ホルトノキ
Flora of Mikawa
ホルトノキ科 Elaeocarpaceae ホルトノキ属
別 名 | モガシ |
学 名 | Elaeocarpus zollingeri K.Koch Elaeocarpus sylvestris (Lour.) Poir. var. ellipticus (Thunb. ex Murray) Hara Elaeocarpus decipiens F.B.Forbes & Hemsl. |
花 期 | 7~8月 |
高 さ | 10~15m |
生活型 | 常緑高木 |
生育場所 | 海岸近くの林内 |
分 布 | 在来種 本州(千葉県南部以西)、四国、九州、沖縄 |
撮 影 | 田原市 14.7.30 |
自生地は限られるが、公園や街路樹にもよく植えられ、自生との区別が難しくなっている。和名はポルトガルの木という意味といわれている。学名はElaeocarpus
sylvestris の変種とする見解もある。
幹は灰褐色、小さな皮目があり、成木の樹皮は薄く細かく裂ける。葉は互生し、枝先にやや集まってつく。葉身は長さ5~12㎝の倒披針形、やや革質、鋸歯縁。葉裏の主脈が赤くなることがあり、腺点は無く、脈腋に膜状の付属物がある。葉柄は長さ5~10㎜。1年中葉が少しずつ紅葉するのが特徴。両性、長さ約7㎝の総状花序に花は15~20個つく。花は直径約1㎝、帯黄白色。花弁は5個、先が糸状に裂ける。子房の基部に橙色の腺体がある。果実はオリーブに似た長さ約3㎝の楕円形の核果、藍黒色に熟す。核は長さ約1.5㎝の惰円形、淡褐色。
Elaeocarpus sylvestris は中国、ベトナムに分布し、中国名は山杜英 shan du ying 。
高木又はまれに低木。葉は互生又は螺旋状につく。托葉は線形又はまれに葉状、早落性まれに宿存性。葉柄は普通、長く両端が膨れる。葉身は縁が鋸歯縁又は全縁、羽状脈。花序は腋生、総状花序。花は両性、4又は5数性、敷石状、下面は普通、毛がある。花弁は4又は5個、白色、離生、縁は不規則に切れ込み、まれに全縁又は分裂する。雄しべは8本~多数。花糸は短い。葯は2室、先の隙間から裂開、先に芒又は毛がある。花盤は普通、腺状に5~10裂し、まれに円形。子房は上位、 2~5(~7)室。胚珠は各室に2~12個。花柱は線形又は錐形。果実は核果、 1(又は5)室。内果皮は硬く、骨質、表面には普通、穴がある。種子は普通、各室に1個、胚乳は肉質、子葉は薄く、胚は真っすぐ又は曲がる。英名はLily of the Valley Tree。
世界に約360種があり、旧世界の熱帯に分布する。
synonym Elaeocarpus sphaericus (Gaertn.) K.Schum.
インド、カンボジア、ミャンマー、ネパール、タイ、インドネシア、マレーシア、オーストラリア、太平洋諸島(フィジー)原産。中国名は圆果杜英 yuan guo du ying。英名はQuondong 。別名はインドジュズノキ。
2 Elaeocarpus argenteus Merr.
synonym Elaeocarpus decipiens Hemsl. var. changii Y.Tang
台湾、フィリピン原産。中国名は腺叶杜英 xian ye du ying。
3 Elaeocarpus decipiens F.B.Forbes & Hemsl.
synonym Elaeocarpus zollingeri K.Koch [Kewscience]
日本、南西諸島、小笠原諸島、朝鮮、中国、台湾、ベトナム 原産。中国名は杜英 du ying 。英名はJapanese Blueberry Tree
常緑高木、高さ5~15m。小枝と頂芽は乾くと黒褐色、微軟毛があり、無毛になる。葉柄は長さ1~2㎝、上端は膨れず、微軟毛があり、無毛になる。葉身は上面に光沢があり、倒披針形、基部に向かって細くなり、長さ7~13.5㎝×幅2~4㎝、革質又は厚い紙質、無毛、側脈は各側に7~9本、下面で明瞭、上面では不明瞭、細脈は下面で不明瞭、上面で明瞭、基部は漸尖し、葉柄に沿下し、狭い翼になり、縁は小鋸歯縁、先は尖鋭形、先の尖り(acumen)は鈍形。総状花序は落ちた葉の葉腋につき、長さ5~10㎝。花序柄は細く、微軟毛がある。花柄は長さ4~5㎜、微軟毛がある。花は両性。花芽は卵形、長さ4~5㎜。咢片は5個、披針形、約・長さ5.5㎜×幅1.5㎜、両面に微軟毛があり、先は鋭形。花弁は5個、白色、倒卵形、咢片の長さとほぼ同長、外面は無毛、内面の基部近くに毛があり、縁毛があり、上部1/2は不規則に切れ込み、断片(segments)は10~16個。雄しべは約20本又は25~32本、長さ約3mm。花糸は非常に短い。花盤は5裂し、毛がある。子房は3室、綿毛があるか又は無毛になる。胚珠は各室に2個。花柱は長さ約3.5mm、下半部に毛がある。核果は楕円形、長さ2~3.5㎝×幅1.5~2㎝、 外果皮は不明瞭、無毛。内果皮は骨質、目立ついぼ状、1室。種子は1個、長さ1.5㎝。花期は6~7月。果期は11~1月。
3-1 Elaeocarpus decipiens var. decipiens
葉柄は長さ1~2㎝。葉身は長さ7~13.5㎝×幅2~4㎝、革質、普通、側脈の腋に腺は無い。雄しべは25~30本。子房は密に綿毛がある。果実は長さ2~3.5㎝×幅1.5~2㎝.
