バクチノキ 博打の木

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Flora of Mikawa

バラ科 Rosaceae サクラ属 ウワミズザクラ亜属

別 名 ビランジュ
中国名 大叶桂樱 da ye gui ying
学 名 Prunus zippeliana Miq.
 synonym Laurocerasus zippeliana (Miq.) Browicz

 synonym Prunus zippeliana Miq. form. infravelutina (Makino) Sugim.

バクチノキの枝先
バクチノキ花
バクチノキの果実
バクチノキの葉の鋸歯裏
バクチノキ葉柄
バクチノキの幹
バクチノキ
バクチノキ花
バクチノキの葉表
バクチノキの葉裏
花 期 9月
果 期 5月
高 さ 10~15m
生活型 常緑高木
生育場所 やや湿り気のある場所
分 布 在来種 本州(関東南部以西)、四国、九州、沖縄、台湾、中国、ベトナム
撮 影 西尾市  14.10.3.
バクチノキの和名は樹皮が次々と剥がれ落ち、博打に負けて身ぐるみ剥がれるたとえから。バクチノキは太平洋の沿海地に多く、千葉県鴨川市平塚の大山不動の参道群生地が自生の北限とされている。蘭方医のシンボルともいわれ、葉から作られる杏仁水(バクチ水)が咳止め薬として用いられた。幕末の頃、蘭方医が植えたものが西尾市内にあり、その近くの上永良神明社にも2本のバクチノキがある。上永良神明社の境内には国の天然記念物に指定された愛知県内最大のスダジイの古木もある。豊橋市嵩山町の蛇穴の近くには自生らしいバクチノキ数本が点在している。
 幹は灰褐色、平滑、樹皮が鱗片状に剥がれ、まだらになる。葉は互生し、長さ10~20㎝、幅4~7㎝の長楕円形、先は尖り、縁は裏側に反り返り、鋭鋸歯、鋸歯の先に腺がある。葉の基部は広楔形~円形。葉は無毛、葉裏は淡緑色。葉柄は長さ約1㎝、上部に密腺が2個つく。葉腋から長さ約3㎝の総状花序を出し、花を多数つける。花序の軸や小花柄には短毛がある。花は直径6~7㎜。花弁は白色、5個、長さ約2㎜。雄しべは30~50個、長く突き出る。萼は浅い杯型。果実は長さ約1.5㎝の歪んだ長楕円形。
 セイヨウバクチノキ Prunus laurocerasus( synonym Laurocerasus officinalis) はヨーロッパ、西アジアに分布し、常緑低木。花期が4月。

 広義のサクラ属はサクラ亜科(subfamily Amygdaloideae)のサクラ属1属だけのサクラ連(tribe. Amygdaleae)に属す。ウワミズザクラ類は最近の系統解析の研究により広義のサクラ属(genus Prunus) 中のウワミズザクラ亜属 (subgenus Padus)に分類され、旧バクチノキ属(Laurocerasus)もウワミズザクラ亜属に含められた。Kewscience(POWO) , Flora of America(FNA) , GRINはこれによる。
 YListではサクラ連(tribe. Amygdaleae)をスモモ属(genus Prunus)、サクラ属(genus Cerasus )、ウワミズザクラ属(genus Padus)、バクチノキ属(genus Laurocerasus)に分けている。

