チャイトスゲ 茶糸菅

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Flora of Mikawa

カヤツリグサ科 Cyperaceae スゲ属

学 名 Carex alterniflora Franch. var. aureobrunnea Ohwi

 synonym Carex sachalinensis F.Schmidt var. aureobrunnea (Ohwi) Ohwi

チャイトスゲの花序
チャイトスゲの果胞
チャイトスゲの基部
チャイトスゲ
チャイトスゲ基部の鞘
チャイトスゲの果胞
花 期 4~5月
高 さ 20~40㎝
生活型 多年草
生育場所 山地の林内、林縁
分 布 在来種(日本固有種) 本州(東海地方~近畿地方)、四国、九州
撮 影 田原市 13.5.15
チャイトスゲはオオイトスゲの変種であり、まばらに叢生し、地下に匐枝を出す。基部の鞘は褐色。葉は硬く、幅1.5~3㎜、やや硬い。葉縁の小刺は上向きで鋭い。苞は有鞘、葉身は小穂より長い。雄性の頂小穂は淡褐色。雌性の側小穂は互いに離れてつき、淡緑色、柄が短い。果胞は長さ3~3.5㎜、無毛~まばらに短毛があり、嘴の長さは中位。雌鱗片は果胞より短く、淡緑色。痩果は長さ約2㎜、果胞よりかなり小さい。柱頭は3岐。
 オオイトスゲは地域や標高などにより、基部の鞘の色や果胞の嘴の長短などに差異があり、シロイトスゲ(東海地方以東)、チャイトスゲ(東海地方~近畿地方、四国、九州)、キイトスゲ(北海道、中部地方~中国地方)、ベニイトスゲ(近畿地方以西)、クジュウスゲ(中国地方、四国、九州)などの変種に分類されている。中間的なものも存在する。オオイトスゲをホンモンジスゲ Carex pisiformisの変種又は品種とし、その変種又は品種とする見解もある。また、チャイトスゲなどをホンモンジスゲの変種とする見解などもある。
 ヤマオオイトスゲ(Carex clivorum)は密に叢生し、大株となり、匐枝は出さない。基部の鞘は濃褐色。雄小穂が緑白色、細い。
 イトスゲ(Carex fernaldiana)は叢生し、匐枝を出す。葉の幅が0.3~1㎜。基部の鞘は淡褐色、雌鱗片は淡緑色。果胞は長さ3~3.5㎜、嘴の長さはやや長く、無毛。

 オオイトスゲ 大糸菅


学名:Carex alterniflora Franch.

  synonym Carex sachalinensis F. Schmidt var. alterniflora (Franch.) Ohwi

  synonym Carex pisiformis Boott subsp. alterniflora (Franch.) T. Koyama

 日本固有種。北海道、本州、四国、九州に分布する。低地~山地の林内や林縁、道端などに生える。
 まばらに叢生し、長く丈夫な匍匐枝(走出枝)を出す。茎は高さ20~60cm、鈍い3稜がある。基部の鞘は白色を帯びた薄褐色(シロイトスゲ)、薄褐色(アリマイトスゲ、クジュウスゲ゙)、薄黄褐色(キイトスゲ)、黄褐色(チャイトスゲ)、赤褐色(ベニイトスゲ)とされているが、濃淡、色調には変異があり、判定の決め手にはならない。葉鞘口部は切形(シロイトスゲ、クジュウスゲ、ベニイトスゲ)、または凹型~半円形(アリマイトスゲ、キイトスゲ)、または半円形~U字形(チャイトスゲ)。葉舌は高さが低い(約0.3~0.4㎜)または高い(約1.0~1.2㎜)、前部膜質部に刺毛が有または無。葉は直立し、長さ10~20cm、幅1.5~3.5mm。苞は鞘があり、葉身を伴う。小穂は3~5個つき、直立し、頂小穂は1個、雄性、棒形、長さ1.5~2.5~3㎝。側小穂は雌性、糸状円柱形、長さ1~3㎝。小穂の花序柄は長さ1~6㎝。鱗片は色が葉鞘にほぼ連動し、微突端。果胞は脈があり、有毛または無毛、長さ2.5~3㎜(アリマイトスゲ)、(2.7)2.8~~3.5mm(シロイトスゲ、チャイトスゲ、キイトスゲ、ベニイトスゲ)、3.5~4㎜(クジュウスゲ)。嘴は短(アリマイトスゲ)~中(シロイトスゲ、チャイトスゲ、キイトスゲ、ベニイトスゲ)~長(クジュウスゲ)、口部は2歯。柱頭は3岐。
 基部葉鞘の色(鱗片の色はほぼ連動する)、葉鞘口部の形、葉舌の高さ、果胞の嘴の長さ、などにより6変種(Kewscienceでは5)に分類されている。葉鞘の色は変化がある。