品種) 'Monproud' , Little Emperor = 'Monproud' , Shogun™ Little Emperor™
3-2 Elaeocarpus decipiens var. changii Y. Tang
台湾原産。中国名は兰屿杜英 lan yu du ying。
葉柄は長さ1㎝以下。葉身は長さ4.5~7㎝×幅1.5~2.5㎝、厚い紙質、普通、側脈の腋に腺があり、側脈は6~8本。花弁の断片は14~16個。雄しべは約20本。子房は無毛になる。果実は約・長さ1.5㎝×幅0.7~0.8㎝。
4 Elaeocarpus grandiflorus Sm. ネッタイスズラン 熱帯鈴蘭
マレーシア、インドネシア、カンボジア、ジャワ、ラオス、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナム原産。英名はMala , fairy petticoat , fringe bells,lily of the valley tree , blue olive berry。別名はエラエオカルプス・グランディス。関東以南の暖地では街路樹や庭植えに利用される。
常緑高木、高さ15~20(25)m。幹は直立、基部に支持根をつける。小枝は無毛、太さ2.5~5㎜。托葉はしばしば丈夫で、光沢があり、長さ約1~2mm。若葉は赤色を帯び、成葉は緑色、落ちる前に赤色になる。葉は小枝の先に密~疎に集まり、互生し、単葉、披針形、鋸歯縁、先は尖鋭形、基部はくさび形。枝先に多数の花を生じる。花は葉の落ちた葉痕から生じ、不分枝の長さ3~9㎝の総状花序に束生し、下向きに垂れ下がる。花は5数性。咢片は赤ピンク色、杯形、花弁や雄しべと同時に落ちる。花弁は白色~クリーム白色、下部1/3が狭くなるが爪部は無く、縁がフリンジ状。雄しべは綿毛がある。子房は楕円形、上位。果実は核果、緑色、楕円形、長さ約3㎝、硬くて粗い核(種子)を含み、細い長くて曲がった刺をもつ。花期は6~7月。
5 Elaeocarpus hayatae Kaneh. et Sasaki コウトウホルトノキ
synonym Elaeocarpus sylvestris (Lour.) Poir. var. hayatae (Kaneh. et Sasaki) Y.C.Liu
synonym Elaeocarpus sphaericus (Gaertn.) K.Schum. var. hayatae (Kaneh. et Sasaki) C.E.Chang
台湾原産。中国名は球果杜英 qiu guo du ying。
6 Elaeocarpus japonicus Siebold et Zucc. コバンモチ 小判黐
日本(紀伊半島以西の本州、四国、九州、沖縄)、中国、台湾、ベトナム原産。中国名は薯豆 shu dou。和名は葉がモチノキ似て、小判形であることから。
高木、高さ25m以下、小枝は丈夫、無毛又は微細な毛がある。花芽はに絹毛がある。葉柄は長さ2~6㎝、初め毛があり、無毛になる。葉身は卵形、楕円形、倒卵形、又は披針形~狭長円形、長さ6~11(~17)㎝×幅3~6㎝、紙質又は革質、両面に初め密に銀灰色の絹毛があり、すぐに無毛になり、下面に小さな黒色の斑点があり、側脈は各側に6~8本、下面に明瞭に隆起し、細脈は下面で明瞭、上面では目立たず、基部は円形、鈍形、鋭形、又は広くさび形、縁はまばらに歯があり、先は尖鋭形又は鋭形、先の尖りは鈍形。総状花序は長さ3~6㎝。花序柄は微軟毛がある。花柄は長さ3~4mm、微軟毛がある。花は雌雄混株、両性。咢片は5個、長円形、長さ約4㎜、両面に毛がある。花弁は長円形、長さは咢片とほぼ同長、両面又は下面だけに毛があり、縁は全縁又は切れ込む。雄しべは15本。花糸はは切れ込む。雄しべは15本。花糸は非常に短い。葯は長さ約2mm、先に芒は無く、微軟毛がある。花盤は5又は10裂、円状になる。子房は毛があり、3室。花柱は長さ約3mm、毛がある。雄花は咢片が5又は6個、花弁は5又は6個、雄しべは9~14本、未発達な子房が有又は無。核果は光沢があり、長さ1~1.3㎝×幅約0.8㎝、1室。種子は1個、長さ約8㎜。花期は4~5月。果期は5~7月。
