ツクバネソウ 衝羽根草
Flora of Mikawa
シュロソウ科 Melanthiaceae ツクバネソウ属
学 名 | Paris tetraphylla A. Gray. |
花 期 | 5~8月 |
高 さ | 20~40㎝ |
生活型 | 多年草 |
生育場所 | 山地の林内 |
分 布 | 在来種(日本固有種) 北海道、本州、四国、九州 |
撮 影 | 面の木園地 05.5.21 |
和名は4個の輪生葉が羽根突きの羽根を連想させることから。特徴がある形なので、見つけやすいのだが、薄暗い林内にある場合は、花があっても緑にまぎれてしまう。木漏れ日に浮き立つ十字の姿は何か神聖な感を覚える。
葉は4個、輪生し、長さ4~10㎝の長楕円形、無毛、全縁、先が尖り、無柄。輪生した葉の間から、長さ5~10㎝の花序柄を直立し、緑色の花をつける。花被片は4個、長さ1~2㎝、緑色。黄色の雄しべが8個。雌しべの花柱(茶色の部分)は4分岐。液果は直径約1㎝の球形、秋に黒く熟す。
他にツクバネの名がつく植物はツクバネ、ツクバネウツギ、クルマバツクバネソウなど。
ツクバネソウ属
family Melanthiaceae - genus Paris多年草。 根茎は細くまたは太くなる。茎は直立し、単純。葉は4枚~多数、ごくまれに3枚、頂部に輪生し、葉柄があり、披針形~卵形、主脈は3本、吻合する細脈をもつ。花は両性、単生、頂生、花序柄(peduncle)が有る。花被片は3~8個、2輪につき、離生、外花被片は緑色、まれに±白色、卵形~披針形。 内花被片は線形又はたまに、無くなる。雄しべ8~24本以上、花被片数の2~8倍つく。花糸は細く、平ら。 葯は底着、しばしば先に凸面状の葯隔がある。子房はほぼ球形、側膜胎座をもつ1室または中軸胎座をもつ4~10室。 花柱は短い。 柱頭は4~10裂。 果実は液か又は液果状の蒴果、非裂開または胞背裂開、種子は数個~多数。
世界に約24種があり、日本、韓国、中国、モンゴル、ロシア、インド、ブータン、ミャンマー、ネパール、シッキム、ラオス、タイ、ベトナム、ヨーロッパに分布する。
ツクバネソウ属の主な種と園芸品種
1 Paris chinensis Franch. タイワンツクバネソウ 台湾衝羽根草synonym Paris polyphylla Sm. var. chinensis (Franch.) H.Hara
synonym Paris formosana Hay中国(江蘇省、浙江省、江西省、福建省、湖北省、湖南省、広東省、広西チワン族自治区、四川省、貴州省、雲南省)、台湾、タイ、ベトナム原産。中国名は华重楼 hua chong lou。標高600~1350(2000)mの森林の木陰や谷沿いの草地に生える。
高さ40~130㎝。葉は5~8枚輪生、通常は7枚輪生し、倒卵状披針形、長円状披針形、または倒披針形で、基部は通常楔形。内花被片は細長い帯状で、通常中央より上が広く、約・長さ1.5~3.5㎝×幅1~1.5㎜、外側の花被片の長さの1/3~ほぼ等長またはわずかに長い。雄しべは8~10本。葯は長さ1.2~1.5(~2)cm、花糸の3~4倍の長さで、葯隔の突出部分は長さ1~1.5(~2)㎜。花期は5~7月。果期は8~10月。2n=10。
2 Paris fargesii Franch. タイワンエンレイソウ 台湾延齢草
中国(広東省、広西チワン族自治区、貴州省、湖北省、湖南省、江西省、四川省、雲南省)、ベトナム原産。中国名は球药隔重楼 qiu yao ge chong lou。標高500~2100mの森林、日陰の場所に生える。
高さ50~100㎝。根茎は長さ1.5~5㎝×幅0.8~2.5㎝。葉は(3~)4~6(~7)枚。葉柄は長さ2~5(~9.5)㎝。葉身は卵形、広卵形、または卵状長円形、長さ9~20㎝×幅4.5~15㎝。花序柄は長さ20~40㎝。外花被片は4~5(~6)枚、緑色、披針形または卵状披針形、長さ4.5~5㎝×幅1~2㎝、基部が短い爪状に狭まる。内花被片は黄緑色または紫黒色、狭線形、通常長さ1~2㎝×幅1~2.5(~3.5)㎜、非常に稀に3.5~6㎜幅になる。雄しべは8~10(~12)本、長さ0.5~1.5㎝。花糸は葯より短い。葯隔は自由部分が紫黒色、横長の楕円形、ほぼ球形、または短い円錐形、長さ1~2㎜。子房は円錐卵形。花柱は短く、柱頭裂片は4~5個。蒴果は卵状球形。花期は4~6月。果期は7~9月。
