イノコズチ 猪子槌

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Flora of Mikawa

ヒユ科 Amaranthaceae イノコズチ属

別 名 ヒカゲイノコズチ 日陰猪子槌
英 名 Japanese chaff-flower
中国名 少毛牛膝 shao mao niu xi
学 名 Achyranthes bidentata Blume var. japonica Miq.
 synonym Achyranthes japonica (Miq.) Nakai
イノコズチの花序
イノコズチの花
イノコズチの果実
イノコズチ胞果と種子
イノコズチ茎
イノコズチ
イノコズチ小苞葉
イノコズチの小苞葉付属体
イノコズチの葉
花 期 8~9月
高 さ 50~100(150)㎝
生活型 多年草
生育場所 道端、林内の木陰
分 布 在来種  本州、四国、九州、中国、台湾
撮 影 三ヶ根山  01.9.2
日のあまり当たらないところに生えることが多い。学名は広義にAchyranthes bidentata Blumeとし、ヒナタイノコヅチ、ヤナギイノコズチを区別しない見解もある。
 多年草。高さ50~100(150)㎝。茎の断面は四角形、無毛またはわずかに毛がある。葉は対生し、長さ(2.5)5~15㎝×幅0.2~6.8㎝の卵形~卵状楕円形~長楕円形、基部は先細、先は鋭形~尖鋭形。葉は質が薄く、下面は脈に毛があり、上面は短毛があり、無毛またはほぼ無毛になる。花序は細長く、花時に長さ2~4㎝、果時に21㎝以下になる。花は緑色、花被片は5個、長さ4~5mm、3脈があり、先が尖る。雄しべ5本。雄しべと雄しべの間にある偽仮雄しべ(pseudostaminode)は低くて目立たず、縁が全縁、先は小歯があるかまたはわずかに2裂し、切形。雌しべ1個。花の基部には1個の苞と上側に紫褐色の先が刺状の2個の小苞がある。果期には花被とともに小苞が果実に残り、衣服に付着する。小苞の腋に長さ0.6~1㎜の膜質の付属体がある。胞果は楕円形、長さ約2.5mm、花被に包まれたまま熟し、裂開しない。3倍体2n=42。花期は8~9月(夏)。
 ヒナタイノコズチ Achyranthes bidentata var. fauriei は日なたに生える、葉がねじれるように波打ち、葉の裏に白毛が密生し、小苞の付属体も小さい。また、薄い膜状の偽仮雄しべがある。
 ヤナギイノコズチ Achyranthes longifoliaは日陰に生え、葉が細い。小苞の付属体が小さい。
 モンパイノコヅチ(オキナワイノコヅチ)var. bidentataは沖縄、朝鮮、中国、ロシア、インド、ネパール、ブータン、ラオス、タイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、インドネシア、フィリピンに分布する。花被片に1脈がある。2n=42, 84
 ケイノコヅチ Achyranthes aspera は沖縄、中国、台湾、東南アジアに分布する。中国名は土牛膝(tu niu xi)。 葉の裏面又は両面に毛が密生し、小苞の付属体は小苞の1/3~1/4長。雄しべ間の偽仮雄しべは鱗片状で、長い縁毛がある。2n=28。

イノコズチ属

  family Amaranthaceae - genus Achyranthes

 草本または亜低木。茎は目立つ節がある。枝は対生する。葉は対生し、葉柄がある。穂助花序は頂生または腋生、直立する。 花は後屈または広がり、放射相称、苞が3個あり、小苞の中脈は刺になり、長く、突出する(excurrent)。花被片は4または5個、膜質、先は芒状に尖り、果時に堅くなる。雄しべは5本、まれに4または2本、花被より短い。花糸は合着し、基部で短い杯になり、偽仮雄しべ(pseudostaminodes)は縁飾りがある(fringed)。葯は2室。子房は長円形。花柱は線形、宿存する。柱頭は頭状。胞果(utricles)は卵状長円形、卵形、または、ほぼ球形、花被片や小苞とともに脱落する。種子は長円形、レンズ形。
 世界に約14種があり、熱帯および亜熱帯地域に分布する。x=7。

