イブキフウロ 伊吹風露

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Flora of Mikawa

フウロソウ科 Geraniaceae フウロソウ属

学 名

Geranium yesoense Franch. et Sav. f. lobulatum (Nakai) H.Hara

 synonym Geranium yesoense Franch. et Sav. var. nipponicum Nakai

 synonym Geranium yesoense Franch. et Sav. 広義
イブキフウロの花
イブキフウロの花
イブキフウロの花横
イブキフウロ
イブキフウロの葉
花 期 7~8月
高 さ 30~60㎝
生活型 多年草
生育場所 日当たりのよい草地
分 布 在来種 本州(東北地方~中部地方)
撮 影 伊吹山  02.8.2
イブキフウロはエゾフウロの変種として分類されていた。花弁の先が3浅裂する。YListではエゾフウロの変種のハクサンフウロのsynonymとしている。ハクサンフウロは葉や茎の形は基本種のエゾフウロによく似ているが、エゾフウロより茎、葉の毛が少なく、萼は毛が密でない。イブキフウロは花弁の先が3浅裂するが、ハクサンフウロは3浅裂しないことで分けられていたが、変異が多く、ハクサンフウロに含められるようになった。POWO(Plants of the World Online - Kew)では広義に扱いハクサンフウロもエゾフウロに含められている。
1 Geranium yesoense Franch. et Sav. エゾフウロ 蝦夷風露

  synonym Geranium yesoense Franch. et Sav. f. lobatodentatum (Takeda) Tatew. フギレエゾフウロ

  synonym Geranium yesoense Franch. et Sav. var. lobatodentatum Takeda in Bot. Mag. (Tokyo) 24: 257 (1910) フギレエゾフウロ

  synonym Geranium yesoense f. lobulatum Nakai in Bot. Mag. (Tokyo) 25: 53 (1911) イブキフウロ

  synonym Geranium yesoense Franch. et Sav. f. lobulatum (Nakai) H.Hara

  synonym Geranium yesoense f. albiflorum Tatew. シロバナエゾフウロ

  synonym Geranium yesoense var. nipponicum Nakai ハクサンフウロ
  synonym Geranium yesoense var. pseudopalustre Nakai ハマフウロ

  synonym Geranium yesoense var. pseudopratense Nakai シロバナエゾフウロ

 日本(北海道、本州の東北地方)、千島列島、サハリン原産。山地や海岸の草原に生える。
 茎は高さ30~80cm、よく分枝して叢生する。茎や葉柄に下向きの粗毛が密にある。茎葉は対生し、葉身は掌状に5~7深裂し、裂片はさらに細かく切れ込み、最終裂片は線形、葉の両面に粗毛がある。托葉は質が薄く、褐色、長さ5~10㎜、離生または対が合着する。花は直径2.5~3㎝、茎先または枝先に2個ずつつく。花序柄と小花柄に開出毛が密にある。萼片は5個あり、縦に5~7脈があり、先にはやや長い微突起があり、外面の脈上に白色の開出する直軟毛が密にある。花弁は5個、紅紫色、花弁の間に隙間が少なく、濃紅色の脈が目立ち、花弁下部の脈上に白色の毛があり、花弁基部の縁には白色の縁毛がある。雄しべは10本。心皮は5個、花柱は5分岐する。果実は5個の分果となる。2n=28。花期は7~8月。
 POWOでは下位分類を認めていないが、YListではエゾフウロ、ハクサンフウロ、オガフウロを認め、ヒダフウロ(Geranium hidaense)、ハマフウロ(Geranium miyabei)を独立種としている。POWOではハマフウロ(Geranium miyabei)はエゾフウロのsynonym、ヒダフウロ(Geranium hidaense)はアサマフウロのsynonymである。

(1) Geranium yesoense Franch. et Sav. var. nipponicum Nakai ハクサンフウロ 白山風露

  synonym Geranium yesoense Franch. et Sav. f. lobulatum (Nakai) H.Hara 

 本州(東北地方~中部地方)に分布。別名はアカヌマフウロ、シロウマフウロ、イブキフウロ。主として亜高山帯の草原に広く生える。
 葉や茎の形はよく似ているが、エゾフウロより茎や葉の毛が少ない。萼は毛が密でない(Tokyo Bot. Mag. XVI. (1901))。
 エゾフウロの変種。茎は直立し、下向きの毛がある。葉は長さ4~8㎝、幅5~10㎝、掌状に5深裂し、裂片はさらに切れ込み、下面の脈上にほぼ開出した長粗毛を疎生する。集散花序に花が1~2個、腋生または頂生する。苞は通常、葉状。小花柄は逆向き伏せ粗毛がある。花は直径2.5~3㎝。花弁は5個、淡紅色~紅紫色、濃色の脈があり、花弁の基部に白毛が密生する。雄しべ10本。萼片は長さ10~12㎜、やや長い微突起があり、開出する粗毛を散生し、内片には細かい伏せ毛がある。心皮は5個。2n=28。
 イブキフウロ(f. lobulatum (Nakai) H.Hara)は伊吹山に自生する。花弁の先が3浅裂し、花弁が大きいのが普通であり、花弁は反り返らない。伊吹山でも尋常形ではなく、白花品もあり、葉の細裂する形と粗な形とがある。
 フギレエゾフウロは(f. lobatodentatum (Takeda) Tatew.)は北海道から報告された花弁の先端が浅く切れ込むもの。
 シロバナハクサンフウロ(f. ochroleucum Okuyama)はハクサンフウロの白花品種。

(2) Geranium yesoense Franch. et Sav. var. pseudopalustre Nakai ハマフウロ 浜風露

  synonym Geranium miyabei Nakai [YLikst]
 北海道、本州(陸奥、羽後)、千島に分布する。海岸の草地に生える。
 葉の切れ込みが浅く、鋸歯が単純。萼片に開出毛が少ない。中間形があり、変種とされる。
 シロバナハマフウロ(f. leucanthum Tatew.)はハマフウロの白花品種。

(3) Geranium yesoense f. intemedium H.Hara オガフウロ 男鹿風露

  synonym Geranium yesoense Franch. et Sav. var. pseudopalustre Nakai f. intermedium H.Hara [YList]

  synonym Geranium yesoense f. intemedium H.Hara
 男鹿牛島西海岸に分布する。エゾフウロの海岸型。ハマフウロとハクサンフウロの中間の特徴を持つ。葉形はハマフウロによく一致する。萼片には伏毛のみがあり、わずかに長毛がある。