ザゼンソウ 座禅草

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Flora of Mikawa

サトイモ科 Araceae ザゼンソウ属

別 名 ダルマソウ
中国名 臭菘 chou song
学 名 Symplocarpus renifolius Schott ex Tzvelev

 synonym Symplocarpus foetidus Nutt. var. latissimus (Makino) Hara

 synonym Symplocarpus foetidus Salisb. ex W.P.C.Barton 広義

ザゼンソウの花
ザゼンソウの花2
ザゼンソウの肉穂花序
ザゼンソウ
花 期 3~5月
高 さ 10~20㎝
生活型 多年草
生育場所 湿地
分 布 在来種  北海道、本州、中国、ロシア
撮 影 あてび平(長野県)  06.3.21
ミズバショウと同じような場所に生え、ミズバショウより花期が早く、雪が残る早春から見られる。三河には自生しないが、あてび平で見ることができる。ザゼンソウとアメリカザゼンソウをまとめて広義にSymplocarpus foetidus とすることもある。
 根茎は地下性、直径7㎝。葉は花後に出て、ロゼット状につき、葉柄は長さ40㎝以下、幅約1㎝。葉身は長さ30~40㎝、幅30~40㎝又は33㎝程度になり、中脈は非常に強く、1次の側脈は5対、先に向かって斜上し、最下の脈は基部の裂片に伸びる。葉の出る前に開花する。花序は普通、単生。花序柄は緑色で紫色を帯び、長さ7~13(20)㎝、幅約1㎝。仏炎苞は斑紋や斑点はなにもなく、単純な紫色~黒紫色、まれに緑色、舟形、長さ8~20㎝、幅5~12㎝、 強い革質、先は尖鋭形、ミズバショウより小形。肉穂花序は楕円形、長さ2~2.5㎝、幅約1.2㎝。花は密につき、花の直径3~3.5㎜。萼片はピンク色を帯び、葯室は黄色。2n=60
 アメリカザゼンソウSymplocarpus foetidus は北アメリカに分布し、polecatweed, skunk-cabbageと呼ばれている。葉は長さ10~60㎝、幅7~40㎝。葉柄は長さ5~57㎝。仏炎苞は長さ6~13(18)㎝。肉穂花序は短い柄があり、長さ2~3㎝、幅1.5~3㎝。果序は長さ4~7(10)㎝。 種子は直径7~15㎜、褐色。2n=60。
 ヒメザゼンソウSymplocarpus nipponicus は日本、朝鮮、中国に分布し、葉の展開後に葉が枯れてから夏、花が出る(まれに葉が残ったまま)。2n=30。Flora of Chinaでは花は葉と同時と解説されている。

ザゼンソウ属

  family Araceae - genus Symplocarpus

 草本、大きく、無毛、季節的に休眠する。根茎は直立、丈夫、太い根がある。葉は少数~数枚、葉柄がある。葉柄は長く、葉鞘をもつ。葉身は類心形~心状卵形、大きく、先は鋭形~尖頭形、中脈は強く、1次側脈は羽状で先に向かってアーチ状になり、不明瞭な縁脈なる。2次側脈と高次の脈は網状~横の網状になる。花序は仮軸(sympodium)に1~2個、葉の展開前に現れる。花序柄は長いが地面から短く突き出すだけである。低出葉(cataphylls)は花序柄を取り囲む。仏炎苞(spathe)は基部を巻き込み、やや~広く、先が口を開け、厚く、舟形又は貝殻形(conchiform)、先には2本の竜骨があり、嘴状、前側に曲がる。肉穂花序(spadix)は柄があり、球形~広楕円形、仏炎苞よりかなり短く、中に隠れる。花は両性、花被(perigone)をもつ。花被片は4個、アーチ状、覆瓦状につく。雄しべは4本、離生。花糸は扁平。葯隔は細く、半葯は長円形、縦の隙間から裂開する。花粉粒は楕円形、単溝粒(monosulcate)、外膜は網状、開口部はいぼ状。雌しべの子房は肉穂花序の軸にやや埋没し、1室。胚珠は1個、直生( orthotropous)。珠柄はごく短い。胎座は頂生状側膜(apical-parietal)。花柱の領域は長く漸尖する。柱頭は点状の窪みのある円盤形。果序は球形~広楕円形、液果は密につく。液果は熟しても花被片と花柱が宿存し、基部はスポンジ状の肉穂花序の軸に埋没する。種子は球形、種皮は薄く、平滑。胚は球形。胚乳はごくまばら、1細胞層だけ。 2n=30, 60。
 世界に4~5種があり、東アジア、北アメリカに分布する。

