シホウカはナス科ナス属の観賞・薬用の栽培種。ヨーロッパ、東アジア(中国、ロシア、ベトナム）に帰化し、日本でも栽培され、kangaroo appleto呼ばれ、学名はSolanum aviculareとされていたが、Solanum laciniatumの誤りであると訂正されている。原産地のニュージーランド、オーストラリアでは俗名をLarge kangaroo appleとし、Solanum aviculareはkangaroo appleとして区別している。Solanum laciniatumは4倍体、Solanum aviculareは2倍体であり、同種として扱う説も(GBIF)あり、この場合はSolanum aviculareを採用している。
　Solanum laciniatumとSolanum aviculareを比較すると海外で最も普通に見られるのはSolanum laciniatumであり、現在でも、しばしば、誤ってSolanum aviculareと呼ばれているものが見られる。日本でシホウカという名で流通しているのはSolanum laciniatumであり、カリフォルニアで野生化しているのもSolanum aviculareでなく、Solanum laciniatumであるが、広義に扱っていると思われる。両者の違いは次のとおり。
　Solanum laciniatumは染色体数が2n=92、花がかなり大きく直径(3)4～5㎝(暗紫色～青紫色)、花冠裂片が幅広で、フレアー(フリル)があり、先が円形～凹形、果実は黄色～橙黄色、種子が大きく長さ2～2.5mm。ニュージーランド北島、オーストラリア南部に広く分布し、普通に見られる。 　Solanum aviculareは染色体数が2n=46、花が小さく直径2.5～3.5(4)㎝(普通、淡青色、ときに暗紫色、白色又は青色と白色の縞）、花冠裂片が鋭形、果実は橙赤色～赤色、種子が小さく長さ1～1.5(2)mm。ニュージーランド、オーストラリアに分布するが数が少ない。

