シラネニンジン 白根人参
Flora of Mikawa
セリ科 Apiaceae シラネニンジン属
別 名 | チシマニンジン |
中国名 | 黑水岩茴香 hei shui yan hui xiang |
学 名 | Tilingia ajanensis Regel. synonym Ligusticum ajanense (Regel) Kozo-Pol. |
花 期 | 7~8月 |
高 さ | 10~40㎝ |
生活型 | 多年草 |
生育場所 | 亜高山帯~高山帯の草地 |
分 布 | 在来種 北海道、本州(中部地方以北)、朝鮮、中国 |
撮 影 | 栂池自然園 07.7.27 |
小型の多年草、大散形花序の柄(rays)の下側と内側の散形花序の下面にパピラがある以外は無毛。根茎は短く、やや太い。茎は長さ7~20㎝、まれに35㎝までになり、葉が無くまたは葉が1~3枚つく。根生葉と下部の茎葉は葉柄があり、2~4回3出複葉、最終裂片は広卵形~狭長円形、厚い膜質または草質、通常は裂片が細かく切れ込んだ線形~狭長円形で、長さ5~20㎜、上面は光沢のある濃い緑色、無毛。上部の葉は非常に小さくなり、しばしば鞘状になる。散形花序は1~3 個、大散形花序の柄(rays)は5~10本、長さ1.5~2.5㎝。総苞片は1~2個または少数。小散形花序には花が20~30個つく。小総苞の小苞片は少数、線形、小花柄は長さ3~6㎜、小総苞とほぼ同じ長さ。花は直径2~3㎜、白色、ときに紫色を帯びる。萼歯は微細。花柱は長さ1㎜以下、柱下体(stylopodium)とほぼ同長か、わずかに長い。果実は卵形で長さ2.5~3㎜。油管(vittae)は生面(commissure)の上に4個ある。花期は7~8月。果期は9~10月。2n=22。
ミヤマウイキョウは裂片がさらに細く、幅1㎜以下の線状。
イブキゼリモドキは葉先や羽片の先が尖る。花弁の柄が明瞭で、葯が淡紫色。
シラネニンジン属
family Apiaceae - genus Tilingia無毛の多年草で、太い根茎がある。茎はやや細く、葉は少なく、しばしば花茎状である。葉は2~数回3出複葉で、裂片は線形、縁に歯があるかまたは分裂する。散形花序は単純または複合、総苞の苞片は1~数枚で、小総苞の小苞片は少数で小さく線形である。萼歯は三角形状で鋭形、小さいが明瞭。花弁は白色、先は凹形で、内曲する。花柱はやや短く、柱下体(stylopodium)は円錐形、全縁。果実は長円形または卵状長円形、側部がわずかに扁平、心皮は5角(かど)があり、横断面はほぼ円形で、細い糸状の肋があり、油管(vittae)は間隔を置いて単生し、合生面(commissure)の上に2~4個ある。種子は扁平、平らな面が接合部にある。
世界に3種あり、日本、朝鮮、中国、ロシアに分布する。
※シラネニンジン属 Tilingiaは果実の稜の張り出す程度の違いとして、マルバトウキ属 Ligusticumから区別されている。Flora of China やWorld Flora Onlineではマルバトウキ属に含めている。
シラネニンジン属の主な種と園芸品種
1 Tilingia ajanensis Regel シラネニンジン 白根人参synonym Ligusticum ajanense (Regel) Kozo-Pol. [Flora of China]マルバトウキ属
synonym Cnidium ajanense var. angustissimum Nakai ex H.Hara ヒメシラネニンジン
synonym Cnidium ajanense f. latisectum Takeda ヒロハシラネニンジンsynonym Cnidium ajanense f. pectinatum (Koidz.) Takeda ホソバシラネニンジン