2-1 Paris fargesii var. fargesii
中国(広東省、貴州省、湖北省、湖南省、江西省、四川省、雲南省 )、ベトナム原産。 中国名は球药隔重楼 qiu yao ge chong lou。標高500~2100mの森林、日陰の場所に生える。
雄しべは長さ5~7㎜。葯の自由部分は横方向に楕円形またはほぼ球形、長さ約1㎜。2n=10。
2-2 Paris fargesii var. petiolata (Baker ex C. H. Wright) F. T. Wang & Tang
中国(広西省、貴州省、江西省、四川省)原産。 中国名は具柄重楼 ju bing chong lou。標高1200~2000mの森林の日陰の場所に生える。雄しべは長さ1.2~1.5㎝。葯隔の自由部分は短い円錐形で長さ1~2㎜。
3 Paris japonica (Franch. et Sav.) Franch. キヌガサソウ 衣笠草
synonym Kinugasa japonica (Franch. et Sav.) Tatew. et C.Sutô
synonym Trillidium japonicum Franch. & Sav.日本固有種(本州の中部以北)。英名はJapanese Canopy Plant。別名はハナガサソウ。
多年草。高さ50~80㎝。葉は長さ20~30㎝、茎頂に8~10個輪生し、全縁、無毛。葉先は円く、先端が小さく尖る。葉の中央から花序柄を伸ばし、直径5~10㎝の花を1個だけつける。花弁に見えるのは外花被片(萼片)、白色から次第に淡紅色に変わり、最後には緑色に変化する。内花被片(花弁)は小さい線状、外花被片と同数つく。花柱も外花被片と普通、同数、外側へ反曲する。淡紅色の花の花柱は褐色を帯び、下部の子房が大きくなり始めている。果実は直径約2㎝の液果、暗紫色に熟す。花期は7~8月。
4 Paris lancifolia Hayata ニイタカツクバネソウ 新高衝羽根草
synonym Paris polyphylla Sm. var. stenophylla Franch. 狭叶重楼 xia ye chong lou
synonym Paris polyphylla Sm. var. latifolia Wang et Chang 宽叶重楼 kuan ye chong lou
synonym Paris polyphylla f. latifolia (F.T.Wang & C.Yu Chang) H.Li中国、台湾原産。中国名は狭叶重楼 xia ye chong lou。
高さ35~115 cm。葉は (6~)8~14(~22)、幅は 1.5~2.5 cm。内側の花被片は幅 1~2 mm、外側の花被片とほぼ同じ長さ。花糸は 4~6 mm、葯は 5~6 mm、結合部の自由部分は約 0.5 mm。2 n = 10*。
(1) Paris polyphylla Sm. var. stenophylla Franch. 狭叶重楼 xia ye chong lou
四川省、貴州省、雲南省、チベット省、広西チワン族自治区、湖北省、湖南省、福建省、台湾、江西省、浙江省、江蘇省、安徽省、山西省、陝西省、甘粛省に分布。標高1000~2700mの森林の下や草の中の日陰や湿った場所に生える。シッキムやブータンにも分布する。葉は8~13(~22)枚が輪生し、披針形、倒披針形、または線状披針形、わずかに湾曲し鎌形になることもあり、長さ5.5~19㎝、幅は通常1.5~2.5㎝、まれに3~8㎜で、先は漸尖し、基部は楔形、短い葉柄がある。外花被片は葉状、5~7枚あり、狭披針形または卵状披針形、長さ3~8㎝、幅(0.5~)1~1.5㎝、先は漸尖して尖り、基部は狭まり短い柄になる。内花被片は幅が細く、外花被片よりはるかに長い。雄しべは7~14本。葯は長さ5~8㎜、花糸とほぼ同長。葯隔の突出部分は非常に短く、長さ0.5~1㎜。子房はほぼ球形、暗紫色。花柱は明瞭、長さ3~5㎜、先端に4~5本の枝がある。花期は6~8月。果期は9~10月。
(2) Paris polyphylla Sm. var. latifolia Wang et Chang 宽叶重楼 kuan ye chong lou
