ツゲ 黄楊、柘植
Flora of Mikawa
ツゲ科 Buxaceae ツゲ属
別 名 | アサマツゲ、ヒメツゲ |
英 名 | Japanese boxwood, Creole box |
学 名 |
Buxus microphylla Siebold et Zucc. var. microphylla synonym Buxus microphylla Siebold et Zucc. 広義 synonym Buxus microphylla Siebold et Zucc. var. japonica (Mull.Arg. ex Miq.) Rehder et E.H.Wilson synonym Buxus japonica Mull. Arg. ex Miq. |
花 期 | 3~4月 |
高 さ | 2~9m |
生活型 | 常緑低木~小高木 |
生育場所 | 暖地の山地、石灰岩地、蛇紋岩地など |
分 布 | 在来種 日本固有種で本州(関東地方以西)、四国、九州、屋久島に分布 |
撮 影 | 新城市 14.4.14 |
常緑性の低木または小高木、高さ1~3(~5)m、ときに9mにもなり、コツゲは高さ約1mの低木、栽培種のヒメツゲは高さ0.5~0.6m程度。幹は直形10㎝以下、灰白色~淡灰褐色、古くなると樹皮に割れ目が入る。枝は密に分枝する。小枝は断面が4角形、無毛。葉は対生し、短い葉柄があり、葉身は倒卵形~長楕円形~倒披針形、長さ1~3㎝×幅7~15mm(ヒメツゲは葉が長さ2㎝×幅5㎜・以下)、先は円形~鈍形~浅い凹形、基部は楔形、縁は全縁で狭く外巻し、革質で、上面は光沢があり、下面は淡色、中脈上に白色の微短毛があり、側脈はほとんど見えない。花は淡黄色、枝先や上部の葉腋に束生する。数個の雄花に囲まれて1個の雌花がある。雌花は緑色の子房と花柱が3個あり、柱頭は黄色、舌状心形、基部は沿下し、基部の花柱間に蜜腺がある。花弁はなく、萼片が6個ある。雄花は4本の雄しべが突き出し、花弁はなく、4個の萼片がある。蒴果は長さ約10㎜の倒卵形、先に3個の花柱が残り、熟すと3裂開する。種子は長さ約6㎜、長楕円形、黒色、光沢がある。花期は 3~4月。
コツゲvar. ripariaは京都府、高知県の川岸にある橄欖(かんらん)岩、チャート等の岩の割れ目に生える。岡山県の石灰岩地にあるチョウセンヒメツゲに葉が似ているが、若枝に毛はない。愛知県でもコツゲ型が1箇所で報告されている。
タイワンアサマツゲ Buxus sinicaは沖縄、中国、台湾に分布し、葉が長さ1.5~3.5㎝、幅8~20㎜と大きく、若枝に毛がある。
チョウセンヒメツゲ Buxus sinica var. insularis は広島県、岡山県、徳島県、朝鮮、中国に分布する。葉が長さ1㎝と小さく、コツゲに似るが若枝や葉柄に微毛がある。
ツゲ属
family Buxaceae - genus Buxus低木又は小高木、高さ0.15~6m、常緑、雌雄同株。若い枝は4稜形。葉は対生、短柄があり、革質又は薄い革質、しばしば光沢があり、全縁、葉脈は羽状。花序は腋生又は頂生、総状花序、穂状花序又は束生する頭状花序に変わる。苞がある。雌花は頂部に単生。雄花は数個、基部につく。花は小さく、単性。雄花は花被片が4個、雄しべ4個、中央に退化雄しべがある。雌花は花被片が5又は6個、心皮は3個、子房は3室、花柱3個、柱頭はしばしば沿下し、柱間(interstylar)に蜜腺又は蜜腺状の組織がある。胚珠は各室に2個、垂れ下がり、倒生、2珠皮性、 厚層珠心。発芽孔は内側の外皮に形成され、仮種皮は未発達。果実は乾いた蒴果、球形又は卵形、普通、無毛、胞背裂開し、3バルブに分かれる。花柱は宿存性。種子は室に2個、長楕円形。外種皮は黒色、光沢がある。胚乳は肉質、子葉は長楕円形。
世界に約100種あり、アフリカ、アメリカ、アジア、ヨーロッパに分布する。英名はbox, box wood
【ツゲ属の種】
Buxus acuminata , Buxus acunae , Buxus acutata , Buxus aneura , Buxus arborea , Buxus austroyunnanensis , Buxus bahamensis , Buxus balearica , Buxus baracoensis , Buxus bartlettii Buxus benguellensis , Buxus bissei , Buxus bodinieri(カラヒメツゲ) , Buxus braimbridgeorum , Buxus brevipes , Buxus calcarea , Buxus capuronii , Buxus chaoanensis , Buxus cipolinica , Buxus citrifolia , Buxus cochinchinensis , Buxus conzattii , Buxus cordata , Buxus crassifolia , Buxus cubana , Buxus ekmanii , Buxus excisa , Buxus flaviramea , Buxus glomerata , Buxus gonoclada , Buxus hainanensis , Buxus harlandii , Buxus hebecarpa , Buxus henryi , Buxus heterophylla , Buxus hildebrandtii , Buxus historica , Buxus holttumiana , Buxus humbertii , Buxus ichagensis , Buxus imbricata , Buxus itremoensis , Buxus jaucoensis , Buxus laevigata , Buxus lancifolia , Buxus latistyla , Buxus leivae , Buxus leonii , Buxus linearifolia , Buxus lisowskii , Buxus liukiuensis (オキナワツゲ), Buxus loheri , Buxus macowanii , Buxus macrocarpa , Buxus macrophylla , Buxus madagascarica , Buxus malayana , Buxus marginalis , Buxus megistophylla , Buxus mexicana, Buxus microphylla( ヒメツゲ) , Buxus moana , Buxus moctezumae , Buxus mollicula , Buxus monticola , Buxus moratii , Buxus muelleriana , Buxus myrica , Buxus natalensis , Buxus nyasica , Buxus obovata , Buxus obtusifolia , Buxus olivacea , Buxus pachyphylla , Buxus papillosa , Buxus pilosula , Buxus portoricensis , Buxus pseudaneura , Buxus pubescens , Buxus pubifolia , Buxus pubiramea , Buxus pulchella , Buxus purdieana , Buxus rabenantoandroi , Buxus retusa , Buxus revoluta, Buxus rheedioides , Buxus rivularis , Buxus rolfei , Buxus rugulosa , Buxus rupicola , Buxus sclerophylla , Buxus sempervirens(セイヨウツゲ) , Buxus serpentinicola , Buxus shaferi , Buxus sinica , Buxus stenophylla , Buxus subcolumnaris , Buxus triptera , Buxus vaccinioides , Buxus vahlii , Buxus wallichiana , Buxus wrightii , Buxus yunquensis
ツゲ属の主な種と園芸品種
1 Buxus bodinieri H.Lev. カラヒメツゲ 唐姫黄楊中国(甘粛省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、河南省、湖北省、江西省、陝西省、四川省、雲南省、浙江省)原産。中国名は雀舌黄杨 que she huang yang。標高400~2700mの丘陵地帯の森林、山の斜面に生える。
低木、高さ3~4m。小枝は円柱形。若い枝は四角形、毛があるかまたは無毛になる。葉柄は長さ1~2㎜。葉身は通常ヘラ形、狭卵形または倒卵形、先部で幅が最も広く、長さ20~40㎜×8~18㎜、薄い革質、上面は緑色で光沢があり、中肋の基部半分に微軟毛があり、上面は無毛になり、基部は狭い楔形で、先は円形または鈍形、通常は先が微凹形、 中肋が隆起し、側脈が両面または上面にのみ見える。花序は腋生、頭状花序、長さ5~6㎜、花は密。花序軸は長さ約2.5㎜。苞は卵形で、上面は無毛または毛がある。雄花は約10個。小花柄はわずか長さ約0.4㎜。花被片は卵状円形、長さ約2.5㎜。雄しべは長さ約6m㎜。不稔の雌しべは円柱形の子房柄(gynophore)を持ち、先端が膨らみ、長さ約2.5mm、長さは花被片と同じかそれよりわずかに長い。 雌花:外花被片は長さ約2㎜。内花被片は長さ約2.5㎜。子房は長さ約2㎜、無毛。花柱は長さ約1.5㎜、わずかに扁平。柱頭は倒心形、花柱の長さ1/3~1/2まで沿下する。蒴果は卵形、長さ約5㎜、宿存する花柱は直立し、長さ3~4㎜。花期は2月。果期は5~8月。
品種) 'David's Gold'
2 Buxus harlandii Hance ブックス・ハルランディー
中国(広東省、海南島)原産。中国名は匙叶黄杨 chi ye huang yang。別名はハーランドツゲ。森林、河川敷に生える。