サクラ亜属を含む広義のサクラ属 genus Prunus

 被子植物(Angiosperm)-真正双子葉類(Eudicots)-コア真正双子葉類(Core eudicots)-バラ上群(Superrosids)-バラ類(Rosid)-窒素固定クレード(nitrogen-fixing clade)-バラ目(Rosales)-バラ科(Rosaceae)-サクラ亜科 A(Amygdaloideae =スモモ亜科Prunoideae)-サクラ連 Amy(tribe Amygdaleae)-サクラ属(genus Prunus)
 低木または高木、ときにクローン性の茂みを形成し、直径0.1~4mになり、無毛または毛がある。茎は1~20+本。樹皮は帯赤色、赤褐色、灰褐色、または暗灰色。普通、長いシュートと短いシュートが存在し、刺は有または無。葉は落葉性または宿存性、茎葉。托葉は早落性、線形~披針形、縁は鋸歯状から裂片状、普通、腺がある。葉柄は有または無、普通、葉身近くに腺体がある。葉身は楕円形、長円形、ほぼ円形、卵形、披針形、線形、倒卵形、倒披針形、へら形、扇形または菱形、中肋に沿って折り畳まれることはめったになく、長さ0.5~18㎝、膜質~革質、縁は平ら、普通、全縁または歯があり、ときに波打ち、歯は普通、腺があり、ときに腺が無い。花序は短いシュートの上または前年の葉に腋生し、花が1~64(~90)[~100]個つき、総状花序、散房花序、散形状に束生し、花は2個束生または単生。苞はときに有り、小苞がある。小花柄は普通あるが、ときに欠く。花は普通、両性、ときに単性(その後、普通、雌雄異株、ときに雌雄混株(andropolygamous)、花は葉の展開前または展開と同時に咲き、直径4~40mm。花托筒は長さ1.5~8㎜、外面は無毛または有毛。萼片は5個、直立~後屈し、普通は三角形、半円形、卵形、または長円形、まれに卵状楕円形、披針形、または倒卵形。花弁は5個(観賞用の重弁花では~50+個)、通常は白色~ピンク色または暗ピンク色、ときに帯黄色、普通、ほぼ円形~楕円形または倒卵形、ときに長円形、まれに卵形、倒披針形、または菱形、基部には普通、爪部がある。雄しべは10~3本、普通は花弁と同長またはそれより短く、ときに長くなる。核果は1個、緑黄色~帯黄色、またはオレンジ色~明るい赤色~暗赤色、赤褐色、または暗紫色~黒色、球形~卵形~卵状長円形~楕円形、または倒卵形、長さ5~30(~80)㎜。花托筒は脱落性、まれに果時に宿存する。萼片は花托筒と一緒にで落ちる。中果皮は普通、肉質、ときに革質~乾燥し、まれに縫合糸に沿って裂け、核(石)が現れる。内果皮は球形~卵形または楕円形~紡錘形の核(石)を形成し、ときに側部が平らになる。種子は1個。x=8。(FNA)
 世界に約340種あり、汎存種(cosmopolitan)。

広義のサクラ属 genus Prunusの下位分類 [Shi etc.(2013)]

 ウワミズザクラ亜属(subgen. Padus)、サクラ亜属(subgen. Cerasus)、スモモ亜属(subgen. Prunus)の3亜属に分類される。

Prunus subgen. Padus(ウワミズザクラ亜属)

