サギゴケ 鷺苔

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Flora of Mikawa

サギゴケ科 Mazaceae サギゴケ属

別 名 ムラサキサギゴケ、ヤマサギゴケ
中国名 匍茎通泉草 pu jing tong quan cao
英 名 Miquel's mazus, Manchurian violet
学 名 Mazus miquelii Makino
サギゴケの花
サギゴケの淡紫色の花
サギゴケの萼
サギゴケの腺毛
サギゴケ走出枝の葉
サギゴケ果実
サギゴケ
サギゴケ葉
サギゴケ種子
花 期 4~5月
高 さ 10~15㎝
生活型 多年草
生育場所 田の畔などやや湿った場所
分 布 在来種  本州(東北以西)、四国、九州、中国、台湾
撮 影 蒲郡市形原町  01.4.29
新分類(APGⅢ)ではゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)からハエドクソウ科に移され、さらにサギゴケ科として独立した。
 春咲きの多年草で、走出枝(ランナー)を出して広がる。葉は根もとにつき、長さ4~7㎝、幅1~1.5㎝の倒卵形~楕円形。走出枝の茎葉は短くて丸い。花は長さ1.5~2㎝、淡紫色~紅紫色の唇形。上唇は色が濃く、斜上~直立して2裂する。下唇は3裂し、下唇には黄褐色の隆起した斑紋があり、棒状の毛が生える。茎、萼、花冠に毛や腺毛が生えるが、ほとんどないものもある。雄しべ4個、雌しべ1個。柱頭は上下に2裂し、細毛が生える。果実は長さ約4㎜のほぼ球形。種子は長さ0.4~0.5㎜。2n=20。
 毛や腺毛が多く、走出枝の茎葉が小さくて丸いものをヤマサギゴケと別品種扱いすることもあるが、中間型のものもある。
 花が白色のものが稀にあり、シロバナサギゴケという。
 花が淡紫色のサギゴケは春にはトキワハゼと間違えやすい。トキワハゼは1年草で走出枝を出さず、花が夏や秋にも見られる。花冠がやや小さく、上唇があまり立たず、上唇先端の2裂が小さく、下唇がほとんど白色に近い。

サギゴケ属

  family Mazaceae - genus Mazus

 草本、比較的小型。 茎は円柱形またはまれに4稜形(Mazus lanceifolius)、直立または傾伏し、下部の節から発根する。葉はロゼットにつき、または対生し、しばしば、上部の茎葉は互生する。葉柄には翼がある。総状花序は偏側性(secund)。苞は小さい。小苞は有または無。花は小さい。萼は漏斗形または鐘形、5裂。花冠は2唇形、口蓋(palate)は2本の縦のひだ(plaits)がある。 下唇は3裂、上唇は2裂する。雄しべは4本、2強雄しべ、花冠筒部につく。葯室は散開し、先が輻合する(connivent)。子房は有毛または無毛。花柱は無毛。柱頭は2薄片がある(lamellate)。蒴果は扁平、宿存する円蓋形の萼に含まれ、胞背裂開する。種子は小さく、多数。
 世界に約41種あり、日本、韓国、中国、モンゴル、ロシア、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランドに分布する。

サギゴケ属の主な種と園芸品種

1 Mazus alpinus Masam. タカネサギゴケ 高峰鷺苔
 台湾原産。中国名は高山通泉草 gao shan tong quan cao。標高1700~3400mの岩の多い斜面の草原に生える。
 多年草。茎は直立または斜上し、花茎をもつ。匍匐茎は長さ30㎝まで、粗毛があり、ときに、非常にまばらに毛がある。根生葉はロゼットになり、葉身はへら形、長さ1.5~5㎝×幅0.8~1.5㎝、基部は漸尖し、縁は粗い円鋸歯~歯状、または羽状に浅裂する。匍匐茎の葉は対生し、無柄または葉柄があり、葉身は倒卵形~ほぼ円形、根生葉よりかなり小さい。花のつく茎は花茎(scapose)であり、長さ15㎝以下 で、粗毛がある。総状花序は主茎および匍匐茎に生じ、花が3~13個つく。苞は錐形。小花柄は長さ5~6㎜。萼は鐘形、長さ3~8㎜、中間まで深裂する。萼片は錐状披針形、萼筒と同長、先は鋭形。花冠は淡紫色、長さ1~2.2㎝。花期は3~9月。