7 Elaeocarpus multiflorus (Turcz.) Fern.-Vill. ナガバコバンモチ 長葉小判黐
synonym Elaeocarpus arthropus Ohwi
日本(南西諸島)、台湾、フィリピン、インドネシア原産。別名はナガバノコバンモチ。中国名は繁花杜英 fan hua du ying。
常緑高木。小枝は乾くと灰色、丈夫、無毛。葉柄は長さ2~4㎝、無毛、両端が膨れる。葉身は卵状長円形~狭倒卵状長円形、長さ7~12㎝×幅3~4.5㎝、紙質、両面とも無毛、下面に黒色の腺点は無く、側脈は7~9対、弧状に斜上し、下面に明瞭に隆起し、細脈は明瞭な網状、両面にわずかに隆起し、基部は鈍形、円形、又はわずかに凹形、縁はまばらに円鋸歯があり、先は鋭形又は短い尖鋭形。総状花序は現在の葉と落ちた葉の葉腋につき、長さ3~6㎝。花序柄はまばらに微軟毛がある。花柄は長さ6~10mm、密に微軟毛がある。花芽は長さ5~6㎜。咢片は5個、披針形、長さ5~6㎜×幅約1.8mm、外面に微細な灰色の微軟毛があり、内面は無毛に近く、先は鋭形。花弁は5個、長円形、長さ約6mm、外面は毛があり、内面は基部に長い羊毛状の毛のクッションをもち、先は普通、2~3歯がある。雄しべは約20本、花糸は長さ約1.2mm、絨毛がある。葯は線形、長さ2~3mm、外側のバルブは芒があり、全体にごく微細な毛がある。花盤は10裂、絨毛がある。子房はわずかに絨毛がある。花柱は長さ約1.2㎜、無毛。核果は楕円形、約・長さ1.5㎝×幅0.8㎝。 花期は6~7月。果期は不明。
8 Elaeocarpus photiniifolius Hook. et Arn. シマホルトノキ
synonym Elaeocarpus sylvestris (Lour.) Poir. var. photiniifolius (Hook. et Arn.) Yas.Endo
小笠原諸島原産。別名はシマハボソ。
9 Elaeocarpus serratus L. セイロンオリーブ
インド、アッサム、バングラデシュ、スリランカ原産。英名はCeylon olive。
10 Elaeocarpus sylvestris (Lour.) Poir.
中国、ベトナム原産。中国名は山杜英 shan du ying。英名はHorutonoki。
常緑高木、高さ15m以下。小枝は細く、まばらに淡色の直軟毛がある。葉柄は長さ1~1.5㎝、初めまばらに毛があり、無毛になる。葉身は乾くと黒褐色、倒卵形~倒披針形、長さ4~125㎝×幅2~75㎝、紙質、両面とも無毛、側脈は各側に普通4~5本、下面で明瞭、上面では不明瞭、細脈はまばら、上面で明瞭、基部は狭いくさび形、沿下し、縁は円鋸歯又は深波状円鋸歯、先は鈍形又は短い尖鋭形。総状花序は現在ある葉と落ちた葉に腋生し、長さ4~6㎝。花序柄は細く、無毛、まれに灰白色の毛がある。花柄は長さ3~5mm、細く、普通、無毛。花は両性。咢片は5個、披針形、長さ約4mm、両面にまばらに毛がある。花弁は5個、倒卵形、上半部が不規則に切れ込み、断片(segments)は10~12個、外面は基部に毛がある。雄しべは15本、長さ約3mm。葯は先に芒が無く、微軟毛がある。花盤は5裂、球形、完全分かれ、白色の毛がある。子房は毛があり、2又は3室。花柱は長さ約2㎜、下半部1/2に毛がある。核果は楕円形、長さ1~1.2㎝×幅約0.7㎝、内果皮は薄い骨質、腹側に3本の縫合線がある。花期は4~5月。果期は5~8月。
11 Elaeocarpus zollingeri K.Koch ホルトノキ 広義
synonym Elaeocarpus sylvestris (Lour.) Poir. [GBIF , The Plant List]
synonym Elaeocarpus decipiens F.B.Forbes & Hemsl. [Kewscience]
日本固有種(本州の千葉県南部以西、四国、九州、沖縄)。Elaeocarpus decipiens又はElaeocarpus sylvestrisとする見解がある。
11-1 Elaeocarpus zollingeri K.Koch var. changii (Y.Tang) Yonek.