(1) Carex alterniflora var. alterniflora オオイトスゲ 大糸菅 基本変種

 本州(静岡県~岩手県)、九州、主に東海地方以東の太平洋側に分布する。別名はシロイトスゲ。
 匍匐枝を伸ばし、茎を疎らに叢生し、花茎は高さ20~40㎝。基部の鞘は白色を帯びた薄褐色(whitish light brown)、葉鞘口部が切形、葉舌が高く、高さ約1.2㎜、前部膜質部に刺毛が多い。葉身は幅1.5~3.5mm。頂小穂は雄性で棒形、側小穂は雌性で無柄。苞は鞘があり、葉身は小穂より長い。雄鱗片は半透明で先に芒がある。雌鱗片は果胞よりやや短く、緑白色で先には芒がある。果胞はやや疎らにつき、無毛、狭卵形で長さ2.8~3mmまたは3~3.5mm、嘴は長さが中位。果期は4~5月。

(2) Carex alterniflora var. arimensis Ohwi アリマイトスゲ 有馬糸菅

 本州(大阪府~広島県)に分布。丘陵~山地の林縁、林内の岩場、ときに里山の水路脇斜面などに生える。Kewscienceには無い。
 まばらに生え、またはまばらに叢生し、地上性の匍匐枝を出す。基部の鞘は薄褐色(light brown)、葉鞘口部の前から見た形は凹型あるいは半円形、葉舌は高さ約0.4㎜でシロイトスゲ、ベニイトスゲ、クジュウスゲよりは明らかに低い。葉鞘の前部膜質部は通常無毛、ときに刺毛がわずかに見られることがある。葉は花茎よりも高く、幅1.5~2㎜。花茎は高さ20~40㎝。頂小穂は雄性、棒形、長さ1.5~3㎝、通常、緑白色、果期にはしばしば淡褐色となる。側小穂は雌性、2~3個つき、長さ1.5~3㎝、花序柄は短い。苞は鞘があり、葉身は小穂より長いかまたは同長。雌鱗片は緑白色。果胞は有毛または微毛があり(無毛ともされる)、まばらにつき、他の変種より小型、長さ2.5~3㎜、嘴はきわめて短い。痩果は長さ約2㎜。果期は5月。

(3) Carex alterniflora var. aureobrunnea Ohwi チャイトスゲ 茶糸菅

  synonym Carex sachalinensis F.Schmidt var. aureobrunnea (Ohwi) Ohwi

 本州(山梨県~兵庫県)、四国、九州南部に分布。乾いた林内、林縁に生える。
 まばらに叢生し、ときに地下に長い匍匐枝を出す。稈(花茎)は高さ20~40㎝。基部の鞘は黄褐色(yellowish brown)、葉鞘口部の形は半円形~U字形で、葉舌が顕著に低く、高さ約0.3㎜。葉鞘の質は他の変種より薄く、裂けやすい。葉鞘の前部膜質部は通常無毛、ときに刺毛がわずかに見られることがある。葉はやや硬く(少し軟らかい)、幅1.5~3㎜、葉縁の小刺は上向きで鋭い。苞は鞘があり、葉身は小穂より長い。 雄性の頂小穂は淡褐色。雌性の側小穂は互いに離れてつき、直立し、淡緑色、柄が短い。果胞は2.5~3.5㎜、ほとんど平滑、無毛~まばらに短毛があり、嘴の長さは中位。雌鱗片は果胞より短く、淡緑色~淡褐色。痩果は長さ約2㎜、果胞よりかなり小さい。柱頭は3岐。果期は4~5月。

