スズタケ 篶竹

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Flora of Mikawa

イネ科 Poaceae スズタケ属

別 名 スズダケ、スジタケ、ミダケ、スドリダケ、ススニタケ、シノメダケ、ホッタケ、ミスズタケスズ、ジダケ
学 名 Sasamorpha borealis (Hack.) Nakai
 synonym Sasa borealis (Hack.) Makino et Shibata
スズタケの葉舌
スズタケの枝
スズタケの節
スズタケ
スズタケ稈鞘
スズタケ葉表
スズタケ葉裏
スズタケ葉表の縁
[稈長] 1.5~2m
生活型 ササ類
生育場所 ブナ林の林床、林縁、日当たりのよい草地
分 布 在来種 北海道、本州(太平洋岸)、四国、九州、朝鮮
撮 影 段土裏谷 06.11.5
スズタケ属に属す。ササ属Sasamorphaに分類されることもある。
 根茎は長く伸び、単軸型(leptomorph)。稈は淡紫褐色、直立し、長さ150~200㎝、直径5~8㎜、木質、稈の節間は円柱形、壁は薄く、上部は無毛または後屈する毛があり、節は膨れっず、毛がある。側枝は豊富、稈上部から生じ、芽は1個、枝は節に1個出て2~3本に分岐し、茎と同じくらい太い。稈鞘は宿存し、長さは節間より長く、長毛がある。葉耳はなく、肩毛もない。葉は各枝に2~3枚つく。葉鞘は表面が無毛または微軟毛があり、葉鞘の口部の毛は無い。葉舌は縁毛が無く、膜質、低い山形。葉身の基部の鞘との間に短い葉柄のような接続部がある。葉身は長円形、長さ15~21(~30)㎝×幅15~25(~50)㎜、両面とも無毛、上面には光沢があり、下面は灰白色、冬に葉縁に白い隈どりが現れ、先は尖鋭形。花序は円錐花序。円錐花序は開き、卵形、長さ8~10㎝。小穂は単生。稔性の小穂は小梗がある。小穂は5~8個の稔性の小花からなり、先で小花が減少する。小穂は線形、側部が扁平、長さ15~25㎜、熟すと別れ、各稔性の小花の下で関節離断する。小軸の節間は長さ約2㎜、護穎で不明瞭、毛がある。苞穎は宿存し、小穂より短く、稔性の護穎よりも薄い。第1苞穎は披針形、長さ4~5㎜、薄膜質、竜骨はなく、先は尖鋭形。第2苞穎は卵形、長さ6~7㎜、薄膜質、竜骨はなく、7~9脈があり、縁に縁毛があり、先は尖鋭形。稔性の護穎は卵形、長さ約8㎜、紙質、竜骨はなく、11~13脈がある、護穎の縁は縁毛があり、先は尖鋭形。内穎は護穎の長さと同長、8~10脈があり、竜骨に縁毛があり、先は切形または鈍形。頂部に不稔の小花は未発達でも。稔性の小花に似ている。鱗被は3個、卵形、長さ2~2.5㎜、脈があり、縁毛があり、先は鈍形。葯は6個、長さ約5㎜。柱頭は3個。穎果は果皮が付着性、先に付属体は無い。
 ケスズ Sasa sikokiana .はやや小型で、節がやや膨れ、葉裏に軟毛が密生する。
 チシマザサ Sasa kurilensis は日本海側のブナ林に多い大型のササ類で、稈の基部が弓状に曲がるためネマガリタケの別名があり、筍が食用とされる。また、節が膨れ、稈鞘が短い。

