ニッケイ 肉桂

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Flora of Mikawa

クスノキ科  Lauraceae  ニッケイ属

学 名 Cinnamomum sieboldii Meisn.
Cinnamomum okinawense Hatus., nom. nud.
ニッケイの芽
ニッケイの葉
ニッケイの葉裏
ニッケイの幹
ニッケイ
花 期 5~6月
高 さ 10~15m
生活型 常緑高木
生育場所 栽培種
分 布 在来種 九州(徳之島)、沖縄
撮 影 蒲郡市西浦町  06.6.18
ニッケイの細い根の先を乾燥させたものがニッキであり、昔、駄菓子屋で売られていた。日本では沖縄に野生のものが確認されている。本州にあるものは栽培品。中国から渡来したとされているが、中国樹木誌の記録にはなく、flora of China には該当するものはない。シナニッケイ Cinnamomum cassia が中国名の肉桂( rou gui)である。
 葉は互生し、長さ10~15cmの長楕円形で、先端は尖る。葉の表面は無毛で光沢があり、裏面は伏毛が生え白色を帯びる。葉の3脈が目立ち、2本の側脈が葉の先端付近まで伸びる。花は集散花序に、淡黄緑色の小花を多数つける。果実は楕円形の液果で、秋に黒褐色に熟す。
 よく似たヤブニッケイ、は葉の側脈が先端まで伸びず、途中で消失する。葉裏に毛がなく、幹がやや暗色。

ニッケイ属

  family Lauraceae - genus Cinnamomum

 常緑高木又は低木。樹皮、小枝、葉は強い臭いがある。芽は裸又は芽鱗がある(perulate)。芽鱗があるなら、明瞭又は不明瞭、覆瓦状。葉は互生、類対生、又は対生、ときに小枝の先に束生すし、革質、3出脈又は離基3出脈(triplinerved:基部から離れた3出脈)、あるいは羽状脈(pinninerved=pinnately vein)。円錐花序は腋生、ほぼ頂生、又は頂生、花が(1~)~多数の複数の集散花序が複合する。花は黄色又は白色、小型~中型、両性、まれに雌雄混株。花被筒は短く、杯形又は鐘形。花被片は6個、ほぼ等長、完全に脱落性又は上半部が脱落性、まれに花後に全体が宿存する。稔性の雄しべが9本、まれに多少になり、3輪につく。1番目と2番目の輪の花糸は腺がなく、3番目の輪の花糸は基部近くに2個の柄の有る又は柄の無い腺をもつ。葯は4室、まれに、3番目の輪の葯は2室、室は内向き(1番目と2番目の輪) 又は外向き(3番目の輪)。仮雄しべは3本、最も内側の輪につき、心形又は矢じり形。子房は常に花柱より長い。花柱は細い。柱頭は頭状又は盤形、ときに3裂する。果実は肉質、花被の杯(perianth cup)が基部を抱く。花被の杯は杯形、鐘形、又は円錐形、切形又は波打ち、不規則な歯があり、又はときに、先に6個の切形の裂片基部をもつ。英名はcamphor tree。
 世界に約250種があり、熱帯、、亜熱帯のアジア、オーストラリア、太平洋諸島に分布する。

ニッケイ属の主な種と園芸品種

1 Cinnamomum austrosinense Hung T.Chang  カナンニッケイ
 中国原産。中国名は华南桂 hua nan gui

2 Cinnamomum burmannii (Nees et T.Nees) Blume  インドグス 印度楠
  synonym Cinnamomum macrostemon Hayata  タイナンニッケイ 
 中国、インド、インドネシア、ミャンマー、フィリピン、ベトナム原産。中国名は阴香 yin xiang。英名はKorintji cinnamon , Indonesian Cinnamon。

3 Cinnamomum camphora (L.) J.Presl  クスノキ 楠・樟

  synonym Cinnamomum camphora (L.) J.Presl var. cyclophyllum Nakai  マルバクスノキ

  synonym CCinnamomum camphora (L.) J.Presl var. nominale Hayata  クスノキダマシ 

 日本(本州、四国、九州)、朝鮮、中国、台湾、ベトナム原産。中国名は樟 zhang。英名はcamphortree, camphor , camphor oil plant。別名はクス。
 常緑高木。高さ10~20m。幹は暗褐色、樹皮に縦長の細かくて深い割れ目が入る。葉は互生し、長さ5~12㎝の卵形~惰円形、革質、光沢があり、葉脈はやや3行し、目立つ。虫えいが出来、脈腋に穴があることが多い。花は円錐花序につく。花被(萼)は黄緑色の漏斗形、6裂し、花後に裂片は落ち、杯状に筒部が残る。果実は直径約8㎜の球形の液果、黒く熟す2n=24。花期は5~6月。果期は9~10月。
品種) 'Majestic Beauty'
3-1 Cinnamomum camphora (L.) J.Presl f. linaloolifera (Fujita) Sugim.  ホウショウ 芳樟

  synonym Cinnamomum camphora (L.) J.Presl var. nominale Hayata subvar. hosyo Hatus.

