モミ 樅

Flora of Mikawa
マツ科 Pinaceae モミ属
| 別 名 | モミソ |
| 中国名 |
日本冷杉 |
| 学 名 | Abies firma Sieb. et Zucc. |











| 花 期 | 5月 |
| 高 さ | 15~25m |
| 生活型 | 常緑高木 |
| 生育場所 | 丘陵~山地 |
| 分 布 | 在来種 本州、四国、九州 日本固有種 |
| 撮 影 | 寸又峡 07.8.5 設楽町 12.3.22(種鱗、種子) |
同属の類似種は多く、ウラジロモミ、シラビソ、オオシラビソなどは高地に生え、葉裏の気孔帯が白色。ツガ属も葉が似ているが球果が小さい。
ツガTsuga sieboldii はツガ属。若枝が無毛。葉が短く、葉先が円く、先端に小さい凹みがある。球果が小さく、長さ2~3㎝の惰円形~卵形。果柄も強く曲がる。
コメツガTsuga diversifolia は標高の高い山地に分布し、若枝が有毛、果柄があまり曲がらず、球果がやや小さい。
モミ属
family Pinaceae - genus Abies常緑針葉樹、枝は普通、輪生。小枝は対生し、稀に、輪生、円形の窪んだ葉痕があり、基部に宿存性の芽鱗がある。短小枝は無い。冬芽は普通、小枝の先に3個つき、卵形~円錐形、しばしば樹脂枝。葉は螺旋状につき、放射状に広がり、又は側部では櫛状につき、線形、直線又は曲線状、扁平。表面は溝がある。裏面は2本の.気孔帯がある。維管束1本、樹脂道2(~10)本、縁生(下皮で)又は中間生(葉肉で)、まれに類中間生、基部は捻じれる。花粉錐は前年の小枝の葉腋につき、若いとき、狭楕円形~長楕円形、やがて円柱形になる。花粉は2気嚢型。胚珠錐(球花)は有柄又は無柄、直立、卵状円柱形又は短円柱形、1年目に成熟する。種鱗は密に重なり、しばしば腎臓形~不等辺四辺形~扇形、木質、基部は狭く、樹期すと脱落性。苞は長楕円形~倒心臓形~倒卵形、突出又は突き出ず、ときに反曲する尖った先がある。種子は膜質のカップの中につき、傾いた卵形~楔状長楕円形、翼は発達し、宿存性、楔状斧形~長楕円状楔形。子葉は (3)4~8(12)個。発芽は地上性。2n=24。
約50種がアジア、ヨーロッパ、北アメリカに自生する。日本にはモミ、ウラジロモミ、シラビソ、オオシラビソ、トドマツの5種が自生する。
モミ属の主な種と園芸品種
1 Abies alba Mill. ヨーロッパモミヨーロッパ(フランス、イタリア、スイス、ドイツ、オーストリア、ブルガリア、ウクライナ、ベラルーシ)原産。英名はChristmastree , European silver fir , silver fir , white fir。標高300~1950mに生える。
樹高は55mまで、胸高直径は260cmに達し、長く明瞭な幹とピラミッド型の樹冠を持ち、年を取ると頂部は平らになる。樹皮は平滑、灰色、鱗片状になり、樹脂の膨れがある。小枝は溝があり、淡褐色または鈍い灰色、帯黒色の軟毛がある。日陰では葉は2列で水平に広がるが、日向ではほぼ直立する。針葉の基部は捻じれ、先は切れ込みがあるか丸く、長さ15~30mm×幅1.5~2mm、上面は光沢のある暗緑色で溝があり、通常気孔がなく、下面は粉白色~白緑色、竜骨があり、5~8列の気孔がある。芽は淡褐色~赤褐色、卵形、先は鈍形、ときに樹脂質、直径8~11mm、わずかに軟毛がある。花粉錘は青色~紫色~赤色、長さ1~3cm。種子錘は円筒形、先が漸尖し、長さ10~16cm×幅3~5cm、若いときは緑色で、赤褐色に変化する。種鱗はへら形、微細な毛があり、苞鱗は突き出し、反り返った苞鱗は種鱗の長さの約2/3が突き出れる。種子は倒卵形で、赤みを帯び、翼があり、長さ2.5cmまで。
2 Abies amabilis Dougl. ex J.Forbes ウツクシモミ
カナダ(ブリティッシュコロンビア州)、アラスカ州、カリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州原産。英名はPacific silver fir , silver fir , sapin gracieux。標高0~2000mの湿潤な沿岸針葉樹林に生える。
樹高は最大75m。幹の直径は最大2.6m。樹冠は尖塔状で、樹齢とともに頂部は平らになり、円筒形になる。樹皮は灰色、薄く平滑、樹齢とともに鱗片状に割れる。枝は幹から直角に分岐し、短く硬い。小枝は大部分が対生し、下面は暗褐色、上面は薄褐色で、軟毛は黄褐色(tan)。芽は葉に隠れるか露出し、褐色、球形で小さく、(少なくとも先端は)樹脂質で、先は丸みを帯びる。基部の鱗片は短く、幅広、三角形、密に軟毛が生え、通常は樹脂質ではなく、縁は全縁で、先は鋭く尖る。葉は長さ(0.7~)1~2.5cm×幅1~3mm、ほとんどが2列で、柔軟、小枝の上面を±覆い隠す(特に中間から上部の樹冠)。一部の葉は前向き、その他は普通より長く水平に広がり、基部は±真っすぐ、横断面は平らで、上面に目立つ溝がある。刺激臭がある。葉の下面には中脈の両側に5~6列の気孔があり、上面は暗色で光沢のある緑色、気孔はなく、先は顕著に切れ込みがある。樹脂道は小さく、縁近くと下面の表皮層にある。受粉時の花粉錘は赤色で、赤黄色になる。種子錘は円筒形、長さ8~10(~13)cm×幅3.5~5cm、紫色、無柄、先は円形から乳首形。種鱗は約・長さ2cm×幅2cm、軟毛があり、苞鱗を含む。種子は長さ10~12mm×幅約4mm、種子体は黄褐色、翼は種子体とほぼ同長でバラ色~黄褐色(tan)。子葉は4~7枚。
3 Abies balsamea (L.) Mill. バルサムモミ
北アメリカ(カナダ、USA)原産。英名はBalsam fir, sapin baum。標高0~1700mの北方林および北部の森林に生える。
