ハッカ 薄荷
Flora of Mikawa
シソ科 Lamiaceae ハッカ属
別 名 | ニホンハッカ、ワシュハッカ |
中国名 | 薄荷 bo he |
英 名 | American corn mint , Canadian mint , Chinese mint , Japanese mint , Japanese corn mint , Japanese peppermint |
学 名 | Mentha canadensis L. synonym Mentha canadensis L. var. piperascens (Malinv. ex Holmes) H.Hara synonym Mentha arvensis L. var. piperascens Malinv. ex Holmes synonym Mentha arvensis L. var. formosana Kitam. |
花 期 | 8~10月 |
高 さ | 30~60㎝ |
生活型 | 多年草 |
生育場所 | 草地、やや湿った場所 |
分 布 | 在来種 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、ロシア、カンボジア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、タイ、ベトナム、北アメリカ |
撮 影 | 豊田市 03.8.21 |
ハッカ Mentha canadensis とヨウシュハッカ Mentha arvensis とは中間的なものも多く、判別するのが難しいものが多い。写真のものは山道の湿った場所に生えていたもの。葉が茎の上部で少しだけ小さく、葉柄が仮輪より長い。萼歯は細く尖る。雄しべは花冠裂片から長く、突き出る。ニホンハッカ Mentha canadensis var. piperascens といわれるものに近い。
他にやや萼歯の幅が広い②水辺の縁に生えていたものを観察した。
ハッカは根茎があり、多年草。茎は直立し、高さ30~60(10~80)㎝、軟毛(又は短毛)があり、多数分枝する。葉柄は長さ2~10(5~25)㎜。葉身は卵状披針形~長楕円形(線形~披針形)、長さ3~5(7)㎝、幅0.8~3㎝(茎の先で小さくなる)、軟毛があり、基部は楔形~円形、先は(普通)鋭形、(円鋸歯縁~鋸歯縁)、(葉裏は脈が明瞭で、短毛がある)。輪散花序は葉(苞葉ではなく、蓋葉と、花序柄と花序の境に2個の小さな苞葉がつく場合があり、つかないこともある)に腋生し、球形、直径約1.8㎝、他段の離れた仮輪となる。花序柄は長さ0~3㎜。小花柄は細く、長さ約2.5㎜。萼は筒状鐘形、長さ約2.5(1.5~3)㎜、外面に軟毛があり、腺点があり、不明瞭な10脈がある。萼歯は狭三角状錐形、先は尖鋭形、長さ約1㎜。花冠は帯紫色~ピンク色~白色、長さ約4(4~7)㎜、軟毛がある。上側の裂片は大きくて2裂し、下側の裂片3個はほぼ同形で、楕円形、鈍頭。雄しべは長さ約5㎜。分果は黄褐色、表面に小さい穴がある。2n=96。(Flora of China、()内はJepson eFlora)。
多年草。根茎がある。茎は4稜形、葉は対生し、托葉はない。花序は複合花序であり、輪散花序(verticillaster:輪状集散花序)と呼ばれる。対生する葉の葉腋に2個の集散花序(cyme)が輪生のように腋生する。偽輪生(false verticillate)であるため、多段につく1つを仮輪という。また発達した花序では上部の葉が苞になり、茎頂で穂状花序(spike-like)や頭状花序(head-like)となる場合もある。花序の中の葉が苞葉(苞 bract)と葉(leaf)の中間のような場合もあり、葉状の苞(leaf-like bract , foliaceous bract)、蓋葉(subtending leaf)とか花葉(floral leaf)といった用語も使われる。花序の中の束生した花房の基部に2個苞があり、さらに小苞がある。萼は筒状、萼歯は5個。花冠は2唇形。果実は4分果の小堅果。ハッカ属は多くの芳香成分を含有し、種類により香りが異なる。ハッカは主成分のL‐メントールが多く、香りが強く、清涼感がある。ペパーミントは主成分のL‐メントールがやや少なく、メントフランを含有し、香りは清涼感が強い。スペアミントは主成分がL-カルボンであり、香りが穏やかでやや甘味を感じる。他にリンゴの香り、柑橘類の香り、ラベンダーの香りなどもある。英名はmint。
世界に約24種があり、ユーラシア、北アメリカに分布する。
ハッカ属は似ているものが多く、雑種もできやすいため分類は難しい。Jepson eFloraの検索表や神奈川県植物誌の検索表が参考になる。ペニーロイヤルの香りは主成分プレゴンの香りである。北アメリカのMentha canadensisはプレゴンを含み、ペニーロイヤルの香りがする。ニホンハッカにはプレゴンが含まれず、香りが異なる。
ヨーロッパ原産。英名はwatermint。
茎は30~140㎝、無毛~有毛。葉は長さ2~5(9)㎝。葉柄は長さ3~8(25)㎜。葉身は普通、卵形、基部は漸尖~ほぼ円形、普通、鋸歯縁、先端は鋭形。花序は頭状、上部の3~5節に束生する。基部につく苞葉は卵形~披針状線形。萼は長さ2.5~4㎜、無毛又は縁毛がある。花冠は長さ3.5~6㎜、白色~ピンク色~紫色。花期は7~10月。2n=96。
2 ②Mentha arvensis L. ヨウシュハッカ 洋種薄荷
synonym Mentha gentilis L. red mint
ヨーロッパ、中央~西アジア原産。英名はfield mint, wild mint, corn mint。別名はコーンミント。
茎は10~50㎝。葉は長さ2~4(8)㎝。葉柄は長さ3~8㎜。葉身は普通、卵形、普通、鋸歯縁、先端は鋭形。花序は腋生、基部につく葉(蓋葉)は幅が広い。苞葉は小さいか無い。萼は長さ1.5~2.5㎜、普通、無毛又は縁毛がある。花冠は長さ2.5~3.5㎜、白色~ピンク色~紫色。(全体に毛が多い)。花期は7~10月。2n=72。
現在では下位分類は道められていないが、多数の変種や品種に分類されていた。
2-1 var. arvensis 葉の基部が円形、葉柄が仮輪より長い。
2-2 var. villosa 葉の基部が楔形、葉柄が仮輪と同長か短い
※Mentha arvensis var. villosaはMentha arvensisとMentha canadensisに分けられた。
2-3 Mentha × gentilis レッドミント
英名はred mint, little-leaved mint。Mentha arvensis(フィールドミント)とMentha spicata(スペアミント)のハイブリッドと推定されていた。POWOではMentha gentilis L.はMentha arvensisのsynonymとされている。
3 ③Mentha canadensis L. ハッカ 薄荷 広義
北アメリカ、アジア東部原産。英名はAmerican corn mint , Japanese pepermint。
茎は10~50(80)㎝、微軟毛~短毛がある。葉は長さ1.5~5(8)㎝、茎の上部で小さくなる。葉柄は長さ5~25㎜。葉身は線形~披針形、鋸歯縁~円鋸歯縁、基部は漸尖、先端は普通、鋭形。葉裏は脈が目立ち、短毛がある。花序は腋生、基部につく葉(蓋葉)は幅が広い。苞葉は小さいか無い。萼は長さ1.5~3㎜、外面に短毛がある。花冠は長さ4~7㎜、白色~ピンク色~紫色。花期は7~10月。2n=96。
POWOでは下位分類を認めていない。
3-1 Mentha canadensis var. canadensis ハッカ (狭義)
synonym Mentha arvensis L. subsp. canadensis (L.) H.Hara
synonym Mentha canadensis L.
synonym Mentha haplocalyx Briq.