 花序は総状花序。単系統群では無い(参考10)。 Prunus mahalebとPrunus maackii(ウラボシザクラ)はsubgen. Cerasusに移動された。
(1) Laurocerasus(旧バクチノキ亜属)英名はcherry laurels:タイプ種はセイヨウバクチノキ(Prunus laurocerasus)
 ほとんどが常緑(他の亜属は落葉)
 腋芽は単生。花期は早春。小花柄は短い。花は総状花序につき、葉のある新芽にはつかない。核果に溝がない。核は平滑。
 Prunus amplifolia - Prunus brittoniana - Prunus caroliniana - Prunus ilicifolia(holyleaf cherry) - Prunus integrifolia - Prunus javanica - Prunus laurocerasus(セイヨウバクチノキ:cherry laurels) - Prunus lusitanica - Prunus myrtifolia - Prunus oblonga - Prunus occidentalis - Prunus oleifolia - Prunus phaeosticta(クロボシザクラ) - Prunus reflexa - Prunus spinulosa(リンボク) - Prunus tucumanensis - Prunus undulata - Prunus zippeliana(バクチノキ)
(2) Maddenia(旧マッデニア属)
 冬芽は大きい長円形~卵形、数個の鱗片がある。花期は春~晩春。花序は総状花序。小花柄は短い。核果は長円形、平滑。核は骨質、卵形、3角(かど)があり、先は鋭形。
 Prunus fujianensis - Prunus himalayana (Himalayan false bird cherry) – Prunus hypoleuca (false bird cherry) - Prunus hypoxantha(Sichuan false bird cherry) - Prunus incisoserrata)
(3) Padus(旧ウワミズザクラ亜属)英名はbird cherries:タイプ種はエゾノウワミズザクラ(Prunus padus)
 腋芽は単生。花期は晩春。小花柄は短い。花は総状花序につき、葉の多い新芽につく。核果に溝がない。核は平滑。
 Prunus brachypoda – Prunus brunnescens – Prunus buergeriana(イヌザクラ) – Prunus cornuta(Himalayan bird cherry) ‐ Prunus grayana(ウワミズザクラ) – Prunus gyirongensis(entire-leaved bird cherry) - prunus maackii(ウラボシザクラ amur chokecherry) - Prunus napaulensis(Nepalese bird cherry) - Padus nakatakei(モロツカウワミズザクラ) - Prunus obtusata(シマウワミズザクラ) - Prunus padus(エゾノウワミズザクラ bird cherries) – Prunus perulata – Prunus serotina(black cherry) – Prunus ssiori(シウリザクラ) – Prunus stellipila – Prunus velutina – Prunus virginiana(chokecherry) – Prunus wilsonii(Wilson's bird cherry) (4) Pygeum(旧ピジウム亜属)
 常緑。花序は総状花序。
 Prunus africana(African cherry) - Prunus arborea - Prunus ceylanica - Prunus costata - Prunus crassifolia - Prunus dolichobotrys - Prunus gazelle-peninsulae - Prunus grisea - Prunus lancilimba - Prunus malayana - Prunus marsupialis - Prunus oligantha - Prunus oocarpa - Prunus polystachya - Prunus pullei - Prunus schlechteri - Prunus turneriana - Prunus wallaceana

Prunus subgen. Cerasus(サクラ亜属)

 英名はtrue cherries;タイプ種はスミミザクラ(Prunus cerasus)
 腋芽は単生。花期は早春。小花柄は長い。花は散房花序につき、葉のある新芽にはつかない。核果は溝がない。核は平滑。
 Cerasus 亜属は真のサクランボ(true cherries)のみで構成されている。Microcerasus ユスラウメ節(dwarf cherries) はこの亜属に属さない。真のサクランボは、各葉腋に芽を1個だけ付けるが、Microcerasus(dwarf cherries) は、各葉腋に3個の芽を付ける (モモとアーモンドで観察される特性状態)。北アメリカのdwarf cherriesは、真のサクランボよりもプラムに似ていることが知られていた (Catling et al. 1999)。dwarf cherriesをプラム、アプリコット、さらにはモモと交配させる方が、真のサクランボと交配するよりも簡単である (Garley 1980; Kataoka et al. 1988)。dwarf cherriesは、果物の種類がプラムに似ています。dwarf cherriesを真のサクランボと一緒に系統配置することを支持する確固たる証拠はこれまでのところ見つかっていない。分子解析データは、P. mahaleb L. と P. maackii Rupr がCerasus 亜属の構成員であることをサポートしている。これらの2種は、散房花序が長いため、Padus 亜属のメンバーとして扱われた。 Prunus mahaleb は真のサクランボに似ていると報告されており (Krüssmann 1986)、亜属 Cerasus のほとんどの種と同様に2倍体であり (González Zapatero et al. 1988)、一方、調査された亜属 Padus の種はすべて4倍体である (Goldblatt and Johnson)。 1979–2012)。 P. maackii とサクランボの類似性は形態学によって裏付けられており (Li and Jiang 1998)、この種は Cerasus 亜属の種である Prunus maximo wiczii Rupr. と自然交雑種を形成できることが報告されている。亜属 Cerasus における種の相違は、重要ではないように思われる。これは、跳躍的種分化(quantum speciation)またはマーカーの低解像度が原因である可能性がある。種間交雑 (Ohta et al. 2007) は、この亜属の分類を複雑にしている。亜属はこの研究では十分に示されていなかったため、近い将来、亜属内の系統関係を解決するために、より広範な種のサンプリングとより多くの様々な遺伝子が使用されると期待される(参考11)。

