シナガワハギ 品川萩

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Flora of Mikawa

マメ科 Fabaceae シナガワハギ属

英 名 草木樨 cao mu xi, 辟汗草 pi han cao
英 名 Daghestan sweet-clover, sweetclove
学 名 Melilotus suaveolens Ledeb.
Melilotus officinalis (L.) Pall. subsp. suaveolens (Ledeb.) H.Ohashi
Melilotus officinalis auct. non (L.) Pall.
シナガワハギの花序
シナガワハギの萼
シナガワハギの果実
シナガワハギの葉
シナガワハギの茎
シナガワハギ
シナガワハギ花
シナガワハギ小葉表
シナガワハギ小葉裏
花 期 5~10月
高 さ 20~150㎝
生活型 1又は2年草
生育場所 道端、荒地
分 布 在来種 北海道、本州、四国、九州、沖縄、朝鮮、中国、台湾、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、インド、ラオス、ベトナム原産
撮 影 田原市  07.6.30
和名は江戸時代末期に東京の品川付近で見つかったことから。在来種とする説と、東アジアからの帰化種とする説がある。クマリン coumarin のよい香りがする。
 茎は直立又は斜上し、多数枝分かれする。葉は3小葉、小葉の長さは約2㎝。縁に鋸歯があり、青緑色。托葉は針状で1脈がある。葉腋の長い柄の先に総状花序を伸ばし、黄色の蝶形花を多数つける。花は長さ4~6㎜。旗弁はあまり立たない。果実は長さ3~4㎜の楕円形~広惰円形、表面に不明瞭な網目状の凸凹のしわがある。2n=16
 セイヨウエビラハギ Melilotus officinalis はシナガワハギと同種とする説があり、シナガワハギをその亜種とする説もある。中国、インド、パキスタン、ロシア、西アジア、中央アジア、ヨーロッパに分布し、common melilot, yellow sweet-clover, ribbed melilotという。Flora of China はシナガワハギを同一とする見解である。中国名は草木犀 cao mu xi。2n = 16, 32
 コシナガワハギMelilotus indicus はアジア中西部、北アフリカ、ヨーロッパに分布する。花が長さ約2.5㎜と小さく、果実も長さ約2㎜と小さく、ほぼ球形。また、托葉が披針形で、3脈がある。2n=54。
 シロバナシナガワハギ Melilotus albus は花が白色。

シナガワハギ属

  family Fabaceae - genus Melilotus

 1年草または2年草、直根があり、直立する。葉は羽状複葉、3小葉。托葉は全縁またはほぼ全縁、葉柄の基部につく。小葉は鋸歯があり、側脈は歯の中で終わる。小托葉(stipels)は無い。総状花序は腋生、細く、長い。花は多数。苞は小さい。小苞は無い。萼歯はほぼ等長。花冠は黄色または白色、花弁は雄しべ筒から離れ、脱落性。旗弁は卵状長円形。翼弁は狭長円形。竜骨は広かま形。雄しべは2体雄しべ(diadelphous)。花糸は細管。子房は無柄または短柄がある。胚珠は2~8個。花柱は糸状、上部で曲がり、しばしば宿存性。豆果は倒卵形または球形、萼からわずかに突き出し、表面は網目またはしわがある。種子は1または2個、広卵形、平滑またはパピラがある。
 世界に約20種あり、温帯および亜熱帯の北アフリカ、アジア、ヨーロッパに分布する。

