植物用語

植物とは

 生物界を大別すると、動物、植物、菌類などに分類され、植物は一般的に、陸上植物の種子植物spermatophyta、シダ植物 Pteridophyta 、コケ植物 bryophytes ,藻類 algaeを指す。細胞壁があり、普通、根があって場所に固定され、クロロフィルなどにより光合成を行って独立栄養を営むなどの特徴を有する。しかし、種子植物の一部では菌類のように腐生または寄生するものもあり、藻類には浮遊するものや単細胞のものもある。系統解析が進んだ 現在の分類では古細菌を含めて広く研究が行われ、生物分類が進められ、分類が多説ある。現在の生物分類の3ドメイン説ではアーケプラスチダ Archaeplastida が過去の狭義の植物界である。ドメイン下位のスーパーグループや新しいクラスターの分類は研究過程で、クラスター不明のものも多い。まだ、定説がなく、これからも修正されていく。以前の植物の概念と異なり、光合成を行う藍藻(シアノバクテリア)は真正菌類に含まれ、植物が含まれる真核生物ではない。藻類は2界説では植物界に属し、5界説では原生生物界に含まれ、植物界ではない。藻類は狭義の植物のスーパーグループのArchaeplastidaに属するものとそれ以外のものがあり、Archaeplastidaに属するものだけを植物とし、植物プランクトンを含めない見解もあり、藻類の一部を含めるか、含めないかは議論が分かれる。最近では藻類は普通、植物に含めない。在の3ドメイン説では真核生物 Eukaryota、古細菌archaea、真正細菌 Bacteriaに分けられる。過去には2界説、3界説、5界説などがあった。5界説のモネラ界を除く4界が真核生物ドメインに入る。  旧生物分類 2界説:動物界、植物界
3界説:動物界、菌界、植物界
5界説:モネラ界、原生生物界、植物界、菌界、動物界

植物plant
植物界 plantae
植物相 flora:全ての植物の種の総体、自生の植物あるいは在来種の植物
 生物分類 3ドメイン[domain]-クラスター[cluster]- ⑤スーパーグループ[super-group]- ファーストランク[first rank]-界[kingdom] - 門[phyllum , division]- 綱[class] -亜綱[subclass]-目[order]-亜目[suborder]-科[family]-亜科[subfamily]-連又は族[tribe] -属[genus pl. genera] -亜属[subgenus pl. subgenera] -節[section] -種[species]-亜種[subspecies]-変種[variety] 

真核生物 Eukaryota(Adl et al. 2019) 
Domain スーパーグループ 生物の例
アモルフェア
Amorphea
アプソモナス類
Apusomonadida
ブレビアータ
Breviatea
アメーボゾア Amoebozoa ツブリナ類
Tubulinea
アメーバ属、ナベカムリ
Evosea 細胞性粘菌、原生粘菌
Discosea
オピストコンタ
Opisthokonta
Holozoa 動物、襟鞭毛虫
Nucletmycea 菌類、微胞子虫
ディアフォレティケス
Diaphoretickes
Microheliella
Ancoracysta
Rappemonads
テロネマ類
Telonemia
テロネマ
ピコゾア Picozoa ピコビリ藻
アーケプラスチダ
Archaeplastida
灰色藻類
Glaucophyta
紅藻類
Rhodophycea
緑色植物
Chloroplastida
陸上植物、緑藻
SAR Sar ストラメノパイル
Stramenopiles
卵菌、微胞子虫
アルベオラータ
Alveolata
繊毛虫、アピコンプレクサ、渦鞭毛藻、ラビリンチュラ
リザリア
Rhizaria
放散虫、有孔虫、ケルコモナス類、クロララクニオン藻
ハプチスタ
Haptista
ハプト藻(光合成を行う植物プランクトン)、有中心粒太陽虫
クリプチスタ
Cryptista
クリプト(藻遊泳する単細胞藻類)
旧エクスカバータ
excavata
メタモナス類
Metamonada
basalia
ディスコバ
Discoba
ユーグレノゾア (Euglenozoa)、Kinetoplastida、ヘテロロボセア、ミドリムシ藻
マラウィモナス類
Malawimodadidae
クルムス
CRuMs
アンキロモナス
Ancyromonadida
ヘミマスティゴフォラ
Hemimastigophora
スピロネマ
メテオラ
Meteora

 ※微細藻類(マイクロアルジェ):分類学的には真正細菌 Bacteriaドメインに属する藍藻、高等植物に近縁の緑藻、アルベオラータ生物群 (Alveolata)の鞭毛藻などきわめて多様であり、その数も数万種はあるといわれる。食品、食品添加物、バイオ燃料などの研究対象対象として注目されている。
   

現在、一般的に使用されている植物分類


 ドメイン domain  真核生物(Eukaryota)、古細菌(archaea)、真正細菌( Bacteria)、 界(かい) kingdom アーケプラスチダ(Archaeplastida)= 植物界(Plantae)、亜界Subkingdom、 緑色植物亜界(Viridiplantae)

  分類なし ストレプト植物(Streptophyta)
  分類なし 陸上植物=有胚植物(Embryophyta)
  分類なし 維管束植物(Tracheophyta)
  分類なし 真葉植物(Euphyllophyta)
  分類なし 種子植物(Spermatophyta)
  門(もん) division
    被子植物門(Angiospermae)、
    裸子植物門(Gymnospermae)、
  旧綱(こう)clas 双子葉植物綱(Dicotyledoneae)、
           単子葉植物綱(Monocotyledoneaea)

植物分類

 現在の種子植物分類はDNAを用いた植物の系統解析により従来のCronquist の体系や新Engler体系とは異なった新しい分類となっている。APG(Angiosperm Phyrogeny Group 被子植物系統研究グループ)が多数の共著者からなる被子植物の大系統を1998年に発表したものがAPGⅠであり、AGP II(2003 年)、APG III(2009 年)、APGⅣ(2016年)と改定されている。シダ植物(Smith et al. 2006年)、裸子植物(Donoghue and Doyle 2000年, Rai et al. 2008年)についても新しい分類が発表されている。

1 種子植物 spermatophyta:有性生殖の結果として種子を形成する植物=日本に5680種
維管束を持ち、維管束植物、Tracheophyta , Tracheobiotaに含められる=世界に約25万種(未記載のものを含めると30~35万と推定)

2 被子植物 angiosperm:胚珠が心皮にくるまれて子房の中に収まったもの=顕花植物 flowering plant
被子植物門 angiospermae

 複受精

  ①花粉が雌しべにつく

  ②花粉から花粉管が雌しべの卵細胞に向かって伸びる。

  ③花粉管内を2個の精細胞が移動して胚と胚乳になる。

3 裸子植物 gymnosperm:胚珠が子房にくるまれずむき出しになり、果実も作らない
 裸子植物門 Gymnospermae =世界に約1100種
 重複受精は行わない。
 イチョウ、ソテツなどのように精子を作るものもある。

4 シダ植物 fern , pteridophyta:シダ類、小葉植物(ヒカゲノカズラ類)
=世界に15000種

5 コケ植物 bryophytes :蘚類、苔類、ツノゴケ類  =世界に26000種

6 藻類 algae:=世界に33000種
海藻 seaweed:緑藻植物門、車軸藻植物門、黄藻植物門、紅藻植物門
淡水藻fresh-water algae :ホシミドロ、アオミドロなど
気生藻aerial algae :スミレモ


 日本には約5700種の種子植物、シダ植物約730種、コケ植物約1800種、海藻類約1500種、淡水藻類数千種を合わせて約10000種がある。藻類を含めない植物は約8000種である。

被子植物系統グループ APG (Angiosperm Phylogeny Group)

 APG分類では系統樹を元にして分類系がつくられる。系統樹において、ある共通祖先の子孫の全てが含まれモクレン類、ツユクサ類、 バラ類などの集まりをクレード(clade)=単系統群(monophyletic group)という。共通祖先以外のものが含まれる集まりを グレード(grade)=側系統群(paraphyletic group)といい、多数の祖先が含まれる集まりを多系統群(polyphyletic group)という。
1 被子植物 Angiosperm
 基部被子植物群 (Basal angiosperms)....グレード(grade)

アンボレラ目(Amborellales)、スイレン目(Nymphaeales)、シキミ目(Austrobaileyales)、センリョウ目(Chloranthales)

  モクレン類(magnoliids)

カネラ目(Canellales)、コショウ目(Piperales)、モクレン目(Magnoliales)、クスノキ目(Laurales)}

 単子葉類 Monocots=Monocotyledoneae....クレード(clade)

ショウブ目(Acorales)、オモダカ目(Alismatales)、サクライソウ目(Petrosaviales)、 ヤマノイモ目(Dioscoreales)、タコノキ目(Pandanales)、ユリ目(Liliales)、キジカクシ目[=クサスギカズラ目、アスパラガス目](Asparagales)

  ツユクサ類(Commelinids)

ヤシ目(Arecales)、イネ目(Poales)、ショウガ目(Zingiberales)、ツユクサ目(Commelinales)}

 おそらく真正双子葉類
   マツモ目(Ceratophyllales)
 真正双子葉類(Eudicots)....クレード(clade)

キンポウゲ目(Ranunculales)、アワブキ目(Sabiales)、ヤマモガシ目(Proteales)、ヤマグルマ目(Trochodendrales)、ツゲ目(Buxales)

  コア真正双子葉類(Core eudicots)
   グンネラ目(Gunnerales)

Pentapetalae(コア真正双子葉類からグンネラ目を除外したもの)

   バラ上群 (Superrosids)
     ユキノシタ目(Saxifragales)
    バラ類(Rosid)
     ブドウ目(Vitales)  
    真正バラ類I(eurosids)=マメ類(Fabids)
     ハマビシ目(Zygophyllales)、
    COMクレード(COM clade)

ニシキギ目(Celastrales)、キントラノオ目(Malpighiales)、カタバミ目(OXalidales)

    窒素固定クレード(nitrogen fixing clade)

マメ目(Fabales)、バラ目(Rosales)、ブナ目(Fagales)、ウリ目(Cucurbitales)

    真正バラ類II(eurosids II)=アオイ類(Malvids)

フウロソウ目(Geraniales)、フトモモ目(Myrtales)、クロッソソマ目(Crossosomatales)、ピクラムニア目(Picramniales)、フエルテア目(Huerteales)、アオイ目(Malvales)、アブラナ目(Brassicales)、ムクロジ目(Sapindales)

   キク上群(Superasterids)

ビワモドキ目(Dilleniales)、メギモドキ目(Berberidopsidales)、ナデシコ目(Caryophyllales)、ビャクダン目(Santalales)

    キク類(Asterids)

ミズキ目(Cornales)、ツツジ目(Ericales)

    真正キク類I(euasterids I)=シソ類(Lamiids)

クロタキカズラ目(Icacinales)、メッテニウサ目(Metteniusales)、ガリア目(Garryales)、ムラサキ目(Boraginales)、リンドウ目(Gentianales)、ウァーリア目(Vahliales)、シソ目(Lamiales)、ナス目(Solanales)

    真正キク類II(euasterids II)=キキョウ類(Campanulids)

モチノキ目(Aquifoliales)、キク目(Asterales)、エスカロニア科(Escalloniaceae)、ブルニア目(Bruniales)、セリ目(Apiales)、マツムシソウ目(Dipsacales)、パラクリフィア目(Paracryphiales)


 目(もく) order 64目
 属(ぞく)genus 416属
  種(しゅ)species 
2 裸子植物
 裸子植物 (Gymnosperms)
 門(もん) division
  マツ門(Division Pinophyta):マツ目(Pinales)

マツ科(Pinaceae)、ナンヨウスギ科(Araucariaceae)、ヒノキ科(Cupressaceae)、イヌガヤ科(Cephalotaxaceae)、イチイ科(Taxaceae)、マキ科(Podocarpaceae)、コウヤマキ科(Sciadopityaceae)

  イチョウ門(Division Ginkgophyta):
   イチョウ目(Ginkgoales)

イチョウ科(Ginkgoaceae)

  ソテツ門(Division Cycadophyta):ソテツ目(Cycadales)

ソテツ科(Cycadaceae)、ザミア科(Zamiaceae)、スタンゲリア科 Stangeriaceae

  グネツム門(Division Gnetophyta):グネツム目(Gnetales)

グネツム科(Gnetaceae),マオウ科(Ephedraceae)、ウェルウィッチア科(Welwitschiaceae)


植物用語の参考サイト

  1. Botany Web
    筑波大学の 系統分類学の中山 剛先生が掲載している。
    花序や果実などの解説が詳しい。
    主に参考にしている。詳しくは図も表示されるBotany Webを確認するとよい。
  2. 露崎史朗 (TSUYUZAKI Shiro, 植物生態学・環境保全学)
    北海道大学の露崎史朗先生の詳しい解説。毛などの解説がある。 植物形態学 (plant morphology)・形態用語 (terms for morphology)
  3. 広島大学デジタル博物館
    http://www.digital-museum.hiroshima-u.ac.jp/~main/index.php/Mainpage
    生物の用語集とコケ植物用語集がアルファベット順で掲載されている。 生物の用語集 コケ植物用語集(アルファベット順)
    コケ植物用語集(仮名順)
  4. 日本植物学会 植物学用語集
    http://bsj.or.jp/jpn/general/glossary.php
    国立科学博物館の金井弘夫先生から(社)日本植物学会に寄贈されたもの。
    検索語を入力すると英文表記・補足・和文または英文表記・読み仮名が表示される。
  5. オンライン学術用語集
    https://dbr.nii.ac.jp/infolib/meta_pub/G0000120Sciterm
    国立情報学研究所が掲載している植物学編(増訂版)
  6. NEW SOUTH WALES FLORA ONLINE
    Glossary of Botanical Terms
  7. Wikipedia Glossary of botanical terms
    https://en.wikipedia.org/wiki/Glossary_of_botanical_terms
  8. 慶応大学学術情報リポジトリ
    磯野直秀慶応大学名誉教授の明治前園芸植物渡来年表
  9. Flora of China - eFloras.org
    Asteraceae Introduction (Vol. 20-21)キク科の用語
    Glossary of botanical terms used in the Poaceae イネ科の用語
    Orchidaceae Introduction (Vol. 25)ラン科の用語
  10. Introduction to plant life in New Zealand
    https://www.nzpcn.org.nz/site/assets/files/0/13/635/introduction-to-plantlife-220621.pdf
    葉、花序、花などが図解されている。
  11. Glossary of botanical terms for Compositae - Kew Gardens
    Compositae of Bolivia Glossary
    キク科の用語
    https://www.kew.org/sites/default/files/2019-01/Bolivian%20compositae%20checklist.pdf
  12. Illustrated Glossary of botanical terms
    Indiana Academy of Science (IAS) September 20, 2020
    http://conservationresearchinstitute.org/forms/CRI-FLORA-Glossary.pdf

学名 scientific name

 国際植物命名規約 International Code of Botanical Nomenclature:ICBN
 国際藻類・菌類・植物命名規約 International Code of Nomen- clature for algae, fungi, and plants
 
 ドメイン[domain] - 界[kingdom] - 門[phyllum]- クレード[clade]-目[order]-
 亜目[suborder]-科[family]-亜科[subfamily]-連又は族[tribe] -属[genus pl. genera] -
 亜属[subgenus pl. subgenera] -節[section] -種[species]-亜種[subspecies]-変種[variety]
 
  

学名表記


 「属名(generic name)」+「種小名( specific epithet)」をラテン語形で列記し、最後に「命名者」を付記する二命名法によって 表記される。
 種複合体 species complex:境界の不明瞭な関係の深い種の複合グループ

同義語 synonymouslyという意味でも使われることがある。
1つの種名の中に2個以上の隠れた潜在的な種(cryptic)が含まれるもの。
一般的には種群 species groupともいわれる。


タイプ標本

 公開可能な状態で植物標本館 (ハーバリウム) や博物館に保存され、細心の注意の元に保管されるべきであるとされ、日本では60以上の大学、博物館・植物園などに設置されている。

