ソテツ 蘇鉄
Flora of Mikawa
ソテツ科 Cycadaceae ソテツ属
中国名 | 苏铁 su tie |
英 名 | sago palm , sotesu-nut , sago cycas , Japanese sago palm |
学 名 | Cycas revoluta Thunb. |
花 期 | 5~7月 |
高 さ | 3(~8) m |
生活型 | 常緑低木 |
生育場所 | 庭園、寺院 |
分 布 | 在来種 九州、沖縄、中国 |
撮 影 | 西尾市 16.8.6 |
裸子植物であり、イチョウと同じように中世代のジュラ紀の地層から多数のソテツ属の化石が発見されている。生きた化石ともいわれる。
和名は枯れかかったときに鉄釘(てつくぎ)を打ち込むと蘇るということから。
根に珊瑚状の根粒がある。幹は高さ3(~8)m、幅45(~95)㎝、基部とときに先で多くの、不規則な側枝又は珠芽をつけ、先は綿毛がある。樹皮は灰黒色、鱗片状。葉は40~100個又はそれ以上、羽状複葉、長さ0.7~1.4(~1.8)m、幅20~25(~28)㎝。葉柄は断面でほぼ四角形、長さ10~20㎝、両側面に6~18個の刺がある。葉身は長楕円状披針形~楕円状披針形、横断面で強くV形になり、反曲し、幼時、褐色の綿毛がある。小葉は60~150対つき、中軸の上に水平から45度の角度でつく。成熟すると粉白色でなく、直線形~類かま形、長さ10~20㎝、幅4~7㎜、革質、葉裏にまばらに短毛があり、基部は沿下し、縁は強く反曲し、先は尖鋭形。低出葉は三角形、長さ4~5㎝、幅1.5~2.3㎝。花粉錘は淡黄色、卵状円柱形、長さ30~60㎝、幅8~15㎝、小胞子葉は狭い楔形、長さ3.5~6㎝、幅1.7~2.5㎝、先は円状切形、先端が鋭く堅くなる。大胞子葉は黄色~淡褐色、長さ14~22㎝、密に綿毛がある。柄は長さ7~12㎝。不稔の葉身部分は卵形~狭卵形、長さ6~11㎝、幅4~7㎝、深く切れ込んだ鋸歯状、裂片は21~35個、長さ1~3㎝。胚珠は柄の両側に2~3個、淡褐色の綿毛が密集してつく。種子は2(~5)個、橙色~赤色、倒卵形~楕円形、やや扁平、長さ(3~)4~5㎝、幅2.5~3.5㎝、まばらに毛がある。木質の硬果皮(sclerotesta)は両側に溝がない。種子が熟すのは9月~10月。
1属だけの科であり、解説はソテツ科と同じ。
常緑、高木又は低木。雌雄異株。ヤシの木に似ている。幹は円柱形、ときに先で二又分枝し、まれに卵状球根形で地下にあり、落ちた葉の基部が残って覆い、樹皮がしばしば厚く、粗くなる。葉は幹の先につき、1(~3)羽状複葉、螺旋状に並ぶ。新しい葉は直立し(又はときにやや内曲し、C. multipinnataではコイル状になる)、渦巻き状の小葉がある。葉柄は刺があり(基部の小葉では少なく)、まれに欠き、基部は膨れ、有毛。小葉は多数、互生又はほぼ対生し、2又分枝する種も少しあり、中脈があり、普通、全縁。鱗片葉(cataphyll:低出葉ともいう)は目立ち、葉と互生し、有毛、先はしばしば硬直し鋭い。雄花は花粉錐(毬状花序 pollen cone)が幹の先につき、円筒形~紡錘形。小胞子葉(microsporophyll)=雄しべは多数つき、鱗片状、錐の軸に沿って螺旋状に堅く並び、多数の小胞子嚢(microsporangia)が外面に群れてつく。花粉は胚珠内で花粉管により固着する。花粉管(pollen tube)は2個の運動性の精細胞=精子又は精虫(sperm cell)を生出す。雌株につく、雌花は大胞子葉(megasporophyll)=雌しべが少数から多数つき、やや葉状、葉の赤面に互生し、疎につき、幹の先の周りに錐のような王冠状になる。各々は線形の稔性の柄と、先につく羽状中裂又はほぼ全縁の不稔の葉身部分をもつ。子房がなく、胚珠は裸出し、胚珠は柄の片側に(1)2~5個つく。種子は核果状(drupelike)、やや扁平。種皮(seed coat)は3層、色のついた肉質種皮(sarcotesta)、木質の硬果皮(sclerotesta)、膜質の外種皮内層(endotesta)からなる。子葉は2個、基部で癒合する。発芽は地下性(hypogeal)、子葉が種皮に包まれるタイプ(cryptocotylar)である。2n=22。
世界に約117種があり、インド~日本の東南アジア、オーストラリア、アフリカ東部、マダガスカルに分布する。
synonym Cycas circinalis var. vera J.Schust.
