ツルボ 蔓穂

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Flora of Mikawa

キジカクシ科 Asparagaceae ツルボ属

別 名 サンダイガサ 参内傘
中国名 绵枣儿 mian zao er
学 名 Barnardia japonica (Thunb.) Schult. et Schult.f.
 synonym Scilla scilloides (Lindl.) Druce
ツルボの花
ツルボの葉
ツルボの果実
ツルボ
ツルボの果実
花 期 8~9月
高 さ 20~40㎝
生活型 多年草
生育場所 日当たりの良い場所
分 布 在来種  日本全土、朝鮮、中国、台湾、ロシア
撮 影 御津町 05.9.10
キジカクシ科は旧分類のユリ科から分割された。
 乾燥にも強く、道端、土手などの日当たりの良いところを好む。
 多年草、高さ20~40㎝。鱗茎は卵形~球形、長さ2~5㎝×幅1~3㎝、薄皮は黒褐色。葉は普通、4~5枚つき、2枚根生し、花期には根生葉は見られないものもあり、長さ(10~)15~40㎝×幅2~9㎜、柔らかく、平滑。花茎は葉より長い。総状花序は長さ(2~)7~20㎝、密に多数の花がつき、花は下の方から咲く。苞は狭披針形。小花柄は長さ5~12㎜。花被片はローズ紫色、ピンク色、又は白色、倒卵形~楕円形~狭楕円形、長さ2.5~4㎜×幅約1.2㎜、わずかに合着し、基部で円盤状になる。雄しべは長さ2~3.5㎜。花糸は類披針形、パピラ状の微軟毛があるか又は無毛。子房は長さ1.5~2㎜、パピラ状の微軟毛がある。胚珠は各室に1~2個。花柱は長さ1~1.3㎜。蒴果はほぼ卵形、長さ3~6㎜×幅2~4㎜、熟すと上部から裂開する。種子は1~3個、長さ2.5~5㎜、黒色。花期と果期は7~11月。2n=16, 18, 26, 27, 34, 35, 36, 43。日本では2n=34の分布域が最も広い。

ツルボ属

 familiy Asparagaceae- genus Barnardia

 多年草、球根をもつ。球根は薄皮で被われる。葉は根生し、無柄、線形~類卵形。花茎は直立、1本、無毛。花序は頂生の総状花序、多数の花がつく。苞は小さく、膜質。花柄は関節がある。花被片は6個、斜上又は広がり、分離からわずかに基部が合着する。雄しべは6本、花被片の基部又は中間近くにつく。花糸は細く又はわずかに基部が膨れる。葯は背着、内向き。子房は3室。胚珠は各室に1~2(又は8~10)個。花柱は糸状。柱頭は小さい。果実は蒴果、球形~倒卵形、胞背裂開。種子は黒色、ときに角(かど)がある。
 世界に2種があり、1種はアジア東部、もう1種は北アフリカとバレアレス諸島に分布する。

ツルボ属の主な種と園芸品種

1 Barnardia japonica (Thunb.) Schult. et Schult.f. ツルボ 蔓穂
  synonym Barnardia sinensis (Lour.) Speta
  synonym Barnardia borealijaponica (M.Kikuchi) Speta 
  synonym Scilla scilloides (Lindl.) Druce
 日本全土、朝鮮、中国、台湾、ロシア原産。中国名は绵枣儿 mian zao er。別名は サンダイガサ(参内傘)。
 多年草、高さ20~40㎝。球根は卵形~球形、長さ2~5㎝×幅1~3㎝、薄皮は黒褐色。葉は普通、4~5枚つき、長さ(10~)15~40㎝×幅2~9㎜、柔らかく、平滑。花茎は葉より長い。総状花序は長さ(2~)7~20㎝、密に多数の花がつく。苞は狭披針形。小花柄は長さ5~12㎜。花被片はローズ紫色、ピンク色、又は白色、倒卵形~楕円形~狭楕円形、長さ2.5~4㎜×幅約1.2㎜、わずかに合着し、基部で円盤状になる。雄しべは長さ2~3.5㎜。花糸は類披針形、パピラ状の微軟毛があるか又は無毛。子房は長さ1.5~2㎜、パピラ状の微軟毛がある。胚珠は各室に1~2個。花柱は長さ1~1.3㎜。蒴果はほぼ卵形、長さ3~6㎜×幅2~4㎜。種子は1~3個、長さ2.5~5㎜。花期と果期は7~11月。2n=16, 18, 26, 27, 34, 35, 36, 43。日本では2n=34の分布域が最も広い。
1-1 Barnardia japonica var. japonica ツルボ 蔓穂 狭義
1-2 Barnardia japonica var. litoralis (Konta) M.N.Tamura ハマツルボ 浜蔓穂
  synonym Scilla scilloides var. litoralis Konta
 ツルボの海岸型変種。
 高さ10~20㎝、やや低いものが多い。葉は厚みがあり、幅が広い。