Solanum laciniatumとSolanum aviculare解説

1 Solanum laciniatum Aiton　ソラヌム・ラキニアツム(シホウカ　紫宝華)
　　synonym　Solanum aviculare var. laciniatum (Aiton) Domin
　　synonym　Solanum laciniatum f. novozelandicum Herasim.
　オーストラリア(ニューサウスウェールズ州、南オーストラリア州、タスマニア州、ビクトリア州、西オーストラリア州)、ニュージーランド(北島、チャタム島)原産。英名はlarge kangaroo apple , bullibul , bullibulli , pōpopo , poroporo , poroporotanguru。中国名は澳洲茄。別名はシホウゲ。
　低木、高さ3m以下、緑色、茎はしばしば紫色を帯び、若いときに小さな腺毛がある以外は無毛、刺は無い。葉は分裂又は全縁、先は尖鋭形、基部は漸尖し、表裏同色、普通、無毛。分裂する葉は広卵形、長さ9～38㎝、裂片は深く、長さ2～13㎝×幅0.3～2㎝、葉柄は長さ1～4㎝。全縁の葉は披針形、長さ5～20㎝×幅1～4㎝、葉柄は長さ0.5～1㎝。花序は単純又は基部で又状に分枝し、花は10個以下、1次の花序柄は長さ0～4㎝、花柄は長さ1.5～3㎝。萼は長さ4～6mm、咢片は三角形、長さ2～3mm、果時にわずかに大きくなる。花冠は車形、直径30～50mm、濃紫青色、裂片にノッチがある。葯は長さ3～4mm。液果は卵形～楕円形、直径15～20mm、黄色～橙黄色。種子は長さ2～2.5㎜、赤褐色、石細胞=球状顆粒(stone-cell=sclerotic granules：硬化した顆粒)は顆粒状、はとんどが長さ2～2.5㎜。花期は春～夏(Flora of Victoria)。2n=92(4倍体)。
【詳細な解説】 　柔らかい木質の低木、高さ1～3m、数年で主茎は直径10㎝以下になる、古くなると広がり、はびこり、若い成長する先、芽に小さな腺毛があり、苗と若葉にまばらに単純毛がある以外は無毛であり、すぐに無毛になり、普通、緑色、又は帯紫色になる。葉は同じ株で様々な大きさと分裂がある。植物標本は葉形の範囲がしばしば不十分である。分裂する葉は長さ15～30㎝x幅10～15㎝、広卵形、深く羽状全裂し、裂片は(1～)7(～9)個、各裂片は長さ10㎝x幅1㎝・以下、披針形、切れ込みは丸く、中肋に達せず、下部の裂片は普通、小さく、葉の基部はくさび形、多少、葉柄にある程度沿下し、葉先は鈍形～尖鋭形、成葉では中間の様々な形が起こる。全縁の葉は長さ(5～)10(～20)㎝ x 幅(1～)1.5(～4)㎝、披針形、全縁、基部はくさび形、葉先は尖鋭形。葉柄は長さ1㎝。花序はサソリ形集散花序、長さ5-15㎝、単純又は基部から又状に分枝し、しばしば、茎の又状の腋や葉腋につき、花は花柄があり、花も又状部分につき、花は少数～10個まで。花序柄は長さ4㎝以下。花軸(floral rhachis)は長さ10㎝以下。花柄は長さ1.5～3㎝、細く、果時に花軸は10～20㎝、花柄は長さ2～3 cmに長くなり、硬くなる。萼は長さ5㎜x幅5mm・以下、大きくなって、伏せ、果実の基部を被う。芽は狭楕円形、すぐに萼筒から突き出す。萼筒は長さ3～4mm、萼片は長さ2㎜、短く、幅が広く、縁はほとんど、薄膜質、先の尖りは長さ1mm、鈍く、微突形。花冠は直径3～5㎝、車形、 裂片の尖りの間の組織(interacuminal tissue)はよく発達し尖りを超え、裂片は凹形に見える、しばしば、華やかで、濃紫青色(RHS Aster Violet 38/1-38/2に近い)。花糸は長さ3～4(～5)mm。葯は長さ3～4mm、長円形、離生、先端から孔開(poricidal)し、孔は長くなり隙間になる。子房は長さ1.5～3mm、鈍い円錐形。花柱は長さ6～9mm。柱頭は頭状、短く2裂し、明瞭なパピラがある。果実は液果、直径1.5～2㎝、卵形～倒卵形、初め緑色、後に淡黄色～黄色～橙黄色、多汁。熟すとすぐに落ちる。果時の花序軸は10～20㎝、花柄は長さ2～3㎝、長く堅くなり、萼は長さ5mm×幅5mm・以下、大きくなり、伏せ、完全に果実の基部を被う。種子は200～300個、長さ2.5～3㎜、倒卵形～広倒卵形、赤褐色、表面に同心円状にしわがあり、少数の網状の線がある。石細胞(cells)は40～60個、球形、直径(1～)2～2.5(～3.5)㎜、まれに、面をもつ(SolanaceaeSource.org)。花期は4～6月。果期は7～9月。