synonym Cycas squamosa Lodd. ex Dyer
synonym Cycas squarrosa Lodd. ex G.Don
synonym Cycas undulata Desf. ex Gaudich.
synonym Cycas wallichii Miq.
インド原産。 英名はcrozier cycas , false sago , fern-palm , queen sago。標高50~600mの谷の小川沿いの常緑樹林に生える。
樹高は8mまで。幹は円筒形、葉柄の木質基部が密集し、頂芽が切り取られるとしばしば分枝。樹皮は褐色、下部では平滑、上部は小さなダイヤモンド形の葉痕でモザイク状になる。葉は長さ1.5~2.5mの羽状複葉。小葉は多数(80~100対)あり、互生、線形、長さ15~30㎝×幅7~12㎜、先は鈍形または鋭形、縁は強く反り返り、中脈は両面で目立つ。葉柄は長さ40~60㎝、短い刺は離れて、葉柄に対して直角につき、またはわずかに反り返り、無毛の基部近くまで伸びる。葉の基部はさび色の綿毛がある。雄の球果は長楕円形。小胞子葉は長い尖鋭状嘴形で、花粉錐の上半分の尖端(acumen)は強く反り返り、下半分は直立する。大胞子葉は長さ15~20㎝、不稔部は長さ7.6×幅2.5㎝、菱形、長い尖鋭形の先端に向かって細くなり、強く歯状、裂片があり、柄の中央より上に2対の胚珠を持つ。種子は球形、直径3.8㎝、熟すと橙赤色になる。[e-Flora of Thailand]
2 Cycas pectinata Buch.-Ham. キカス・ペクティナタ
synonym Cycas jenkinsiana Griff.
中国(雲南省南部)、アッサム、ネパール、ブータン、ミャンマー、バングラデシュ、カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム原産。中国名は篦齿苏铁 bi chi su tie。標高1000~1800mの石灰岩山地の乾燥した開けた茂み、まばらな 季節風林の赤土に生える。中国では絶滅危惧種。雲南省南部および東南アジアの他の地域で観賞用に栽培されている。中国産の植物は、インドネシアとパプアニューギニアにのみ生息する Cycas rumphii Miquel (FRPS など) と誤認されている。
幹は円筒形で、しばしば先が2股分枝し、基部に向かって次第に太くなり、長さ16m×幅60(~90)㎝・以下、先端には綿毛がない。樹皮は灰色または白灰色、幹の基部に向かって平滑になる。葉は40~80(~100)枚つき、1回羽状複葉、長さ0.7~1.2(~1.5)m×幅20~30(~40)㎝。葉柄は扁平な円形の断面を持ち、長さ10~35㎝、中央部より上部の各側面に6~15本の刺がある。葉身は長楕円形または披針形、断面は平らまたは時折わずかに「V」字形になり、若いときは淡褐色の綿毛がある。小葉は50~100対、縦に50~60°で軸に対してつき、直立~鎌形、長さ9~20㎝×幅5~7㎜、厚い革質、中脈は上面で平ら、乾燥すると溝が入り、下面で隆起し、基部は沿下し、縁はわずかに反り返り、先は鋭形、刺がある。鱗片葉は三角形、長さ3.5~4.5㎝×幅1.5~2㎝、褐色の綿毛があり、先は柔らかい。花粉錐は紡錘形、長さ30~45㎝×幅10~15㎝。小胞子葉は楔形、長さ3.5~5㎝×幅1.2~2.5㎝、密に淡褐色の綿毛があり、先は厚くなり、上向きに反り返る先端は長さ3~4㎝。大胞子葉は30個以上、密集し、長さ13~18㎝、黄褐色で絹のような毛が密生する。柄は長さ4~7㎝。不稔の葉は三角状卵形または亜球形で、長さ7~9㎝×幅6~10㎝、縁は櫛歯状、長さ2.5~3.5 cmの裂片が29~37個あり、先端の裂片は錐形、長さ3~4.5㎝。胚珠は茎の先端部の両側に1~3個あり、無毛。種子は2~4個、オレンジ色~暗褐色になり、倒卵形の場合が多く、扁平、長さ4.5~6㎝×幅4~4.7㎝。硬果皮(sclerotesta)は平滑、肉質種皮(sarcotesta)は混合した厚い肉質の繊維質層を持つ。受粉は6~7月、種子の成熟は2~3月。
3 Cycas revoluta Thunb. ソテツ 蘇鉄
synonym Cycas aurea J.Verschaff. synonym Cycas miquelii Warb.