Prunus subgen. Prunus(スモモ亜属) [Shi etc.(2013).]

(1) sect. Prunus(スモモ節)[旧スモモ亜属]: Old World plums:タイプ種はセイヨウスモモ( P. domestica)
 腋芽は単生。花期は早春。小花柄がある。花は葉のある新芽(シュート)にはつかない。核果は片側に溝がある。核は粗い。
約40種。
 P. blireiana – P. bokhariensis – P. cerasifera(ベニバスモモ=ミロバランスモモ) – P. cocomilia – P. consociiflora – P. domestica(セイヨウスモモ) – P. fruticans – P. ramburii – P. salicina(スモモ) – P. simonii(サイモンスモモ) – P. spinosa(スピノサスモモ) – P. ursina – P. ussuriensis(マンシュウスモモ) – P. vachuschtii
(2) sect. Prunocerasus(アメリカンプラム節)[旧スモモ亜属]: New World plums
 旧スモモ亜属の北アメリカ産種。
  P. alleghaniensis – P. americana(アメリカスモモ) – P. angustifolia – P. geniculata – P. gracilis – P. hortulana – P. maritima – P. mexicana – P. munsoniana – P. murrayana – P. nigra – P. orthosepala – P. rivularis – P. subcordata – P. umbellata
(3) sect. Armeniaca(アンズ節)[旧スモモ亜属]英名はapricots:タイプ種はアンズ(P. armeniaca)11種
 腋生の冬芽は単生。頂生の冬芽はない。小花柄は無いかまたは極短く、まれに長い。花は1~3個、葉のある新芽(シュート)にはつかない。核果は片側に溝がある。核は平滑、ザラつき、網目があり、または稀に穴がある。
 P. armeniaca(アンズ apricot) – P. brigantina(Alpine apricot) – P. × dasycarpa(紫杏 zi xing) - P. mandshurica(マンシュウアンズ) – P. mume(ウメ) – P. sibirica(モウコアンズ)
(4) sect. Microcerasus(ユスラウメ節)旧オウトウ亜属: bush cherries 22種
 サクラ亜属から移動された。
 P. alaica – P. albicaulis – P. bifrons – P. brachypetala – P. chorossanica - P. dictyoneura – P. erythrocarpa – P. erzincanica – P. glandulosa(ニワザクラ) – P. griffithii – P. griffithii var. tianshanica - P. hippophaeoides – P. humilis(コニワザクラ) – P. incana – P. jacquemontii – P. japonica(ニワウメ) – P. microcarpa – P. pogonostyla(タカサゴニワウメ) – P. pojarkovii(unplaced name, イラン、トルクメニスタン原産) – P. prostrata – P. pseudoprostrata – P. susquehanae – P. tomentosa(ユスラウメ) – P. verrucosa – P. yazdiana
(5) sect. Amygdalus(アーモンド節): almonds 26種
 P. amygdalus(ヘントウ=アーモンド) – P. arabica(Arabian wild almond) – P. argentea – P. brahuica – P. bucharica – P. carduchorum – P. cercocarpifolia – P. eburnea – P. elaeagrifolia – P. eremophila – P. erioclada – P. fenzliana – P. haussknechtii – P. kansuensis – P. korshinskyi – P. kotschyi – P. kuramica – P. lycioides – P. minutiflora – P. mongolica – P. sibirica – P. scoparia – P. spinosissima – P. trichamygdalus – P. turcomanica – P. webbii(syn. Amygdalus delipavlovii)