樹高は23mまで。幹の直径は0.6mまで。樹冠は尖塔状(spirelike)。樹皮は灰色、薄く平滑、古くなると不規則な帯褐色の鱗片状に裂けることが多い。枝は幹から直角に分岐し、下部ではしばしば広がって垂れ下がる。小枝は大部分が対生し、緑褐色で、軟毛はまばら。芽は葉に隠れているか露出し、褐色、円錐形で小さく、樹脂質、先は鋭形。基部の鱗片は短く、幅広、ほぼ正三角形、無毛、樹脂質、縁は全縁、先は鋭く尖る。葉は長さ1.2~2.5cm×幅1.5~2mm、1列(特に下部の枝で)~螺旋状につき、柔軟、横断面は平らで、面側に溝がある。松のような臭いがある(β-ピネンが多量)。葉の下面は中脈の両側に(4~)6~7(~8)列の気孔があり、上面は暗緑色、わずかに粉白色を帯びているかまたは無く、葉の中間に0~3列の気孔があり、葉の先端に向かうにつれて数が多くなり、葉先はわずかに切れ込みがあるか円形になる。樹脂道は大きく、±中央で、縁から離れて、下面と上面の表皮層の中間にある。受粉時の花粉錐は赤色、帯紫色、帯青色、帯緑色または橙色である。種子錘は円筒形、長さ4~7cm×幅1.5~3cm、灰紫色、種鱗が脱落する前に褐色に変わり、無柄で、先は円形~鈍形である。種鱗は約・長さ1~1.5cm×幅0.7~1.7cm(より西側のコレクションでは関係が逆)、軟毛がある。苞鱗は含まれるか突出して種鱗上に反り返る。種子は長さ3~6mm×幅2~3mm、翼は種子体の長さの約2倍、褐色。子葉は4枚。2n=24。
4 Abies cephalonica Loudon ギリシアモミ
ギリシャ原産。英名はGrecian fir , Greek fir。標高600~2100mの主に石灰質土壌に生育する。
広いピラミッド形の高木で、高さ30m、幹回り2.7~4.5mに達する、枝は長く水平に伸びる。樹皮は灰褐色、平滑、細長い板状に裂ける。小枝は滑らかで明るい褐色または赤褐色。芽は円錐形または卵形で樹脂質、先端に鱗片が見える。芽は葉に囲まれ、紫色から帯赤色で、やや軟毛があり、直径1.2~1.6mm。針葉は螺旋状に並び、上部に溝がないかまれあり、下面に竜骨があり、上面は光沢のある暗緑色、下面は緑白色。上面に2~3本の短い気孔線、下面に6~7本の線があり、長さ15~35mm×幅2~3mm、断面は平らで、先は鋭く尖る。雄錘は卵形、長さ14mm×幅4mm。雌錘は狭い円筒形で、赤褐色~紫色、先は鈍形または乳頭状で、やや樹脂質、長さ12~16cm×幅約3.8cm。種鱗は楔形(cuneiform)でやや三角形。苞鱗は短く、直立し、わずかに突出し、黄金褐色で三角形に尖り、種鱗の高さの約2/3。種子は角張り、帯赤色、翼があり、長さ12~19mm。
5 Abies concolor (Gordon et Glendinning) Hildebr. コロラドモミ
USA(アリゾナ州、カリフォルニア州、コロラド州、アイダホ州、ネバダ州、ニューメキシコ州、オレゴン州、ユタ州)、メキシコ(バハ・カリフォルニア、ソノラ州)原産。英名はWhite fir, Rocky Mountain white fir, pino real blanco。標高1700~3400mの針葉樹林に生える。
樹高は40mに達する。幹の直径は0.9m。樹冠は尖塔状(spirelike)である。樹皮は灰色で薄く平滑、樹齢とともに厚くなり(厚さ18cmまで)、深い縦溝が刻まれ、しばしば帯黄色の内皮が露出し、コルク状に見える。枝は幹から直角に分岐し、しばしば下部は樹齢とともに広がり、垂れ下がる。小枝は大部分が対生し、無毛または帯黄色の軟毛を持つ。芽は露出し、大きい場合は帯黄色のほぼ円錐形、小さい場合は帯褐色のほぼ球形、樹脂質、先は丸みを帯びるか尖る。基部の鱗片は正三角形で無毛、樹脂質はなく、縁は全縁で、先端は鋭く尖る。葉は長さ1.5~6cm×幅2~3mmで、大部分が2列で、柔軟で、下部はほぼ直立する。横断面は平らで、ときに上面にわずかに溝が入る。刺激臭があり、しばしば樟脳のような臭いがする。下面は粉白色で、中肋の両サイドに4~7列の気孔列があり、上面は灰緑色、中間の葉に(7~)12(~18)列の気孔列があり、葉の先端に向かうにつれて数が少なくなり、先は通常円形、ときに鋭形または切れ込みがあり、樹脂道は小さく、縁と下面の表皮層近くにある。受粉時の花粉錐は±赤色、紫色、または±緑色。種子錐は円筒形、長さ7~12×幅3~4.5cm、オリーブグリーン色、無柄、先端は円形。種鱗は長さ約2.5~3cm×幅3~3.5cm、軟毛があり、苞鱗を含む。種子は長さ8~12mm×幅約3mm、種子体は黄褐色(tan)、翼は種子体の長さの約2倍あり、黄褐色にバラ色がかっている。子葉は5~7枚。2n=24。
6 Abies firma Siebold et Zucc. モミ 樅
synonym Abies momi Siebold ex K.Koch
synonym Pinus firma (Siebold & Zucc.) Antoine
synonym Pinus momi Voss
日本固有種。本州、四国、九州の屋久島に分布する。モミ属の樹木としては、最も温暖な地域に分布域をもつ。英名はJapanese fir 、momi fir。中国名は日本冷杉 ri ben leng shan 。
常緑高木針葉樹、高さ30m以上、幹径は1.5 m以上に達する。樹冠は整った円錐形、枝は輪生。樹皮は灰白色、浅く割れる。若枝には溝があり、暗褐色の微毛がある。葉は長さ2~3㎝。若木の葉先が2裂して針状に尖る。葉は長さ2~3㎝、葉裏は淡緑色。雌雄同株、2~3年に受粉、結実する。球花は初め緑色、苞鱗(bract)が長く突き出る。球果は長さ6~10㎝、幅2.5~3.5㎝(長さ/最大径比 2.3~2.8)、円柱形、淡褐色に熟す。種鱗は長さ約2.5㎝。苞鱗はペン先のような形で種鱗から先が突き出る。種子は長さ5~10㎜(翼を含めず)、翼は種子より長い。受粉は5月。種子成熟は10月。
6-1 Abies firma Siebold et Zucc. f. pendula Honda シダレモミ
7 Abies forrestii Coltm.-Rog. ウンナンシラベ 雲南白檜
中国(四川省、西蔵、雲南省)原産。中国名は川滇冷杉 chuan dian leng shan。標高2500~4200mの山地に生える。木材は建築材として使用され、樹皮からはタンニンが抽出される。
