ウワバミソウ 蟒蛇草

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Flora of Mikawa

イラクサ科 Urticaceae ウワバミソウ属

別 名 ミズナ、アカミズ
中国名 楼梯草 lou ti cao
学 名 Elatostema involucratum Franch. et Sav.
Elatostema umbellatum Blume var. majus Maxim.
Elatostema japonicum Weddell var. majus (Maximovicz) H. Nakai et H. Ohashi
ウワバミソウ雄花序
ウワバミソウ雌花序
ウワバミソウの珠芽
ウワバミソウ
花 期 4~9月
高 さ 20~60㎝
生活型 多年草
生育場所 山地の陰湿地
分 布 在来種 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国
撮 影 阿寺の七滝   03.7.26
ミズナ、アカミズと呼ばれ、山菜として親しまれている。中国で薬用として使われ、赤车使者 (chi che shi zhe).と呼ばれる。
 多年草、雌雄同株又は雌雄異株。高さ20~60㎝。茎は斜上又は直立、普通、単立、赤色を帯び、無毛又はまばらに微軟毛がある。葉は2列に互生、Nanophyll(225 ㎜2以下の葉)は無い。托葉は狭線形~狭三角形、長さ3~5㎜×幅1.5~2㎜、無毛、鐘乳体(cystoliths)をもつ。葉柄は長0~2㎜。葉身は斜めの倒披針状長円形~長円形、長さ4.5~16(~19)㎝×幅2~4.5(~6)㎝、草質、基部の主な側脈は無く、羽状脈、下面は無毛又は脈にまばらに微軟毛があり、上面はまばらに小剛毛があり、鐘乳体は目立ち、密、基部は広い半円形、縁は6~11対の歯があり、先は尾状。雄花序は単生又は対につき、単純で、直径3~9㎜。花序柄は長さ (4~)7~20(~32)㎜。花托は不明瞭。苞は合着し、長さ約2㎜。小苞は線形。雌花序は単生又は対につき、花が30個又はそれ以上つき、直径1.5~4(~14)㎜、花序柄は長さ0~1㎜、花托は直径 0.5~2(~5)㎜。苞は卵形又は三角形。小苞は線形。雄花は5数性。痩果は卵形、うねがあり、突点は目立たない。秋には茎の節が褐色に膨らみ珠芽(むかご)がつく。花期は(4)5~10月。
品種) 'Dents de Kyoto' , 'Snow Patch' (v)
 ヤマトキホコリは雌雄同株。アオミズともいわれ茎が緑色。ウワバミソウのように葉先が尾状には伸びない。むかごもできない。
 ヒメウワバミソウは花期が早く、小型。葉の鋸歯は5対以下、葉先が長く尾状に伸びる。果実表面に突点が多い。

ウワバミソウ属

 family Urticaceae- genus Elatostema

 小低木、亜低木又は草本、刺の毛は無い。葉はみかけは互生、2列生、Nanophyll(225 ㎜2以下の葉)は有又は無、通常葉に対生する。托葉は2個つく。葉身は3脈があり、1本又はときに両側の主側脈が基部の上につき、又は羽状脈、葉の基部は非対称、鐘乳体(cystoliths)は線形又は紡錘形。花序は普通、花序柄がある頭状花序、ほとんど花が多数つき、まれに花が1~3個の円盤状につく。頭状花序は普通、2バルブがあり、各バルブは数個の団散花序(glomerule)をもつ。団散花序は数個の花と少数の小苞を基部につける。頭状花序は単性(雌雄同株又は雌雄異株)。雄花序は普通、円盤状の花托をもち(E. brachyodotnum や E. ficoidesの若い花托は洋なし形)、まれに集散花序。雌花序は円盤状の花托と縁に小苞をもつ。雄花は花被片が4又は5個、楕円形、基部で合着し、普通、小角状又は先の下に短い角(つの)がある[角状突起がある(corniculate)]。雄しべは、花被片と同数、対生する。花糸は蕾中では内曲する。未発達の雌しべは小さく又は欠く。雌花は花被片が4又は5個又は少なくなり、子房の長さの1/2より短く、分離又は基部で合着し、先に角状突起は無い。仮雄しべは3~5個、線形。子房は真っすぐ、楕円形。花柱は無い。柱頭はほうき状。胚珠は直生。痩果は卵形又は楕円形、わずかに扁平、ほとんどに6~10うねがあり、まれに平滑又はいぼがある。
 世界に約300種あり、熱帯、亜熱帯のアフリカ、アジア、オセアニアに分布する。