北アメリカに分布。英名はAmerican wild mint , american cornmint
2n=96。
synonym Mentha arvensis L. var. formosana Kitam.
synonym Mentha sachalinensis (Briq.) Kudo
synonym Mentha haplocalyx Briq. var. nipponensis
世界で広く栽培されており、多くの栽培品種がある。
4 Mentha × carinthiaca Host
フランス、ドイツ、ハンガリー、スペイン原産。英名はcarinthian mint。 ヨウシュハッカ(M. arvensis)とアップルミント(M. suaveolens)の自然交雑種。
5 Mentha cervina L. ハーツペニーロイヤル
synonym Preslia cervina (L.) Fresen
アルジェリア、アゾレス諸島、フランス、モロッコ、ポルトガル、スペイン原産。英名はhart’s pennyroyal, deer mint。種小名の cervina(鹿の)や英名の hart(牡鹿)は、苞葉の形が鹿の角に似ていることから。ペニーロイヤルミントや M. gattefossei の近縁種で精油の主成分はプレゴンでほかにイソメントン、ピペリテノンを含む。お茶に利用されるが、防腐効果があり、摂りすぎに注意が必要、ストゥルーイングハーブや穀物倉庫にまいてネズミ除けに用いられる。
高さ30~60㎝、根茎がある。葉は細く、小さく、披針形、芳香がある。 多数の花が葉腋に輪生し、大きく密集する。苞は掌状。萼は萼片が4個、萼片の先端に帯白色の刺がある。花は淡青色~淡紫色で、白花品種‘Alba’もある。雄しべは花冠よりも長い。種子をほとんど生産しないため、ほとんどの繁殖は根茎によって栄養繁殖される。2n=36, 26(x=12)。
6 Mentha dahurica Fisch. ex Benth. ダフリアハッカ
中国(黒龍江省、吉林省、内モンゴル)、ロシア原産。中国名は兴安薄荷 xing an bo he。英名はDahurian thyme。標高約600mの牧草地に生える。POWO、Flora of Chinaでは日本を分布域に含めている。
多年草、根茎がある。茎は直立し、長さ30~60㎝、まれに分枝し、基部には葉がつかず、後屈しる微軟毛があり、ときに紫色を帯びる。葉柄は長さ7~10㎜、葉身は卵形~長円形、約・長さ3㎝×幅1.3㎝、無毛またはまばらに微軟毛があり、下面には脈上に腺があり、基部は広楔形~円形、縁は浅い円鋸歯状鋸歯からほぼ全縁になり、先は鋭形~鈍形。輪散花序は花が5~13個つき、通常2段で、先端の頭状花序は花葉より長い。花序柄は長さ2~10㎜、微軟毛がある。小苞は線形で上向きに湾曲する。小花柄は長さ1~3㎜。萼は筒状鐘形、長さ約2.5㎜、脈が目立ち、微軟毛がある。萼歯は広三角形、長さ約0.5㎜、先は鋭形。果時の萼は広鐘形になる。花冠は帯赤色またはバラ紫色を帯び、長さ約5㎜、無毛、喉部は微軟毛があり、基部から徐々に広がる。花冠裂片は円形、長さ約1㎜、先は鈍形、上側の裂片は顕著に2裂する。前側の雄しべは花冠と等長~わずかに長い。子房は褐色で無毛。花期は7~8月。
7 Mentha diemenica Spreng. スレンダーミント
synonym Mentha affinis (Hook.f.) Druce
synonym Mentha repens (Hook.f.) Briq.
synonym Mentha serpyllifolia Benth.
オーストラリア(ニューサウスウェールズ州、クイーンズランド州、南オーストラリア州、タスマニア州、ビクトリア州)固有種。英名はslender mint。葉をお茶や夏の飲料、料理に用いるほか、薬用にも使われる。
多年草、マット状になり、根茎があり、しばしば斜上~平伏する枝を生じ、枝は短く反り返った単毛で密に覆われる。葉柄は長さ0~3㎜、葉身は角張った卵形、まれに狭卵形または楕円形、長さ6~20㎜×幅4~12㎜、先は鈍形または円形、縁は全縁またはときに離れた浅い鋸歯がある。花は1対の葉の葉腋に3~8個の花がつき、輪散花序を形成する。萼は13本のうねがあり、長さの少なくとも 3分の2は癒合し、萼片は尖っているかまたは広鋭形、外面は短毛で密に覆われ、縁には長い毛がある。花冠は長さ4~7㎜、紫色で、しばしば淡色になり、4深裂する。葯は突き出す。花期は一年中。
8 Mentha japonica (Miq.) Makino ヒメハッカ 姫薄荷
日本固有種。北海道、本州に分布する。英名はJapanese wild mint。低地~山地の湿地に生える。ハッカと同じ芳香がある。
多年草、高さ20~40㎝。細長い地下茎がある。茎の節に短い微毛がある以外は全体に毛がなく、草全体に芳香がある。茎は直立し、分枝する。葉は十字対生し、葉柄は極短く、葉身は卵状長円形、長さ10~20㎜×幅3~8㎜、全縁で、先は鈍形~円形、両面に腺点がある。花は枝先や上部に集まってつく。萼は5裂し、腺点はあるが毛はなく、萼片の先は尖らない、花冠は長さ約3.5㎜、淡紅紫色または白色、4裂する。雄しべは4本、突き出る。花托には毛が密生する。分果は扁平でほぼ円形。花期は8~10月。
9 ⑩ Mentha longifolia (L.) L. ナガバハッカ 長葉薄荷
ユーラシア、アフリカ原産。英名はwild mint, silver mint, horse mint, brook mint, long-leaved mint, Biblical mint。中国名は欧薄荷 ou bo he
茎は灰白軟毛(canescent)がある。葉は長さ1.5~4(7)。葉柄は長さ0~2㎜。葉身は披針状卵形、普通、鋸歯縁、基部は漸尖、先端は鋭形。花序は穂状、基部につく苞葉は卵形~披針状線形。萼は長さ1~2㎜、普通、灰白軟毛がある。花冠は長さ2~3㎜、白色~ピンク色~紫色。花期は7~10月。2n=24
10 ①Mentha pulegium L. メグサハッカ 目草薄荷
ヨーロッパ原産。英名はpennyroyal, European pennyroyal, pennyrile, squaw mint, mosquito plant, pudding grass。中国名は唇萼薄荷 chun e bo he 。別名はペニーロイヤル、ペニロイアルハッカ。
茎は傾伏~斜上、長さ10~30㎝、短毛がある。葉は長さ0.5~2.5㎝、茎の上部では小さくなる。下部の葉は短柄、茎葉は普通、ほぼ無柄。葉身は狭卵形~披針形、全縁~細鋸歯、基部は漸尖~鈍形、先端は普通、円形。葉裏は短毛がある。花序は腋生、頭状、基部につく葉又は葉状の苞は反り返る。萼は長さ2.5~4㎜、外面に短毛があり、内面に長毛がある。花冠は長さ5~8㎜、紫色~ラベンダー色、縁に白色の軟毛がある。雄しべは花冠裂片から突き出る。花期は7~10月。2n=20 ,30 ,40。
11 Mentha requienii Benth. コルシカミント
コルシカ島、イタリア、サルデーニャ島原産。英名はCorsican mint。乾燥に弱く、湿った日陰に生える。観賞用やグランドカバーに栽培されるほか、クレムドゥモントゥ(Crème de menthe)などのリキュールの香り付けやサラダなどの食用、解熱、駆風などの薬用、消毒、ネズミ除けなどに用いられる。精油の主成分はプレゴンを約80%含有する。
常緑多年草。低く匍匐性で、コケのように広がり、高さ1.3~2.5(~10)㎝。ペパーミントの強い香りがある。茎は糸状。葉は小さい楕円形、長さ2~7㎜、通常3㎜程度、鮮やかな緑色、光沢がある。花は茎頂付近の葉腋に双生し、花はライラック色。花期は6~8月。
12 ⑧ Mentha spicata L. ミドリハッカ 緑薄荷
synonym Mentha viridis (L.) L.
ヨーロッパ原産。英名はspearmint, garden mint, common mint, lamb mint, mackerel mint。中国名は留兰香 liu lan xiang。別名はスペアミント。
茎は30~100(120)㎝、無毛。葉は長さ1~6㎝。葉柄は長さ0~2㎜。葉身は披針形~披針状楕円形、平滑~しわがあり、基部は円形~鈍形、普通、鋸歯縁、先端は鋭形~尖鋭形。花序は穂状、基部につく苞葉は卵形~披針状線形。萼は長さ1.5~2.5㎜、普通、無毛。花冠は長さ3~4㎜、白色~ピンク色~ラベンダー色。花期は7~10月。2n=48。
12-1 Mentha spicata L. 'Crispa' オランダハッカ 和蘭陀薄荷
synonym Mentha viridis (L.) L. var. crispa Benth.
