ヤノネボンテンカ 矢の根梵天花

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Flora of Mikawa

アオイ科 Malvaceae ヤノネボンテンカ属

別 名 タカサゴフヨウ 高砂芙蓉
英 名 spearleaf swampmallow, pink pavonia, pale pavonia
学 名 Pavonia hastata Cav.
 synonym Lass hastata (Cav.) Kuntze
 synonym Pavonia hastata var. genuina Hassl.
ヤノネボンテンカの花
ヤノネボンテンカの花
ヤノネボンテンカの葉
ヤノネボンテンカ
花 期 7~11月
高 さ 50~200㎝
生活型 常緑低木
生育場所 空き地、道端
分 布 帰化種  南アメリカ(ブラジル、ボリビア、アルゼンチン)原産
撮 影 碧南市  06.11.26
ヤノネボンテンカはアオイ科ヤノネボンテンカ属の常緑低木。比較的寒さに強く、観賞用に栽培されているものが道端などに逸出している。
 高さ50~200㎝。茎は直立する。葉は互生し、細く、長さ3~10㎝の鉾型、先がやや尖り、基部が張り出し、縁に波状の鋸歯がある。葉の両面に小さな星状毛がある。花は枝先に単生する。花柄は長さ4~7㎝。花はムクゲに似て直径4~6㎝と小型。花弁は5個、白色、中心部が赤色、裏に赤色の筋がある。雄しべ12個の花糸は合着して雄しべ筒になる。花柱は赤色、10分岐。萼は5裂、長さ約6㎜。萼より花弁が短い閉鎖花をつける。果実は直径約8㎜の5分果。分果は網状の脈があり、1種子が入る。2n=56。花期は7~11月。

ヤノネボンテンカ属(パボニア属)

  family Malvaceae - genus Pavonia

 [多年草]、亜低木、低木。茎は普通、長立[平伏]、しばしば星状毛があり、ときに無毛、粘性無い[ときにある]。托葉は普通、宿存し(P. paludicolは早落性)、錐形~糸状。葉身は普通、対称、卵状三角形~ほこ状長楕円形~卵形、分裂又は深裂せず、基部は切形~心形、縁は歯状~円鋸歯~類全縁。花序は頂生の総状花序[円錐花序、頭状花序]、又は腋生の単生花。小総苞(involucel)=萼状総苞(epicalyx)がある。小苞(bractlet)=萼状総苞片(epicalyx bracts)は[4~]5~8[~18+]個、明らかに分離。萼(calyx)は宿存性、対称には切れ込まず、仏炎苞を有せず、開花後に大きくならず又はほとんど大きくならず、膨らまず[やや膨れ]、萼片(sepal=calyx lobe=calyx bracts)はうねが有又は無、普通披針状卵形。花冠は輻状(車形)~筒状、ラベンダー色~ピンク色~黄色[白色、紫色]、花弁の基部は耳状部が有又は無。雄しべ筒は普通、突き出ない[突き出る]。花粉はアメリカのものは普通、青色で、アフリカのものでは青色はまれ。花柱は柄が10個(心皮ごとに2個)。柱頭は10個、頭状。果実は分離果(schizocarp)、普通、直立し、膨れず、角(かど)がなく、しばしば扁球形、乾き、[ときに]硬化し、細毛が有又は無。分果は5個、1室、装飾は無く[ときに翼がある]、刺をもち又は他の装飾があり、普通、裂開しない。種子は分果に1個、無毛又は有毛。x=14。
 世界に約250種あり、USA、メキシコ、西インド諸島、中央アメリカ、南アメリカ、アジア南部、アフリカに分布する。160種以上が南アメリカにあり、アフリカにも多い。(Flora of North America)
【概要】
 1年草、2年草、多年草又は低木。葉はしばしば基部が心形になる。花は単生、たまに頂部の総状花序又は穂状花序につく。5~16個の苞の萼状総苞(epicalyx)をもつ。萼は5裂。花柱は枝が普通、10個、常に5個以上ある。果実は5分果、分果は裂開せず、1種子を含む。種子は腎形。(Flora of Zimbabwe)