【類似属のサンショウソウ属Pellioniaとの比較】
雌花の花被片は普通4~5個、子房よりかなり短いか又は強く退化し先に角状突起がない。痩果には6~10うねがある。雄花序は普通、花托をもち、まれに集散花序。雌花序は円盤状の花托をもち、縁に小苞がある。.................................Elatostema
雌花の花被片は4~5個、子房より長く、普通、先の下に角状突起(corniculate)がある。痩果にはいぼがある( tuberculate )か又は条線があり、まれに平滑、けっしてうねは無い。雌花序は集散花序、まれに円盤状花托と総苞をもつ。
............................................................................Pellionia

ウワバミソウ属の主な種

1 Elatostema acuteserratum B.L.Shih et Yuen P.Yang 
 台湾原産。中国名は台湾楼梯草 tai wan lou ti cao

2 Elatostema cyrtandrifolium (Zoll. et Moritzi) Miq.  クサダチキミズ
  synonym Elatostema herbaceifolium Hayata 
 中国、インド、ブータン、ミャンマー、インドネシア、マレーシア原産。中国名は锐齿楼梯草 rui chi lou ti cao 。

3 Elatostema densiflorum Franch. et Sav. ex Maxim.  トキホコリ
  synonym Elatostema cuneatum auct. non Wight
 日本固有種(北海道、宮城県、福島県、茨木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、静岡県、兵庫県)。畑近くなど低地の湿った場所に生える。
 1年草。高さ10~25㎝。全体に柔らかい。茎はまばらに分枝し、開出毛がある。葉は2列に互生、無柄。葉身は倒卵状長楕円形、長さ2.5~5.5㎝、鈍頭まれに鋭頭、中脈が湾曲して左右が不対称となる特徴があり、中部以上に 5~6個の鋸歯がある。雌雄同株、雌雄異花。葉腋に多数の小花が球状に固まってつき、雄花と雌花が混生する。雄花は花被片4個、雄しべ4個。雌花は花被片3~5個。果実は楕円形、長さ約0.6㎜、 縦条線があり、凸点はない。花期は9~10月

4 Elatostema hirtellipedunculatum B.L.Shih et Yuen P.Yang 
 台湾原産。中国名は糙梗楼梯草 cao geng lou ti cao
5 Elatostema hypoglaucum B.L.Shih et Yuen P.Yang
 台湾原産。中国名は白背楼梯草 bai bei lou ti cao

6 Elatostema involucratum Franch. et Sav.  ウワバミソウ 蟒蛇草
  synonym Elatostema umbellatum Blume var. majus Maxim. 
  synonym Elatostema japonicum Wedd. var. majus (Maxim.) H.Nakai et H.Ohashi 
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国原産。中国名は楼梯草 lou ti cao 。中国で薬用として使われ、赤车使者 (chi che shi zhe).と呼ばれる。
 ミズナ、アカミズと呼ばれ、山菜として親しまれている。
 多年草、雌雄同株又は雌雄異株。高さ20~60㎝。茎は斜上又は直立、普通、単立、赤色を帯び、無毛又はまばらに微軟毛がある。葉は2列に互生、Nanophyll(225 ㎜2以下の葉)は無い。托葉は狭線形~狭三角形、長さ3~5㎜×幅1.5~2㎜、無毛、鐘乳体(cystoliths)をもつ。葉柄は長0~2㎜。葉身は斜めの倒披針状長円形~長円形、長さ4.5~16(~19)㎝×幅2~4.5(~6)㎝、草質、基部の主な側脈は無く、羽状脈、下面は無毛又は脈にまばらに微軟毛があり、上面はまばらに小剛毛があり、鐘乳体は目立ち、密、基部は広い半円形、縁は6~11対の歯があり、先は尾状。雄花序は単生又は対につき、単純で、直径3~9㎜。花序柄は長さ (4~)7~20(~32)㎜。花托は不明瞭。苞は合着し、長さ約2㎜。小苞は線形。雌花序は単生又は対につき、花が30個又はそれ以上つき、直径1.5~4(~14)㎜、花序柄は長さ0~1㎜、花托は直径 0.5~2(~5)㎜。苞は卵形又は三角形。小苞は線形。雄花は5数性。痩果は卵形、うねがあり、突点は目立たない。秋には茎の節が褐色に膨らみ珠芽(むかご)がつく。花期は(4)5~10月。
品種) 'Dents de Kyoto' , 'Snow Patch' (v)

