コブナグサ 小鮒草

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Flora of Mikawa

イネ科 Poaceae コブナグサ属

別 名 カリヤス
中国名 荩草 jin cao
英 名 small carpgrass, jointhead
学 名 Arthraxon hispidus (Thunb.) Makino
コブナグサの花序
コブナグサ花序の枝の拡大
コブナグサの小穂
コブナグサの果時の小穂
コブナグサ
コブナグサの花
コブナグサの葉
コブナグサの果実
花 期 9~11月
高 さ 20~50㎝
生活型 1年草
生育場所 湿った場所、道端
分 布 在来種  北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、台湾、ロシア、インド、ブータン、フィリピン、ミャンマー、タイ、中央アジア、オーストラリア
撮 影 設楽町  01.10.6
和名の由来は葉の形が鮒に似ていることから。八丈島に古くから伝わる絹織物の黄八丈の黄色染料として使われ、カリヤス(苅安)と呼ばれている。しかし、本来のカリヤスはススキに似た大型のものである。
 茎は紫色を帯び、細く、下部は這って節から根を出し、上部は斜上する。葉は長さ2~6㎝、笹の葉に形が似て、幅が広い。葉は両面無毛、縁に長毛があり、葉面が波打ち、基部が茎を抱く。葉鞘には長毛が開出する。花序は紫褐色で、掌状に3~6個の総(花序の枝)がつく。総は長さ3~6㎝。小穂は長さ5~6㎜、2小花からなる。第1苞頴は上向きの刺毛があり、小穂を包み、第2苞頴も包まれる。第1小花は退化して膜質の鱗片になり、第2小花は両性。護頴と内頴は薄膜質。普通は護頴の基部から出る芒がある(写真のものは芒が無く、三河で見られるものは芒が無いものが多い)。果実(頴果)は長さ約3㎜の細い棒状、下半部が紫色を帯びる。2n=10,18,36.

コブナグサ属

  family Poaceae - genus Arthraxon

 一年草または多年草。稈は細く、枝分かれが多く、しばしば地を這い、節に髭があり、またはまれに無毛になる。葉身は披針形~卵形、基部は心形、しばしば稈を抱き、普通、下部の縁にくし状剛毛がある。葉舌は膜質、縁と背に毛がある。花序はほぼ掌状、細くて壊れやすい総状花序で、稈や枝の頂部につき、仏炎苞はない。花序軸の節間および小梗は線形~糸状、無毛または角(かど)に縁毛がある。小穂の対は似てなく、または小葉は明らかに単生となる。無柄の小穂は線形~披針形、背側または側部が扁平。カルス(callus)は短く、切形。第1苞穎(lower glume:外花穎)は膜質~革質、背中は平らまたは凸面状で、数本の脈があり、、側竜骨は有または無、ザラつく~小棘がある。第2苞穎(upper glum:内花穎)は舟形、竜骨は草質、縁は透明、先は鋭形~微突形。下側の小花は空の透明な護穎に退化する。上側の護穎は透明、全縁または短い2歯があり、基部近くから芒が出る。芒は膝状に曲がり、無毛。雄しべは2~3個。穎果は円柱形。小梗のある小穂(pedicelled spikelet)は様々、芒はなく、よく発達しまたは小さくなり、または小梗のみとなり、ときにはほぼ完全に無くなる。x=9。
 世界に約23種あり、旧世界の熱帯、亜熱帯、オーストラリアに分布し、主に中央アジアに分布する。アメリカに導入されている。