北海道、本州(中部地方以北)、朝鮮、中国原産。中国名は黑水岩茴香 hei shui yan hui xiang。別名はチシマニンジン。高山の斜面に生える。小型の多年草、大散形花序の柄(rays)の下側と内側の散形花序の下面にパピラがある以外は無毛。根茎は短く、やや太い。茎は長さ7~20㎝、まれに35㎝までになり、葉が無くまたは葉が1~3枚つく。根生葉と下部の茎葉は葉柄があり、2~4回3出複葉、最終裂片は広卵形~狭長円形、厚い膜質または草質、通常は裂片が細かく切れ込んだ線形~狭長円形で、長さ5~20㎜、上面は光沢のある濃い緑色、無毛。上部の葉は非常に小さくなり、しばしば鞘状になる。散形花序は1~3 個、大散形花序の柄(rays)は5~10本、長さ1.5~2.5㎝。総苞片は1~2個または少数。小散形花序には花が20~30個つく。小総苞の小苞片は少数、線形、小花柄は長さ3~6㎜、小総苞とほぼ同じ長さ。花は直径2~3㎜、白色、ときに紫色を帯びる。萼歯は微細。花柱は長さ1㎜以下、柱下体(stylopodium)とほぼ同長か、わずかに長い。果実は卵形で長さ2.5~3㎜。油管(vittae)は生面(commissure)の上に4個ある。花期は7~8月。果期は9~10月。2n=22。
POWOでは下位分類を認めていない。
(1) Tilingia ajanensis Regel f. latisecta (Takeda) Kitag. ヒロハシラネニンジン 広葉白根人参
裂片の幅が広いもの。(2) Tilingia ajanensis Regel f. pectinata (Koidz.) Kitag. ホソバシラネニンジン 細葉白根人参
裂片の幅が細いもの。(3) Tilingia ajanensis Regel var. angustissima (Nakai ex H.Hara) Kitag. ヒメシラネニンジン 姫白根人参
北海道の日高山脈固有変種。超塩基性岩地帯に生え、小型で高さ約20㎝以下。葉の最終裂片の幅は3mm以下。2 Tilingia holopetala (Maxim.) Kitag. イブキゼリモドキ 伊吹芹擬
synonym Ligusticum holopetalum (Maxim.) M.Hiroe & Constance
日本固有種(北海道、本州中部以北)。標高500~2000mの山地帯から高山帯下部の山地の草地に生える。別名はニセイブキゼリ、コイブキゼリ。伊吹山に産することから和名をイブキゼリとしてきたが、伊吹山にあるのはセリモドキであることが判明し、和名がイブキゼリモドキと改名された。花は直径約1.5mmの小さな白色の5弁花。果実は長楕円形、油管は分果の背隆状の各溝に2~3個ずつ、合生面に4個ある。
根茎は木質で、短く分岐する。茎は長さ50~80cm、葉があり、分岐する。根生葉と下部の茎葉は長い葉柄があり、1~2回3出複葉、小葉は薄く、広卵形~広披針形、不規則な歯があり、通常、羽状に欠刻状に切れ込みまたは分裂し、長さ2~8㎝、先は尖鋭形、膜質で、顕微鏡的に隆起した縁細胞がある。上部の葉はより小さく、葉柄が無く、最終的には苞に退化する。散形花序は少数、花序柄があり、ほぼ無毛、総苞片は1または2個、線形、大散形花序の柄(rays)は8~10本、長さ3~4㎝。花序柄と大散形花序の柄には翼状の隆起があり、小花柄は長さ8~12㎜。小苞片は少数で線形、長さ4~8㎜。萼歯は明瞭。花柱は短く、柱下体(stylopodium)とほぼ同長と。果実は卵状長円形、長さ3.5~4㎜。花期は8月。果期は9~10月。
3 Tilingia tsusimensis (Y.Yabe) Kitag. シマノダケ 対馬野竹
synonym Tilingia nakaiana Kitag. コウライミツバ
日本(対馬)、朝鮮原産。中国名は对马黑水芹(duì mǎ hēi shuǐ qín)。別名はツシマノダケ。ツシマトウキ。山地の木陰、山頂部岩角地に生える。
多年草。高さ20~70cm。茎は直立し、少数分枝する。葉は3出複葉、小葉は縁が中裂し、緑色、上面に微毛があり、下面は白緑色で無毛。花序は複散形花序、花は小さく花序は目立たない。花期は8~9月。