山西省、陝西省、河南省、甘粛省、安徽省に分布する。標高1000~2300mの丘陵地帯の林下に生える。この変種は、葉が狭いvar. stenophyllaに非常に近いが、主な違いは、葉がより幅広く、通常は倒卵状披針形または広披針形で、長さ12~15cm、幅2~4(~6)㎝。若い果実の外側には疣状突起があり、成熟するとより顕著になる。花期は5月。果期は7~9月。
5 Paris polyphylla Sm. パリス・ポリフィラ
synonym Paris polyphylla Sm. var. taitungensis (S.S.Ying) S.S.Ying タイトウツクバネソウ
synonym Paris polyphylla var. alba H.Li & R.J.Mitchell中国(安徽省、福建省、甘粛省、広東省、広西省、貴州省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、陝西省、山西省、四川省、西蔵、雲南省、浙江省)、ブータン、インド、アッサム、ネパール、ブータン、ミャンマー、バングラデシュ原産。中国名は七叶一枝花 qi ye yi zhi hua。標高100~3500mの森林、竹林、雑木林、草地または岩場の斜面、川岸に生える。
高さ10~100㎝。根茎の太さ1~2.5㎝。葉は5~10(~22)枚、葉柄は長さ(0.5~)1~6㎝。葉身は変化に富み、普通は長楕円形から披針形、長さ6~15(~30)㎝×幅0.5~5㎝、基部は円形~楔形。花序柄は長さ5~24(~65)㎝。外花被片は(3または)4~6(または7)個、緑色または黄緑色、狭卵状披針形~披針形、長さ(3~)4.5~7(~11)㎝×幅1~4㎝。内花被片は普通黄緑色、狭線形、外花被片より短いか長く、幅1~1.5(~5)㎜。雄しべは2本、±外花被片と同数、(6~)8~12(~14)本または時にはそれ以上。花糸は長さ4~10㎜。葯は長さ5~12㎜。葯隔の自由部分は通常長さ0.5~4㎜。子房はほぼ球形、うねがあり、1室、ときに疣状突起がある。花柱は短く、基部は広がり、紫色~白色。柱頭は裂片が(4~)5個。蒴果は球形、ときに疣状突起がある。種子は赤色の多肉質の仮種皮に包まれる。花期は3~11月。
6 Paris tetraphylla A.Gray ツクバネソウ 衝羽根草
synonym Paris tetraphylla A.Gray var. angustifolia Miq.
synonym Paris tetraphylla f. corollata Mizush. in J. Jap. Bot. 27: 145 (1952) アイダツクバネソウ
synonym Paris tetraphylla f. sessiliflora (Makino) H.Hara ヨコグラツクバネソウ
synonym Paris tetraphylla A.Gray var. yakusimensis Masam.synonym Paris tetraphylla f. penduliflora (J.Murata & T.Yamanaka) H.Hara ウナズキツクバネソウ
日本固有種(北海道、本州、四国、九州)。和名は4個の輪生葉が羽根突きの羽根を連想させることから。多年草。高さ20~40㎝。葉は4個、輪生し、長さ4~10㎝の長楕円形、無毛、全縁、先が尖り、無柄。輪生した葉の間から、長さ5~10㎝の花序柄を直立し、緑色の花をつける。花被片は4個、長さ1~2㎝、緑色。黄色の雄しべが8個。雌しべの花柱(茶色の部分)は4分岐。液果は直径約1㎝の球形、秋に黒く熟す。花期は5~8月。
POWOでは下位分類を認めていない。
(1) Paris tetraphylla A.Gray f. penduliflora (Murata et T.Yamanaka) H.Hara ウナズキツクバネソウ 頷衝羽根草
synonym Paris tetraphylla A.Gray var. penduliflora Murata et T.Yamanaka
四国に分布する。葉が細く披針形。花は花柄が曲がり、下向きに開く。(2) Paris tetraphylla A.Gray f. sessiliflora (Makino) H.Hara ヨコグラツクバネソウ 横倉突羽根草
本州、四国、九州に分布する。花柄がほとんどない。7 Paris verticillata M.Bieb. クルマバツクバネソウ 車葉衝羽根草
synonym Paris hexaphylla Cham.
