ヒシ 菱

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Flora of Mikawa

ミソハギ科 Lythraceae ヒシ属

中国名 丘角菱 qiu jiao ling
学 名 Trapa japonica Flerov
Trapa bispinosa Roxb. var. iinumae Nakano
Trapa natans L. var. bispinosa Makino, excl. basion.
ヒシの芽
ヒシの花
ヒシの果実
ヒシの葉
ヒシ
花 期 7~10月
高 さ 浮葉植物
生活型 1年草
生育場所 池、沼
分 布 在来種  北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、ロシア
撮 影 蒲郡市 05.9.17
菱形というのはこのヒシの葉の形から出来た語である。ヒメビシとオニビシの雑種起源の可能性があると推定されている。ヒメビシとヒシが混生することもあり、果実がオニビシに似て角が4本あってヒシ程度の大きさの中間のものもある。これはコオニビシと呼ばれている。The Plant List やYlistではヒシを独立種としているが、Flora of Chinaではヒシをオニビシに含め、GRINではヒメビシに含めている。ヒシ科 Trapaceae はミソハギ科に含められた。
 葉は長さ3~6㎝の広菱形。基部を除いて不揃いの鋭い鋸歯がある。葉柄の中部に膨らんだ浮きがついている。花は水面に出て咲き、直径約1㎝。花弁は4個。果実は横の長さ(幅)30~50㎜の菱形で、角が2本つき、水中で熟し、水に浮く。2n=96。
 ヒメビシ Trapa incisa の果実は幅12~20㎜、角が4本。2n=48
 オニビシTrapa natans はアジア、アフリカ、ヨーロッパに分布する。果実が大きく、幅45~75㎜、角がヒメビシのように4本ある。中国名は欧菱(ou ling)。 2n=48、(Flora of China 果実の角は2~4本、2n= 44, 46, 48, 76, 90, 96)

ヒシ属

  family  Lythraceae - genus Trapa

 1年草、水生(aquatic)、固着(rooted)又は浮遊(floating)。茎は水面下(submerged)、細く、不分枝、節間は長く、葉痕から不定根が発達し、よく深く裂け、葉のような光合成を行う。葉は2形。托葉は深く、裂ける。沈水葉は対生、単葉、線形、早落性。浮葉は頂部のロゼットに密集し、葉柄がある。葉柄は中間で膨れる。葉身は菱形~デルタ形、縁の上半部には粗い歯がある。花は上部の葉腋に単生、水面で開花し、両性、4数性、放射相称。花筒(花托筒)が発達し、部分的な子房上(=子房下位)。咢片は4個、敷石状、果実の硬い角(つの)として宿存する。花弁は4個、白色又はライラック色、脱落性。雄しべは4本、咢片の前にある(antesepalous)。葯は内向き、丁字着。子房は冠状の円盤により取り囲まれ、子房半下位、果時には下位になり、2室。胚珠は倒生、下垂、各室に1個、1個の胚珠は花後に未発達。中軸胎座。柱頭は頭状、脱落性。果実は非裂開、 (0~)2~4本の角(つの)があり、こま形、杯形、又は長くなった菱形、外果皮は多肉質、はかない。内果皮は石質、角(つの)の間と角に沿って、薄く~突出したとさか(cres)をもつ。果実の頂部はドーム形又は四角~丸い王冠があり、王冠の先は尖った嘴又は毛の房になる。種子は1個。子葉は不等長、大きい1個はデンプン質、果時に保持され、小さい1個は鱗片状、花柱の管の孔を通って果実の先から発芽する。胚乳は無い。
 世界に約30種があり、ヨーロッパ中部と南東部、温帯、熱帯のアジアとアフリカに分布する。

ヒシ属の主な種

1 Trapa incisa Siebold et Zucc.  ヒメビシ 姫菱
  synonym Trapa maximowiczii Korsh
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、台湾、ロシア、インド、ラオス、マレーシア、タイ、ベトナム、インドネシア原産。中国名は细果野菱 xi guo ye ling 。池、沼に生える。
 1年草。浮葉植物。ヒシより小形。茎は直径1~2.5㎜。葉柄は長さ5~15㎝、細く、上部でわずかに膨れ又は膨れない。葉身は上面が光沢があり、暗緑色、下面は緑色、又はときに、帯紫色、しばしば黒褐色又は基部に2個の暗色の斑点をもち、菱状三角形、長さ1.5~3㎝×幅2~4㎝、無毛又は脈上にまばらに軟毛があり、上面は無毛、基部は広楔形、上部の縁には粗く鋭い、切れ込み状の歯がある。花弁はピンク色~淡帯紫色~白色、長さ5~7㎜。果実は狭い菱形、長さ(縦)0.8~1.5㎝×幅(横)1.2~2㎝×厚さ0.7~1㎝、角(つの)は4本、表面に様々なうねがあるか又は平滑、とさか(cres)は無い。王冠はドーム形~不明瞭、長さ1~3㎜、嘴は細かい円錐形。 角は円錐形、長さ1~1.5㎝、不等長、下側の角は下向きに傾斜し、上側の角は水平~斜上、先にはひげ状の剛毛がある。花期は5~10月。果期は7~11月。 2n= 48, 88, 90, 92, 96。(Flora of China)
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2 Trapa japonica Flerow  ヒシ 菱
  synonym Trapa bicornis Osbeck var. iinumae (Nakano) Nakano
  synonym Trapa japonica Flerow var. makinoi (Nakano) Ohba, comb. nud.
  synonym Trapa natans L. var. bispinosa Makino, excl. basion.
  synonym Trapa japonica Flerow var. tuberculifera (V.Vassil.) Tzvelev 
  synonym Trapa bispinosa Roxb. var. makinoi Nakano 
  synonym Trapa bispinosa Roxb. var. iinumae Nakano 
  synonym Trapa bicornis Osbeck var. makinoi (Nakano) Nakano
  synonym Trapa bicornis Osbeck var. iwasakii (Nakano) Nakano 
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は丘角菱 qiu jiao ling。池、沼に生える。Flora of Chinaではオニビシに含めている。
 1年草。浮葉植物。葉は長さ3~6㎝の広菱形。基部を除いて不揃いの鋭い鋸歯がある。葉柄の中部に膨らんだ浮きがついている。花は水面に出て咲き、直径約1㎝。花弁は4個。果実は横の長さ(幅)30~50㎜の菱形で、角が2本つき、水中で熟し、水に浮く。花期は7~10月。2n=96。