根に珊瑚状の根粒がある。幹は高さ3(~8)m、幅45(~95)㎝、基部とときに先で多くの、不規則な側枝又は珠芽をつけ、先は綿毛がある。樹皮は灰黒色、鱗片状。葉は40~100個又はそれ以上、羽状複葉、長さ0.7~1.4(~1.8)m、幅20~25(~28)㎝。葉柄は断面でほぼ四角形、長さ10~20㎝、両側面に6~18個の刺がある。葉身は長楕円状披針形~楕円状披針形、横断面で強くV形になり、反曲し、幼時、褐色の綿毛がある。小葉は60~150対つき、中軸の上に水平から45度の角度でつく。成熟すると粉白色でなく、直線形~類かま形、長さ10~20㎝、幅4~7㎜、革質、葉裏にまばらに短毛があり、基部は沿下し、縁は強く反曲し、先は尖鋭形。低出葉は三角形、長さ4~5㎝、幅1.5~2.3㎝。花粉錘は淡黄色、卵状円柱形、長さ30~60㎝、幅8~15㎝、小胞子葉は狭い楔形、長さ3.5~6㎝、幅1.7~2.5㎝、先は円状切形、先端が鋭く堅くなる。大胞子葉は黄色~淡褐色、長さ14~22㎝、密に綿毛がある。柄は長さ7~12㎝。不稔の葉身部分は卵形~狭卵形、長さ6~11㎝、幅4~7㎝、深く切れ込んだ鋸歯状、裂片は21~35個、長さ1~3㎝。胚珠は柄の両側に2~3個、淡褐色の綿毛が密集してつく。種子は2(~5)個、橙色~赤色、倒卵形~楕円形、やや扁平、長さ(3~)4~5㎝、幅2.5~3.5㎝、まばらに毛がある。硬果皮(sclerotesta)は両側に溝がない。種子が熟すのは9月~10月。
4 Cycas rumphii Miq. ナンヨウソテツ 南洋蘇鉄
インドネシア(ボルネオ、ジャワ島、小スンダ列島、マルク諸島,]スラウェシ)、ニューギニア、クリスマス島、西オーストラリア州原産。英名はCeylon sago , false sago , queen sago。砂浜や海岸の森林に生える。
樹高は3~7m、幹は粗く、単幹またはときに二股に分かれ、しばしば基部に芽が出る。葉は長さ1~2m、幹の上部で密に輪生し、暗緑色で光沢がある。小葉は50~60対つき、長さ20~38㎝×幅1.2~1.7㎝、葉の上部で合流し、線状鋭形、革質、両面の中肋に溝がある。葉柄は基部が非常に広く、棘がある。葉の基部は灰褐色で、綿毛がある。雄の球果は長さ約30㎝、幅約10㎝、オレンジ色で、粗い香りがある。小胞子葉は長さ約2㎝、倒楔形で、かなり長く上向きに湾曲した棘のない尖端がある。大胞子葉は長さ約23㎝、幅1.2㎝。不稔部は卵形~卵状披針形、密に絨毛があり、歯は小さい。胚珠は不稔部の下の切れ込みの中に4対ある。種子は球形、直径約5㎝、平滑、熟すとオレンジ色になる。[e-Flora of Thailand]
中国、ベトナム原産。以前は C. taiwaniana と誤認されていた。この種は広東省、広西省東部、湖南省南西部、雲南省南東部、そしておそらくベトナムに生息している。標高(300~)400~800(~1000)mの岩の多い急斜面または水はけのよい砂利の露出した場所に生える。POWOではCycas revolutaのsynonymとしている。
