シャジクモ 車軸藻

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Flora of Mikawa

シャジクモ科 Characeae  シャジクモ属

学 名 Chara braunii Gmelin
シャジクモ
シャジクモ
シャジクモ
花 期 8~9月
高 さ 沈水植物(長さ5~40㎝)
生活型 1年草
生育場所 水田、ため池、湖沼
分 布 在来種 日本全土、世界に広く分布する
撮 影 幸田町 05.9.10
水田で普通に見られる。主軸は直径約 1㎜、8~11本の小枝を輪生し、再分岐 しない。雌雄同株。生殖器(造精器と生卵器)は小枝の節だけにつき、基部にはつかない。生卵器 が造精器より上につく。托葉冠は1列。茎に皮層がない。
 オオシャジクモは輪生する小枝が4~7本と少なく、生殖器が小枝の基部にもつく。
 ミゾフラスコモやフタマタフラスコもなどフラスコモ属(Nitella)は小枝が再分岐して、枝が密である。

シャジクモ属

 ストレプト植物門 車軸藻綱 シャジクモ目- family Characeae - genus Chara

 藻体は雌雄同株又は雌雄異株、ときに石灰質の殻をもつ。茎や小枝は皮層がある(corticated)又は 皮層がない(ecorticated)。棘細胞(spin cell)をもつ。托葉冠(stipulode)は常にあり、1重又は2重、ときに未熟。小枝は5~14個 の関節をもつ。苞(bract cell)は5~7個、後ろ側の細胞はしばしば小さい。小苞は2個。雌雄同株種では造精 器(antheridia)と生卵器(oogonia)は異なった枝につくか、又は生卵器の下に造精器がつく。生卵器 はフラスコモ属(Nitella)の生卵器より大きい。まれに、殻を被る。卵胞子膜(oospore-membrane)の装飾は普通、不 明瞭。
 世界に約40種があり、ヨーロッパ、アジア、アメリカなど世界中に分布する。