2 Solanum aviculare G.Forst.　ソラナム・アヴィクラレ(シホウカ　紫宝華)
　　synonym　Solanum aviculare var. latifolium G.T.S.Baylis
　ニュージーランド(ニュージーランド北島・南島、チャタム諸島、ケルマデク諸島)、オーストラリア(ビクトリア州、ノーフォーク諸島)、ニューギニア原産。英名は kangaroo apple , bullibul , bullibulli , pōpopo , poroporo , poroporotanguru。別名はシホウゲ。オーストラリア南部、アメリカ西海岸、ハワイ、コーカサスに帰化しているとされているが、Solanum laciniatumの誤認とされるものが多いともいわれている。
　低木又は小高木、直立し、高さ4m以下、暗緑色、若いときと花に小さな単純毛と腺毛がある以外は普通、無毛、刺は無い。葉は分裂又は全縁、先は鋭形～尖鋭形、基部は漸尖し、表裏同色、無毛。分裂する葉は広楕円形～倒卵形、長さ15～30㎝、裂片は長さ1～10㎝×幅0.5～2㎝、葉柄は4㎝以下。全縁の葉は披針状楕円形、長さ8～25㎝×幅1～3.5㎝、、葉柄は長さ1～2㎝。花序は単純又は基部で又状に分枝し、花は10個以下つく。1次の花序柄は長さ0～3.5㎝。花は花柄があり花柄は長さ1.5～2㎝。萼は長さ5～6mm、咢片は三角形、長さ1.5～3㎜。花冠は車状の星形、直径25～40㎜、青紫色(blue-violet)、花冠裂片は鋭形。葯は長さ3.5～4.5mm。液果は卵形～楕円形、直径10～15㎜、橙赤色～ 朱色。種子は長さ1～1.5㎜、薄褐色～赤褐色。石細胞(stone-cell)は顆粒、ほとんどが長さ1～1.5㎜。花期はほとんど春～夏(Flora of Victoria)。2n=46(2倍体)。
【詳細な解説】
.　柔らかい木質の低木、直立し、高さ(1-) 2 (-4)m、数年で基部は木質になり、古くなるとはびこり、 クローンを作らない。茎は角(かど)があり、隆起線があり、若い成長する点と花冠の先の微細な単純毛と腺毛の他は無毛であり、普通、緑色、仮軸枝は多葉(plurifoliate)になる。葉は羽状全裂又は単葉、先は鋭形～尖鋭形、基部はくさび形、斜め。分裂する葉は長さ15～30㎝x幅10～15㎝、広楕円形～倒卵形、裂片は3～11個、各裂片は長さ1～10㎝x幅1～2㎝、披針形～長い三角形、切れ込みは丸く、中肋の1㎝位以内に切れ込み、裂片は先が鋭形～尖鋭形。単葉(全縁の葉)は長さ(8～)10(～25)㎝ x 幅(1～)2(～3.5)㎝、披針状楕円形。葉柄は長さ1～1.5㎝、普通、明瞭で基部まで翼は無い。花序はサソリ形集散花序、花は少数～10個まで、茎の又あるいは葉腋につき、しばしば基部で又状になり、又に花柄のある花がつく。集散花序はまれに2回又状分枝する。通常の花序柄は普通、無く、花軸(floral rhachis)は長さ15㎝以下。花柄は花時に長さ1.5～2㎝。芽は楕円形、すぐに萼筒から突き出す。萼は鐘形、長さ3～4㎜、萼片は鈍い三角形、先の尖りは短く、鈍い。花冠は直径3～4㎝、車状星形、 裂片は幅が広く、尖りの間の組織(interacuminal tissue)はわずかに裂片の尖りを超え、浅い鐘形で、しばしば、下向きになり、ブルーバイオレット色(Lavender Violet 637/1 & 2に近い)、中心に濃バイオｒット色の星形をもつ。花糸は長さ約3mm、太い。葯は長約4mm、長円形、硬く、直立し、先端に孔開(poricidalがあり、孔は長くなり隙間になる。子房は無毛。花柱は長さ7～8mm、わずかにS字形、淡色、直立、無毛。柱頭は淡色又は緑色。果実は液果、長さ約2㎝×幅1～1.5、倒卵形～楕円形、熟すと明るい橙赤色～真紅色、多汁。種子は200～600個、長さ1.5～2㎜、倒卵形～広倒卵形、薄褐色～赤褐色、表面に細かい同心円状のしわの網目がある。石細胞(cells)は12～60個、球形、直径0.75～1.5㎜、まれに、大きく、まれに面をもち、明瞭ではない(SolanaceaeSource.org)。

参考

1) World Flora Online
　Solanum 　 2) Flora of China
　Solanum 　 3）Plants of the World Online | Kew Science
　Solanum tuberosum L. 　 4）GRIN
　Solanum 　 5) Factsheet - *Solanum melongena
　Solanum melongena 　 6）SOLANUM MURICATUM AIT. (PEPINO FRUIT) ADDITION TO THE FLORA OF WESTERN GHATS, INDIA
　Solanum muricatum 　 7）Flora of Victoria
　Key to the species of Solanum 　 8) Flora of New Zealand
　Solanum laciniatum Aiton 　 9) New Zealand Plant ...
　Solanum aviculare var. aviculare 　 10) Useful Tropical Plants
　Solanum aviculare