幹はときに分岐し、長さ5m×幅45㎝・以下、先端には密に綿毛がある。樹皮は黒色、鱗片状。葉は50枚以上つき、1回羽状複葉、長さ(1.1~)1.3~1.6(~2)m×幅20~30(~40)㎝。葉柄は長さ(10~)15~25(~30)㎝、断面はほぼ四角形、各面に7~14本の刺がある。葉身は長円形、横断面は強い「V」字形で反り返り、若いときは密に橙褐色の綿毛がある。小葉は130~200対、水平に葉軸上に55~65°の角度でつき、直立~ほぼ鎌形、成熟しても粉白色を帯びず、長さ14~20㎝×幅5~8㎜、革質、下面にまばらに毛があり、基部は沿下し、縁は平らかわずかに反り返り、先は漸尖し、刺がある。鱗片葉は三角形、長さ4~7㎝×幅1.7~2.5㎝、密に淡褐色の綿毛があり、先は刺がある。花粉錘は卵状円筒形、長さ45~55㎝、小胞子葉は狭倒三角形、長さ3.5~4.5㎝×幅1.1~1.5㎝、先は尖頭形。大胞子葉は明るい橙赤色、スペード形、長さ15~28㎝、淡褐色の綿毛があり、無毛になる。柄は長さ8~17㎝。不稔の葉身はほぼ円形または菱状円形で、長さ7~14㎝×幅6~11㎝、櫛歯があり、裂片は29~39個、長さ2~4.5㎝。胚珠は茎の両側に2~3個あり、密に淡褐色の綿毛がある。種子は2~6個、橙赤色で、狭倒卵形またはほぼ楕円形、長さ4~5㎝×幅2.5~3.3㎝、しばしば残存毛がある。硬果皮(sclerotesta)は、両側に2~3個の不規則な溝がある。受粉は4~6月。種子の成熟は9~10月。
6 Cycas taiwaniana Carruth. キカス・タイワニアナ
synonym Cycas lingshuigensis G.A.Fu
synonym Cycas shanyaensis G.A.Fu
中国(広東省、広西省、湖南省西、雲南省)原産。中国名は台湾苏铁 guang dong su tie。標高400~1100mの日当たりの良い草地またはまばらな混交林、しばしば乱れた場所に生える。中国南部で古くから栽培されているが、現在では野生では散発的にしか分布していない。
幹は円筒形、長さ3.5m×35㎝・以下。樹皮は暗褐色または灰褐色で、鱗片状。葉は60~90枚、1回羽状複葉、長さ1.5~3m×幅40~60㎝。葉柄は断面が倒卵形、長さ40~120㎝、基部の両側に 30~60本の刺があり、無毛。葉身は長楕円形、平らで、若いときは橙褐色の綿毛がある。小葉は70~150対あり、縦方向に葉軸に対して55~75°の角度でつき、しばしば鎌形、長さ18~35㎝×幅11~14㎜、革質、下面は無毛、中脈は新鮮なときのみ両面で隆起し、乾燥すると下面はわずかに隆起または平らになり、基部は沿下し、縁は平ら、先は漸尖し、刺がある。鱗片葉(cataphylls)は三角形~披針形で、約・長さ8㎝×幅2.5㎝、褐色の綿毛が密集し、先端は長く硬い。花粉錐(Pollen cones)は卵形または楕円形~円筒形、長さ30~45㎝×幅8~10㎝。小胞子葉(microsporophylls)は狭い楔形、長さ2~3㎝×幅5~8㎜、先は鈍状円形、非常に短く上向きに湾曲した微突がある。大胞子葉(megasporophylls)は30個以上あり、密集し、長さ15~22㎝、淡褐色の綿毛がある。柄は長さ8~12㎝。不稔の葉身は菱状卵形、長さ7~12㎝×幅6~7㎝、縁は無毛で櫛歯状、長さ2~3.5㎝の(11~)23~47個の裂片がある。先端の裂片は±扁平で、長さ2~3.5㎝×幅5~10㎜、縁は通常不規則な小鋸歯状、先は鋭形。胚珠は柄の先端部の両側に2~3 個あり、無毛。種子は2(~4)個、淡黄色、球形または広倒卵形、わずかに扁平、長さ2.8~3.3㎝×幅2.5~3㎝。硬果皮(sclerotesta)は細かい疣状。受粉は4~5月。種子の成熟は9~11月。
Cycas
Cycas revoluta Thunb.