ザゼンソウ属の主な種と園芸品種

1 Symplocarpus foetidus (L.) Salisb. ex W.P.C.Barton  アメリカザゼンソウ 

 北アメリカ(カナダ、USA)原産。英名はskunk-cabbage, tabac-du-diable, chou puant。
 根は肉質、収縮性がある。根茎は太く、長さ30㎝以下又はそれ以上。葉柄は基部に鞘があり、長さ5~57㎝。葉身は厚く、長さ10~60㎝×幅7~40㎝、1次側脈は平行、先で分枝し、1次脈内の脈(interprimary veins)は網状。花序は地面に生える。仏炎苞はフード状、長さ6~13(~18)㎝、肉質、先は尖鋭形、捻じれ又は内向きに曲がり、果時に宿存しない。肉穂花序は短い柄があり、やや背腹側が扁平、長さ2~3㎝×幅1.5~3㎝。花は肉穂花序を被う。花被片は4個、黄赤紫色~ 暗赤紫色。雄しべは4本。縦に裂開する。子房は1室。胚珠は1個。果序は暗紫緑色~暗赤褐色、球形~超円形~卵形、長さ4~7(~10)㎝。種子は褐色、直径7~15mm。2n = 60。花期は冬~春。

2 Symplocarpus nabekuraensis Otsuka et K.Inoue ナベクラザゼンソウ 鍋倉座禅草

 日本固有種(本州の岩手県~福井県) 長野県北部の鍋倉山で発見された。森林の下の沼地または開けた湿原に生える。
 ナベクラザゼンソウは葉身の形はザゼンソウに似るが、葉身や仏炎苞はずっと小さい。仏炎苞の形や大きさはヒメザゼンソウに似て、仏炎苞の先端は上を向くが、両者の葉形はかなり異なり、ナベクラザゼンソウの葉身は腎円形で通常縦。
 多年草。根茎は斜上し、太さ2~3㎜の根が多数ある。根茎から新芽が出て、膜質の鞘が数枚ある。葉は根生で房状にるき、3~5 枚、長い葉柄がある。葉身は腎形、先端は鋭形、基部は心形、無毛、長さ10~25㎝、幅20~40㎝。葉柄は長さ20~50㎝。葉の全長は30~70㎝。仏炎苞と葉は同時に出現し、花は葉の展開後に成熟する。果実は夏に成熟し、葉は秋に枯れる。仏炎苞は1個体に1~2個つき、長さ4~8㎝の長い花序柄がある。仏炎苞は暗紫褐色、広卵形、先は鋭形、長さ4~7㎝。花序柄は地面から生じ、花時には仏炎苞は​​直立し、果時には花柄が成長して湾曲するにつれて下を向く。花は両性花、花被片は4個、葯は4個。花粉粒は黄色。種子は表面が平滑で、帯褐色、円形、長さ約2~10㎜。花期は6~7月上旬。[J. Jap. Bot. 77: 98 (2002)]