1 正基準標本 holotype:学名の原記載の中でただ1つ明示的に指定された標本

2 選定基準標本 lecttype:holotypeが不明で後に指定された標本 holotypeが原記載中に無、行方不明、又は2種類以上の混合だった場合

3 副基準標本 isotype:holotypeと一緒に採集されて同時に作られた標本holotypeの一部でも別の機関に保管されているとisotype

4 等価基準標本 syntype:原記載にholotypeの指定がなく、引用された標本原記載で引用された標本の全て及び指定された複数標本はsyntype。

5 副等価基準標本 isosyntype:syntypeの重複標本のそれぞれ

6 パラレクトタイプ paralectotype:syntype中の1つがlecttypeとなったときの残り

7 従基準標本 paratype:記載論文でholotype、isotype、syntype:に該当しないもの原記載に複数の標本のとき、syntypeとなった標本以外の標本

8 アロタイプ allotype:paratypeのうち、holotypeとは異なる性別の標本

9 新基準標本 neotype:原記載の全てのタイプ標本が消滅したときの新しい基準標本

10 エピタイプ epitype:分類的作業を補う目的で、後に新たに作られた標本。作成理由となったダメなタイプ標本を明言しなければならない。

11 クロノタイプ clonotype:タイプ標本の種子などから育てた植物体の標本


植物の組織

細胞 cell


 多細胞生物である植物は多数の細胞の集まりであり、組織により分化する。

1 表皮細胞 epidermis cell:植物体の最外層にある、普通、1層の細胞。普通、葉緑体を含まず、外界に面した側の細胞壁が厚く、クチクラ層が発達する。

 ● 副細胞 subsidiary cell:孔辺細胞に接する表皮細胞

2 孔辺細胞 guard cell:気孔 (stoma, pl. stomata)を形成する2個の細胞

3 異形細胞 (特殊細胞) idioblast:組織中で、他の細胞と形や内容物が異なる細胞

4 厚角細胞 collenchyma cell:一次壁が不均一に厚くなった原形質を残す細胞。
普通、木化(リグニン化)されず、厚角組織 (collenchyma) を形成する。厚角組織は植物体に機械的強度を与える。

5 厚壁細胞 sclerenchyma cell:二次壁が厚く発達して木化 (リグニン化) した細胞。成熟すると原形質が失われ、死細胞となる。普通、厚壁組織(sclerenchyma) を形成して植物体に機械的強度を与える。

5-1 石細胞:stone-cell=sclerotic granules=sclerids 厚壁細胞の一種。細胞の細胞壁にリグニン、ペントサン、結晶化したセルロース、シリカなどの物質が蓄積し石のように硬く変化しており、細胞自体は普通、死んでいる。保護のため植物の皮に含まれる他、果実にも存在するが役割はよく分かっていない。

   例)ナシ、フェイジョア、バンレイシ、マルメロ、カリンなどの果実に見られ、ナス属、メジロホオズキ属などの果実では顆粒状になり球状顆粒(硬化性顆粒:sclerotic granules)とも呼ばれる。

 ● 木化(リグニン化) lignification:リグニンを蓄積し、細胞壁の機械的強度を増すこと

6 コルク細胞 cork cell:表皮に代わって植物体を保護するコルク質の細胞。コルク形成層 (cork cambium) でつくられる。スベリンを含む二次壁が発達した厚壁細胞であり、細胞間隙なしに密に並ぶ。

7 表皮油細胞 epidermal oil cell

8 油分泌性異形細胞 secretory idioblast:油を大量に生成する細胞。

9 乳細胞 latex cell, lactiferous cell:乳液を生成する細胞

 ● 乳管 laticifer:乳液を含む細胞組織 , 乳液のある lactiferous

 ● 単乳管(無師乳管)non-articulated laticifer:多核の1細胞からなるもの
  トウダイグサ科、キョウチクトウ科に見られる。

 ● 連合乳管または有師乳管 (articulated laticifer) :複数の細胞がつながったもの
  ケシ科、キク科

 ● 細胞間隙(intercellular space)に乳液が貯められることもある。

10 粘液細胞 mucilage cell:粘液をつくる細胞

 ● 粘液道 mucilage canal:粘液がたまる細胞間隙
 アオイ科など

11 タンニン細胞 tannin cell:タンニンを生成する細胞。
タンニンは細胞の液胞中に蓄積される。

12 結晶細胞 crystal cell:細胞の液胞中に結晶を含む細胞
蓚酸カルシウム (calcium oxalate) 、炭酸カルシウム (calcium carbonate) の結晶

13 機動細胞 motor cell:珪酸体 (silica body) を形成するイネ科の葉の表皮細胞


細胞に含まれる物質


デンプン starch: 光合成の結果できる貯蔵多糖類(炭水化物)。
種子、球根、塊根に蓄積されていることが多い。

油 oil:普通、油滴 (droplet) の形で細胞質中に含まれる。
種子に多い。

乳液 latex:葉や茎を切ると出る粘性のある液体
弾性ゴム、酵素、アルカロイド、デンプンなどを含む。

粘液 mucilage:普通、細胞内にあり、吸水率が大きく、乾くと硬化する粘性物質。
多糖とタンパク質を含む。

タンニン tannin:細胞の液胞中に蓄積されるポリフェノール類。
タンパク質やアルカロイド、金属イオンなどに結合する性質がある。

結晶 crystal:細胞の液胞中にふくまれる結晶
蓚酸カルシウム (calcium oxalate) 、炭酸カルシウム (calcium carbonate) の結晶
 

結晶形による分類


  ● 単晶 simple crystal :大形で単一の結晶。
    マンサクやイスノキ (マンサク科) など
  ● 針晶 raphide :細長い針状の結晶。
  ● 束晶 raphide in bundle , bundle crytal:針晶が束状に集まったもの
    キツネノマゴ 、ムラサキツユクサ など

  ● 集晶 druse , crystal druse:小さな結晶が多数集まって金平糖状になったもの。
 ギシギシ

  ● 砂晶 crystal sand :小さな結晶が多数存在するもの。
    シロザの茎
  ● 鍾乳体 cystolith:大きな炭酸カルシウムの非結晶性の塊。
    液胞中に柄でぶら下がる。
    カナビキボク科の表皮、イラクサ科、クワ科の葉肉

珪酸 silica:細胞内外に珪酸が珪酸体 (silica body) の形で貯まったもの。

 ● プラント・オパール plant opal:珪酸体が分解されず、植物が枯れて土中に残るもの

油体 oil body:苔類の細胞にあり、テルペン類が膜に包まれたもの。

樹液 sap


維管束  vascular bundle


 水や養分の通路と植物体の機械的支持のための複合組織
 維管束植物である種子植物、シダ植物にある組織。

 維管束vascular bundle は道管、仮道管、篩管(しかん)などを含む組織の集まり

 木部 (xylem) と篩部 (phloem) からなる。

1 木部 xylem:水や無機養分の通路、植物体の支持、養分の貯蔵などの役割

  導管、仮導管の管状要素、木部繊維、木部柔組織からなる
  1 導管 vessel , xylem vessel:水や無機養分の通路のための管状組織
      導管細胞の上下の隔壁が消失して縦に連なる管状
  2 仮導管組織 tracheid tissue:水や無機養分の通路のための組織
      道管に似るが、細胞間の薄い細胞壁が残る。
    ● 周囲状仮道管 around like tracheid:鞘状に道管を取り囲む
    ● 道管状仮道管 vascular tracheid:水や無機養分の通路のため
    ● 繊維状仮道管 fiber tracheid :植物体の支持のため

  3 木部繊維組織 xylem fiber tissue:木部繊維 (xylem fiber) からなる
                       支持組織
   ● 木部柔組織 xylem parenchyma:有機養分貯蔵のための柔組織。
      木部柔細胞 (xylem parenchymatous cell) からなる

2 篩部 phloem:有機養分の通路、植物体の支持、養分の貯蔵などの役割
 ● 篩管 sieve tube , phloem vessel:有機養分の通路のための組織

      細胞間の壁が篩(ふるい)状になる。

   ● 伴細胞 companion cell:篩管細胞に隣接して存在する養分通路の補助細胞。

   ● 篩部繊維組織 phloem fiber tissue:篩部繊維 (phloem fiber)からなる支持組織

   ● 篩部柔組織 phloem parenchyma:養分貯蔵のための柔組織。

      篩部柔細胞 (phloem parenchyma cell) からなる

生育場所による分類

生育場所


   ● 生育場所(生育環境)habitat
1 地上生 terrestrial:地上に生えるもの

 草地(grassland)、牧草地(meadow)、放牧地(pasture)、畑地(farmland)、水田(paddy field , rice field)、林地(wood land)、森林(forest)、林縁(forest edge) 、低木林(scrub)、低地(lowland)、道端(roadside)、市街地(urban area)、荒地(waste Land)、低山地(low mountains)、山地(mountainous region)、高原(plateau)、 亜高山帯(subalpine)、高山帯(alpine zone , alpine belt)、沿海地(coastal areas)、海岸(coast , beach , seaside)、砂浜(sandy beach)、 河岸(riverside , river bank)、砂地(sand)、岩場(rocky area)、瓦礫地(rubble land)、礫地(gravel land)

2 着生 epiphytic:他の植物の幹など基物に生えるもの
3 水生 aquatic , hydrophyte:水中生活をするもの
     

水の種類による分類


    ● 淡水fresh water 
      淡水湿地 freshwater wetland
    ● 汽水brackish water:半鹹水、弱塩水、半かん水
      塩湿地(塩沼、塩性沼沢) salt marsh:
        海岸の潮間帯等にみられる沼沢地
      汐湿地 tidal marsh
    ● 海水 sea water, marine water , brine
      海水湿地 seawater wetland
 (1) 水草 water plant , waterweed :淡水に生育するもの
    ● 淡水草 freshwater grass
 (2) 海藻草類 seaweed grass:海草、海藻を含めたもの

    ● 海草 marine plant , seagrass , saltwater plant:海域に生育する種子植物。海洋植物、海洋性植物ともいう

        アマモ、スガモ、ウミヒルモなど
    ● 海藻 algae , seaweed:海域に生育する胞子で増える藻類

コンブ、ヒジキ、モズク、ワカメ、アオクサノリ、テングサ、アオサ、アオノリ

 

水との位置による分類


 (1) 抽水性emergent: 根は水底に固着し、葉や茎の一部は完全に水面から出る

 (2) 浮葉性 floating-leaved:根は水底に固着し、葉が水面に浮かぶもの
    ● 浮遊性植物 floating plant , planktonic plant:水面に浮かぶもの
 (3) 沈水性 submersion:水中に沈むもの
     ・affixed aquatic 固着水生
     ・suspended aquatic 半固着水生
    ● 沈水性植物 submerged plant
    ● 沈水性水生植物 submerged water plant
       岸に上がる stranded
 
 

水への適応性(adaptation to water)


1 湿生 helophytic , aquatic
    :水中ではなく、水辺や湿った場所に生育する
     塩湿地も含む。
  ● 湿生植物、湿地性植物 hygrophyte , helophyte , hydrophyte
2 亜水生semiaquatic:やわらかく湿った土地に成長する
3 中生 mesophytic:水の平均供給がある環境で生育する
4 乾生 xerophytic :乾燥に耐えて生育する
  ● 乾生植物 xerophyte:乾燥に耐える植物
         

湿地の種類


1 湿地 wet land , damp ground , marshy ground , marsh , swamp , swampland

  ● marsh:(草が生える)湿地、沼地、沼沢地
  ● swamp:(木が生える)湿地、沼地、沼沢地
  ● bog:(コケやヒースが生える)湿原、沼地、沼沢地
  ● heath ヒース :イギリス北部、アイルランドの荒地のこと又は
            そこに生えるエリカ属などの低い植物の総称
 (1) 集水湿地 catchment marsh:地形的に集水域
 (2) 浸透水湿地 seepage marsh:標高的に低いところか斜面の麓
   地形的な集水域ではない
 (3) 湧水湿地 spring-fed wetland , spring water wetland:
    湧水でできる、泥炭の蓄積に乏しい小規模な湿地
2 湿原 moor , marshy grassland
 (1) 高層湿原 high moor , bog:泥炭表面が高く、周囲の水面より高い

 (2) 低層湿原 low moor , fen:泥炭表面が低く、周囲の水面と同程度の高さ

3 水田 paddy field , rice field
 水田雑草 lowland weed

温度変化への適応性


  ● 耐暑性 heat-tolerant , heat resistance
  ● 高温耐性 high‐temperature tolerance , thermotolerant

  ● 高温植物= 高温耐性植物 megathermophyte,megatherm,macrothermophyte

  ● 耐寒性植物 hardy plant , cold-resistant plant,
  ● 耐寒性 cold hardy , winter‐hardy

高度による分類


  ● 高度による帯状分布(altitudinal zonation)
1 海岸生 coastal:海岸近くに分布
2 低地生 Lowland:標高500m以下に分布
3 山地生 montane:標高500m~高木帯
4 亜高山生 subalpine:高木帯~積雪帯
5 高山生 alpine:積雪帯以上

栄養摂取

 普通の植物は葉緑素をもつ独立栄養植物であり、それ以外の他の特殊な栄養摂取を行う植物もある。

独立栄養植物 autotrophy, autotroph


 CO2などの無機化合物のみを炭素原として生きる植物。
 葉緑体をもつ大多数の植物や藻類は光合成独立栄養 photoautotrophy である。

1 真核植物:シアノバクテリアが細胞内に共生し、光と水とCO2を用いて酸素発生型の光合成を行い、栄養素として有機化合物を必要とせず、無機物だけを用い、これを同化して、生物自体の体を構成する有機物を合成して生活する。

2 シアノバクテリア:NADPH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)とATP(アデノシン)を用いて、水を分解して酸素を発生し、CO2を還元する、酸素発生型光合成を行う。

従属栄養植物 epiphytic、寄生植物 parasite


 光合成を行わず他の植物の幹など基物に生えるもの
1 菌寄生植物=菌根栄養性 mycotrophic、菌従属栄養植物 mycoheterotrophic plants
:土壌中の菌類との共生体である菌根菌から栄養素を吸収する
 例) アヤメ科、ラン科、サクラソウ科、ホンゴウソウ科、ツツジ科ギンリョウソウ、ヒメハギ科、コルシア科、ヒナノシャクジョウ科、リンドウ科
  ● 半菌根栄養性 semi-mycotrophic
  ● 菌根 mycorrhizal
  ● 菌寄生菌 mycoparasite , parasitic fungi
  ● 菌こぶ fungal gall
2 植物寄生植物:植物の根または茎から栄養素を吸収する  根に寄生:ハマウツボ科、コシオガマ  茎に寄生:ネナシカズラ、ヤドリギ、スナヅル   ● 寄生根 haustrium, parasitic root
3 食虫植物 insectivorous plants:動物体や植物体を捕獲・分解して栄養素を吸収する=肉食植物 carnivorous plants:昆虫などの小動物を捉え、栄養を吸収する
  ● 捕虫葉 insectivorous leaf:食虫植物の捕虫のための特殊な葉
  ● 捕虫嚢insectivorous sac
  ● トラップ わなtrap  
  ● 感毛sensitive hair:刺激によって葉の開閉運動を起こす補虫用の毛
 

トラップ型


 (1) 落とし穴トラップ pitfall traps :消化酵素などの入った巻いた葉に落として捉える

    嚢状葉 pitchers、嚢状葉植物 pitcher plants

 (2) ハエ捕りトラップ flypaper traps=粘着型 (とりもち式)トラップ: 粘液により粘着

 (3) スナップトラップsnap traps, forked trap
    =閉じこめ型 (わな式、挟み込み式)トラップ:
    葉を素早く閉じて(trigger closing )獲物を捕食する

 (4) 嚢トラップ bladder traps =吸い込み型トラップ:

    蓋で密封され、陰圧になっている嚢(bladders , vesicula)で捉える。

 (5) ロブスターポットトラップ lobster-pots=鰻筒 eel traps=誘い込み型トラップ:

   内向きの毛があり、出られなく、消化器官(utricle, stomach) へ誘い込む。forked trapともいう。

    例) ゲンリセア属 Genlisea

 (6) 複合トラップ combination traps: flypaperと snap trapsの複合など


植物の生え方

 単生 solitary , alone:1本ずつ
 散生(散在) scattered , dispersed:点在している,まばらな
 群生gregarious :同一種の植物が同じ場所に群がって生えていること
 叢生(そうせい)cespitose , :基部が同一点から出て群がって生えること
 束生 clustered:基部が触れ合うか繋がり同一点でから出る場合こと
 株立ち tufted:一株の根元から複数の茎が分かれて立ち上がっている様子
 群落 community:何種類かの植物がまとまってつくる植物の集団
         異種植物が有機的なつながりをもつ
  ● やぶ状 clump form
  ● しげみ clump

木本と草本の分類

木本(樹木)と草本(草)の違い


  形成層 cambium:茎や根の師部と木部の間にあり、活発な分裂を行い幹が太くなる層
木本 tree :幹に形成層 cambium があり、年々成長し、幹が太くなる
   竹は形成層がないが木本に入れられている例外。
 ● 矮性の低木 shrublet
草本 herb:茎に形成層がなく、ある程度成長すると茎が太くならない。
   低木状 shrubby

亜低木 subshrubs:低木と草との中間のもの。茎や枝の基部は木質で、枝先が草質


   多肉植物 succulent plant

木本 tree , woody plant

高さによる分類

日本の図鑑では高木(5m以上)、中木、低木(3m以下)とするのが普通である。

  英文のtree(高木)は8m以上、shrub(低木)は8m以下。
 1 超高木:30m以上
 2 大高木:20m以上
 3 高木tree , arbor , tall tree:8m以上(又は10m以上)

 4 小高木(亜高木) small tree , subarbor:中木を含め3~8m(又は5~10m)

 5 低木=灌木(かんぼく) shrub , bush:高さ8m以下(又は5m以下)
      shrubを中木、低木に分ける場合(日本)
 6 中木:高さ3~5m
 7 低木:高さ1~3m
 8 小低木:高さ1m以下

  ● 亜低木 subshrub:根元だけ木質、他は草質の植物又は小低木(low shrub)

  ● 低木林 bush , 低木状 bushy

  ● モジャモジャの straggly:まばらに、不規則に伸びたまとまりのない形

  ● 矮性dwarf 、 ● 半矮性semi-dwarf

 

オーストラリアの分類


    高木 tree:高さ8m (26.2ft)以上
    低木 shrub :高さ2~8m
        tall shrub:高さ6~8m
     葉の被度が密 (70~100%) :closed-shrub
     葉の被度が中程度 (30~70%):open-shrub
     葉の被度がまばら(10~30%):tall shrubland
     葉の被度が極まばら(<10%) :tall open shrubland
    小低木 low shrub :2m(6.6 ft) 以下
     葉の被度が密 (70~100%) :closed-heath
        closed low shrubland(North America)
     葉の被度が中程度 (30~70%):open-heath
        mid-dense low shrubland(North America)
     葉の被度がまばら(10~30%):low shrubland
     葉の被度が極まばら(<10%) : low open shrublan

落葉性


  ● 常緑性 evergreen
     半常緑 semievergreen
  ● 落葉性 deciduous
     紅葉 autumn colours
     脱落性 deciduous、早落性 early deciduous,
     宿存性 persistent

針葉・広葉


  ・針葉樹 indeciduous tree
  ・広葉樹 broad‐leaved tree , broadleaf tree
     広葉樹材 dicotyledonous wood; hardwood
 

樹冠 crown , tree crown , canopy


 樹木の上部で葉が茂っている部分
 草の地上部全体もcrownという。
  ピラミッド形pyramidal、円錐形 conical、球形spherical , globular、
  惰円形 elliptical、 楕円状 oval、卵形 ovoid
 ● 群葉 foliage

幹 trunk


 ● 樹皮 bark , peeling
    亀裂( 割れ目)を生じ fissured 、縦の裂け目longitudinally fissured、
    剥離する exfoliating、ずたずたに切れる shred、特異な peculiar、
    薄皮(うすかわ、はくひ) peel、薄片 flake
 ● 色
    フェルト状の淡褐色 felt-like light brown、cinnamon-tan-orange
 ● 髄 pith
    均質homogeneous、分隔髓diaphragmed
 ● 皮目(ひもく) lenticellate:幹や枝の樹皮に形成される斑点、
     気孔の代わりに植物体内外の通気を行う

枝 branch


 ● 曲がりくねる tortuous , mass 、真っすぐ
 ● 断面
  円形:円柱[円筒]形(先端が細くなった) terete、類円柱形 subterete、
  四角:角張る angulate、4稜形(4-quetrou , 4-gonous )
 ● 当年枝(1年目の枝)branch of current year
 ● 前年小枝 branchlet of previous year
 ● 葉や花がついた小枝 spray
 ● 分枝 ramification
    分枝する ramify , branch off
    分枝した ramified , branched
    二又 dichotomous
 ● 大枝 bough
 ● 小枝 branchlet , twig
 

シュート shoot


 シュート=枝条(しじょう)=枝しょう shoot:茎とその上にできる多数の葉からなる単位
 

シュートの分枝の型

 1 二又分枝=二叉分枝、叉状分枝 dichotoous branching , dichotomy:

  軸の先端が等しい2つの軸になる分枝

 2 単軸分枝monopodial branching:主軸が発達して1本の軸をつくり、分枝する

 3 単軸状仮軸分枝monopodial sympodium:基本は単軸分枝であり、主茎の伸長がとまって腋芽からのびた枝が主軸的になる場合

 4 側方分枝 lateral branching:主軸の側方に側軸をつくる分枝

 5 仮軸分枝 sympodial branching:枝がよく発達し、主軸であるように見える分枝。側軸が主軸のようにふるまう(側芽が伸びて増えるもの)

 ● 仮軸性=連軸性 sympodial:側芽(側軸)が伸びて増え、主軸のように成長する性質(蘭)

 ● 単軸性=単茎性 monopodial:主軸が1本だけ伸びる性質

 芽 


1 不定芽 adventitious shoot :茎から発生する芽及び葉や根から発生する芽
                    (頂芽や側芽以外)

2 冬芽(とうが、ふゆめ) winter buds :秋に生じ、冬を越して春になって生長する芽

● 休眠芽(きゅうみんが)、休芽 dormant bud:生長を止めて休眠状態にある冬芽など。 

● 芽鱗(がりん) scale , bud scale:冬芽を保護するために覆う、鱗片

● 縁毛がある ciliate

● 毛状突起 trichome

● 葉痕(ようこん) scar:葉の落ちた跡、枝先の冬芽の下の数や形が観察の対象になる

    環状の annular
3 葉芽 leaf bud =枝芽(栄養芽) vegetative bud
    鱗片葉 perule(pl. perulae)=vegetative bud scales:葉芽の鱗片
4 新芽 sprouts shoot
 

芽型


 芽型=芽内形態 vernation:葉芽の中の葉の配置形態

   1 褶曲状(扇だたみ) pleated , plicate:閉じた扇のひだのように

   2 傾生 reclinate :葉が下向きに曲がる

   3 しわ状 wrinkled:しわくちゃcrumpled 又は波形corrugated

   4 跨状 equitant:アヤメの葉のように葉全体が平行に重なる

   5 半跨状 obvolute :1個の葉が対生する葉に半分重なる

   6 折り畳まれるfolded

   7 二つ折り duplicate , conduplicate

   8 蕨(わらび)巻き circinate :葉の先を中心にゼンマイのように巻き込む。

   9 巻かれる rolledrolled

   10 回旋状 convolute=supervolute :葉の横が重なるように横巻し、筒のように巻く。

   11 内巻き involute :葉の両側の縁が葉の上面に向かって巻く

   12 外巻き revolute ::葉の両側の縁が歯の下面に向かって巻く

   13 扁平型 applanate=flat and parallel:葉が互いに平ら


 竹 


 イネ科に含められる。
 稈 (culm):中空で節のある茎、髄腔をもったイネ科の茎をいい、竹も同じ。

藤本(とうほん)


 藤本/籐本 climbing tree:木本及び多年性の木質の蔓植物
 ● 蔓植物 (つるしょくぶつ) climbing plant , vine plant , vine , creeper
 ● 蔓性木 woody vine , vine tree ,liana , liane
   リアナ liana , liane:普通は熱帯雨林の木本のつる植物
 ● 蔓性草(つる草) herbaceous vine , vine grass , vine
   蔓が木質でないものは藤本には含めない。
   幹 caudex:草木の多年草の持続的に厚くなった茎、蔓の幹ともいう

草本 herb , herbaceous plant


1 1年草 annual
2 2年草 biennial
3 多年草 perennial , herbaceous perennials

 ● 常緑多年草 evergreen perennial plant
 ● 宿根草 perennial plant:地上部が枯れる多年草と常緑多年草
 ● 短命の多年草 short-lived perennial

 ● 一稔性=一回結実性 monocarpic:数年間、開花せずに成長し、最後に開花、結実して枯れるもの

  例) ムラサキケマン: 3年目に花をつけて枯れる。
     タケ、リュウゼツラン:10年以上

種子植物の構造

根 root


  一次根系 primary root system:種子中の幼根(radicle)、直根(tap root)
  二次根系 secondary root system:茎の下から伸びる根、ひげ根など
       シダ類(monilophytes) 、単子葉植物(monocots)で見られる。

1 定根(ていこん) normal root:主根と、主根から生じる側根を合わせていう

 (1) 主根 main root , axial root:幼根が伸び、主になる太い根
直根 tap root= axial root : 側根が小さく、主根が真下に伸びて肥大する根。ニンジン、ダイコンなど
枝根 ramose root , branch root:枝分かれした根の枝

 (2) 側根 lateral root:主根の側部に出る細い根
モクレン型根 magnolioid root:丈夫な側根(幅が0.5㎜以上)
短くて丈夫な毛根がわずかにある。

 (3) 細根 rootlet

 (4) 子根 daughter root

 (5) 根毛(こんもう)root hair:根の表皮から外側へ向かって伸びる毛状突起

 (6) 毛状根 hair root:ツツジ科で見られる非常に細い根。
内皮(endodermis)、外皮(exodermis)、仮道管(tracheid,)、篩管(sieve tube)、伴細胞(companion cell)からほとんどなる。根毛root hairとは全く異なる。

 (7) 小結節 nodule:やや堅く、不規則に膨れる。
マメ科の窒素固定菌でできる小結節
形態学的な型(type)
  クサネム型 (aeschynomenoid)
  ジャケツイバラ型(caesalpinioid)
  タヌキマメ型(crotalarioid)
  desmodioid型 (desmodioid)
  ハウチワマメ型(lupin)

2 不定根 adventitious root , adventive root:根以外の茎から2次的に発生する根

 (1) 冠根 crown root:茎の下位より発生する主根以外の太い根、不定根

 (2) ひげ根 fibrous root:幼根が退化し、茎の下部から多数ひげ状に出る不定根。単子葉植物に見られる。

 (3) 節根 nodal root:節から出るひげ根

 (4) 支柱根brace root :茎の下部から出て地中に入り,植物体を支える丈夫な根
=支持根 prop root

 (5) 気根 aerial root:地上の部分から生じ、空気中に露出している根
 光合成不定根 photosynthesizing adventitious root

3 初生根 primary root:種子が発芽して、胚の幼根 (radicle) からできる最初の根=種子根(種根) seminal root:種子が発芽したときに出る根

4 塊根(かいこん)tuberous root , tuber:根が肥大化したもの。塊茎のような不定芽を生じない。

   塊根をもつ植物

ダリア、オシロイバナ、ハナキンポウゲ、ダイコン(茎部も含む)、ニンジン、カブ、ゴボウ、サツマイモ、ヤーコンなど。

5 仮根 rhizoid:コケ、シダなどに見られる根に似た糸状の器官。

6 根被 velamen:根の表面にしばしばできる貯水組織。ラン科やサトイモ科など

  茎 

茎 stem


1 節 node:茎において葉がついている部分
  節間 internode:節と節との間
  髄腔 (pith cavity, medullary cavity) :節間の中心部 (髄) が消失た中空の孔
  稈 (culm):中空で節のある茎、髄腔をもったイネ科の茎をいう。
    髄腔をもたないカヤツリグサ科の茎も稈ということがある。
   lacunar :裂孔、小窩、ラクナ
   lacunar node:断面の維管束に隙間(gap)のある節
    隙間の数によりuni lacunar、 tri-lacunar 、multilacunarという。
    ブドウ科は3~7lacunar node
2 茎の内部
  1中空 hollow , fistular , fistulose
  中実 solid
3 茎の形

 円柱形(terete)、円筒形(cylindrical)、4稜形(4-quetrou , quadrate)、二形の(dimorphic)、角がある(angled )、管状(fistulose)、樹木状の(arborescent)

4 茎の質

 木質woody、 繊維質fibrous、多肉質succulent
 悪臭がある malodorous

5 茎の表面  毛の状態は葉の表面参照

 無毛 glabrous、平滑 smooth、毛がほとんどないglabrate ,glabrescen、有毛hairy 、剛毛があるsetose、 腺がある glandular、腺がない eglandular 、刺がある aculeate , prickly、 下向きのretrorsely , downwardly、上向きの retrousse, upwardly、 縦筋がある striate、角がある(角張る) angulate、皮目(ひもく)がある lenticelate

 ○地下のsubterranean

茎の種類

地上茎 aerial stem, epigeal stem, terrestrial stem


   地上茎とは地表面より上にある茎の総称
 

生育タイプ

 

茎や枝の種類

  1. 走出枝(そうしゅつし)=横出枝=ランナー runner:
    主茎の基部から出る枝で、枝の先端だけに不定根を出す子株をつけるもの
    ユキノシタ (ユキノシタ科) 、オランダイチゴ (バラ科)
  2. 匍匐茎(ほふくけい) repent stem: 全長にわたって地表を這い、
    節から多くの根を出す茎
    広義には傾伏茎や平伏茎を含めることもある。
     フタバアオイ (ウマノスズクサ科) 、イチゴ (バラ科)、カタバミ (カタバミ科)、 チドメグサ (セリ科)、ジシバリ (キク科)、シバ (イネ科) など
  3. 匍匐枝(ほふくし)=匐枝(ふくし)=ストロン stolon:匍匐茎の基部から出る枝
    節から不定根を出し、分断すると節ごとに子株となる。
    ネコノメソウ属 (ユキノシタ科) 、ヒメヘビイチゴ (バラ科)、カキドオシ (シソ科)、 ムラサキサギゴケ (ゴマノハグサ科) など
    匍匐枝を伸ばす stoloniferous(producing stolons)
  4. つる (liane , vine) :単独では直立できず、基物を支えに上に伸びる茎の総称。
    lianeは普通、木。 vineは広い意味では這う(creeping) ものも含める。
    蔓植物 liane , liana , vine plant , creeper , creeping plant
    木質籐本 woody climber

    4-1 巻きつき茎 twining stem (回旋茎、攀縁茎) :基物に巻きついて伸びる
    普通、巻き方 (右巻き、左巻き) は分類群によって一定である。
    ウマノスズクサ (ウマノスズクサ科) 、フジ (マメ科)、アケビ (アケビ科)、アサガオ (ヒルガオ科)、ヘクソカズラ (アカネ科)、スイカズラ (スイカズラ科) など
    caudex:草木の多年草の持続的に厚くなった茎

    4-2 よじのぼり茎 climbing stem (攀縁茎、登攀茎)=よじのぼり蔓 scrambling vine:
    巻きひげ(tendrils)や付着根(adhesive root)により、基物にとりついて伸びる。
    節から発根(活着) rooting at nodes
    よじ登り茎のつる植物 climber
    カニクサ (ウラボシ綱) 、センニンソウ (キンポウゲ科)、ソラマメ (マメ科)、ツタ

  5. しだれ weeping :支持力が弱いため枝が水平よりも下方に垂れる木本の枝
    シダレヤナギ (ヤナギ科) 、シダレザクラ (バラ科) など
    イワシャジン (キキョウ科) などの草本では垂れ下がってもしだれとはいわない
  6. 偽茎 pseudostem:葉鞘が幾重にも重なりあり茎のように見えるもの
    カンナ、ハナミョウガ、バナナなど
  7. 葉状枝 cladode :葉のように見える枝。クサスギカズラ、ナギイカダなどに見られる。