ヤノネボンテンカ(パボニア属)の主な種と園芸品種

1 Pavonia columella Cav. パボニア・コルメラ
 アフリカ南部原産。英名はpink pavonia 。南アフリカ東部からエスワティニにかけて、海岸沿いに西ケープ州まで分布し、また、モザンビーク、ジンバブエからタンザニア、ウガンダまで広く分布する。通常は道路脇、森林の縁、小川などの湿った日陰の乱れた地域に生える。
 常緑亜低木、木質の根茎から直立した茎が伸び、一年中根元から新しい茎が伸び、高さ0.2~2.5mに成長する。全体に単毛と星状毛で覆われ、毛はカールまたは真っすぐで、腺毛があり粘性があるが、刺激性は無い。葉は楕円形~心形、上部が浅く(0)3~5(7)裂し、縁はジグザグで、下面には柔らかい毛があり、上面が暗色、下面の色が薄く、長さ15~105㎜×幅6~145㎜と大きさが様々、つぶすと、不快な香りがある。花は単生または束生する。花は茎と葉柄の間に見られる。小花柄は通常、関節によって2つに分かれ、小花柄の短い方が花の基部に最も近くなる。花期は1年中。花はピンク色~白色、しばしば中心が黄色になる。萼片(calyx bracts)は楕円状三角形、萼状総苞片(epicalyx bracts)は線形。萼状総苞片と萼片(calyx bracts)は両方とも長さ4~8㎜。花弁は長さ17~20㎜。果実は分離果で、5個の分果からなる。分果は小さく、長さ3㎜x幅2㎜で、上部が丸みを帯び、表面は網状になる。果実と副萼片によって、Pavonia columella をそれぞれ P. senegalensis および P. burchellii と区別できる。これらの種は両方とも P. columella に似た葉を持つが、P. senegalensis の分果は先に小さい先端をもち、P. columella のものよりはるかに大きく、一方、P. burchellii の副萼は先端が細くなった幅広~狭楕円形の苞で構成される。

2 Pavonia hastata Cav. ヤノネボンテンカ 矢の根梵天花
  synonym Lass hastata (Cav.) Kuntze
  synonym Pavonia hastata var. genuina Hassl.
 南アメリカ(ブラジル、ボリビア、アルゼンチン)原産。英名はlobed tickseed ,mouse ear coreopsis
 常緑低木、高さ50~200㎝。茎は直立する。葉は互生し、細く、長さ3~10㎝の鉾型、先がやや尖り、基部が張り出し、縁に波状の鋸歯がある。葉の両面に小さな星状毛がある。花は枝先に単生する。花柄は長さ4~7㎝。花はムクゲに似て直径4~6㎝と小型。花弁は5個、白色、中心部が赤色、裏に赤色の筋がある。雄しべ12個の花糸は合着して雄しべ筒になる。花柱は赤色、10分岐。萼は5裂、長さ約6㎜。萼より花弁が短い閉鎖花をつける。果実は直径約8㎜の5分果。分果は網状の脈があり、1種子が入る。2n=56。花期は7~11月。

3 Pavonia lasiopetala Scheele パボニア・ラシオペタラ
 USA、メキシコ原産。英名はRose or Wright's pavonia, Texas rock rose Rose or Wright's pavonia, Texas rock rose
 低木、高さ0.5~1m。茎は密~まばらに星状毛がある。托葉は錐形、長さ2~5㎜。葉柄は長さが葉身の長さの1/2~1倍。葉身はわずかに変色し、長さ2~5㎝、幅よりわずかに長く、基部は心形、縁は粗い歯状、先は鋭形、表面には星状毛がある。花序は腋生、単生花。花柄は長さ2~5㎝普通、葉柄の長さにほぼ等しい。小総苞の小苞は5個、萼片に互生し、普通、腺状披針形、幅1~2㎜、萼の長さより短い~ほぼ等しく、粗毛がある。萼は長さ9~12㎜、粗毛がある。萼片には明瞭な3~5脈がある。花冠は輻状(車形)。花弁はラベンダー色~ピンク色、耳部は無く、長さ15~25㎜。雄しべ筒は普通、下に曲がり、やや両側の花になり、先に5個の歯をもち、無毛。花柱は突き出なず、普通、絨毛がある。分離果は青白く、直径8~9㎜、類無毛。分果は淡褐色、刺は無い。背に不明瞭な竜骨があり(carinate)、他は平滑、丸みがあり、長さ3.5~4㎜。種子はへそ(hilum)の上に房状になる。花期は夏~秋。