Cycas
和名は枯れかかったときに鉄釘(てつくぎ)を打ち込むと蘇るということから。
根に珊瑚状の根粒がある。幹は高さ3(~8)m、幅45(~95)㎝、基部とときに先で多くの、不規則な側枝又は珠芽をつけ、先は綿毛がある。樹皮は灰黒色、鱗片状。葉は40~100個又はそれ以上、羽状複葉、長さ0.7~1.4(~1.8)m、幅20~25(~28)㎝。葉柄は断面でほぼ四角形、長さ10~20㎝、両側面に6~18個の刺がある。葉身は長楕円状披針形~楕円状披針形、横断面で強くV形になり、反曲し、幼時、褐色の綿毛がある。小葉は60~150対つき、中軸の上に水平から45度の角度でつく。成熟すると粉白色でなく、直線形~類かま形、長さ10~20㎝、幅4~7㎜、革質、葉裏にまばらに短毛があり、基部は沿下し、縁は強く反曲し、先は尖鋭形。低出葉は三角形、長さ4~5㎝、幅1.5~2.3㎝。花粉錘は淡黄色、卵状円柱形、長さ30~60㎝、幅8~15㎝、小胞子葉は狭い楔形、長さ3.5~6㎝、幅1.7~2.5㎝、先は円状切形、先端が鋭く堅くなる。大胞子葉は黄色~淡褐色、長さ14~22㎝、密に綿毛がある。柄は長さ7~12㎝。不稔の葉身部分は卵形~狭卵形、長さ6~11㎝、幅4~7㎝、深く切れ込んだ鋸歯状、裂片は21~35個、長さ1~3㎝。胚珠は柄の両側に2~3個、淡褐色の綿毛が密集してつく。種子は2(~5)個、橙色~赤色、倒卵形~楕円形、やや扁平、長さ(3~)4~5㎝、幅2.5~3.5㎝、まばらに毛がある。木質の硬果皮(sclerotesta)は両側に溝がない。種子が熟すのは9月~10月。
ソテツ属
family Cycadaceae - genus Cycas1属だけの科であり、解説はソテツ科と同じ。
常緑、高木又は低木。雌雄異株。ヤシの木に似ている。幹は円柱形、ときに先で二又分枝し、まれに卵状球根形で地下にあり、落ちた葉の基部が残って覆い、樹皮がしばしば厚く、粗くなる。葉は幹の先につき、1(~3)羽状複葉、螺旋状に並ぶ。新しい葉は直立し(又はときにやや内曲し、C. multipinnataではコイル状になる)、渦巻き状の小葉がある。葉柄は刺があり(基部の小葉では少なく)、まれに欠き、基部は膨れ、有毛。小葉は多数、互生又はほぼ対生し、2又分枝する種も少しあり、中脈があり、普通、全縁。鱗片葉(cataphyll:低出葉ともいう)は目立ち、葉と互生し、有毛、先はしばしば硬直し鋭い。雄花は花粉錐(毬状花序 pollen cone)が幹の先につき、円筒形~紡錘形。小胞子葉(microsporophyll)=雄しべは多数つき、鱗片状、錐の軸に沿って螺旋状に堅く並び、多数の小胞子嚢(microsporangia)が外面に群れてつく。花粉は胚珠内で花粉管により固着する。花粉管(pollen tube)は2個の運動性の精細胞=精子又は精虫(sperm cell)を生出す。雌株につく、雌花は大胞子葉(megasporophyll)=雌しべが少数から多数つき、やや葉状、葉の赤面に互生し、疎につき、幹の先の周りに錐のような王冠状になる。各々は線形の稔性の柄と、先につく羽状中裂又はほぼ全縁の不稔の葉身部分をもつ。子房がなく、胚珠は裸出し、胚珠は柄の片側に(1)2~5個つく。種子は核果状(drupelike)、やや扁平。種皮(seed coat)は3層、色のついた肉質種皮(sarcotesta)、木質の硬果皮(sclerotesta)、膜質の外種皮内層(endotesta)からなる。子葉は2個、基部で癒合する。発芽は地下性(hypogeal)、子葉が種皮に包まれるタイプ(cryptocotylar)である。2n=22。
世界に約117種があり、インド~日本の東南アジア、オーストラリア、アフリカ東部、マダガスカルに分布する。
ソテツ属の主な種
1 Cycas circinalis L. インドソテツ 印度蘇鉄synonym Cycas circinalis var. vera J.Schust.
synonym Cycas squamosa Lodd. ex Dyer
synonym Cycas squarrosa Lodd. ex G.Don
synonym Cycas undulata Desf. ex Gaudich.
synonym Cycas wallichii Miq.