(6) sect. Persica(モモ節): peaches 6種
 P. davidiana(サントウ=ノモモ) – P. kansuensis – P. mira – P. mongolica – P. persica(モモ) – P. tangutica
 ※Sect. AmygdalusとP. sect. PersicaはときにPrunus subg. Amygdalus (モモ亜属)とされ、境界が明確でなく、P. spinosissima (とげのあるアーモンド) ,P. kansuensisや P. × hybrida(syn. P. persicoides=P. amygdalus × P. persica.) は両節に属す。このためsect. Amygdalus & sect. Persicaとすることもある。
(5&6) sect. Amygdalus(アーモンド節) & sect. Persica(モモ節)[旧モモ亜属 genus Amygdalus];タイプ種はアーモンド(P. amygdalus)
 腋芽は3個(中央に栄養芽、側部に 2個の花芽)。花期は早春。小花柄は無またはほぼ無。花は葉のある新芽にはつかない。核果は片側に溝がある。核は深い溝がある。
 P. amygdalus(アーモンド)、P. persica(モモ)、P. persica var. nectarina(ネクタリン)など
(7) sect. Emplectocladus(エムプレクトクラドゥス節): desert almonds
 アメリカ大陸に分布し、6種が含まれる。sect. Amygdalusに密接に関係する。
 P. cercocarpifolia – P. fasciculata(desert almond) – P. eremophila(Mojave Desert almond) – P. havardii(Havard's wild almond) – P. microphylla ( Mexican wild almond)– P. minutiflora(Texas wild almond)
 以下はまだ、不確定の節。
(8) sect. Chamaeamygdalus(シャマエアマイグダルス節)
 Prunus sect. Chamaeamygdalus Spach は、以前は Amygdalus-Persica クレードに含まれていたが、分子系統学的研究により、 Amygdalus-Persica クレードから除外されるべきであることが示された。この節における種の系統学的位置はまだ不明である。
 P. tenella(Russian almond) – P. petunnikowii
(9) sect. Louiseania(ルイゼアニア節)
 Prunus sect. Louiseania (Carrière) Yazbekにはアジアの2~3種が含まれる。flowering almondと呼ばれるが、アンズ節やユスラウメ節とより密接に関係する。
 P. pedunculata - P. triloba(オヒョウモモ) - Prunus ulmifolia(本種がこの節に属するかどうか、分子研究では未確認)
(10) sect. Penarmeniaca(ペナルメニアカ節)[旧バクチノキ亜属の一部]:タイプ種: Prunus pumila (sand cherry)
 北アメリカに分布する。ペナルメニアカ節はアメリカ大陸のプラムであり、P. texana(アメリカンプラム節) および旧世界種である P. tenella(sect. Chamaeamygdalus) の姉妹グループである。
 腋芽は3個。花期は早春。小花柄は長い。花は散房花序につき、葉のある新芽にはつかない。核果に溝がない。核は平滑。
 P. andersonii(desert peach) – P. fremontii(desert apricot) – P. pumila(dwarf cherry ,sand cherry)