樹高は20mに達する。樹皮は暗灰色で、剥がれ落ちる。小枝は赤褐色または褐色、2年目または3年目に黒ずむかまたは暗灰色になり、最初は微軟毛がある。冬芽は球形または倒卵形、樹脂質。葉は小枝の上部で斜上し、下部では櫛歯状に2側組に並び、上面は明るい緑色、線形、長さ(1.5~)2~3(~4)cm×幅2~2.5mm、下面には2本の白色の気孔線があり、樹脂道は2本、縁あり、先は凹形、まれに鋭形または鈍形。種子錘(球果)は無柄、成熟すると暗褐紫色または黒褐色になり、円筒形または短円筒形、長さ7~12cm×幅3.5~6cm。種鱗は球果の中央部では扇状台形(flabellate-trapeziform)、長さ1.3~2cm×幅1.3~2.3cm、縁は側部が耳状になる。苞鱗(bracts)は楔形~倒卵形、上部の縁は広い円形、先は突き出る真っすぐまたは反曲する長さ4~7mmの尖端(cusp)を持つ。種子は長さ約1cm、翼は薄褐色または赤褐色、広楔形。受粉は5月。種子成熟は10~11月。
8 Abies fraseri (Pursh) Poir. フラセリーモミ
北アメリカ(ノースカロライナ州、テネシー州、バージニア州)原産。英名はFraser fir, southern balsam fir。標高約1500mの山地に生える。
樹高は25mに達する。幹は直径0.75mまで。樹冠は尖塔状(spirelike)。樹皮は灰色で薄く平滑、年をとると幹の基部に密着した赤みがかった鱗片が生える。枝は幹から直角に分岐する。小枝は対生し、淡黄褐色で、赤みがかった軟毛がある。芽は露出し、薄褐色で円錐形、小さく、樹脂質、先は鋭形。基部の鱗片は短く、幅広、正三角形、無毛で樹脂質、縁は全縁、先は鋭く尖る。葉は長さ1.2~2.5cm×幅1.5~2mm、2列で、特に樹木の下部に生じ、螺旋状につき、柔軟、横断面は平らで、背側に溝がある。テレビン油のような強い臭いがする。葉の下面には中脈の両側に(8~)10(12)列の気孔がある。葉の上面は光沢のある暗緑色、ときにわずかに粉白色を帯び、葉の中ほどに0~3列の気孔列があり、葉先に向かうにつれて数が多くなり、葉先はわずかに切れ込みがあるか円形。樹脂道は大きく、中央付近で、縁から離れ、下面と上面の表皮層の中間に位置する。受粉時の花粉錘は赤黄色または黄緑色。種子錘は円筒形で、長さ3.5~6cm×幅2.5~4cm、暗紫色、黄緑色の苞鱗が重なり、無柄で、先は円形である。種鱗は約・長さ0.7~1cm×幅1~1.3cm、軟毛があり、苞鱗は突出し、球果の種鱗上に反り返る。種子は長さ4~5cm×幅2~3mm、種子体は褐色、翼は種子体の長とほぼ等しく、紫色。子葉は長さ約5.2cm。2n=24。
9 Abies grandis (Dougl. ex D.Don) Lindl. アメリカオオモミ
北アメリカ(ブリティッシュコロンビア州、カリフォルニア州、アイダホ州、モンタナ州、オレゴン州、ワシントン州)原産。英名はGrand fir, lowland white fir, sapin grandissime。標高0~1500mの湿潤な沿岸針葉樹林および山地斜面に生える。
樹高は最大75m、幹は直径は最大1.55m。樹冠は円錐形で、年を経ると先端は丸くなるか、または乱雑に散在する。樹皮は灰色、薄い~厚く、年を経ると褐色になり、しばしば、固く平らなうねで区切られた溝の中に帯赤色の外皮が見える。枝は広がり、垂れ下がる。小枝はほとんどが対生し、薄褐色、毛がある。芽は露出し、紫色、緑色、または褐色、球形で、小~中程度の大きさで、樹脂質、先は丸い。基部の鱗片は短く、幅広、正三角形で、わずかに毛があるかまたは無毛、樹脂質、縁は全縁、先は尖っているかわずかに丸い。葉は長さ(1~)2~6cm×幅1.5~2.5mm、2列につき、柔軟で、枝の中央の葉は端部近くの葉より長いか、または明確に長・短の葉が混在し、基部は±真っすぐ、高い方の葉は螺旋状で1列につき、断面は平らで、上面に溝がある。刺激臭があり、かすかにテレピン油のような臭いがある。葉下面には中脈の両側に5~7列の気孔があり、上面は薄緑色~暗緑色、気孔はないか、または葉の先端に向かって少数の気孔がある。葉先には明瞭に切れ込みがある(まれに丸い)。樹脂道は小さく、縁と下面の表皮層近くにある。受粉時の花粉錐は青赤色、紫色、オレンジ色、黄色、または±緑色。種子錐は円筒形、長さ(5~)6~7(~12)cm×幅3~3.5cm、薄緑色、暗青色、濃紫色、または灰色、無柄、先は丸い。種鱗は約・長さ2~2.5cm×幅2~2.5cmで、密に毛があり、苞鱗が含まれる。種子は長さ6~8mm×幅3~4mm、種子体は黄褐色、翼は種子体の長さの約1.5倍で、黄褐色でバラ色を帯びる。子葉は(4~)5~6(~7)枚。2n=24。
Abies grandis は形態学的にも化学的にも比較的均一である。南限のオレゴン州南部およびカリフォルニア州北部では、A. concolor と遺伝子移入する(introgresses)。遺伝子移入地域において、低地で湿潤な生息地に生息する標本は A. grandis に最もよく一致する。より高地で乾燥した生息地に生息するものは A . concolor に分類される。その他のものは A. concolorとA. grandisの交雑種と考えるのが適切である[Flora od North America]。
10 Abies holophylla Maxim. チョウセンモミ 朝鮮樅
朝鮮、中国(黒龍江省、吉林省、遼寧省)、ロシア原産。中国名は杉松 shan song。標高500~1200mの山地に生える。
樹高は30mまで、幹の直径は1mまで、樹皮は灰色または暗褐色、小枝は黄灰色または黄褐色、後に灰色または灰褐色に変化し、光沢があり無毛、冬芽は卵形、樹脂質。葉は櫛歯状に2組が側生し、球果のある小枝の上部で斜上する。葉は上面が暗緑色で光沢があり、線形、扁平、長さ2~4cm×幅1.5~2.5mm、気孔線は下面に2本の白色の帯状に入り、樹脂道は2本で中央にあり、先は尖鋭形または鋭形。種子球果はほぼ無柄、成熟すると黄褐色、円筒形、長さ6~14cm×幅3.5~4cm。種鱗はほぼ扇状台形または倒三角状扇形、先は厚く広く円形になり、露出部分は外面に密に毛がある。苞鱗は楔状倒卵形、短く、種鱗の長さの半分以下で、先は鋭い尖端(cusp)となる。種子は倒三角形、長さ8~9mm、翼は長さ約1.5cm、楔状長円形。子葉は5枚または6枚。受粉は4~5月、種子成熟は10月。