低木は小さく、高さ0.5~1m。 小枝は準正方晶系。 若い枝は亜四角形で、細く、直径約1㎜、まばらに毛があり、節間は1~2㎝。 葉柄は不明瞭。葉身はへら形、まれに狭長円形、長さ20~35(~40)㎜ ×幅5~8(~9)㎜、薄い革質、上面は光沢があり、中肋の基部に微軟毛があり、基部は楔形、先は鋭形、円形~鈍形、または先端は微凹形、中肋は両面で隆起し、側脈と細脈は密、上面で見えるが、下面では不明瞭。花序は腋生および頂生、頭状花序、密集する。花序軸は長さ3~4㎜。苞は卵形、微突形。雄花は8~10個。小花柄は長さ約1㎜。花被片は広卵形~広楕円形、長さ約2㎜。雌花:花被片は広卵形、長さ約2㎜、縁は薄膜質。子房は無毛。花柱は子房より長く、直立し、扁平、下部が広い。柱頭は倒心形、花柱の長さの約1/4。蒴果はほぼ球形、長さ約7㎜、平滑。宿存する花柱は長さ約3㎜、先はわずかに反曲する。花期は5月。果期は10月。
品種) 'Rubra'
3 Buxus liukiuensis (Makino) Makino オキナワツゲ 沖縄黄楊
synonym Buxus sempervirens Linnaeus var. liukiuensis Makino
synonym Buxus microphylla Siebold & Zuccarini var. liukiuensis (Makino) S. S. Ying
synonym Buxus liukiuensis (Makino) Makino f. glabra Hiyama ケナシオキナワツゲ
沖縄、台湾原産。中国名は琉球黃楊 liu qiu huang yang。常緑低木、[台湾では高さ4mになり、沖縄では高さ5~7mの小高木になる]。枝は帯黄色、小枝は微軟毛がある。葉は対生し、[葉柄は無柄または短く、長さ2~4㎜、]葉身は長円状卵形、倒卵状長円形、倒卵形、卵形、倒披針形、基部は漸尖し、先は凹形、全縁、薄い革質、上面は緑色[若葉が黄緑色]で光沢があり、下面は淡色、葉柄は短く、わずかに微軟毛があり、葉柄を含めて長さ3~6㎝×幅1.25~3㎝(葉身は長さ2~6㎝)、脈は多数、直立して開出し(erect-patent)、分枝し、乾くと上面で繊細に明瞭。花序は腋生、花が束生し、各花の下に堅く丸く縁毛のある小さな苞がある。雌花は上位にあり、花序軸の基部に覆瓦状の鱗片がある。雄花は小花柄が非常に短い。萼片は4個、膜質、凹面状、縁に縁毛がある。外側の2個の萼片は広卵形。内側の2個の萼片は外側の萼片よりも大きく、円形、凹面状、各長さ2.5㎜。未発達な子房は短く、内側の萼片の長さの1/3の長さで、頭状に拡大し、先端が4裂する。雄しべは4本[、萼片に対生し]、かなり突き出ている。花糸は丈夫。葯は狭卵形、長さは花糸の1/4である。蒴果は卵形、平滑、硬く、長さ約1㎝、宿存する花柱をもち、3花柱はほぼ直立して少し外側に傾き、3心皮に胞背裂開し、それぞれが半分の花柱の2個を持ち、その後、内果皮が外果皮から分かれる。種子は長円形、黒色、光沢がある(参考5)。花期は9~10月。
4 Buxus microphylla Siebold et Zucc ツゲ 黄楊、柘植[広義]
synonym Buxus sempervirens var. microphylla (Siebold & Zucc.) Hayata
日本固有種。本州(関東地方以西)、四国、九州、屋久島に分布。英名はboxwood , Japanese box , littleleaf box。別名はヒメツゲ。暖地の山地に生える。特に石灰岩地、蛇紋岩地に多い。愛知県の絶滅危惧Ⅱ類に指定されている。Kewscienceでは広義にはコツゲ(var. riparia)を含め、コツゲを含める場合は低木(コツゲ)または小高木(ツゲ)である。観賞用に栽培されている。
常緑性の低木または小高木、高さ1~3(~5)m、ときに9mにもなり、コツゲは高さ約1mの低木、栽培種のヒメツゲは高さ0.5~0.6m程度。幹は直形10㎝以下、灰白色~淡灰褐色、古くなると樹皮に割れ目が入る。枝は密に分枝する。小枝は断面が4角形、無毛。葉は対生し、短い葉柄があり、葉身は倒卵形~長楕円形~倒披針形、長さ1~3㎝×幅7~15mm(ヒメツゲは葉が長さ2㎝×幅5㎜・以下)、先は円形~鈍形~浅い凹形、基部は楔形、縁は全縁で狭く外巻し、革質で、上面は光沢があり、下面は淡色、中脈上に白色の微短毛があり、側脈はほとんど見えない。花は淡黄色、枝先や上部の葉腋に束生する。数個の雄花に囲まれて1個の雌花がある。雌花は緑色の子房と花柱が3個あり、柱頭は黄色、舌状心形、基部は沿下し、基部の花柱間に蜜腺がある。花弁はなく、萼片が6個ある。雄花は4本の雄しべが突き出し、花弁はなく、4個の萼片がある。蒴果は長さ約10㎜の倒卵形、先に3個の花柱が残り、熟すと3裂開する。種子は長さ約6㎜、長楕円形、黒色、光沢がある。花期は 3~4月。