花茎


 有花茎 と無花茎がある。有花茎と無花茎では茎の高さや性質、葉の大きさや形などが異なることがある。
無茎と有茎

地下茎 underground stem, subterranean stem


  地表面より下にある茎を総称して地下茎 という。

栄養の貯蔵器官

 地下に貯蔵

球根(きゅうこん) rootstock


 広義の球根は越年草、多年草、低木の根、茎、葉などの特定の部分に養分が蓄積され、変形・肥大化してできた貯蔵器官
広義の球根は以下の6種類に分類され、狭義には鱗茎を指す。塊根は根であり、担根体は根と地下茎の中間、他は地下茎。
  1. 根茎(こんけい) rhizome, root stock :地下茎のうち、特殊化していないもの。
    茎をもつ rhizomatous
    根茎は根と似ているが、葉 (鱗片葉など) をつける茎である。
      例)レンコン、ワサビ、ウコン、ショウガ
    ● 根茎のタイプ
     ① 一次根茎 (primary rhizome):
      形成初期から地中にあって地上茎とは形態的に異なるもの
     ②二次根茎 (secondary rhizome) :
      地上茎の一部が地中に埋もれて根茎になったもの
    ● 形
     塊状(massive)かいじょう:不規則な塊(かたまり)
     角(つの)状の(corniform=horn-shaped):角(つの)状の形
    ● 伸びる方向
     ①横走根茎 (horizontal rhizome):地中を水平方向に伸びる根茎
      匍匐根茎 (creeping rhizome, stoloniform rhizome) :
       横走根茎のうち、特に節間が長いもの
       モミジガサ (キク科) 、ガマ (ガマ科)など
     ②直立根茎 (vertical rhizome) :地中を垂直方向に伸びる根茎
       リンドウ (リンドウ科) など
       下向きの (descending)
    ● タイプの複合
     ①単一根茎 (simple rhizome) :単一のタイプからなる根茎のこと
     ②複合根茎 (compound rhizome):
  2. 塊茎(かいけい)stem tuber , tuber:地下茎が肥大し、養分を貯え塊状になるもの
    薄皮(tunic)で包まれない
     アネモネ、シュウカイドウ、キクイモ、ショウガなど
    ● 塊茎をもつ tuberous
    ※ 広義には塊茎、塊根を併せてtuberといい、塊茎はstem tuber、塊根はroot tubersという。
     地下性 stem tubers:球根ベゴニア(Tuberous begonia) ,ヤム(yam) , シクラメン(Cyclamen) , ジャガイモ , チョロギ
     地上性  aerial stem tubers:Mignonette vine (Anredera cordifolia)
  3. 塊根(かいこん)root tubers , storage root:根が肥大化したもの。塊茎のような不定芽を生じない。
    ダリア、オシロイバナ、ハナキンポウゲ , ワスレグサ(Hemerocallis fulva) オモダカ属(Sagittaria) , キャッサバ(Manihot esculenta) , ダイコン(茎部分もある) , ニンジン , カブ , ゴボウ , サツマイモ((Ipomoea batatas)、ヤーコン(Smallanthus sonchifolius)。
  4. 鱗茎(りんけい)=狭義の球根 bulb , true bulb:短縮茎に多肉になった鱗片葉(鱗葉)=鱗茎葉が層状に重なるもの
    薄皮(tunic)で包まれる。
     ユリ、タマネギ、スイセン、ヒガンバナ、チューリップ、ヒヤシンス、ニンニク、ラッキョウ、
    層状鱗茎:鱗片葉が層状になる チューリップ、タマネギなど
    鱗状鱗茎:鱗片葉がうろこ状に重なりあう ユリなど
    ● 偽鱗茎, 偽球茎 pseudobulb:ラン
    ● 側球 clove
    ● 鱗茎をもつ bulbous
    ● 小鱗茎 bulbil , scale:  =木子(きご):ユリの一部などで茎の下部の節のえき芽が肥大してできる小鱗茎。
  5. 球茎(きゅうけい)corm, bulbo-tuber, bulbotuber:鱗片葉が小さく、茎自身が肥大化して球状になったもの。
    頂部に1~数個の芽を持つ。
    葉鞘が乾燥した薄皮(tunic)で包まれる。
    薄皮(tunic):鱗茎の外皮、葉鞘が乾燥したもの
     イヌサフラン科のイヌサフラン属(Colchicum) , オモダカ科(Alismataceae)のオモダカ属(Sagittaria)、キジカクシ科(Asparagaceae)のベッセラ属(Bessera) , ブロディアエア属(Brodiaea) , ディケロステンマ属 (Dichelostemma) ,ミラ属 (Milla) , テコフィラエア属(Tecophilaea)、キク科のユリアザミ属(Liatris)、アヤメ科(Iridaceae)のアヤメ属(Iris), グラジオラス属(Gladiolus) , クロッカス属(Crocus) , フリージア属(Freesia) , ラペイルージア属(Lapeirousia) , ワトソニア属(watsonia)、サトイモ科(Araceae)のサトイモ属(Colocasia )、コンニャク属(Amorphophallus)、テンナンショウ属(Arisaema )、ハンゲ属(Pinellia)、バショウ科のバショウ属(Musa)
    ● 小球茎 cormel=cormlet:球茎の基部にできる小さな球形
    ● 球茎をもつ cormous
    ● 堅くてもろい質の crustaceous
      ※サトイモ科については2説ある
    Flora of Chinaでは塊茎(tuber)、Flora of north Americaでは球茎(corm)
  6. 担根体(たんこんたい)rhizophore:根でも茎でもない肥大、ヤマノイモ属にみられる 

栄養繁殖器官 vegetative propagation organ


オニユリ、コモチマンネングサ、ニンニク
花序の花がむかごとなるもの:ムカゴトラノオ、ノビル
stem bulblet:若い(juvenile)小球根
stem bulbil:むかご


刺(棘)

 刺は植物の茎や葉などにつく、堅くて先の尖った突起。広義にはspineという。
 

刺(棘)の種類


1 刺状突起体 prickle:表皮細胞が変化したもので、多数つき、取れやすい。

  維管束(vascular bundle)をもたない。
  例) Rosa(幹、枝)、Senegalia、Ailanthus、 Solanum (葉脈上) , Cirsium(総苞片の縁)、Ilex(葉縁) , Datura(果実), Pandanus(気根) , Socratea(根)

2 茎針(針状の刺) thorn(stem spine):枝が変化したもの、茎針ともいう。
   維管束(vascular bundle)をもつ。
    バラでも使われるがバラの場合はprickleが正しい。
    例) Pyracantha.Gleditsia triacanthos , Alluaudia,
3 刺 spine:葉や托葉が変化したもの 。
  3-1 葉針 leaf spine , leaf needleともいう
    例) Cactusサボテンの刺、Berberis
  3-2 petiolar spines:葉柄が変化したもの
    例)  Fouquieria , Fouquieria splendens , Idria columnaris
  3-3 leaflet spines
    例) ナツメヤシ属
  3-4 托葉状刺 stiplar spin
    例) Euphorbia , Robinia pseudoacacia、Acacia 、Pseudomyrmex
 

刺関連の用語

  小刺 spinula , spinule、真っすぐstraight、鉤状uncinate , hook-shaped、逆刺(後ろに向いた刺)retrorse、剛毛状 bristle、刺がある armed、刺がない unarmed

毛(毛状突起)

 葉や茎などに様々な毛が生え、形態学的に重要である。

毛の量

 まばらに sparsely、密に densely、わずかに slightly、散在する scattered、単生singly、束生 in tufts、密毛 indumentum

毛の付き方


毛の状態


 

毛の分枝の形

 

毛の種類


1 毛状突起 trichome:表皮細胞に起源をもつ毛状の突起、毛(hair)も含む。
伏した毛状突起 appressed trichome:丁字状の剛毛。ミズキ、クマノミズキ

2 パピラ=乳頭状突起 papilla (突起毛) :背の低い単細胞性の突起
パピラがある papillate

3 腺毛 glandular hair:柄 (stalk)と分泌性の頭部 (head)からなる毛状突起

4 鱗片毛(鱗片)=鱗毛(りんもう) scaly hair:複雑な形態をもった多細胞性の毛状突起
   鱗片状 squamous、鱗片に似たscalelike、楯状毛 peltate hair、勲章毛
5 鉤毛(こうもう)(鉤状毛) glochidium , hooked hair:鉤状に曲がった毛状突起
   単細胞性(unicellular)と多細胞性(multicellular)がある
   螫毛(せきもう) barbed: 釣り針の逆とげのような毛、
6 軟毛
7 剛毛

9 毛状体emergence:基本組織や維管束が関与してできる毛状構造をもつもの


葉 leaf , foliage

 葉とは植物の栄養器官の一つであり、葉柄、葉身、托葉からなる。すべてあるものを完全葉という。
1 偽葉(仮葉)phyllode:葉が退化し、葉柄が葉のように変化したもの
  アカシア、多肉植物のOxalis succulentaなどでみられる。
2 葉状枝 cladodes:茎から出て、葉と同じように光合成を行う機能をもつ。
  サボテンの葉のように見える茎が葉状枝、葉は刺になる。
  例)アスパラガス, ナギイカダ、アカシアのAcacia glaucoptera

葉の出る時期

 花に対して葉の出る順序
 〇 hysteranthous 花後に葉が出る
 〇 synanthous   花と同時に葉が出る
 〇 proteranthous  花より前に葉が出る

葉のつく位置


1 根生葉(こんせいよう)、根出葉 basal leaf , radical leaf:茎の基部から出る葉
   開花期に枯れる withered at anthesis

2 ロゼットrosette:根生葉が節間部が詰ってほとんど同じ高さから円盤状に並んだ形態
  ロゼット状 rosulate

3 茎葉(けいよう) cauline leaf:茎の途中から出る葉
   基部に近い proximal
   上部の distal cauline leave

葉のつき方


 葉序 phyllotaxis :茎に葉がどのようについているかを表すもの

1 互生 alternate:葉が互い違いに出るつき方
直列線:葉の着点を結んだ線が茎と平行になるもの
直列線が2列になる互生:2列互生 2-ranked alternate
直列線が3列になる互生:3列互生 3-ranked alternate
直列線が4列になる互生:4列互生 4-ranked alternate
 (コクサギ型葉序 orixate phyllotaxis )
 葉が同じ側に2個ずつ交互する。例 ケンポナシ、サルスベリ、ヤブニッケイ
 ・2列生 (distichous)、2列に(2-ranked)

2 螺生(らせい) spiral , spirally arranged:互生する葉が茎の周りにらせん状につく

3 対生 opposite:葉が2個向かい合って出るつき方

3-1 十字対生 (decussate opposite) :対生する葉が90度ずつずれてつくもの
上から見ると十字形に見える
ナデシコ科、リンドウ科、ゴマノハグサ科、シソ科、アカネ科、スイカズラ科

3-2 2列対生 (distichous opposite) :直列線が2列になる対生 キンシバイ
    2列 2-ranked、2列生distichous
3-3 複2列対生 (bijugate) :直列線が4列、不等間隔の対生 コニシキソウ
3-4 複系2列対生 (spiral deccusate) :直列線が6列以上の対生 カヤ
4 輪生 verticillate , whorled
   3輪生 (ternate)、4輪生 (quaternate)、5輪生 (quinate)
5 偽輪生 false verticillate , pseudoverticillate:
     対生する上下の葉の節間が短縮し、一見輪生のように見えるもの
6 束生 fascicled :節間が短縮した複数の節から葉が出る
   イチョウ、アケビ
   房状 tufted:密に束生  
7 跨(こ)状 equitant:アヤメの葉のように基部が重なり合っている状態
8 櫛(くし)状 pectinately , pectinately arranged
9 放射状 radially
10 単面の unifacial
11 2面のbifacial
 ・不等葉性 anisophyllous , heterophyllous:葉の形や大きさが異なる
 ・葉のつく向き leaf orientation
    斜上 upright、水平 horizontal 、下垂 pendulous

葉の大きさの分類  leaf size


          広さで分類          長さ
 Leptophyll:    < 25 ㎜2
 Nanophyll:   25~ 225 ㎜2        < 2.5㎝
 Microphyll:   225~ 2,025 ㎜2      2.5~7.6㎝
 Notophyll : 2,025~ 4,500 ㎜2      7.6~12.7㎝
 Mesophyll : 4,500~ 18,225 ㎜2      > 12.7㎝
 Macrophyll:18,225~164,025 ㎜2
 Megaphyll :  >164,025 ㎜2

葉柄(ようへい) petiole , leafstalk


  葉柄は葉の一部であり、葉身を支えて茎に付着する細くなった部分
 

葉柄関係用語


托葉 stipule


 托葉は葉柄の基部に一対つき、木本の40%、草本の20%に存在するといわれる。

托葉の種類


1 側生托葉 lateral stipule: 葉柄基部につき、離生するもの
    例:サクラ属 、エンドウ属 、スミレ属など
2 合生托葉 adnate stipule :葉柄に沿って合着するもの
    例:バラ属など
3 葉間托葉 interfoliar stipule: 対生葉の相対する托葉が合着しているもの。
    = 葉柄間托葉 interpetiolar stipule
   例:イラクサ、アカネ属 など

  アカネやヤエムグラでは托葉が普通葉と同形で、腋芽の有無でしか区別できない。

4 葉柄外托葉 extrapetiolar:托葉が葉柄に向かってではなく、外側に向かってつくもの。

托葉の形


  隙間状 slit-like、環状 encircling(ring-like)、托葉状刺 stiplar spin、 線形、針状thorn(例:ニセアカシア)、巻ひげ状tendril(例:サルトリイバラ)、 矛(ほこ)形 hastate , 類披針形 sublanceolate、ずきん状(フード)の hooded:モクレン科の葉芽

托葉の質


   膜質、葉質など葉質を参照

葉鞘(ようしょう)  sheath


 葉鞘(ようしょう)は葉の基部が鞘 (さや) 状になり、茎を包む部分
    開いた葉鞘 open sheath:鞘が管状でないもの
    閉じた葉鞘 closed seath:鞘が管状のもの

蓋葉(がいよう) subtending leaf


  蓋葉は腋芽(えきが)又は腋芽が伸長してつくった枝を抱く葉。
   花又は花序を抱く葉についてもいう。

葉身(ようしん) lamina , leaf blade、blade


 葉身は 葉の主要部分。表皮と葉肉と葉脈とから成り、一般に扁平な形をしている。
 形は針状などや分裂した複葉など様々なのものがある。葉片ともいう。
  1 単葉 unifoliate , simple
  2 複葉 compound leaf
 

複葉の種類


 1 羽状複葉 pinnate
 (1) 奇数羽状複葉 impari-pinnate , odd-pinnate
    3出複葉 ternate 、2回3出複葉 biternate
    2回羽状 bipinnate、
    3回羽状 tripinnate
    2回奇数羽状 biiimpari-pinnate
    3回奇数羽状 triimpari-pinnate
 (2) 偶数羽状複葉 paripinnate , paripinnately compound leaf ,
             even-pinnately compound leaf
    2回偶数羽状 biparipinnate
    3回偶数羽状 triparipinnate
 2 3小葉 3-foliolate(trifoliolate)=3出複葉 ternate
 3 鳥足状複葉 pedate
 4 掌状複葉 palmate
 5 掌状深裂複葉 palmatipartite
 6 扇状複葉 fan shaped

葉身・小葉の形 shape


葉の2形性 dimorphic
 春葉 spring leafと夏葉 summer leafに違いがあるもの
  ツツジなどで見られる。
葉形の定義
 植物用語では厳密に定義されたものとは考えにくい解説もある。

  Q値(長さ/幅の比):菌類のシスチジアや胞子の形などの長さ/幅の比

   Flora Agaricina Neerlandica に示される

葉形

葉身の周縁の形と裂け方 margin , shape of the margin

   裂片lobes 、5裂 5-lobed、3裂 3-cleft 、尖った裂片pointed lobes
裂け方
 ● 掌状分裂 palmate
 ● 鳥足状分裂」 pedate
 ● 羽状分裂 pinnate
  ● 頭大羽状 lyrate
  ● 櫛状 pectinate