根茎を持つ。茎は直立し、長さ30~60㎝、紫色を帯び、無毛。葉は無柄またはほぼ無柄、卵形~卵状披針形、長さ2~3㎝×幅1.2~2㎝、紙質、基部は円形~浅い心形、縁には鋸歯があり、先は鋭形。輪散花序は頂生の穂状花序になり、長さ2.5~3㎝×幅約1㎝、連続または基部で±断続する。苞葉は線状披針形、萼よりわずかに長い。小花柄は長さ約1㎜。萼は鐘形、長さ約1.5㎜、ほぼ無毛、腺毛、不明瞭な5脈がある。萼歯は三角状披針形、長さ約0.1㎜、縁毛がある。花冠は帯紫色、長さ約3.5㎜、無毛、花冠筒部は長さ約2㎜。花冠裂片はほぼ均等で、先は凹形。子房は褐色、無毛。小堅果は褐色、三稜形、卵形で、長さ約0.7㎜、まばらに腺がある。
13 ⑪ Mentha × rotundifolia (L.) Huds. アップルミント
ヨーロッパ原産。英名はapplemint, apple mint , false apple mint, Egyptian Mint, roundleaved mint。別名はマルバハッカ。
マルバハッカ(Mentha suaveolens)とナガバハッカ(Mentha longifolia)の自然交雑種。
茎は30~100㎝、普通、短毛がある。葉は長さ2.6~6(8)㎝。葉柄は長さ0~2㎜。葉身は卵形、基部はほぼ漸尖~ほぼ円形、縁は普通、鋸歯状、先端は尖る。花序は穂状、上部の3~5節に束状につき、基部につく苞葉は卵形~披針状線形。萼は長さ1.5~2.5㎜、縁毛がある。花冠は長さ2.5~3.5㎜、白色~ピンク色~紫色。雄しべは普通、花冠裂片から突き出ない。花期は7~10月。2n=24。ケンタッキーカーネルミント(Mentha ×villosa)との区別は困難。[The Jepson Herbarium]
14 ⑨ Mentha suaveolens Ehrh. マルバハッカ 丸葉薄荷
synonym Mentha rotundifolia auct. non (L.) Huds.
ヨーロッパ南部(ベルギー、ブルガリア、東エーゲ海諸島、フランス(コルシカ島)、ドイツ、イギリス、ギリシャ、イタリア(サルデーニャ島、シチリア島)、オランダ、ポルトガル(アゾレス諸島、マデイラ諸島)、スペイン(カナリア諸島、バレアレス諸島)、スイス、トルコ)、北アフリカ(アルジェリア、チュニジア、モロッコ)原産。英名はpineapple mint, round-leaved mint, apple mint , woolly mint。中国名は圆叶薄荷 yuan ye bo he。別名はパイナップルミント。
茎は50~100㎝、軟毛がある。葉は長さ1~4㎝。葉柄は長さ0~2㎜。葉身は卵形~楕円形~広楕円形、しわがあり、基部はほぼ円形、縁は円鋸歯状~鋸歯状、葉裏は綿毛があり、多数の分枝毛がある。花序は穂状、基部につく苞葉は卵形~披針状線形。萼は長さ1~1.5㎜、短毛がある。花冠は長さ2~3㎜、白色~ピンク色。雄しべは花冠裂片より突き出る。花期は7~10月。2n=24。
15 ④ Mentha × gracilis Sole アメリカハッカ 亜米利加薄荷
synonym Mentha arvensis var. gracilis (Sole) Nyman
synonym Mentha gentilis var. gracilis (Sole) Wahlenb.
synonym Mentha x cardiaca Baker
ヨーロッパ原産。英名はginger mint , bushy mint , cardiac mint , Scotch mint , Scotch spearmint。別名はジンジャーミント、スコッチスペアミント。強いスペアミントの香りがある。
茎は高さ30~100㎝、直立し、普通、無毛、暗赤色を帯びる。葉は対生し、葉柄は長さ2~8㎜、葉身は長さ1.5~6(10)㎝、卵形~披針形、しわがあり、基部は漸尖し、普通、鋸歯縁、まれに鈍い鋸歯となり、先は鋭形。花序は普通、腋生で仮輪(輪散花序)が離れ、ときに穂状花序のようになり、頂生する。穂状花序となる場合、下部の仮輪が離れ、最上部の2~3個の仮輪が密集することが多い。茎の上部ほど葉が小さくなって、苞葉状になり、花序を抱き、卵形~披針状線形。小さな小苞が小花柄の基部につく。萼は長さ1.5~3㎜、普通、無毛~縁毛、先が5裂し、萼歯は狭三角形。花冠は長さ2.5~6㎜、白色~ピンク色~紫色。雄しべは欠くものもあり、4本、普通、花冠から突き出ない。雌しべは長く花冠から突き出る。柱頭は2分岐。果実は分離果、4分果。普通、結実しない。花期は7~10月。2n=54 ,60 ,61 ,72 ,84 ,96 ,108 ,120(Jepson eFlora)。
16 ⑦ Mentha × piperita L. コショウハッカ 胡椒薄荷
ヨーロッパ原産。英名はpeppermint 。中国名は辣薄荷 la bo he。別名はペパーミント。
ミドリハッカ(Mentha spicata)とヌマハッカ(Mentha aquatica)の雑種。
茎は30~50㎝、普通、無毛(Flora of China:紫赤色)。葉は長さ2.5~5(7)㎝。葉柄は長さ3~10㎜。葉身は卵形~披針形(披針形~卵状披針形)、しわがあり、基部は漸尖~ほぼ円形、普通、鋸歯縁、先端は鋭形、葉裏は普通、無毛。花序は頭状~穂状、上部の3~5節に束生し(Flora of China:頂部の穂状で基部は間隔が開く)、基部につく苞葉は卵形~披針状線形。萼は長さ2.5~4㎜、普通、無毛又は縁毛がある(Flora of China:萼歯は線状錐形、長さ約1㎜)。花冠は長さ3.5~6㎜、白色~ピンク色~紫色。雄しべは普通、花冠から突き出ない。(分果は褐色、倒卵形、長さ約0.7㎜、普通、結実しない)。花期は7~10月。2n=72, 84, 108。
ヌマハッカ(Mentha aquatica)×ヨウシュハッカ(Mentha arvensis)×ミドリハッカ(Mentha spicata)の雑種
茎は30~100㎝、普通、無毛。葉は長さ2.5~6(8)㎝。葉柄は長さ0~10㎜。葉身は卵形~披針形、基部は漸尖~ほぼ円形、縁は普通、鋸歯状、先端は尖る。葉裏は普通、無毛。花序は普通、腋生、ときに茎頂に穂状、基部につく苞葉は卵形~披針状線形。萼は長さ2.5~4㎜、普通、無毛又は縁毛がある。花冠は長さ3.5~6㎜、白色~ピンク色~紫色。雄しべは普通、花冠裂片から突き出ない。花期は7~10月。2n=54 ,98 ,108 ,120。
18 Mentha × verticillata L. ウォールミント
ヨーロッパ原産。英名はwhorled mint。別名はトールミント。ヌマハッカ(Mentha aquatica)とヨウシュハッカ(Mentha arvensis)との交雑種。海岸、川岸、溝、湿った草地に生える。
多年草、高さ20~70㎝。茎は枝分かれし、毛が多様で、赤みがかっていることが多い。葉は対生し、葉柄があり、葉身はかなり幅広く、楕円形、先はしばしば鈍形、縁は鋸歯縁。通常は不完全な雌花のみ。花茎は長い。輪散花序は離れ、密に半球形に花がつく。花冠はわずかに左右相称、帯薄赤色、長さ約4㎜、4裂片があり、最上部の裂片は他の裂片よりも幅が広く、先には切れ込みがある。萼は狭い鐘形、5裂し、溝があり、明瞭な10脈があり、毛はわずか。萼片は三角形。雄しべは4本、ほぼ等長で、水平。雌しべは2個の癒合した心皮からなる。果実は成長しない。花期は7~8月。br>
19 ⑫ Mentha × villosa Huds. ケンタッキーカーネルミント
ヨーロッパ原産。英名はapplemint , Bowles mint , mojito mint。別名はアップルミント、ボールズミント。
マルバハッカ(Mentha suaveolens)とミドリハッカ(Mentha spicata)の交雑種。
茎は30~100㎝、普通、灰白軟毛がある。葉は長さ2~6(8)㎝。葉柄は長さ0~2㎜。葉身は卵形(楕円形)、基部はほぼ漸尖、縁は普通、鋸歯状、先端は尖る。花序は穂状、基部につく苞葉は卵形~披針状線形。萼は長さ1.5~2.5㎜、普通、灰白軟毛がある。花冠は長さ3~4㎜、白色~ピンク色~紫色。雄しべは普通、花冠裂片から突き出ない。花期は7~10月。2n=36。Mentha ×rotundifoliaとの区別は非常に難しい。
2. 花序が普通、腋生
3. 葉は大きさがほぼ同じ。葉身は普通、卵形。普通、刺激的な香り
(萼歯は正三角形で先が細くならない)
普通、ペニーロイヤルかスペアミントの香り
4. 葉は茎の上部で次第に小さくなる。
(萼歯は狭い三角形で、先が細くなる。)