旧バクチノキ亜属

 高木又は地朴、常緑又はごく稀に落葉。枝は刺が無い。托葉は小さく、分離又はときに合着し、早落性。葉は単葉、互生、若いときに二つ折り、普通、葉柄又は葉身の下面の基部又は葉身の縁に沿って2個~稀に数個の腺体をもつ。葉身は縁が全縁又は鋸歯縁。花序は腋生、普通、総状花序、まれに密散花序(束生)、 ごく稀に円錐花序、普通、花が10個以上つく。苞は小さく、早落性、基部の苞は普通、不稔で先が3深列又は3歯をもつ。小苞はしばしば欠く。花は普通、両性、ときに雄性で子房が±縮小する。花托筒は杯形~鐘形。萼片は5個。花弁は5個、白色、萼片より長い。雄しべは10~50本、2輪につき、内側の雄しべは短い。子房は上位、1室、無毛又はときに軟毛がある。胚珠は2個、並立。花柱は頂生。柱頭は円盤形。果実は核果。中果皮は多肉質、熟しても割れない。内果皮は骨質又は木質、表面は平滑又はしわがある。
 世界に約80種あり、アジア、ヨーロッパ、ニューギニア、北アメリカ、南アメリカに分布する。

旧バクチノキ属の主な種と園芸品種

1 Prunus laurocerasus L. セイヨウバクチノキ 西洋博打の木

  synonym Laurocerasus officinalis M.Roem.

 ロシア、アルメニア、アゼルバイジャン、ジョージア、イラン、トルコ、ヨーロッパ(ブルガリア、セルビア)原産。英名はcherry-laurel , Common cherry laurel , English Laurel 。
 低木又は高木。ときに吸枝を出す(suckering)。高さ2~6(~10)m。刺は無い。小枝は頂芽をもち、無毛。葉は宿存。葉柄は長さ5~15㎜、無毛、腺は無い。葉身は楕円形~倒卵形、長さ6~18㎝×幅3~7㎝、基部は楔形~鈍形、縁は離れた細鋸歯縁又は全縁に近く、歯は鈍く、腺があり、葉先は急に短い尖鋭形、先端は尖り、表面は無毛、下面に腺があり、腺は1~数個、下部にあり、平ら、円形~楕円形。花序は花が26~32個つき、総状花序、中央の花序軸は長さ(35~)55~130㎜、基部に葉は無い。小花柄は長さ1~5㎜、無毛。花は葉の展開前に開花する。花托筒は円蓋形、長さ3~4㎜、外側は無毛。萼片は広がり、三角形、長さ0.7~1.2㎜、縁は普通、全縁、ときに脱落性の腺をもち、縁毛があり、面は無毛又は有毛。花弁は白色、倒卵形~広楕円形~類円形、長さ3~5㎜。子房は無毛。核果は濃紫赤色~ほぼ黒色、卵形~円錐状卵形、長さ13~17㎜、無毛。中果皮は肉質~革質。核は卵形、扁平でない。花期は3~5月。果期は8~11月。
品種) 'Albomaculata' , 'Anbri' (PBR) , 'Angustifolia' , 'Ani' (PBR) , 'Antonius' (PBR) , 'Arktis' (PBR) , 'Aureovariegata' , 'Badenweiler Ghost' , 'Barmstedt' , 'Baumgartner' , 'Benje Green' (PBR) , 'Bokralym' (PBR) , 'Bokramer' (PBR) , 'Bruantii' , 'Camelliifolia' , 'Cascade' , 'Castlewellan' (v) , 'Caucasica' , 'Cherry Brandy' , 'Chestnut Hill' , 'Colchica' , 'Dart's Good News' , Dart's Lowgreen , 'Darzalo' (PBR) , Etna = 'Anbri' (PBR) , 'Forest Green' , 'Gabi' (PBR) , 'Gajo' (PBR) , Genolia = 'Mariblon' (PBR) , 'Golden Splash' , 'Goldglanz' , Goris GoldR , 'Goris11' (PBR) , Green Carpet , 'Green Jade' , 'Green Marble' (v) , 'Green Star' , 'Green Survival' , 'Greenmantle' , 'Greentorch' (PBR) , 'Grpl18' (PBR) , 'Grpl19' (PBR) , 'Grunerteppich' , 'Hagar' (PBR) , 'Herbergii' , 'Hibani' (PBR) , 'Holstein' , 'Interlo' , 'Ivory' (PBR) , 'Jm34' (PBR) , 'Josa' (PBR) , 'Klari' , 'Kugreen' , 'Latifolia' , 'Leander' , Legend = 'Grpl19' (PBR) , Low 'n' Green = 'Interlo' , 'Macrophylla' , 'Magnoliifolia' , 'Majestic Jade' , 'Mano' , 'Marbled Cream' , 'Marbled Dragon' (v) , 'Marbled White' , 'Mari' , 'Mariblon' (PBR) , Mercurius = 'Bokramer' (PBR) , 'Miky' , 'Mischeana' , 'Mount Vernon' , 'Mt. Vernon' , 'Nana' , 'Novita' , Olympus = 'Bokralym' (PBR) , 'Otinii' , 'Otto Luyken' , 'Parkway' , 'Piranha' (PBR) , 'Piri' , 'Polster' , 'Prostrata' , 'Prudonti' , 'Prufon' , 'Prutondi' , 'Pruzab' , Renault Ace = 'Renlau' , 'Rentan' (PBR) , 'Reynvaanii' , 'Rotundifolia' , 'Rudolf Billeter' , 'Rufescens' , 'Schipka Holland' , 'Schipkaensis' , 'Schipkaensis Compacta' , 'Schipkaensis Macrophylla' , 'Serbica' , 'Taff's Golden Gleam' (v) , 'Troncais' (PBR) , 'Van Nes' , 'Variegata' , 'Variegata' ambig. (v) , 'Whitespot' , 'Zabeliana'