コウライミツバはT. tsusimensisやや近縁だが、葉はより大きく、厚く、紙のようで、より白っぽく、深く切れ込むことはなく、多くの場合、脈のところで両側に低く鈍く粗い円鋸歯状の歯があり、縁は耳が2個ある。連続毛、setulose-piliolateなどは明らかに違う。
根はしばしば太く、帯褐色、枝が束生する円筒形の基部から出る。茎は単生で直立し、薄く条線があり、散形花序の下は中実または中空、密に毛があるが、上部の残りの部分は無毛で、少数の枝が離れてあり、葉は少なく、高さ60㎝以上になり、枝は直立して開出する。根生葉は2~3枚つき、非常に長い葉柄があり、下部の茎葉では葉柄が非常に長く、上部の茎葉は葉柄が次第に短くなり、上部では完全に鞘状の葉柄になる。葉柄は条線があり無毛だが、先は葉身の下に明らかに毛があり、基部は鞘に包まれ、鞘は長さ0.7~27㎝、鞘は狭く膨らまず、条線があり、緑色だが縁は透明な膜質、先は褐色で次第に細くなるか、または切状円形で長さ0.7~4㎝である。葉はすべて3出複葉(3小葉)、広心状三角形、長さ8cm×幅13.8㎝・まで。根生葉と下部の茎葉は幅広く、上部のものは小さい。小葉はすべて無柄、脈のある部分の両面が厚い紙質になり、脈には密~疎に微細剛毛があり、残りの上面は無毛、粉白緑色、むしろ不透明で、上面全体が薄く粉雪のような粉状に覆われるか、または、覆われず、全体に伏した網状脈があり、縁は狭く帯状、中央に幅0.3㎜の狭い緑色の帯があり、しばしば外側に溝があり、2列の剛毛状の縁毛があり、下面は灰白色、不透明。頂小葉は狭~広倒卵状菱形、先は鋭い尖鋭形、縁は粗い円鋸歯状の歯またはほぼ裂片があり、基部は鋭いくさび形、全縁、長さ8㎝×幅4.5㎝・まで、歯の先は尖鋭状で広い円形、急に微突形、先端に剛毛状の芒があり、暗灰色の刺は長さ0.5㎜まで。側小葉は斜めの卵形または倒卵状菱形、外側はしばしば低く、非常に短く鈍い先端をもつ裂片が1個あり、明らかに凹形で、長さ7㎝×幅4.5㎝まで、その他は頂小葉と同様である。最上部の葉は小葉がより狭くなり、全縁であることが多い。散形花序は直径3㎝までとやや小さい。大散形花序の柄は7~8本、すべて花期に密に毛があり、長さ1.1㎝まで。苞は無いかまたは1~2個、狭い錐形、ほぼ無毛だがときに鞘状になり長さ3㎜まで。小散形花序は直径7㎜、小花柄は約15本まで、不等長、花時に内側に微軟毛があり、長さ4㎜まで。小総苞の小苞片は緑色で狭い錐形、1肋があり、繊毛があり、その他は無毛、長さ5㎜まで。萼片は離生、緑色、ほぼ多肉質、狭~広三角形、鋭く尖り、脈は廃れ、長さ0.3~0.4㎜。花弁は白色、広倒卵状横長の楕円形、1脈があり、頸部は開き深く凹形で曲がり、基部は広いくさび形、長さ0.7~1.0㎜×幅0.7~1.2㎜、湾曲部分は長楕円形、先は鋭形。花糸は糸状、長さ1.5㎜以下。葯は球形、粉白色、両側が深く凹形、直径0.7㎜。柱下体(stylopodium)は平円錐形(plano-conicum)、疣がある。花柱は糸状、白色、先端は黄色の柱頭、長さ1.5㎜。子房は卵形、長いうねがあり、平滑、長さ約1㎜。熟した果実は未知[Tilingia nakaiana Kitag.]。
ミヤマウイキョウ属
family Apiaceae - genus Rupiphila1種だけの属である。
1 Rupiphila tachiroei (Franch. & Sav.) Pimenov & Lavrova ミヤマウイキョウ 深山茴香
synonym Tilingia tachiroei (Franch. et Sav.) Kitag. [Flora of Japan]
synonym Ligusticum tachiroei (Franchet & Savatier) M. Hiroe & Constance [FOC]