イノコズチ属の主な種と園芸品種

1 Achyranthes aspera L. ケイノコヅチ 毛猪子槌 [広義]
  synonym Achyranthes okinawensis Tawada アキノイノコヅチ
 中国、台湾、ブータン、カンボジア、インド、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、ネパール、フィリピン、シッキム、スリランカ、タイ、ベトナム。 アフリカ、南西アジア、ヨーロッパ原産。中国名は土牛膝 tu niu xi。英名はChaff-flower , devil's horsewhip。
 多年草、高さ20~120㎝。 茎は4稜形、毛があり、節はわずかに膨らむ。枝は対生する。葉柄は長さ0.5~1.5㎝、やや毛がある。葉身は広卵形~楕円形長円形、長さ1.5~7㎜×幅0.4~4㎜、紙質、両面に毛があり、基部はくさび形または円形、縁は全縁または波打ち、先は鈍形、微突がある。穂状花序は頂生、直立し、花後後屈し、長さ10~30cm、花序軸は角(かど)があり、丈夫で、密に毛がある。苞は披針形、長さ3~4㎜、先は尖鋭形。小苞は刺があり、光沢があり、長さ2.5~4.5㎜、堅く、基部に2翼がある。翼は長さ1.5~2mm、膜質、縁は全縁。 花被片は、長さ3.5~5㎜、披針形、1脈がある。雄しべは長さ2.5~3.5㎜。偽仮雄しべ(pseudostaminodes)は先が切形または円鋸歯があり、繊維状で縁毛がある。胞果は長さ2.5~3㎜。種子は褐色、卵形、長さ約2㎜。花期は6~8月。果期は10月。2n=42、48、84、96。
1-1 Achyranthes aspera L. var. aspera ケイノコヅチ 狭義
  synonym Achyranthes obtusifolia Lam.
  synonym Achyranthes aspera L. var. indica L.
 中国、台湾、ブータン、カンボジア、インド、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、ネパール、フィリピン、シッキム、タイ、ベトナム原産。中国名は土牛膝 tu niu xi。
 茎は4稜形、毛がある。葉は広倒卵形または楕円状長円形、密に有毛またはほぼ無毛、基部はくさび形または円形、縁はわずかに波打ち、先は鈍形または微突形[円形~倒卵状円形~広菱形、長さ1~4(~6)㎝×幅1~4(~6)㎝、基部は円形~先細、先は円形で尖頭形]。花被片は長さ3~4㎜。胞果は長さ2~2.5㎜。

1-2 Achyranthes aspera L. var. rubrofusca (Wight) Hook.f.  ムラサキイノコヅチ 

  synonym Achyranthes daitoinsularis Tawada
  synonym Achyranthes rubrofusca Wight
 中国、台湾、インド原産。中国名は禾叶土牛膝 he ye tu niu xi。
 葉は乾燥すると褐赤色になり、楕円状卵形、長さ2~9㎝×幅1~4㎝、両面に毛があり、下面に密にあり、基部はくさび形、縁がわずかに波打ち、先は鋭形。

