ツタ 蔦

mark

Flora of Mikawa

ブドウ科 Vitaceae ツタ属

別 名 ナツヅタ
中国名 地锦 di jin , 爬山虎 pa shan hu
英 名 boston ivy, Japanese-creeper, Japanese-ivy
学 名 Parthenocissus tricuspidata (Sieb. et Zucc.) Planch.
ツタ紅葉
ツタ果実
ツタ種子
ツタ葉
ツタ葉の鋸歯の小突起
ツタ
ツタの果実
ツタの熟した果実
花 期 6~7月
高 さ つる性
生活型 落葉性木
生育場所 山野の林内、林縁
分 布 在来種  北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、台湾
撮 影 豊川市 09.6.3
巻きひげには吸盤があり、からみつく。葉は2形。花のつく枝の葉は葉柄が長く、大きくて先が3裂する。花のつかない長枝の葉は葉柄が短く、小さくて切れ込みのないものや、3小葉になるものがある。葉縁の鋸歯の先に小突起がある。集散花序に小さな黄緑色の花を多数つける。果実は直径6~9㎜のほぼ球形、種子を1~3個入れ、秋に藍黒色に熟す。2n=40
 ツタウルシは3小葉、幼木は鋸歯があり、ツタによく似ている。鋸歯の先端に小突起があるのがツタで、無いのがツタウルシ。

ツタ属

  family Vitaceae - genus Parthenocissus

 つる植物、木質、雌雄同体。巻きひげは、総状に4~12枝に枝分かれし、若い先は広がりまたは曲がり、後に、吸着盤(adhesive disks)または吸枝(suckers)に変わる。葉は単葉、3小葉、または掌状に5(~7)小葉になる。花序は円錐花序または緩い散房花序状の多出集散花序(polychasium)、偽頂生(pseudoterminal)。 花は5個~多数。萼は円蓋状、無毛、5歯がある。花弁は離生。雄しべは5本。花盤は目立たず、まれに、5個の蜜腺がある。花柱は目立つ。液果は1~4種子をもつ。種子は倒卵形、中に丸みを帯びた合点の結び目(chalazal knot)がある。 腹側の縫合線(raphe)は隆起する。2個の側面の腹側の穴は基部から先まで縦溝が付けられる。胚乳の断面はM字形。2n=40。
 世界に約13種あり、アジア、北アメリカに分布し、中国に9種(固有種6種、導入1種)ある。

ツタ属の主な種と園芸品種

1 Parthenocissus dalzielii Gagnep.
 中国、台湾原産。中国名は异叶地锦 yi ye di jin。
 小枝は円柱形、無毛。巻きひげは5~8分岐し、若い先はやや球形の吸着盤として広がる。葉は2タイプあり、長枝の小さい単葉と、短枝の3小葉がある。単葉:葉柄は長さ5~20㎝、無毛。葉身は楕円形、長さ3~7㎝×幅2~5㎝、基部の脈は3~5本、側脈は2~3対あり、基部は心形またはわずかに心形、縁は両側に4~5歯あり、先は鋭形または尖鋭形。3小葉の複葉:中央の小葉柄は短く、長さ3~10㎜、無毛。側小葉は無柄、卵状楕円形、長さ5.5~19㎝×幅3~7.5㎝、基部は著しく非対称でほぼ円形、縁は5~8歯があり、先は尖鋭形。中央の小葉は長円形、長さ6~21㎝×幅3~8㎝、5~6対の側脈があり、細脈はわずかに隆起し、基部はくさび形、縁は両側に3~8歯があり、先は尖鋭形。多出集散花序(polychasium)は偽頂生(pseudoterminal)、目立たない花序軸をもち、長さ3~12㎝。花序柄は長さ3cm以下、無毛。小苞は卵形、長さ1.5~2㎜×幅1~2㎜、先は鋭形、無毛。花柄は長さ1~2㎜、無毛。蕾は長さ2~3㎜、先は丸い。萼は波打ちまたは全縁。花弁は5個、倒卵状楕円形、長さ1.5~2.7㎜、無毛。花糸は長さ0.4~0.9㎜。葯は黄色、楕円形または卵状楕円形、長さ0.7~1.5mm。花盤は不明瞭。子房は球形。花柱は短い。柱頭は不明瞭に大きくなる。液果は熟すと黒紫色、直径8~10㎜、種子は1~4個。種子は倒卵形、基部は鋭形、先は丸い。花期は5~7月。果期は7~11月。