スズタケ属

  family Poaceae - genus Sasamorpha

 低木状の竹(shrubby bamboos)。根茎は単軸型(leptomorph type)で長く走る地下茎を持つ。[これに対し、叢生型の地下茎(pachymorph type)がある]。稈は直立し、分げつ(tillering:根に近い茎の節から側枝が発生すること)し、プルリカエスピトース(pluricaespitose;長くて細い根茎に沿って、1列の束生で稈が生じる)であり、節間は節の下で円柱形、無毛、ときに白粉状になりまたはまばらに微軟毛があり、壁は厚く、Sasa subg. SasamorphaまたはS. subg Sasaでは節が平ら。枝は1節に1枝を単生し、しばしば稈と同じくらいの太さになる。枝は移譲的分枝(稈鞘が稈基部を包んだまま稈を離れ、枝を抱くスズダケ型)。稈鞘は宿存性で、(S. sasamorpha=S. subg Sasamorphaでは)稈鞘は節間よりも長く、ササ属などそれ以外では短く、紙質~ほぼ革質、普通、葉耳が発達する。葉身は披針形、葉は普通、稈に比べて大きく、掌状に配置され、横脈が明瞭、冬には縁がかなり壊死する。花序は緩い円錐花序または総状花序であり、普通、小さな苞葉に囲まれる。小穂は成熟時に紫色または赤色、4~8花がつき、小軸は関節離断(disarticulating)し、最上部の小花の上で伸びる。苞穎は2個、±毛があり、縁に長い縁毛がある。護穎は卵形または長円状披針形、ほぼ革質、長い微突形。内穎は2竜骨がある。鱗被は3個、卵形、薄く、透明、縁に縁毛がある。雄しべは6個、長く突き出る。葯は黄色。子房は卵形。花柱は1個、短い。柱頭は3個、羽毛状。穎果は成熟時に暗褐色。英名はbroad-leaf bamboo。
 世界に5種あり、日本、朝鮮、中国、サハリンに分布する。
【スズダケ属の種】
1 Sasamorpha borealis (Hack.) Nakai スズタケ
2 Sasamorpha hubeiensis C.H.Hu
3 Sasamorpha oshidensis (Makino & Uchida) Nakai オオシダザサ 
4 Sasamorpha qingyuanensis C.H.Hu
5 Sasamorpha sinica (Keng) Koidz.

日本産ササ類の分枝様式 branching styleによる分類。(参考10)


1. 内鞘的分枝様式 intravaginal branching style:主稈(母稈)の全周にわたって稈鞘が取り巻き、枝は稈鞘内にとどまる。-メダケ属、ヤダケ属、ササ属(ナンブスズ節以外)

2. 移譲的分枝様式 transfer branching style;母稈鞘が主稈から離れて枝の基部から先端まで取り巻いて稈鞘の基部は母稈を包まず、主稈の節部辺縁側では稈鞘の両端が離れ、もしくは一部が剥がれ、節部が露出する。-スズダケ属、スズザサ属、アズマザサ属の多く
 これは、単に稈を離れるだけではなく、腋芽の生長。すなわち分枝の始まりとほぼ同時に、母稈の稈鞘が枝を子孫に譲り渡して保護する活動になぞらえ、移譲的と呼ぶ。

3. 外鞘的分枝様式 extravaginal branching style:枝は母稈鞘の腋芽側を突き破って生じ、母稈鞘は主稈にとどまる。-アズマザサ属のごく一部、ならびにササ属ミヤコザサーチマキザサ複合体の多く

4. 外鞘・移譲混合型分枝様式:同一の稈に外鞘的、移譲的の2種類の分枝様式が混在する。-アズマザサ属の一部。

※用語:稈鞘が母稈を包む時、表裏にかかわらず腋芽の生ずる側を稈鞘の「腋芽側」、稈を抱き、両端の重なる反対側を「辺縁側」という。


スズタケ属の主な種と園芸品種

1 Sasamorpha borealis (Hack.) Nakai スズタケ 篶竹
  synonym Sasa borealis (Hack.) Makino et Shibata
  synonym Sasamorpha purpurascens (Hack.) Nakai

  synonym Sasamorpha borealis (Hack.) Nakai var. purpurascens (Hack.) Hiyama

  synonym Sasamorpha borealis (Hack.) Nakai var. angustior (Makino) Hiyama

  synonym Sasamorpha amabilis Nakai

  synonym Sasa borealis (Hack.) Makino et Shibata var. chiisanensis (Nakai) T.B.Lee, comb. nud.