品種) 'Apple Green' , 'Asiatic Winter' , 'Aurea' , 'Faulkner'[AGM] , 'Bulthouse' , 'Compacta' , 'Curly Locks' , Golden Dream = 'Peergold' (PBR) , 'Golden Triumph' (PBR) , 'Grace Hendrick Phillips' , 'Green China' , 'Green Pillow' , 'Herrenhausen' , 'Helen Whiting' , 'Ipek' , 'John Baldwin' , 'Kagushima' , 'kitashimae' , 'Nana' , 'Quiet End' , 'Richard' , 'Rococo' , 'Rotundifolia' , 'Trompenburg' , 'Winter Gem'
4-1 Buxus microphylla Siebold et Zucc. var. microphylla (sensu lato) ツゲ 黄楊、柘植
synonym Buxus japonica var. variegata Dippelsynonym Buxus microphylla Siebold et Zucc. var. japonica (Mull.Arg. ex Miq.) Rehder et E.H.Wilson ツゲ[Kewsciense]
synonym Buxus microphylla var. kitashimae (Yanagita) H.Ohba ベンテンツゲ [Kewsciense]
synonym Buxus microphylla Siebold et Zucc. var. japonica (Mull.Arg. ex Miq.) Rehder et E.H.Wilson f. major Hatus. ベンテンツゲ
synonym Buxus microphylla f. rubra (Makino) Hatus サンゴジュツゲKewscienceでは狭義のツゲ(Buxus microphylla Siebold et Zucc. var. japonica)などをvar. microphyllaに含め広義に扱い、コツゲを変種var. ripariaとしている。
品種) 'Aurea' , 'Belvedere' , 'Compacta' , 'Gold Dust' , 'Green Beauty' , 'Green Jade' , 'Jim Stauffer' , 'Morris Dwarf' , 'Morris Midget' , 'National' , 'Rubra' サンゴジュツゲ , 'Sunnyside' , 'Variegata' (v) , 'Winter Gem'
以下はKewscienceでは基本変種 var. microphyllaに含める。
(1) Buxus microphylla Siebold et Zucc. var. microphylla (sensu stricto) ヒメツゲ 姫黄楊
狭義にはツゲを含めず、矮性の栽培品種。野生の種は見られないが、観賞用に人家に植えられている。英名はdwarf Japanese boxwood , Creole box。別名はクサツゲ、ニワツゲ。ヒメツゲは葉が長さ2㎝以下、幅5㎜以下のもの。常緑矮性灌木、枝や葉は密に茂る。樹形は丸く、高さ約60㎝になる。小枝は細く、小さく、断面が四角形。葉は小枝に対生し、長楕円形~倒卵状長楕円形、先は円形または凹形、基部は楔形、ほぼ無柄、長さ1~1.5㎝。ホンツゲに似るが、幅が狭く、質が薄く、縁は全縁で狭く反曲し、脈に枝脈が多いが、外より見えない。3~4月ころ、枝先の葉腋に淡黄緑色の小さな花を集めてつける。雄花は集まり、その頂部に1個の雌花をつける。各花に苞は2固つく。萼片は4個。雄花は雄しべが4本ある。雌花は雌しべが1個、子房には3室がある。3花柱は短く、柱頭は肥厚する。蒴果は広楕円形、胞背裂開し、3殻片に分かれ、宿存する花柱は角(つの)状になる。(参考:新牧野日本植物図鑑)。
(2) Buxus microphylla Siebold et Zucc. var. japonica (Mull.Arg. ex Miq.) Rehder et E.H.Wilson ツゲ 黄楊、柘植 狭義
本州(関東地方以西)、四国、九州、屋久島に分布。別名はアサマツゲ、ホンツゲ、コツゲ、アリマツゲ、コメツゲ。英名はJapanese boxwood。暖地の山地に生える。特に石灰岩地、蛇紋岩地に多い。アサマツゲは伊勢朝熊山に生えることから。新城市黄柳野字新谷にある黄柳野つげ自生地(つげのつげじせいち)が国指定天然記念物になっている。常緑低木、幹は直立し高さ1~3m程度[、ときに5~9mの小高木]、幹の直径は約8㎝程度(太くても10㎝以下)。小枝は断面が四角形。葉はほぼ無柄、対生し、楕円形~倒卵形または長楕円形、長さ1.5~3㎝×幅7~15㎜、先は円形または凹形、基部は鈍形~鋭形または楔形、極短い葉柄があり、縁は全縁、狭く裏面に外巻きし、革質、上面は濃緑色、光沢があり、下面は淡緑色、歯脈の枝脈は多いが、外からは不明。春に淡黄色の小花を小枝の葉腋に叢生(蔟生)する。花序は雄花が集まり、その頂部に1個の雌花がつく。花は萼片が4個。雄花は4本の雄しべと痕跡の雌しべがある。雌花は1個の雌しべがあり、子房は3室、花柱は短く、柱頭は肥厚する。蒴果は楕円形または円形、胞背裂開し、3殻片に分かれて開く。種子は長楕円形、3稜形、黒色、光沢がある。材は黄色、質が硬くて密、版木や印判などに使われる。花期は春(3~4月)。(参考:新牧野日本植物図鑑)