1-3 Barnardia japonica var. major (Uyeki & Tokui) M.N.Tamura オニツルボ 鬼蔓穂

 四国(愛媛県、高知県)、九州に分布する。海岸の崖地などに生える。   葉の幅 ・長さ ・花序等すべてがツルボの約2倍の大きなツルボであり、旺盛に繁殖する。ツルボの倍数休と推定されている。九州では2n=4x=34 複2倍体(amphidiploid)=異質四倍体も検出されているが、これは全国的に見られるツルボであり、形態が異なるとされている。
 球根は卵状球形、長さ4~5cm、薄皮は膜質、暗褐色、多少光沢がある。枯れた葉の柱は長さ0.8㎝。葉は後屈し、広線状倒披針形で、先は剣形または鋭形で微突形、長さ32~43㎝×幅1.2~2.0㎝、上面に光沢があり、平らで厚く、緑色でわずかに柔らかい。花茎は長さ39~55cm、まれに62cm、基部は丈夫で、先は狭くなる。総状花序は長さ11~27㎝。小花柄は長さ0.6~1.3㎝、無毛、緑色。苞は長円状披針形、長さ3㎜。花被片は6個、狭く倒披針形、先は鈍形、等形、バラ紫色、背面の中央に淡緑色の1個の点があり、水平に開出し、後に下がり、長さ1.1~1.2㎝。雄しべは6本、花糸は斜上し、長さ5~6㎜、基部の幅が広くなる。花柱は長さ3mm。柱頭は点状。子房は長さ2~3㎜、淡黄褐色、卵形。蒴果は楕円状倒卵形でわずかに3稜形。種子は3個、まれに2個、光沢のある黒色。花期は9月(花期は9月下旬~10月:愛媛県)。

2 Barnardia numidica (Poir.) Speta バルナルディア・ヌミディカ
  synonym Scilla numidica Poir.
 アルジェリア、リビア、チュニジア、バレアレス諸島原産。標高5~450mの藪や未耕地の間の牧草地に生える。
 多年草。球根は直径1.2~4(4.5)cm、卵形、外側に褐色の薄膜がある。茎は高さ(10)14~30(45)㎝、平滑または基部に向かってわずかにザラつく。葉は球根あたり(1)3~5(6)枚つき、長さ(1.5)10~17(40)㎝×幅(0.2)0.3~1(1.5) cm、茎より短いかまたは同長、通常、開花前に葉はよく発達するが、まれにまだ見えず、花時に初期であり、広線形、先は鋭形またはほぼ鈍形で、平ら、縁は無毛で平滑。花期は夏の終わり~秋。花序は長さ(3.5)4~20(23)㎝、総状花序、花が15~70 個つき、円筒形。苞は長さ1(1.2)㎜、非常に小さく、鱗片形(squamiform)、楕円状三角形、ときに歯があり、通常、脱落性、特に下部の花の苞は脱落性。下部の花の小花柄は長さ(4)8~15(20)㎜、直立・開出し、花後にごくわずかに大きくなる。花被は花時に星形。花被片は長さ1.5~3.5(4)㎜、披針状長円形、先はほぼ鋭形、開出し、紫色またはライラック色。雄しべの花糸は線状披針形。葯は黒紫色。胚珠は小室に1個。蒴果は約・長さ3㎜×幅6㎜、卵状三角形。種子は約・ 長さ2㎜×幅1.5㎜。2n=18。

参考

1) Flora of China
 Barnardia
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=103526
2) Plants of the World Online | Kew Science
 Barnardia japonica
http://plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:531694-1
3)GRIN
 Barnardia
https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=1292
4)植物研究雑誌 第29巻 第3号 93-94(1954)
 オニツルボ(新変種) (植木秀幹・得居修)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/29/3/29_29_3_3693/_pdf/-char/ja
5)Flora Iberica
 Scilla numidica
http://www.floraiberica.es/floraiberica/texto/pdfs/20_183_20_Scilla.pdf
6)植物研究雑誌 1955年 30巻 11号 p.327
 オニツルボの染色体 得居修
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/29/3/29_29_3_3693/_pdf/-char/ja