オヤマボクチ 雄山火口

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Flora of Mikawa

キク科 Asteraceae  ヤマボクチ属

別 名 ヤマゴボウ
学 名 Synurus pungens (Franch. et Sav.) Kitam.
 synonym Synurus deltoides (Aiton) Nakai

 synonym Serratula atriplicifolia (Trevisan) Bentham et Hooker var. incisolobata Miyabe et Miyabe

オヤマボクチの蕾
オヤマボクチの花
オヤマボクチの花
オヤマボクチ小花
オヤマボクチの総苞のクモ毛
オヤマボクチの花後
オヤマボクチの痩果
オヤマボクチの葉裏の白毛
オヤマボクチの茎
オヤマボクチの葉2
オヤマボクチ
オヤマボクチ花冠筒部
オヤマボクチ柱頭
オヤマボクチ痩果と種子
オヤマボクチ葉表
オヤマボクチ葉裏
花 期 9~10月
高 さ 80~150㎝
生活型 多年草
生育場所 日当たりの良い山野
分 布 在来種  北海道、本州(岐阜県以北)、四国、朝鮮
撮 影 設楽町  02.10.5
オヤマボクチは本州東部以北、ヤマボクチは本州西部以南に分布し、愛知県は境界にあたる。ヤマボクチはキクバヤマボクチの葉に切れ込みがないもので、浅鋸歯縁であり、生育数の少ないものである。両者の差は高さ、葉の形と大きさと厚さ、総苞のクモ毛の量、頭花の大きさである。しかし、植物は生育環境により小さいこともよくあり、葉の大きさや形だけで判別することは難しい。広義にSynurus deltoidesとするミズーリ植物園(MBG)などの見解に従った方が良いのかもしれない。葉柄に狭い翼があることが異なっていると思われたが、基部に狭い翼がある。いずれにしろDNA解析によらなければ結論は出ないと思われる。
 茎は直立して分枝し、白色の綿毛がある。葉は互生し、下部の葉は長さ15~35㎝の卵状長楕円形、不規則な鋸歯縁(やや深いものから浅いものまで変化がある)、基部は心形、葉柄は長く基部に狭い翼がある。葉裏には白色の毛がフェルト状に密生する。茎上部の葉は小形、短柄。上部で分枝した枝先に頭花をつける。頭花は下向きに咲き、総苞は長さ約3㎝、幅35~4㎝、球鐘形、くも毛があり、開花すると全体に紫色~紫褐色になってくる。総苞片は覆瓦状に多列あり、中位の総苞片は下部の幅約2㎜、線状披針形、先が刺状、外片~中片の先が開出し、花後にさらに次第に開く。小花は花冠が紫色~赤紫色、すべて筒状花、筒状花の狭部(花冠の節から下部:実測5㎜)は太い部分(花冠の節から上の筒部:実測10㎜)より短い。葯は暗紫褐色、後にすぐに退色して淡褐色になる。小花は外側から咲き、外側の小花から退色する。花柱はピンク色、柱頭は長さ約5㎜、ピンク色、先が2裂する。花粉は白色。痩果は長さ約6㎜、幅3㎜。冠毛は帯褐色、不同長、長さ約16㎜(実測10~18㎜)、単一毛、上向きの刺がある。
 ハバヤマボクチ Synurus excelsus = Serratula atriplicifolia var. excelsa は本州(福島県以西)、四国、九州に分布し、オヤマボクチより低いところに生える。茎は高さ80~100㎝、白色のくも毛がある。下部の葉は長さ10~20㎝、長さより幅が広く、三角形、基部がはほこ形に張り出す。葉裏は白色の毛がフェルト状に密生する。総苞は球形長さ約3㎝、幅3~5㎝。総苞片は線状披針形。筒状花は濃紫色、狭部は太い部分と同長又はやや短い。痩果は長さ約6㎜、幅3㎜。冠毛は帯褐色、不同長。長さ約20㎜、上向きの刺がある。
 ヤマボクチ Synurus palmatopinnatifidus var. indivisus は本州(愛知県以西)、四国、九州、朝鮮に分布し、茎は高さ70~100㎝。葉は長さ15~25cm、卵形~卵状長楕円形、基部は心形、質がやや薄く、裏面に白い綿毛がフェルト状に密生する。キクバヤマボクチに似るが、掌状に中裂せず、浅い鋸歯縁。総苞は長さ約3㎝の球鐘形、クモ毛が明瞭に少なく、総苞片は狭く針状で開出する。筒状花の花冠は淡紫色(~淡黄色)。冠毛は帯褐色、不同長、長さ約15㎜。キクバヤマボクチと同じような場所に生育し、根生葉の時には判別できない。チョウセンヤマボクチと同一とする見解がある。花や、葉の形・厚さは変化があり、総苞のクモ毛の量で判別するのが最も簡単な方法である。
 キクバヤマボクチ Synurus palmatopinnatifidus var. palmatopinnatifidus =Serratula deltoides var. palmatopinnatifida は本州(滋賀県以西)、四国、九州に分布し、茎は高さ70~100㎝。下部の葉は長さ15~25㎝、掌状に中~深裂し、浅い鋸歯縁。幼時の葉は切れ込みがない。総苞は長さ約3㎝、幅3~4㎝、クモ毛がある。筒状花の花冠は白色(~淡紫色)。痩果は長さ約6㎜。冠毛は長さ約20㎜。
 チョウセンヤマボクチ Synurus deltoides= Serratula atriplicifolia var. atriplicifolia朝鮮、中国、モンゴル、ロシアに分布し、中国名を山牛蒡(shan niu bang)という。 日本のヤマボクチ、オヤマボクチ、ハバヤマボクチもこれに含める見解があり、Flora of China では日本も分布域に含めている。高さ70~150㎝。根生葉及び下部の茎葉の葉柄は長さ34㎝以下、狭い翼がある。それらの葉身は長さ10~26㎝、幅12~20㎝、ハート形~卵形~広卵形~卵状三角形~ほこ形、基部は心形~矢尻形~切形。上部の茎葉は上側ほど小さく、無柄~短柄、卵形~楕円形~楕円状披針形。葉縁は歯状~刺状。頭花は数個。総苞は直径3~6㎝、ふわふわしたクモ毛状、総苞片は13~15列、外総苞片と中総苞片は披針形、長さ7~23㎜、幅3~4㎜、真っすぐ又は反り返る。内総苞片は長く、線状披針形、長さ23~25㎜、幅約2㎜、ときに紫色になる。花冠は長さ約25㎜、筒部は長さ約9㎜。痩果は褐色、狭楕円形、長さ約7㎜、先は切形。冠毛は褐色の剛毛、長さ15~20㎜。2n=26。