synonym Elaeocarpus decipiens var. changii Y.Tang [Kewscience , Flora of China]
台湾原産。中国名は兰屿杜英 lan yu du ying。Flora of ChinaではElaeocarpus decipiens var. changii。
※Flora of ChinaではElaeocarpus decipiens var. changii Y. Tangとしている。
11-2 Elaeocarpus zollingeri K.Koch var. pachycarpus (Koidz.) Yonek. チギ
synonym Elaeocarpus sylvestris var. ellipticus (Thunb.) Hara [GBIF]
synonym Elaeocarpus pachycarpus Koidz.
synonym Elaeocarpus sylvestris (Lour.) Poir. var. pachycarpus (Koidz.) H.Ohba
synonym Elaeocarpus decipiens F.B.Forbes & Hemsl. [Kewscience]
小笠原(硫黄列島)原産。別名はケギ。
11-3 Elaeocarpus zollingeri K.Koch var. zollingeri ホルトノキ
synonym Elaeocarpus sylvestris auct. non (Lour.) Poir.
synonym Elaeocarpus sylvestris (Lour.) Poir. var. ellipticus (Thunb.) H.Hara [GBIF]
synonym Elaeocarpus ellipticus (Thunb.) Makino
synonym Elaeocarpus decipiens Hemsl.
日本固有種(本州の千葉県南部以西、四国、九州、沖縄)。別名はモガシ。Elaeocarpus sylvestrisの変種var. ellipticusとする見解もある。
常緑高木。高さ10~15m。幹は灰褐色、小さな皮目があり、成木の樹皮は薄く細かく裂ける。葉は互生し、枝先にやや集まってつく。葉身は長さ5~12㎝の倒披針形、やや革質、鋸歯縁。葉裏の主脈が赤くなることがあり、腺点は無く、脈腋に膜状の付属物がある。葉柄は長さ5~10㎜。1年中葉が少しずつ紅葉するのが特徴。両性、長さ約7㎝の総状花序に花は15~20個つく。花は直径約1㎝、帯黄白色。咢片は長さ3~4mm、両面に細かい伏毛がある。花弁は5個、長さ4~5mm、先が糸状に裂け、下部は細縁毛があり、内面はほとんど無毛又は基部に細毛を散生する。雄しべは25~34本。葯の先端にときに1~2本の剛毛がある。子房の基部に橙色の腺体がある。果実はオリーブに似た長さ約3㎝の楕円形の核果、藍黒色に熟す。核は長さ約1.5㎝の惰円形、淡褐色。花期は7~8月。
ホルトノキの学名は独立種とする場合(Ylist)はElaeocarpus zollingeriとされ、E. sylvestris の変種とする場合(GBIF)はvar. ellipticus (Thunb.) H.Haraとされる。しかし、KewscienceではE. decipiensの異名として扱っている。Flora of China ではE. decipiensを広義に扱いElaeocarpus zollingeriを異名としている。
【参考3の解説】 日本のホルトノキは咢片の長さ3~4mm、両面に細かい伏毛があり、花弁は長さ4~5mm、下部は細縁毛があり、内面はほとんど無毛又は基部に細毛を散生し、雄しべは25~34本、葯の先端にときに1~2本の剛毛がある。琉球(沖縮,石垣島)のものもこれと殆ど一致する。 一方中国南部に見られる型は,花が小さく、咢片外面の毛が少いが、花弁は反って下部に密に細毛を有し、雄しべは数が少なく、14~21本である。しかし中国産にもかなりの変異があり、又台湾には中間形も見られるので上記の2型は同ーの種に属するものと考えてられる。 なお中国中部には近縁の別種もある。 E. decipiens Hemsl.は基在標木の定め方によってホルトノキにも中国南部の型にもとりうる。 近年、インドシナ半島東部地域(インドシナ)産に基いた E. sylvestris (Lour.) Poiretが最も古い種名として用いられる様になったが、その基準標本は日本のものからずれた形であり Fホルトノキは広義の本種分布区域の北部を占める地理的変種var. ellipticus (Thunb.) H.Haraとみなすのが妥当と思う。しかし若しホルトノキを独立種として扱う場合には E. Zollingeri K. Kochの名がよい。