synonym Tilingia filisecta (Nakai et Kitag.) Nakai et Kitag.日本(北海道、本州中部地方以北、四国)、朝鮮、中国(河北省、河南省、吉林省、遼寧省、山西省) 、モンゴル原産。中国名は岩茴香 yan hui xiang。別名はイワウイキョウ、ヤマウイキョウ。標高1200~2500mの高山の小石の多い斜面、湿った川岸、岩の割れ目に生える。
高さ10~30㎝、細く、無毛。根は円筒形。 茎は単一または多数、少し分枝または非分枝。根生葉は葉柄が長さ5~7(~12)㎝。葉身は卵形、長さ5~10㎝×幅5~7㎝、3回 羽状複葉、一次の羽片は5~7対。最終裂片は線形、長さ3~15㎜×幅0.5~1㎜。茎葉は根生葉に似ており、小さい。散形花序は頂生と側生、直径2~4㎝。 苞は2~7個、披針形、縁は白色の膜状、普通、早落性。大散形花序の柄は5~10本、不等長、長さ5~15(~40)mm。小総苞片は5~8個、苞に似ていて、花柄の長さに等しい。 萼歯は目立ち、披針形、長さ約0.5㎜。花弁は白色または帯ピンク色、基部に短い爪部がある。花柱は柱下体の長さの約2倍。果実は長円形、長さ3~4㎜×幅1~2㎜、肋が目立ち、不等し。油管は各溝に1個、合生面(接合部)に2個。種子の表面はわずかに凹状になる。花期は7~8月。果期は8~9月(FOC)。
シラネニンジンに類似する。散形花序の下側と大散形花序の柄の内側にあるパピラを除き無毛。根茎は短く太い。茎は長さ10~20(~35)㎝。葉は1~4枚つく。根生葉と下部の茎葉は長さ3~10㎝、長い葉柄があり、三角状卵形、数回細かく全裂し、裂片は線状糸状、長さ5~15㎜×幅0.5~0.75㎜、先は鋭形、全縁、平滑。上部の葉は裂片が少なく、または鞘に縮小する。散形花序は1~4個。果実は卵状長円形、長さ約3㎜。花柱は細く、長さ約1.2㎜、柱下体の長さの2.5~3.5倍の長さ。萼歯は明瞭である。油管は合生面に2個ある。花期は8月。果期は9~10月(Flora of Japan)。
マルバトウキ属
family Apiaceae - genus Ligusticum基部は普通、繊維状の残骸の鞘に被われる。根生葉と下部の葉は葉柄があり、鞘がある。葉身は1~3回羽状複葉または2~4回3出羽状複葉。茎葉は徐々に上部で小さくなるか、無くなる。花序は分枝し、まれに不分枝。散形花序は複合、頂生および側生または頂生のみ。苞は少数、普通、早落性または無い。大散形花序の柄はしばしばわずかに内側に曲がり、果時に収束する。小総苞片(bracteoles)は披針形または線形、全縁または先が2~3裂または1~3回羽状分裂する。萼歯は目立ち、柱下体(stylopodium)の長さと同長~短くまたは廃れる。花弁は白色、紫色、バイオレット色、または帯淡ピンク色、先はノッチがあり、先端に内側に曲がった小裂片がある。柱下体は円錐形。花柱は花の中で広がるか直立し、開花後に 後屈する。果実は長円形または長円状卵形、背側が扁平、肋はすべての突出し、または側肋は狭い翼がある。油管(vittae)は溝に(1~)2~5個、合生面に2~10個。種子は表面が平坦、まれにわずかに凹面状。分果柄(carpophore)は基部まで2裂。
世界に約60種あり、アジア、ヨーロッパ、北アメリカに分布する。中国には40種(35種が固有種)ある。
マルバトウキ属の主な種
1 Ligusticum scoticum L. リグスティクム・スコティクム日本、朝鮮、ロシア、ヨーロッパ、北アメリカ原産。英名はScots lovage , Scottish licorice-root , Scotch wild lovage。
1-1 Ligusticum scothicum subsp. hultenii (Fernald) Calder & Roy L.Taylor マルバトウキ 丸葉当帰
synonym Angelica hultenii (Fernald) M.Hiroesynonym Haloscias hultenii (Fernald) Holub