3 Trapa macropoda Miki  シリブトビシ
 日本の各地の更新世:の地層から発見された植物化石

4 Trapa natans L.  オニビシ 鬼菱
  synonym Trapa japonica Flerow ヒシ  [Flora of China] 
  synonym Trapa natans L. var. quadrispinosa Makino, excl. basion.
  synonym Trapa natans L. var. rubeola Makino f. viridis Sugim.
  synonym Trapa natans L. var. rubeola Makino
  synonym Trapa natans L. var. japonica Nakai  オニビシ
  synonym Trapa natans L. f. quadrispinosa Makino, excl. basion. 
  synonym Trapa manshurica Flerow var. tranzschelii (V.Vassil.) Kitag.
  synonym Trapa manshurica Flerow 
  synonym Trapa japonica Flerow var. rubeola (Makino) Ohwi 
  synonym Trapa amurensis Flerow 
  synonym Trapa bicornis Osbeck  コウモリビシ [The Plant List , GRIN]
  synonym Trapa bicornis Osbeck var. taiwanensis (Nakai) Z.T.Xiong  [Kew sceience]
  synonym Trapa taiwanensis Nakai タイワンビシ
  synonym Trapa pseudincisa Nakai  マンセンビシ  [Kew sceience]
  synonym Trapa komarovii V.Vassil.           [Kew sceience]
  synonym Trapa litwinowii V.Vassil.  [The Plant List ]
 日本、中国、インド、パキスタン、ラオス、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ジョージア、トルコ、ヨーロッパ、アフリカ原産。英名はbullnut , water-chestnut 。中国名は欧菱 ou ling 。ゆっくり流れる川、湖、沼地、池などに生える。食用などに広く栽培されている。
 茎は直径2.5~6㎜。葉柄は長さ (2~)5~18㎝、丈夫、上部で±膨れ、軟毛がある。葉身は上面が光沢があり、暗緑色、下面は緑紫色、しばしば、脈の間に有色の斑点をもち、デルタ状菱形~扁円状菱形、長さ4~6㎝×幅4~8㎝、下面に軟毛があり、上面は無毛、基部は広楔形、上部の縁には不規則な歯がある。花弁は白色、長さ7~10㎜。果実はこま形~短い菱形、長さ(縦)1.8~3㎝×幅(横)2~4.5㎝×厚さ 1~2.8㎝、角(つの)は(0~)2~4本、とさか(cres)は明瞭な膨らみ~薄い肋、王冠は四角形~丸く又はドーム形、まれに王冠が無く、長さ1~8(~11)㎜、嘴は円錐形又は毛の房。 角は水平、斜上、又は反曲し、平らな三角形又は広円錐形、長さ2~3.5㎝、先はひげ状の剛毛があるか又は剛毛が無く耕される。花期は5~10月。果期は7~11月。2n = 44, 46, 48, 76, 90, 96.。(Flora of China)
 ヒシはヒメビシとオニビシの雑種起源の可能性があると推定されている。ヒメビシとヒシが混生することもあり、果実がオニビシに似て角が4本あってヒシ程度の大きさの中間のものもある。これはコオニビシと呼ばれている。The Plant List やYlistでは独立種としているが、Flora of Chinaではヒシをオニビシに含め、GRINではヒメビシ(Trapa incisa)に含めている。
 日本のオニビシ(狭義のオニビシ)は角が4本、幅45~75㎜で2n=48のものを指し、Trapa natans var. japonicaとする見解もあり、Flora of Chinaの解説より大きいものである。Flora of Chinaではオニビシ(Trapa natans)を広義に扱い、ヒシ(Trapa japonica)をオニビシに含め、トウビシやコオニビシなどの変種も認めず、含めている。
6-1 Trapa natans L. var. bispinosa (Roxb.) Makino  トウビシ 唐菱
  synonym Trapa bispinosa Roxb.
  synonym Trapa bicornis Osbeck var. bispinosa (Roxb.) Nakano
 中国から導入された栽培用、角(つの)は2本。 2n=48
6-2 Trapa natans L. var. pumila Nakano ex Verdc.  コオニビシ 小鬼菱
  synonym Trapa gracilipes Sugim. 
  synonym Trapa potaninii V.Vassil.
  synonym Trapa japonica Flerow var. pumila (Nakano ex Verdc.) Ohba, comb. nud.
 果実がオニビシに似て角が4本あり、幅が30~50㎜のやや小さいもの。 2n=96

参考

1) Flora of China
  Trapa
 http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=133288
2) GRIN
 Trapa
 https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=12248
3)Plants of the World Online | Kew Science
 Trapa
 http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:28563-1
4)Flora of Pakistan
 Trapa
 http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=5&taxon_id=133288
5)Japanese Wild Flowers
 Trapa japonica
 http://flowers.la.coocan.jp/Lythraceae/Trapa%20japonica.htm