synonym Paris hexaphylla f. purpurea Miyabe & Tatew. ムラサキクルマバツクバネソウ
synonym Paris verticillata M.Bieb. f. purpurea (Miyabe et Tatew.) Honda
日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、モンゴル、ロシア、カザフスタン原産。中国名は北重楼 bei chong lou。多年草。高さ20~40㎝。葉は長さ(4)7~15㎝、幅1.5~5㎝、 6~8個輪生し、その先から5~10㎝の花序柄を上に伸ばし、緑色の花をつける。花被片は8個、長さ2~5.5㎝の披針形の外花被片4個と長さ1~3㎝、幅1~2㎜の細い糸状の内花被片4個。雄しべは8~10個、葯の先から細い葯隔が突き出る。子房は黒色。花柱4個。果実は直径約1㎝、黒紫色。2n=10.15.20。花期は5~8月。
8 Paris thibetica Franch. パリス・ティベティカ
synonym Paris thibetica var. apetala Hand.-Mazz. 无瓣重楼 wu ban chong lou
synonym Paris polyphylla Sm. var. thibetica (Franch.) Hara中国(甘粛省、貴州省、四川省、西蔵、雲南省、青海省)、ネパール、ブータン、ミャンマー原産。中国名は黑籽重楼 hei zi chong lou、长药隔重楼。標高1400~3800mの森林、森林縁辺に生える。 高さ35~90cm。根茎は太さ0.8~2cm。葉は7~12枚。葉柄は通常非常に短い。葉身は披針形または狭披針形、長さ4~15cm×幅1~3(~5)cm、基部は楔形。外花被片は4または5枚、緑色、披針形または狭披針形、長さ3~5cm×幅(0.7~)1.4~1.6cm。内花被片はないか狭線形で、外花被片と同長かそれより長い。雄しべは 8~10本、花糸は長さ4~5㎜、葯は長さ8~10㎜、葯隔の自由部分は長さ0.6~2.7㎝。子房は緑色、卵形~球形、1 室、目立たないが 5うねがある。花柱は短く、柱頭裂片は4または5個。蒴果は卵形~球形。種子は黒色、半分は赤色、多肉質で、とさかのある仮種皮に包まれる。花期は4~7月。果期は7~8月。
9 Paris yunnanensis Franch. パリス・ユナネンシス
synonym Paris polyphylla var. yunnanensis (Franch.) Hand.-Mazz.
中国(福建省、湖北省、湖南省、広西省、四川省、貴州省、雲南省)、アッサム、ブータン、ミャンマー、チベット原産。中国名は滇重楼 dian chong lou。標高(1400~)2000~3600mの森林の下や道端に生える。葉は(6~)8~10(~12)枚、厚い紙質、披針形、卵状長円形または倒卵状披針形、葉柄は長さ0.5~2cm。外花被片は披針形または狭披針形、長さ3~4.5cm、内花被片は6~8(~12)個で線形、中央より上で幅3~6㎜、外花被片の長さの1/2またはほぼ同長。雄しべは(8~)10~12本。葯は長さ1~1.5㎝、花糸は非常に短く、葯隔の突起は長さ約1~2(~3)㎜。子房は球形、花柱は短く太く、頂部に5~6(10)本の枝がある。花期は6~7月。果期は9~10月。
参考
1) Flora of ChinaParis
Paris
Paris