シナガワハギ属の主な種と園芸品種

1 Melilotus albus Medik. シロバナシナガワハギ 白花品川萩
  synonym Melilotus officinalis (L.) Pall. subsp. albus (Medik.) H.Ohashi et Tateishi
 ヨーロッパ、アジア原産。中国名は白花草木犀 bai hua cao mu xi。英名はWhite Sweet Clover , Bokhara clover。別名はコゴメハギ、シロバナノシナガワハギ。畑、道端、荒れ地の湿った土壌に生える
 1年草または2年草、無毛になる[太い根があり、無毛またはまばらに毛がある]。茎は直立し、高さ[30~]70~200 cm、円柱形[角がある]、中空、多数、分枝する。托葉は錐形、長さ6~10㎜、全縁。葉柄は細く、小葉より短い。小葉は披針形、長円形、または倒披針状長円形、長さ15~30㎜×幅(4~)6~12㎜、下面は微軟毛があり、上面は無毛、側脈は歯の中に走り、12~15対、縁は浅い鋸歯がある。総状花序は長さ8~20㎝、花が40~100個つく[点頭する]。苞は長さ1.5-2㎜。小花柄は長さ1~2㎜。花冠は白色、長さ3.5~5㎜[長さ3~4.2mm]。旗弁は翼弁や竜骨弁より大きい[著しく長い]。子房は、狭卵形[、平滑]。胚珠は2~4個。豆果は楕円形~長円形、長さ3~3.5㎜、脈は網目状、細く、褐色、熟すと暗色になり、先は鋭形、嘴がある。種子は1または2個、褐色、卵形、パピラがある。花期は5~7月。果期は7~9月。2n=16(n=8)。

2 Melilotus altissimus Thuill. セイタカコゴメハギ 
  synonym Medicago altissima (Thuill.) E.H.L.Krause
 ヨーロッパ原産。英名はtall yellow sweetclover。特徴は茎葉の托葉が線形、全縁。子房に毛があり、花柄は割合に細く、花は垂れ下り気味になる。花は黄色、長さ5~7mm。
 2年草または短命の多年草、無毛またはまばら毛がある。茎は高さ30~200cm、直立、角張り、しばしば上部で分枝する。下部の葉は小葉が長さ1~2.5×幅0.5~1.5cm、長円形~倒卵形、縁は不規則な小鋸歯縁または歯がある。上部の葉は小葉が長円状楕円形~線形。托葉は線形、全縁、下部の葉の托葉は基部に1~2個の歯をもつ。花序は花が30~60個あり、果時に長さ7cmになる。花序柄は花時に長さ2~4㎝、果時に長さ6㎝以下になる。花は垂れ下がり、芳香があり、花柄は長さ1㎝、下屈する。萼は長さ1.3~2mm、鐘形、倒円錐形、淡緑色。萼歯は0.7~1㎜、等長、三角形。花冠は長さ2.5~4(6)㎜、白色。旗弁は翼弁や竜骨弁より長い。翼弁は竜骨弁とほぼ同長。子房は無柄、または非常に短い子房柄(gynophore)もつ。果実は約・長さ3.5㎜×幅2㎜、座り、1~2個の種子をもち、卵状楕円形、短突起があり、基部は丸く、無毛、暗緑色または黒色、表面は不規則な網目状。種子は約・長さ2.2㎜×幅1.4㎜、卵形。 2n=16(n=8)。

3 Melilotus dentatus (Waldst. et Kit.) Pers. ノコバシナガワハギ 
  synonym Melilotus dentatus (Waldst. et Kit.) Pers. var. sibiricus O.E.Schulz
 ヨーロッパ、中央アジア原産。中国名は细齿草木犀 xi chi cao mu xi。英名はtall melilot。別名はモウコエビラハギ。林縁、アルカリ性の牧草地に生える。
 2年草、無毛。 茎は直立し、高さ20~50(~80)㎝、円柱形、縦にうねがある。托葉は披針形~狭い三角形、長さ6~12㎜、基部は矛形、2~3個の歯があり、または欠刻がある。葉柄は細く、普通、小葉より短い。小葉は長円状披針形~ほぼ円形、長さ20~30㎜×幅5~13㎜、側脈は15~20対あり、平行、分枝し、歯の中に終わり、両面で明瞭、特に縁近くで明瞭、基部は円形またはくさび形、先は円形、短突起がある。総状花序は長さ3~5 cm、果時に長さ8~10㎝に伸び、花が20~50個、散在する。小花柄は長さ約1.5㎜。花冠は黄色、長さ3~4㎜。旗弁は翼弁や竜骨弁よりわずかに長い。子房は狭卵形。胚珠は2個。豆果は球形~卵形、長さ4~5㎜×幅2~2.5㎜、脈は網状、腹側の縫合糸の上は凸状になり、褐色。種子は1~2個、オリーブ緑色、球形、長さ約1.5mm。花期は6~9月。果期は7~10月。

