ママコナ 飯子菜

mark

Flora of Mikawa

ハマウツボ科 Orobanchaceae ママコナ属

別 名 ヤマキセワタ
学 名 Melampyrum roseum Max. var. japonicum Franch. et Savat.
Melampyrum roseum Maxim. subsp. japonicum (Franch. et Sav.) Nakai
ママコナ苞
ママコナ苞
ママコナ花
ママコナ花
ママコナ
ママコナの葉
花 期 8~10月
高 さ 20~50㎝
生活型 多年草
生育場所 深山の林縁、草地
分 布 在来種  北海道、本州、四国、九州、朝鮮
撮 影 豊田市  07.10.7
和名は花冠の白色の隆起あるいは若い種子が飯粒に似ていることに由来する。半寄生植物。科はゴマノハグサ科からハマウツボ科に移動された。
 茎は直立し、毛があり、分枝する。葉は対生し、長さ2~8㎝、幅1~3㎝の長卵形、先が尖り、全縁、花序に近い葉の基部に歯牙状の鋸歯があることもある。葉の両面に短毛がある。葉柄は長さ3~15㎜。茎頂の長さ3~10㎝の花序に花を片側に向けて2個ずつつける。苞は葉状、長く尖った歯牙があるのが特徴である。花の下にあって刺のある葉のように見えるのが苞である。花は長さ約1.5㎝、紅紫色、花筒部は長く、花冠の下唇に2個白色の隆起がある。蒴果は種子が1~2個入り、熟すと上側が裂開する。種子は長さ2.5~3.5㎜、惰円形、淡褐色。
 ツシマママコナ var. roseum 本州(中国地方)、九州、朝鮮、中国、ロシアに分布し、中国名は山罗花 shan luo hua。花序が長く、苞の歯牙が少ない。
 マルバママコナvar. ovalifolium 壱岐、対馬、朝鮮、中国に分布し、中国名は卵叶山罗花 luan ye shan luo hua。 花軸や萼に毛が少ない。
 シコクママコナは苞の歯牙が刺毛状で、まばらにつき、花冠内部に黄色の斑点がある。
 ミヤマママコナの苞には歯牙がない。

ママコナ属

  family Orobanchaceae - genus Melampyrum

 一年草、半寄生。葉は対生、全縁。 花は苞腋に単生、または総状花序~穂状花序につく。苞は葉状、縁はしばしば尖ったまたは剛毛状の歯牙があり、まれに全縁になる。萼は鐘形、萼片は4個。上側の2個は下側よりも大きい。 花冠筒部は筒状、上部で次第に広がる。拡大部は広がり、2唇形。下唇は開出し、基部に2ひだがあり、先は3裂。上唇はかぶと形(galeate)、扁平、下唇よりわずかに短く、縁は外巻き、先は鈍形。雄しべは4本、2強雄しべ、かぶとに囲まれる。 葯は輻合し、葯室は大きさが同じで、円錐状に尖り、裂開後、隙間に沿って毛がある。胚珠は1室あたり2個。 柱頭は頭状、全縁。蒴果は卵形、わずかに扁平、真っすぐまたは斜め、胞背裂開、先は鈍形または先細になる。種子は1~4個、長円形、大きく、平滑。英名はcow wheat。
 世界に約20種あり、北半球に分布する。

ママコナ属の主な種と園芸品種

1 Melampyrum laxum Miq. var. arcuatum  タカネママコナ 高嶺飯子菜
  synonym Melampyrum arcuatum Nakai
 日本固有種。本州(群馬県、栃木県、長野県、山梨県、埼玉県)に分布する。山地~亜高山の岩場、林縁に生える。
 1年草、半寄生。柔弱で小さく、高さ10~15㎝。葉は細長く、ときに赤味かかる。花は常に淡黄白色で小さく、下唇にある斑紋は黄色。花期は7~9月。