2 Mazus delavayi Bonati マズス・デラバイ

  synonym Mazus pumilus var. delavayi (Bonati) T. L. Chin ex D. Y. Hong

 中国(広西省、四川省、雲南省)、インド、ネパール、ブータン、ミャンマー、パキスタン原産。中国名は通泉草多枝变种 tong quan cao duo zhi bian zhong。標高1200~3800mの道端、湿地に生える。Flora of ChinaではMazus pumilusの変種とされていた。
 高さ10㎝以上。茎は多数あり、枝分かれが多い。根生葉の葉柄は葉身より短い。総状花序は長く、花は10~20個つく。小花柄は短く、長さ5(~7)㎜未満。萼は果時にも大きくならない。

3 Mazus fauriei Bonati セイタカサギゴケ 背高鷺苔
 台湾原産。中国名は台湾通泉草 tai wan tong quan cao。POWOでは日本(奄美大島~南西諸島)は分布域に含まれない。海抜近くの海岸の崖に生える。
 多年草、高さ8~20㎝、白色の絨毛がある。一次根は短く、ひげ根は多数、房状になる。花茎は直立しない。葉はすべて根生し、ロゼットになる。葉柄は広い翼がある。葉身は倒卵状へら形、長さ2~6㎝、紙質、基部は漸尖し、縁は粗く鋸歯~重鋸歯があるか、または基部で羽状深裂し、先は鈍形。 花茎はしばしば分枝し、円柱形からやや肋があり、細く、斜上し、葉が無くまたは1~2個の小さな葉がある。総状花序は花が3~15個、緩くつく。苞は卵状三角形、長さ1.5~3㎜。花柄は細く、長さ1~2cm。萼は鐘形、長さ5~7㎜、果時に長さ1㎝に拡大する。萼片は咢筒と同長 披針状三角形、先は鋭傾、脈は不明瞭。花冠は薄紫色、長さ1.2~2㎝、下唇は卵形、中裂片は側裂片より狭く、長い。上唇は直立し、裂片は狭三角形。子房は無毛。蒴果は無毛、萼筒よりわずかに長い。種子は褐黄色。種皮は細かい網目がある。花期および果期は4~5月。

4 Mazus miquelii Makino サギゴケ 鷺苔
  synonym Mazus japonicus Bonati
  synonym Mazus reptans N.E.Br.
  synonym Mazus miquelii Makino var. stolonifer (Maxim.) Nakai

  synonym Mazus miquelii Makino f. rotundifolius (Franch. et Sav.) T.Yamaz.

 日本(本州の東北以西、四国、九州)、中国、台湾原産。中国名は匍茎通泉草 pu jing tong quan cao。英名はMiquel's mazus, Manchurian violet , creeping mazus。別名はムラサキサギゴケ、ヤマサギゴケ。田の畔などやや湿った場所に生える。
 多年草。高さ10~15㎝。春咲きの多年草で、走出枝(ランナー)を出して広がる。葉は根もとにつき、長さ4~7㎝、幅1~1.5㎝の倒卵形~楕円形。走出枝の茎葉は短くて丸い。花は長さ1.5~2㎝、淡紫色~紅紫色の唇形。上唇は色が濃く、斜上~直立して2裂する。下唇は3裂し、下唇には黄褐色の隆起した斑紋があり、棒状の毛が生える。茎、萼、花冠に毛や腺毛が生えるが、ほとんどないものもある。雄しべ4個、雌しべ1個。柱頭は上下に2裂し、細毛が生える。果実は長さ約4㎜のほぼ球形。種子は長さ0.4~0.5㎜。花期は4~5月。2n=20。
【Flora of Chinaの解説】  多年草、無毛またはまばらに絨毛がある。一次根は短く、多数のひげ根が束生する。茎は直立~斜めに斜上し、長さ10~15cm。匍匐茎は長さ15~20㎝、節から発根するかまたはしない。根生葉は多数、ロゼットになり、葉柄がある。葉身は卵状へら形、葉柄を含めて長さ3~7㎝、縁は粗い鋸歯があり、ときに羽状全裂する。茎葉は直立した茎に互生し、匍匐茎ではほとんど対生する。葉柄は短い。 葉身は卵形~ほぼ円形、葉柄を含めて長さ1.5~4㎝×幅2㎝未満、縁にはまばらに鋸歯がある。総状花序は頂生、長い、緩い。花柄は花序の先では次第に短くなり、下部の花柄は2㎝以下。萼は鐘状漏斗形、長さ7~10mm、裂片は披針状三角形、筒部と同長。花冠は紫色または白色で帯紫色の斑点があり、長さ1.5~2㎝。下唇の中裂片は卵形、側裂片より短く、わずかに突き出る。上唇は直立し、短い。 蒴果は球形、わずかに突き出る。花期および果期は2~8月。
品種) 'Alba' , 'Albiflorus' , 'Albus' , 'Blue' , 'Purple'