ヤマボクチ属

 family Asteraceae - genus Synurus

 多年草。葉は心形~三角状矢じり形、分裂せず又はときに羽状分裂し、縁は歯状又は小刺のある小歯状。頭花は大きく、下を向く。総苞は球形。総苞片は覆瓦状、披針形~線状披針形、硬く、先は長く尖鋭形。花托は長い剛毛をもつ。花冠は紫色。雄しべは花糸が無毛。葯は長い強く裂かれた付属体を基部にもち、花糸の上部を包む筒状の鞘に融着する。花柱の枝は短い。痩果は倒卵形、側面が扁平、縦に条線があるが、他は平滑。先の縁に小円鋸歯の王冠(crown)を形成する。先の皿(plate)は円蓋状の円盤を王冠に頂いた低い中央のピラミッド形の非油性の体をもつ。冠毛はザラツク剛毛の3~4列であり、外側の剛毛は内側の長さの1/2以下
 世界に1種。中国、日本、朝鮮、モンゴル、ロシアに分布する(Flora of China)。日本(YList)では4種があるとされてきたが、3種又は1種とする説もある。1種とする説ではSynurus deltoides (Aiton) Nakaiとしている。Kewscienceは3種としている。
(1) Synurus deltoides (Aiton) Nakai チョウセンヤマボクチ
(2) Synurus excelsus (Makino) Kitam. ハバヤマボクチ
(3) Synurus pungens (Franch. & Sav.) Kitam. オヤマボクチ