synonym Ligusticum hultenii Fernald
日本(北海道、本州北部)、朝鮮、千島列島、サハリン、ロシア(カムチャッカ、ハバロフスク、マガダン、沿海地方)、アラスカ、アリューシャン列島、カナダ(ブリティッシュコロンビア州)原産。別名はハマトウキ。海岸に生える。 高さ30~100㎝、全体が無毛。直根は太く、ゴボウ状になる。茎は円柱形、直立し、上部でまばらに分枝して、中空。葉は葉柄が長さ3~25㎝、紫色を帯び、茎の上部の葉柄は短い。葉身は2回3出複葉、小葉は9個つき、質は厚く、卵形~円形、長さ4~9㎝×幅2~9㎝、先は鋭形~鈍形、縁に鋸歯があり、基部は広楔形、上面に光沢がある。側小葉の小葉柄はほとんどない。花序は頂生、複合散形花序、直径3~8㎝、白色の小さな花を多数密につける。大散形花序の柄は15~20本、長さ1~2㎝。総苞の苞片は数個、線形。小散形花序は小花柄が15~20本、長さ約3㎜、小総苞の小苞片は数個、線形。萼歯は5個、長さ0.5㎜。花弁は白色、5個で内曲する。雄しべは5本。花柱は2本。果実は長円形、長さ8~11㎜、褐色に熟し、光沢がある。分果は2個、5本の背隆条があり、翼状になる。油管は分果の背溝下に2~3個、合生面に6個ある。花期は7~9月。
1-2 Ligusticum scoticum subsp. scoticum
ヨーロッパ(デンマーク、イギリス、アイルランド、ロシア、ノルウェー、スウェーデン)、USA、カナダ、グリーンランド、アイスランド原産。英名はbeach lovage, Scots lovage, sea parsley, Scottish licorice-root, sea lovage。砂浜または岩場の海岸に生える。
多年草、丈夫で、茎は単純または分枝し、高さ(15)30~60㎝。葉は厚くまたは肉質で、やや光沢があり、主に2回3出複葉、小葉は9個。上部の茎葉は小さいかまたは1回3出複葉。小葉は菱形~倒卵形、長さ3~10㎝、先は鈍形または鋭形、中央より上部に鋭い鋸歯があり、ほとんど全縁で基部は楔形。散形花序は複合。大散形花序の柄は10~20本、長さ2~5㎝。小花柄は長さ5~10㎜。果実は長円形、長さ6~10㎜、幅は長さの3分の1で、肋は突出し、狭い翼がある。2n=22。花期は7~9月。[Northeastern Flora]
品種) 'Eastern Promise'
ミヤマセンキュウ属
family Apiaceae - genus Conioselinum多年草。茎は中空で、肋があり、基部には繊維質の残存鞘はない。葉は葉柄があり、基部は鞘状。葉身は2~3回羽状分全裂または2~3回3出羽状全裂。散形花序は複合で、頂生および側生、苞はないかまたは少数。小苞は多数あり、線形。萼歯は退化している。花弁は白色、卵形または倒卵形、先端は内曲する。柱下体(stylopodium)は低い円錐形~円錐形。果実は長円形~卵形、背側が扁平、無毛。背側の肋は顕著で、側側の肋は広い膜質の翼がある。油管(vittae)は各溝に1~3個あり、合生面(交連)に2~9個ある。種子は面が平らまたはわずかに凹面。心皮間柱 (carpophore)は基部まで2裂する。
世界に18種あり、北半球の温帯にに広く分布する。
ミヤマセンキュウ属の主な種
1 Conioselinum anthriscoides (H.Boissieu) Pimenov et Kljuykov コウホン 藁本
synonym Conioselinum sinomedicum Pimenov et Kljuykovsynonym Aegopodium anthriscoides (H.Boissieu) H.Boissieu
synonym Ligusticum silvaticum H.Wolffsynonym Ligusticum sinense Oliv.