Elaeocarpus
Elaeocarpus
原寛:ホルトノキとコバンモチ
幹は灰褐色、小さな皮目があり、成木の樹皮は薄く細かく裂ける。葉は互生し、枝先にやや集まってつく。葉身は長さ5~12㎝の倒披針形、やや革質、鋸歯縁。葉裏の主脈が赤くなることがあり、腺点は無く、脈腋に膜状の付属物がある。葉柄は長さ5~10㎜。1年中葉が少しずつ紅葉するのが特徴。両性、長さ約7㎝の総状花序に花は15~20個つく。花は直径約1㎝、帯黄白色。花弁は5個、先が糸状に裂ける。子房の基部に橙色の腺体がある。果実はオリーブに似た長さ約3㎝の楕円形の核果、藍黒色に熟す。核は長さ約1.5㎝の惰円形、淡褐色。
Elaeocarpus sylvestris は中国、ベトナムに分布し、中国名は山杜英 shan du ying 。
ホルトノキ属
family Elaeocarpaceae - genus Elaeocarpus高木又はまれに低木。葉は互生又は螺旋状につく。托葉は線形又はまれに葉状、早落性まれに宿存性。葉柄は普通、長く両端が膨れる。葉身は縁が鋸歯縁又は全縁、羽状脈。花序は腋生、総状花序。花は両性、4又は5数性、敷石状、下面は普通、毛がある。花弁は4又は5個、白色、離生、縁は不規則に切れ込み、まれに全縁又は分裂する。雄しべは8本~多数。花糸は短い。葯は2室、先の隙間から裂開、先に芒又は毛がある。花盤は普通、腺状に5~10裂し、まれに円形。子房は上位、 2~5(~7)室。胚珠は各室に2~12個。花柱は線形又は錐形。果実は核果、 1(又は5)室。内果皮は硬く、骨質、表面には普通、穴がある。種子は普通、各室に1個、胚乳は肉質、子葉は薄く、胚は真っすぐ又は曲がる。英名はLily of the Valley Tree。
世界に約360種があり、旧世界の熱帯に分布する。
ホルトノキ属の主な種と園芸品種
1 Elaeocarpus angustifolius Blume ジュズボダイジュsynonym Elaeocarpus sphaericus (Gaertn.) K.Schum.
インド、カンボジア、ミャンマー、ネパール、タイ、インドネシア、マレーシア、オーストラリア、太平洋諸島(フィジー)原産。中国名は圆果杜英 yuan guo du ying。英名はQuondong 。別名はインドジュズノキ。
2 Elaeocarpus argenteus Merr.
synonym Elaeocarpus decipiens Hemsl. var. changii Y.Tang
台湾、フィリピン原産。中国名は腺叶杜英 xian ye du ying。
3 Elaeocarpus decipiens F.B.Forbes & Hemsl.
synonym Elaeocarpus zollingeri K.Koch [Kewscience]
日本、南西諸島、小笠原諸島、朝鮮、中国、台湾、ベトナム 原産。中国名は杜英 du ying 。英名はJapanese Blueberry Tree
常緑高木、高さ5~15m。小枝と頂芽は乾くと黒褐色、微軟毛があり、無毛になる。葉柄は長さ1~2㎝、上端は膨れず、微軟毛があり、無毛になる。葉身は上面に光沢があり、倒披針形、基部に向かって細くなり、長さ7~13.5㎝×幅2~4㎝、革質又は厚い紙質、無毛、側脈は各側に7~9本、下面で明瞭、上面では不明瞭、細脈は下面で不明瞭、上面で明瞭、基部は漸尖し、葉柄に沿下し、狭い翼になり、縁は小鋸歯縁、先は尖鋭形、先の尖り(acumen)は鈍形。総状花序は落ちた葉の葉腋につき、長さ5~10㎝。花序柄は細く、微軟毛がある。花柄は長さ4~5㎜、微軟毛がある。花は両性。花芽は卵形、長さ4~5㎜。咢片は5個、披針形、約・長さ5.5㎜×幅1.5㎜、両面に微軟毛があり、先は鋭形。花弁は5個、白色、倒卵形、咢片の長さとほぼ同長、外面は無毛、内面の基部近くに毛があり、縁毛があり、上部1/2は不規則に切れ込み、断片(segments)は10~16個。雄しべは約20本又は25~32本、長さ約3mm。花糸は非常に短い。花盤は5裂し、毛がある。子房は3室、綿毛があるか又は無毛になる。胚珠は各室に2個。花柱は長さ約3.5mm、下半部に毛がある。核果は楕円形、長さ2~3.5㎝×幅1.5~2㎝、 外果皮は不明瞭、無毛。内果皮は骨質、目立ついぼ状、1室。種子は1個、長さ1.5㎝。花期は6~7月。果期は11~1月。
3-1 Elaeocarpus decipiens var. decipiens
葉柄は長さ1~2㎝。葉身は長さ7~13.5㎝×幅2~4㎝、革質、普通、側脈の腋に腺は無い。雄しべは25~30本。子房は密に綿毛がある。果実は長さ2~3.5㎝×幅1.5~2㎝.