3 Symplocarpus nipponicus Makino ヒメザゼンソウ 姫座禅草
 日本(北海道、本州)、朝鮮、中国(黒龍江省)原産。中国名は日本臭菘 ri ben chou song。標高300m以下湿った場所に生える。
 根茎は地下性、直立し、太い(または細い)。根は長く、丈夫で繊維質。葉はロゼットに数枚つく。葉柄は長く、長さ20㎝以下。葉身は緑色、まれに斑入りになり、卵形~狭卵状長円形、長さ10~20㎝×幅7~12㎝、基部は鈍形~心形~ほぼ心形、先は鋭形、葉脈は網状、中脈は強く、1次側脈は6~7対。花序は葉の生じるのと同時に生じる(日本のヒメザゼンソウは葉が枯れてから花序が出る。まれに葉が残ったまま、花序が出るものもある)。花序は数本、直立し、開花後に上方に湾曲する。花序柄は紫色、長い。仏炎苞は単純な紫色又は暗紫色のまだら、広楕円形で舟形、革質。肉穂花序は楕円形、柄がある。多数の窪んだ花が密につく。花被片は4個。雄しべは4個。子房は肉穂花序に埋め込まれ、1室、1胚珠。花柱は円錐状卵形。果実の頭は楕円形。花期は夏(6月まれに8月まで)。果期は翌年の春。果序と花が同時に見られる。

3-1 Symplocarpus nipponicus Makino f. variegatus T.Koyama フイリヒメザゼンソウ 

 葉が斑入りの品種。

3-2 Symplocarpus nipponicus Makino f. viridispathus J.Ohara ミドリヒメザゼンソウ 緑姫座禅草

 苞が緑色のもの。

4 Symplocarpus renifolius Schott ex Tzvelev ザゼンソウ 座禅草

  synonym Symplocarpus foetidus auct. non Salisb. ex W.P.C.Barton

  synonym Symplocarpus foetidus Salisb. ex W.P.C.Barton var. latissimus (Makino) H.Hara

 日本、中国、ロシア原産。中国名は臭菘 chou song。別名はダルマソウ。
 多年草、高さ10~20㎝。根茎は地下性、直径7㎝。葉は花後に出て、ロゼット状につき、葉柄は長さ40㎝以下、幅約1㎝。葉身は長さ30~40㎝、幅30~40㎝又は33㎝程度になり、中脈は非常に強く、1次の側脈は5対、先に向かって斜上し、最下の脈は基部の裂片に伸びる。葉の出る前に開花する。花序は普通、単生。花序柄は緑色で紫色を帯び、長さ7~13(20)㎝、幅約1㎝。仏炎苞は斑紋や斑点はなにもなく、単純な紫色~黒紫色、まれに緑色、舟形、長さ8~20㎝、幅5~12㎝、強い革質、先は尖鋭形、ミズバショウより小形。肉穂花序は楕円形、長さ2~2.5㎝、幅約1.2㎝。花は密につき、花の直径3~3.5㎜。萼片はピンク色を帯び、葯室は黄色。2n=60。花期は3~5月。

4-1 Symplocarpus renifolius Schott ex Tavelev f. variegatus (Otsuka) Otsuka フイリザゼンソウ 斑入座禅草

  synonym Symplocarpus foetidus Salisb. ex W.P.C.Barton var. latissimus H.Hara f. variegatus Otsuka

 葉が斑入りの品種。
 

参考

1) Flora of China
 Symplocarpus
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=132033
2) Flora of North America
 Symplocarpus
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=132033
3) Plants of the World Online | Kew Science
 Symplocarpus
http://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:2926-1
4) 植物研究雑誌 J. Jap. Bot. 5: 24 (1928)
 日本植物新研究の発表(承前)牧野富太郎 ヒメザゼンソウ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/5/6/5_5_6_627/_pdf/-char/ja
5) 植物研究雑誌 2002年 77巻 2号 p.96-100
 長野県で見いだされたザゼンソウ属(サトイモ科)の1新種 ナベクラザゼンソウ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/77/2/77_77_2_9568/_pdf/-char/ja