 中国南部、台湾に分布。
 精油にカンファー(樟脳)の含有量が少なく、リナロールを主成分とする。

4 Cinnamomum cassia (L.) D.Don  カシアニッケイ カシア肉桂
 中国、台湾原産。中国名は肉桂 rou gui。英名はcassia bark tree。別名はシナニッケイ(支那肉桂)、トンキンニッケイ。樹皮は桂皮(ケイヒ)と呼ばれる。北アメリカで販売されているシナモンはカシアが最も多く、ほとんどCamphorを含有しない。
 中型の高木。樹皮は成木で厚さ13㎜以下、1年枝は暗褐色、円柱形、縦の条線があり、真っすぐで、毛がある。当年枝は黄褐色、±4稜形、縦の条線があり、灰黄色の綿毛が密生する。葉は互生又は類対生。葉柄は丈夫で、長さ1.2~2㎝、上面は平ら又は下部にわずかに溝があり、黄色の細かい綿毛がある。葉身は下面が光沢のない帯緑色、上面は光沢のある緑色、狭楕円形~ほぼ披針形、長さ8~16(~34)㎝×幅4~5.5(~9.5)㎝、革質、下面にまばらに黄色の細かい綿毛があり、上面は無毛、離基3出脈(triplinerved)、中脈と基部の側脈は下面に隆起し、上面に明瞭に凹む。基部の側脈はほぼ対生、葉基部の上の5~10mmに生じ、弓なりに斜上し、葉先の下で次第に消え、外側に多数の追加の脈をもち、これらは弓なりに相互接続する。横脈はゆるやかに起伏し、3~4㎜離れてほぼ平行、下面に隆起し、上面では不明瞭で、下面でだけ細脈が見える。葉の基部は鋭形、葉縁は軟骨質で内巻し、葉先はわずかに鋭形。円錐花序は腋生又はほぼ頂生、長さ8~16 cm、三つ組の枝があり、枝先には花が3個の集散花序がつく。花序柄は花序の長さの約1/2、花序柄と花序軸には黄色の綿毛がある。花柄は長さ3~6mm、黄褐色の細かい綿毛がある。花は白色、長さ約4.5mm。花被は外側と内側に黄褐色の細かい綿毛が密にある。花被筒は倒円錐形、長さ約2㎜。花被片は卵状長円形、ほぼ等長、約・長さ2.5㎜×幅1.5㎜、先は鈍形~ほぼ鋭形。稔性の雄しべは9本、長さ約2.3㎜ (1番目と2番目の輪) 又は長さ約2.7㎜ (3番目の輪)。1番目と2番目の輪の花糸は長さ約1.4㎜、平らになり、上部1/3が広がる。3番目の輪の花糸は長さ約1.9mm、上側1/3にそれぞれ2個の円状腎形の腺をもつ。葯は卵状長円形、4室。室は内向き(1番目と2番目の輪)、又は横~外向き(3番目の輪)。仮雄しべは3本、柄を含めて長さ約2mm、先は矢じり状デルタ形、柄は細く、扁平、長さ約1.3㎜、絨毛がある。子房は卵形、長さ約1.7㎜、無毛。花柱は細く、子房の長さと同長。柱頭は小さく、目立たない。果実は楕円形、長さ約10mm×幅7~8(~9)㎜、熟すと黒紫色、無毛、花被の杯は浅い杯形、長さ約4㎜、切形、先の幅7㎜以下。花期は6~8月。果期は10~12月。精油成分はシンナムアルデヒド((E)-3-フェニルプロペナール)Cinnamaldehydeが約65%、クマリンCoumarin約5%、カンファーCamphorは1%以下など。

5 Cinnamomum daphnoides Siebold et Zucc.  マルバニッケイ 丸葉肉桂
  synonym Cinnamomum maruba Meisn.
  synonym Cinnamomum sericeum Lukman.
 日本(九州の福岡県、長崎県、鹿児島県及び南西諸島)、中国(浙江省の島)に分布。中国名は圆头叶桂 yuán tóu yè guì。別名ツンナメ、コウチニッケイ。日本固有種とされていたが、中国(浙江省の島)で新たに発見されたとする報告があり、Kewscienceでも中国を分布域に含めている。しかし、記載内容がやや異なる。
 常緑亜高木。高さ7~8(10)m。植物全体に香りがある。樹皮は平滑、灰茶色~暗褐色。 枝は細く、緑色から黄緑色、光沢があり、縦の条線があり、若枝は4稜形、絹毛が密生する。葉は対生又は互生し、倒卵形、長さ3~4cm、先は丸く、革質で、3行脈があり、下面に絹毛が密生する。花序は花序柄が長く、絹毛が密生する。花は緑白色~淡黄色。果実は楕円形、長さ約9mm、暗紫色に熟す。花期は5~6月。果期は9~10月。精油に多量のl-Linaloolを含有し、全くCamphorを含有しない。