シャジクモ属の主な種

1 Chara braunii Gmelin  シャジクモ  車軸藻
 日本全土、世界に広く分布する。中国名は虻眼 meng yan。英名はhorsefly's eye。水田や ため池などで最も普通に見られる
長さ10~40(50)cm以下。主軸(茎)は丈夫で太さ420~700(300~1000)µm。主軸にも小枝にも皮層を 完全に欠く(ecorticate)。このため、シャジクモ属の他の種と比較して藻体に透明感がある。托 葉冠は1段、輪生枝に互生し、托葉細胞の形状は乳頭突起状から1mm程に尖った形にまで変異が見 られる。小枝は節に8~11本輪生する。各小枝は3~4節をもち、節には苞がつく。小枝末端には 複数の苞細胞が束生して冠状になる。雌雄同株。雌雄両器は小枝の下部の節に生じ、小枝の基部 には生じない。造精器は生卵器の下部につき、直径250~320 µm。生卵器は長径800~1100µm x 短径400~500 µm。螺旋縁は約10本。卵胞子は黒色、長径500~750µm[ x 短径300~450 µm。螺旋 縁は7~12本。
 世界では形態的な個体変異が大きく、多数の種内分類群が提唱されているが、日本国内では このような形態的変異の報告がないが、生態的な差異(浅所と深所) と系統的差異の対応関係 が報告されている。
 主軸や小枝に皮層を欠く点でオオシャジクモ. (C. corallina) やオーストラリアシャジクモ (C. australis) に類似しているが、これらは、托葉冠が未発達 (痕跡的~欠如) であること、 小枝末端に1細胞のみがついて冠状ではないこと、生卵器が小枝の基部にもつくことでシャジク モとは区別される。
2 Chara corallina Klein ex Willdenow var. corallina  オオシャジクモ 大車軸藻
 日本(本州、四国)、アジア、オーストラリア、アフリカに分布。
 長さ50㎝を超え、太い主軸をもつ。皮層はもたず、托葉冠と苞は退化的で小型である。小枝は 節に4~7本、輪生し、各小枝には4~5節がある。小枝の終端細胞が1細胞性。雌雄同株。生殖器 は小枝の節部だけでなく小枝の基部にも群生する。卵胞子は黒色、楕円体、螺旋縁は6~7本。
3 Chara fibrosa C.Agardh ex Bruzelius イトシャジクモ 糸車軸藻
日本(本州、四国、九州)、ヨーロッパを除く世界中に分布。
雌雄同株。長さ40cm以下。主軸は皮層および発達した棘細胞を持つ。托葉冠は1段あり、輪生 枝の2倍数まで。輪生枝は皮層を欠き、特徴的な長い苞細胞を持つ。雌雄両器は輪生枝の節部に 生じる。卵胞子は黒色、楕円体、螺旋縁は6~9本。卵胞子膜には細かい突起があり顆粒状に見 える。
4 Chara globularis Thuill. カタシャジクモ 硬車軸藻
 日本(本州中部以北、オーストラリアを除く世界中に広く分布する。淡水の湖沼、池、溝など の止水域に生育する。繁茂期は5~10月。
  大型で、長さ通常10~50cm、ときに1mに達する。色は暗緑色、小枝は節部に7~8本輪生する。 小枝は8~11個の節部があり、苞はほとんど発達しない。托葉冠は小枝基部に上下2段につくが、 わずかに細胞が膨らんだ乳頭状。主軸も小枝も先端部以外は皮層で覆われる。主軸の皮層は3列 性、1次列の間に2本の2次列を挟む。棘細胞は退化した乳頭状突起。皮層細胞はしばしば石灰化 して、硬くなり、これが和名の由来である。雌雄同株、小枝の下の3段の節部に雄器と雌器をそ れぞれ1個ずつ、雌器は上向き、雄器は下向きにつく。雄器の直径は300~450µm、熟すと鮮やか な赤色になる。雌器の螺旋は14~16本。受精した卵胞子は黒色、長径550~750µm、短径400~550 μm、11~12本の螺旋縁がある。
5 Chara leptospora Sakayama ソデマクリシャジクモ 袖まくり車軸藻
 日本では霞ヶ浦、小川原湖、鷹架沼、小豆島室生大池などから報告されている。
 カタシャジクモと藻体の形態が似ている。主軸にも小枝にも皮層があり、小枝末端の短い部分 のみ皮層を欠き、全体に透明感がない。主軸の皮層は3列性、小球状の棘細胞を持つ一次列の間に 2本の二次列がある。托葉冠は上下2段。小枝の節を取り巻く苞は痕跡的で、生卵器を取り巻く苞 は生卵器とほぼ同長。雌雄同株、生殖器は小枝の各節につく。
6 Chara sejuncta A. Braun アメリカシャジクモ 亜米利加車軸藻
 日本(本州の群馬県以南、四国、九州)に分布、南北アメリカに広く分布。
 雌雄同株。長さ25cm以下。雌器と雄器は決して同じ節につかず、輪生枝の別々の節に付く。輪 生枝の最下部と上端1~3節を除き、藻体は3列性の皮層で覆われる。托葉冠は輪生枝の2倍数が2段 に並び、裸節の2~3倍の長さになる。各小枝は12~14節をもつ。
 ハダシシャジクモ(Chara zeylanica Klein ex Willdenow)は南大東島で発見報告されている。 藻体の形態がアメリカシャジクモに似ているが、雌雄同株で、生卵器と造精器は同じ節につく。
7 Chara vulgaris L. クサシャジクモ  草車軸藻
 日本(沖縄、千葉県のみ)分布。放棄水田、水路、小池などに生育。英名はcommon stonewort
 藻体は長さ約10~30㎝、主軸、小枝に皮層があり、小枝の先だけ皮層がない。主軸の皮層は2列性、 一次列は小球状の刺細胞をもち、1次列の間に2次列をもつ。托葉冠は上下の2段、よく発達して卵形。 苞は生殖器をつける側が長く、反対側は痕跡程度。雌雄同株で、各節に生殖器をつける。

参考

1)京都府レッドデータブック2015
 車軸藻類
https://www.pref.kyoto.jp/kankyo/rdb/bio/chara.html
2) The Science Reports of the Kanazawa University, Vol. !I, No. 1, pp. 115-137, March, 1953.
 Studies on the Chαrophytαin Formosa II.
http://scirep.w3.kanazawa-u.ac.jp/articles/02-01-011.pdf
3) 愛媛県レッドデータブック
 藻類 | オオシャジクモ
4)しゃじくもフィールドガイド
 国立環境研究所
https://www.nies.go.jp/biology/pdfs/pu_6.pdf