2 Parthenocissus henryana (Hemsley) Graebner ex Diels & Gilg,  ヘンリーヅタ 
 中国原産。中国名は花叶地锦 hua ye di jin。
 小枝は明瞭な4稜形。巻きひげは4~7分岐、若い先は小塊茎として広がる。葉は掌状に5小葉になる。葉柄2.5~8 cm、葉柄は長さ0.3~1.5㎝、無毛。小葉は倒卵形、倒卵状楕円形、または広倒卵状披針形、長さ3~10㎝×幅1.5~5㎝、側脈は3~6(~7)対、細脈は下面にわずかに隆起し、上面では不明瞭、基部はくさび形、縁には2~5(~6)歯があり、先は鋭形、尖鋭形、または鈍形。円錐花序状の多出集散花序(polychasium)は偽頂生(pseudoterminal)、普通、明瞭な花序軸と退化的な小葉をもつ。花序柄は長さ1.5~9㎝、無毛。花柄は長さ0.5~1.5㎜、無毛。蕾は楕円形または球形、長さ1~2.2mm、無毛、先は丸い。萼は全縁。花弁は楕円形、長さ0.8~2㎜、無毛。花糸は長さ0.7~0.9mm; 葯は楕円形、長さ0.9~1.1mm。花盤は不明瞭。子房は卵状楕円形。柱頭は不明瞭か、またはわずかに広がる。液果は直径8~10mm、種子が1~3個。 種子は倒卵形、基部に嘴があり、先は丸い。花期は5~7月。果期は8~10月。

品種) 'Evening Gloves' , 'Green Velvet' , 'Malene'

3 Parthenocissus heterophylla (Blume) Merr.  アマミナツヅタ 奄美夏蔦
  synonym Parthenocissus semicordata (Wall.) Planch. ヒマラヤナツヅタ
  synonym Parthenocissus tricuspidata auct. non (Siebold et Zucc.) Planch.
  synonym Parthenocissus dalzielii Gagnep. 异叶地锦 yi ye di jin(異葉地錦)[FOC]
  synonym  Parthenocissus amamiana Hatus.
 日本(奄美~沖縄島)、台湾,中国南部、インドシナ,マレーシア原産。別名はアマミヅタ、ウラジロナツヅタ。山地の樹幹や海岸崖地、岩上等をよじ登って生える。
 落葉のつる性低木。秋には落葉する。小枝は乾燥すると褐色の楕円形の皮目があり、皮目は長さ1mm、直径5mm。葉は3小葉。巻ひげの先端は吸盤状。頂小葉は倒卵形または長円状倒卵形、長さ13~14㎝×幅7㎝、先は短い尖鋭形~鋭形、基部はくさび形、沿下し、小葉柄は長さ約1cm、縁は離れた波打つ円鋸歯(歯先は硬くなる)、紙質、下面は褐灰色。側小葉は斜めの卵形または卵状楕円形、基部は斜めの心形、末端の小葉はほぼ等しい。普通、葉柄は長さ11~14㎝。集散花序は無毛、花時に長さ約5cm。花柄は長さ約2mm。花は黄緑色直径約4mm。花弁は5枚。萼は広鐘形、幅2mm、無毛。雄しべは5本、長さ約2mm。子房は卵形、先に花柱がつき、長さ約1mm。液果は球形、黒紫色に熟す。花期は7~8月。
 原記載では次によりヒマラヤナツヅタと区別できるとされているが、Kewscienceはアマミナツヅタをヒマラヤナツヅタの異名とする(Trias-Blasi et al. 2017)説を採用している。World Flora OnlineではParthenocissus heterophylla、Parthenocissus semicordata、Parthenocissus dalzieliiの3種を別種としている。YlistではParthenocissus dalzieliiをParthenocissus heterophyllaのsynonymとしている。
 最も近い種はヒマラヤ産のヒマラヤナツヅタであるが、分布域が遠く離れ、花序が小さく、小葉柄が長いことで区別される。葉の下面の白い点ではヒマラヤナツヅタの変種であるウラジロナツヅタと同じであるが、花枝葉は遥かに大きく、両面の網脈の凸出が著しい点で区別出来る。ツタとは花枝葉が常に三小葉よりなり、下面が灰白色で両面の網脈の凸出が著しいことと、花に明かな小花梗を有ずる点で区別出来る。(参考4)

