チョウセンアザミ(カルドン) 朝鮮薊

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Flora of Mikawa

キク科 Asteraceae チョウセンアザミ属

中国名 菜蓟 cai ji , 洋薊 yang ji
英 名 cardoon
学 名 Cynara cardunculus L. subsp. cardunculus
 synonym Cynara cardunculus L. var. scolymus (L.) Fiori
 synonym Cynara scolymus L.
チョウセンアザミの頭花
チョウセンアザミの花
チョウセンアザミの蕾
チョウセンアザミ花後
チョウセンアザミ基部
チョウセンアザミ
チョウセンアザミの葉
花 期 6~8月
高 さ 0.5~2.5m
生活型 多年草
生育場所 栽培種、まれに道端
分 布 帰化種  地中海沿岸原産
撮 影 豊橋市  14.6.30
古くから栽培され、古代のエジプト、ギリシャ、ローマ時代にすでに食用や薬用として利用されていた。現在は若い蕾を食用とするため、ヨーロッパやアメリカなど世界で広く野菜として栽培されている。日本でもよく見られるが、主に観賞用に栽培されている。学名はCynara cardunculus とされ、この園芸種である。学名はFlora of North America による。品種はカルドン(cardoon)とアーティチョーク(artichoke)に分けられ、写真はカルドン。
 根は直根、肉質、太い。茎は無毛~クモ毛が密生する。根生葉は長さ30~200㎝、1~2回羽状に深裂又は全裂し、ときに複葉になる。裂片は楕円形~披針形、全縁~粗い歯があり、裂片の先や歯先に長さ1~30㎜の刺があり、ときに葉柄や裂片の基部の刺が束になる。葉裏は白色~灰色の綿毛が密生し、葉表には薄くクモ毛がある。茎葉は長さ50~82㎝、しばしば、茎に短く沿下し、刺のある翼となる。総苞は長さ3~15㎝、幅4~15㎝、しばしば紫色を帯び、総苞片の先を外曲する。総苞片は披針形~広卵形、基部は圧着し、先は広がり、鈍形~鋭形~尖鋭形、刺が無く、又は長さ1~9㎜の刺があり、又は切形で急に微突形で刺がなく~小さな刺がある。花冠は青色~紫色(まれに白色)、長さ3~5㎝、花柱が長く突き出る。痩果は長さ4~8㎜。冠毛は剛毛、長さ2~4㎝。x=34。
 2亜種がある。
 Cynara cardunculus がヨーロッパで古くから栽培されてきた種であり、アメリカではglobe artichoke はこれに由来する園芸種の Cynara scolymus として以前は扱われていた。アーティチョーク(artichoke)とカルドン(cardoon)が栽培される園芸種であり、artichokeは総苞片の基部と花托を食用とし、cardoon は茎や葉軸を食用とする。cardon は総苞がやや小さいとされるが、これらには不明確な部分もある。野生タイプの種(artichoke thistles)は侵略的な保持力の強い雑草であり、カリフォルニア、南アメリカ、オーストラリアなどの地中海気候の地域にはびこっている。WiklundはCynara cardunculus に2つの亜種、subsp. cardunculus と subsp. flavescens があることを確認した。subsp. cardunculus はartichoke と cardoon 及びいくつかの野生種を含んでいる。subsp. flavescens は侵略的な雑草種を含むものである。カリフォルニアの野生種の全てがsubsp. cardunculus であるわけではない。
 subsp. cardunculus は園芸種を含み、葉の刺が長さ1~3㎝、刺のない園芸種もある。中部の総苞片は先が尖り、長さ22~38㎜、刺の長さ6~9㎜。刺の少ない園芸種は総苞片の先に刺のないものもあり、長さ1~2㎜と短いものもある。総苞片の先の縁が黄色を帯びるものと帯びないものがある。2n=34
 subsp. flavescens Wiklund はアメリカのカリフォルニア州などで野生化している。葉の刺は長さ1~3㎝。中部の総苞片は先が尖り、長さ10~21㎜、刺の長さ2~5(6)㎜。総苞片の先の縁が幅0.5~1㎜程度、顕著に黄色を帯びる。