インド原産。 英名はcrozier cycas , false sago , fern-palm , queen sago。標高50~600mの谷の小川沿いの常緑樹林に生える。
樹高は8mまで。幹は円筒形、葉柄の木質基部が密集し、頂芽が切り取られるとしばしば分枝。樹皮は褐色、下部では平滑、上部は小さなダイヤモンド形の葉痕でモザイク状になる。葉は長さ1.5~2.5mの羽状複葉。小葉は多数(80~100対)あり、互生、線形、長さ15~30㎝×幅7~12㎜、先は鈍形または鋭形、縁は強く反り返り、中脈は両面で目立つ。葉柄は長さ40~60㎝、短い刺は離れて、葉柄に対して直角につき、またはわずかに反り返り、無毛の基部近くまで伸びる。葉の基部はさび色の綿毛がある。雄の球果は長楕円形。小胞子葉は長い尖鋭状嘴形で、花粉錐の上半分の尖端(acumen)は強く反り返り、下半分は直立する。大胞子葉は長さ15~20㎝、不稔部は長さ7.6×幅2.5㎝、菱形、長い尖鋭形の先端に向かって細くなり、強く歯状、裂片があり、柄の中央より上に2対の胚珠を持つ。種子は球形、直径3.8㎝、熟すと橙赤色になる。[e-Flora of Thailand]
2 Cycas pectinata Buch.-Ham. キカス・ペクティナタ
synonym Cycas circinalis var. pectinata (Buch.-Ham.) J.Schust.
synonym Cycas dilatata Griff.synonym Cycas jenkinsiana Griff.
中国(雲南省南部)、アッサム、ネパール、ブータン、ミャンマー、バングラデシュ、カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム原産。中国名は篦齿苏铁 bi chi su tie。標高1000~1800mの石灰岩山地の乾燥した開けた茂み、まばらな 季節風林の赤土に生える。中国では絶滅危惧種。雲南省南部および東南アジアの他の地域で観賞用に栽培されている。中国産の植物は、インドネシアとパプアニューギニアにのみ生息する Cycas rumphii Miquel (FRPS など) と誤認されている。
幹は円筒形で、しばしば先が2股分枝し、基部に向かって次第に太くなり、長さ16m×幅60(~90)㎝・以下、先端には綿毛がない。樹皮は灰色または白灰色、幹の基部に向かって平滑になる。葉は40~80(~100)枚つき、1回羽状複葉、長さ0.7~1.2(~1.5)m×幅20~30(~40)㎝。葉柄は扁平な円形の断面を持ち、長さ10~35㎝、中央部より上部の各側面に6~15本の刺がある。葉身は長楕円形または披針形、断面は平らまたは時折わずかに「V」字形になり、若いときは淡褐色の綿毛がある。小葉は50~100対、縦に50~60°で軸に対してつき、直立~鎌形、長さ9~20㎝×幅5~7㎜、厚い革質、中脈は上面で平ら、乾燥すると溝が入り、下面で隆起し、基部は沿下し、縁はわずかに反り返り、先は鋭形、刺がある。鱗片葉は三角形、長さ3.5~4.5㎝×幅1.5~2㎝、褐色の綿毛があり、先は柔らかい。花粉錐は紡錘形、長さ30~45㎝×幅10~15㎝。小胞子葉は楔形、長さ3.5~5㎝×幅1.2~2.5㎝、密に淡褐色の綿毛があり、先は厚くなり、上向きに反り返る先端は長さ3~4㎝。大胞子葉は30個以上、密集し、長さ13~18㎝、黄褐色で絹のような毛が密生する。柄は長さ4~7㎝。不稔の葉は三角状卵形または亜球形で、長さ7~9㎝×幅6~10㎝、縁は櫛歯状、長さ2.5~3.5 cmの裂片が29~37個あり、先端の裂片は錐形、長さ3~4.5㎝。胚珠は茎の先端部の両側に1~3個あり、無毛。種子は2~4個、オレンジ色~暗褐色になり、倒卵形の場合が多く、扁平、長さ4.5~6㎝×幅4~4.7㎝。硬果皮(sclerotesta)は平滑、肉質種皮(sarcotesta)は混合した厚い肉質の繊維質層を持つ。受粉は6~7月、種子の成熟は2~3月。
3 Cycas revoluta Thunb. ソテツ 蘇鉄
synonym Cycas aurea J.Verschaff. synonym Cycas miquelii Warb.