品種) 'Monproud' , Little Emperor = 'Monproud' , Shogun™ Little Emperor™
3-2 Elaeocarpus decipiens var. changii Y. Tang
台湾原産。中国名は兰屿杜英 lan yu du ying。
葉柄は長さ1㎝以下。葉身は長さ4.5~7㎝×幅1.5~2.5㎝、厚い紙質、普通、側脈の腋に腺があり、側脈は6~8本。花弁の断片は14~16個。雄しべは約20本。子房は無毛になる。果実は約・長さ1.5㎝×幅0.7~0.8㎝。
4 Elaeocarpus grandiflorus Sm. ネッタイスズラン 熱帯鈴蘭
マレーシア、インドネシア、カンボジア、ジャワ、ラオス、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナム原産。英名はMala , fairy petticoat , fringe bells,lily of the valley tree , blue olive berry。別名はエラエオカルプス・グランディス。関東以南の暖地では街路樹や庭植えに利用される。
常緑高木、高さ15~20(25)m。幹は直立、基部に支持根をつける。小枝は無毛、太さ2.5~5㎜。托葉はしばしば丈夫で、光沢があり、長さ約1~2mm。若葉は赤色を帯び、成葉は緑色、落ちる前に赤色になる。葉は小枝の先に密~疎に集まり、互生し、単葉、披針形、鋸歯縁、先は尖鋭形、基部はくさび形。枝先に多数の花を生じる。花は葉の落ちた葉痕から生じ、不分枝の長さ3~9㎝の総状花序に束生し、下向きに垂れ下がる。花は5数性。咢片は赤ピンク色、杯形、花弁や雄しべと同時に落ちる。花弁は白色~クリーム白色、下部1/3が狭くなるが爪部は無く、縁がフリンジ状。雄しべは綿毛がある。子房は楕円形、上位。果実は核果、緑色、楕円形、長さ約3㎝、硬くて粗い核(種子)を含み、細い長くて曲がった刺をもつ。花期は6~7月。
5 Elaeocarpus hayatae Kaneh. et Sasaki コウトウホルトノキ
synonym Elaeocarpus sylvestris (Lour.) Poir. var. hayatae (Kaneh. et Sasaki) Y.C.Liu
synonym Elaeocarpus sphaericus (Gaertn.) K.Schum. var. hayatae (Kaneh. et Sasaki) C.E.Chang
台湾原産。中国名は球果杜英 qiu guo du ying。
6 Elaeocarpus japonicus Siebold et Zucc. コバンモチ 小判黐
日本(紀伊半島以西の本州、四国、九州、沖縄)、中国、台湾、ベトナム原産。中国名は薯豆 shu dou。和名は葉がモチノキ似て、小判形であることから。
高木、高さ25m以下、小枝は丈夫、無毛又は微細な毛がある。花芽はに絹毛がある。葉柄は長さ2~6㎝、初め毛があり、無毛になる。葉身は卵形、楕円形、倒卵形、又は披針形~狭長円形、長さ6~11(~17)㎝×幅3~6㎝、紙質又は革質、両面に初め密に銀灰色の絹毛があり、すぐに無毛になり、下面に小さな黒色の斑点があり、側脈は各側に6~8本、下面に明瞭に隆起し、細脈は下面で明瞭、上面では目立たず、基部は円形、鈍形、鋭形、又は広くさび形、縁はまばらに歯があり、先は尖鋭形又は鋭形、先の尖りは鈍形。総状花序は長さ3~6㎝。花序柄は微軟毛がある。花柄は長さ3~4mm、微軟毛がある。花は雌雄混株、両性。咢片は5個、長円形、長さ約4㎜、両面に毛がある。花弁は長円形、長さは咢片とほぼ同長、両面又は下面だけに毛があり、縁は全縁又は切れ込む。雄しべは15本。花糸はは切れ込む。雄しべは15本。花糸は非常に短い。葯は長さ約2mm、先に芒は無く、微軟毛がある。花盤は5又は10裂、円状になる。子房は毛があり、3室。花柱は長さ約3mm、毛がある。雄花は咢片が5又は6個、花弁は5又は6個、雄しべは9~14本、未発達な子房が有又は無。核果は光沢があり、長さ1~1.3㎝×幅約0.8㎝、1室。種子は1個、長さ約8㎜。花期は4~5月。果期は5~7月。