チョウセンアザミ属

  family Asteraceae - genus Cynara

 1年草又は多年草、高さ50~250㎝、草質、クモ毛状の綿毛がある。茎は±直立、単純又は分枝し、(葉があり)、丈夫。葉は根生葉と茎葉、葉柄があり(根生葉及び下部の茎葉)又は無柄(上部の茎葉)、葉身の縁は1~3回羽状浅裂又は全裂、ときに、本質的に複葉、刺が無く又は細い~非常に丈夫な刺が縁にあり、茎葉は上部で次第に小さく、分裂が少なくなり、最上部は苞状になり、下面は軟毛~密な灰色の綿毛があり、上面は無毛又は薄く綿毛があり、ときに腺がある。頭花は中心小花頭花(discoid)、単生又は少数の頭花が頂生の集散花序状につく。総苞は半球形又は卵形、ときに上部でくびれ、直径5~15㎝。総苞片は多数、5~8+列、不等形。外総苞片は披針形~広卵形、革質、全縁、基部が圧着し、先の付属体が広がり、鋭形~広鈍形~切形、刺が先端にあり又は無い。内総苞片は薄膜状。花托は凸面~平ら~凹面、パレアは無く、密に長い剛毛がある。小花は多数。花冠は白色~青色~紫色、筒部は非常に細く、のど部は急に広がり、円筒形、裂片は線形。葯の基部は長い矢じり形、縁飾りがあり、先の付属体は長楕円形。花柱は枝があり、融合する部分は長く、円筒形、微細なパピラがあり、分離した部分は小さい。痩果は±円筒形~倒ピラミッド形、±4角(かど)があり、細かいうねがあり、ときに、±扁平になり、無毛、先は切形、平滑、基部に付着痕がある。冠毛は輪(白色又は帯褐色)になって落ち、3~7列の硬い多数の剛毛であり、基部で合着し、下部に羽毛があり、上部はしばしば刺があるだけである。x=34。
 世界に約10種あり、地中海沿岸地域、マカロネシア、アジア西部に分布する。

【チョウセンアザミ属の種】
Cynara algarbiensis Mariz-ポルトガル、スペイン原産
Cynara auranitica Post-イラン、イラク、イスラエル、ヨルダン、レバノン、シリア、トルコ原産
Cynara baetica (Spreng.) Pau-モロッコ、スペイン原産
Cynara cardunculus L.-チョウセンアザミ(アーティチョーク , カルドン)
 マカロネシア(カナリー諸島)、北アフリカ(アルジェリア、リビア、モロッコ、チュニジア)、
 ヨーロッパ(フランス、スペイン、ポルトガル、アルバニア、クロアチア、イタリア)原産
Cynara cornigera Lindl.-ギリシャ、キプロス、トルコ、エジプト、リビア原産
Cynara cyrenaica Maire & Weiller-ギリシャ、リビア原産
Cynara humilis L.-ポルトガル、スペイン、アルジェリア、モロッコ、モーリタニア原産
Cynara makrisii Hand & Hadjik.-キプロス原産(1997年に発見されたCynara cyrenaica類似種)
Cynara syriaca Boiss - レバノン、シリア原産
Cynara tournefortii Boiss. & Reut.- ポルトガル、スペイン原産

チョウセンアザミ属の主な種と園芸品種

1 Cynara cardunculus Linnaeus チョウセンアザミ(アーティチョーク) 朝鮮薊

  synonym Cynara cardunculus var. scolymus (L.) Benth.
  synonym Cynara scolymus L. (Scolymus Group)
  synonym Cynara sylvestris Lam.

  synonym Saussurea carthamoides (Buch.-Ham. ex Roxb.) Benth.

 マカロネシア(カナリー諸島)、北アフリカ(アルジェリア、リビア、モロッコ、チュニジア)、
 ヨーロッパ(フランス、スペイン、ポルトガル、アルバニア、クロアチア、イタリア)原産。中国名は泥胡菜 ni hu cai。
 根は直根、肉質、太い。茎は無毛~クモ毛が密生する。根生葉は長さ30~200㎝、1~2回羽状に深裂又は全裂し、ときに複葉になる。裂片は楕円形~披針形、全縁~粗い歯があり、裂片の先や歯先に長さ1~30㎜の刺があり、ときに葉柄や裂片の基部の刺が束になる。葉裏は白色~灰色の綿毛が密生し、葉表には薄くクモ毛がある。茎葉は長さ50~82㎝、しばしば、茎に短く沿下し、刺のある翼となる。総苞は長さ3~15㎝、幅4~15㎝、しばしば紫色を帯び、総苞片の先を外曲する。総苞片は披針形~広卵形、基部は圧着し、先は広がり、鈍形~鋭形~尖鋭形、刺が無く、又は長さ1~9㎜の刺があり、又は切形で急に微突形で刺がなく~小さな刺がある。花冠は青色~紫色(まれに白色)、長さ3~5㎝、花柱が長く突き出る。痩果は長さ4~8㎜。冠毛は剛毛、長さ2~4㎝。x=34。花期は6~8月。
 2亜種がある。
1-1 Cynara cardunculus subsp. cardunculus
 海岸の絶壁、草原、沿岸の低木地、開けた森林地帯、道端の乱れた地域に生える。
 園芸種を含み、葉の刺が長さ1~3㎝、刺のない園芸種もある。中総苞片先が尖り、長さ22~38㎜、刺の長さ6~9㎜。刺の少ない園芸種は総苞片の先に刺のないものもあり、長さ1~2㎜と短いものもある。総苞片の先の縁が黄色を帯びるものと帯びないものがある。2n=34。花期は春~夏(4~7月)。