2 Melampyrum laxum Miq. var. laxum  シコクママコナ 四国飯子菜
  synonym Melampyrum laxum Miq. var. brevidens (Kitam.) H.Hara
 本州(東海地方以西)、四国、九州、中国原産。中国名は圆苞山罗花 yuan bao shan luo hua。
 1年草。高さ20~50cm。葉は葉柄があり、長さ2.5~6㎝、幅0.6~2㎝の狭卵~長楕円状披針形。花冠内部に2本の黄色の隆起があり、苞の縁に刺毛状の歯牙が散生する。蒴果は長さ約7㎜の先が長く尖った卵形、緑色、種子が1~2個入り、熟すと上側から裂開する。種子は長さ約4㎜の惰円形、淡褐色。花期は8~9月。
2-1 Melampyrum laxum Miq. var. laxum f. edentatum (Tuyama) T.Yamaz. ミヤジマママコナ 
 シコクママコナの苞に歯牙のないもの。
2-2 Melampyrum laxum Miq. var. laxum f. leucanthum T.Yamaz.  シロバナシコクママコナ 
 シコクママコナの白花品種。
2-3 Melampyrum laxum Miq. var. nikkoense Beauverd ミヤマママコナ 深山飯子菜
  synonym Melampyrum laxum auct. non Miq.
 北海道、本州に分布。
 1年草。高さ20~50㎝。茎は直立し、分枝する。葉は対生し、長さ2.5~6㎝の狭卵形~長楕円状披針形、全縁、先が尖り、基部は円形、長柄がある。花は茎頂又は枝先の穂状花序につく。苞は三角状卵形、全縁。花冠は長さ約2㎝の2唇形、紅紫色。下唇の内側に白色~黄色の隆起部分が2個あり、両側に濃い黄色の斑がある。蒴果は長さ約8㎜の長卵形、種子が1~2個入り、熟すと上側が裂開する。種子は長さ約4㎜の惰円形、淡褐色。花期は8~9月。
2-3-1 Melampyrum laxum Miq. var. nikkoense Beauverd f. albiflorum H.Hara  シロバナミヤマママコナ 異分類
 ミヤマママコナの白花品種。
2-4 Melampyrum laxum Miq. var. yakusimense (Tuyama) Kitam. ヤクシマママコナ 屋久島飯子菜
 屋久島に分布する。
 1年草、直立し、高さ15~20㎝。葉は比較的幅が広く、狭卵形~長楕円状披針形、長さ1.5~3㎝×幅0.5~1㎝、基部は広くさび形、全縁、先は尾状、両面とも無毛。花は茎上部の葉腋に単生する。萼は小形で、萼片はときに5個。花冠は長さ5~10mm。上唇は、薄ピンク色、縁に軟短毛がある。下唇は白色、先端はごく浅く3裂し、基部に2隆起があり、隆起が白色から濃赤色に変わる。花期は8~9月。

3 Melampyrum macranthum Murata  オオママコナ 大飯子菜
 日本固有種。本州の和歌山県に分布する。ウバメガシ林にだけ生える。花が長く飛びながら口吻をストローのように伸ばして蜜を吸うホウジャクというガだけが花粉媒介する。
 1年草。高さ40~80㎝、半寄生。葉は対生し、葉柄は長さ1~1.5㎝。葉身は披針形、長さ4~6㎝×幅1~2㎝、基部は広くさび形、全縁、先は尾状、両面とも無毛。花は枝先の穂状花序に、多数の花をつける。穂状花序は長さ4~10㎝。苞は卵形~矢じり形、先は鈍形、基部の両縁に1~数対の刺毛状の歯牙がある。花冠は長い筒形で先は2唇形、長さ約4㎝、花冠上部は紅紫色を帯び、筒部の基部はほぼ白色。花期は9~11月。

