ヌカススキ 糠薄

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Flora of Mikawa

イネ科 Poaceae ヌカススキ属

中国名 银须草 yin xu cao
英 名 silver hairgrass
学 名 Aira caryophyllea L.
ヌカススキの初期の花序
ヌカススキの花序拡大
ヌカススキの苞頴を開いた小穂
ヌカススキの熟した小穂
ヌカススキの苞頴
ヌカススキ
ヌカススキ基部
ヌカススキ未熟な小穂
ヌカススキ小花
ヌカススキの茎
ヌカススキの葉
花 期 5~10月
高 さ 10~40㎝
生活型 1年草
生育場所 乾燥した荒地、草地
分 布 帰化種  ヨーロッパ、北アフリカ、西アジア原産
撮 影 吉良町 07.5.19
南北アメリカやオーストラリアなどへも帰化している。
 和名の由来は花序が白くて細かく、糠のように見えることから。茎は細く、基部で分枝して叢生し、直立する。小穂が稔って白くなってくると上部の茎も次第に赤色が強くなる。節は赤褐色。葉は細く、上向きに二つ折れし、乾くと丸くなる。茎の先で2~3個の又に何度も細かく多数、分岐し、枝先に小穂をつけ、円錐花序となる。小穂の柄の長さは小穂の長さの1~2倍程度。小穂は長さ約3㎜、2小花からなり、始め緑色で、灰色を帯びてくる。苞頴はほぼ同形、同大、灰褐色(初期には緑色)の背部分を除き白色、先は鋭頭、稀に鈍頭も混じる。小花2個は同長、1本ずつ長い芒があり、小穂から2本の芒が突き出る。護頴は背の中間から芒を出し、先が2裂し、基部に白色の毛があり、頭部付近にも短毛が散生する。小穂が熟すと、頴果とそれを包む護頴と内頴が褐色になり、苞頴を残して落ちる。頴果は長さ1~1.5㎜、幅約0.5㎜。2n=14,28。
 類似のハナヌカススキはヌカススキとよく似て、同じような場所に生える。小穂の柄の長さが長く、小穂に2個の小花があるが、1個の小花には芒がなく、芒は1本だけ。芒のある小花はヌカススキと差が無い。

ヌカススキ属

  family Poaceae - genus Aira

 一年草、小さい。 葉身は巻く。花序は開きまたは狭い円錐花序。小穂は小さく、側部が扁平、小花2個、両者は似ていて、両性、ごく短い節間で離れ、各小花の下で関節離断する(disarticulating)。小軸(rachilla)は上部の小花を超えて突き出さない。両苞穎は宿存し、等しく、小花を囲み、卵形、膜質、光沢があり、1(~3)脈があり、先は鋭形。小花のカルス(callus)は小さく、普通、側部に短い毛があり、まれに無毛になる。護穎は卵形、背は丸く、膜質で塾すと堅くなり、不明瞭な5脈があり、無毛、上部は細かくザラつくかまたはザラつく。下部の背に芒があり、または下部の小花には芒がなく、先には2歯がある。芒は捻じれた柱(下部)から膝状に曲がる。内穎は護穎よりわずかに短い。葯は小さい。穎果は紡錘形。2n=14, 28。
 世界に10種あり、地中海沿岸地域を中心とし、北はスカンジナビア、東はイランとアフガニスタンまで広がって分布する。世界の他の温帯地域に導入されている。

ヌカススキ属の主な種と園芸品種

1 Aira caryophyllea L. ヌカススキ 糠薄
 ヨーロッパ、北アフリカ、西アジア原産。中国名は银须草 yin xu cao。英名はsilver hairgrass。和名の由来は花序が白くて細かく、糠のように見えることから。南北アメリカやオーストラリアなどへも帰化している。乾燥した荒地、草地に生える。
 1年草、高さ10~40㎝。茎は細く、基部で分枝して叢生し、直立する。小穂が稔って白くなってくると上部の茎も次第に赤色が強くなる。節は赤褐色。葉は細く、上向きに二つ折れし、乾くと丸くなる。茎の先で2~3個の又に何度も細かく多数、分岐し、枝先に小穂をつけ、円錐花序となる。小穂の柄の長さは小穂の長さの1~2倍程度。小穂は長さ約3㎜、2小花からなり、始め緑色で、灰色を帯びてくる。苞頴はほぼ同形、同大、灰褐色(初期には緑色)の背部分を除き白色、先は鋭頭、稀に鈍頭も混じる。小花2個は同長、1本ずつ長い芒があり、小穂から2本の芒が突き出る。護頴は背の中間から芒を出し、先が2裂し、基部に白色の毛があり、頭部付近にも短毛が散生する。小穂が熟すと、頴果とそれを包む護頴と内頴が褐色になり、苞頴を残して落ちる。頴果は長さ1~1.5㎜、幅約0.5㎜。2n=14,28。花期は5~10月。
1-1 Aira caryophyllea L. subsp. multicaulis (Dumort.) Bonnier et Layens ヌカススキ 狭義