(4) Carex alterniflora var. elongatula Ohwi クジュウスゲ 久住菅

 本州(岡山県)、四国、九州に分布。山地の林床や路傍などに生える。
 まばらに叢生し、地下に短い匍匐根茎がある。有花茎は高さ20~50㎝、上部はザラつく。基部の鞘は薄褐色(light brown)、葉鞘口部がほぼ切形で、葉舌が高さ約1.0㎜と高いことがシロイロスゲに類似するが、葉鞘の前部膜質部に刺毛がない。葉は幅1.5~3mm。苞は鞘があり、葉身は葉状、小穂より短い。頂小穂は雄性、棒形で、長さ2.5~3cm、有柄。側小穂は雌性、互いに離れてつき、線状円柱形、長さ1~3㎝。雄鱗片は淡褐色、先は鈍形または短い芒がある。雌鱗片は淡色、先は鋭形~短い芒がある。果胞は雌鱗片よりも長く、卵形、長さ3.5~4㎜、無毛、嘴は長く、口部は2小歯。痩果は果胞にやや密に包まれ、卵形、長さ1.9~2.1mm、頂部に盤状の付属体がある。柱頭は3岐。2n=62。
(5) Carex alterniflora var. fulva Ohwi キイトスゲ 黄糸菅
 北海道、本州(岩手県~広島県)に分布。山地や山頂付近などに生える。
 まばらに叢生し、短い匍匐根茎がある。花茎は高さ20~35cm、上部はザラつき、下部は平滑。基部の鞘は長さ1~3㎝、黄薄褐色(yellowish light brown)。葉鞘口部は凹形~半円形(シロイトスゲとチャイトスゲの中間的な形態)、葉舌は高さ約0.6㎜でシロイトスゲとチャイトスゲの中間の高さ。葉鞘前面の膜質部は通常無毛、ときに刺毛がわずかにある。葉は花茎と同長または短く、幅1.5~3㎜。苞は鞘が短く長さ1~2㎝、葉身は葉状。頂小穂は雄性、棒形、長さ1.5~3.5㎝、花序柄は長さ1~6㎝。雄鱗片は淡黄色~黄褐色、先が鈍形または鋭形。側小穂は雌性、線状円柱形、長さ1.5~3.5㎝、下部のものはしばしば離れてつき、まれに根生する。雌鱗片は淡褐色~褐色、先が鈍形または短い芒がある。果胞は雌鱗片よりも長く、倒卵形、長さ2.7~3㎜×幅1~1.3㎜、無毛、上部は次第に狭まり長さが中位の嘴となり、口部は2小歯、縁には細鋸歯条の小剛毛(鋸歯状の刺毛)がある。痩果は果胞にきつく包まれ、卵形、長さ1.9~2.1㎜×幅0.9~1.3㎜、頂部に盤状の付属体がある。柱頭は3岐。果期は5~7月。

(6) Carex alterniflora var. rubrovaginata J.Oda & Nagam. ベニイトスゲ 紅糸菅

 本州(奈良県~山口県)、四国、九州北部に分布。別名はカンサイイトスゲ。低地~低山地の林内や林縁、道端などに生える。
まばらに叢生し、短い匐枝を持つ。基部の鞘は赤褐色(reddish brown)、葉鞘口部が切形、葉舌が高さ約1.2㎜と高く、前部膜質部に刺毛が多い。葉は花茎と同長かまたは長く、幅1.5~2.5(~3.5)㎜。花茎は高さ20~50㎝、上部はザラつき、下部は平滑。頂小穂は雄性、棒形で長さ1.5~2.5㎝×幅1~2㎜、花序柄は長さ1~2㎝、赤紫色。側小穂は雌性、線状円柱形、長さ1~3.5㎝×幅2~3mm、しばしば下側の小穂は離れてつき、花序柄は短く、長さ5㎜未満。苞は長さ1~2㎝の鞘があり、葉身は葉状、長さ1~5㎝。雌鱗片は赤紫色~紫色、先は鋭形または短い芒がある。雌鱗片は先が鋭形または短い芒がある。果胞は雌鱗片よりも長く、倒卵形、長さ2.8~3㎜×幅1~1.1㎜、稜間に5~6脈があり、平滑、先に長さが中位の嘴があり、口部は2小歯、嘴の縁には小剛毛がある。痩果はきつく果胞に包まれ、倒卵形、長さ1.9~2.1㎜×幅0.8~1㎜、頂部には盤状の付属体がある。柱頭は3岐。2n=68~71。果期は5月。