4-1 Mazus miquelii Makino f. albiflorus (Makino) Makino シロバナサギゴケ 白花鷺苔

 白花品種。英名はWhite-flowered Mazus。

4-2 Mazus miquelii Makino f. contractus (Makino) Sugim. ex T.Yamaz. ジャカゴソウ 蛇籠草

  synonym Mazus miquelii Makino var. contractus Makino
 葉が縮れる変種。

4-3 Mazus miquelii Makino f. roseus (Honda) Nakai モイロサギゴケ 桃色鷺苔

 花が桃色の品種。
5 Mazus pumilus (Burm.f.) Steenis トキワハゼ 常盤黄櫨
  synonym Mazus japonicus (Thunb.) Kuntze

  synonym Mazus goodeniifolius (Hornem.) Pennell ヒメサギゴケ

 日本全土、朝鮮、中国(安徽省、福建省、甘粛省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、海南省、河北省、黒竜江省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、吉林省、遼寧省、陝西省、山東省、山西省、四川省、西蔵、雲南省、浙江省)、台湾、ロシア、インド、アッサム、スリランカ、ネパール、ブータン、アフガニスタン、タジキスタン、パキスタン、ミャンマー、バングラデシュ、カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム、フィリピン、インドネシア(ジャワ、小スンダ列島)、ニューギニア原産。中国名は通泉草 tong quan cao。英名はJapanese Mazus。道端、畑に生える。和名は1年中花が見られて、実がはぜることから。乾きに強く、乾いた空地や道端でもよく見られ、地面に平らに這うように生えていることも多い。
 1年草又は2年草、高さ5~15㎝。走出枝は出さない。葉は浅い鋸歯があり、根もとに集まり、長さ2~5㎝の卵形、茎の中上部の葉は少なく、小さい。花は総状花序につき、長さ約10㎜。上唇は紫色~淡紫色、先端が白っぽく、小さく2裂する。下唇は白色~淡紫色、黄色と赤褐色の斑紋がある。萼は先が5裂し、花後も果実を包んで残る。花柄や萼に腺毛が多く、萼片の内側や花冠にも腺毛がある。花柄の腺毛は短く、先端の球が大きい。果実はやや扁平な球形、熟すと先が2つに裂開する。種子は長さ約03㎜、多数。2n=40。花期は4~11月。
5-1 Mazus pumilus var. macrocalyx (Bonati) T.Yamaz.
  synonym Mazus macrocalyx Bonati
 中国(広東省、広西チワン族自治区、四川省、雲南省)、台湾、タイ原産。中国名は通泉草大萼变种 tong quan cao da e bian zhong。標高1200~2800mの川沿い、道端、山腹の草地に生える。
 茎は分枝しない。根生葉の葉の葉柄はしばしば葉身と同じかそれ以上の長さになる。萼は果時に約2倍に大きくなり、直径2㎝になる。
5-2 Mazus pumilus var. pumilus トキワハゼ 常盤黄櫨

  synonym Mazus pumilus (Burm.f.) Steenis f. senanensis (Asai) Yonek. シロバナトキワハゼ

  synonym Mazus goodeniifolius (Hornem.) Pennell ヒメサギゴケ
 日本全土、朝鮮、中国(安徽省、福建省、甘粛省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、海南省、河北省、黒竜江省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、吉林省、遼寧省、陝西省、山東省、山西省、四川省、西蔵、雲南省、浙江省)、台湾、ロシア、インド、アッサム、スリランカ、ネパール、ブータン、アフガニスタン、タジキスタン、パキスタン、ミャンマー、バングラデシュ、カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム、フィリピン、インドネシア(ジャワ、小スンダ列島)、ニューギニア原産。中国名は通泉草 tong quan cao。標高2500m以下の湿地、小川沿い、道端、荒れ地、森林の縁に生える。  高さ10㎝以上になる。茎は少なく、分枝も少ない。根生葉の葉柄は葉身より短く、葉縁は歯状または裂片状。総状花序には花が5~20個の花がつく。小花柄は長さ5~12㎜、果時にも萼は大きくならない。花期と果期は4~10月。
※ヒメサギゴケはPOWOではトキワハゼのsynonymとされている。