2 Aira elegantissima Schur ハナヌカススキ 花糠薄
  synonym Aira elegans Willd. ex Gaudin
 ヨーロッパ、西アジア、北アフリカ原産。英名はannual silver hairgrass , delicate hair grass。和名の由来はヌカススキに似て、小穂が細かく、柄が長くきれいであることから。乾燥した荒れ地に生え、群生していないと小さくて気づきにくい。
 1年草、高さ10~40㎝。 茎は直立し、叢生する。葉は線形で、乾くと丸くなる。ヌカススキと同じように茎の先で2~3個の又に何度も細かく分岐し、枝先に1個ずつ小さな小穂を多数つけ、円錐花序となる。小穂はヌカススキより小さく、紫色を帯び、長さ約2㎜。小穂の柄の長さが小穂の長さの3~4倍程度あり、ヌカススキより長い。2個の苞頴は同形。小穂には同じ大きさの小花が2個ある。うち1個、第2小花にだけ芒がある。護頴の先は長く尖り、先が2裂し、第2小花の護頴の背のほぼ中間に、長さ約1.5㎜の芒がつく。2n=14。花期は5~6月。
2-1 Aira elegantissima Schur subsp. ambigua (Arcang.) M.Dogan ヒメヌカススキ 姫糠薄
  synonym Aira elegans Willd. ex Gaudin subsp. ambigua (Arcang.) Holub
 小花ともに芒があり、ドライフラワーによく用いられる。

3 Aira praecox L. スパイクヘアグラス
 ヨーロッパ原産。英名はspike hairgrass , early hair-grass , yellow hairgrass 。アメリカ、ニュージランドなどに帰化している。海岸の乾いた~湿った砂丘、または砂質から岩石質の土壌、岩壁などに生える。
 1年草、房状(株立)になる。稈は高さ1~36㎝、直立する。葉鞘は普通、細かくザラつき、ときに平滑。葉舌は長さ1.4~5.3㎜、外側は細かくザラつき、先は鋭傾、引き裂かれる。葉身は長さ(0.1)0.25~5㎝×幅0.3~2.0㎜、前向きに細かくザラつき、無毛、先は鋭鋭形。円錐花序は長さ(0.5)1~4.1㎝×幅0.3~0.7㎝、ときに、衰弱した株では1個の小穂に減る。一次の枝は長さ1.5㎝以下、花序柄に圧着し、前向きに細かくザラつく。小梗は長さ0.7~3.2mm、先が広がる。小穂は長さ2.8~3.8㎜、緑色で、紫色を帯びる。小軸は上部の小花の基部を超えて伸びる。苞穎はほぼ等長、前向きに細かくザラつき、特に中脈の上がザラつく。第1苞穎は長さ2.8~3.6㎜、1~3脈がある。第2苞穎は長さ2.7~3.8㎜、3脈がある。カルスの毛は長さ0.3~0.5㎜。下側の護穎は長さ2.4~3.3㎜、先は2裂し、歯は長さ0.3~0.5㎜、芒があり、芒は長さ3~4.5㎜。内穎は長さ1.7~2.1㎜、上側の護穎に似ている。葯は長さ0.2~0.4㎜、黄色。穎果は長さ1.3~1.7㎜×幅0.4~0.5㎜、外面の上部に長さ0.8~1㎜の溝があり、内面には全長に溝がある。2n=14。花期は4~6月。

参考

1) Flora of China
 Aira
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=100893
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Aira
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30002921-2
3) World Flora Online
 Aira
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000001038
4) World Checklist of Vascular Plants
 Aira
https://wcvp.science.kew.org/
5) FNA - Flora of North America
 Aira
http://floranorthamerica.org/Aira