2 Prunus phaeosticta (Hance) Maxim. クロボシザクラ 黒星桜
  synonym Laurocerasus phaeosticta (Hance) C.K.Schneid.
 中国、台湾、インド、バングラデシュ、ミャンマー、タイ、ベトナム原産。中国名は腺叶桂樱 xian ye gui ying。混交林、山地の谷間、山地の牧草地、小川沿い、小道沿いに生える。
 低木または高木、高さ4~12m。小枝は暗紫褐色、若い時は±軟毛があり、経年により無毛で紫黒色になり、まばらに円形の皮目がある。冬芽は紫褐色、卵形、長さ2~4㎜、無毛、先は鋭形~鈍形。葉柄は長さ4~8㎜、無毛、蜜腺は無い。葉身は狭楕円形~長円形~長円状披針形、またはまれに倒卵状長円形、長さ6~12㎝×幅2~4㎝、草質~革質、両面とも無毛、下面に黒色の点が散在し、基部はくさび形、縁近くに2個の大きな平らな蜜腺があり、縁は全縁または不稔の小枝の上の葉では鋭鋸歯があり、先は長い尾状、中脈の両側に6~10本の二次脈があり、三次脈は下面にやや隆起し、上面でわずかに突出する。総状花序は側枝の基部の正常な葉の腋、または小枝の先の低出葉(cataphylls)の腋につき、単生し、長さ4~6㎝、花数は数個~10個以上。低出葉は小さく、早落性、先に三歯がある。花序軸はしばしば、無毛。苞は線形~披針形、長さ2~4㎜、早落性、無毛、縁には腺をもつ鋸歯がある。花は直径4~6㎜。小花柄は長さ3~6㎜、しばしば無毛。花托筒は杯形、長さ1.5~2.5㎜、外側は無毛。萼片は卵状三角形、長さ1~2㎜、外側は無毛、縁には縁毛または細かい鋸歯があり、先は鈍形。花弁は白色、ほぼ円形、長さ2~3.5㎜、無毛。雄しべは20~35本、長さ5~6㎜。子房は無毛。花柱は長さ5~6㎜。核果は紫黒色、ほぼ球形~横長の楕円形、直径8~10㎜、無毛。内果皮は薄く、平滑。花期は4~5月。果期は7~10月
3 Prunus spinulosa Siebold & Zucc.  リンボク
  synonym Laurocerasus spinulosa (Siebold et Zucc.) C.K.Schneid.
 日本(本州の関東地方以西、四国、九州、沖縄)、中国原産。中国名は刺叶桂樱 ci ye gui ying 。別名は ヒイラギカシ、カタザクラ 。照葉樹林内などの湿気の多い場所に生える。
 常緑高木又は小高木。高さ5~10m。樹皮は紫色を帯びた黒褐色、横に長い皮目があり、ヤマザクラに少し似ている。葉は互生し、長さ5~8㎝の狭長楕円形~狭倒卵形、無毛。葉先は尾状に尖り、基部はくさび形、表面には光沢がある。若木の葉には針状の鋸歯があり、ヒイラギに似ている。老木では葉が全縁、葉縁が強く波打ち、縁に半透明の縁取りがある。密腺は葉身の基部にあるが、不明瞭。葉柄は長さ8~10㎜。花は高い梢の葉腋の総状花序に多数つく。花は直径約5㎜、白色5弁花、多数の雄しべが突き出る。萼(花托筒)は長さ約1.5㎜の杯形。果実は長さ約1㎝の惰円形の核果で、紫褐色~黒紫色に熟す。花期は9~10月。