分裂の深さによる分類

葉縁の形による分類

葉身の先の形 apex(pl. apices) , shape of the tip


  形を頭と変えて表現する。

葉身の基部の形 base , shape of the base , base form


葉身の斑の形 type of the variegation


   班入り(ふいり) variegated , spotted
   班入り葉 variegated leaf

葉質


  革質 leathery 、紙質 papery , chartaceous、草質 herbaceous、 膜質 membrane、肉質 fleshy、多肉質 succulent、薄膜状のscarious、皮のような coriaceous、 硬いfirm、薄膜状の革質 scarious-leathery、硬くなる indurate、曲がらず硬いstiff、 厚い thick 、薄いthin、透明・無色 hyaline

  葉肉(ようにく) mesophyll :葉の表皮の内側にあり、葉緑体を含む柔細胞の集合。
海綿状組織 spongy tissue と柵状(さくじょう)組織 palisade layer とからなる

葉脈 vain , nerves


脈相 venation


1 平行脈 parallel vein:多数の主脈が平行に並ぶ脈、普通、側脈がない
   = parallelodromous
2 羽状脈 pinnately vein = pinninerved = penninerved = penniveined
  [類語] 羽毛状脈feather-veined, 網状reticulate, 羽状網目pinnate-netted,
   羽状うね penniribbed
  :主脈から左右に対生して側脈が出るもの

羽状脈の種類


 2-1 直行脈 craspedodromous:二次脈が葉縁で終わる(達する)羽状脈

  (1) 単純直行脈 simple craspedodromous:二次脈が単純に1本で縁まで伸びるもの

  (2) 半直行脈 semicraspedodromous:二次脈が弓状に曲がってつながり、
その先に脈があり、葉縁まで伸びるもの

 2-2 曲行脈camptodromous:二次脈が葉縁に達しないもの
     [中国語;弓曲的]

  (1) 環結脈 brochidodromous:二次脈が葉縁で 曲がってつながるもの

  (2) 真曲行脈eucamptdromous:二次脈が葉縁で 曲がってつながらず、終わるもの

  (3) 分枝脈 cradodromous:二次脈が葉縁付近で分枝し、曲がらず、終わるもの

  (4) 網結脈 reticulodromous:二次脈が繰り返し分枝し、細かい網状になるもの

 2-3 隱脈 hyphodromous:二次脈が無い又は不明瞭なもの
3 網状脈 reticulate vain , branched vein , netted vein , reticulate nervule:
   細脈が網目状になるもの
4 掌状脈 palmate , palmately nerved:一次脈が1点から出るもの
       =actinodromous
 4-1 basal actinodromous:基部から数本の一次脈が出るもの
 4-2 suprabasal actinodromous:主脈の基部の上から一次側脈が出るもの
 4-3 平行掌状脈 parallel palmate(covergent):掌状脈で主脈が平行になるもの
    (先で集まるもの)
5 鳥足状脈 pedate vein:掌状脈に似るが、一次側脈が2分岐するもの
  複出掌状脈 palinactinodromous  例) プラタナス
5 平行羽状脈 unicostate (parallel pinnate):左右の側脈が一直線に並ぶ
 5-1 湾生脈 campylodromous:一次脈が平行脈のようにハート形に曲がる
    例 マイヅルソウ

 5-2 湾生脈 頂聚脈 acrodromous:2以上の一次脈が平行脈のように葉先に向かって弓状になるもの

6 三行脈 trinerve , triplinerve:主脈と同じような2本の側脈が基部から出るもの

 6-1 基三出脈 trinerve
 6-2 離基三出脈 triplinerve
7 二叉脈forked vein , dichotomous vein:脈が二又分岐するもの
8 縦脈 longitudinal vein:主脈に沿ってほとんどの側脈が縦に伸びるもの
9 横細脈のある脈 cross-venulate vein:細脈が二次脈を繋ぐもの
10 間質性脈 interstitial vein
11 車状脈 rotate vein:盾状葉の放射状の脈
12 弓状脈 arcuate vein:二次脈が先方向に弓状に曲がる
13 単一脈 simple vein:主脈が1本だけあり分枝しないもの

葉脈の構成


1 主脈 principal vain = 一次脈 primary vein:最も太い葉脈、数本の場合もある
= 中央脈(中脈) midvein , central vein:葉身の中央にある太い主脈

 1-1 多数主脈 malticostate
 1-2 単一主脈 unicostate
     収束 covergent:先で集まる
     射出 divergent:放射状に出る
2 側脈 lateral vein :主脈から分かれて出る葉脈
    分岐が繰り返される場合
 2-1 一次側脈 primary lateral vein =二次脈secondary vein , secondary nerves
 2-2 二次側脈 secondary lateral vein = 三次脈tertiary vein
     対 jugate , pair、掌状に palmately、真っすぐ straight
 2-3 横脈transverse vein
    ・結合脈 cross vein
 2-4 細脈 veinlet , nervules:主脈や側脈から出る細かい脈
 2-5 葉縁脈(ようえんみゃく) marginal vein:側脈をつなぎ葉縁に平行
     = intramarginal vein , collective vein
     ・亜葉縁脈 submarginal vein

3 樹脂道 resin canals:マツ科、ウコギ科などの樹脂の分泌道となる細胞空隙。

葉表面の状態(毛の付き方など)


葉における気孔の配置 stomata distribution


気孔帯 stomatal band


  気孔帯は針葉樹の葉裏に見られる気孔の並んでできる白色の帯
  stomatal line

葉などの運動


  植物ホルモンによる方向性のある屈性と、決められた動きをする傾性に分けられる。

1 屈性 tropism:環境からの刺激に応答して屈曲する性質

2 傾性 nasty:刺激の方向でなく、植物の本来の構造や性質によって決るもの


花序 inflorescence

  花序は茎又は枝上における花の配列状態をいう。基部にある花序柄、中心の花序軸(花軸)、分枝した枝になどに葉、苞、小苞、花がつく。葉が無又は小さい場合には花茎という。

  花序に花のつく密度

  密につく dence , densely、疎につく lax, まばらに sparsely , 緩く loosely、わずかに slightly


花序の開花の順序による分類


 開花が順序よく行われるものは有限花序と無限花序に分類される。
1 無限花序 indeterminate inflorescence = 求心性花序 centripetal inflorescence
         indefinite inflorescence
   花序が上へ伸び、下から順に成熟して花が咲いていくもの。
   単軸(monopodial)
1-1 求頂成熟無限花序:花は下から上に向かって咲き進み、最後に頂花 が咲く。
2 有限花序 determinate inflorescence = 遠心性花序 centrifugal inflorescence
         definite inflorescence
   最後に生じた頂部の花がまず咲き、花の数を限定するもの
    仮軸/連軸(symopodial)
2-1 求基成熟有限花序:花は上の頂花から咲き、下に向かって咲き進む。
2-2 求頂成熟有限花序:頂花が咲き、下から上に向かって花が咲き進む。
 
1 求(向)頂的 acropetal:先端に向かって花が成熟していくこと
  (下から順に咲く)
2 求(向)基的 basipetal:基部に向かって花が成熟していくこと
  (上から順に咲く)
花序のつく位置

  頂生(terminal)、腋生(axillary)、腋外生(extra-axillary)、底生(basal)、側生(lateral)、葉腋の上につく(supraaxillary)、茎生花の(cauliflorous)


花序の形態的な分類(花序の種類)

1 単頂花序 solitary inflorescence: 花茎の先や葉腋、枝先に花が単生するもの。=uniflowered inflorescence

2 双生 paired :花が2個ずつつくもの
3 束生(密散花序) fascicle , close cluster :花が多数、束状につくもの
     房状(密集する) cluster
4 単散花序(単出集散花序) monochasium: ミヤマイ (イグサ科) など。
    枝は各節に1本で主軸に互生する。

5 集散花序 cyme, cymose:主軸の先端と下部の節から出た横枝に花がつくもの

 5-1 単出集散花序 monochasial cyme:枝は各節に1本生じるもの。

 5-2 巻散花序(かんさん) drepanium: (さそり型花序、鎌形花序、鎌状集散花序)ともいう。ムラサキ科に見られる。
 枝は各節に1本で主軸に対して常に遠位側に分枝し、一平面上に渦巻き状になる。

 5-3 扇状花序 (扇状集散花序) rhipidium: ゴクラクチョウ (バショウ科) など。枝は各節に1本で一平面上で左右交互に分枝する。

 5-4 かたつむり形花序 (かたつむり状集散花序) bostryx:(キスゲ科)など。枝は各節に1本で同一方向に直角な面に分枝し、立体的な渦巻き状になる。

 5-5 さそり形花序 (扇状集散花序 ) , cincinnus(pl. cincinni):ツユクサ科に見られる。枝は各節に1本で 左右相互に直角な面に分枝し、立体的になる。

 5-6 さそり形花序 (巻散花序、かま型花序) scorpioid:ワスレナグサ、キュウリグサなど。枝は各節に1本で、花軸の先端は螺旋を描いて巻き、花が外側に並ぶもの。

 5-7 二出集散花序 (岐散花序) dichasium(pl. dichasia) , dichasial cyme
枝が各節に2本生じるもの。
 二出集散花序をもつ dichasiate
 ナデシコ科、ヤドリギ科 、ニシキギ科など。
 集散花序の分岐 chasially
  単分岐 monochasially
  2分岐 dichasially

 5-8 多散花序 pleiochasium:枝は各節に3本以上生じ、節間や花柄が明瞭。
ヤブガラシ、キリンソウ、アジサイ、ガマズミ など

 5-9 頭状集散花序 capitate cyme

 5-10 団散花序(だんさん) glomerule: 小さなボール状の集散花序。団集花序ともいう。
 ヤマボウシ、ミズ属 、レンプクソウ属など。
 枝は各節に3本以上生じるが、節間や花柄が短縮して不明瞭

 5-11 小集散花序 cymule

6 杯状花序 (椀状花序、壺状花序) cyathium:トウダイグサ科の一部に見られる。 基部に苞葉があり、杯状の総苞involucre (杯状体) に小さな数個の花が頂生する。 中心に1個の雌花、周囲に雄花があり、花序が1つの花のように見える (偽花)。
 複合の擬散形花序となることが多い。

7 隠頭花序 (イチジク状花序) hypanthium:イチジク科に見られる
  花序軸が多肉化し、中央が窪んで壺状になっているもの。
  癭花(えいか) gall flower イチジク状花序の短花柱の小花
8 球花 strobilus , strobile , cone :針葉樹(マツなど)の球形花序
 8-1 花粉錐(毬状花序) pollen cone :針葉樹(マツなど)の雄花序
   = 雄錐 male cone , microstrobilus
   中心軸から広がる小胞子葉(葉の変化)の集まり。
   小胞子葉には各々1~数個の小胞子嚢(花粉嚢)がある。
    小胞子葉 microsporophylls

 8-2 胚珠錐(球花) ovule cone , seed cone:針葉樹(マツなど)の雌花序
= 雌錘 female cone , megastrobilus⇒果実:毬果、球果strobile , corn , seed cone

9 総状花序 raceme , racemiform:長い主軸に有柄の花が並んでつくもの

 ・小穂(しょうすい)spikelet:総状花序が極端に圧縮して鱗片が重なり合う構造のもの。

   イネ科、カヤツリグサ科では小穂が花序の構成単位と見なされる。
 ・総状の racemose

10 穂状花序(すいじょう) spike , spiciform:長い主軸に無柄の花が並んでつくもの。オオバコなど

  穂状花序的に(spicately)

 10-1 尾状花序 amant, amentum , catkin:単性の花が穂状につき、垂れ下がる。枯れたときには、花序の基部から外れて落ちる。
 ヤナギ科、カバノキ科などを特に指して言いう。

 10-2 イグサ形花序 anthela, anthelae:カヤツリグサ科にみられる

 10-3 肉穂花序 spadix:穂状花序の主軸が肉厚に膨らんだもの。
 セキショウ、ショウブ、ミズバショウ、コンニャクなど
※ガマも肉穂花序に含められる。上部の雄穂花序、下部に雌穂花序がつく。

  ●カルポディウム carpodium(pl. carpodia):
ガマ属にみられる子房と胚珠が退化してこん棒形になった不稔の雌花。短い花柱があり、広がった柱頭を欠く。

11 頭花(頭状花序) capitulum(pl. capitula) , caput, head , capitate:
花床(かしょう)=花托 receptacle に無柄の小花 floret が密生してつく。
穂状花序が極端に詰まったものと考えられている。キク科など。
キク科の場合は基部の総苞でまとまり、1個の花のように見える。
● 頭状花のないacephalus
● 小花 floret:頭花の中の個々の花    

小花の種類

   

頭花のタイプ

(訳が見つからないため直訳)
 1 中心小花頭花 discoid capitulum

  同形の筒状小花だけからなる頭花
全て筒状又は糸状小花で異なる周辺小花をもたない。
小花は全て雄性、全て雌性、又は全て両性。

  例)アザミ属、オオヒレアザミ属、オナモミ属、コウモリソウ属、チョウセンアザミ属、トウヒレン属、ゴールドスティック、ヒゴタイ属、ワタスギギク属

 2 舌状小花頭花 ligulate capitulum:舌状小花だけからなる頭花

  例)アキノノゲシ、アゼトウナ、ニガナ、タンポポ、キクニガナ(チコリー)

 3 放射状頭花 radiate capitulum:
  中心小花は両性、舌状小花は1列又はそれ以上の頭花

  例)シオン属、セイタカアワダチソウ、ヒマワリ、Ursinia speciosa

 4 円盤型頭花 disciform capitulum
   中心小花は両性又は機能が雄性、周辺小花は筒状で雌性の頭花
  異形花型(heterogamous)、discoid capitulumに似るが、周辺小花が違う。
  周辺小花が放射状に広がる。

  例)ウスベニチチコグサ、ダンドボロギク、チチコグサ、ノブキ、トキンソウ、イズハハコ属、ムギワラギク属、ヨモギ属

 5 輻射型頭花 radiant capitulum

   中心小花は両性又は機能が雄性、周辺小花は舌状で大きく、不稔の頭花
周辺小花はときに花冠が左右相称になる。
例)ヤマヤグルマギク(Centaurea montana)
  (参考 Flora of Tropical East Africa - Compositae 1 (2000)p1)

 

12 散房花序 corymb , corymbiform:主軸が短く、それより長い花柄の花が固まってつく。
 サクラ、アジサイなど。
 装飾花ornamental , sterile radiant flowers、周辺のperipheral

13 散形花序 umbel, umbellate inflorescence:
 主軸が極めて短く、花柄がほとんど同じ点につく。
 ヤツデ、サクラソウなど

 ● 散形花序柄がある(散形状) radiate
 ● 散形花序の形態でumbelliform

14 擬散形花序 pseudumbel:散形花序のような花序。トウダイグサ属など


複合花序 compound inflorescence

単一花序と複合花序



複合花序の種類


1 同形複合花序 (isomorphous compound inflorescence)
  同じ花序の複合 2 異形複合花序 (heteromorphous compound inflorescence):
  花序が異なる花序形に複合するもの
3 円錐花序 panicle , paniculiform:円錐形の複合花序の総称

 複合花序の中で、下部の枝が上部の枝よりも長いため全体で円錐形を示すもの。


苞 bract , floral bract

 苞 (bract , floral bract)とは花や花序の基部にあり、蕾を包んでいた葉の変化したもの。苞葉ともいう。また分裂した個々の片を苞片という。葉状、鱗片状、刺状などがあり、多くの場合、葉より小さい。

苞の形


葉状の(foliate, foliaceous)、剛毛状(setiform)、羽毛状(plumose)、刺状(spinous)、下向きに湾曲 (declinate)

苞の落ちやすさ


苞による花序の分類


 1 苞がある(含苞性) prophyllate
 2 苞のない花序 ebracteate inflorescences
  花序の内部には苞がない
 3 小さい苞のある花序 bracteate inflorescences
  花序の内部に苞がある
 4 葉(又は葉のような苞)がある花序leafy inflorescences
  花序の内部に葉がある
 5 leafy-bracted inflorescences:34の中間