中国(湖北省、四川省、陝西省、河南省、湖南省、江西省、浙江省)原産。中国名は藁本gǎo běn。標高1000~2700mの森林の下、溝の横の草地に生える。 高さ1mまで。根茎と茎の基部はわずかに膨らみ、茎は節間が短く、分岐する。根生葉は葉柄が長さ20㎝まで。葉は3出複葉または2回羽状複葉、各羽状複葉には4~6対の裂片があり、裂片は楕円形または長円形、長さ2~3㎝×幅1~2cm、縁に鋸歯がある。茎の上部の葉は1回羽状複葉。複合の散形花序は直径6~8㎝。苞は5~6(~10)個つき、線形、全縁、大散形花序の柄は15~30本、長さ3~5㎝、小苞片は5~8個、苞と同形。果実は卵状長円形、長さ2~3㎜、直径1.5~2㎜、両面がほぼ平ら、背側の隆条は隆起し、側方の隆状には狭い翼がある。油管は溝あたり1~3(~4)個、合生面(交連)には4~6個あり、胚乳の腹面は平らで真っすぐ。花期は8~9月。果期は10月。
1-1 Conioselinum anthriscoides 'Chuanxiong' トウセンキュウ 唐川芎
synonym Ligusticum sinense 'Chuanxiong'synonym Ligusticum chuanxiong S.H.Qiu, Y.Q.Zeng, K.Y.Pan, Y.C.Tang & J.M.Xu
synonym Ligusticum chuanxiong Hortorum中国原産。中国名は川芎(本草纲目)、芎(神农本草经)。栽培植物で、主に四川省(関県)で生産され、雲南省、貴州省、広西省、湖北省、江西省、浙江省、江蘇省、陝西省、甘粛省、内モンゴル自治区、河北省などの省や地域でも栽培されている。根茎は薬用として使用され、四川省では、大葉川雄としても知られる川雄も生産されている。長期にわたる栄養繁殖のため、花や果実は見られず、分類上の位置を特定するのは難しい。日本のセンキュウの基原植物とされているが、香気が日本の川芎に比べて強い。
多年草、高さ40~60cm。根茎はよく発達し、強い香りを持つ不規則な結節状の拳状の塊茎を形成する。茎は直立し、円柱形、縦の条線があり、上部に多数の枝があり、下部の茎節は膨らんで円盤状(霊芝)になる。茎の下部の葉は葉柄があり、長さ3~10cmで、基部で鞘状に広がる。葉身は楕円状三角形、長さ12~15㎝×幅10~15㎝、3~4回3出・羽状全裂し、羽片は4~5対、卵状披針形、長さ6~7㎝×幅5~6㎝、最終裂片は線状披針形~長卵形、長さ2~5㎜×幅1~2㎜、先は小突起形。茎上部の葉は徐々に単純化する。複散形花序は頂生または側生。苞片は3~6個、線形、長さ0.5~2.5㎝。大散形花序の柄は7~24本、長さは不均等、長さ2~4㎝、内側はザラつく。小苞片は4~8個、線形、長さ3~5㎜、ザラつく。萼歯は未発達である。花弁は白色、倒卵形~心形、長さ1.5~2㎜、先の尖端は内曲する。柱下体(stylopodium)は円錐形で、花柱は2本、長さ2~3㎜、下向きに反り返る。若い果実は両側が平らで、長さ2~3㎜、幅約1㎜、油管は背溝に1~5個、側溝に2~3個、合生面に6~8個がある。花期は7~8月。果期は9~10月。
2 Conioselinum chinense (L.) Britton, Sterns & Poggenb. ミヤマセンキュウ 深山川芎
synonym Conioselinum filicinum (H.Wolff) H.Harasynonym Conioselinum pacificum (S.Watson) J.M.Coult. & Rose カラフトニンジン