※The Plant List 及びKewscienceではSynurus deltoides (Aiton) Nakai , Synurus excelsus (Makino) Kitam. , Synurus pungens (Franch. & Sav.) Kitam の3種を別種と認めている。ヤマボクチ Synurus palmatopinnatifidusはチョウセンヤマボクチ Synurus deltoidesのsynonym としている。また、Missouri Botanical Garden's W3TROPICS がオヤマボクチSynurus pungens がチョウセンヤマボクチSynurus deltoidesのsynonymとしている。Flora of China ではチョウセンヤマボクチSynurus deltoides1種だけの属としている。YListではキクバヤマボク Synurus palmatopinnatifidus、ヤマボクチ Synurus palmatopinnatifidus var. indivisusを認めている。

ヤマボクチ属 の主な種と園芸品種

1 Synurus deltoides (Aiton) Nakai チョウセンヤマボクチ 朝鮮山火口

  synonym Synurus palmatopinnatifidus (Makino) Kitam. キクバヤマボク 菊葉山火口 [Kewscience]

 日本、朝鮮、中国、モンゴル、ロシア原産。中国名は山牛蒡 shan niu bang。林縁、森林、牧草地に生える。
Synurus deltoides= Serratula atriplicifolia var. atriplicifolia は朝鮮、中国、モンゴル、ロシアに分布し、中国名を山牛蒡(shan niu bang)という。 日本のヤマボクチ、オヤマボクチ、ハバヤマボクチもこれに含める見解があり、Flora of China では日本も分布域に含めている。
 高さ0.7~1.5m。柄茎は丈夫。茎は単生、上部、直立し、分枝又は分枝せず、基部はフェルト状~無毛になる~無毛。葉は下面が灰白色で密なフェルト状、上面は緑色、ザラツキ、細かい剛毛で覆われる。根生葉と下部の茎葉は葉柄に狭い翼をもち、長さ34㎝以下。葉身は心形、卵形、広卵形、卵状三角形、又は矛形、長さ10~26㎝×幅12~20㎝、基部は心形、矢じり形、又は切形。上部の茎葉は上側で次第に小さくなり、無柄又は短柄、卵形、楕円形、又は楕円状披針形、縁は歯があるか又は刺状。頭花は数個ゆく。総苞は直径3~6㎝、密でふわふわいたクモ毛があるか、無毛。総苞片は13~15列につき、外側と中間の総苞片は披針形、長さ7~23㎜×幅3~4㎜、開出~後屈する。内総苞片は最も長く、線状披針形、長さ2.3~2.5㎝×幅約 0.2㎝、ときに紫色。花冠は長さ約2.5㎝。花冠筒部は長さ約9㎜。痩果は褐色、狭い楕円形、長さ約7㎜、切形。冠毛は剛毛、褐色、長さ1.5~2㎝。花期と果期は6~10月。2n=26。(Flora of China)

1-1 Synurus deltoides (Aiton) Nakai var. incisolobatus (Miyabe) Kitam. カラフトヤマボクチ

 The Plant Listでは基準種に含める。

2 Synurus excelsus (Makino) Kitam. ハバヤマボクチ 葉場山火口

  synonym Serratula atriplicifolia var. excelsa Makino in Bot. Mag. (Tokyo) 10: 319 (1896)

  synonym Serratula excelsa (Makino) Makino
 本州(福島県以西)、四国、九州、朝鮮に分布し、オヤマボクチより低いところに生える。
 茎は高さ80~100㎝、全体に白色のくも毛があり、白っぽく見える。。葉は互生し、下部の葉は長さ10~20㎝、長さより幅が広く、三角形、基部がはほこ形に張り出す。葉裏は白色の毛がフェルト状に密生する。総苞は球形~球鐘形、長さ約3㎝、幅3~5㎝。総苞片は多数、線状披針形。筒状花は濃紫色、狭部は太い部分と同長又はやや短い。痩果は長さ約6㎜、幅3㎜、縦肋があり、無毛。冠毛は帯褐色、不同長、基部が合着し、長さ約20㎜、上向きの刺がある。

キクバヤマボク,ヤマボクチはチョウセンヤマボクチに含められる


3 Synurus palmatopinnatifidus (Makino) Kitam. キクバヤマボク 菊葉山火口 広義

3-1 Synurus palmatopinnatifidus (Makino) Kitam. var. palmatopinnatifidus キクバヤマボク 菊葉山火口

  synonym Serratula deltoides var. palmatopinnatifida
 本州(滋賀県以西)、四国、九州に分布する。
 茎は高さ70~100㎝。下部の葉は長さ15~25㎝、掌状に中~深裂し、浅い鋸歯縁。幼時の葉は切れ込みがない。総苞は長さ約3㎝、幅3~4㎝、クモ毛がある。筒状花の花冠は白色(~淡紫色)。痩果は長さ約6㎜。冠毛は長さ約20㎜。