・普通、ペニーロイヤルの香り
普通、スペアミントの香り (果実の香り)
5. 萼は長さ1.5~3㎜、萼歯は三角形
6.花序が普通、頭状、先の3~5節に束生
7. 葉身は卵形、ラベンダーと柑橘類の香り
8. 葉にしわがある。
9. 葉身は披針状楕円形、無毛 (葉裏に分枝毛がある)。
スペアミントの香り
10. 葉身が披針形~披針状楕円形
11. 葉身の中部の幅が最も広い。毛が分枝しない。
完全な葯は長さ0.3~0.4㎜、普通、かび臭い香り
完全な葯は長さ0.4~0.5㎜、普通、スペアミントの香り
12. 萼は縁毛がある。完全な葯は4個。
葉身は基部が漸尖~ほぼ円形
花冠は長さ2.5~3.5㎜
葉身は基部が漸尖。花冠は長さ3~4㎜。
Mentha canadensis (American wild mint , american cornmint) は北アメリカに分布し、2n=96(8倍体)であり、ヨーロッパなどに分布するMentha arvensisは2n=72である。両者は形態的な差異も認められるが、一定でなく、ときに中間的なものも見られる。しかし、細胞学、地理学、植物化合物、交配試験などでは2種の差が認められ、Mentha canadensisは Mentha arvensis と Mentha longifolia (horse mint) の古い時代の交雑起源と推定されている。.東アジアに分布するハッカも2n=96であり、広義にMentha canadensisに含められるようになった。
<ニホンハッカ> Mentha canadensis var. piperascens( Mentha arvensis var. piperascens)
ハッカの栽培種は多く、ニホンハッカ(ワシュハッカ)とされているものも多いが、その中に純日本産のものは少なく、中国産との交雑品種やスペアミント系との交雑品種もある。中国産のものは葉幅が狭く、萼歯も幅がやや広く、香りがペパーミントに近いといわれる。ニホンハッカは自生種だけを指す呼び名ではなく、国外で栽培されたものも含めた呼び名である。
ハッカ(ニホンハッカ)Mentha canadensis L. var. piperascens はメントール含有量が多く、強いハッカ(メントール)臭があり、全体に軟毛が多い。地下茎があり、茎は4稜形、高さ20~60㎝程度。茎には曲がった毛がある。葉は対生し、葉柄が仮輪より長い。葉身は長さ2~10㎝、幅0.8~3㎝の卵状披針形~長楕円形、先が尖る。葉縁に不規則な鋸歯がある。葉には小さな腺点があり、伏毛がある。輪散花序は葉に腋生し、苞は小さいか又はない。花を多数、密集して仮輪をつくる。仮輪と仮輪の間は離れる。萼は5裂し、萼歯は細く尖り、狭三角状錐形、長さ約1㎜。花冠は長さ4~5㎜、淡紫色。2n=96
<アメリカンコーンハッカ>狭義のMentha canadensis
北アメリカの自生種は葉幅が狭く、鋸歯が鋭く、萼歯が鋭い。
香りは産地や品種で異なり、北アメリカ産にはペニーロイヤルの香りのものやペパーミントの香りのものもあり、日本産のものとは香りが異なる。
<ヨウシュハッカ>
ヨウシュハッカ Mentha arvensis L. (field mint, corn mint ,wild mint)はヨーロッパ、アジアの中央~西部、インド、ネパールに分布する。平地の湿った場所に生える。北アメリカに帰化し、日本でも観賞用に栽培されたものがまれに帰化している。U.S.A.内ではMentha canadensisと同種として扱われ、Mentha canadensisを指す解説のものが多い。以前はハッカ類の多くはMentha arvensisnの変種などに分類されており、ヨーロッパ原産のものはvar. arvensisとして区別されていた。
茎は高さ10~50㎝。葉は長さ2~4(8)㎝、葉柄は長さ3~8㎜、葉身はしわが無く、普通、卵形(~長楕円状披針形)、(鋭い)鋸歯縁、先は鋭形。花序は葉腋につき、苞はわずかか又は無い。萼は長さ1.5~2.5㎜、普通、無毛又は萼歯に縁毛がある。(萼は正3角形、短毛があり、萼歯は筒の1/3~1/4長)。花冠は長さ2.5~3.5㎜、白色~ピンク色~紫色。ときに完全雄性不稔になる。2n=72。
var. arvensis (var.agrestis , var.praecox)
葉の基部が円形、葉柄が仮輪より長い。
var. villosa 葉の基部が楔形、葉柄が仮輪と同長か短い
var. villosa はMentha arvensisとMentha canadensis var. glabrataに振り分けられるようになった。Mentha canadensis var. glabrataはペパーミントの香りがある。現在はMentha canadensisに含められている。
var. canadensis ⇒Mentha canadensis
<ハッカとヨウシュハッカの区別>
ハッカMentha canadensisとヨウシュハッカMentha arvensisに分けられているが、以前はすべてMentha arvensisの変種や亜種などに分類されていたため、混乱を生じやすい。また、Flora of north America などでは両者を同種とする見解であり、アメリカでMentha arvensisとしているものはほとんどがMentha canadensisである。
特徴は次のとおり
ハッカ(2n=96)
①葉が卵状披針形~長楕円形(北アメリカ産は線形~披針形)
②葉柄が長いものが多い、長さ2~10㎜(北アメリカ産5~25)
③萼歯は狭い三角形で、先が細くなる。
ヨウシュハッカ(2n=72)
①葉が卵形
②葉柄がやや短い、長さ3~8㎜
③萼歯は正三角形で、先が細くなならない。
Mentha
Mentha pulegium
Mentha
Mentha
ミントの植物学と栽培 木村正典
Mentha gentilis L. に関する研究 池田 長守, 清水 純夫, 宇渡 清六
他にやや萼歯の幅が広い②水辺の縁に生えていたものを観察した。
ハッカは根茎があり、多年草。茎は直立し、高さ30~60(10~80)㎝、軟毛(又は短毛)があり、多数分枝する。葉柄は長さ2~10(5~25)㎜。葉身は卵状披針形~長楕円形(線形~披針形)、長さ3~5(7)㎝、幅0.8~3㎝(茎の先で小さくなる)、軟毛があり、基部は楔形~円形、先は(普通)鋭形、(円鋸歯縁~鋸歯縁)、(葉裏は脈が明瞭で、短毛がある)。輪散花序は葉(苞葉ではなく、蓋葉と、花序柄と花序の境に2個の小さな苞葉がつく場合があり、つかないこともある)に腋生し、球形、直径約1.8㎝、他段の離れた仮輪となる。花序柄は長さ0~3㎜。小花柄は細く、長さ約2.5㎜。萼は筒状鐘形、長さ約2.5(1.5~3)㎜、外面に軟毛があり、腺点があり、不明瞭な10脈がある。萼歯は狭三角状錐形、先は尖鋭形、長さ約1㎜。花冠は帯紫色~ピンク色~白色、長さ約4(4~7)㎜、軟毛がある。上側の裂片は大きくて2裂し、下側の裂片3個はほぼ同形で、楕円形、鈍頭。雄しべは長さ約5㎜。分果は黄褐色、表面に小さい穴がある。2n=96。(Flora of China、()内はJepson eFlora)。
ハッカ属
family Lamiaceae - genus Mentha多年草。根茎がある。茎は4稜形、葉は対生し、托葉はない。花序は複合花序であり、輪散花序(verticillaster:輪状集散花序)と呼ばれる。対生する葉の葉腋に2個の集散花序(cyme)が輪生のように腋生する。偽輪生(false verticillate)であるため、多段につく1つを仮輪という。また発達した花序では上部の葉が苞になり、茎頂で穂状花序(spike-like)や頭状花序(head-like)となる場合もある。花序の中の葉が苞葉(苞 bract)と葉(leaf)の中間のような場合もあり、葉状の苞(leaf-like bract , foliaceous bract)、蓋葉(subtending leaf)とか花葉(floral leaf)といった用語も使われる。花序の中の束生した花房の基部に2個苞があり、さらに小苞がある。萼は筒状、萼歯は5個。花冠は2唇形。果実は4分果の小堅果。ハッカ属は多くの芳香成分を含有し、種類により香りが異なる。ハッカは主成分のL‐メントールが多く、香りが強く、清涼感がある。ペパーミントは主成分のL‐メントールがやや少なく、メントフランを含有し、香りは清涼感が強い。スペアミントは主成分がL-カルボンであり、香りが穏やかでやや甘味を感じる。他にリンゴの香り、柑橘類の香り、ラベンダーの香りなどもある。英名はmint。