日本(北海道、本州の中部地方以北)、中国(安徽省、江西省)、ロシア、北アメリカ原産。中国名は山芎 shan xiong。標高約1000mの山の峡谷、川岸に生える。高さ50~100㎝。根は暗褐色、分枝する。茎は分枝する。根生葉および下部の茎葉の葉柄は長さ約5㎝、鞘は狭卵形。葉身は卵形~三角状卵形、長さ15~20㎝×幅10~15㎝、2~3回3出羽状複葉。羽片(pinnae)は小葉柄があり、小羽片(pinnules)は卵形、長さ1~5㎝×幅0.5~3㎝、最終裂片は線形、長さ3~7㎜×幅1~3㎜。散形花序は直径約5㎝。苞は1~2個、線形、長さ1~1.5㎝、縁は狭く薄膜質。大散形花序の柄(rays)は10~13本、長さ2~3㎝、ほぼ不均等、わずかにザラつく。小苞は5~8個、線形、長さ0.5~1㎝。花弁は倒卵形。柱下体(stylopodium)は低い円錐形。果実は長円形~楕円形、約・長さ5㎜×幅4㎜、背側が扁平、肋は突出し、狭い翼があり、側隆条は広い膜質の翼がある。油管は小さく、各溝に1個、合生面(交連)には4個ある。花期と果期は8~10月。n=22。
3 Conioselinum morrisonense Hayata ニイタカセンキュウ 新高川芎
台湾原産。中国名は台湾山芎 tai wan shan xiong。標高1500~3200mの山地の低木林地帯に生える。台湾では薬効があるとされている。高さ60~100㎝、頑丈。茎はほとんど分枝しない。根生葉は葉柄があり、葉柄は長さ5~10㎝、基部は鞘状。葉身は卵形~三角形、長さ12~15㎝×幅10~12㎝、2~3回羽状全裂。小羽片(pinnules)は卵形~卵状披針形、長さ1~1.5㎝×幅0.5~1㎝、深く裂ける。散形花序は幅約5cm。苞片は約5個、線形~披針形。大散形花序の柄(rays)は8~10本、ほぼ同長、軟毛がある。小苞片は約5個、糸状、長さ3~5㎜。小散形花序は幅約8㎜、花数は約15個。花弁は長円状卵形。柱下体(stylopodium)は円錐形。花柱は長く、反り返る。果実は長円形、長さ約・長さ6㎜×幅4~5㎜、背側は強く圧縮されていない、隆条はすべて突出する。油管は各溝に4または5個あり、合生面(交連)には8~9 個ある。花期と果期は8~10月。
4 Conioselinum officinale (Makino) K.Ohashi & H.Ohashi センキュウ 川芎
synonym Ligusticum officinale (Makino) Kitag.synonym Cnidium officinale Makino in Y.Iinuma, Somoku-Dzusetsu, ed. 3, 1: 345 (1907)
日本固有種。英名はCnidium Rhizome。センキュウは日本で薬用として栽培されて来たものであり、中国原産と推定されている。中国のトウセンキュウが基原植物と考えられている。トウセンキュウは香気が日本の川芎に比べて強い。多年草、高さ30~60㎝、根茎は塊状、全体に無毛、茎は直立し、円柱形でまばらに分枝する。葉は根生葉には長い葉柄があり、茎葉は互生する。葉身は淡緑色、2回羽状複葉、小葉は卵状披針形、中裂~深裂し、最終裂片は卵形~狭卵形、縁には鋸歯がある。頂生の複散形花序に白色の小さな花を多数つけるが、子房は完全に成熟する能力がなく結実しない。花期は9月。
1933年に南満の熱河地区で発見された Ligusticumjeholense (Nakai et Kitagawa) Nakai et Kitagawa (ムレイセンキュウ)は偶然にもこのセンキュウと極めて酷似しているが、花弁や総苞片の形状、小葉上面の毛の生え方等に多少の相違点が見られる。