11 Abies homolepis Siebold et Zucc. ウラジロモミ 裏白樅
本州、四国に分布する。英名はNikko fir。モミより高地(ほぼ標高800m以上)に生える。
樹皮は鱗片状、灰褐色、赤みを帯びることも多く、老木は粗く割れる。小枝は無毛、黄灰色。若枝は光沢があり、無毛、溝がある。芽は卵形、樹脂質。葉は長さ1.5~3.5㎝×幅(1.7~)2~3㎜、断面は円形~窪み、下面に白色の広い気孔帯が2本ある。葉先は小さく2裂する。球花は赤紫色、苞鱗は突き出ない。球果は長さ5~10㎝×幅約3.5㎝、円柱形(細長楕円形)、若いときは帯紫色、濃紫色に熟す(古くなると褐色)。種鱗は長さ約2㎝×幅2~2.5cm、扇形、淡褐色。苞鱗はほぼ楔形、尖頭形で微凹形、種鱗に伏せ、小さく、種鱗の長さの半分以下で突出しない。種子は長さ7~8㎜(翼を含めず)、暗褐色、翼は種子より長く、長さ9~10㎜×幅8~9㎜。
ミツミネモミ(Abies x umbellata Mayr)は変種とされていたが、モミとウラジロモミとの雑種で両者の中間形。
12 Abies kawakamii (Hayata) T.Ito ニイタカトドマツ 新高椴松
台湾原産。中国名は台湾冷杉 tai wan leng shan。標高2400~3800mの山地に生える。
樹高は最大35m、幹の直径は最大1m、樹皮は灰褐色で鱗片状、小枝は初め黄褐色、2年目または3年目に褐色または褐灰色に変わり、密に軟毛が生える、冬芽は球形で樹脂質。葉は放射状または櫛歯状に2側生し、上面は明るい緑色、線形、長さ1~2.8cm×幅1.5~2mm、下面には2本の白色の帯状の気孔線があり、上面には数本の気孔線があり、ほぼ先端まで続く、樹脂道は2本、縁あり、先はわずかに凹形または鈍形。種子球果はほぼ無柄、暗紫色、卵形または長円状卵形。種鱗は球果の中央部にあり、扇形状台形または腎形で、長さ1.5~2cm×幅2~2.5cm。苞鱗を含み、長さは種鱗の長さの1/2~3/5。種子は7~9mm、翼は種子とほぼ同長。
13 Abies koreana E.H.Wilson チョウセンシラベ 朝鮮白檜
朝鮮原産。英名はKorean fir。標高1000~1900mの高山帯に生える。
低木または広錐形(ピラミッド形)の高木。高さ9~18m、幹回り(girth)1~2m。樹皮は平滑、樹脂の膨れがあり、その後、深く溝が入り粗くなり、板状になり、紫がかった後、淡灰色になり、樹皮の内側は赤褐色になる。小枝は溝があり、わずかに毛が生え、光沢のある灰色または黄赤色、紫色を帯びる。芽は卵形、葉から離れ、栗褐色~赤色、白っぽい樹脂を含み、直径8~1.2mm。葉は密集し、上方および外側に広がり、ほぼ螺旋状につき、真っすぐ、線形、下面に竜骨があり、上面は光沢のある緑色、下面は青白色、上面には気孔は通常なく、下面に10本の気孔線があり、長さ1~2.5cm×幅2~3mm、先端には切れ込みがある。雄球果(male strobili)は球状卵形、赤黄色または緑色がかった紫褐色で、長さ1cm。雌錘(female cone)は広円形、先が鈍く、長さ5~7cm×幅2.5~4cm、青灰色で、暗紫色になり、白色の樹脂斑点がある。種鱗は腎形。苞鱗はわずかに突出して反り返り、赤褐色。種子は卵形、種子体(堅果)は紫色(violet-purple)、長さ7mm、翼は赤褐色である。
14 Abies lasiocarpa (Hook.) Nutt. ミヤマバルサム
北アメリカ(ブリティッシュコロンビア州、ユーコン準州、アラスカ州、カリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州)西部原産。英名はsubalpine fir , Rocky Mountain fir, alpine fir, sapin concolore。標高1100~2300mの沿岸亜高山帯針葉樹林に生える。
樹高は20mに達する。幹の直径は0.8mまで。樹冠は尖塔状。樹皮は灰色で、質が薄く、平滑、古くなると溝が入る。枝は硬く、真っすぐ。小枝は対生~輪生し、緑がかった灰色~薄褐色。樹皮は2年ほどで裂けて赤褐色の層が現れ、やや軟毛がある。新しい葉の傷跡は赤い周皮(periderm:古くなった表皮に代わって形成され、植物体を保護するコルク層)を持つ。芽は葉に隠れているか露出しており、黄褐色~暗褐色、ほぼ球形で小さく、樹脂質で、先は丸い。基部の鱗片は短く、幅広、正三角形、無毛または基部に少数の毛状突起があるが、樹脂質は少なく、縁は円鋸歯状~歯状、先は鋭く尖る。葉は長さ1.8~3.1cm×幅1.5~2mm、螺旋状つき、上向き、柔軟。葉は横断面が平らで、上面に顕著な溝があり、下面は中脈の両側に4~5列の気孔列を持つ。葉の上面は青緑色、非常に粉白色を帯び、葉の中央に4~6列の気孔列を持ち、列は通常葉の基部まで連続する。葉先は顕著にまたは弱く切れ込みが入るかまたは円形。樹脂道は大きく、±中央で、縁から離れ、下面と上面の表皮層の中間に位置する。受粉時の花粉錐は±紫色~紫緑色。種子錐は円筒形、長さ6~12cm×幅2~4cm、暗紫色、無柄、先は丸い。種鱗は約・長さ1.5cm×幅1.7cm、密に毛があり、苞鱗は含まれる(突出し反り返った苞鱗を持つ標本には虫が寄生している)。種子は長さ6mm×幅2mm、種子体は褐色、翼は種子体の長さの約1.5倍、薄褐色。子葉の数は4~5枚。2n=24。
15 Abies magnifica A.Murray bis カクバモミ
北アメリカ西部(カリフォルニア州、ネバダ州、オレゴン州)原産。英名はCalifornia red fir, Shasta red fir, red fir , silvertip fir, western North American fir。標高1400~2700mの針葉樹混交林に生える。
