寒冷地域の海岸に群生する。野村半島や礼文島など北海道には群生地が多い。三河地方でも園芸植物として植えられ、目にすることができる。学名はThermopsis lupinoides (L.) Linkとされていたが、この学名はホソバセンダイハギ(Thermopsis lanceolata R.Br.)のsynonymとされ、センダイハギの学名はThermopsis fabacea (Pall.) DC.に訂正された。
　多年草、高さ50～80cm。根茎は太く、茎は直立して分枝し、垂直にうねがあり、先部には白色の微軟毛があり、基部には無毛になる。托葉は楕円形または卵形、長さ2～5cm×幅1.5～3cm、葉柄と同長。小葉は広楕円形、長さ3.5～8cm×幅(2～)2.5～3.5(～4.7)cm、基部は楔形、先は鈍形または鋭形、頂小葉はやや長く、広披針形で、下面に白色の軟毛があり、上面は無毛。総状花序は頂生、長さ5～18(～25)cm、密に軟毛がある。花は互生し、多数、散生する。苞は披針形、長さ8～15mm。小花柄は長さ5～10mm。萼は長さ約10mm、密に伏軟毛がある。花冠は黄色、長さ2～2.5cm、花弁はほぼ等長。子房は密に絹毛がある。胚珠は10～14個。豆果は線形、長さ3～9(～12)cm×幅0.5～0.8cm、真っ直ぐで上方向に先細り、広がり、褐色の毛がまばらにある。種子は暗褐色、腎形、扁平、長さ3～4mm×幅2～3mm。花期は5～8月。2n=18。
　クロタラリア・スペクタビリスなどタヌキマメ属は花が黄色でよく似ている。托葉が小さい。花の側弁が小さく、萼片が大きい。

センダイハギ属

　　family Fabaceae － genus Thermopsis
　多年草。根茎は這い、1年生の枝を直立し、基部の托葉は結合して鞘になり、薄膜質、3裂する。葉は指状に3小葉になり、葉柄がある。托葉は大きく、葉状、分離。総状花序は葉に対生し又は頂生する。苞は合着し、側托葉をもち、3(又は6)裂、宿存性。小苞は無い。萼は下側は鐘形又は凸月形(gibbous：ギボス形)、5歯がある。花冠は黄色、まれに紫色、花弁は爪部がある。雄しべは10個、分離。胚珠は4～22個。豆果は線状長楕円形又は卵形、真っすぐ又は曲がり、革質。種子は腎形又は球形、へそは小さく、白色。
　世界に約25種があり、アジア中部、東部と北アメリカに分布する。中国には12種あり、4種が固有種。

センダイハギ属の主な種と園芸品種

1 Thermopsis chinensis Benth. ex S.Moore　クソエンドウ　糞豌豆
　日本(奄美大島～沖縄)、中国(安徽省、福建省、河北省、湖北省、江蘇省、陝西省、浙江省)原産。中国名は霍州油菜 huo zhou you cai 。隆起サンゴ礁、海岸、河川敷、荒れ地、道端に生える。
　多年、高さ約50cm。茎は直立し、うねがあり、若い茎は広がる絨毛があり、無毛になり、分枝し、小枝は斜上する。主茎の托葉は線状卵形で葉柄より長く、枝上の托葉は披針形で葉柄より短い。小葉は倒卵形または狭倒卵形、長さ2～4.5cm×幅0.8～2cm、下面にはまばらに絨毛があり、上面は無毛、基部は楔形、先は円形で微突形である。総状花序は長さ10～30cm、花は互生する。苞は卵形、長さ1.2～1.9cm。萼は長さ8～13mm、まばらに微軟毛がある。花冠は黄色、長さ2.4～2.8cm、花弁は長い爪部がある。子房は密に絹毛がある。胚珠は16～22個。豆果は線状披針形、長さ5～7cm×幅0.7～0.8cm、ほぼ直立し茎に接し、薄い木質、嘴があり、まばらに黄色の伏した粗毛がある。種子は15～20個、赤褐色、腎形、約・長さ2.5mm×幅2mm、密に腺がある。花期は(12～)4～5月。果期は6～7月。

2 Thermopsis fabacea (Pall.) DC.　センダイハギ　先代萩
　　synonym　Sophora fabacea Pall.
　　synonym　Thermia fabacea (Pall.) Spreng.
　日本、朝鮮、中国(黒龍江省、吉林省)、ロシア、カザフスタン原産。中国名は野决明 ye jue ming。砂浜、渓谷の氾濫原、または海岸に生える。
　多年草、高さ50～80cm。根茎は太く、茎は直立して分枝し、垂直にうねがあり、先部には白色の微軟毛があり、基部には無毛になる。托葉は楕円形または卵形、長さ2～5cm×幅1.5～3cm、葉柄と同長。小葉は広楕円形、長さ3.5～8cm×幅(2～)2.5～3.5(～4.7)cm、基部は楔形、先は鈍形または鋭形、頂小葉はやや長く、広披針形で、下面に白色の軟毛があり、上面は無毛。総状花序は頂生、長さ5～18(～25)cm、密に軟毛がある。花は互生し、多数、散生する。苞は披針形、長さ8～15mm。小花柄は長さ5～10mm。萼は長さ約10mm、密に伏軟毛がある。花冠は黄色、長さ2～2.5cm、花弁はほぼ等長。子房は密に絹毛がある。胚珠は10～14個。豆果は線形、長さ3～9(～12)cm×幅0.5～0.8cm、真っ直ぐで上方向に先細り、広がり、褐色の毛がまばらにある。種子は暗褐色、腎形、扁平、長さ3～4mm×幅2～3mm。花期は5～8月。2n=18。
　FOC 出版後訂正: Sophora lupinoides Linnaeus を保存型で保存することが維管束植物委員会によって推奨されなかったため、Thermopsis lupinoides (Linnaeus) Link (FOC 10: 102) は現在、正しくは T. fabacea (Pallas) Candolle と命名されている。[Flora of China]