7 Elatostema japonicum Wedd.  ヒメウワバミソウ 姫蟒蛇草
  synonym Elatostema umbellatum Blume var. umbellatum 
  synonym Elatostema umbellatum Blume var. yakusimense Masam.
 日本固有種(本州(関東地方以西)、四国、九州)。
 基本的特徴が一致し、同一種内の変種関係に扱われることもあるが、全体に小形で葉の鋸歯が少なく、花序当りの花数も少なく果実にうねが無く突点が多い。
 多年草、高さ10~30㎝。茎はときに分枝し、緑色、赤色を帯びることも多い。葉は互生し、長さ3~6㎝の歪んだ卵状長楕円形、縁に5対以下の粗い鋸歯があり、葉先は長く尾状に伸びる。雌雄異株。雄花序は長さ1~3㎝の柄があり、上に立ってつくのが特徴。花被片4(5)個、雄しべ4(5)個。雌花序は無柄。痩果は初め淡緑色~後に淡褐色、卵形、長さ約1㎜、表面に突点が多い。花期は3~5月。

8 Elatostema laetevirens Makino  ヤマトキホコリ
 日本、韓国(済州島)原産。
 山菜として栽培もされている。山菜のウワバミソウのアカミズに対して、アオミズナとかアオミズとも呼ばれるが、アオミズが標準和名の別種がある。
 多年草、高さ15~40㎝。茎は丸く無毛、下部まで緑色。葉は2列に互生し、黄緑色、長さ3~10㎝のゆがんだ長楕円形で、縁に鋸歯があり、先が尖る。葉は柔らかく、乾いても黄緑色で変色しない。雌雄同株まれに異株。球形花序が葉腋につく。雌花と雄花が混生する花序と混生しないで別花序になるものがある。節にむかごはできない。果実は長さ約1㎜。2n=38。花期は8~10月。

8-1 Elatostema lineolatum Wight var. majus Wedd.  ホソバノキミズ

9 Elatostema lineolatum Wight  ホソバノキミズ 広義
  synonym Elatostema tumidulum Koidz. 
 中国、台湾、インド、ブータン、ネパール、シッキム、スリランカ、ミャンマー、タイ原産。中国名は狭叶楼梯草 xia ye lou ti cao 。

10 Elatostema multicanaliculatum B.L.Shih et Yuen P.Yang
 台湾原産。中国名は多沟楼梯草 duo gou lou ti cao 。

11 Elatostema microcephalanthum Hayata  タマザキウワバミソウ
  日本、台湾原産。中国名は微序楼梯草 wei xu lou ti cao

12 Elatostema obtusum Wedd. 
 中国、台湾、インド、ブータン、ネパール、シッキム、タイ、フィリピン原産。中国名は钝叶楼梯草 dun ye lou ti cao

12-1 Elatostema obtusum Wedd. var. trilobulatum (Hayata) W.T.Wang  ヒメミズ
  synonym Elatostema trilobulatum (Hayata) T.Yamaz.
 中国、台湾、フィリピン原産。中国名は三齿钝叶楼梯草 san chi dun ye lou ti cao

13 Elatostema oshimense (Hatus.) T.Yamaz.  アマミサンショウソウ
14 Elatostema parvum (Blume) Miq.  ハイヒメウワバミソウ
  synonym Elatostema minutum Hayata
 中国、台湾、インド、ブータン、ネパール、シッキム、ミャンマー、フィリピン原産。中国名は小叶楼梯草 xiao ye lou ti cao 。