(3) Buxus microphylla Siebold et Zucc. var. japonica (Mull.Arg. ex Miq.) Rehder et E.H.Wilson forma tenuis Makino
アリマツゲ 有馬柘植
(4) Buxus microphylla Siebold et Zucc. var. kitashimae (Yanagita) H.Ohba ベンテンツゲ 辨天黄楊
synonym Buxus microphylla Siebold et Zucc. var. japonica (Mull.Arg. ex Miq.) Rehder et E.H.Wilson f. major Hatus.
御蔵島に分布する。別名はミクラジマツゲ、ミクラツゲ。大きく樹高5mにもなり、葉が大きくて厚い。この材が櫛に使われた。(5) Buxus microphylla f. rubra (Makino) Hatus サンゴジュツゲ 珊瑚樹黄楊
synonym Buxus microphylla 'Rubra'
synonym Buxus sempervirens f. rubra Makino
栽培種、庭園用。
小低木。 葉は楕円形~長円形、革質、長さ3~12㎜×幅2~7.5㎜、幅が広く、橙色、脈は閉じ、乾くと上面で細かく目立ち、下面では見えない。花は小さい。
(6) Buxus microphylla 'Compacta'
synonym Buxus microphylla 'Kingsville Dwarf'
synonym Buxus microphylla 'Kingsville'
synonym Buxus microphylla var. compacta
アメリカで作出された小型の栽培品種。英名はlittleleaf boxwood , Kingsville dwarf boxwood。葉が冬にしばしばブロンズ色になる。高さは20~25㎝。葉は常緑、倒卵形、淡緑色、長さ6㎜以下。盆栽としてよく使われる。
4-2 Buxus microphylla Siebold et Zucc. var. riparia (Makino) Makino コツゲ 小黄楊
synonym Buxus riparia (Makino) Makinosynonym Buxus senlpervirens Linn. var. riparia Makino
synonym Buxus microphylla Siebold et Zucc. var. japonica (Mull.Arg. ex Miq.) Rehder et E.H.Wilson f. riparia (Makino) Makino
synonym Buxus microphylla Siebold et Zucc. var. japonica (Mull.Arg. ex Miq.) Rehder et E.H.Wilson f. minutissima Makino
本州(京都府、高知県)に分布する。川岸にある橄欖(かんらん)岩、チャート等の岩の割れ目に生える。岡山県の石灰岩地にあるチョウセンヒメツゲに葉が似ているが、若枝に毛はない。愛知県でもコツゲ型が1箇所で報告されている。常緑低木、高さ約1m。枝が密集し、葉が密につく。極端な小枝は四角形で、しばしば丈夫、枝は無毛。葉は倒披針形~楕円形~卵形、基部は楔形、先は通常、凹形または円形、縁は全縁、葉柄は非常に短く、厚い革質、無毛、上面は光沢があり細い葉脈があり、下面の葉脈はより淡色で見えず、乾くと縁が狭く外巻し、長さ15~27㎜×幅5~11㎜。雄花の未発達の子房は長さ2㎜、直立し、真っ直ぐで、茸形(fungiform)、柄は4溝があり、先端は切頭状(truncatocapitate)で幅1㎜、2分割されてさらに再2分割する。(参考6)
5 Buxus natalensis (Oliv.) Hutch. ブックス・ナタレンシス
アフリカ原産。英名はlarge-leaved box , Natal box , box-wattle。沿岸の湿った場所に生える。
低木または小高木、高さ3~5m。幹は真っすぐで細い。樹皮は灰色~褐色、若い茎は緑色。葉は卵状披針形~楕円形、長さ50~120㎜x 幅20~50㎜、無毛、薄い革質、濃緑色、光沢がある。短く枝分かれした茎の葉腋に花が束生し、雄花と雌花が同じ花序につく。花は小さく、帯緑色、葯は黄色で、目立つ。花期は晩冬~春(8~9月)。
品種) 'New Silver'
6 Buxus sempervirens L. セイヨウツゲ 西洋黄楊
synonym Buxus aurea Steud.