世界に約24種があり、ユーラシア、北アメリカに分布する。
ハッカ属は似ているものが多く、雑種もできやすいため分類は難しい。Jepson eFloraの検索表や神奈川県植物誌の検索表が参考になる。ペニーロイヤルの香りは主成分プレゴンの香りである。北アメリカのMentha canadensisはプレゴンを含み、ペニーロイヤルの香りがする。ニホンハッカにはプレゴンが含まれず、香りが異なる。
ハッカ属の主な種
1 ⑥ Mentha aquatica L. ヌマハッカ 沼薄荷ヨーロッパ原産。英名はwatermint。
茎は30~140㎝、無毛~有毛。葉は長さ2~5(9)㎝。葉柄は長さ3~8(25)㎜。葉身は普通、卵形、基部は漸尖~ほぼ円形、普通、鋸歯縁、先端は鋭形。花序は頭状、上部の3~5節に束生する。基部につく苞葉は卵形~披針状線形。萼は長さ2.5~4㎜、無毛又は縁毛がある。花冠は長さ3.5~6㎜、白色~ピンク色~紫色。花期は7~10月。2n=96。
2 ②Mentha arvensis L. ヨウシュハッカ 洋種薄荷
synonym Mentha gentilis L. red mint
ヨーロッパ、中央~西アジア原産。英名はfield mint, wild mint, corn mint。別名はコーンミント。
茎は10~50㎝。葉は長さ2~4(8)㎝。葉柄は長さ3~8㎜。葉身は普通、卵形、普通、鋸歯縁、先端は鋭形。花序は腋生、基部につく葉(蓋葉)は幅が広い。苞葉は小さいか無い。萼は長さ1.5~2.5㎜、普通、無毛又は縁毛がある。花冠は長さ2.5~3.5㎜、白色~ピンク色~紫色。(全体に毛が多い)。花期は7~10月。2n=72。
現在では下位分類は道められていないが、多数の変種や品種に分類されていた。
2-1 var. arvensis 葉の基部が円形、葉柄が仮輪より長い。
2-2 var. villosa 葉の基部が楔形、葉柄が仮輪と同長か短い
※Mentha arvensis var. villosaはMentha arvensisとMentha canadensisに分けられた。
2-3 Mentha × gentilis レッドミント
英名はred mint, little-leaved mint。Mentha arvensis(フィールドミント)とMentha spicata(スペアミント)のハイブリッドと推定されていた。POWOではMentha gentilis L.はMentha arvensisのsynonymとされている。
3 ③Mentha canadensis L. ハッカ 薄荷 広義
北アメリカ、アジア東部原産。英名はAmerican corn mint , Japanese pepermint。
茎は10~50(80)㎝、微軟毛~短毛がある。葉は長さ1.5~5(8)㎝、茎の上部で小さくなる。葉柄は長さ5~25㎜。葉身は線形~披針形、鋸歯縁~円鋸歯縁、基部は漸尖、先端は普通、鋭形。葉裏は脈が目立ち、短毛がある。花序は腋生、基部につく葉(蓋葉)は幅が広い。苞葉は小さいか無い。萼は長さ1.5~3㎜、外面に短毛がある。花冠は長さ4~7㎜、白色~ピンク色~紫色。花期は7~10月。2n=96。
POWOでは下位分類を認めていない。
3-1 Mentha canadensis var. canadensis ハッカ (狭義)
synonym Mentha arvensis L. subsp. canadensis (L.) H.Hara
synonym Mentha canadensis L.
synonym Mentha haplocalyx Briq.
北アメリカに分布。英名はAmerican wild mint , american cornmint
2n=96。
3-2 Mentha arvensis L. var. piperascens (Malinv. ex Holmes) H.Hara ハッカ(狭義)
synonym Mentha canadensis L. var. piperascens (Malinv. ex Holmes) H.Hara ハッカ
synonym Mentha arvensis L. var. piperascens Malinv. ex Holmessynonym Mentha arvensis L. var. formosana Kitam.
synonym Mentha sachalinensis (Briq.) Kudo
synonym Mentha haplocalyx Briq. var. nipponensis
synonym Mentha haplocalyx Briq. var. piperascens (Malinv. ex Holmes) C.Y.Wu et H.W.Li
日本、朝鮮、中国など東アジア原産。英名はAmerican corn mint , Canadian mint , Chinese mint , Japanese mint , Japanese corn mint , Japanese peppermint。中国名は薄荷 bo he。別名はワシュハッカ、ニホンハッカ。2n=96。世界で広く栽培されており、多くの栽培品種がある。
4 Mentha × carinthiaca Host
フランス、ドイツ、ハンガリー、スペイン原産。英名はcarinthian mint。 ヨウシュハッカ(M. arvensis)とアップルミント(M. suaveolens)の自然交雑種。
5 Mentha cervina L. ハーツペニーロイヤル
synonym Mentha multifida Stokes in Bot. Mat. Med. 3: 318 (1812)
synonym Mentha punctata Moenchsynonym Preslia cervina (L.) Fresen
アルジェリア、アゾレス諸島、フランス、モロッコ、ポルトガル、スペイン原産。英名はhart’s pennyroyal, deer mint。種小名の cervina(鹿の)や英名の hart(牡鹿)は、苞葉の形が鹿の角に似ていることから。ペニーロイヤルミントや M. gattefossei の近縁種で精油の主成分はプレゴンでほかにイソメントン、ピペリテノンを含む。お茶に利用されるが、防腐効果があり、摂りすぎに注意が必要、ストゥルーイングハーブや穀物倉庫にまいてネズミ除けに用いられる。
高さ30~60㎝、根茎がある。葉は細く、小さく、披針形、芳香がある。 多数の花が葉腋に輪生し、大きく密集する。苞は掌状。萼は萼片が4個、萼片の先端に帯白色の刺がある。花は淡青色~淡紫色で、白花品種‘Alba’もある。雄しべは花冠よりも長い。種子をほとんど生産しないため、ほとんどの繁殖は根茎によって栄養繁殖される。2n=36, 26(x=12)。
6 Mentha dahurica Fisch. ex Benth. ダフリアハッカ
中国(黒龍江省、吉林省、内モンゴル)、ロシア原産。中国名は兴安薄荷 xing an bo he。英名はDahurian thyme。標高約600mの牧草地に生える。POWO、Flora of Chinaでは日本を分布域に含めている。
多年草、根茎がある。茎は直立し、長さ30~60㎝、まれに分枝し、基部には葉がつかず、後屈しる微軟毛があり、ときに紫色を帯びる。葉柄は長さ7~10㎜、葉身は卵形~長円形、約・長さ3㎝×幅1.3㎝、無毛またはまばらに微軟毛があり、下面には脈上に腺があり、基部は広楔形~円形、縁は浅い円鋸歯状鋸歯からほぼ全縁になり、先は鋭形~鈍形。輪散花序は花が5~13個つき、通常2段で、先端の頭状花序は花葉より長い。花序柄は長さ2~10㎜、微軟毛がある。小苞は線形で上向きに湾曲する。小花柄は長さ1~3㎜。萼は筒状鐘形、長さ約2.5㎜、脈が目立ち、微軟毛がある。萼歯は広三角形、長さ約0.5㎜、先は鋭形。果時の萼は広鐘形になる。花冠は帯赤色またはバラ紫色を帯び、長さ約5㎜、無毛、喉部は微軟毛があり、基部から徐々に広がる。花冠裂片は円形、長さ約1㎜、先は鈍形、上側の裂片は顕著に2裂する。前側の雄しべは花冠と等長~わずかに長い。子房は褐色で無毛。花期は7~8月。
7 Mentha diemenica Spreng. スレンダーミント
synonym Mentha affinis (Hook.f.) Druce
synonym Mentha repens (Hook.f.) Briq.
synonym Mentha serpyllifolia Benth.