3-2 Synurus palmatopinnatifidus (Makino) Kitam. var. indivisus Kitam. ヤマボクチ 山火口

 本州(愛知県以西)、四国、九州、朝鮮に分布する。
 茎は高さ70~100㎝。葉は長さ15~25cm、卵形~卵状長楕円形、基部は心形、質がやや薄く、裏面に白い綿毛がフェルト状に密生する。キクバヤマボクチに似るが、掌状に中裂せず、浅い鋸歯縁。総苞は長さ約3㎝の球鐘形、クモ毛が明瞭に少なく、総苞片は狭く針状で開出する。筒状花の花冠は淡紫色(~淡黄色)。冠毛は帯褐色、不同長、長さ約15㎜。キクバヤマボクチと同じような場所に生育し、根生葉の時には判別できない。チョウセンヤマボクチと同一とする見解がある。花や、葉の形・厚さは変化があり、総苞のクモ毛の量で判別するのが最も簡単な方法である。

4 Synurus pungens (Franch. et Sav.) Kitam. オヤマボクチ 雄山火口
 日本、朝鮮原産。オヤマボクチは本州東部以北、ヤマボクチは本州西部以南に分布し、愛知県は境界にあたる。ヤマボクチはキクバヤマボクチの葉に切れ込みがないもので、浅鋸歯縁であり、生育数の少ないものである。両者の差は高さ、葉の形と大きさと厚さ、総苞のクモ毛の量、頭花の大きさである。しかし、植物は生育環境により小さいこともよくあり、葉の大きさや形だけで判別することは難しい。広義にSynurus deltoidesとするミズーリ植物園(MBG)などの見解に従った方が良いのかもしれない。葉柄に狭い翼があることが異なっていると思われたが、基部に狭い翼がある。いずれにしろDNA解析によらなければ結論は出ないと思われる。
 茎は直立して分枝し、白色の綿毛がある。葉は互生し、下部の葉は長さ15~35㎝の卵状長楕円形、不規則な鋸歯縁(やや深いものから浅いものまで変化がある)、基部は心形、葉柄は長く基部に狭い翼がある。葉裏には白色の毛がフェルト状に密生する。茎上部の葉は小形、短柄。上部で分枝した枝先に頭花をつける。頭花は下向きに咲き、総苞は長さ約3㎝、幅3.5~4㎝、球鐘形、くも毛があり、開花すると全体に紫色~紫褐色になってくる。総苞片は覆瓦状に多列あり、中位の総苞片は下部の幅約2㎜、線状披針形、先が刺状、外片~中片の先が開出し、花後にさらに次第に開く。小花は花冠が紫色~赤紫色、すべて筒状花、筒状花の狭部(花冠の節から下部:実測5㎜)は太い部分(花冠の節から上の筒部:実測10㎜)より短い。葯は暗紫褐色、後にすぐに退色して淡褐色になる。小花は外側から咲き、外側の小花から退色する。花柱はピンク色、柱頭は長さ約5㎜、ピンク色、先が2裂する。花粉は白色。痩果は長さ約6㎜、幅3㎜。冠毛は帯褐色、不等長、長さ約16㎜(実測10~18㎜)、単一毛、上向きの刺がある。

4-1 Synurus pungens (Franch. et Sav.) Kitam. var. giganteus Kitam. オニヤマボクチ 鬼山火口

 本州(石川県、富山円圏、岐阜県)に分布する。
 花が大きく、総苞が幅6~7㎝、小花は長さ25㎜になる。

参考

1) GRIN
 Liatris.
https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=6808
2) Flora of China
 Synurus
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=132135
3) Plant Finder - Missouri Botanical Garden
 Liatris pycnostachya
https://www.missouribotanicalgarden.org/PlantFinder/PlantFinderDetails.aspx?kempercode=d770
4) Plants of the World Online | Kew Science
 Synurus
http://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:11230-1