ヨーロッパ、アジア西部(イラン、トルコ、アゼルバイジャン)、アフリカ北部(アルジェリア、リビア、モロッコ)原産。英名はcommon box, European box ,boxwood , boxtree , Caucasian boxwood , common box, common boxwood, French boxwood, Persian boxwood, Turkish boxwood。別名はヨーロッパツゲ、ボックスウッド、スドウツゲ(須藤柘植)
常緑低木、多数、分枝し、雌雄同株、低木又は小高木、高さ0.5~3(~8)m。シュートは若い時に、微軟毛があり、無毛になり、4隆起がある。葉は単葉、対生、類無柄又は長さ2㎜以下のごく短い葉柄がある。葉身は長さ15~30㎜×7~17㎜、卵形~楕円形~広楕円形、たまに先が微凹形(retuse)、基部は鈍形、若い時に、微軟毛があり、中脈付近以外は無毛になり、上面は光沢のある暗緑色、下面は淡緑色~黄緑色、葉縁は全縁、下向きにやや反り返る。総状花序は葉腋に密集してつき、雌花1個と雄花5~6個がつく。花は淡緑色~黄色~クリーム白色、花弁が無く、長さ約2㎜、直径約5㎜、苞がある。雄花は雄しべ4個、萼片4個。蒴果は無毛、卵状長楕円形、しばしば脈があり、長さ6~10㎜、直径約8㎜、わずかに末広がりの角(つの)[花柱の残物]が3個あり、熟すと褐色になり、裂開する。種子は卵状長楕円形、光沢のある黒色、長さ5~6㎜。花期は4~5月。果期は夏~秋。2n=28。
品種) 'Abilene' , 'Agram' , 'Anderson' , 'Angustifolia' , 'Arabeske' , 'Arborescens' , 'Argentea' , 'Argenteo-variegata' (v) , 'Aristocrat' , 'Aurea Maculata' , 'Aurea Marginata' , 'Aurea Pendula' (v) , 'Aureovariegata' (v) , 'Bowles's Blue' , 'Belleville' , 'Bentley Blue' , 'Berlin' , 'Blauer Heinz' , 'Blue Belle' , 'Blue Spire' , 'Brilliantissima' , 'Bullata' , 'Claverton' , 'Conrowe' , 'Crossley' , 'Dark Sky' , 'Dee Runk' , 'Denmark' , 'Egremont' , 'Elegans' , 'Elegantissima' (v) , 'Emir' , 'Fiesta' , 'Fleur de Lys' , 'Flora Place' , 'Giant' , 'Glauca' , Gordo = 'Conrowe' (PBR) , 'Graham Blandy' , 'Grand Rapids' , 'Gold Tip' ,'Golden Frimley' (v) , 'Green Balloon' , 'Greenpeace' , 'Haller' , 'Handsworthensis' , 'Handsworthiensis' , 'Hardwickensis' ,'Herman's Low' , 'Henry Hohman' , 'Henry Shaw' , 'Hermann von Schrenk' , 'Holland' , 'Ingrid' , 'Inglis' , 'Inverewe' , 'Ickworth Giant' , 'Jack' , 'Japonica Aurea' , 'Kensington Gardens' , 'King Midas' , 'Kingsville' , 'Kingsville Dwarf' , 'Krakow' , 'Lace' , 'La Chapelle' , 'Langley Beauty' , 'Langley Pendula' , 'Latifolia' , 'Latifolia Aurea Maculata' , 'Latifolia Maculata' (v) , 'Latifolia Macrophylla' , 'Latifolia Pendula' , 'Lawson's Golden' , 'Lemmens' , 'Linda' , 'Longifolia' , 'Marginata' (v) , 'Mary Gamble' , 'Memorial' , 'Molesworth' , 'Myosotidifolia' , 'Myrtifolia' , 'Natchez' , 'Newport Blue' , 'Nopur' (PBR) , 'Northern' , 'Notata' (v) , 'Obelisk' , 'Ornament' , 'Parasol' , 'Pendula' , 'Pendula Esveld' , 'Pinnacle' , 'Planifolia' , 