  synonym Sasa spiculosa (F.Schmidt) Makino 
 日本(北海道、本州の太平洋岸、四国、九州)、朝鮮原産。別名はスズダケ、スジタケ、ミダケ、スドリダケ、ススニタケ、シノメダケ、ホッタケ、ミスズタケスズ、ジダケ。ブナ林の林床、林縁、日当たりのよい草地に生える。
 多年生。根茎は長く伸び、単軸型(leptomorph)。稈は淡紫褐色、直立し、長さ150~200㎝、直径5~8㎜、木質、稈の節間は円柱形、壁は薄く、上部は無毛または後屈する毛があり、節は膨れず、毛がある。側枝は豊富、稈上部から生じ、芽は1個、枝は節に1個出て2~3本に分岐し、茎と同じくらい太い。稈鞘は宿存し、長さは節間より長く、無毛(長毛がある)。葉耳はなく、肩毛もない。葉は各枝に2~3枚つく。葉鞘は表面が無毛または微軟毛があり、葉鞘の口部の毛は無い。葉舌は縁毛が無く、膜質、低い山形。葉身の基部の鞘との間に短い葉柄のような接続部がある。葉身は長円形、長さ15~21(~30)㎝×幅15~25(~50)㎜、両面とも無毛、上面には光沢があり、下面は灰白色、冬に葉縁に白い隈どりが現れ、先は尖鋭形。花序は円錐花序。円錐花序は開き、卵形、長さ8~10㎝。小穂は単生。稔性の小穂は小梗がある。小穂は5~8個の稔性の小花からなり、先で小花が減少する。小穂は線形、側部が扁平、長さ15~25㎜、熟すと別れ、各稔性の小花の下で関節離断する。小軸の節間は長さ約2㎜、護穎で不明瞭、毛がある。苞穎は宿存し、小穂より短く、稔性の護穎よりも薄い。第1苞穎は披針形、長さ4~5㎜、薄膜質、竜骨はなく、先は尖鋭形。第2苞穎は卵形、長さ6~7㎜、薄膜質、竜骨はなく、7~9脈があり、縁に縁毛があり、先は尖鋭形。稔性の護穎は卵形、長さ約8㎜、紙質、竜骨はなく、11~13脈がある、護穎の縁は縁毛があり、先は尖鋭形。内穎は護穎の長さと同長、8~10脈があり、竜骨に縁毛があり、先は切形または鈍形。頂部に不稔の小花は未発達でも。稔性の小花に似ている。鱗被は3個、卵形、長さ2~2.5㎜、脈があり、縁毛があり、先は鈍形。葯は6個、長さ約5㎜。柱頭は3個。穎果は果皮が付着性、先に付属体は無い。
1-1 Sasamorpha borealis (Hack.) Nakai var. viridescens (Nakai) Sad.Suzuki ハチジョウスズタケ 八丈篶竹

  synonym  Sasa borealis (Hack.) Makino et Shibata var. viridescens (Nakai) Yonek.

 八丈島、御蔵島に分布。別名はハチジョウスズダケ、ハチジョウスズ。Kewscienseでは基本種に含めている。

2 Sasamorpha mollis Nakai ケスズ 毛篶
  synonym Sasa kesuzu Muroi et H.Okamura [YList]
  synonym Sasamorpha sikokiana Koidz.
 日本固有種。本州(日光、三陸地方、八溝山地、天竜川流域)、四国(瀬戸内海沿岸)、伊豆大島などに分布。別名はイシヅチスズ。スズタケ(Sasamorpha borealis (Hack.) Nakai)によく似ていて、混成することもある。Kewscienceではスズタケに含めている。学名がSasamorpha mollis Nakaiとされることも多い。
 スズタケが葉裏にほとんど毛が無いのに対し、ケスズは軟毛が密生する。スズタケとケスズは混成することもあるが、毛がまばらな中間的な個体は認められず、同ーの稈で無毛の葉と有毛の葉が混在するような個体も認められないため、別種とされる。葉裏の毛は長さ(平均0.51±0.09㎜)1㎜以下。

