ヤブガラシ 藪枯らし

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Flora of Mikawa

ブドウ科 Vitaceae ヤブガラシ属

別 名 ビンボウカズラ 貧乏葛
中国名 乌蔹莓 wu lian mei
英 名 bushkiller , Japanese Cayratia
学 名 Cayratia japonica (Thunb.) Gagnep.
ヤブガラシの枝先
ヤブガラシの花
ヤブガラシの花2
ヤブガラシの淡紅色になった花
ヤブガラシの果実
ヤブガラシ
ヤブガラシの葉
ヤブガラシの種子と果実
花 期 6~8月
高 さ つる性
生活型 多年草
生育場所 藪、荒地に普通
分 布 在来種  日本(北海道西南部以南)、朝鮮、中国、インド、ブータン、ネパール、ミャンマー、ラオス、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、フィリピン、オーストラリア
撮 影 蒲郡市三谷町  05.7.9
根が利尿、鎮痛の生薬となる。地下茎を長く伸ばし、藪にはびこる。葉は5小葉の鳥足状複葉。頂小葉は大きく、他の倍ほどある。花が非常に小さく、直径約5㎜。花弁は淡緑色で、4個。雄しべ4個。雌しべ1個。橙色に見えるのは花弁でなく、花盤と呼ばれるものである。開花してしばらくは橙色だが、時間が経つと淡紅色に変化する。花弁も雄しべも花盤が淡紅色に変化するまでに落ちてしまう。果実は球形の液果で、黒く熟す。種子は果実に1個、長さ約3.5㎜。2n=40,59
 中国には2変種あり、Cayratia japonicaを基本変種としている。

ヤブガラシ属

  family Vitaceae - genus Cayratia

 つる性木、雌雄同株(hermaphroditic)又は雌雄混株の同株(polygamo-monoecious)。巻きひげは普通、2~3二又分岐し、まれに総状に分岐する。葉は3出複葉又は鳥足状に5小葉の複葉。花序は複合の2出集散花序又は散房花序状の多出集散花序、葉に対生又は偽頂生、しばしば巻きひげの頂部につく。花は4数性。花弁は4個、開出し、分離して落ちる。雄しべは4本。花盤はよく発達し、4裂又は波状に分裂する。花柱は短い。柱頭はわずかに又は不明瞭に広がる。液果は球形又はほぼ球形、種子が1~4個入る。種子は半球形。胚乳の断面は半円形又はT形。
 世界に約60種があり、アフリカ、アジア、オセアニアに分布に分布する。

ヤブガラシ属の主な種

1 Cayratia japonica (Thunb.) Gagnep.   ヤブカラシ 藪枯らし
  synonym Causonis japonica (Thunb.) Raf.  [Kewscience] 新しい分類
 日本、朝鮮、中国、インド、ブータン、ネパール、ミャンマー、ラオス、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、フィリピン、オーストラリア原産。中国名は乌蔹莓 wu lian mei 。英名はbushkiller , Japanese Cayratia
 蔓性、多年草。小枝は円柱形、縦のうねがある。巻きひげは2~3二又分岐。葉は鳥足状複葉、5小葉又は3出複葉。托葉は脱落性。葉柄は長さ1.5~10㎝。中小葉柄は長さ0.5~2.5㎝。側小葉柄は短いか又は無柄、長さ0.5~1.5㎝。小葉は側脈が5~9対、細脈は不明瞭。頂小葉は楕円形又は楕円状披針形、長さ2.5~14.5㎝×幅1.5~4.5㎝、基部はくさび形、先は鋭形~尖鋭形。側小葉は楕円形又は狭楕円形、長さ1~7㎝×幅0.5~3.5㎝、基部はくさび形~ほぼ円形、縁には6~15対の歯があり、先は鋭形~円形。複合の2出集散か花序は腋生。花序柄は長さ1~13㎝。花柄は長さ1~2㎜。花芽は楕円形、長さ1~2㎜、先は丸い。咢は円蓋状、パピラがあり、またはほぼ無毛、縁は全縁又は波打つ。花弁は三角状卵形、長さ1~1.5㎜、パピラがある。葯は楕円形。子房の下部は花盤につく。液果は直径約1㎝、2~4種子をもつ。種子は三角状倒卵形、基部は嘴状、先は小凹形、表面にうねがあり、腹側の穴は半円形、基部~先まで広がる。花期は3~8月。果期は6~1月。2n = 40。
1-1 Cayratia japonica (Thunb.) Gagnep. var. japonica
 日本、朝鮮、中国、インド、ブータン、ミャンマー、ラオス、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、フィリピン、オーストラリア原産。中国名は乌蔹莓 wu lian mei 。
Branchlets glabrous or pilose; tendrils bifurcate. Leaves pedately 5-foliolate, elliptic or elliptic-lanceolate, veins brownish when dry, veinlets inconspicuous. Petioles, petiolules, peduncles, and pedicels glabrous or slightly pilose. Fl. Mar-Aug, fr. Aug-Nov.