4 Prunus zippeliana Miq. バクチノキ 博打の木

  synonym Laurocerasus zippeliana (Miq.) Browicz

  synonym Prunus zippeliana Miq. f. infravelutina (Makino) Sugim.

  synonym Laurocerasus macrophylla C.K.Schneid. 
 日本(本州の関東南部以西、四国、九州、沖縄)、台湾、中国、ベトナム原産。中国名は大叶桂樱 da ye gui ying。別名はビランジュ。
 和名は樹皮が次々と剥がれ落ち、博打に負けて身ぐるみ剥がれるたとえから。太平洋の沿海地に多く、千葉県鴨川市平塚の大山不動の参道群生地が自生の北限とされている。バクチノキは蘭方医のシンボルともいわれ、葉から作られる杏仁水(バクチ水)が咳止め薬として用いられた。幕末の頃、蘭方医が植えたものが西尾市内にあり、その近くの上永良神明社にも2本のバクチノキがある。上永良神明社の境内には国の天然記念物に指定された愛知県内最大のスダジイの古木もある。豊橋市嵩山町の蛇穴の近くには自生らしいバクチノキ数本が点在している。
 常緑高木。高さ10~15m。 幹は灰褐色、平滑、樹皮が鱗片状に剥がれ、まだらになる。葉は互生し、長さ10~20㎝、幅4~7㎝の長楕円形、先は尖り、縁は裏側に反り返り、鋭鋸歯、鋸歯の先に腺がある。葉の基部は広楔形~円形。葉は無毛、葉裏は淡緑色。葉柄は長さ約1㎝、上部に密腺が2個つく。葉腋から長さ約3㎝の総状花序を出し、花を多数つける。花序の軸や小花柄には短毛がある。花は直径6~7㎜。花弁は白色、5個、長さ約2㎜。雄しべは30~50個、長く突き出る。萼(花托筒)は浅い杯型。果実は長さ約1.5㎝の歪んだ長楕円形。花期は9月。果期は5月。

参考

1) Flora of China
 Laurocerasus
 http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=117746
2) GRIN
 Laurocerasus
https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=15115
3)Plants of the World Online(POWO) | Kewscience
 Laurocerasus
http://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30361793-2
4) Flora of North America
 Prunus laurocerasus Linnaeus
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=250100395
5) World Checklist of Vascular Plants
 Laurocerasus
https://wcvp.science.kew.org/
6) Systematic Pomology (Vol. 1-2) (Set)
 Prunocerasus
https://books.google.co.jp/books?id=-A9fDwAAQBAJ&pg=PA364&lpg=PA364&dq=Prunocerasus&source=bl&ots=jMuaCqecS7&sig=ACfU3U1d1E3WoBso8G31zZsbFJLZoXsmWA&hl=ja&sa=X&ved=2ahUKEwjL9p687r76AhVVgMYKHW0NAv84MhDoAXoECBcQAw#v=onepage&q=Prunocerasus&f=false