オーストラリア(ニューサウスウェールズ州、クイーンズランド州、南オーストラリア州、タスマニア州、ビクトリア州)固有種。英名はslender mint。葉をお茶や夏の飲料、料理に用いるほか、薬用にも使われる。
多年草、マット状になり、根茎があり、しばしば斜上~平伏する枝を生じ、枝は短く反り返った単毛で密に覆われる。葉柄は長さ0~3㎜、葉身は角張った卵形、まれに狭卵形または楕円形、長さ6~20㎜×幅4~12㎜、先は鈍形または円形、縁は全縁またはときに離れた浅い鋸歯がある。花は1対の葉の葉腋に3~8個の花がつき、輪散花序を形成する。萼は13本のうねがあり、長さの少なくとも 3分の2は癒合し、萼片は尖っているかまたは広鋭形、外面は短毛で密に覆われ、縁には長い毛がある。花冠は長さ4~7㎜、紫色で、しばしば淡色になり、4深裂する。葯は突き出す。花期は一年中。
8 Mentha japonica (Miq.) Makino ヒメハッカ 姫薄荷
日本固有種。北海道、本州に分布する。英名はJapanese wild mint。低地~山地の湿地に生える。ハッカと同じ芳香がある。
多年草、高さ20~40㎝。細長い地下茎がある。茎の節に短い微毛がある以外は全体に毛がなく、草全体に芳香がある。茎は直立し、分枝する。葉は十字対生し、葉柄は極短く、葉身は卵状長円形、長さ10~20㎜×幅3~8㎜、全縁で、先は鈍形~円形、両面に腺点がある。花は枝先や上部に集まってつく。萼は5裂し、腺点はあるが毛はなく、萼片の先は尖らない、花冠は長さ約3.5㎜、淡紅紫色または白色、4裂する。雄しべは4本、突き出る。花托には毛が密生する。分果は扁平でほぼ円形。花期は8~10月。
8-1 Mentha japonica (Miq.) Makino f. prostrata Sugim. ハイヒメハッカ 這姫薄荷
茎は匍匐し、先のみが斜上する。9 ⑩ Mentha longifolia (L.) L. ナガバハッカ 長葉薄荷
ユーラシア、アフリカ原産。英名はwild mint, silver mint, horse mint, brook mint, long-leaved mint, Biblical mint。中国名は欧薄荷 ou bo he
茎は灰白軟毛(canescent)がある。葉は長さ1.5~4(7)。葉柄は長さ0~2㎜。葉身は披針状卵形、普通、鋸歯縁、基部は漸尖、先端は鋭形。花序は穂状、基部につく苞葉は卵形~披針状線形。萼は長さ1~2㎜、普通、灰白軟毛がある。花冠は長さ2~3㎜、白色~ピンク色~紫色。花期は7~10月。2n=24
10 ①Mentha pulegium L. メグサハッカ 目草薄荷
ヨーロッパ原産。英名はpennyroyal, European pennyroyal, pennyrile, squaw mint, mosquito plant, pudding grass。中国名は唇萼薄荷 chun e bo he 。別名はペニーロイヤル、ペニロイアルハッカ。
茎は傾伏~斜上、長さ10~30㎝、短毛がある。葉は長さ0.5~2.5㎝、茎の上部では小さくなる。下部の葉は短柄、茎葉は普通、ほぼ無柄。葉身は狭卵形~披針形、全縁~細鋸歯、基部は漸尖~鈍形、先端は普通、円形。葉裏は短毛がある。花序は腋生、頭状、基部につく葉又は葉状の苞は反り返る。萼は長さ2.5~4㎜、外面に短毛があり、内面に長毛がある。花冠は長さ5~8㎜、紫色~ラベンダー色、縁に白色の軟毛がある。雄しべは花冠裂片から突き出る。花期は7~10月。2n=20 ,30 ,40。
11 Mentha requienii Benth. コルシカミント
コルシカ島、イタリア、サルデーニャ島原産。英名はCorsican mint。乾燥に弱く、湿った日陰に生える。観賞用やグランドカバーに栽培されるほか、クレムドゥモントゥ(Crème de menthe)などのリキュールの香り付けやサラダなどの食用、解熱、駆風などの薬用、消毒、ネズミ除けなどに用いられる。精油の主成分はプレゴンを約80%含有する。
常緑多年草。低く匍匐性で、コケのように広がり、高さ1.3~2.5(~10)㎝。ペパーミントの強い香りがある。茎は糸状。葉は小さい楕円形、長さ2~7㎜、通常3㎜程度、鮮やかな緑色、光沢がある。花は茎頂付近の葉腋に双生し、花はライラック色。花期は6~8月。
12 ⑧ Mentha spicata L. ミドリハッカ 緑薄荷
synonym Mentha viridis (L.) L.
ヨーロッパ原産。英名はspearmint, garden mint, common mint, lamb mint, mackerel mint。中国名は留兰香 liu lan xiang。別名はスペアミント。
茎は30~100(120)㎝、無毛。葉は長さ1~6㎝。葉柄は長さ0~2㎜。葉身は披針形~披針状楕円形、平滑~しわがあり、基部は円形~鈍形、普通、鋸歯縁、先端は鋭形~尖鋭形。花序は穂状、基部につく苞葉は卵形~披針状線形。萼は長さ1.5~2.5㎜、普通、無毛。花冠は長さ3~4㎜、白色~ピンク色~ラベンダー色。花期は7~10月。2n=48。
12-1 Mentha spicata L. 'Crispa' オランダハッカ 和蘭陀薄荷
synonym Mentha viridis (L.) L. var. crispa Benth.
synonym Mentha crispata Schrad. ex Willd. [Flora of China]
栽培種。M. spicata Linnaeus の栽培品種。英名はcurly mint, crinkled mint, wrinkled-leaf mint。中国名は皱叶留香 zhou ye liu lan xiang 。中国、ヨーロッパで栽培されている。ドイツではスペアミントオイルの原料とされる。若い芽と葉は食用とされる。根茎を持つ。茎は直立し、長さ30~60㎝、紫色を帯び、無毛。葉は無柄またはほぼ無柄、卵形~卵状披針形、長さ2~3㎝×幅1.2~2㎝、紙質、基部は円形~浅い心形、縁には鋸歯があり、先は鋭形。輪散花序は頂生の穂状花序になり、長さ2.5~3㎝×幅約1㎝、連続または基部で±断続する。苞葉は線状披針形、萼よりわずかに長い。小花柄は長さ約1㎜。萼は鐘形、長さ約1.5㎜、ほぼ無毛、腺毛、不明瞭な5脈がある。萼歯は三角状披針形、長さ約0.1㎜、縁毛がある。花冠は帯紫色、長さ約3.5㎜、無毛、花冠筒部は長さ約2㎜。花冠裂片はほぼ均等で、先は凹形。子房は褐色、無毛。小堅果は褐色、三稜形、卵形で、長さ約0.7㎜、まばらに腺がある。
13 ⑪ Mentha × rotundifolia (L.) Huds. アップルミント
ヨーロッパ原産。英名はapplemint, apple mint , false apple mint, Egyptian Mint, roundleaved mint。別名はマルバハッカ。
マルバハッカ(Mentha suaveolens)とナガバハッカ(Mentha longifolia)の自然交雑種。
茎は30~100㎝、普通、短毛がある。葉は長さ2.6~6(8)㎝。葉柄は長さ0~2㎜。葉身は卵形、基部はほぼ漸尖~ほぼ円形、縁は普通、鋸歯状、先端は尖る。花序は穂状、上部の3~5節に束状につき、基部につく苞葉は卵形~披針状線形。萼は長さ1.5~2.5㎜、縁毛がある。花冠は長さ2.5~3.5㎜、白色~ピンク色~紫色。雄しべは普通、花冠裂片から突き出ない。花期は7~10月。2n=24。ケンタッキーカーネルミント(Mentha ×villosa)との区別は困難。[The Jepson Herbarium]
14 ⑨ Mentha suaveolens Ehrh. マルバハッカ 丸葉薄荷
synonym Mentha rotundifolia auct. non (L.) Huds.