1-2 Cynara cardunculus subsp. flavescens Wiklund
 草原、沿岸の低木林、低木の茂み、河岸、休閑地、道端の撹乱された地域に生える。
 アメリカのカリフォルニア州などで野生化している。葉の刺は長さ1~3㎝。中総苞片は先が尖り、長さ10~21㎜、刺の長さ2~5(6)㎜。総苞片の先の縁が幅0.5~1㎜程度、顕著に黄色を帯びる。花期は春~夏(4~7月)。

品種1) アーティチョーク(artichoke)  globe artichoke (Scolymus Group) = Cynara scolymus
 'B13' , 'Emerald' , 'Gigante di Romagna' , 'Green Globe' , 'Gros Camus de Bretagne' , 'Gros Vert de Laon' , 'Imperial Star' , 'Imperial Star' , 'Large Green' , 'Lulu' , 'Menuet' (PBR) , 'Monica Lynden-bell' , 'Nun0038ar' (PBR) , 'Nun0042ar' (PBR) , 'Opera' (PBR) , 'Papuan' (PBR) , 'Purple Globe' , 'Purple of Romagna' , 'Symphony' (PBR) , 'Tavor' , 'Tavor' , 'Violet de Provence' , 'Violetta Precoce' ,
品種2) カルドン (cardoon)
'301637 Ar' (PBR) , '307103 Ar' (PBR) , '307848 Ar' (PBR) , '308213 Ar' (PBR) , '315354 Ar' (PBR) , '315358 Ar' (PBR) , 'Andre 10' (PBR) , 'Ares' (PBR) , 'Bianco Avorio' , 'Bianco Avorio' , 'Capriccio' (PBR) , 'Cardinal' (PBR) , 'Cardy' , 'Cavaliere' (PBR) , 'Concerto' , 'Florist Cardy' , 'Gobbo di Nizza' , 'Gobbo di Nizza' , 'Grosse Grun' , New House Farm strain , 'Nun 4011' (PBR) , 'Nun 4051' (PBR) , 'Pieno Inerme' , 'Porto Spineless' , 'Porto Spineless' , 'Romano' (PBR) , 'Rouge d'Alger' , 'Sambo' (PBR) , 'Tenderheart' , 'Trinaseed' (PBR) , 'Vert de Vaux en Velin' ,

2 その他
品種) 'Carciofo Romanesco' , 'Opera' , 'Purple Italian'

日本への渡来

 『花木真写』元文1(1736年)近衛家熙(このえいえひろ)予楽院著に図が掲載されているのが初出。チョウセンアザミは享保年間(1716~ 1735年)に日本に輸入され、朝鮮i薊の名で画かれている。花木真写の絵図は精細、正確である。花木真写は京都嵯峨の陽明文庫にあり、三巻よりなり、125図の植物の写生図が載せられている。また、草木図説 巻15,43図版(1856)にもテウセンアザミとして図説されている。(参考3)

参考

1) Flora of North America
 Cynara
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=108971
2)GRIN
 Cynara
https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=3280
3) 植物分類・地理 - 東京大学
日本植物分類学会が1932-2001年にかけて発刊した「植物分類・地理」のPDFアーカイブ
http://jboli.c.u-tokyo.ac.jp/~jsps/
Vol. 25(4-6) (1973/03/30)189-191 キク科の新帰化植物 チョウセンアザミの日本への輸入
http://jboli.c.u-tokyo.ac.jp/~jsps/pdf/25(4-6)/110003759669.pdf