7 Elaeocarpus multiflorus (Turcz.) Fern.-Vill. ナガバコバンモチ 長葉小判黐
synonym Elaeocarpus arthropus Ohwi
日本(南西諸島)、台湾、フィリピン、インドネシア原産。別名はナガバノコバンモチ。中国名は繁花杜英 fan hua du ying。
常緑高木。小枝は乾くと灰色、丈夫、無毛。葉柄は長さ2~4㎝、無毛、両端が膨れる。葉身は卵状長円形~狭倒卵状長円形、長さ7~12㎝×幅3~4.5㎝、紙質、両面とも無毛、下面に黒色の腺点は無く、側脈は7~9対、弧状に斜上し、下面に明瞭に隆起し、細脈は明瞭な網状、両面にわずかに隆起し、基部は鈍形、円形、又はわずかに凹形、縁はまばらに円鋸歯があり、先は鋭形又は短い尖鋭形。総状花序は現在の葉と落ちた葉の葉腋につき、長さ3~6㎝。花序柄はまばらに微軟毛がある。花柄は長さ6~10mm、密に微軟毛がある。花芽は長さ5~6㎜。咢片は5個、披針形、長さ5~6㎜×幅約1.8mm、外面に微細な灰色の微軟毛があり、内面は無毛に近く、先は鋭形。花弁は5個、長円形、長さ約6mm、外面は毛があり、内面は基部に長い羊毛状の毛のクッションをもち、先は普通、2~3歯がある。雄しべは約20本、花糸は長さ約1.2mm、絨毛がある。葯は線形、長さ2~3mm、外側のバルブは芒があり、全体にごく微細な毛がある。花盤は10裂、絨毛がある。子房はわずかに絨毛がある。花柱は長さ約1.2㎜、無毛。核果は楕円形、約・長さ1.5㎝×幅0.8㎝。 花期は6~7月。果期は不明。
8 Elaeocarpus photiniifolius Hook. et Arn. シマホルトノキ
synonym Elaeocarpus sylvestris (Lour.) Poir. var. photiniifolius (Hook. et Arn.) Yas.Endo
小笠原諸島原産。別名はシマハボソ。
9 Elaeocarpus serratus L. セイロンオリーブ
インド、アッサム、バングラデシュ、スリランカ原産。英名はCeylon olive。
10 Elaeocarpus sylvestris (Lour.) Poir.
中国、ベトナム原産。中国名は山杜英 shan du ying。英名はHorutonoki。
常緑高木、高さ15m以下。小枝は細く、まばらに淡色の直軟毛がある。葉柄は長さ1~1.5㎝、初めまばらに毛があり、無毛になる。葉身は乾くと黒褐色、倒卵形~倒披針形、長さ4~125㎝×幅2~75㎝、紙質、両面とも無毛、側脈は各側に普通4~5本、下面で明瞭、上面では不明瞭、細脈はまばら、上面で明瞭、基部は狭いくさび形、沿下し、縁は円鋸歯又は深波状円鋸歯、先は鈍形又は短い尖鋭形。総状花序は現在ある葉と落ちた葉に腋生し、長さ4~6㎝。花序柄は細く、無毛、まれに灰白色の毛がある。花柄は長さ3~5mm、細く、普通、無毛。花は両性。咢片は5個、披針形、長さ約4mm、両面にまばらに毛がある。花弁は5個、倒卵形、上半部が不規則に切れ込み、断片(segments)は10~12個、外面は基部に毛がある。雄しべは15本、長さ約3mm。葯は先に芒が無く、微軟毛がある。花盤は5裂、球形、完全分かれ、白色の毛がある。子房は毛があり、2又は3室。花柱は長さ約2㎜、下半部1/2に毛がある。核果は楕円形、長さ1~1.2㎝×幅約0.7㎝、内果皮は薄い骨質、腹側に3本の縫合線がある。花期は4~5月。果期は5~8月。
11 Elaeocarpus zollingeri K.Koch ホルトノキ 広義
synonym Elaeocarpus sylvestris (Lour.) Poir. [GBIF , The Plant List]
synonym Elaeocarpus decipiens F.B.Forbes & Hemsl. [Kewscience]
日本固有種(本州の千葉県南部以西、四国、九州、沖縄)。Elaeocarpus decipiens又はElaeocarpus sylvestrisとする見解がある。
11-1 Elaeocarpus zollingeri K.Koch var. changii (Y.Tang) Yonek.