(1) Mazus pumilus (Burm.f.) Steenis f. senanensis (Asai) Yonek. シロバナトキワハゼ 白花常盤黄櫨

  synonym Mazus japonicus (Thunb.) Kuntze f. senanense Asai
 白花品種

(2) Mazus goodeniifolius (Hornem.) Pennell ヒメサギゴケ 姫鷺苔

  synonym Mazus delavayi auct. non Bonati
  synonym Mazus yakushimensis Sugim. ex T.Yamaz.
 日本(九州南部、南西諸島)、台湾、ニューギニア原産。山地の渓流の岩上に生える。
 2年草、高さ5~15㎝。ランナーは出さない。葉は根生または下部につき、葉身は倒卵状長楕円形、長さ2~5㎝×幅1~2㎝、縁は粗い鋸歯があり、先は鈍形、表面にやや硬い毛がある。花茎は直立し、分枝し、頂生の総状花序に花がまばらにつく。花は白色~薄黄色、やや紅紫色を帯び、長さ0.7~1㎝。萼は杯形、粗毛があり、5深裂する。萼片は三角状卵形。花冠は基部が筒状の2唇形。上唇は卵形、2浅裂し、長さは下唇の約半分。下唇は3裂する。蒴果は扁球形で萼に包まれる。花期は(3~)4~7月。

5-3 Mazus pumilus var. wangii (H.L.Li) T.L.Chin ex D.Y.Hong

  synonym Mazus wangii H.L.Li
 中国(雲南省南部)原産。中国名は通泉草匍茎变种 tong quan cao pu jing bian zhong。標高1500~2500mの森林の湿った場所に生える。
 高さ10㎝未満。茎には這って斜上する枝がある。根生葉の葉柄は葉身より短く、葉縁はほぼ全縁。総状花序には3~7個の花がつく。萼片は果時にも大きくならない。

6 Mazus quadriprotuberans N.Yonez. カワセミソウ 翡翠草
 日本固有種。カワセミソウは1998年に京都府の京都御苑で発見され、2000年に報告された。サギゴケ類似種であるが花筒部が顕著に長いのが特徴。他の場所では見つかっていない。
 多年草、走出枝を出し、高さ5~10㎝。葉は根もとに集まり、倒卵形、長さ2~5㎝、縁には粗い鋸歯があり、先は鈍形。総状花序に花がまばらにつく。花は筒部が著しく長い筒状、筒部は拡大部の長さの2倍以上あり、先の拡大部は2唇形。花冠は紫色で拡大部の基部の内側および筒部の腹側は白色で黄色~淡褐色の斑紋がある。花冠筒部は長さ2~2.5㎝、背側から見ると中間の幅が最も広くなる。上唇は2裂し、裂片は長三角形、直立する。下唇は3裂し、口蓋(palate)には4本の隆起帯がある。花期は4~5月。

7 Mazus stachydifolius (Turcz.) Maxim. タチサギゴケ 立鷺苔
 韓国、中国(安徽省、広東省、河北省、黒竜江省、河南省、湖北省、江蘇省、江西省、吉林省、遼寧省、陝西省、山東省、山西省、四川省、浙江省)、台湾、モンゴル、ロシア原産。中国名は弹刀子菜 dan dao zi cai。標高1500m以下の端、草原、森林の端の湿地に生える。
 多年草、高さ10~50㎝、白色の絨毛がある。根茎は短い。茎は直立し、まれに斜上し、円柱形、古くなると基部が木質化する。根生葉は短い葉柄があり、葉身はへら形。茎葉は対生または上部の葉が互生し、無柄、楕円形~倒卵状披針形、長さ2~7㎝、紙質で、縁は不規則に鋸歯がある。総状花序は頂生、緩く、長さ2~20㎝。苞は三角形~倒卵形、長さ約1mm。小花柄は萼より短いか同長。萼は漏斗形、長さ5~10㎜、果時には長さ1.6㎝まで、直径1㎝以上になる。萼片は萼筒よりわずかに長く、披針形~三角形、先は狭い鋭形、目立つ10脈がある。花冠は青紫色、長さ1.5~2㎝、花冠筒部は唇弁とほぼ同じ長さ。下唇は黄色の細点があり、大きく、平らに広がり、パピラ状の腺毛があり、中裂片は他の裂片より小さく、ほぼ円形。上唇は短く、裂片は狭三角形、先端は鋭形。子房は先に長い粗毛がある。蒴果は卵形、長さ2~3.5㎜、扁平。花期は4~6月。果期は7~9月。

参考

1) Flora of China
 Mazus
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=119919
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Mazus
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:60452048-2
3) World Flora Online
 Mazus
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000012430
4) 兵庫教育大学 研究紀要 第56巻 2020年2月 pp.189-193
 京都御苑固有植物カワセミソウ(サギゴケ科)の系統的位置付け
http://repository.hyogo-u.ac.jp/dspace/bitstream/10132/18610/1/AA1198478905600021.pdf