4 Melilotus indicus (L.) All. コシナガワハギ 
 中央アジア、南アジア、ヨーロッパ原産。中国名は印度草木犀 yin du cao mu xi。英名はSour Clover。開けた場所、アルカリ性土壌の牧草地、道端などに生える。特徴は茎葉の托葉は披針形または広披針形で基部には歯牙縁がある(花は黄色、長さ2.2~2.8mm)。
 1年草、わずかに毛があるか、無毛になる。 茎は直立または斜上し、高さ20~50㎝、円柱形、単純または基部から分枝する。托葉は披針形、長さ4~6㎜、基部は耳があり、2~3個の小さな歯あり、縁は膜質。小葉は卵状くさび形~狭長円形、長さ10~25(30)㎜×幅8~10㎜、下面に伏毛があり、上面は無毛、側脈は7~9対、平行で歯の中に走り、葉の基部はくさび形、縁は先に向かう小鋸歯があり、葉先は鈍形または切形、ときに小凹形。総状花序は細く、密、長さ1.5~4㎝。 花序柄が長い。花は15~25個つく。苞は糸状。小花柄は長さ約1㎜。花冠は黄色、長さ2.2~2.8㎜。旗弁は広卵形、小凹形、翼弁や竜骨弁と同長か、ときに竜骨弁がわずかに長くなる。子房は狭卵形。胚珠は2個。豆果はオリーブ緑色、熟すと赤褐色になり、長さ約2㎜、萼からわずかに突き出てし、無毛で、網状脈がある。種子は1個、暗褐色、広卵形、長さ約1.5㎜。花期は3~5月。果期は5~6月。

4 Melilotus officinalis (L.) Pall. セイヨウエビラハギ [広義]
  synonym Melilotus officinalis f. suaveolens (Ledeb.) H. Ohashi & Tateishi
  synonym Melilotus officinalis subsp. alba (Medik.) H.Ohashi & Tateishi
  synonym Trifolium officinale Linnaeus, Sp. Pl. 2: 765. 1753
  synonym Melilotus officinalis (L.) Lam. [Flora of China , Kewscience]
 アジア西部~中部、ヨーロッパ原産。中国名は草木犀 cao mu xi。英名はyellow sweet clover , sweet yellow clover, yellow melilot , ribbed melilot , common melilot。学名はMelilotus officinalis (L.) Lam.(1779)とMelilotus officinalis (L.) Pallas. (1776)が使われている。 砂浜の草原、丘の中腹、峡谷の海岸、混合林の縁などに生える。特徴は花が黄色で、旗弁と翼弁の長さはほとんど等しい。爽は柄があり、萼筒の前方に飛び出している。(花は長さ5.5~7㎜)。
 2年草[または1年草、太い根があり、無毛または基部に毛が散在する]、まばらに微軟毛があり、無毛になる。茎は直立し、高さ40~100(~250)cm、上部で分枝し、縦のうねがある。托葉は線状かま形[線形]、長さ3~5(~7)㎜、全縁または基部に1個の歯がある。葉柄は細い。小葉は、倒卵形、広卵形、倒披針形、または線形、長さ15~25(~30)㎜×幅5~15㎜、側脈は8~12対、歯の中に走り、縁は浅い鋸歯がある。総状花序は長さ6~15(~20)㎜、花が30~70個つき、初め密集し、花時に緩くなる。[花序柄は花時に長さ2~3㎝、果時に5㎝まで。]苞は小花柄と同長、長さ1.5~2㎜。[花は垂れ下がり、芳香があり、花柄は長さ約2.5㎜。]花冠は黄色、長さ4.5~7㎜。 旗弁は翼弁や竜骨弁とほぼ同長。子房は狭卵形[無毛、ほぼ無柄または有柄]。 胚珠は(4~)6(~8)[4~7:New York Botanical Garden]個。豆果(莢)は卵形[卵状楕円形]、長さ3~5㎜×幅約2㎜、脈は強い横向きの隆起がある網目になり、暗褐色[柄があり、薄褐色]、先端に花柱が宿存する。種子は1~2個、黄褐色、卵形、長さ約2.5㎜[長さ1.6~2.4㎜×幅約1.5mm]、平滑。2n=16。花期は5~9月。果期は6~10月。[]はFlora Iberica。
4-1 Melilotus officinalis (L.) Pall. subsp. officinalis  セイヨウエビラハギ 
 花は黄色。旗弁と翼弁の長さはほとんど等しい。豆果(莢)には柄があり、萼筒の前方に飛び出している。(花は長さ5.5~7 mm)
4-2 Melilotus officinalis (L.) Pall. var. micranthus O.E.Schulz  ヒシバシナガワハギ 
 基準種に含められている。