樹高は57mに達する。幹は直径2.5mに達する。樹冠は狭円錐形。樹皮は帯灰色、質が薄いが、樹齢とともに厚くなり、深い溝が刻まれ、うねは溝の4倍の幅を持つことが多く、葉身は赤みを帯びる。枝は樹冠の上部で斜上し、下部で下降する。小枝は対生~輪生し、薄黄色~±黄褐色(tan)で、1~2年間は赤みを帯びた軟毛が生える。芽は葉に隠れるか露出し、通常は暗褐色、卵形で小さく、樹脂質ではないか、先端近くに樹脂滴をもち、先は丸みを帯びる。基部の鱗片は短く幅広で正三角形、密に軟毛が生え、樹脂質ではなく、縁は全縁~円鋸歯状、先は鋭く尖る。葉は長さ2~3.7cm×幅2mm、ほとんどが1列につき、柔軟、下部ではしばしば2~3mmが小枝に密着(小枝の下面で最もよく見える)、上部は散開する。葉の横断面は平らで、葉の基部に向かって表上面に弱い溝が有または無、稔性の枝では横断面が3~4面になる。樟脳のような匂いがある。葉は下面に2本の粉白色の帯があり、各帯には4~5列の気孔があり、上面は青緑色~銀青色、1本の粉白色の帯があり、この帯は葉の基部に向かって2本に分裂することもあち、帯には葉の中央で(8~)10(~13)列の気孔がある。葉先は丸いが、稔性の枝ではやや尖る。樹脂道は小さく、縁近くと、下面の表皮層にある。受粉時の花粉錐は±紫色または赤褐色。種子錘は長円状円筒形、長さ15~20cm×幅7~10cm、最初は紫色だが黄褐色または緑褐色となり、無柄、先は丸い。種鱗は約・長さ3cm×幅4cm、毛がある。苞鱗は種鱗に含まれ~突出し、種鱗の上に後屈する(Shasta red fir)。種子は長さ15cm×幅6mm、種子体は暗赤褐色、翼は種子体の長とほぼ等しく、バラ色。子葉は7~8枚。2n=24。
16 Abies mariesii Mast. オオシラビソ 大白檜曽
synonym Abies mariesii Mast. f. hayachinensis Hayashi
日本固有種。中部地方から東北地方の亜高山帯に分布する。別名はアオモリトドマツ、ホソミノアオモリトドマツ。
高さ20~25m、大きいものは40mに達する。高山では小型になる。樹形がシラビソに似ている。多雪にもよく耐え,枝が曲がっていることが多い。樹皮は灰白色~灰青紫色、平滑、横長のヤニ袋(resin blisters)がある。1年生枝には赤褐色の短毛が密生する。葉は枝を隠すように短い葉があり、貼りつくように螺旋状に密につき、枝が見えにくい。葉柄がやや長く、曲がる。葉身は扁平な線形、長さ1~2㎝、先は円形、微凹頭、葉質はやや堅い。葉表は光沢があり濃緑色、葉裏は2本の白色の幅広い気孔帯がある。雌雄同株。花粉錐(雄花序)は前年枝の葉腋に多数つき、黄色、有柄、下垂する。球花(雌花序)は前年枝の枝先の葉腋に上向きに直立し、円柱状、紫色。球果は無柄、長さ5~10㎝、幅3~5㎝、楕円形、濃青紫色(古くなると黒紫色)に熟す。種鱗は幅約2.5㎝、種輪の合わせ目に明瞭な密毛がある。苞鱗はへら形、長さが種鱗の半分程度であり、先が種鱗から突き出ない。種子は2個つき、倒卵状三角形、翼を含めず長さ約10㎜、淡褐色、翼は種子よりやや長く、大きい。花期は6月。果期9~10月。
17 Abies nephrolepis (Trautv.) Maxim. トウシラベ 唐白檜
朝鮮、中国(河北省、黒竜江省、吉林省、遼寧省、陝西省)、ロシア原産。中国名は臭冷杉 chou leng shan。標高300~2100mの丘陵地、山地に生える。木材は建築、家具、木材パルプとして使用される。
樹高は30mに達する。幹の直径は1.2mまで。樹皮は灰色で、縦長の長円形の板または鱗片をもつ。小枝は薄茶色で、2年目または3年目に灰色または灰褐色に変わり、密に淡色の毛が生える。冬芽は球形、樹脂質。葉は櫛歯状に2側生し、主枝と球果をつける枝に斜上し、上面は薄緑色、線形、扁平、長さ(1~)1.5~2.5(~3)cm×幅約1.5mm、下面には2本の白色の帯状の気孔線があり、樹脂道は2本で中央にあり、先は凹形、主枝と球果をつける小枝はでときに鋭形になる。種子錘は無柄、成熟すると紫褐色または暗紫色になり、卵状円筒形または円筒形、長さ4.5~9.5cm×幅2~3cm。種子錘中央部の種鱗は腎形または扇状腎形、稀に扇状台形、長さ1~1.5cm×幅1.4~2.2cm、露出部には密に毛が生え、側縁は円形または耳状、ギザギザの小歯状、苞鱗は含まれるかわずかに突出し、倒卵形で、長さは種鱗の長さの3/5~4/5、稀に種鱗と同長になり、先は尖端が長さ約3mm。種子はわずかに密着し、倒卵状三角形、長さ4~6mm。翼は褐色で楔形、通常種子よりわずかに短い。子葉は4枚または5枚。受粉は4~5月、種子成熟は9~10月。
17-1 Abies nephrolepis (Trautv.) Maxim. f. chlorocarpa E.H.Wilson アオトウシラベ
18 Abies nordmannniana (Steven) Spach コーカサスモミ
ジョージア、ロシア、西アジア(トルコ)原産。英名はCaucasian fir , Nordmann Christmastree , Nordmann fir。山地に生える。常緑高木、高さ61mに達する。、地上から密に枝分かれし、枝は規則的に並ぶ。樹皮は灰褐色で平滑、非常に古くなるまで樹脂膨れがある。針葉は密で前方に向き、長さ20~30mm×幅2~2.5mm、先は円形で切れ込みがあり、上面は光沢のある暗緑色、下面には2本の白色の気孔帯がある。芽には樹脂質がない。種子錘は赤褐色、長さ15cm×幅5cm、円筒形。
18-1 Abies nordmanniana subsp. equi-trojani (Asch. & Sint. ex Boiss.) Coode & Cullen