synonym Cycas taitungensis C.F.Shen, K.D.Hill, C.H.Tsou & C.J.Chen タイワンソテツ
日本、中国原産。英名はsago cycas , sotesu-nut。中国名は苏铁 su tie。根に珊瑚状の根粒がある。幹は高さ3(~8)m、幅45(~95)㎝、基部とときに先で多くの、不規則な側枝又は珠芽をつけ、先は綿毛がある。樹皮は灰黒色、鱗片状。葉は40~100個又はそれ以上、羽状複葉、長さ0.7~1.4(~1.8)m、幅20~25(~28)㎝。葉柄は断面でほぼ四角形、長さ10~20㎝、両側面に6~18個の刺がある。葉身は長楕円状披針形~楕円状披針形、横断面で強くV形になり、反曲し、幼時、褐色の綿毛がある。小葉は60~150対つき、中軸の上に水平から45度の角度でつく。成熟すると粉白色でなく、直線形~類かま形、長さ10~20㎝、幅4~7㎜、革質、葉裏にまばらに短毛があり、基部は沿下し、縁は強く反曲し、先は尖鋭形。低出葉は三角形、長さ4~5㎝、幅1.5~2.3㎝。花粉錘は淡黄色、卵状円柱形、長さ30~60㎝、幅8~15㎝、小胞子葉は狭い楔形、長さ3.5~6㎝、幅1.7~2.5㎝、先は円状切形、先端が鋭く堅くなる。大胞子葉は黄色~淡褐色、長さ14~22㎝、密に綿毛がある。柄は長さ7~12㎝。不稔の葉身部分は卵形~狭卵形、長さ6~11㎝、幅4~7㎝、深く切れ込んだ鋸歯状、裂片は21~35個、長さ1~3㎝。胚珠は柄の両側に2~3個、淡褐色の綿毛が密集してつく。種子は2(~5)個、橙色~赤色、倒卵形~楕円形、やや扁平、長さ(3~)4~5㎝、幅2.5~3.5㎝、まばらに毛がある。硬果皮(sclerotesta)は両側に溝がない。種子が熟すのは9月~10月。
4 Cycas rumphii Miq. ナンヨウソテツ 南洋蘇鉄
インドネシア(ボルネオ、ジャワ島、小スンダ列島、マルク諸島,]スラウェシ)、ニューギニア、クリスマス島、西オーストラリア州原産。英名はCeylon sago , false sago , queen sago。砂浜や海岸の森林に生える。
樹高は3~7m、幹は粗く、単幹またはときに二股に分かれ、しばしば基部に芽が出る。葉は長さ1~2m、幹の上部で密に輪生し、暗緑色で光沢がある。小葉は50~60対つき、長さ20~38㎝×幅1.2~1.7㎝、葉の上部で合流し、線状鋭形、革質、両面の中肋に溝がある。葉柄は基部が非常に広く、棘がある。葉の基部は灰褐色で、綿毛がある。雄の球果は長さ約30㎝、幅約10㎝、オレンジ色で、粗い香りがある。小胞子葉は長さ約2㎝、倒楔形で、かなり長く上向きに湾曲した棘のない尖端がある。大胞子葉は長さ約23㎝、幅1.2㎝。不稔部は卵形~卵状披針形、密に絨毛があり、歯は小さい。胚珠は不稔部の下の切れ込みの中に4対ある。種子は球形、直径約5㎝、平滑、熟すとオレンジ色になる。[e-Flora of Thailand]
5 Cycas taitungensis C.F.Shen, K.D.Hill, C.H.Tsou et C.J.Chen キカス・タイトゥンゲンシス
synonym Cycas taiwaniana auct. non Carruth.中国、ベトナム原産。以前は C. taiwaniana と誤認されていた。この種は広東省、広西省東部、湖南省南西部、雲南省南東部、そしておそらくベトナムに生息している。標高(300~)400~800(~1000)mの岩の多い急斜面または水はけのよい砂利の露出した場所に生える。POWOではCycas revolutaのsynonymとしている。
幹はときに分岐し、長さ5m×幅45㎝・以下、先端には密に綿毛がある。樹皮は黒色、鱗片状。葉は50枚以上つき、1回羽状複葉、長さ(1.1~)1.3~1.6(~2)m×幅20~30(~40)㎝。葉柄は長さ(10~)15~25(~30)㎝、断面はほぼ四角形、各面に7~14本の刺がある。葉身は長円形、横断面は強い「V」字形で反り返り、若いときは密に橙褐色の綿毛がある。小葉は130~200対、水平に葉軸上に55~65°の角度でつき、直立~ほぼ鎌形、成熟しても粉白色を帯びず、長さ14~20㎝×幅5~8㎜、革質、下面にまばらに毛があり、基部は沿下し、縁は平らかわずかに反り返り、先は漸尖し、刺がある。