ヨーロッパ南部(ベルギー、ブルガリア、東エーゲ海諸島、フランス(コルシカ島)、ドイツ、イギリス、ギリシャ、イタリア(サルデーニャ島、シチリア島)、オランダ、ポルトガル(アゾレス諸島、マデイラ諸島)、スペイン(カナリア諸島、バレアレス諸島)、スイス、トルコ)、北アフリカ(アルジェリア、チュニジア、モロッコ)原産。英名はpineapple mint, round-leaved mint, apple mint , woolly mint。中国名は圆叶薄荷 yuan ye bo he。別名はパイナップルミント。
茎は50~100㎝、軟毛がある。葉は長さ1~4㎝。葉柄は長さ0~2㎜。葉身は卵形~楕円形~広楕円形、しわがあり、基部はほぼ円形、縁は円鋸歯状~鋸歯状、葉裏は綿毛があり、多数の分枝毛がある。花序は穂状、基部につく苞葉は卵形~披針状線形。萼は長さ1~1.5㎜、短毛がある。花冠は長さ2~3㎜、白色~ピンク色。雄しべは花冠裂片より突き出る。花期は7~10月。2n=24。
15 ④ Mentha × gracilis Sole アメリカハッカ 亜米利加薄荷
synonym Mentha arvensis var. gracilis (Sole) Nyman
synonym Mentha gentilis var. gracilis (Sole) Wahlenb.
synonym Mentha x cardiaca Baker
ヨーロッパ原産。英名はginger mint , bushy mint , cardiac mint , Scotch mint , Scotch spearmint。別名はジンジャーミント、スコッチスペアミント。強いスペアミントの香りがある。
茎は高さ30~100㎝、直立し、普通、無毛、暗赤色を帯びる。葉は対生し、葉柄は長さ2~8㎜、葉身は長さ1.5~6(10)㎝、卵形~披針形、しわがあり、基部は漸尖し、普通、鋸歯縁、まれに鈍い鋸歯となり、先は鋭形。花序は普通、腋生で仮輪(輪散花序)が離れ、ときに穂状花序のようになり、頂生する。穂状花序となる場合、下部の仮輪が離れ、最上部の2~3個の仮輪が密集することが多い。茎の上部ほど葉が小さくなって、苞葉状になり、花序を抱き、卵形~披針状線形。小さな小苞が小花柄の基部につく。萼は長さ1.5~3㎜、普通、無毛~縁毛、先が5裂し、萼歯は狭三角形。花冠は長さ2.5~6㎜、白色~ピンク色~紫色。雄しべは欠くものもあり、4本、普通、花冠から突き出ない。雌しべは長く花冠から突き出る。柱頭は2分岐。果実は分離果、4分果。普通、結実しない。花期は7~10月。2n=54 ,60 ,61 ,72 ,84 ,96 ,108 ,120(Jepson eFlora)。
16 ⑦ Mentha × piperita L. コショウハッカ 胡椒薄荷
ヨーロッパ原産。英名はpeppermint 。中国名は辣薄荷 la bo he。別名はペパーミント。
ミドリハッカ(Mentha spicata)とヌマハッカ(Mentha aquatica)の雑種。
茎は30~50㎝、普通、無毛(Flora of China:紫赤色)。葉は長さ2.5~5(7)㎝。葉柄は長さ3~10㎜。葉身は卵形~披針形(披針形~卵状披針形)、しわがあり、基部は漸尖~ほぼ円形、普通、鋸歯縁、先端は鋭形、葉裏は普通、無毛。花序は頭状~穂状、上部の3~5節に束生し(Flora of China:頂部の穂状で基部は間隔が開く)、基部につく苞葉は卵形~披針状線形。萼は長さ2.5~4㎜、普通、無毛又は縁毛がある(Flora of China:萼歯は線状錐形、長さ約1㎜)。花冠は長さ3.5~6㎜、白色~ピンク色~紫色。雄しべは普通、花冠から突き出ない。(分果は褐色、倒卵形、長さ約0.7㎜、普通、結実しない)。花期は7~10月。2n=72, 84, 108。
17 ⑤ Mentha×smithiana R.A. Graham セイタカハッカ 背高薄荷
栽培種で野生化している。英名はred stem mint , red raripila mint , tall mint。別名はトールミント。ヌマハッカ(Mentha aquatica)×ヨウシュハッカ(Mentha arvensis)×ミドリハッカ(Mentha spicata)の雑種
茎は30~100㎝、普通、無毛。葉は長さ2.5~6(8)㎝。葉柄は長さ0~10㎜。葉身は卵形~披針形、基部は漸尖~ほぼ円形、縁は普通、鋸歯状、先端は尖る。葉裏は普通、無毛。花序は普通、腋生、ときに茎頂に穂状、基部につく苞葉は卵形~披針状線形。萼は長さ2.5~4㎜、普通、無毛又は縁毛がある。花冠は長さ3.5~6㎜、白色~ピンク色~紫色。雄しべは普通、花冠裂片から突き出ない。花期は7~10月。2n=54 ,98 ,108 ,120。
18 Mentha × verticillata L. ウォールミント
ヨーロッパ原産。英名はwhorled mint。別名はトールミント。ヌマハッカ(Mentha aquatica)とヨウシュハッカ(Mentha arvensis)との交雑種。海岸、川岸、溝、湿った草地に生える。
多年草、高さ20~70㎝。茎は枝分かれし、毛が多様で、赤みがかっていることが多い。葉は対生し、葉柄があり、葉身はかなり幅広く、楕円形、先はしばしば鈍形、縁は鋸歯縁。通常は不完全な雌花のみ。花茎は長い。輪散花序は離れ、密に半球形に花がつく。花冠はわずかに左右相称、帯薄赤色、長さ約4㎜、4裂片があり、最上部の裂片は他の裂片よりも幅が広く、先には切れ込みがある。萼は狭い鐘形、5裂し、溝があり、明瞭な10脈があり、毛はわずか。萼片は三角形。雄しべは4本、ほぼ等長で、水平。雌しべは2個の癒合した心皮からなる。果実は成長しない。花期は7~8月。br>
19 ⑫ Mentha × villosa Huds. ケンタッキーカーネルミント
ヨーロッパ原産。英名はapplemint , Bowles mint , mojito mint。別名はアップルミント、ボールズミント。
マルバハッカ(Mentha suaveolens)とミドリハッカ(Mentha spicata)の交雑種。
茎は30~100㎝、普通、灰白軟毛がある。葉は長さ2~6(8)㎝。葉柄は長さ0~2㎜。葉身は卵形(楕円形)、基部はほぼ漸尖、縁は普通、鋸歯状、先端は尖る。花序は穂状、基部につく苞葉は卵形~披針状線形。萼は長さ1.5~2.5㎜、普通、灰白軟毛がある。花冠は長さ3~4㎜、白色~ピンク色~紫色。雄しべは普通、花冠裂片から突き出ない。花期は7~10月。2n=36。Mentha ×rotundifoliaとの区別は非常に難しい。
【ハッカ属の検索表(Jepson eFlora)】神奈川県植物誌の検索表で補足
1. 萼の内部に環状に毛がある。花のつかない茎は傾伏し、花茎は直立する.....①メグサハッカ(ペニーロイヤル) Mentha. pulegium .
1' 萼の内部は無毛又は毛がまばら。茎はすべて直立する。2. 花序が普通、腋生
3. 葉は大きさがほぼ同じ。葉身は普通、卵形。普通、刺激的な香り
(萼歯は正三角形で先が細くならない)
.....②ヨウシュハッカ Mentha arvensis .
3' 葉は上部で小さくなる。葉身は普通、線形~披針形。普通、ペニーロイヤルかスペアミントの香り
4. 葉は茎の上部で次第に小さくなる。
(萼歯は狭い三角形で、先が細くなる。)
・普通、ペニーロイヤルの香り
.... ③アメリカンコーンミント Mentha canadensis .
・ハッカの香りgarden mint ( スペアミントの香りに近いといわれる)
....③’ハッカ Mentha canadensis var. piperascens .
4' 葉は茎の上部で極端に小さくなる。普通、スペアミントの香り (果実の香り)
5. 萼は長さ1.5~3㎜、萼歯は三角形
....④アメリカハッカ (ジンジャーミント、スコッチスペアミント) .
Mentha ×gracilis .
5' 萼は長さ2.5~4㎜、萼歯は鋭く、細くなる。
.....⑤red stem mint (red raripila mint , tall mint) .
Mentha×smithiana .
2' 花序が頂生 6.花序が普通、頭状、先の3~5節に束生
7. 葉身は卵形、ラベンダーと柑橘類の香り
.... ⑥ヌマハッカ .Mentha aquatica .
7' 葉身は卵形~披針形、普通ペパーミントとスペアミントの香り
..... ⑦コショウハッカ(ペパーミント) Mentha ×piperita .