15 Elatostema platyphyllum Weddell    ランダイミズ
  synonym Elatostema edule C.B.Rob. コウトウキミズ 南海樓梯草
  synonym Elatostema platyphylloides B. L. Shih & Yuen P. Yang 
 日本(沖縄)、中国、台湾、インド、ブータン、ネパール、シッキム、フィリピン原産。中国名は宽叶楼梯草 kuan ye lou ti cao 。別名はヒロハノキミズ
 亜低木、落葉性、高さ100~150㎝。茎は直立、分枝する。葉は互生、Nanophyll(225 ㎜2以下の葉)は無い。托葉は披針形、長さ2~4㎝×幅0.2~0.8㎝、鐘乳体(cystoliths)をもつ。葉柄は長さ2~6㎜。葉身は斜め、楕円形~狭楕円形、長さ14~25㎝×幅6~10㎝、草質、主な側脈が葉身の基部から両側に伸び、又は基部から1本伸び、,ときに葉身の中間以上に伸びない。鐘乳体(cystoliths)は明瞭又は不明稜、密。葉の基部は広い半耳形(耳は長さ1~1.4㎝)、葉の縁には歯があり、先は尖鋭形又は尾状尖鋭形。雄花序は単生又は対につき、単純、長さ10~25㎜×幅7~18㎜。花序柄は長さ0.5~1㎜。花托はちょう形花に近く、長さ10~25㎜×幅7~18㎜。 苞は合着し、狭卵形、不明瞭。小苞はへら状長円形。雌花序は単生、長円形に近く、長さ6~7㎜×幅2~5㎜。花序柄は長さ約5㎜。花托は長さ6~7㎜×幅2~5㎜。苞は狭卵形。小苞はへら形。雄花は4数性。花期は3~10月。

16 Elatostema rivulare B.L.Shih et Yuen P.Yang 
 台湾原産。中国名は溪涧楼梯草 xi jian lou ti cao 。
17 Elatostema subcoriaceum B.L.Shih et Yuen P.Yang 
 台湾原産。中国名は近革叶楼梯草 jin ge ye lou ti cao
18 Elatostema strigillosum B.L.Shih et Yuen P.Yang 
 台湾原産。中国名は微粗毛楼梯草 wei cu mao lou ti cao

19 Elatostema suzukii T.Yamaz.  クニガミサンショウヅル 国頭山椒蔓
  synonym Pellionia cuneata Suz.-Tok.  
 日本固有種(沖縄)。森林内の川沿いや湿った場所に生える。
 多年草、高さ6~12㎝。茎は直立し、基部は這う。葉は互生。葉身は長さ3~3.5㎝、長楕円形、縁に鈍鋸歯があり、下面は帯白色。花は単性、直径4~6㎜、白色。雄花は頭状花序につき、雌花は集散花序につく。

20 Elatostema villosum B.L.Shih et Yuen P.Yang 
 台湾原産。中国名は柔毛楼梯草 rou mao lou ti cao

21 Elatostema yakushimense Hatus.  ヒメトキホコリ
 日本固有種(屋久島)。
 全体が矮小、高さ約lO㎝。ヤマトキホコリに似るが、茎と葉の両面の脈上、葉縁に粗毛を散生する。果序 及び痩果ともに小さい。
22 Elatostema yonakuniense Hatus.  ヨナクニトキホコリ
 日本固有種(与那国島)。湿った場所に生える。
、 多年草。高さ15~18㎝。茎は基部が横に這い、節から根を出す。葉は互生し、斜めの長楕円状倒卵形、長さ2~4㎝×幅0.8~2㎝、先は鋭頭、縁は上部1/2~1/3に鈍鋸歯がある。  花は雌雄異株又は同株。花は白色、腋性。雄花序は花序柄が長さ1~3㎝。雌花序は柄がなく、頭状、直径2~3㎜。花期は12~2月。

参考

1) Flora of China
 Elatostema  
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=111400
2)Kew Science
 Elatostema  
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:331583-2
3)植物研究雑誌 J. Jpn. Bot.Vol.71.No.2 80-82 (1996)
 中井秀樹,大橋広好 ヒメウワパミソウとウワバミソウの学名