3 Thermopsis lanceolata R.Br.　ホソバセンダイハギ　細葉先代萩
　　synonym　Thermia lupinoides Nutt.
　　synonym　Thermopsis glabra Czefr.
　　synonym　Thermopsis lanceolata var. glabra (Czefr.) Yakovlev
　　synonym　Thermopsis lanceolata subsp. glabra (Czefr.) Kurbatski
　　synonym　Thermopsis lanceolata subsp. sibirica (Czefr.) Kurbatski
　　synonym　Thermopsis lupinoides (L.) Link
　　synonym　Thermopsis orientalis Czefr.
　　synonym　Thermopsis sibirica Czefr.
　中国(甘粛省、河北省、内モンゴル自治区、陝西省、山西省、新疆ウイグル自治区、西蔵)、モンゴル、ロシア、ネパール、カザフスタン原産。中国名は披针叶野决明 pi zhen ye ye jue ming。草原、渓谷、荒地生える。
　多年草。茎は直立し、長さ12～40cm、うねがあり、クリーム色の毛がある。托葉は卵形～披針形、長さ1.5～3cm、先は尖鋭形。葉柄は長さ3～8mm。小葉は線状長円形または倒披針形～線形、長さ2.5～7.5cm×幅0.5～1.6cm、下面に伏した微軟毛があり、上面は無毛。総状花序は頂生し、長さ6～17cm。花は2～6段に2～3輪生する。苞は長さ8～20mm、宿存する。萼は長さ1.5～2.2cm、凸月形(gibbous)、密に毛がある。花冠は黄色、長さ2.5～2.8cm、花弁には長い爪部がある。子房は密に毛があり、長さ2～3mmの柄がある。胚珠は12～20個。豆果は褐色、線形、長さ5～9cm×幅0.7～1.2cm、微軟毛があり、嘴がある。種子はバルブの中央線上にあり6～14個つき、黒色、灰白色の蝋質被膜があり、腎形、長さ3～5cm×幅2.5～3.5mm、平滑。花期は5～7月。果期は6～10月。

4 Thermopsis rhombifolia (Pursh) Richardson　アメリカセンダイハギ　亜米利加先代萩

　　synonym　Thermia rhombifolia (Pursh) Nutt.
　　synonym　Thermopsis annulocarpa A.Nelson
　　synonym　Thermopsis arenosa A.Nelson
　USA(コロラド州、モンタナ州、ネブラスカ州、ニューメキシコ州、ノースダコタ州、オクラホマ州、サウスダコタ州、ユタ州、ワイオミング州)、カナダ(アルバータ州、ブリティッシュコロンビア州、マニトバ州、オンタリオ州、サスカチュワン州、)原産。英名はcircle-pod-pea。標高2000～3000mの深層沖積土壌および低地の峡谷内の乾燥した草原、道端に生える。
　多年草、矮性で強健、高さ1.2～3m、ほぼ無毛～伏した軟毛を持つ。茎は細く、直立または斜上し、単生または束生し、少数の枝分かれをし、木質の根茎(rootstock)または根茎(rhizomes)から生じる。枝は25～50度斜上し、弱くジグザグに曲がる。葉：托葉は宿存し、卵形～広卵形、または楕円形～広楕円形、長さ1～2.6cm×幅0.5～1.5(～2.2)cm、基部は楔形～斜め、先は鋭形～鈍形で短い微突形。葉柄は長さ0.8～2.2cm。小葉は楕円形～倒卵形または狭楕円形、長さ1.7～3.3cm×幅0.6～2cm、側脈は5～7対、下面には顕著に網状脈があり、先は鋭形～鈍形、ときに短い微突形、下面には伏毛～まばらに綿毛があるかまたはほぼ無毛、上面は無毛。花序柄は長さ1～4cm、苞は脱落性、楕円形～倒卵形、長さ5～9mm×幅3～5mm。総状花序は花が5～15個つき、長さ4～12cm、花は2～3個が輪生するかまたは散在する。小花柄は長さ3～7mm、ほぼ無毛～密に伏軟毛がある。花は黄色、長さ1.9～2.1cm。萼は拡大部が長さ(6～)8～10(～12)mm×幅4.5～6mm、萼片は長さ(3～)4～5mmで萼筒と同長かそれより短い。翼弁は非対称な長円形～極広い卵形、竜骨弁は非対称な長円形～広楕円形。子房はほぼ無毛～伏した微軟毛を持つ。胚珠は12～14個。豆果は散開し、強い弓形～環状で、長さ3～7cm×幅0.4～0.7cm、ほぼ無柄～まばらに綿毛がある。種子は2～10個、褐色、楕円形、長さ3.5～4mm×幅約2.5 mm、嘴がある。2n=18。花期は5～6月。

参考

1) GRIN
　Thermopsis 2) Flora of North America
　 Thermopsis 3) Flora of China
　Thermopsis