6' 花序が穂状8. 葉にしわがある。
9. 葉身は披針状楕円形、無毛 (葉裏に分枝毛がある)。
スペアミントの香り
.... ⑧ミドリハッカ(スペアミント) Mentha spicata (2) .
9' 葉身は卵形、葉裏に分枝毛がまばらにある。果実の香り
.... ⑨マルバハッカ(パイナップルミント) .
Mentha suaveolens .
8' 葉にしわが無く、ときに深い脈がある 10. 葉身が披針形~披針状楕円形
11. 葉身の中部の幅が最も広い。毛が分枝しない。
完全な葯は長さ0.3~0.4㎜、普通、かび臭い香り
..... ⑩ナガバハッカ Mentha longifolia .
11' 葉身の基部近くが最も広い。ときに分枝した毛がある。完全な葯は長さ0.4~0.5㎜、普通、スペアミントの香り
.....⑧ミドリハッカ(スペアミント) Mentha spicata(2) .
10'葉身が楕円形~卵形12. 萼は縁毛がある。完全な葯は4個。
葉身は基部が漸尖~ほぼ円形
花冠は長さ2.5~3.5㎜
....⑪アップルミント .
Mentha ×rotundifolia .
12' 萼は普通、灰白軟毛があり、普通、完全な葯は無い葉身は基部が漸尖。花冠は長さ3~4㎜。
...⑫ケンタッキーカーネルミント .
(アップルミント、ボールズミント) .
Mentha ×villosa .
ハッカの学名
日本のハッカ(狭義ニホンハッカ) は東アジアに分布し、葉が細長く、萼歯が細く尖り、狭三角状錐形。学名はMentha canadensis L. var. piperascensとされていたが、最近では変種に分けず、北アメリカに分布するアメリカコーンハッカと東アジアのハッカをまとめてMentha canadensis とする見解となっている。Mentha canadensis (American wild mint , american cornmint) は北アメリカに分布し、2n=96(8倍体)であり、ヨーロッパなどに分布するMentha arvensisは2n=72である。両者は形態的な差異も認められるが、一定でなく、ときに中間的なものも見られる。しかし、細胞学、地理学、植物化合物、交配試験などでは2種の差が認められ、Mentha canadensisは Mentha arvensis と Mentha longifolia (horse mint) の古い時代の交雑起源と推定されている。.東アジアに分布するハッカも2n=96であり、広義にMentha canadensisに含められるようになった。
<ニホンハッカ> Mentha canadensis var. piperascens( Mentha arvensis var. piperascens)
ハッカの栽培種は多く、ニホンハッカ(ワシュハッカ)とされているものも多いが、その中に純日本産のものは少なく、中国産との交雑品種やスペアミント系との交雑品種もある。中国産のものは葉幅が狭く、萼歯も幅がやや広く、香りがペパーミントに近いといわれる。ニホンハッカは自生種だけを指す呼び名ではなく、国外で栽培されたものも含めた呼び名である。
ハッカ(ニホンハッカ)Mentha canadensis L. var. piperascens はメントール含有量が多く、強いハッカ(メントール)臭があり、全体に軟毛が多い。地下茎があり、茎は4稜形、高さ20~60㎝程度。茎には曲がった毛がある。葉は対生し、葉柄が仮輪より長い。葉身は長さ2~10㎝、幅0.8~3㎝の卵状披針形~長楕円形、先が尖る。葉縁に不規則な鋸歯がある。葉には小さな腺点があり、伏毛がある。輪散花序は葉に腋生し、苞は小さいか又はない。花を多数、密集して仮輪をつくる。仮輪と仮輪の間は離れる。萼は5裂し、萼歯は細く尖り、狭三角状錐形、長さ約1㎜。花冠は長さ4~5㎜、淡紫色。2n=96
<アメリカンコーンハッカ>狭義のMentha canadensis
北アメリカの自生種は葉幅が狭く、鋸歯が鋭く、萼歯が鋭い。
香りは産地や品種で異なり、北アメリカ産にはペニーロイヤルの香りのものやペパーミントの香りのものもあり、日本産のものとは香りが異なる。
<ヨウシュハッカ>
ヨウシュハッカ Mentha arvensis L. (field mint, corn mint ,wild mint)はヨーロッパ、アジアの中央~西部、インド、ネパールに分布する。平地の湿った場所に生える。北アメリカに帰化し、日本でも観賞用に栽培されたものがまれに帰化している。U.S.A.内ではMentha canadensisと同種として扱われ、Mentha canadensisを指す解説のものが多い。以前はハッカ類の多くはMentha arvensisnの変種などに分類されており、ヨーロッパ原産のものはvar. arvensisとして区別されていた。
茎は高さ10~50㎝。葉は長さ2~4(8)㎝、葉柄は長さ3~8㎜、葉身はしわが無く、普通、卵形(~長楕円状披針形)、(鋭い)鋸歯縁、先は鋭形。花序は葉腋につき、苞はわずかか又は無い。萼は長さ1.5~2.5㎜、普通、無毛又は萼歯に縁毛がある。(萼は正3角形、短毛があり、萼歯は筒の1/3~1/4長)。花冠は長さ2.5~3.5㎜、白色~ピンク色~紫色。ときに完全雄性不稔になる。2n=72。
var. arvensis (var.agrestis , var.praecox)
葉の基部が円形、葉柄が仮輪より長い。
var. villosa 葉の基部が楔形、葉柄が仮輪と同長か短い
var. villosa はMentha arvensisとMentha canadensis var. glabrataに振り分けられるようになった。Mentha canadensis var. glabrataはペパーミントの香りがある。現在はMentha canadensisに含められている。
var. canadensis ⇒Mentha canadensis
<ハッカとヨウシュハッカの区別>
ハッカMentha canadensisとヨウシュハッカMentha arvensisに分けられているが、以前はすべてMentha arvensisの変種や亜種などに分類されていたため、混乱を生じやすい。また、Flora of north America などでは両者を同種とする見解であり、アメリカでMentha arvensisとしているものはほとんどがMentha canadensisである。
特徴は次のとおり
ハッカ(2n=96)
①葉が卵状披針形~長楕円形(北アメリカ産は線形~披針形)
②葉柄が長いものが多い、長さ2~10㎜(北アメリカ産5~25)
③萼歯は狭い三角形で、先が細くなる。
ヨウシュハッカ(2n=72)
①葉が卵形
②葉柄がやや短い、長さ3~8㎜
③萼歯は正三角形で、先が細くなならない。
ハッカ栽培
日本のハッカ栽培は江戸時代に岡山県で始まり、後に山形県、広島県など各地に広がり、明治時代に北海道で大規模な栽培が行われるようになった。昭和の初期には日本が世界で最大の生産量になったこともある。戦後は海外での栽培が多くなり、日本ではほとんど栽培されなくなり、現在では北海道で栽培されているだけである。ニホンハッカはL‐メントールの含有量が多く、品質がよく、世界で広く栽培されている。ハッカ類には大きく分けて、ペパーミント系と スペアミント系があり、ハッカはペパーミント系である。ハッカ類から採取されるハッカ油には多種の芳香成分が含まれ、その成分の違いにより香りや風味が異なる。ペパーミント系はL-メントールが主成分であり、ハッカはL-メントール(ハッカ脳と呼ばれる)がハッカ油に65~85%含有し、ペパーミント系の中で最高の含有量であり、ハッカの香りが強い。また、メントフランを含まないことでペパーミントとは区別され、味も異なり、スペアミントの味に近いともいわれる。メントフランは沸点が低く、香り立ちがよい芳香成分であり、ペパーミントはハッカとは違うペパーミントの香りがする。 スペアミント系はL-カルボンが主成分であり、スペアミントの香りといわれる。最近では品種改良が進み、種々の香りのものがつくられ、系統に分けるのも難しくなってきている。参考
1) Flora of ChinaMentha
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=120248
2) The Jepson HerbariumMentha pulegium
https://ucjeps.berkeley.edu/eflora/eflora_display.php?tid=33206
3) Plants of the World Online | Kew ScienceMentha
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30016176-2
4) GRINMentha
https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxonomygenus?id=7464
5) 日本メディカルハーブ協会ミントの植物学と栽培 木村正典
https://www.medicalherb.or.jp/archives/165703
6) 育種学雑誌 1963 年 13 巻 1 号 p. 31-41Mentha gentilis L. に関する研究 池田 長守, 清水 純夫, 宇渡 清六
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsbbs1951/13/1/13_1_31/_article/-char/ja/