synonym Elaeocarpus decipiens var. changii Y.Tang [Kewscience , Flora of China]
台湾原産。中国名は兰屿杜英 lan yu du ying。Flora of ChinaではElaeocarpus decipiens var. changii。
※Flora of ChinaではElaeocarpus decipiens var. changii Y. Tangとしている。
11-2 Elaeocarpus zollingeri K.Koch var. pachycarpus (Koidz.) Yonek. チギ
synonym Elaeocarpus sylvestris var. ellipticus (Thunb.) Hara [GBIF]
synonym Elaeocarpus pachycarpus Koidz.
synonym Elaeocarpus sylvestris (Lour.) Poir. var. pachycarpus (Koidz.) H.Ohba
synonym Elaeocarpus decipiens F.B.Forbes & Hemsl. [Kewscience]
小笠原(硫黄列島)原産。別名はケギ。
11-3 Elaeocarpus zollingeri K.Koch var. zollingeri ホルトノキ
synonym Elaeocarpus sylvestris auct. non (Lour.) Poir.
synonym Elaeocarpus sylvestris (Lour.) Poir. var. ellipticus (Thunb.) H.Hara [GBIF]
synonym Elaeocarpus ellipticus (Thunb.) Makino
synonym Elaeocarpus decipiens Hemsl.
日本固有種(本州の千葉県南部以西、四国、九州、沖縄)。別名はモガシ。Elaeocarpus sylvestrisの変種var. ellipticusとする見解もある。
常緑高木。高さ10~15m。幹は灰褐色、小さな皮目があり、成木の樹皮は薄く細かく裂ける。葉は互生し、枝先にやや集まってつく。葉身は長さ5~12㎝の倒披針形、やや革質、鋸歯縁。葉裏の主脈が赤くなることがあり、腺点は無く、脈腋に膜状の付属物がある。葉柄は長さ5~10㎜。1年中葉が少しずつ紅葉するのが特徴。両性、長さ約7㎝の総状花序に花は15~20個つく。花は直径約1㎝、帯黄白色。咢片は長さ3~4mm、両面に細かい伏毛がある。花弁は5個、長さ4~5mm、先が糸状に裂け、下部は細縁毛があり、内面はほとんど無毛又は基部に細毛を散生する。雄しべは25~34本。葯の先端にときに1~2本の剛毛がある。子房の基部に橙色の腺体がある。果実はオリーブに似た長さ約3㎝の楕円形の核果、藍黒色に熟す。核は長さ約1.5㎝の惰円形、淡褐色。花期は7~8月。
ホルトノキの学名
ホルトノキの学名は独立種とする場合(Ylist)はElaeocarpus zollingeriとされ、E. sylvestris の変種とする場合(GBIF)はvar. ellipticus (Thunb.) H.Haraとされる。しかし、KewscienceではE. decipiensの異名として扱っている。Flora of China ではE. decipiensを広義に扱いElaeocarpus zollingeriを異名としている。
【参考3の解説】 日本のホルトノキは咢片の長さ3~4mm、両面に細かい伏毛があり、花弁は長さ4~5mm、下部は細縁毛があり、内面はほとんど無毛又は基部に細毛を散生し、雄しべは25~34本、葯の先端にときに1~2本の剛毛がある。琉球(沖縮,石垣島)のものもこれと殆ど一致する。 一方中国南部に見られる型は,花が小さく、咢片外面の毛が少いが、花弁は反って下部に密に細毛を有し、雄しべは数が少なく、14~21本である。しかし中国産にもかなりの変異があり、又台湾には中間形も見られるので上記の2型は同ーの種に属するものと考えてられる。 なお中国中部には近縁の別種もある。 E. decipiens Hemsl.は基在標木の定め方によってホルトノキにも中国南部の型にもとりうる。 近年、インドシナ半島東部地域(インドシナ)産に基いた E. sylvestris (Lour.) Poiretが最も古い種名として用いられる様になったが、その基準標本は日本のものからずれた形であり Fホルトノキは広義の本種分布区域の北部を占める地理的変種var. ellipticus (Thunb.) H.Haraとみなすのが妥当と思う。しかし若しホルトノキを独立種として扱う場合には E. Zollingeri K. Kochの名がよい。
参考
1) Flora of ChinaElaeocarpus
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=111377
2) KewscienceElaeocarpus
http://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:326026-2
3) 植物研究雑誌26(3): 91–95(1951)原寛:ホルトノキとコバンモチ
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_026_91_95.pdf