'Plyewell Blue' , 'Polar' (PBR) , 'Prostrata' , 'Pygmaea' , 'Pylewell' , 'Pyramidalis' , 'Raket' , 'Rosalia' , 'Rosmarinifolia' , 'Rotundifolia' , 'Roy Lancaster' , 'Saint Genevieve' , 'Salicifolia' , 'Salicifolia Elata' , 'Sentinelle' , 'Silver Beauty' (v) , 'Silver Variegated' , 'Suffruticosa' , 'Suffruticosa Blue' , 'Suffruticosa Covent Garden' , 'Suffruticosa Variegata' (v) , 'Sultan' , 'Sunningdale Silver' , 'Tropical Garden' , 'Twisty' , 'Undulifolia' , 'Vardar Valley' , 'Varifolia' , 'Variegata' (v) , 'Waterfall' , 'Welleri' , 'William Borek' , 'Wisley Blue'
7 Buxus sinica (Rehder & E.H.Wilson) M.Cheng タイワンアサマツゲ
synonym Buxus microphylla Siebold et Zucc. subsp. sinica (Rehder et E.H.Wilson) Hatus
synonym Buxus microphylla Siebold et Zucc. var. sinica Rehder et E.H.Wilson
synonym Buxus sinica (Rehder et E.H.Wilson) M.Cheng var. intermedia (Kaneh.) M.Cheng
日本(沖縄)、中国、台湾に分布する。中国名は黄杨 huang yang。低木又は小高木。小枝は円柱形、縦のうねがあり、灰白色。若枝は4稜形、有毛、節間は(3~)5~20㎜。葉柄は長さ1~2㎜。葉身は形や大きさが変化し、広楕円形~広倒卵形~円形~倒卵形~倒卵状長楕円形~楕円状披針形~披針形、長さ(5~)7~35㎜、幅(3.5~)5~20㎜、革質~厚い革質、上面は光沢があり、両面が無毛又は中脈の下半部に微軟毛があり、基部は円形~楔形、先は円形~鈍形で先端が凹む~先の尖った尖鋭形、中脈は上面に盛り上がり、側脈は不明瞭、上面に小しわがある。花序は腋生、頭状花序。花序軸は3~4㎜、有毛。苞は広卵形、長さ2~2.5㎜、下面が±有毛。雄花は約10個、無柄。外花被片は卵状楕円形。内花被片は類円形、長さ2.5~3㎜、無毛。雄しべは長さ約4㎜。不稔の雌しべは棍棒形の子房柄をもち、先はわずかに膨れ、長さ約2㎜。不稔の雌しべと花被片長さは約2:3~1:1~3:2。雌花は花被片が長さ約3㎜。子房は花柱よりわずかに長く、無毛。花柱は太く、扁平。柱頭は倒心形、花柱の中間まで沿下する。蒴果は類球形、長さ6~8(~10)㎜、宿存性の花柱は長さ2~3㎜。
7-1 Buxus sinica var. aemulans (Rehder & E.H.Wilson) P.Brückn. & T.L.Ming
中国(安徽省、重慶、福建省、広東省、広西チワン族自治区、湖北省、湖南省、江西省、四川省、浙江省)に分布。中国名は尖叶黄杨 jian ye huang yang。標高は600~2000mの川沿いの藪や石の多い場所に生える。葉身は菱状卵形~狭披針形まで変化し、通常は楕円状披針形または披針形、長さ2~3.5㎝×幅1~1.3㎝、先は尖鋭形、先端は鋭形またはわずかに鈍形、中肋は両面で隆起し、側脈が上面で見える。不稔の雌しべの長さや蒴果の毛は様々。蒴果は長さ約7㎜、宿存する花柱は長さ約3㎜。
7-2 Buxus sinica (Rehder et E.H.Wilson) M.Cheng var. insularis (Nakai) M.Cheng チョウセンヒメツゲ
synonym Buxus microphylla Siebold et Zucc. var. insularis Nakai
synonym Buxus microphylla E. H. Wilson var. koreana E. H. Wilson ex Rehder
日本(広島県、岡山県、徳島県)、朝鮮に分布。英名はKorean boxwood , Korean Littleleaf Boxwood 。常緑低木、高さ60㎝以下。葉が長さ1(~2)㎝と小さく、若枝や葉柄に微毛がある。 葉縁が著しく内曲する。
品種) 'Chegu' , 'Filigree' , 'Franklin's Gem' , 'Justin Brouwers' , 'Nana' . 'Pincushion' , 'Sunny-side' , 'Tall Boy' , 'Tide Hill' , 'Wee Willie' , 'Winter Beauty' , 'Winter Gem , 'Wintergreen'