苞の種類


1 苞葉、苞 bract

2 パレアpalea(pl. paleae , pales):小さな膜質の苞(鱗片)
 頭花の小花の基部につく小さな苞。ヒマワリなどに見られる。
 chaff、 receptacular bracts ともいわれる。

3 小苞葉、小苞 bracteole , bractlet
 小苞葉がある bracteolate カールしたcincinni

4 総苞 involucre , involucral bracts :花序全体の基部を包む苞
 キク科、ホシクサ科などの頭花やドクダミの花穂に見られる。
 クモ毛状 cobwebby:アザミ類で見られる。
 ふわふわしたクモ毛状 fluffily cobwebbyy:アザミ類で見られる。

 

5 副萼 calyculus(pl. calyculi) , calycular bract , accessory calyx:
 ヘビイチゴ、オシロイバナ、バラなどに見られる(萼の外側にある萼状の苞葉)、キク科の総苞の下にやや離れてつく
 センダングサ属(総苞の下につく、萼片状に見える苞葉)

6 前出葉、前葉 prophyll:葉状であり、萼の外側にあり、萼から離れて柄にもつく苞
 トウダイグサ属にみられる杯状花序苞葉も前出葉の1つ

7 杯状花序苞葉cyathophylls:杯状花序の基部につく苞葉。

8 萼状総苞 epicalyx :ゼニアオイ、ワタなどに見られる
 萼状総苞片 episepal:萼状総苞の個々の片

9 杯状体 (杯状総苞、総苞) involucre:トウダイグサ科

10 仏炎苞 spathe :花全体を包むような形になる苞
 サトイモ科、バショウ科の肉穂花序を包む大きな苞
 バショウ科ゴクラクチョウ、アヤメ科、ツユクサ科の包も仏炎苞という
 スイセンの苞もspatheということがある。
  仏炎苞のある、仏炎苞状 spathaceous

   ※ ツユクサの花序を包む苞は総苞 involucral bractsspathe とされる。
ただし仏炎苞 spathe という見解もある(Flora of north America)。
アヤメ科の苞はspatheとするのが一般的であるが、日本では仏炎苞といわない。
苞の中に1~数個の花をつける。

11 小仏炎苞 spatheole:1個又は対の総状花序を包む小形のspathe
 イネ科でみられる。

12 花苞 bud:ホシクサ科の小花(雌花、雄花)につく

13 苞頴 glume:イネ科の小穂の基部にあり、第1苞頴、第2苞頴

14 鱗片glume:カヤツリグサの小穂の中につく小苞にあたるもの


花托 receptacle, torus

 花托(receptacle)とは被子植物の花(花葉)が着生する、茎の厚くなった部分。花床ともいう。 花は1個又は多数つき、花柄や軸の端の部分。 1個の花の場合はわずかに膨らむもの、筒状のもの、子房と癒着するものなどがある。 キク科などの頭状花序では多数の花の花序軸が短縮して平面状になり、花盤(disk , disc)となり、 ナシ状果やイチゴ等では発達して果実になる。

花托の種類と形


 1 花托筒=咢筒 hypanthium , cupular receptacle
 縁に花被と雄しべがついた球形、つぼ形、杯形、円筒形、椀形bowl-shaped)、浅い円蓋状の部分。子房周囲や子房下位の場合に現れる。バラ科など

 2 花盤 disk(disc) , flower disk:子房基部 (または花柱基部) の花托が肥大したもの。
 平ら(flat)、凸面(convex)、円錐形conical、半球形 hemispheric、丸屋根状 cupular、輪形 ring-shaped、円蓋状のcupular、腺状 gland-shaped
 例 クロウメモドキ科のナツメ、アカネ科のアカネ、ハシカグサ、ヤブガラシ、サンシュユ、セントウソウ、マツカゼソウ、ニシキギ、マサキなど
 雄花の花盤 staminate disk:雄しべだけがある花盤
  内雄しべ花盤 interstaminal disk:雄しべが花盤の内側に並ぶ
  外雄しべ花盤 extrastaminal disk:雄しべが花盤の外側に並ぶ

 3 花盤の発達: 発達して雌しべ全体を包み込む。倒円錐形。ハス。

 4 花軸 torus, floral axis , rachis:長い軸状の花托。モクレン科など

 5 偽果:卵形、楕円形、球形 sphericalに肥大してになる。イチゴ(Fragaria × ananassa)など

 6 心皮間柱 carpophore:花後に雌しべ内 (心皮の間) を花軸が伸びるもの。フウロソウ属 (フウロソウ科)

 7 花被間柱 (子房柄 gynophore) =中国名は花冠柄:萼と花冠の間の花軸が伸びる。ナデシコ。

 8 雌雄しべ柄(androgynophore):花冠内部分が柄状に伸びる。
 トケイソウ属(Passiflora)、ピンポンノキ属(Sterculia)

 9 窩状 foveolate:窩(小さな穴)のある



花 flower

 花とは種子植物の生殖器官であり、生殖に不可欠な器官 (雌しべと雄しべ) と付属器官 (の花被などで構成される。器官学、解剖学、発生学の知見から、雄しべと雌しべ(心皮)は葉的器官であり、それぞれ小胞子葉と大胞子葉にあたる。花被、萼も葉の特殊化したものである。これらの葉が変化した雌しべ、雄しべ、花弁、萼片などを総称して花葉 floral leaf と呼ぶ。花は花柄(かへい)の上につき、花柄の先端が変化して花托(かたく=花床)となり、これに花葉がつく。これに対し、花を構成している部分のうち、雄しべと雌しべが軸または軸と葉的器官からなるとする見解もある。

花(花被や花冠)の色 色彩用語参照
  単色 plain
  2色 two-tone

花の並び方

花の相称性
放射相称をregular、そうでないものをirregular という。

数性merous:花葉の数の基本数
 2数性 bimerous、3数性 trimerous、4数性 tetramers、5数性 pentamer , 5-merous
 不特定多数:原始的な花では数性がなく不特定。シキミ、スイレンなど

花葉の配列

花と葉の出る時期
 開花期 anthesis
 precocious:葉が出る前に花がつく
 coetaneous:葉と同時に花がつく
 late , belated:葉より後に花がつく


花(花被や花冠)の形 flower form

 

花の雌雄性 sexuality


1 両性花 bisexual flower , androgynous flower
  =完全花 perfect flower:萼、花弁、雄しべ、雌しべのすべてをもつ花
2 単性花 unisexual flower

性型(雌雄同株・異株)


1 混生:同一株に雌雄が混在するもの
1-1 完全同株(両性)    

 1 雌雄両全性(両全性)hermaphrodite , hermaphroditism , perfect
  :同一株に両性花のみ

 2 雌雄同株 monoecy , monoecious:雌花と雄花が同株に混在するもの
  (雌雄異花同株)  名詞は-y 形容詞は-cious 

1-2 不完全同株(雑性)
 =雌雄混株 polygamy (polygamous)
 単性花(雄花、雌花)と両性花とが同株中に混在するもの
 雄花、雌花、両性花の3つが混生するものも含む。
   異形配偶 heterogamy , heterogamouse
   雌雄混株の同株 polygamo-monoecious

 3 雄性同株 andromonoecy , andromonoecious:同一株に両性花と雄花が混在
 (雄性両性同株、雄花両性花同株 、両性雄花性 、雄性両全性同株)

 4 雌性同株 gynomonoecy:同一株に両性花と雌花が混在
 (雌性両性同株)・・・・キク科に多い

 5 三性同株 trimonoecy , coenomonecia:
 同一株に両性花と雄花と雌花が混在

2 離生:雌雄のいずれかが別株となるもの
2-1 完全異株:両性花を含まない

 6 雌雄異株(単性雌雄異株)dioecy , dioecious , diecious:
 雌花と雄花が別株で、混在しないもの

2-2 不完全異株 polygamodioecious , polygamo-dioecious:両性花を含む異株

 7 雄性異株 androdioecy:両性花の株と雄花の株がある
 (雄性両性異株 , 雄花両性花異株 , 雄性両全性異株)

 8 雌性異株 gynodioecy , gynodioecious:両性花の株と雌花の株がある。
 (雌性両性異株 , 雌花両性花異株 , 雌性両全性異株)

 9 三性異株 trioecy :両性花の株と雄花の株と雌花の株がある

3 不完全雄花 subandroecy , subandroecious:ほぼ雌雄異株であり、両性花だけの株や、雄株に雌花がつくことがあるもの。


花被 perianth

 花被は萼と花冠の総称。その区別がつかないときの両者全体の呼称。
   =未分化undifferentiated
   =花蓋(かがい)perigone

花冠 corolla


 花冠は花を構成している咢の内側にある花弁(離弁花冠、合弁花冠)の集合体。
 離弁花冠と合弁花冠に分けられる
     捩じれるrotate
     花冠の、花冠に係る corolline

1 離弁花冠 schizopetalous corolla , choripetalous corolla , dialypetalous corolla , polypetalous
 花弁 petal が離れて離生(free)している花冠。
 スミレ、マメ、アブラナ、ナデシコ、サクラなど

(1) 覆瓦状(ふくが)imbricate(overlapping):並ぶ縁が重なり合う

(2) 敷石状 valvate :並ぶ縁が重なり合わないで隣り合う
(3) 折扇状plicate:扇のように折り畳んだ
(4) 開出open:花弁と萼片が重ならず、互いに接触しない
(5) 十字対生状decussate
(6) しわくちゃ状、しわの寄ったcrumpled

2 合弁花冠 gamopetalous corolla , synpetalous corolla , sympetalous corolla:
花弁 が癒合(united)し、個々の花弁 petalがないもの。
ツツジ、オドリコソウ。キクなど

 

萼 calyx

 萼は花を構成している花葉のうち、最も外側にあるもの
 離片萼と離弁萼がある。

1 離片萼 chorisepalous calyx , dialysepalous calyx , schizosepal , schizosepalous calyx , polysepalous calyx
 萼片が離れて独立している萼

2 合片萼 gamosepalous , synsepalous calyx , symsepalous calyx:萼筒があるもの
 つぼ形 urceolate、惰円形ellipsoid、円筒形cylindrical、 卵形ovate、鐘形campanulate、狭鐘形 narrow campanulate、広鐘形 wide campanulate、 円蓋(えんがい)状=ドーム形 cupular、漏斗形=ロート形 funnel-shaped、 カップアンドソーサcup-incup、小皿形 patelliform、盃形 cupuliform、類盃形 subcupuliform、 倒円錐形 obconical、斜めのobliquely

雄しべ stamen

 雄しべは(雄蘂 ゆうずい)は、被子植物の花を構成する要素の一つであり、雄性生殖器官。 葯(やく)anther と花糸(かし)filament とで構成される。 ただし花糸がないものや、糸状でなく葉状のものもある。

雄しべの位置による分類


雄しべのつく場所による分類


雄しべの長さの違いによる分類


雄しべの合着


 合着が極度に進んだものは個別の名前で呼ばれる

葯 anther


 葯は雄しべの花粉が入った袋全体。
1 葯の雄しべに対しつく方向
2 葯と葯との位置

平行parallel、末広がり divergent、向かい合ったopposite、 開出した(分岐する)divaricate、合流するconfluent、内折れincumben

3 花糸が葯につく位置

底着のbasifixed、背着のdorsifixed、頂生terminal 、 腹部につく ventral、丁字着 versatile、子房基部着生のgynobasic、中着の medifixed

4 葯の形

矢じり状のsagittate、十字形 cruciform, cruciate、 扁平な applanate、盾状のpeltate

5 葯室 anther cell , anther locule , microsporangium , pollen sac

葯の個々の袋 、 普通4個

単室の (unilocular) 、 2室の (bilocular) 、小室のある (loculate, loculated) 、 2室性 (bilocularis) =2胞子嚢(bisporangiate)、4室=4胞子嚢(tetrasporangiate)

6 半葯 theca(pl. thecae) = anther lobes:葯隔によって2分された隔室

半葯は顕花植物の場合は2個の葯室(microsporangium)をもつ
2半葯の dithecal:普通、2半葯であり、半葯2個で4個の葯室をもつ
thecous:thecaがある
 1半葯がある monothecous: 1半葯で2葯室(胞子嚢)をもつ
 2半葯がある diithecous(bithecous):2半葯で4葯室(胞子嚢)をもつ

7 葯隔 connective: 葯室と葯室の間の花糸先端部分
  ヒトリシズカの花の白色部分は葯隔の変化したもの

8 葯帽=葯蓋 anther cap:蘭のずい柱の葯の花粉塊を包む蓋(帽子のようにとれる)

9 葯の裂開

裂開するdehiscing、縦にlongitudinally、横にtransversely、孔で(孔開)by pore= poricidal、葯開(開花) anthesis

10 葯の付属体 appendage(hood):葯筒の先端部分などにある付属物
   スミレ
   付属体のない unappendaged

11 集葯雄しべ syngeneious stamen:花糸は独立し、葯が互いに合着する雄しべ群。
キク科やミゾカクシ (キキョウ科)、ツリフネソウ科など。

12 葯筒 anther tube:キク科では5個の葯が横に結合し、筒になる

13 葯襟 anther collar ⇒葯台 antheropodium

14 葯台 antheropodium (plural antheropodia) :文字通り、葯の足(anther foot)部分。
葯のすぐ下部の花糸の普通、厚壁細胞の部分である。
キオン属などでは葯襟(anther collar)は手すりの柱形(balusterform)に似る。
メタカラコウ属やコウモリソウ属では葯のすぐ下部に大きな細胞又は、
  真っすぐな(半)円筒形で、均一の大きさの細胞からなる。

15 葯尾 anther tails:花粉嚢の基部から伸びる不稔の組織
1本又は±分枝し、しばしば特徴的な形をとる。
キク科のいくつかの連では葯に尾がある。caudateともいう。

花糸 filament


 雄しべの葯を支える柄
1花糸のつき方

分離 distinct=離れ=離着(離生) free、密着 coherent、合着connate、融合したfused、 沿着(合成、直生) adnate、統合 united、上生adnexed、雄しべ群・雄ずい群 androecium

雄しべ形態

  1. 単体雄ずい(単体雄しべ)monoadelphous stamen:
    花糸が全て基部で合着し1束となるもの。輻合(ふくごう)connivent ともいう。
    合着した花糸がつくる筒状部を花糸筒 filamental tube) という。
    例)アオイ科やツバキ科、ムクゲ、ツバキ
  2. 二体雄ずい(二体雄しべ) diadelphous stamen:花糸が合着し2束となるもの
    両体雄しべともいう。
    例) マメ科の多くは10雄しべ中9が合着、1が離れる
  3. 多体雄ずい(多体雄しべ)
    3体雄ずい(3体雄しべ)triadelphous stamen:糸が合着して3組になる
    オトギリソウ属 (オトギリソウ科)
  4. 5体雄ずい(5体雄しべ) pentadelphous stamen:花糸が合着して5組になる
    トモエソウ (オトギリソウ科) やシナノキ属 (シナノキ科)
  5. 雄しべ筒 staminal tube = staminal column :多数の花糸が筒状に融合
    アオイ科のフヨウ属、 ヤノネボンテンカ属など

花粉pollen

 花粉(かふん pollen)とは、種子植物の花の雄しべの葯から出る雄性配偶体である粉状細胞の花粉粒pollen grainの集合体。花粉粒と花粉を同義に使うことも多い。

花粉の形成


  

小胞子形成(花粉四分子形成)の2型


    減数第1分裂後の分裂の形式により2型に大別できる。

  1 連続型小胞子形成 successive microsporogenesis:
連続的に細胞質分裂、細胞壁形成 (カロース沈着を伴う) が起き、
二分子が形成される。細胞壁形成は遠心的である。
個々の二分子で減数第2分裂が起き、単相の花粉四分子が形成される。

  2 同時型小胞子形成 simultaneous microsporogenesis:
減数第1分裂後に細胞質分裂が起こらず、2核の細胞が形成される。
2核は同調して減数第2分裂を行い、単相の花粉四分子が形成される。
カロース沈着を伴った細胞壁は求心的に形成される。

  

小胞子の配置


  1 双同側型 (isobilateral) :一平面上に4つの小胞子が列んでいる。
連続型によってできる。花粉は基本が単溝粒。
原始的であり原始被子植物や単子葉類に見られる。