4 Parthenocissus quinquefolia (L.) Planch.  アメリカヅタ 
  synonym Parthenocissus inserta (Jos.Kern.) Fritsch
 北アメリカ原産。中国名は五叶地锦 wu ye di jin。英名はVirginia Creeper。
 小枝は円柱形、無毛。巻きひげは5~9分岐し、若い先が曲がり、後に吸枝に成長する。掌状に5小葉になる。葉柄は長さ5~14.5㎝、葉柄が短いかほとんど無く、無毛。小葉は倒卵形、倒卵状楕円形、または楕円形、長さ5.5~15㎝×幅3~9㎝、無毛または下面の脈にまばらに直軟毛があり、側脈は5~7対、細脈が不明瞭に隆起し、基部はくさび形または広くさび形、縁には粗い歯があり、先は尖頭形。円錐花序状の多出集散花序(polychasium)は偽頂生(pseudoterminal)、目立つ花序軸は長さ8~20cm。花序柄は長さ3~5mm。花柄は長さ1.5~2.5mm、無毛。蕾は楕円形、長さ2~3mm、先は丸い。萼は全縁。花弁は楕円形、長さ1.7~2.7mm、無毛。花糸は長さ0.6~0.8mm。葯は楕円形、長さ1.2~1.8mm。花盤は不明瞭。子房は円錐形。柱頭は広がらない。液果は直径1~1.2㎝、種子が1~4個。種子は倒卵形、基部に短く鋭い嘴があり、先は丸い。花期は6~7月。果期は8~10月。2n=40。
品種) 'Dark Green Ice' , 'Guy's Garnet' , 'Guy's Garnet' , 'Kirigami' , 'Monham' , Red Wall ('Troki') , Red Wall® , 'Star Showers , Star Showers ('Monham') (v) , Star Showers® , 'Troki' , 'Variegata' , 'Yellow Wall' , 'Yellow Wall'PBR

5 Parthenocissus semicordata (Wall.) Planch. ヒマラヤナツヅタ
  synonym Parthenocissus himalayana (Royle) Planch.
 中国、ブータン、インド、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、ネパール、タイ、ベトナム原産。中国名は三叶地锦 san ye di jin
 小枝は円柱形、若いときはまばらに直軟毛があり、ほぼ無毛になる。巻きひげは4~6分枝し、若い巻きひげの先は曲がり、細い。葉は3小葉。葉柄は長さ3.5~15cm、まばらに毛がある。小葉は普通、ほぼ無柄、下面の脈に毛があり、側脈は4~7対、細脈は目立たないか、わずかに隆起する。頂小葉は倒卵状楕円形または倒卵形、長さ5~13㎝×幅3~6.5㎝、基部はくさび形、縁に6~11歯があり、先は尖頭形。側小葉は卵状楕円形または長円形、長さ5~10㎝×幅3~5㎝、基部は非対称、ほぼ円形、縁は外側に7~15歯があり、内側に4~6歯があり、先は微突形。多出集散花序(polychasium)は主軸が不明瞭。花序柄は長さ1.5~3.5㎝で、無毛またはわずかに直軟毛がある。花柄は長さ2~3mm、無毛。蕾は楕円形、長さ2~3mm、先は丸い。萼は全縁。花弁は卵状楕円形、長さ1.8~2mm×幅約8mm、無毛。花糸は長さ0.6~0.9mm。葯は卵状楕円形、長さ0.4~0.6mm。花盤は不明瞭。子房はほぼ球形。花柱は短い。柱頭は広がらない。液果は直径6~8mm、1~2種子。種子は倒卵形、基部に嘴があり、先は丸い。花期は5~7月。果期は8~10月
品種) 'Purpurea'

6 Parthenocissus tricuspidata (Siebold et Zucc.) Planch. ツタ 蔦
 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、台湾原産。中国名は地锦 di jin , 爬山虎 pa shan hu。英名はBoston ivy, Japanese-creeper, Japanese-ivy。別名はナツヅタ。
 落葉性木。つる性。巻きひげには吸盤があり、からみつく。葉は2形。花のつく枝の葉は葉柄が長く、大きくて先が3裂する。花のつかない長枝の葉は葉柄が短く、小さくて切れ込みのないものや、3小葉になるものがある。葉縁の鋸歯の先に小突起がある。集散花序に小さな黄緑色の花を多数つける。果実は直径6~9㎜のほぼ球形、種子を1~3個入れ、秋に藍黒色に熟す。2n=40。花期は6~7月。
品種) 'Beverley Brook' , 'Crûg Compact' , 'Fenway Park' , 'Fenway Park' , 'Ginza Lights' , 'Ginza Lights' , 'Green Showers' , 'Green Spring' , 'Lowii' , 'Lowii' , 'Minutifolia' , 'Purpurea' , 'Robusta' , 'Veitch Boskoop' , 'Veitchii' , 'Veitchii Robusta' , 'Veitchii'(small-leaved Virginia creeper)

1 その他ハイブリッド
品種) 'Snow Showers' , 'Sugar Vine'PBR

参考

1) Flora of China
 Parthenocissus
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=124105
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Parthenocissus
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:297016-2
3) World Flora Online
 Parthenocissus
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000028265
4) 植物研究雑誌 第27巻 第27号 209-201 1953
 初島住彦涛:南日本及び近隣産植物新報 (3)アマミナツヅタ
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_027_209_212.pdf