ギリシャ、トルコに分布。標高760~2000mに生える。高さ20~30m、幹回り1.8~4m。樹冠は細長い円錐形、やや丸みを帯びる。樹皮は厚く、鱗片状の板に分かれ、黄灰褐色である。小枝は光沢のある黄褐色~橙褐色、軟毛はない。芽は卵形、栗色、樹脂質、先には鱗片がなく、先は鈍形、直径1~1.2mm。針葉は密生し、不規則な配置で、大部分は小枝の上部に密集して前方に伸び、小枝の下部では上方に湾曲し、基部付近の上面に溝があり、長さ15~30mm×幅1.5~2mm、下面には6~8本の白色の気孔帯が2本あり、先は尖りまたは鈍形。雌の球果は円筒状卵形、赤褐色~暗褐色、先は卵形、長さ10cmまで×幅4~4.5cm。苞鱗は長く伸びて反り返り、鋭く尖り、裂片がある。種子は長さ6mm、翼を含む場合は長さ22mmまで。
18-2 Abies nordmanniana subsp. nordmanniana
西コーカサスおよびトルコに分布する。黒海東部周辺の標高900~2100mの山地の珪質土壌に生育する。19 Abies numidica De Lannoy ex Carriere アルジェリアモミ
アルジェリア原産。英名はAlgerian fir。標高1300~2000mのカビリエ山脈のバボル山とタラホル山に生える。
高木、高さ25mになる 高木。樹皮は若い木では灰色で滑らかだが、古くなると灰褐色で鱗片状になり亀裂が入る。樹冠は円錐形、密に枝分かれし、枝は水平に広がる。シュートは黄緑色~褐色、光沢があり、無毛。芽は卵形で大きく、暗褐色。樹脂を含まずまたはわずかに含む。針葉は密に並び、シュートの上面にはブラシ状につき、シュートの中央部にはなく、V字形になり、長さ15~20mm、太く、丈夫で平ら、基部が捻じれ、暗緑色、先に気孔線があり、下面には2本の白色の気孔帯がある。雌花は緑黄色。球果は円筒形、長さ15~20cm×幅3.5~5.5cm。種鱗は幅約3cm、背側にやや綿毛があり、反り返り、縁は全縁。苞鱗は短く、突出しない。種子は長さ12~14mm、翼は種子より長い。種子は1000粒で約70gの重さがある。子葉の長さは約10~20cm。
20 Abies pinsapo Boiss. スペインモミ
スペイン、モロッコ原産。英名はSpanish fir。標高1000~2000mの山地に生える。
樹高30m、胸高直径150cmに達する。通常、単一の丸く真っすぐな幹をもち、樹冠は若い木では狭い円錐形だが古い木では不規則になり、枝は上部の樹冠では斜上し、下部では下方に曲がり、長くなる。露出した場所に生える木は非常に不規則な形になることがある。樹皮は平滑、暗灰色、年を取るにつれて縦に亀裂が入り、粗く、鱗片状になる。小枝は丈夫、非常に硬く(おそらく他のモミ属の種よりも)、赤褐色または緑褐色から灰色に変わり、無毛で、わずかにうねがある。葉痕は大きく、紫灰色。葉芽は球形、約・長さ5mm×幅4mm、樹脂が非常に多い。鱗片は赤褐色、三角形、竜骨があり、先が自由である。葉は螺旋状につき、放射状に広がり、小枝に対して垂直になり、日陰の葉はやや櫛状であるが、他のモミ属より櫛状ではない。葉は長さ6~20mm×幅2~3mm、基部で捻じれず、丸くまたはわずかに平らになり、堅く、先は鈍形または鋭形、気孔帯は全ての面にあり、暗緑色~厚く粉白色を帯び、樹脂道は小さく、2本、中央にあり、13年以下、宿存する。花粉錘は側生、小枝に密集してつき、長さ5~7mm、黄色で赤色または紫色の小胞子葉(microsporophylls)をもつ。種子錘は短い花序柄につき、側生、直立、円筒形、先は鈍形、長さ9~14cm×幅3~4 cm、緑紫色~褐色に熟す。種子錘の軸(rachis)は宿存し、狭い円錐形で紫褐色。種鱗は三角形、長さ25~28cm×幅22~25cm、平滑でわずかに条線があり、上縁は全縁、波状、内曲する。苞鱗は長さ10~13mm、完全に内包され、長円形、先端には小さな尖端(cusp)がある。種子は倒卵形、長さ6~10mm、淡褐色。翼は種子の長さの2倍あり、薄褐色。種子1000粒の重さは約50g。子葉は5~8枚。開花は4月~5月。球果は9月~10月に成熟する。
21 Abies procera Rehder ノーブルモミ
北アメリカ(カリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州)原産。英名はNoble fir。標高60~2700mの針葉樹混交林に生える。
樹高は80mに達する。幹は直径2.2mに達する。樹冠は尖塔状(spirelike)である。樹皮は灰褐色で、古くなると厚くなり、深い溝(溝とうねの幅はほぼ同じ)があり、赤褐色(特に葉身が剥がれると赤みがかる)になる。枝は幹から直角に分岐し、硬い。小枝は赤褐色で、数年間は微細な毛が生える。芽は葉に隠れ、黄褐色、卵形、小さく、樹脂質ではなく、先は丸い。基部の鱗片は短く、幅広、正三角形、中央に毛が生え、樹脂質ではなく、縁は全縁~円鋸歯状、先は鋭く尖る。葉は長さ1~3(~3.5)cm×幅1.5~2mm、1列につき、柔軟、しばしば基部は2~3mmほど小枝に密着し(小枝の下面で最もよく見え)、上部は散開する。葉の断面は平らで、下面に明瞭に隆起した中肋があり、上面に溝は有または無、稔性の枝では断面が四面である。刺激臭があり、かすかにテレピン油のような臭いがある。葉の下面に2~4本の粉白色の帯があり、各帯には(4~)6~7列の気孔があり、上面は青緑色、葉の中央部に0~2本の粉白色の帯があり、各帯には0~7列の気孔がある。葉先は丸みを帯びるか、切れ込みがある。稔性の枝の葉は四面があり、その下面に4本の気孔帯がある。樹脂道は小さく、縁近くと下面の表皮層にある。受粉時の花粉錐は±紫色、±赤色、または赤褐色。種子錘は長円状円筒形、長さ10~15cm×幅5~6.5cm、緑色、赤色、または紫色、緑色の苞鱗が重なり、成熟すると褐色(苞鱗は薄色、種鱗は暗色)になり、無柄で先は丸みを帯びる。種鱗は約・長さ2.5cm×幅3cmで、軟毛があり、苞鱗は突出し、種鱗の上に反り返る。種子は長さ12cm×幅6mmで、種子体は赤褐色。翼は種子体よりわずかに長く、淡褐色~麦わら色。子葉は(4~)5~6(~7)枚。2n =24。
22 Abies sachalinensis (F.Schmidt) Mast. トドマツ 広義
synonym Abies nephrolepis subsp. sachalinensis (F.Schmidt) Vorosch.