  2 四面体型 (tetrahedral) :四面体の各頂点に小胞子が配置されている。
同時型によってできる。花粉は基本が三溝粒。
派生的であり、真正双子葉類の特徴。

  3 その他 十字対生型、線状型、T字型
ツツジ科などの4集粒は花粉四分子が集合したまま成熟・放出されるもの

花粉粒


 花粉 pollenは花粉粒の集りであり、花粉粒 (pollen grain , pollenkorn)が花粉の個々の粒子である。花粉粒は花粉管細胞(pollen tube cell)と生殖細胞(reproductive cell)からなる。種子植物では生殖細胞は精細胞 (sperm cell) になり、ソテツやイチョウでは鞭毛をもった精子(sperm) になる。
 葯室内の胞子形成組織 (sporogenous tissue) から花粉母細胞 (pollen mother cell) ができ、小胞子 (microspore) が4個集まった花粉四分子 (pollen tetrad) になり、最終的に分離した小胞子が細胞分裂して花粉粒 (pollen grain)となる。
 花粉四分子が、分離せずに接着し合ったまま集合花粉粒になる場合や、花粉四分子間に細胞壁が形成されず、4核をもった小胞子が形成される場合もある。また、マツヨイグサ属 (アカバナ科) やツツジ属 (ツツジ科) では糸状構造の粘着糸 (viscous thread)により接着する集合花粉粒もある。
1 集合花粉粒

2 花粉塊 pollinium(pl. pollinia), pollen mass: 多数の花粉が互いに結合して塊になった器官
ガガイモ類 (キョウチクトウ科)、ラン科(エビネ、ミズチドリなど)
花粉塊柄 caudicle, stipe:粉状の束が粘着性の糸により粘着性の芯に結合したもの
粘着体viscidium(pl. viscidia):花粉塊を葯室につける粘着性の柄
角状horny
小塊がある sectile:細かい花粉塊ができるもの

3 花粉団 , 花粉器(;中国語訳) pollinarium(pl. pollinaria):花粉塊を含む器官
花粉塊pollinium(pl. pollinia)、花粉塊柄caudicle, stipe、粘着体viscidium(pl. viscidia) , 小球(捕捉体)corpusculumからなる。

 キョウチクトウ科(ガガイモ科Asclepiadaceae )
 

花粉塊の形質による分類


 ランの属分類では花粉塊の数も重要
 ラン科の花粉塊数: 2、 4、 6、 8個

1 粘質性花粉塊 sticky pollinium:Paphiopedilum(Paph.)、Cypripedium(Cyp.)

2 粉質性(粉状)花粉塊 granular pollinium , mealy:Bletilla、Thelymitra

          顆粒状粉状(granular-farinaceous)

3 蝋質性(ろう質)花紛塊 waxy pollinium:ラン科の多くの属

    
  ※胞子は単条溝型の二面体か三条溝型の四面体
    単条溝monolete、三条溝trilete       
 

花粉粒の型 単集粒 monad


1 無口型 inaperturate:発芽口がない花粉粒、カラマツ、サルトリイバラ、
 マムシグサ、ミツマタ、コガンピ、ジンチョウゲ
隠口型 cryptoaperturate:発芽口を外膜が覆っていて特定できないもの
全口型 omniaperturate grain:外膜がないため発芽口が特定できないもの
  タブノキ

2 有蓋型 operculate
3 多褶型 poliplicate:マオウ

4 気嚢型 vesiculate , saccate
単気嚢型:ツガ
2気嚢型(2翼型)2-saccate:アカマツ、クロマツ、イヌマキ、ナギ

5 多折重型 poliplicate

6 浅溝型 colpate:発芽口が細長い溝状の発芽溝(colpus , pl. colpi)であるもの

7 小孔型 porate:発芽口が丸い穴の発芽孔(pore)であるもの
8 溝孔型 colporate

9 合流溝型 syncolpate:ヒイラギナンテン、サンカヨウ
サガリバナ(合流溝型)、シラタマホシクサ(合流溝型・螺旋型)、
フトモモ(叉状合流溝型)

10 合流溝孔型 syncolporate
11 合流口型 chotomosulcate
12 異溝孔型 heterocolporate
13 帯溝型 zonorate, zonate, zonasulcate
14 不同溝型ギシギシ
15 不同溝孔型:モモタマナ、キンシバイ
16 小窓状孔型 fenestrate:スイラン、ヒメハギ
17 貫通孔型 fenestrate:カンサイタンポポ、セイヨウタンポポ、ハナニガナ
18 三突出型 triprojectat
19 目玉状口型 oculate
20 三稜形 triquetrous
    開口部 apertures. 
 

花粉粒の表面構造

 1 非テクタム性 intectate:柱状体が独立しておりテクタムが形成されないもの=外表層欠失型

 2 テクタム性 tectate :テクタム(tectum 外表層)をもつものを=外表層型

 

表面タイプ


平滑型 psilate、皺模様型 rugulate、微小突起型scabrate、 貫通小孔型punctate、 縞模様型striate、微細皺模様型ultramicro-rugulate、 疣状紋型verrucate、ピレート型(小さな棍棒型)pilate、微穿孔型perforate、 小窩型fossulate=小凹型foveolate、ハチの巣型状alveolate、網目型reticulate、 長刺型spinulate(ハイビスカス)、小刺型echinate、微小刺型ultramicro-echinate
突縁網紋型(lophate): 尾根状に隆起する lophaeがあるもの
lophae:外膜がくぼみ(=lacunae裂孔)を取り囲んで尾根状に隆起
 例:ヤナギタンポポ属 Hieracium
(echinolophate.): 花粉粒が lophate であり、尾根が刺で覆われるもの
(psilolophate):花粉粒が lophate であり、刺が無いもの
(caveate):花粉壁にcaveaeがあるもの
cavea (pl. caveae) :隙間部分にできる花粉壁の空洞 cavity
(fenestrate):被蓋(ひがい)tectumを欠く、大きな窓のような隙間がある花粉粒

 

花粉粒の形


球形(球状体) spherical 、亜長球形 subprolate、 長球形 prolate、扁球形 oblate、楕円体 ellipsoid、卵形 ovoid、 円柱形、三角柱形、三角扁球形、長方体、船形navicular、俵形、 Y字形 Y -shaped、ラグビーボール形 rugby-ball shaped

粘着糸


 粘着糸 viscous thread , viscin threadhは花粉がからまる糸状のもの
 マツヨイグサ属、ツツジ属に見られる。

受粉 pollination

1 受粉pollination:植物において花粉が雌性器官に到達すること
  自家受粉 self-pollination:同じ花の花粉により受粉
    閉鎖花clestogamous flowerはすべて自家受粉である。
  自家和合性self-compatible:自分の花粉で受粉可能
  自家不和合性self-incompatible:自分の花粉で受粉不可能
2 受粉様式を
 (1) 風媒 wind pollination , airborne 
   風媒花 anemophilous flower , wind‐pollinated flower
 (2) 水媒 water pollination 
   水媒花 hydrophilous flower
 (3) 動物媒 animal pollination , zoophily

3 送粉者(そうふんしゃ) pollinator :花粉を運び、受粉させるもの動物

    花粉媒介者、授粉者、媒体、ポリネーターともいう。

4 花の特徴(形質群) floral syndromes:受粉様式などの花の特徴

   花の構造、色、蜜、香

5 送粉(そうふん)シンドローム pollination syndrome:受粉(送粉)様式の特徴(形質群)

  普通、動物媒花の送粉者の種類ごとに分類する。
  風媒花・水媒花にも特有の送粉シンドロームがある。
  ミツバツ受粉シンドロームmumelittophilous pollination syndromes

開放花と閉鎖花

 ○ 開放花 chasmogamous flower:普通に開花受粉するもの
    開花受精 chasmogamy、開花受精の chasmogamic、
    開花受精する chasmogamous
 ○ 閉鎖花 clestogamous flower :開花せずに果実ができるもの
    閉花受精cleistogamy
    閉花受精の cleistogamic、 閉花受精する cleistogamous

雌しべ pistil

 雌しべ (雌蕊 しずい) は種子植物の花の中心すなわち花の最も高いところに生じる雌性の生殖器官。 柱頭、花柱、子房からなる。

花柱 style , style column


 柱頭と子房との間の円柱状の部分。
 受精する時、この中を花粉管がのびる。

柱頭 stigma


  雌しべの先端にあり、粘液を分泌し,花粉を付着する部分

蜜腺 nectary , nectar gland

 蜜腺(みつせん nectary)とは、被子植物の蜜(花蜜 nectar)を分泌する器官又は組織をいう。 明瞭な突起となっている場合には蜜腺体、または単に腺体という。 虫媒花では花の内側に蜜腺体があり、 花内蜜腺といい、花弁、雄しべ、雌しべの基部付近や花盤に蜜腺体がつく。花弁や雄しべが退化して蜜腺 体になったものが多い。葉身の基部や葉柄に蜜腺体がつく場合は花外蜜腺という。
   蜜腺がある nectariferous , presence plesiomorphous
   蜜腺がない absence , apomorphous

蜜腺タイプnectary types


1 花内蜜腺 floral nectary

 

アブラナ科の蜜腺タイプ

1 環状型annular type:蜜腺が環状に連続する
 annular nectary:環状に連続したの蜜腺

2 4蜜腺型4nectary type:蜜腺が2対、4個つく。
 lateral nectaryが短雄しべにつき、median nectary長雄しべの外側につく。
  側蜜腺 lateral nectary:短雄しべにつく蜜腺
  中央蜜腺 median nectary:長雄しべの外側につく蜜腺

3 2蜜腺型2nectary type:lateral nectaryが2個だけつく

4 8蜜腺型8nectary type:lateral nectaryが2対(4個)、median nectary2対(4個)

2 花外蜜腺 extrafloral nectary , areolar glands

子房 ovary

 子房とは被子植物の雌しべの下端にある膨らんだ部分。内側に1~数個の心皮があり、心皮の中に胚珠がある。受精後、子房は果実となり、胚珠は発達して種子になる。
 子房と他の花葉(雄しべ、花弁、萼片)との相対的な位置関係による分類
1 子房上位 superior = 子房下生 hypogynous:

  雄しべ、花弁、萼が子房の下位の花托につくもの:トマト、カキ、ナス科

2 子房中心位 central = 子房周生semisuperior ovary

  雄しべ、花弁、萼が融合して筒状の花托筒(萼筒)を形成し、子房が筒の底にあるもの。

   果時 ・萼が成長せず果実の下部に残る:ユキヤナギ
      ・萼は落ちる:サクラ
      ・花托筒が子房を包んで成長する:バラ状果、ロウバイ
3 子房周位 half-inferior ovary (perigynous)
  花托は子房壁と合着せず、花托の周辺に花葉がつく

4 子房中位 semiinferior = 子房半下位 half-inferior =subinferior= hemi-epigynous= partly inferior = half-superior

  子房が花弁や萼筒の中程まで合着し、他の花葉は上位につくもの
  サクラソウなどがあるユキノシタ科、アジサイ科など
5 子房下位 inferior = 子房上生 epigyny , epigynous:
  花托又は萼筒が子房を完全に包んで融合し、
  雄しべ、花弁、萼が子房の上位つくもの。
  ラン科、アカバナ科、リンゴ、ナシ、キュウリ、ウリ科、キク科など。

心皮 carpel


 心皮(しんぴ carpel)は雌しべを形成する葉状の構成単位。子房の内側にある皮層

胚珠 ovule


 胚珠(はいしゅ ovule)は子房の中に単数~複数あり、受精後に種子の胚と胚乳になる。
1 胚珠の分類
2 胚嚢(はいのう)embryo sac:胚珠の中にある雌性配偶体
3 珠皮integment:胚珠の外周を取り囲む保護皮
   一珠皮性胚珠 unitegmic ovule:珠皮(integment)が1層の胚珠
   二珠皮性胚珠 bitegmic ovule , 2-tegmic:珠皮(integment)が2層の胚珠
   内珠皮inner integument
   対生の superposed、垂れ下がる pendulous、直生orthotropous
4 背線 raphe:胚珠の側面にある維管束組織の細長い隆起

5 珠孔micropyle:胚珠にある小さい穴。受精時には花粉管がこれを通り、胚に達する。

     1孔monostomal、2孔bistomal

6 珠心 nucellus:胚珠内にあり大胞子嚢 (megasporangium) に相当する部分。 内部で胚嚢細胞(大胞子)が形成され、これから胚嚢(雌性配偶体)ができる。

  大胞子 (megaspore)
  雌性配偶体 (female gametophyta, megagametophyta)
  胚嚢 (embryo sac)
7 胎座 placenta:植物の子房中の胚珠の接する部分=種子のつく部分
     アケビは種のまわりの胎座が甘い果肉になる。
 

胎座型 placentation



果実 fruit

 果実(かじつ fruit)は種子を作る、多汁な果肉部分を持つ器官の一般的名称。種子植物の花部が発達して生じる。

1 真果anthocarpia:子房と内胚乳 endosperm のみが発達した果実
モモ、ウメ、ナツメやサクランボなどのような子房上位でできる果実
食べる部分は中果皮 mesocarp

集合痩果、集合袋果、集合漿果、集合核果=キイチゴ状果

2 偽果 accessory fruit , anthocarpous , anthocarpous fruit , false fruit , pseudocarp
心皮や胚珠以外の部分も加わってできたリンゴやナシなどの果実。
子房下位でできる。食べる部分は花托 receptacle

 

3 副生果 anthocarp :花被が1種子の果実を包んで残り、果皮と合体した偽果
例 オシロイバナやイノコヅチは花被が包む。
 Abronia villosa、Abronia latifoliaでは翼のある萼が包む。

4 離生心皮果 apocarp :離生心皮(apocarpous)がそのまま成熟してできる果実
心皮が発達して果皮 pericarp , pericarpiumになり、種子を包む
未熟な状態もapocarpという。


果実の種類

乾果(かんか) dry fruit

 成熟すると果皮が木質や革質になって硬くなる被子植物の果実
 果皮が裂開しない閉果と裂開する裂開果とに分けられる

閉果 indehiscent fruit


 乾果であり、裂開しないもの

痩果(そうか) achene , akene


 果皮が薄く、種皮と密着、合着している1種子の果実

1 痩果(狭義) achene , akene:1心皮からなり、1種子を含むもの
イラクサ科・カラマツソウ属・キンポウゲ属・センニンソウ属 オランダイチゴ属)・シモツケソウ属・ヘビイチゴ属 

2 下位痩果(菊果) cypselae:複数の心皮からなり、子房下位で果皮が萼筒と癒合し、痩果となるもの。 単に痩果といわれる。菊果ともいわれ、タンポポ、ヒマワリなどキク科に見られる。
キク科、オミナエシ科、マツムシソウ科 表面 5筋 5-nerved
キク科は子葉種子で胚乳がない。冠毛があるものも多い

 

冠毛 pappus


  タンポポなどの冠毛は萼が変化したもの
 1 剛毛状冠毛 bristle:冠毛が分枝しない剛毛状
  キオン属、シオン属
 2 羽毛状冠毛 feather:冠毛が羽毛状に分枝する剛毛状 
  クサヤツデ属、モミジハグマ属、アザミ属

  クリソセファラム属は冠毛の上半分が羽毛状に分岐(subplumose)、下半分は芒で覆われる(barbellate)

 3 鱗片状冠毛 scale:幅があり鱗片状
  ハキダメギク
 4 冠状冠毛 crown:短く、王冠状
  コシカギク、ハマギク、ネコノシタ、ヤブタバコ
 5 のぎ状冠毛awn:のぎ形薄片 aristate scale
  センダングサ属、ヌマダイコン
 6 無冠毛:冠毛が無い
  オナモミ属、ブタクサ属、イソギク

穎果(えいか)caryopsis, grain


 穀果ともいう。2~3心皮で1個の種子を含み、果皮と種子が癒合している もの。果皮と種皮が融合したものはbranという。 中には種子の胚乳endospermと胚芽germがある。 
 イネ科の植物の果実。、
 ぬか、ふすまbran:穎果(穀果)の外側の果皮と種皮
 