2 Achyranthes bidentata Blume イノコヅチ 猪子槌 [広義]
 日本、韓国、中国、台湾、ブータン、インド、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、ネパール、ニューギニア、フィリピン、ロシア、シッキム、タイ、ベトナム原産。中国名は牛膝 niu xi。
 最近の分類では広義にヒナタイノコヅチ、ヤナギイノコヅチをイノコヅチに含めていることが多い。
 多年草、高さ70~120cm。 茎は緑色または紫色を帯び、角張りまたは4稜形、伏毛または開出毛があるか、またはほぼ無毛。枝は対生する。葉柄は長さ0.5~3㎝、毛がある。葉身は楕円形または楕円状披針形、まれに倒披針形、長さ4.5~12㎝×幅2~7.5㎝、両面に伏せ毛又は開出毛(annexed or spreading pubescent)があり、基部はくさび形または広いくさび形、または尾状。穂状花序は頂生または腋生、長さ3~5㎝、花序軸は長さ1~2㎝、白色の毛がある。花は密につき、長さ約5㎜。苞は花後に後屈し、広卵形、長さ2~3㎜、先は尖鋭形。小苞は長さ2.5~3㎜、刺があり、基部は2深裂し、先は曲がる。花被片は光沢があり、披針形、長さ3~5㎜、中脈があり、先は鋭形。雄しべは長さ2~2.5㎜、偽仮雄しべ(pseudostaminodes)はわずかに小鋸歯があり、先は円形。胞果は黄褐色、光沢があり、長円形、長さ2~2.5㎜、平滑。種子は薄褐色、長円形、長さ約1㎜。花期は7~9月。果期は9~10月。2n=42、84。
2-1 Achyranthes bidentata Blume var. bidentata モンパイノコヅチ 
  synonym Achyranthes ryukyuensis Tawada
  synonym Achyranthes mollicula Nakai
 日本(沖縄)、韓国、中国、台湾、ブータン、インド、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、ネパール、ニューギニア、フィリピン、ロシア、シッキム、タイ、ベトナ原産。中国名は牛膝 niu xi。別名はオキナワイノコヅチ。
 全体に毛があるかまたはほぼ無毛。葉は楕円形または楕円状披針形。穂状花序は頂生または腋生、密に花がつく。花被片には中脈がある。2n=42,84。

2-2 Achyranthes bidentata Blume var. fauriei (H.Lév. et Vaniot) ヒナタイノコヅチ 日向猪子槌

  synonym Achyranthes bidentata Blume var. tomentosa (Honda) H.Hara
  synonym Achyranthes fauriei H.Lév. et Vaniot
 本州(関東地方以西)、四国、九州に分布。中国名は和牛膝 he niu xi。日当たりのよい道端、荒地に生える。
 多年草。高さ50~100㎝。肥厚した太い根がある。茎の断面は四角形。葉は対生し、厚く、倒卵形~惰円形(卵状披針形~卵状楕円形)で、縁が波打ち捻じれることが多い。葉の両面に絹毛状の毛が多く、葉裏は白っぽく見える。花序がヒカゲイノコズチより短く、花がほぼ接して密につく。花は直径約6㎜。萼片は長さ5~5.5mm。花被片は5個、淡緑色。雄しべ5個の花糸間に淡黄色の薄い膜状の偽仮雄しべがあり、顕著に突出し、ほとんど全縁に近く、ときに花時に不整歯牙状になるが、後に全縁近くなる。雌しべ1個。果期には花軸は伸び、胞果は花被に包まれて下向きに圧着する。花被の外側に小苞が2個あり、小苞の腋に付属体がある。付属体は小さく、長さ0.3~0.5㎜(ヒカゲイノコヅチは長さ0.6~1㎜と明瞭)。萼片と小苞の長さの比は果時に5:3.5。胞果は熟しても裂開しない。3倍体2n=42。花期は8~9月。

2-2-1 Achyranthes fauriei H.Lév. et Vaniot f. rotundifolia Ohwi マルバイノコヅチ 丸葉猪子槌 異分類

 ヒナタイノコヅチの葉の丸い品種。

2-3 Achyranthes bidentata Blume var. hachijoensis (Honda) H.Hara  ハチジョウイノコヅチ 八丈猪子槌

  synonym Achyranthes japonica (Miq.) Nakai var. hachijoensis Honda
 本州(南部),九州(佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島),沖縄。葉が無毛またはほぼ無毛。
 多年草、高さ50~100㎝。茎は直立または斜上し、散開し、無毛またはほとんど無毛。葉は対生し、長楕円形~楕円形、長さ10~15㎝×幅4~7㎝、上面は無毛で、光沢がある。穂状花序は頂生または腋生、長さ10~20㎝、果時には20~30㎝になる。花被片は線状披心形、淡緑色。花期は8~9月
2-4 Achyranthes bidentata Blume var. japonica Miq.  イノコヅチ 猪子槌