6 Cinnamomum doederleinii Engl.  シバニッケイ 柴肉桂

  synonym Cinnamomum daphnoides Siebold et Zucc. subsp. doederleinii (Engl.) Kitam.

 日本(南西諸島)原産。
 マルバニッケイに似るが、葉の下面の毛が少ない。
 常緑小高木。高さ5~8m。新枝は淡緑色で後に赤褐色になり、弱い4稜があり、初めに細かい絹毛がある。葉は対生し、楕円形~披針状楕円形、長さ4~6㎝×幅1.5~2.5㎝、厚い革質、先は次第に尖り、縁は全縁、両面とも無毛、3行脈が目立ち、下面に隆起し、下面は灰白色。花序は腋生、花は小さく、淡黄緑色。果実は液果で偏球形。花期は5~6月。
6-1 Cinnamomum doederleinii Engl. var. pseudodaphnoides Hatus.  ケシバニッケイ 
 毛があり、マルバニッケイと シバニッケイの中間的な形態。

7 Cinnamomum javanicum Blume  ジャワニッケイ 
 中国、ベトナム、マレーシア、インドネシア原産。爪哇肉桂 zhua wa rou gui

8 Cinnamomum kotoense Kaneh. et Sasaki  コウトウニッケイ 
  synonym Cinnamomum myrianthum auct. non Merr.
 台湾原産。中国名は兰屿肉桂 lan yu rou gui

9 Cinnamomum loureiroi Nees サイゴンシナモン
 ベトナム原産。英名はSaigon cinnamon , Saigon-cassia。

10 Cinnamomum micranthum (Hayata) Hayata  アツバクスノキ 
  synonym Cinnamomum kanehirae Hayata
 中国、台湾、ベトナム原産。中国名は沉水樟 chen shui zhang。

11 Cinnamomum osmophloeum Kaneh.  ニッケイモドキ 
 台湾原産。中国名は土肉桂 tu rou gui。

12 Cinnamomum reticulatum Hayata  ハマグス 
 台湾原産。中国名は网脉桂 wang mai gui。

13 Cinnamomum rigidissimum H.T.Chang  コバノクスノキ 
  synonym Cinnamomum brevipedunculatum C.E.Chang
 中国、台湾原産。中国名は卵叶桂 luan ye gui。

14 Cinnamomum sieboldii Meisn.  ニッケイ 肉桂
  synonym Cinnamomum okinawense Hatus., nom. nud.
  synonym Cinnamomum loureiroi auct. non Nees
 九州(徳之島)、沖縄原産。日本では沖縄に野生のものが確認されている。本州にあるものは栽培品。中国から渡来したとされているが、中国樹木誌の記録にはなく、Flora of China には該当するものはない。シナニッケイ Cinnamomum cassia が中国名の肉桂(rou gui)である。別名はニッキ。
 常緑高木。高さ10~15m。葉は互生し、長さ10~15cmの長楕円形で、先端は尖る。葉の表面は無毛で光沢があり、裏面は伏毛が生え白色を帯びる。葉の3脈が目立ち、2本の側脈が葉の先端付近まで伸びる。花は集散花序に、淡黄緑色の小花を多数つける。果実は楕円形の液果で、秋に黒褐色に熟す。花期は5~6月。

15 Cinnamomum subavenium Miq.  ナガミグス 
  synonym Cinnamomum randaiense Hayata
 中国、台湾、カンボジア、インド、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、タイ北部、ベトナム原産。中国名は香桂 xiang gui。