1-2 Cayratia japonica var. mollis (Wallich ex M. A. Lawson) Momiyama
 中国、インド、ブータン、ネパール原産。中国名は毛乌蔹莓 mao wu lian mei
Branchlets, petioles, peduncles, abaxial surface of leaflets or only veins with dense brownish or gray-brownish soft hairs. Fl. May-Jul, fr. Jul-Jan.
1-3 Cayratia japonica var. pseudotrifolia (W. T. Wang) C. L. Li,
 中国原産。中国名は尖叶乌蔹莓 jian ye wu lian mei
Tendrils trifurcate. Leaves mostly 3-foliolate, oblong or ovate, 4-8 × 2-4 cm. Fl. May-Aug, fr. Sep-Oct.

2 Cayratia corniculata (Benth.) Gagnep.  ウスバビンボウカズラ
 中国、台湾、ベトナム、マレーシア、フィリピン原産。中国名は角花乌蔹莓 jiao hua wu lian mei 。

3 Cissus elongata Roxb.
 中国、インド、ブータン、ベトナム、マレーシア、シンガポール原産。中国名は五叶白粉藤 wu ye bai fen teng 。

4 Cayratia maritima B.R.Jackes  ハマヤブカラシ
 台湾、オーストラリア原産。中国名は海岸乌蔹莓 hai an wu lian mei 。

5 Cayratia tenuifolia (Wight et Arn.) Gagnep.  ヒイラギヤブカラシ 柊藪枯 
 日本固有種(本州(近畿地方)、九州~沖縄、八重山群島。道端、荒れ地、草地に生える。
 蔓性の多年草。茎には稜角がある。葉は互生し、葉えがある。葉身は鳥足状複葉、小葉は5~7個。頂小葉は広卵形~広楕円形、長さ6~8cm、縁に粗い波状鋸歯があり、先は鋭形。側小葉は頂小葉より小さい。 花序は扁平な集散花序。花弁は4個、側部につき平開し、直径約3㎜、黄色、後に黄白色になる。花盤は雌しべを囲み、花時に黄色、花後に白色になる( ヤブガラシ C. japonica は橙色で、花後にピンク色)。葯は球形。液果はだるま形にくびれ、熟すと黒色になる。2n=40。花期は7~10月。

6 Cayratia trifolia (Linnaeus) Domin
  synonym Causonis trifolia (L.) Mabb. & J.Wen
 中国、インド、バングラデシュ、カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア原産。中国名は三叶乌蔹莓 san ye wu lian mei

7 Cayratia yoshimurai (Makino) Honda  アカミノヤブカラシ
  synonym Cayratia yoshimurae (Makino) Suess
  synonym Cayratia corniculata auct. non (Benth.) Gagnep. 
  synonym  Pseudocayratia yoshimurae (Makino) J.Wen & V.C.Dang,  新しい分類
 日本固有種(九州)。別名はリュウキュウヤブカラシ、 アカミノブドウ。
  2n=40

Causonis属

 ※ Causonis 属は2020年に提案された。
 Causonis 属はCayratia属から区別できる。種子の胚乳が2個の空洞を被う膜を欠き、断面でT形であり、U形ではない。花序が大きく、複合の2出集散花序である。形態学的に(70 Telopea 23: 69-71, 2020 )Jackesが新しく分離した。
 Pseudocayratia属はCausonisから果時の花柄が大きく、肉質である(Wen et al. 2018b)こと及び、種子の特性により区別することが出来る。Causonis 属においては胚乳の側部の縁がしばしば強く、凹面になり、 Pseudocayratia属においては側部の縁がわずかに凹面になるだけである。
 【Causonis属】
Causonis japonica (Thunb.) Raf.
Causonis trifolia (L.) Mabb. & J.Wen