翼果(よくか) samara , winged achene

 
 果皮が翼状(winged pericarp)になった1種子の果実
  1翼果single samara、2翼果 doubule samara
  翼果に似た、翼のある種子の容器 samaroid
 フサザクラ属、ニレ科、カバノキ属(小堅果)、カエデ科(分離果)、クロヅル属、トネリコ属

毬果(きゅうか)=球果(球花) strobile , corn


 木化した鱗片葉 が球状に集ってできる集合果
 裸子植物のマツ科、コウヤマキ科、ヒノキ科などの果実
  マツボックリ pine corn= 種子錘seed cone

堅果(けんか) nut , pyrene


1 堅果(けんか) nut , pyrene 複数の心皮からなり、果皮が木質になって硬く、1種子を含む果実
  カシ属・ブナ属・クリ属・ハシバミ属
2 殻斗果(かくとか) acorn:殻斗と堅果で形成された偽果
  殻斗( cupule , acorn cup , involucre scale)は包葉が癒合して形成される
   シイ、カシなどのドングリの椀、帽子であり、果実の下部を包む
  クリの果皮は鬼皮であり、刺のある殻斗 bur-like involucreが全体を包み、裂開する。クリの種皮は渋皮(ドングリの薄皮)
3 小堅果 nutlet
 痩果に含めることもある。
 カバノキ科・タデ科、カヤツリグサ科   ワタスゲの果実 nutlet の毛は花被 perianth 片が変化したもの
  シソ科の果実は分離果の4小堅果

裂開果 dehiscent fruit


 乾果であり、裂開するもの。

蒴果(さくか) capsule

 
 多心皮からなり、熟すと果皮が乾燥して、裂開するもの。裂開しないものもある。

1 胞背裂開蒴果loculicidal capsule :室や歯に分かれる。蒴片に隔壁がある
ザクロソウ属、イワタバコ、スミレ、ナデシコ科、ユリ科
 頂部胞背裂開 apically loculicidal

2 胞間裂開蒴果 septicidal capsule:隔壁で縦に上から裂開する
ウマノスズクサ属 Aristolochia、キバナノマツバニンジン
リュウゼツラン科イトラン属(yucca)リュウゼツラン

3 胞軸裂開 septifragal :心皮の背面及び心皮間の隔壁の両方で縦に裂開

4 孔開蒴果 poricidal casule , pore capsule:決まった場所に穴が開く

4-1 有蓋孔開裂開 operculate poricidal dehiscense , operculate dehiscence
上部が蓋状になり、すきまが上部に開く ナガミヒナゲシ、ポピー

4-2 無蓋孔開裂開 inoperculate poricidal dehiscense
穴が横 キキョウソウ
側部孔開 laterally poricidal

5 横裂蒴果 circumscissile capsule:上側が横に裂開する
=蓋果(がいか)pyxidium , pyxis:多数の心皮からなり、蓋のように横に裂開する。オオバコ、スベリヒユ、ヒユ属、ケイトウ属、マツバボタン
=横裂胞果 circumciscissile utricle
6 胞果 utricle(スゲ属の場合は果胞) :果皮(pericarp)が薄く、種皮と離れている蒴果で裂開しない。
アカザ科、アカザ属、イノコズチ属 ヒナタイノコズチ、ヒカゲイノコズチ
7 分離果蒴果 schizocarp capsule:5心皮からなり、隙間ができ、上から分かれる。単に分離果 schizocarp ともいわれ、果皮に包まれる。
アメリカフウロ、フウロソウ

袋果(たいか) follicle


 1心皮で1個の袋果となり、腹部で縦に裂開する。
 普通、袋果が心皮の数(雌しべの数)だけ、放射状につく。

  シキミ(約8袋果)、アズマツメクサ(4袋果)、カツラ(3~5袋果)、 オダマキ(5袋果)、リュウキンカ(4~12袋果)、セツブンソウ(3~4袋果)、 ヒメウズ(2~4袋果)、サラシナショウマ(2~8袋果)など、モクレンは集合袋果

豆果( とうか)legume


角果(かくか) silique


 2心皮からなり、熟すと縦に裂開するもの。アブラナなど
 蒴果(capsule)の1種ともされる。

分離果 schizocarp


 複数の心皮からなり、分離して複数の分果に分かれるもの。
 分果(mericarp) は小乾果(nutlet , coccus)といわれる。
     一果 monocarp

双懸果(そうけんか) cremocarp


 2心皮2室子房からなる果実が成熟して各室ごとに分裂する。縦に分かれた分果 が離れているもの。分果は1種子を含む。分果がさらに裂開するものと 裂開しないものがある。
 セリ科(ウイキョウ、キャラウェイ、アシタバ、セイヨウトウキ、ニンジン)に見られる。
 

液果(多肉果、湿果)berry

 多肉化した果皮が成熟後も水分を多くもっている
 果皮 pericarp は外側から外果皮、中果皮、内果皮に分けられる。
  外果皮 excarp、 中果皮 mesocarp、内果皮 endocarp
 核果状の液果 drupaceous berry、液果状の核果 berrylike drupe

漿果(真正液果) berry, bacca


 内果皮も中果皮も多肉質な液果。

核果 (石果)drupe


1 核果 drupe:石果ともいう。 種子の外側に内果皮が堅くなった核がある。
中果皮が果肉の部分。
本来はサクラ属 ナツメ などの1心皮性のものをいう。
複数の心皮のモクセイ、センダン、モチノキなども含む。ツルナ
ミズキ科やスイカズラ科の核果は花托筒由来の偽果皮をもつ。

2 双小果状 dicoccous :アカネ科のツルアリドオシなどの2個が融合した果実が融合

3 小核果 drupelet:小形で1心皮性の核果。普通、集合果 (キイチゴ状果)
果実も核も小粒で1心皮性のもの。集合果をつくる 例:キイチゴ属 (バラ科)

1 副生果 anthocarp :花被が果実を包んで残り、果皮pericarp と合体した偽果
オシロイバナ、Abronia villosaなど

集合果 aggregate fruit

1 単花果 monothalamic fruit:1個の花から1個出来る果実

2 集合果 aggregate fruit , polygynaecial:多花果、複果ともいう。
1個の花が多数の雌しべと多数の子房をもち、
多数の果実が集まった1個の果実ができるもの
偽果が多い。これに対し、1個の子房からできるものは単果simple fruitという。

集合果の種類



多花果 (複合果) collective fruit , collective fruit , polyanthocarp


 複数の花の子房が集まって1個の果実ができるものを多花果という。
 1つの花序が1つの多花果になる。(集合果ということもある)
   例:パイナップル、イチジクなど

果実の形と質



種子 seed

 胚珠 (ovule) が成熟すると種子(seed)になる。

胚珠(はいしゅ)


 ヤブラン、ジャノヒゲは果皮が成長段階で取れ、種子が果実のようにみえる。
 小型の堅い種子pyren

種子の構造


 種子seed:種皮seed coat、胚(胚子)embryo、内胚乳endosperm、胚軸hypocotyl、胚乳endosperm、子葉cotyledon
 ● 種子の質:硬いhard、壊れやすいfragile 
1 種皮 seed coat
 胚珠の珠皮が発達してでき、種子の中の胚を保護する。
 外種皮、内種皮があり、ときに肉質になるものもある。
  外種皮 outer seed coat, testa , episperm
  内種皮 inner seed coat , tegmen , endothelium
  肉質種皮 sarcotesta:外種皮が肉質化した種子。動物に被食散布される
   ザクロ、ジャノヒゲ、トベラ、モクレン、ソテツ、イチョウ
2 胚(胚子)embryo:多細胞生物の発生初期の個体
  種子植物の種子の中にある発芽前の植物体をいう。
  胚芽ともいい、胚乳から養分を吸収する。

   胚根(embryonic root)=幼根(radicle)、胚軸(hypocotyl)、 胚芽(germ)、胚のembryonic、直線状 straight、 曲線状 curved 、折り畳み状 folded

3 胚乳endosperm:発芽に必要な養分を供給する部分
3 子葉 cotyledon
 子葉は本葉とは異なる。種子の中の胚にあり、発芽すると最初に出る葉。
 胚乳と子葉の両方をもつものは種子が熟する過程で子葉が胚乳の養分を吸収

  折りたたむ folded、巻き込んでいる convolute、平ら flattened、類円柱形 subterete

  

子葉の型


 1 幼根背位 incumbent (embryo notorrhizal):
幼根が1子葉の背の縁に沿う

 2 幼根側位 accumbent (embryo pleurorrhiza):
幼根が2つの子葉の縁にある

 3 子葉二つ折りconduplicate(折り畳み子葉胚 embryo orthoplocal):
子葉が幼根(radicle)の周囲に縦に折りたたまれる

 4 子葉螺旋巻き spirally coiled (螺旋子葉胚 embryo spirolobal)

 5 地上子葉 epigeal cotyledon= phanerocotylar:出芽のとき子葉が地上に出る

 6 地下子葉 hypogeal cotyledon =cryptocotylar :出芽のとき子葉が地下に残る


4 幼根radicle
 胚に形成された幼根 (radicle) は発芽すると発達して初生根 (primary root) となる。初生根は主根 (main root、直根 taproot) となり、そこから側根 (lateral root) を生じる。
5 発芽 germinate

果実中の種子の並び方


   1列に uniseriately , uniseriatel
   2列に biseriately , biseriate
   連続したseriate、非連続の aseriate

種子の形


  卵状回転楕円体(3径のうち2径が等しい楕円体) oblate-spheroid
回転楕円体 spheroida、卵形(立体) ovoid 、楕円体 ellipsoid、紡錘形 fusiform、 球形 globose、洋梨形 pyriform, 腎臓形 reniform 、扁球形oblate、背腹方向に圧縮 dorsiventrally compressed、 三角形 trigonous、半球形 hemisphere 、半球形の hemispherical、かたつむり形(渦巻形) cochleate、 翼がある winged 、先が尖る pointed (鈍く blunt、鋭く sharply)

種子の表面


  平滑 smooth、ハチの巣状 alveolate、粉状 mealy、 乳頭のある mammillate , papillate:乳頭状突起(パピラ)がある、 ねばねばする mucilaginous、溝状 grooved、長毛縁 fimbriate、櫛状 pectinate、 顆粒状 granular、条線状 striate、海綿状 spongy、 彫刻状 sculptured、しわの多い wrinkly、しわ状 rugulate、網状 reticulate、 疣状突起のある tuberculate(warty):小さな丸い突起や腫れがある、 疣状の verrucate(wart-like:高さより幅が広い) , verrucose(having warts)、小疣状の verruculate , verruculose、 小隆起状 colliculate(丸い丘状の小隆起)、 小凹点状 foveolate、小孔(浅い)がある scrobiculate、波状 rugose、 半つや消し semi-matt、合点の結び目 chalazal knot

アリロイド(種皮附属物) arilloid


 動物による種子散布のためにできる種子の付属物。
 珠皮や胎座からでき、糖質、脂質lipidなどに富む。

仮種皮果 arillocarpium


1 とさか状種衣 cockscomb-like aril:種衣は臍面長軸に沿い縦長に付着、多肉質。
臍面からみた種衣の縦軸を長さ,横軸を幅とすると
大きさは長さ》厚さ≧幅の関係になっている。
例)タケニグサ、クサノオウ、ヤマブキソウ

2 襟状種衣 collar - like aril:臍面長軸と直角・横長に付着し、膜質。
種衣の幅は種子の厚さ(T)より狭いかまたは少し広い程度で小さい。
大きさの関係は長さ〉幅》厚さ。
例)ムラサキケマン、ナガミノツルキケマン

3 帽子状種衣 cap - like alil:種衣は謄面の長軸と直角・横長に付着し、膜質。
種子を1/2~1/3包み込むような形態をとり、大きい。
大きさの関係は幅≧長さ》厚さ
例)ヤマキケマン、キケマン

4 偽仮種皮 (偽種衣) false aril , arillode:珠孔側から発達する仮種皮
例)ニクズク (ニクズク科)

5 套衣(とうい) epimatium: 種鱗が肥厚して被食部になり種子を包むもの
イヌマキやナギ (マキ科) の種子に見られる。

染色体

 染色体 (chromosome)は、細胞核の中に遺伝子情報をもつ、核ゲノムDNAが細胞分裂周期の分裂期(M期)に蛋白質とともに凝縮し、顕微鏡で観察することができるようになったものである。
 分裂期M期(前期→中期→後期→終期)→分裂間期(G1期→S期→G2期))

1 ゲノムgenome
遺伝子(gene)と染色体(chromosome)から合成された言葉。
DNAのすべての遺伝情報のこと。

2 染色体数 Chromosome number
2n=46又はX=23などのように表示する。

3 染色体chromosome の構造

4 染色体の型

5 核相 nuclear phase:染色体セットの構成。
複相=2倍体(倍数体)、単相=1倍体(半数体)など

6 核型 karyotype:一組の染色体の数と形態
染色体解析法 karyotyping analysis

7 倍数性 ploidy:交雑種の染色体数2nが基本数(x)の整数倍になること。
2倍体:diploid:通常の染色体
多倍数性 polyploidy :3倍体、4倍体、6倍体など

8 異数性(染色体数的異常) aneuploidy:倍数性の整数倍より増減があること。
固有の染色体数(2n)より1から数本少ないか、多いこと。
 例,2n-1、2n+1

9 多形性 polymorphic:多様な形(形態、様式、性質)を持つこと

10 半倍数性:性染色体が存在せず、染色体数によって性が決定される。
ハチ、アリ、甲虫類など
植物では通常2倍体である


サイトタイプ cytotype


 二倍体。四倍体のような染色体のいくつかの倍数体の型

1 二倍体 diploid:通常の染色体

2 多倍数体 polyploid:3倍体(triploid)、4倍体(tetraploid)、6倍体(6-ploid)、8倍体(octoploid)、10倍体(10-ploid)

3 異数体aneuploid(aneuploidy):異数性の染色体

4 異質倍数体 allopolyploid ;2種類以上のゲノムで構成されている倍数体
異質4倍体(allotetraploid)

5 同質倍数体 autopolyploid:同じ種類のゲノムを複数持つ倍数体
同質4倍体 (autotetraploid)

6 同質異質多倍数体 (autoallopolyploid):1種からの重複したセットに加えて少なくとも異なった種からのセットを持つ倍数体

特徴のある科

カヤツリグサ科


1 根 root
2 根茎 rhizome 横走する根茎、短く叢生する根茎
  繊維状に分解
  塊茎 ウキヤガラ属など

3 茎 stem は稈 culm とも呼ばれ、普通中実 solid
断面が普通、三稜形 triquetrous(3-cornered) , 3-quetrous、trigonous、
円形のものもある。
節がない。

4 葉  :細長く、3列互生につき、基部は鞘状になるものが多い。

5 苞葉 inflorescence bract , involucral bract 、苞:花序の基部につく
葉状 leaflike、針状

6 葉鞘:無鞘、有鞘sheathed
7 花序 
 穂状花序spike:総状、 円錐状、頭状head-like、イグサ形花序 anthela
 単性で雌雄異株、 花序は両性
 スゲ属、シンジュガヤ属は花がすべて単性、他は両性花
 花序枝 ray
8 小穂 spikelet
 スゲ属ではspikeletが1花であり、spikeletの集まった穂状花序(spike)を小穂という。
 雄雌性:雌花部、雄花部
 頂端:鈍頭apex obtuse、鋭頭apex acute 、微突形mucronate
   頂小穂terminal spike、雄性 male , staminate または雌雄性
   側頂小穂 lateral spikes  雌性 female , pistillate
 小軸rachilla:小穂の花序軸
  鱗片(= 苞頴) flower bract(glume):苞が小型化したもの
  雌鱗片 pistillate flower bract (fertile gllume , female glume)
    先:鋭頭acute、鈍頭obtuse、凹頭emarginate
    芒 awn
    中肋 mid vain
    主軸突出形excurrent、小突起 mucro
    竜骨keel     脈:3~5脈 3-5-veined
 雄花、雌花の配置
9 果胞 perigynium=peri , utricle
 頴の腋につく雌花を包む筒状の花被、雌しべ1個
 スゲ属の特徴。他の属は果胞に包まれない。
10 果実 fruit

タケ類用語


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