synonym Abies veitchii var. sachalinensis F.Schmidtsynonym Pinus sachalinensis (F.Schmidt) Voss
北海道、千島列島、サハリン、ロシア原産。
高さ20~25m、大きいものは35mに達する。樹皮は灰褐色。枝は斜上し、若枝は淡褐色の毛が多い。葉は扁平な線形、長さ1.5~2㎝、先は微凹状、円形。葉表は濃緑色。葉裏には2本の白色の気孔帯がある。雌雄同株。花粉錐(雄錘)は前年枝の葉腋に多数つき、球果は黒褐色で5-8.5 cm程度で枝上に直立球果の構造(トウヒ属の球果は枝から垂れ下がり、松かさのように鱗片を開閉させるだけで種子を散布し、モミのようにバラバラに分解しない)。種鱗が球果から出る程度である。
22-1 Abies sachalinensis var. gracilis (Kom.) Farjon
synonym Abies gracilis Kom.ロシア(カムチャッカ半島)に分布。
樹高は15m未満、胸高直径0.8m未満。樹冠は若木では円錐形、老木では円錐状円柱形で不規則。若木の樹皮は平滑で光沢のある褐灰色で、樹脂の膨れが目立ち、年を取ると灰色に変わり亀裂が入り、不規則な小板に割れる。小枝は細く堅く、初め、緑褐色または灰褐色、のちに淡クリーム色または白灰色になり、わずかにうねがあり、溝の中にごくまばらに毛が生える。栄養芽は卵形で小さく、樹脂が非常に多く、赤褐色。葉は放射状に密につき、新梢の下で分かれ、前方に出て、しばしば上部が上向きに湾曲し、長さ1.3~2.2cm×幅1~1.2mm、側面は平行、光沢のある暗緑色、上面には溝があり、通常、数本の断続的な気孔線がある。下面に2本の細い銀白色の気孔帯があり、先は尖鋭形、円形または凹形、基部は強く捻じれる。花粉錘は密集し、長さ約1cm、帯黄色、赤色の小胞子葉(microsporophylls)を有する。種子錘(球果)はしばしば密集し、無柄またはほぼ無柄、楕円状円筒形、先は鈍形まれに鋭形、小さく、長さ2.5~5cm×幅1~2cm、未熟時は紫がかっているが、成熟すると暗紫褐色になる。種鱗は腎形で、成熟すると苞鱗が突き出ず含まれる。
22-2 Abies sachalinensis var. mayriana Miyabe & Kudô アオトドマツ 青椴松
synonym Abies mayriana (Miyabe & Kudo) Miyabe & Kudo北海道に分布。
葉は4~5本の気孔帯を持ち、球果の種鱗は顕著に反り返る。球果の苞鱗が緑色を帯び、種鱗から先が突き出る。
22-3 Abies sachalinensis var. nemorensis Mayr ネムロトドマツ 根室椴松
北海道に分布。別名はエゾシラビソ。球果が小さい。苞鱗が赤みを帯び、小さく、種鱗から先が全く突き出ない。
23-4 Abies sachalinensis var. sachalinensis アカトドマツ 赤椴松
synonym Abies sachalinensis var. corticosa Tatew. オニハダトドマツ
synonym Abies sachalinensis f. corticosa (Tatew.) Hayashi北海道、千島列島、サハリンに分布。
樹皮はほぼ滑らかで灰色がかったを持つ。芽は小さくほぼ球形。小枝は浅い溝に毛が生える。葉は線形で、長さ2~3.5cm×幅約1.5mm、円形から窪み、下面に2本のやや細い気孔帯がある。球果は円筒形で長さ約7cm。種鱗は外側に密に毛があり、全縁。苞鱗は赤みを帯び、種鱗から先があまり突き出ない。。北海道、南千島列島および樺太。 球果の苞鱗が赤みを帯び、種鱗から先があまり突き出ない。
オニハダトドマツは樹皮がエゾマツの様に裂ける。
23 Abies sibirica Ledeb. シベリアモミ
synonym Pinus sibirica (Ledeb.) Turcz.
中国(新疆ウイグル自治区)、キルギスタン、ロシア原産。中国名は西伯利亚冷杉 xian bei leng shan。標高1900~2400mの山地、河川流域に生える。中国では絶滅危惧種。木材は建築材、家具、木材パルプに利用される。
樹高は35mまで、幹は直径1m d.b.h.まで。樹皮は灰褐色で平滑。小枝は黄灰色、光沢がある。冬芽は球形、樹脂質。葉は斜上し、稀に櫛歯状に2側列に並び、上面は薄緑色、線形、扁平、長さ(1.5~)2~3(~4)cm×幅約1.5mm、下面には2本の白色の帯状の気孔線がある。樹脂道は2本で中央にあり、先は凹形、球果のある小枝では鋭形または鈍形。種子錘は成熟すると褐色または暗褐色になり、円筒形、長さ5~9.5cm×幅2.5~3.5cm。球果中央部の種鱗は倒三角状扇形または扇状台形、通常中央部がわずかに狭まり、長さ1.7~2.5cm×幅1.6~2.4cm、露出部は外面に密に毛があり、基部に小花柄がある。苞鱗は楔状倒卵形、短く、種鱗の長さの1/3~1/2、上部の縁はギザギザの小歯状、先はわずかに円形である。種子はわずかに密着し、倒三角形で長さ約7mm、翼は上部が淡青色で、楔形、長さ0.7~1.3cm。受粉は5月。種子成熟は10~11月[Flora of China]。
23-1 Abies sibirica subsp. semenovii (B.Fedtsch.) Farjon
synonym Abies semenovii B.Fedtsch.