  Pseudocayratia属 ※Pseudocayratia属は2018年に提案された。
 草本、半木質、よじ登り、落葉、不規則に広がるか、そこそこに高くよじ登る。枝は明瞭な条線をもつ。髄は白色、節を通って連続する。巻きひげは普通、3分岐、まれに2分岐、葉に対生する。葉は鳥足状複葉、普通、5小葉。花序は両性、又は雌花両性花同株(gynomonoecious)、葉に対生又は腋生に見え、複合の2出集散花序。花は普通、両性又は雌性。咢は杯形、不明瞭に4裂する。花弁は4又はたまに5個、分離する。蜜腺は子房の基部につき、杯形、4裂する。雄しべは4本、たまに5本。雌しべは2室、花柱は円錐形、短い。柱頭はわずかに大きくなり、不分裂、まれに分裂する。液果は赤色、黒色に変わり、球形~わずかに卵状球形。花柄は大きくなり、果時の段階では肉質。種子は果実に1~4個、、皮殻質(crustaceous)の薄い種皮をもち、種子の縁に薄い刃(edges)があり、刃はときに肉質種皮(sarcotesta)に被われ、腹面と背面の両面の縁付近に、辺縁内の微細突起のある広い線をもつ。 腹面の折り重なりは杯形、倒卵形。カラザ(chalaza)は線形、曲がり、種子の長さの2/3~3/4を占める。背面は明瞭に曲がる。胚乳は断面がT形。
 世界に5種あり、中国と日本に分布する。
 属の特徴は次のとおり。主に3分岐でしばしばコイル状の巻きひげをもつ。柱頭は4裂しない。花柄は果時の段階で大きくなり、肉質。果実は球形又は卵状球形、赤色で熟すと黒色に変わる。種子は皮殻質の薄い種皮をもち、杯形、背面は折り畳まれる。線形のカラザは種子の長さの2/3~3/4。種子の縁近くに、辺縁内の微細突起のある広い線をもつ。胚乳は断面がT形。

Pseudocayratia属のKey to the species

1a. 小枝、花序柄、葉柄、小葉の下面に長い香りのある絨毛がある
<div class="migiyose">..................................................3. P.oligocarpa</div>
1b. 小枝、花序柄、葉柄 及び葉に軟毛がある
<div class="migiyose">.................................................2</div>
2a. 小葉の下面は濃~疎に灰白色の毛がある。
 ときに、無毛になるが、強く粉白を帯び、
 縁の各側に20~28個の歯がある
<div class="migiyose">.........................................4. P. dichromocarpa</div>
2b. 小葉は下面に短い直軟毛(pilos)があり、粉白にならない
 縁の各側に6~22個の歯がある
<div class="migiyose">.................................................3</div>
3a.小葉は下面がしばしば緑色。
 縁の各側に6~9個の歯がある。
 茎はごくまばらに軟毛があるか無毛になる。
<div class="migiyose">.................................................5. P. yoshimurae</div>
3b.小葉は暗緑色~紫緑色、しばしば中脈部分が白緑色。
 縁の各側に8~22個の歯がある。
 茎は直軟毛がある。
<div class="migiyose">................................................4</div>
4a葉の下面は脈上に直軟毛がある
<div class="migiyose">................................................1. P. speciosa</div>
4b.葉の下面は全体に軟毛があり、脈上に多い
<div class="migiyose">................................................2. P. pengiana</div>

参考

1) Flora of China
 Cissus  
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=105965
2) GRIN
 Cissus  
http://tn-grin.nat.tn/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=547
3) Plants of the World Online | Kew Science
 Cissus  
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30011875-2
4) Pseudocayratia is a newly described genus with five species from China and Japan (Wen et al., 2018b).
 Pseudocayratia , a new genus of Vitaceae from China and Japan
  with two new species and three new combinations
https://www.researchgate.net/publication/326060953_Pseudocayratia_a_new_genus_of_Vitaceae_from_China_and_Japan_with_two_new_species_and_three_new_combinations
5) Telopea Journal of Plant Systematics Volume 23: 69?71(2020)
 Transfer of three species of Cayratia Juss.,
 to Causonis Raf. (Vitaceae)