16 Cinnamomum tamala (Buch.-Ham.) T.Nees et Nees  タマラニッケイ
 中国、ブータン、インド、ネパール原産。中国名は柴桂 chai gui。英名はIndian Bay Leaf。

17 Cinnamomum verum J.Presl  セイロンニッケイ 錫蘭肉桂
  synonym Cinnamomum zeylanicum Blume
 スリランカ原産。中国名は锡兰肉桂 xi lan rou gui。英名はcinnamon , Ceylon Cinnamon Tree。香辛料、薬用に使われる。精油は最も品質がよく、cinnamon Ceylon bark oilと呼ばれる。香辛料のシナモンは成木を切り倒したあとに株から発生する若枝の樹皮を用いる。
 常緑小高木。高さ10m以下。樹皮は黒褐色、内側の樹皮はシンナムアルデヒドの芳香がある。若い小枝は灰色、やや4稜形、白色の斑点がある。芽は絹毛がある。葉は普通、対生。葉柄は長さ約2㎝、無毛。葉身は下面が緑白色、上面は緑色で光沢があり、卵形~卵状披針形、長さ11~16㎝×幅4.5~5.5㎝、革質、又はほぼ革質、両面とも無毛、離基3出脈(triplinerved)、中脈と側脈は両面に隆起し、横脈と細脈は網状、下面に明瞭に凹み、基部は鋭形、縁は全縁、先は尖鋭形。円錐花序は腋生又は頂生、長さ10~12㎝。花序柄と花序軸には絹毛がある。花は黄色、長さ約6㎜。花被筒は倒円錐形。花被片は6個、長円形、ほぼ等長、外側に灰色の毛がある。稔性の雄しべは9本。花糸は基部近くに毛があり、3番目の輪の花糸には各2個の腺があり、他は腺がない。葯は4室。1番目と2番目の輪の室は内向き、3番目の輪の室は外向き。子房は卵形、長さ10~15㎜、無毛。花柱は短い。柱頭は円盤状。果実は卵形、長さ10~15㎜、熟すと黒色。果実の花被の杯は杯形、広がり、歯があり、歯は先が切形又は鋭形。

18 Cinnamomum yabunikkei H.Ohba  ヤブニッケイ 藪肉桂

  synonym Cinnamomum tenuifolium Sugim. [GBIF]

  synonym Cinnamomum tenuifolium (Makino) Sugim. 

  synonym Cinnamomum brevifolium Miq.  マルバヤブニッケイ [Kewscience]

  synonym Cinnamomum tenuifolium (Makino) Sugim. f. nervosum (Meisn.) H.Hara

  synonym Cinnamomum pedunculatum Nees
  synonym Cinnamomum japonicum auct. non Siebold

  synonym Cinnamomum japonicum Siebold ex Nakai f. tenuifolium (Makino) Sugim.

  synonym Cinnamomum japonicum Siebold ex Nakai
  synonym Cinnamomum japonicum Siebold [Flora of China]

  synonym Cinnamomum insularimontanum Hayata  タイワンヤブニッケイ

  synonym Cinnamomum insularimontanum auct. non Hayata

  synonym Cinnamomum pseudopedunculatum Hayata  オガサワラヤブニッケイ

 日本(本州の福島県以西、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国原産。中国名は天竺桂 tian zhu gui。英名はJapanese cinnamon。別名はマツラニッケイ、クスタブ、クロダモ。
 常緑高木。高さ10~20m。幹は暗灰色で、クスノキと異なり、割目が入らない。葉は互生し、長さ約10㎝の長楕円形。革質で、光沢がありやや3行脈であるが、葉先から1/2~1/3付近に側脈があり、支脈が側脈以下で終わる。葉は両面とも無毛、葉裏は白い斑点のまわりがやや白く、灰白色に見える。花は散形状につき、花被は淡黄緑色で、6裂する。果実は長さ約1.5㎝の球形~楕円形の液果で晩秋に黒紫色に熟す。花期は6月。果期は10~12月。

18-1 Cinnamomum yabunikkei H.Ohba f. pilosum (Hatus.) Yonek.  ウスゲヤブニッケイ 
  synonym Cinnamomum japonicum Siebold ex Nakai f. pilosum Hatus.

19 ハイブリッド
 
(1) Cinnamomum x durifruticeticola Hatus.  ヒロハヤブニッケイ 
 マルバニッケイ×ヤブニッケイ
(2) Cinnamomum x takushii Hatus.  シバヤブニッケイ 
 シバニッケイ×ヤブニッケイ

参考

1) Flora of China
 Cinnamomum
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=107109
2) Plants of the World Online | Kewscience
 Cinnamomum
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:328262-2
3) 圆头叶桂 - 求真百科

 圆头叶桂(yuán tóu yè guì),学名:Cinnamomum daphnoides Siebold & Zucc.)

https://www.factpedia.org/index.php?title=%E5%9C%86%E5%A4%B4%E5%8F%B6%E6%A1%82&variant=zh
4) Food Sci Nutr. 2019;7: p2186–2193 - Wiley Online Library

 Chemical compound identification and antibacterial activity evaluation of cinnamon extractsobtained by subcritical n‐butane and ethanol extraction

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1002/fsn3.1065