コブナグサ属の主な種と園芸品種

1 Arthraxon hispidus (Thunb.) Makino  コブナグサ 小鮒草
  synonym Arthraxon hispidus (Thunb.) Makino var. muticus (Honda) Ohwi
  synonym Arthraxon hispidus (Thunb.) Makino var. cryptantherus (Hack.) Honda
  synonym Arthraxon pauciflorus Honda
  synonym Arthraxon quartinianus (A.Rich.) Nash  ダンゴクコブナグサ(ダンチコブナグサ) 
 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、台湾、ロシア、インド、ブータン、フィリピン、ミャンマー、タイ、中央アジア、オーストラリア原産。中国名は荩草 jin cao。英名はsmall carpgrass, jointhead。別名はカリヤス。湿った場所、道端に生える。
和名の由来は葉の形が鮒に似ていることから。八丈島に古くから伝わる絹織物の黄八丈の黄色染料として使われ、カリヤス(苅安)と呼ばれている。しかし、本来のカリヤスはススキに似た大型のものである。
 1年草。高さ20~50㎝。茎は紫色を帯び、細く、下部は這って節から根を出し、上部は斜上する。葉は長さ2~6㎝、笹の葉に形が似て、幅が広い。葉は両面無毛、縁に長毛があり、葉面が波打ち、基部が茎を抱く。葉鞘には長毛が開出する。花序は紫褐色で、掌状に3~6個の総(花序の枝)がつく。総は長さ3~6㎝。小穂は長さ5~6㎜、2小花からなる。第1苞頴は上向きの刺毛があり、小穂を包み、第2苞頴も包まれる。第1小花は退化して膜質の鱗片になり、第2小花は両性。護頴と内頴は薄膜質。普通は護頴の基部から出る芒がある(写真のものは芒が無く、三河で見られるものは芒が無いものが多い)。果実(頴果)は長さ約3㎜の細い棒状、下半部が紫色を帯びる。2n=10,18,36。花期および果期は9~11月。
【Flora of Chinaの解説】  1年草。稈は細く、広がり、傾伏し、下部の節から発根し、30cmまたはそれ以上まで弱く斜上する。葉鞘は無毛~基部がいぼ状の剛毛があり、縁に縁毛がある。葉身は卵形~狭卵形、長さ2~5㎝×幅6~15㎜、無毛または剛毛があり、基部は抱茎、縁は少なくとも基部に櫛状の剛毛があり、先は鋭い鋭形。葉舌は長さ0.5~3㎜。総状花序は2~10個またはそれ以上つき、長さ1.5~4㎝、淡緑色または紫色。花序軸の節間は無柄の小穂の長さの(1/2~)2/3~3/4、無毛または疎~密に直軟毛があり、毛は長さ0.5mm未満。無柄小穂は長さ3~5㎜。第1苞穎(lower glume)は披針形、弱く凸面状、縁は内曲せず、6~9脈があり、脈はザラつく小剛毛~小刺がある。第2苞穎(upper glume)は第1苞穎よりわずかに長く、頂点は尖頭形。 芒は長さ11㎜以下、よく発達し、苞穎から突き出るか、またはときに削減し、突き出さない。内穎は無い。葯は2個、長さ0.7~1㎜。小梗のある小穂は普通、無い。小梗(小花柄)は微小な切り株になり、ときに、総状花序の先で長さ2㎜以下またはそれ以上になる。花期および果期は9~11月。2n=10, 18, 36。川沿い、湿った草地、作物中、その他の湿った場所に生える。
1-1 Arthraxon hispidus (Thunb.) Makino var. hispidus
 葉身は下面が無毛または微軟毛があり、基部がいぼ状の剛毛は、葉の縁の下部1/3にのみ存在する。
1-2 Arthraxon hispidus (Thunb.) Makino f. brevisetus (Regel) Ohwi アイダコブナグサ 
  synonym Arthraxon hispidus (Thunb.) Makino var. brevisetus (Regel) H.Hara
1-3 Arthraxon hispidus (Thunb.) Makino f. centrasiaticus (Griseb.) Ohwi オオコブナグサ 
  synonym Arthraxon hispidus (Thunb.) Makino var. centrasiaticus (Griseb.) Honda [flora of China]
 中国、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、中央アジア~南西アジア原産。中国名は中亚荩草 zhong ya jin cao。別名はサイコクコブナグサ。湿った場所に生える。
 葉身は披針形、長さ1~3㎝、両面にまばらに剛毛があり、縁はペクチン化し、基部からほとんどに、いぼ状基部の剛毛がある。芒はよく発達し、長く突き出る。花期および果期は8~9月。
1-4 Arthraxon hispidus (Thunb.) Makino f. hispidissimus (Honda) Ohwi アソコブナグサ 
1-5 Arthraxon hispidus (Thunb.) Makino f. japonicus (Regel) Ohwi ホンコブナグサ 
  synonym Arthraxon langsdorffii (Trin.) Roshev.
  synonym Arthraxon hispidus (Thunb.) Makino subsp. langsdorffii (Trin.) Tzvelev
 別名はノゲコブナグサ。

2 Arthraxon lancifolius (Trin.) Hochst.   
 中国、ブータン、インド、インドネシア、ミャンマー、ネパール、ニューギニア、パキスタン、フィリピン、スリランカ、タイ、ベトナム、東アフリカ、南西アジア(サウジアラビア)原産。中国名は小叶荩草 xiao ye jin cao。

3 Arthraxon prionodes (Steud.) Dandy  オニコブナグサ 
  synonym Arthraxon lanceolatus auct. non (Roxb.) Hochst.
 中国、アフガニスタン、ブータン、インド、ミャンマー、パキスタン、タイ、ベトナム、南西アジア、東アフリカ原産。中国名は茅叶荩草 mao ye jin cao。

4 Arthraxon quartinianus (A.Rich.) Nash  ダンゴクコブナグサ 
  synonym Arthraxon hispidus (Thunb.) Makino
  synonym Arthraxon okamotoi Ohwi
 別名はダンチコブナグサ。Kewscienc、World Flora Onlineなどでコブナグサ(Arthraxon hispidus (Thunb.) Makino)に含められている。

参考

1) Flora of China
 Arthraxon
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=102691
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Arthraxon
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:297011-2
3) World Flora Online
 Arthraxon
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000003152
4) World Checklist of Vascular Plants
 Arthraxon
https://wcvp.science.kew.org/
5) FNA - Flora of North America
 Arthraxon
http://floranorthamerica.org/Arthraxon