5 Conioselinum smithii (H.Wolff) Pimenov et Kljuykov ムレイセンキュウ
synonym Conioselinum jeholense (Nakai et Kitag.) Pimenovsynonym Ligusticum jeholense (Nakai & Kitag.) Nakai & Kitag
中国(河北省、吉林省、遼寧省、山東省、山西省)、モンゴル、ロシア原産。中国名は辽藁本 liao gao ben。標高1200~2500mの森林、牧草地、川岸、湿地に生える。根と根茎は「遼高本」として使用され、伝統的な中国医学の重要な鎮痛・抗炎症薬草である。 高さ30~80㎝。根は紡錘形、根茎は短い。茎は直立し、帯紫色の条線があり、分枝する。下部の葉柄は長さ10~19㎝。葉身は広卵形、長さ10~20㎝×幅8~16㎝、3出2~3回羽状複葉、1次の羽片は4~6対。最終裂片は卵形、長さ2~3㎝×幅1~2㎝、脈に剛毛があり、縁は3~5裂する。上部の葉は小さくなる。散形花序は頂生および側生、幅3~7cm。苞は2個、線形、ザラつき、縁は狭い膜質、早落性。大散形花序の柄は8~16本、長さがほぼ等長、長さ2~3㎝。小苞は8~10個、線形、花時には小散形花序より長く、果時には小花柄とほぼ等長。萼歯は退化している。花弁は白色、長円状卵形。花柱は果実の長さの約0.5倍で、反り返る。果実は長円形、長さ3~4㎜×幅2~2.5㎜、背肋と中肋は糸状で、側肋は狭い翼がある。油管は各溝に1~2個あり、合生面(交連)に 2~4 個ある。種子は面が平ら。花期は8~9月。果期は9~10月。
6 Conioselinum tenuissimum (Nakai) Pimenov et Kljuykov ニオイウイキョウ 匂い茴香
synonym Angelica tenuissima Nakaisynonym Ligusticum tenuissimum (Nakai) Kitag.
朝鮮、中国(河北省、遼寧省)原産。细叶藁本 xi ye gao ben。標高1000~2000mの森林、岩の多い斜面に生える。中国東北部((特に遼寧省)で、伝統的な漢方薬「高本」の代用品として使用され、「漢高本」(または「火高本」または「山高本」)として知られている。
高さ60~100㎝。根は分枝し、茎は短い。茎は直立し、帯紫色、中空、分枝する。根生葉は花時に枯れ、下部の葉柄は長さ20㎝以下。葉身は3出・3~4回羽状複葉。最終裂片は線形、長さ5~30㎜×幅1~3㎜。散形花序は頂生と側生、頂生散形花序は直径3~5㎝。苞は1~2個、線形、長さ1~2㎝、縁は白色、膜質、通常は早落性。大散形花序の柄(rays)は10~18本、やや不等長、長さ2~5㎝。小苞は5~8個、披針形、長さ8~15㎜、小散形花序より短く、縁は白色で膜質。小花柄は不等長、長さ5~10㎜。萼歯は退化している。花弁は白色、倒卵形、基部は楔形。柱下体(stylopodium)は短い円錐形。花柱は後屈する。果実は長円形、長さ約4㎜×幅2~2.5㎜。背肋と中間の肋は顕著で、側肋は狭い翼がある。油管は各溝に1個、合生面に2個。種子は面が平ら。花期は8~9月。果期は9~10月。
参考
1) Flora of ChinaLigusticum
Ligusticum
Ligusticum
Tilingia
山崎敬 : 日本のセリ科植物Ⅱ
北川政夫 東亜植物断想録 (24)
北川政夫 東亜植物断想録 (24)
用植物センキュウ(川芎)の学名(セリ科)