4 Melampyrum roseum Maxim. ママコナ 広義
 日本、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は山罗花 shan luo hua
 1年草、高さ15~80㎝、全体にまばらに鱗片状の短毛がある。茎は直立し、類4稜形で、分枝し、まれに単一、ときに、2本の線上に多細胞の毛がある。葉柄は長さ約5mm。葉身は線形、線状披針形、楕円形、卵状楕円形、または狭卵形であり、基部は円形~くさび形、先は尖鋭形、ときに鈍形。 苞は披針形~卵形、基部に尖った歯があるか、または縁全体に剛毛状の歯があり、先は鋭形~尖鋭形。萼は長さ約4mm、しばしばザラつき、しばしば脈に多細胞の毛がある。萼片は狭三角形~錐状三角形で、短い縁毛がある。花冠は紫色、紫赤色、または赤色、側面は白色、長さ1.5~2㎝、花冠筒部は拡大部の長さの約2倍。かぶと(galea)は内面に密に毛がある。蒴果は卵形、長さ8~10㎜、鱗状毛があるか、またはまれに無毛、先は切形~斜め。種子は黒色、長さ約3mm。花期は夏~秋。(Flora of China)
4-1 Melampyrum roseum Maxim. var. roseum ツシマママコナ 対馬飯子菜
  synonym Melampyrum roseum Maxim. var. hirsutum Beauverd
 日本(本州の中部地方・中国地方、四国)、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は山罗花 shan luo hua。
 葉身は披針形~卵状披針形、長さ2~8㎝×幅0.8~3戦地、基部は円形からくさび形、先は尖鋭形。苞は緑色、鋭角~狭い尖鋭形、基部の縁に尖った歯があるか、または縁全体に長い剛毛状の歯があり、まらに縁縁。 萼片は、細く三角形~錐状三角形。花期は夏~秋。
4-2 Melampyrum roseum Maxim. var. japonicum Franch. et Sav. ママコナ 飯子菜
  synonym Melampyrum roseum Maxim. subsp. japonicum (Franch. et Sav.) Nakai
  synonym Melampyrum ciliare Miq.
 北海道、本州、四国、九州、朝鮮原産。別名はヤマキセワタ。深山の林縁、草地に生える。
 多年草。高さ20~50㎝。茎は直立し、毛があり、分枝する。葉は対生し、長さ2~8㎝、幅1~3㎝の長卵形、先が尖り、全縁、花序に近い葉の基部に歯牙状の鋸歯があることもある。葉の両面に短毛がある。葉柄は長さ3~15㎜。茎頂の長さ3~10㎝の花序に花を片側に向けて2個ずつつける。苞は葉状、長く尖った歯牙があるのが特徴である。花の下にあって刺のある葉のように見えるのが苞である。花は長さ約1.5㎝、紅紫色、花筒部は長く、花冠の下唇に2個白色の隆起がある。蒴果は種子が1~2個入り、熟すと上側が裂開する。種子は長さ2.5~3.5㎜、惰円形、淡褐色。花期は8~10月。

4-2-1 Melampyrum roseum Maxim. var. japonicum Franch. et Sav. f. leucanthum Nakai シロバナママコナ 白花飯子菜
  synonym Melampyrum ciliare Miq. f. leucanthum (Nakai) Tuyama
 ママコナの白花品種。
4-3 Melampyrum roseum var. obtusifolium (Bonati) D. Y. Hong
 中国原産。中国名は钝叶山罗花 dun ye shan luo hua。
 葉身は楕円形~卵形状披針形、基部はしばしばくさび形で漸尖し、先は鈍形。 苞は卵形、縁はしばしば短い芒状の歯があり、先は鈍形~鋭形。萼片は三角形~狭三角形。花期は6~7月。
4-4 Melampyrum roseum Maxim. var. ovalifolium (Nakai) Nakai ex Beauverd マルバママコナ 丸葉飯子菜
  synonym Melampyrum ovalifolium Nakai
 日本(対馬、壱岐)、朝鮮、中国原産。中国名は卵叶山罗花 luan ye shan luo hua。
 葉身は狭卵形、基部は浅い心形、円形、または広さび形、先は尖鋭形。苞は縁に長剛毛状の歯があり、先は尖鋭形~狭い尖鋭形。花は密集する。萼片は狭く、尖鋭形~尾状。花期は6~8月。
4-4-1 Melampyrum roseum Maxim. var. ovalifolium (Nakai) Nakai ex Beauverd f. albiflorum (Beauverd) Nakai  シロバナマルバママコナ 白花丸葉飯子菜
  synonym Melampyrum ovalifolium Nakai f. albiflorum (Beauverd) Tuyama
 マルバママコナの白花品種。