synonym Abies sibirica var. semenovii (B.Fedtsch.) Tang S.Liu
キルギスタン原産。 小枝には顕著なうねと溝があり、縁には樹脂道があり、種子球果は黄褐色で、苞鱗は幅が広い。
23-2 Abies sibirica subsp. sibirica
synonym Abies krylovii Golub
synonym Abies pichta Fisch. ex Jacques
中国(新疆ウイグル自治区)、ロシア原産。中国名は西伯利亚冷杉 xian bei leng shan。
中国には、ここで記載するvar. sibiricaのみが分布する。
24 Abies spectabilis (D.Don) Spach ヒマラヤモミ
synonym Abies webbiana Lindl.
synonym Abies brevifolia Dallim.
synonym Abies chilrowensis Parl.
アフガニスタン北部、インド、シッキム、ネパール、パキスタン、中国(チベット)原産。英名はHimalayan fir , East Himalayan fir , Webb fir, Sapin magnifique。標高2500~4000の高山帯に生える。
高木、高さ60mに達する。樹冠は広円錐形。枝は水平に広がる。樹皮は暗灰色、粗く鱗片状。新芽は赤褐色、深い溝があり、溝には毛が生える。芽は大きく球形、樹脂質。新芽の上部には数列に並んだ針葉があり、針葉の間にはV字型の窪みがあり、針葉は長さ2~6cm、先は凹形、上面は暗緑色で光沢があり、下面には2本の広い気孔帯がある。球果は円筒形、長さ14~20cm×幅約7cm、若いうちは紫色(violet-purple)、後に褐色になる。種鱗は幅1.5~2cm、苞鱗は隠れている。
25 Abies veitchii Lindl. シラビソ 白檜曽 広義
日本固有種。本州(東北地方南部~中部地方、紀伊半島)、四国の亜高山帯に生える。栽培種もあり、英名はVeitch's silver fir。別名はシラベ。
高さ25~30m、まれに35mに達するものもみられる。樹形は狭い円錐形、枝は水平に出る。樹皮は平滑、灰白色、横ヤニ袋(resin blisters)がある。小枝は灰色または赤褐色で、やや密に軟毛があり、1年生枝には褐色~灰褐色の短毛が明瞭にある。葉は枝に立ち上がって、螺旋状にやや疎につき、枝がよく見える。葉柄はごく短く、直線的、付け根が吸盤状。葉身は扁平な線形、長さ1~2.5㎝、幅約2㎜、先は円形、微凹頭、オオシラビソよりやや長い。葉上面には光沢があり濃緑色、葉下面は2本の幅広い白色の気孔帯がある。雌雄同株。花粉錐(雄花序)は前年枝の葉腋に多数つき、黄色、有柄、下垂する。球果(雌花序)は前年枝の枝先の葉腋に上向きに直立し、円筒形、若いうちは青紫色、尖った苞鱗の先が見える。球果は成熟すると濃青紫色(古くなると黒褐色)、長さ4~6㎝、幅2~2.5㎝、円柱形、苞鱗の先はほとんど露出しない。種鱗は幅1~1.3㎝の扇形、外面は無毛。苞鱗は種鱗とほぼ同長、狭い扇形、先が尖り、花時に球花から突き出る。種子は暗褐色、翼を含めず長さ約6㎜、翼は種子より短く、横に幅広い。花期は6月。果期9~10月。
25-1 Abies veitchii var. sikokiana (Nakai) Kusaka シコクシラベ 四国白檜
synonym Abies sikokiana Nakai
synonym Abies veitchii subsp. sikokiana (Nakai) Silba
四国の石槌山、剣山に自生する。
樹高は約20mに達する。樹皮は白色、若枝には褐色の短毛が生える。葉が短く、先がわずかに広がる。球果は長さ4~4.5cm、より小さく丸みを帯びる。
25-2 Abies veitchii var. veitchii シラビソ 白檜曽
synonym Abies eichleri Lauche
synonym Abies nordmanniana var. eichleri (Lauche) Beissn.
synonym Abies veitchii var. komagatakensis Hayashi コマガタケシラベ
synonym Abies veitchii var. nikkoensis Mayr ニッコウシラビソsynonym Abies veitchii var. olivacea Shiras. アオシラベ
synonym Abies veitchii var. reflexa Koidz.
本州(福島県および中部地方以西、大和地方)、四国に分布する。山地に生える。
球果は円筒形で、長さ約5cm、若いうちは青紫色。
POWOでは下記を認めていない。
(1) Abies veitchii var. nikkoensis Mayr ニッコウシラビソ 日光白檜曽
球果は小さく、苞鱗はほとんど隠れる。(2) Abies veitchii Lindl. f. olivacea (Shiras.) Kusaka アオシラベ 青白檜
synonym Abies veitchii var. olivacea Shiras.本州(日光、富士山、八ヶ岳)に分布。
球果は帯緑色、成熟すると灰褐色になる。
(3) Abies veitchii Lindl. var. reflexa Koidz. f. viridis Kusaka アオシコクシラベ 青四国白檜
シコクシラベの球果の緑色のもの(4) Abies veitchii Lindl. var. veitchii f. komagatakensis (Hayashi) Yonek. コマガタケシラベ 駒ヶ岳白檜
synonym Abies veitchii Lindl. var. komagatakensis Hayashi山梨県の駒ケ岳に自生する。苞鱗が種鱗より長く超出し、外曲するもの。
26 ハイブリッド
(1) Abies x umbellata Mayr ミツミネモミ
synonym Abies firma Siebold et Zucc. var. iidaensis Kusaka
synonym Abies homolepis Siebold et Zucc. var. umbellata (Mayr) E.H.Wilson
Abies × umbellata モミとウラジロモミとの雑種で両者の中間形。別名はアオオオシラビソモドキ。埼玉県、岐阜県、愛知県に分布する。 愛知県では段土山などで見られる。ウラジロモミの変種 var. umbellata またはf. umbilicataに分類されていた。栽培種とされており、英名はParagliding, Nikko fir。ウラジロモミの球果が緑色のもの。
参考
1) Flora of ChinaAbies
Abies
Abies
Abies Mill.
Abies p111