鱗片葉は三角形、長さ4~7㎝×幅1.7~2.5㎝、密に淡褐色の綿毛があり、先は刺がある。花粉錘は卵状円筒形、長さ45~55㎝、小胞子葉は狭倒三角形、長さ3.5~4.5㎝×幅1.1~1.5㎝、先は尖頭形。大胞子葉は明るい橙赤色、スペード形、長さ15~28㎝、淡褐色の綿毛があり、無毛になる。柄は長さ8~17㎝。不稔の葉身はほぼ円形または菱状円形で、長さ7~14㎝×幅6~11㎝、櫛歯があり、裂片は29~39個、長さ2~4.5㎝。胚珠は茎の両側に2~3個あり、密に淡褐色の綿毛がある。種子は2~6個、橙赤色で、狭倒卵形またはほぼ楕円形、長さ4~5㎝×幅2.5~3.3㎝、しばしば残存毛がある。硬果皮(sclerotesta)は、両側に2~3個の不規則な溝がある。受粉は4~6月。種子の成熟は9~10月。
6 Cycas taiwaniana Carruth. キカス・タイワニアナ
synonym Cycas revoluta var. taiwaniana (Carruth.) J.Schust.
synonym Cycas hainanensis C.J.Chensynonym Cycas lingshuigensis G.A.Fu
synonym Cycas shanyaensis G.A.Fu
中国(広東省、広西省、湖南省西、雲南省)原産。中国名は台湾苏铁 guang dong su tie。標高400~1100mの日当たりの良い草地またはまばらな混交林、しばしば乱れた場所に生える。中国南部で古くから栽培されているが、現在では野生では散発的にしか分布していない。
幹は円筒形、長さ3.5m×35㎝・以下。樹皮は暗褐色または灰褐色で、鱗片状。葉は60~90枚、1回羽状複葉、長さ1.5~3m×幅40~60㎝。葉柄は断面が倒卵形、長さ40~120㎝、基部の両側に 30~60本の刺があり、無毛。葉身は長楕円形、平らで、若いときは橙褐色の綿毛がある。小葉は70~150対あり、縦方向に葉軸に対して55~75°の角度でつき、しばしば鎌形、長さ18~35㎝×幅11~14㎜、革質、下面は無毛、中脈は新鮮なときのみ両面で隆起し、乾燥すると下面はわずかに隆起または平らになり、基部は沿下し、縁は平ら、先は漸尖し、刺がある。鱗片葉(cataphylls)は三角形~披針形で、約・長さ8㎝×幅2.5㎝、褐色の綿毛が密集し、先端は長く硬い。花粉錐(Pollen cones)は卵形または楕円形~円筒形、長さ30~45㎝×幅8~10㎝。小胞子葉(microsporophylls)は狭い楔形、長さ2~3㎝×幅5~8㎜、先は鈍状円形、非常に短く上向きに湾曲した微突がある。大胞子葉(megasporophylls)は30個以上あり、密集し、長さ15~22㎝、淡褐色の綿毛がある。柄は長さ8~12㎝。不稔の葉身は菱状卵形、長さ7~12㎝×幅6~7㎝、縁は無毛で櫛歯状、長さ2~3.5㎝の(11~)23~47個の裂片がある。先端の裂片は±扁平で、長さ2~3.5㎝×幅5~10㎜、縁は通常不規則な小鋸歯状、先は鋭形。胚珠は柄の先端部の両側に2~3 個あり、無毛。種子は2(~4)個、淡黄色、球形または広倒卵形、わずかに扁平、長さ2.8~3.3㎝×幅2.5~3㎝。硬果皮(sclerotesta)は細かい疣状。受粉は4~5月。種子の成熟は9~11月。
参考
1)Flora of ChinaCycas
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=108817
2) Atlas of Living AustraliaCycas revoluta Thunb.
https://bie.ala.org.au/species/https://id.biodiversity.org.au/name/apni/122536
3)GRIN
Cycashttp://tn-grin.nat.tn/gringlobal/taxon/taxonomyspecieslist?id=3229&type=genus
4)Plants of the World Online | Kew ScienceCycas
http://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:326847-2