4 Pavonia makoyana E. Morren パボニア・マコヤナ
 中央アメリカ~南アメリカ原産。
 低木、高さ1.5~3m。茎には長さ0.5~1㎜の帯白色の毛があり、下部には微細な星状毛がある。葉身は単葉、楕円形~長円状楕円形、大部分は長さ10~19㎝×幅3~6㎝、基部は楔形、縁は不明瞭な鋸歯~ほぼ全縁、先は尖鋭形、羽状脈があり、中脈は上下に隆起し、微細な星状(亜鱗片状)軟毛~ほぼ無毛。葉柄は長さ0.5~3.5㎝、上面に軟毛がある。托葉は単純またはしばしば不等に2~3裂し、舌形~鎌形、長さ15~19㎜×幅2~5㎜、直立し、微細な星状毛(亜鱗片状)があり、ときにまた縁毛もあり、縁毛は長さ1~1.5㎜。花は葉腋に単生し、しばしば葉の上の頂部の節につく。小花柄は長さ2~3.5㎝。総苞片は4個で、広卵形、基部は深い心形、長さ2.5~3.5㎜×幅13~19㎜(萼を包み隠す)、まばらに毛が生え、ときに縁毛があり、帯赤色。萼は長さ1.5~2.5㎝、微軟毛があり、深く分裂し、萼片には目立つ中脈がある。花冠は筒状で長さ2.5~3㎝(総苞とほぼ等しい)、直径5~6㎝、赤色[暗褐色~紫色]で、外側に毛がある。雄しべ群は突出し、帯赤色(少なくとも先端部)。花糸は長さ3~7㎜。花柱は柱頭から突き出る。果実は不明。

5 Pavonia multiflora A. St.-Hil. パボニア・ムルチフローラ[AGM]
 ブラジル原産。英名はBrazilian Candles , pink winklebosh。中国名は多花孔雀葵 duo hua kong que kui。
 常緑低木。高さ1.5~2.5m。葉は互生、槍形~披針形、長さ約15㎝、暗緑色、光沢があり、著しい鋸歯がある。花は上向きに多数つき、直径約6㎝、円錐形、苞(萼状総苞)は線状披針形、2輪に18~20個つき、赤色~暗ピンク色、花を取り囲み、完全には開かない。暗青色の雄しべ筒が突き出る。花期は普通、晩春~初秋だが、暖かい場所では冬まで咲く。温帯地域では温室が必要。米国では普通に栽培されているが、種子ができず、野生化していないとされている。
品種) 'Brazilian Red Rocket'

6 Pavonia paludicola Nicolson ex Fryxell パボニア・パルディコラ
 中央アメリカ、南アメリカ北部、西インド諸島原産。英名はMangrove mallow , swampbush。
 低木、高さ1~4m。茎は細かい星状毛がある。托葉は早落性、不明瞭。葉柄は葉身の長さの1/2以下。葉身は同色、広卵形、長さ6~18㎝、基部は類心形、縁は不明瞭な歯状~類全縁、先は尖鋭形、まばらに星状毛がある。花序は頂生、総状花序。花柄は長さ1~4㎝。小総苞の小苞は約8個、披針形、長さ8.8~10㎜×幅 2.5~4 ㎜、類無毛。萼は長さ8~11㎜、細かい星状毛があり、萼片は脈が不明瞭。花冠は筒形、花弁は淡黄色又は黄緑色、耳部は無く、長さ12~18㎜。雄しべ筒は先に5歯がある。柱頭は突き出ない。分離果は淡緑色、熟すと褐色になり、直径10~13㎜、木質、無毛。分果は基部が狭く、長さ7~9㎜、平滑、普通、先が3か所、尖る。種子はへそに房状にならない。花期は通年。

7 Pavonia spinifex (Linnaeus) Cavanilles パボニア・スピニフェックス
 USA、南アメリカ原産。英名は gingerbush。
 低木、高さ1~2m。茎は細毛~無毛になる。毛は細かく、反曲し、しばしば縦列にうまく並ぶ。托葉は錐形~糸状、長さ5~10㎜。葉柄は葉身の長さの1/3以下。葉身は同色、卵形、長さ4~12㎝、基部は切形~類心形、」縁は不規則に、歯状、先は鋭形、表面はまばらに毛があるか無毛になる。花序は腋生、単生花。花柄は長さ1~3㎝、ときに葉柄の長さよりやや長い。小総苞の小苞は5~7個、萼片に互生ではなく、舌形又はわずかにへら形、長さ10~12㎜×幅1㎜、萼の長さにほぼ等しく、縁毛がある。萼は長さ8~11㎜、縁毛があり、毛は長さ1~2㎜。花弁は黄色、耳部があり、長さ20~25㎜。雄しべ筒は先に5歯がある。柱頭は突き出る。分離果は青白く、直径8~10㎜、しわがある。分果は刺が3本あり、刺は長さ6~7㎜、後ろ向きに髭があり、中央の刺は直立し、側部の刺は発散する。種子はへそに房状にならない。花期はおそらく通年。