7-3 Buxus sinica var. intermedia (Hatus.) M.Cheng
台湾に分布。中国名は中间黄杨 zhong jian huang yang。
葉身は長さ1.5~3.5㎝×幅0.8~2㎝、上面の中肋の基部に沿って微軟毛があり、下面の中肋に沿って白色のパピラが密生し、側脈が上面で目立つ。不稔の雌しべの長さと花被片の長さが等しいか、または3:2。
7-4 Buxus sinica var. parvifolia M.Cheng
中国(安徽省の黄山、重慶市、湖北省、江西省の廬山、浙江省の龍塘山)に分布。中国名は小叶黄杨 xiao ye huang yang。標高約1000mの石の多い地域に生える。
葉身は小さく、広楕円形または広卵形、長さ7~10㎝×幅5~7㎜、薄い革質、側脈が上面で目立つ。 蒴果は長さ6~7mm、無毛。
7-5 Buxus sinica var. pumila M.Cheng
中国(湖北省)に分布。中国名は矮生黄杨 ai sheng huang yang。標高約2100mの斜面の森林に生える。
葉身は非常に小さく、長さ5~7(~9)㎜×幅3.5(~6)㎜、厚い革質、側脈は上面で不明瞭で、小じわが多い。蒴果は球形、長さ約4㎜、宿存する花柱は非常に短く、無毛。
7-6 Buxus sinica var. sinica
synonym Buxus microphylla var. tarokoensis S.Y.Lu & Yuen P.Yang.
synonym Buxus microphylla f. pubescens S.S.Ying in Coloured Ill. Fl.
synonym Buxus microphylla f. tarokoensis (S.Y.Lu & Yuen P.Yang) F.Y.Lu, C.H.Ou, Y.T.Chen, Y.S.Chi, K.C.Lu & Y.H.Tseng
中国(安徽省、甘粛省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、湖北省、江蘇省、江西省、陝西省、山東省、四川省、浙江省)原産。中国名は黄杨 huang yang。Buxus microphylla var. tarokoensisは台湾の標高1800mの太魯閣渓谷で発見されたものとされているが、台湾を分布域に含めていない。標高1200~2600mの山間の渓谷、川沿いの森林に生える。低木または小高木、高さ1~6m。節間は5~20mm。葉身は広楕円形、広倒卵形、倒卵状楕円形、または倒卵状長円形、長さ1.5~3.5㎝×幅0.8~2㎝。上面の中肋の基部半分に沿って明瞭に微軟毛があり、下面の中肋に沿って密に白色のパピラがあり、先は円形または鈍形、先端は微凹形、上面で中肋が隆起し、側脈が見える。不稔の雌しべと花被片の長さは2:3。蒴果は球形、長さ6~8(~10)㎜。花期は3月。果期は5~6月。
7-7 Buxus sinica var. vacciniifolia M.Cheng
中国(重慶市、広東省、湖南省、江西省)に分布。中国名は越桔叶黄杨 yue ju ye huang yang。標高1000~1800mの石の多い場所、藪に生える。
小低木、密に分枝し、節間は3~6㎜。葉身は小さく、円形または広楕円形、まれに倒卵形、長さ9~11(~12)㎜×幅8~10㎜、厚い革質、 輝き(lucid)、縁は奇妙に後屈し、先は円形、先端が微凹形、まれに鋭形になり、側脈は上面で不明瞭で、小じわが多い。蒴果は卵状球形、長さ7~8㎜、初めは毛があるかまたは無毛になる。
8 Hybrids (Buxus microphylla var. koreana x Buxus sempervirens)
品種) 'Glencoe' , 'Green Gem' , 'Green Mound' , 'Green Mountain' , 'Green Velvet'
9 その他ハイブリッド
品種) 'Katerberg' , 'Newport Blue' , North Star = 'Katerberg' , 'Richard'
参考
1) Buxus in Flora of China @ efloras.orgBuxus
Genus: Buxus L. - List of Species Records in GRIN
Buxus sempervirens L.
About Boxwood
Observations on the Flora of Japan. (Continued from p. 153.)T. Makino
Buxus senlpervirens Linn. var. riparia Makino, var. nov
Buxus japonica MUELL forma rubra MAKINO
つげ(黄楊木)