3 Sasamorpha oshidensis (Makino & Uchida) Nakai オオシダザサ 大羊歯笹
  synonym Sasa oshidensis Makino et Uchida

  synonym Neosasamorpha oshidensis (Makino et Uchida) Tatewaki

 日本固有種。本州(太平洋側)に分布する。山地に生える。
 多年生。根茎は長く伸び、単軸型(leptomorph)。稈は直立し、長さ100~200㎝、直径4~7㎜、木質、稈の節間は円柱形、壁は薄く、上部は無毛または後屈する毛があり、節には毛がある。側枝は樹枝状。芽は1個、枝は節に1個、単生、茎と同じくらい太い。稈鞘は宿存し、無毛、葉耳はない。葉は各枝に5~9枚つく。表面に光沢のある葉鞘。葉鞘の口頭毛は繊毛虫です。葉舌は縁毛が無く、膜質。葉身の基部の鞘との間に短い葉柄のような接続部がある。葉身は長円形、長さ20~32㎝×幅40~55㎜、表面は無毛、先は尖鋭形。花序は円錐花序。円錐花序は開き、卵形、長さ約8㎝。小穂は単生。稔性の小穂は小梗がある。小穂は稔性の4~6個の小花からなり、頂部の小花は減る、小穂は披針形、側部が扁平、長さ15~20㎜、熟すと別れ、各稔性の小花の下で関節離断する。小軸は節間が長さ3~4㎜、毛がある。苞穎は宿存し、両苞穎は似ており、小穂より短く、稔性の護穎よりも薄い。第1苞穎は卵形、長さ約3mm、薄膜質、竜骨はなく、1脈があり、側脈はなく、先は尖鋭形、第2苞穎は卵形、長さ約5㎜、薄膜質、竜骨はなく、3脈があり、先は尖鋭形。稔性の護穎は卵形、長さ約8㎜、紙質、竜骨はなく、13脈があり、側脈に交差脈があり、表面は平滑、縁には繊毛があり、先は尖鋭形。内穎は護穎の長さと同長、10~12脈があり、竜骨に縁毛があり、上部の毛は長さの0.5になる。頂部の不稔の小花は未発達であるが稔性の小花に似ている。鱗被は3個、卵形、長さ約2mm、脈があり、縁毛があり、先は鋭形。葯は6個、長さ約4mm。柱頭は3個。穎果は果皮が付着性、先に付属体は無い。
3-1 Neosasamorpha oshidensis (Makino et Uchida) Tatew. subsp. glabra (Koidz.) Sad.Suzuki ケナシカシダザサ 毛無樫田笹

  synonym Sasa oshidensis Makino et Uchida subsp. glabra (Koidz.) Sad.Suzuki 

  synonym Sasa mukogunensis Koidz. [KewscienceではSasa tsuboiana Makino イブキザサの異名]

  synonym Sasa oshidensis Makino et Uchida subsp. glabra (Koidz.) Sad.Suzuki var. kobemontana (Koidz.) Sad.Suzuki

  synonym Sasa oshidensis Makino et Uchida var. shigaensis (Koidz.) Sad.Suzuki

 本州の近畿以西(日本海側では鳥取県浦富海岸が北限)、四国、九州に分布。別名はコウベコスズ、セッツコスズ 、エダウチコザサ。
 ササ属またはスズタケ属とササ属の推定雑種起源とするスズザサ属(Neosasamorpha)とする見解もある。Kewscienseでは基本種に含める。
 稈は高さ約50cm、直径約5mm、基部および上部で分枝する。稈鞘は上向きの長毛または下向きの短毛がある。葉鞘は無毛または細毛~細毛および長毛を混生がある。葉は枝先に2~3枚つき、葉身は長楕円状披針形、約・長さ19.6㎝×幅2.9cm、先は漸尖して尖鋭形、膜質、両面とも無毛、肩に放射状の毛がある。

参考

1) Flora of China
  Sasa subg. Sasamorpha (Nakai) C. H. Hu
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=317022
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Sasamorpha
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:18944-1
3) World Flora Online
 Sasa
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000034135;jsessionid=2C6DB69A299A94A324048CEEA80DEBC1
4) World Checklist of Vascular Plants
 Sasa
https://wcvp.science.kew.org/
5) 植物研究雑誌 1(2): 34–34(1916)
 牧野富太郎:竹属の一新種トクガワザサ
http://ucjeps.berkeley.edu/eflora/eflora_display.php?tid=23256
6) 林業試験場北海道支場 p1–36(1983)
 北海道ササ分布図 概説
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2039016798.pdf
7) 植物研究雑誌 第64巻 第2号 41–48 (1989)
鈴木貞雄 日本タケ科植物新知見 (6)
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_064_41_48_d.pdf
8) 森林総合研究所研究報告,Vo1.6,No.4(No.405),239-244,2007
 オクヤマザサ部分開花集団における開花稗の動態
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010752134.pdf
9) 福井県のササ属について(1)
 松井敬二 福井県のササ属について
http://www.nature.museum.city.fukui.fukui.jp/shuppan/kenpou/22/22-39-46.pdf
10) 植物研究雑誌 91(3): 141–159 (2016)
小林幹夫:日本産ササ類(ササ亜連:アルンディナリア連:タケ亜科)における稈鞘の挙動によって特徴づけられる分枝様式の分類学的意義
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_091_141_159.pdf
11) 植物研究雑誌 11巻2号,p.75-87,1935
 中井猛之進: 日本産竹類ノ新種(其四)
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_011_75_87.pdf