8 Pavonia urens Cav. パボニア・ウレンス
 熱帯アフリカに広く分布。英名はStinging pavonia。降雨量がそれほど低くない標高600~2000m程度の無霜地帯の主に明るい森林や低木地帯に生え、人によって元の植生が破壊された場所にも見られる。
 低木または灌木で、直立し、高さ1~3m。茎と葉に通常密に毛が生え、ときにより長い軟毛や粗くザラつきわずかに刺激性の毛(後者は皮膚に軽い刺激を与える)が生え、被毛は軟毛から密~疎に綿毛状ビロード状毛である。葉身は直径3~20㎝、外形はほぼ円形~心形、±ザラつく上面よりも下面には通常密に毛が生え、通常3~5裂し、裂片は三角形で鋭く、縁には粗い鋸歯状歯がある。葉柄は長さ0.4~7㎝、同一標本内では通常かなり均一な長さになる。托葉は長さ約5㎜(ときに長く)、糸状、通常早落性。花は淡ピンク色~藤色、またはやや濃藤色がかった赤色で、ほぼ無柄で束生または花序柄のある少数の花の花序につき、ときに単生し、主枝の上部の葉腋およびときに葉腋の短枝の上につく。花序柄は長さ5㎝まで、小花柄は通常非常に短いが、花によっては長さ7㎝までになる。萼状総苞(epicalyx)は6~8 個の苞から成り、苞とほぼ同じ長さである。苞は離生、線形、毛と縁毛がある。萼は長さ8~10㎜、杯形、密に毛と縁毛があり、果時に無毛になり、中央付近まで分裂し、萼片は通常狭三角形で、先は鋭形~尖鋭形。花弁は長さ2㎝以下。雄しべ筒は無毛。分果は長さ約5㎜(先端の3つの突起または芒は後向きの刺状剛毛で、長さ(1)5~7㎜)、背側は網状でわずかに隆起したうねがあり、やや軟毛がある。種子は長さ4㎜×幅2㎜、腎形、わずかに縦の条線がある。花期は2~5月。

9 Pavonia × gledhillii Cheek パボニア・グレディリー
  synonym Pavonia intermedia Hort.(non St.Hil.)
  synonym Pavonia intermedia var. kermesina
 1989年にイギリスのDr. David Gledhillによって作られたPavonia makoyanaとPavonia multifloraの交雑種。パボニア・インテルメディア Pavonia intermedia と呼ばれ、日本で栽培されているのは、ほとんどこの系統のものと思われる。学名はPavonia × gledhillii Cheek パボニア・グレディリーとされている。RHSによりPavonia intermedia 'Kermesina'としてFirst Class Certificateを受賞し、この少し後にPavonia makoyanaとPavonia multifloraがヨーロッパに初めて導入されたとされている。英語の通称名はBrazilian Candles ともいわれ、Pavonia multifloraと混同されることも多い。中国名は帕蓬花 pa peng hua。両親の間の特性を持つが、普通、小総苞の小苞は等幅で、9~10個つき、葉縁がほぼ全縁、ただし、変化し、多くなることもある。
 亜低木、高さ約2m、茎には微細で目立たない毛がある。葉身は長円状楕円形で、大部分が長さ10~13㎝x幅3~4㎝、基部は丸みを帯びた切形、不明瞭な小鋸歯があるかまたはほぼ全縁、鋭形で、羽状脈があり(penninerved)、微細で不明瞭な毛があるか、またはほぼ無毛である。葉柄は長さ3~5㎝、上面に短い毛があり、毛の長さは0.3㎜である。托葉は線形、長さ12~14㎜x幅約1.5㎜、縁毛があり、毛は長さ0.5~1㎜である。花は葉腋に単生し、小花柄は長さ1.5~3㎝、微細な毛がある。総苞片は9~10(?)個、披針状線形、長さ約2㎜x幅2.5~3.5㎜、縁毛があり(毛の長さ1㎜)、帯赤色、基部で合着する。萼片は長さ約18㎜、密に微軟毛がある。花冠は長さ2.5~3㎝、筒状で暗紫色を帯びる。雄しべは花冠から1.5~2.5㎝突き出し、紫色を帯び、花糸は長さ3~5㎜。花柱は雄しべ筒から突き出し、赤色または帯紫色、まばらに微細な軟毛がある。果実は不明(Flora Neotropica)。
品種) 'Kermesina'小型, 'Rosea'濃ピンク色

参考

1) SANBI PlantZAfrica
 Pavonia columella Cav.
https://pza.sanbi.org/pavonia-columella
2)Jstor
 A new name of a South American Pavonia 145-149
https://www.jstor.org/stable/4114654?seq=1#page_scan_tab_contents
3) Flora of North America
 Pavonia Cavanilles
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=124190
4) JSTOR Global Plants
 Pavonia urens Cav.
https://plants.jstor.org/stable/10.5555/al.ap.flora.fz900
5) World Flora Online
 Pavonia makoyana É.Morren
https://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-0001249568;jsessionid=325042AA1D85DF9012B75183409AF727
 Pavonia gledhillii Cheek
https://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-0001249564