5 Melilotus suaveolens Ledeb. シナガワハギ 品川萩
  synonym Melilotus officinalis (L.) Pall. subsp. suaveolens (Ledeb.) H.Ohashi
  synonym Melilotus officinalis auct. non (L.) Pall.
  synonym Melilotus officinalis (L.) Pall. subsp. albus (Medik.) H.Ohashi et Tateishi f. suaveolens (Ledeb.) H.Ohashi et Tateishi
  synonym  Sertula suaveolens Kuntze
 学名はWorld Flora Online、Kewscienceでは別種としている。YListでは変種とし、Flora of ChinaではMelilotus officinalis (Linnaeus) Lamarckに含めている。
 日本(北海道、本州、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国、台湾、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、インド、ラオス、ベトナム原産原産。アフリカなどに帰化している。特徴は花冠が黄色。葉軸が短く、小葉の歯がより短く、全体に芳香が強い。
 1又は2年草。高さ20~150㎝。茎は直立又は斜上し、多数枝分かれする。葉は3小葉、小葉の長さは約2㎝。縁に鋸歯があり、青緑色。托葉は針状で1脈がある。葉腋の長い柄の先に総状花序を伸ばし、黄色の蝶形花を多数つける。花は長さ4~6㎜。旗弁はあまり立たない。果実は長さ3~4㎜の楕円形~広惰円形、表面に不明瞭な網目状の凸凹のしわがある。2n=16。花期は5~10月。
 特徴は葉軸が短く、小葉の歯がより短く、全体に芳香が強い。花はセイヨウエビラハギとほとんど同じで、黄色、旗弁と翼弁の長さはほとんど等しく、花は長さ5.5~7mm。セイヨウエビラハギと異なるのは豆果(莢)に柄がなく、直接に萼筒の内に座る。セイヨウエビラハギは豆果(莢)に柄があり、豆果が萼筒の前方に飛び出している。

日本産のMelilotusの索引(参考4)


1. 茎葉の托葉は披針形または広披針形で基部には歯牙縁がある。
 (花は黄色、長さ2.2~2.8mm)......Melilotus indicus (L.) All. コシナガワハギ
1. 茎葉の托葉は線形、全縁...........................................................................2
2. 子房に毛がある。花梗は割合に細く、花は垂れ下り気味になる。
 (花は黄色、長さ5~7mm)...Melilotus altissimus Thuill. セイタカコゴメハギ
2. 子房は平滑。花梗は割合に短く、花は点頭する...................................3
3. 花は白色。旗弁は翼弁より著しく長い。花は長さ3~4.2mm
 .....................................Melilotus albus Medik. シロバナシナガワハギ
3. 花は黄色。旗弁と翼弁に長さはほとんど等しい..... ............................. 4
4. 莢には柄がなく、直接に萼筒の内に座る。花は長さ5.5~7mm
 ...............................Melilotus suaveolens Ledeb. シナガワハギ(エビラハギ)
4. 莢爽には柄があり、萼筒の前方に飛び出している。(花は長さ5.5~7mm)
 ............ Melilotus officinalis (L.) Pall. subsp. officinalis セイヨウエビラハギ

参考

1) Flora of China
 Melilotus
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=120149
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Melilotus
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:325467-2
3) World Flora Online
 Melilotus
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000023647
4) 植物研究雑誌15(3): 182–184(1939)
 津山尚:Linnéの三名命名と日本産のMelilotus属の学名
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_015_182_184.pdf
5) 植物研究雑誌 29(1): 1–11(1954)
 幾瀬マサ. 日本産マメ科植物の花粉粒
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_015_182_184.pdf
 正誤表 (Errata) (l J. B. 29 no. 1. Jan. 1954)
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_029_63_64_book_review.pdf
6) Flora Iberica
 39. Melilotus Mill.
http://www.floraiberica.es/floraiberica/texto/pdfs/07_39%20Melilotus.pdf