5 Melampyrum setaceum (Maxim. ex Palib.) Nakai ホソバママコナ 細葉飯子菜
  synonym Melampyrum roseum Maxim. var. setaceum Maxim. ex Palib.
 日本(九州北部、四国、本州の中国地方)、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は狭叶山罗花 xia ye shan luo hua。山地の林縁に生える。
 葉身は線形~線状披針形、幅3~8mm、先は尖鋭形。苞は赤紫色~緑色、披針形、縁は全縁または長い剛毛状の歯があり、先は狭い尖鋭形。果期は10月。
5-1 Melampyrum setaceum (Maxim. ex Palib.) Nakai var. nakaianum (Tuyama) T.Yamaz. ヒカゲママコナ 
 朝鮮、中国(満州)に分布する。林下に生え、苞がバラ紅色で美しい。
5-2 Melampyrum setaceum (Maxim.) Nakai var. latifolium Nakai チョウセンママコナ 
  synonym Melampyrum setaceum (Maxim.) Nakai f. latifolium (Nakai) Soó
  synonym Melampyrum roseum Maxim. var. setaceum Maxim. ex Palib. f. latifolium (Nakai) Beauverd
 朝鮮、中国(満州)に分布する。
 葉が基本種より狭い。

6 Melampyrum yezoense T.Yamaz. エゾママコナ 蝦夷飯子菜
 北海道に分布。ミヤマママコナに似るが、苞の縁の刺状鋸歯が長く2~3mmにもなる。また萼片の先が刺状に細長く伸びる。
 1年草、高さ20~30㎝、単純または緩く枝分かれし、下向きの巻毛があり、枝に対生して微細軟毛がある。葉は対生、葉柄は長さ2~5㎜、まばらに微軟毛があり、披針形または長円状披針形、長さ2~5㎝×幅0.5~1㎝、先に向かって先細り、先は鈍形、基部は鋭形または鈍形。上から、下まで無毛、肋に吻合し(anastomosing)、まばらに微軟毛がある。上部の葉は次第に上向きに離れて薄い細片になる。花序は細長く、長さ2~10㎝。葉柄は長さ2~3mm、細かい微軟毛がある。苞は対生し、先細りの三角状披針形、長さ0.8~3㎝×幅1.5~7㎜、先は鈍形、しばしば短突起があり、短い耳のある基部は切形または円形、縁は剛毛のある鋸歯があり、剛毛は両側に3~5対、長さ1~3㎜、まばらに点頭の微軟毛がある。苞は下部では葉状。花柄は長さ1~2㎜、無毛。萼は鐘形、長さ2~3㎜、膜質、まばらに微軟毛があり、4肋があり、4裂する。萼片は披針形または剛毛状、長さ1~1.5㎜。花冠は紫色、長さ12~14㎜、花冠筒部は長さ8~10㎜。上唇はわずかにアーチ状のヘルメット形、約・長さ3㎜×幅2㎜。下唇は長さ・幅とも約4mm、2斑点があり、わずかに3裂し、裂片は長円形、長さ約1mm。雄しべは4本、花糸は長さ11~12㎜。葯は長円形、無毛、長さ約2㎜、葯室は基部が鋭形。花柱は長さ12~14mm、無毛。子房は不均一な卵形、尖鋭形、無毛。果実は蒴果。花期は7~9月。

参考

1) Flora of China
 Melampyrum
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=120057
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Melampyrum
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:60452048-2
3) World Flora Online
 Melampyrum
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000012430
4) 植物研究雑誌 17(2): 77–95(1941)
 津山尚 : 日本産のママコナ属に就て
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_017_77_95.pdf
5) 植物研究雑誌 29(4): 97–106(1954)
 山崎敬 : 東亜産ママコナ属
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_029_97_106.pdf
6) 植物研究雑誌 64(4): 118–126(1989)
 山崎敬:ママコナ属の1新種エゾママコナ及びミヤマママコナについて
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_064_118_126.pdf
7) 24770085 研究成果報告書 - KAKEN
 ママコナ属における花筒長の多様化と送粉者を介した生態的種分化過程の解明
https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-24770085/24770085seika.pdf