜。花期および果期は4~5月。(Flora of China)
品種) 'Broadleas Blush' , 'Clair' , 'Dial Park' , 'Going for Gold' , 'Golden Fleece' , 'Hullavington' (v) , 'Kabir' , 'Moonlit Night' , 'Ravenswing' , 'Rosea' , 'Shateley Pink' , 'Snape Cottage Brown'
4-1 Anthriscus sylvestris subsp. mollis (Boiss. & Reut.) Maire
synonym Anthriscus mollis Boiss. & Reut.
synonym Anthriscus sylvestris var. glabricaulis (Maire) Maire
synonym Anthriscus sylvestris var. villicaulis Mairesynonym Chaerefolium sylvestre subsp. molle (Boiss. & Reut.) Maire
synonym Anthriscus nemorosa var. glabriuscula Nasir北アフリカ(アルジェリア、チュニジア、モロッコ)原産
葉の裂片が中型。
4-2 Anthriscus sylvestris (L.) Hoffm. subsp. sylvestris シャク 杓
synonym Anthriscus alpina (Vill.) Jord.synonym Anthriscus sylvestris (L.) Hoffm. subsp. aemula (Woronow) Kitam, excl. basion.
synonym Anthriscus aemula auct. non (Woronow) Schischk.synonym Anthriscus yunnanensis W.W.Sm.
日本、朝鮮半島、中国(安徽省、甘粛省、河北省、河南省、湖北省、江蘇省、江西省、遼寧省、内モンゴル、陝西省、山西省、四川省、新疆ウイグル自治区、雲南省)、千島列島、サハリン、モンゴル、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、イラン、イエメン、トルコ、ヨーロッパ(アルバニア、オーストリア、バルト諸国、ベラルーシ、ベルギー、ブルガリア、チェコスロバキア、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イギリス、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ウクライナ、クリミア半島、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スペイン、スウェーデン、スイス、北コーカサス、トランスコーカサス、ユーゴスラビア)、アフリカ中部(エチオピア、ケニア、ルワンダ、タンザニア、ウガンダ、ザイール)原産。北アメリカに帰化している。中国名は峨参 e shen。英名はwild chervil, woodland chervil, cow parsley。別名はヤマニンジン、コジャク、ワイルドチャービル、コニンジン。中国では海抜4500m付近の山の斜面、谷の斜面の森林に生える。北アメリカなどに帰化している。POWOでは日本が分布域から除外されているが、日本の北海道、本州、四国、九州にも分布し、平地や山地の草原、谷間や林内の日陰や、少し湿った場所に生える。
Flora of Chinaでは果実が無毛、またはまれにまばらに細かい顆粒で覆われるとしている。
多年草[2年草または短命の多年草]。直根が太くなる。茎は中空、単純、長さ80~140㎝、直立し、上部で枝分かれし、無毛または基部に後屈する白色の毛がある。根生葉は長い葉柄があり、葉身は緑色、草質、長さ20~50㎝、三角形、2~3回3出複葉、羽状深裂し、最終裂片は[長さ1~3㎝、幅0.5~1.5㎝、卵形~楕円状卵形、]鋭形または尖鋭形、縁に歯があり、下面の少なくとも脈上に開出する白色の小剛毛(setulose)がある。茎葉は似ており、上部で徐々に小さくなり、上部の葉柄は白色の細柔毛のある鞘になる。散形花序は多数、無毛、総苞はなく、小散形花序は5~12[4~15]個、無毛、大散形花序の柄(rays)は長さ3~4㎝、花数はやや多く、小総苞の小苞は4~8個、反曲し、淡緑色、膜質、長円形~披針形、急に尾状の尖鋭形になり、長さ3~8㎜、縁毛がある。小花柄は平滑、先近くに短い小剛毛(setulose)がある。[花弁は白色、5個、外側の花弁が大きく、大きさが不揃い。子房は無毛。]果実は披針形、熟すと暗灰色でわずかに光沢があり、長さ5~8㎜、無毛、または短い斜上するカロースの疣状突起があり、長さは小花柄と同長~1/2。花期は5~6月。果期は6~7月。[2n=16]。[Flora of Japan][]は追記。
参考
1) Flora of ChinaAnthriscus
Anthriscus
Anthriscus caucalis M.Bieb.
Le genre Anthriscus (Apiaceae ) dans la flore française
Anthriscus sylvestris