  synonym Achyranthes fauriei H.Lév. et Vaniot var. japonica (Miq.) Hiyama

  synonym Achyranthes japonica (Miq.) Nakai var. katsuudakemontana Tawada

  synonym Achyranthes japonica (Miq.) Nakai [Flora of North America]
  synonym Achyranthes fauriei H.Lév. et Vaniot subsp. japonica (Miq.) Sugim.
 本州、四国、九州、中国、台湾原産。中国名は少毛牛膝 shao mao niu xi。別名はヒカゲイノコズチ 日陰猪子槌。英名はJapanese chaff-flower。北アメリカに帰化している。
 穂状花序が長く、花はやや疎につく。苞の刺は花被より短い。花被片は3脈がある。 偽仮雄しべ(pseudostaminodes)は不規則な歯状、またはわずかに2裂し、先が切形
 多年草。高さ50~100(150)㎝。根は発達悪く、肥厚するものはない。茎の断面は四角形、無毛またはわずかに毛がある。葉は対生し、長さ(2.5)5~15㎝×幅0.2~6.8㎝の卵形~卵状楕円形~長楕円形、基部は先細、先は鋭形~尖鋭形。葉は質が薄く、下面は脈に毛があり、上面は短毛があり、無毛またはほぼ無毛になる。花序は細長く、花時に長さ2~4㎝、果時に21㎝以下になる。花は緑色。萼片は長さ4~5㎜。花被片は5個、長さ4~5mm、3脈があり、先が尖る。雄しべ5本。雄しべと雄しべの間にある偽仮雄しべ(pseudostaminode)は低くて目立たず、縁が全縁、先は小歯があるかまたはわずかに2裂し、切形。雌しべ1個。花の基部には1個の苞と上側に紫褐色の先が刺状の2個の小苞がある。果期には花被とともに小苞が果実に残り、衣服に付着する。小苞の腋に長さ0.6~1㎜の膜質の付属体がある。萼片と小苞の長さの比は果時に5:4。胞果は楕円形、長さ約2.5mm、花被に包まれたまま熟し、裂開しない。3倍体2n=42。花期は8~9月(夏)。

3 Achyranthes longifolia (Makino) Makino ヤナギイノコヅチ 柳猪子槌
  synonym Achyranthes bidentata subsp. longifolia Makino
  synonym Achyranthes bidentata var. longifolia Makino
  synonym Achyranthes longifolia f. rubra Ho
 World Flora OnlineやKewscienceでは Achyranthes bidentata Blumeのsynonymとされる。
 本州(千葉県以西)、四国、九州、沖縄、中国、台湾、ラオス、タイ、ベトナム原産。中国名は柳叶牛膝 liu ye niu xi。
 多年草。高さ40~80㎝。茎は緑色または紫色を帯び、角張り、または4稜形。枝は対生する。葉は対生し、葉柄には毛がある。葉身は披針形~広披針形、長さ10~20㎝×幅2~5㎝[長さ7~20㎝×幅1~5㎝]、先は尾状。穂状花序は頂生または腋生、花序軸には白色の毛があり、花が密[ややまばらに]につく。花柄は分枝して、開出する。小苞は花後に後屈し、針状(acerose)、長さ約3.5㎜、縁毛があり、小苞の付属体は小さい。花被片は光沢があり、披針形、中脈があり、先は鋭形。偽仮雄しべ(pseudostaminodes)は、先に不明瞭な歯がある。胞果(utricles)は黄褐色、光沢があり、長円形、平滑。種子は薄褐色、長円形。3倍体2n=42。花期は8~10月。(Flora of Chinaの解説を参考にし , [ ]は日本産)

参考

1) Flora of China
 Achyranthes
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=100227
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Achyranthes
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:327359-2
3) World Flora Online
 Achyranthes
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000000251;jsessionid=FB4205E125AB554097FCC8F0963A15FE
4) Flora of North America @ efloras.org
 Achyranthes
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=100227
5) 植物研究雑誌 第10巻第4号 261-266(1934)
 奥山春季:イノコヅチとヒナタイノコヅチ
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_010_261_266.pdf
6) 植物研究雑誌 10(7): 452–454(1934)
 奥山春季:日本産イノコヅチ数種の仮雄蕊に就て
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_010_452_454.pdf