シライトソウ 白糸草
Flora of Mikawa
シュロソウ科 Melanthiaceae シライトソウ属
学 名 | Chionographis japonica Maxim. |
花 期 | 5~6月 |
高 さ | 8~70㎝ |
生活型 | 多年草 |
生育場所 | 林内、谷沿い |
分 布 | 在来種 本州(秋田県以南)、四国、九州、朝鮮 |
撮 影 | 新城市 05.6.4 |
シライトソウはシュロソウ科シライトソウ属の多年草。以前はユリ科に属した。
多年草。根生葉は卵形~披針形~倒卵状長円形、先は鈍形又は円形、まれに尖りぎみになり、長さ1~15㎝×幅6~50mm、縁には細かい縮れがあり、草質のくすんだ緑色(光沢が無い)、主な側脈はしばしば下面に隆起する。葉柄は短または長、長さ8㎝以下。茎は高さ8~70㎝。茎葉は4~35個つき、披針形~線形、ときに穂状花序の下に密集し、長さ5~80mm。穂状花序は長さ2~22㎝、しばしば、密に多数の花をつける。花被片は6個。花の上側の花被片は4又は3個が長く、へら状線形、白色、水平に広がり、長さ5~15mm、上部で幅0.6~0.8mm。花の下側の花被片はごく短く、長さ1~2mm、しばしば欠く。雄しべ6個、長さ1~3mm、上側の長い花被片よりかなり短い。葯は2室、帯白色。花粉粒は長さ12~17µmx幅14~18µm。蒴果は長円状卵形、長さ2.5~4㎜、斜上する。種子は紡錘形、上部の翼を含めて、長さ2.5~3.5㎜。2n=24(4倍体)。花期は5~6月。
多年草、しばしば、両性花又は雄花両性花同株(andropolygamous)、 雌花両性花異株(gynodioecious)、まれに雄花両性花異株(androdioecious)、短い丈夫な根茎をもい、無毛。葉は根生し、ロゼットになり、葉柄があり、へら形~楕円形、常緑、縁は全縁又は微細な波状鋸歯がある。花茎はロゼットの中心に生じ、直立し、単純、3~30個の苞状の葉(又は細い葉)を持つ。花序は頂生の穂状花序、多数の花をつける。苞は無い。花は無柄、左右相称、小さい。花被片は離生、上側の3又は4個はへら状線形又は糸状、下側の2又は3個はかなり短く又は欠く。雄しべは6本、花被片の基部につき、やや短い。葯は底着、類心状卵形~ほぼ球形、外向き、室は合流又は分離。子房は球形、3室があり、胚珠は各室に2個。花柱は3個、柱頭は内側につく。果実は蒴果、胞間裂開?。種子は紡錘形、片側に翼がある。
世界に約5種があり、日本、朝鮮、中国に分布する。
synonym Chionographis merrilliana H.Hara
中国原産。中国名は白丝草 bai si cao。
2 Chionographis cordifolia N.Tanaka キイヒメシライトソウ 紀伊姫白糸草
日本固有種(紀伊半島の奈良県・三重県)
特徴は葉の基部が心形、花茎の苞状の鱗片葉が比較的に小さい。花被片は6個、下側の2個が常に存在し、上側の長さの1/2~2/2。葯は完全に1室。
多年草、小さく、無毛、雄花両性花同株(andromonoecious)または両性花であり、ときに雄性。根茎は斜上し、ほぼ円柱形、しばしば湾曲し、枯れた葉の痕があり、細く、長さ15㎜×直径2.5mm・以下。根は糸状、直径約0.3mm以下。葉は5~14個、ロゼットにつき、常緑、葉柄を含めて長さ5.5㎝以下。葉身は心形、卵形、または三角状卵形、基部は心形~類心形、まれに円形、先は鋭形~類鋭形、ときに鈍形、縁は著しく縮れ、長さ6~15(~18)mm×幅5~10.5mm。葉柄は細く、上面に溝があり、縁に狭い翼があり、下面に竜骨があり、長さ0.7~3.7㎝×幅0.5~0.7mm(中間部分)で、基部に向かってわずかに広がる。花のつく茎は直立し、花序軸を含めて長さ13~14㎝(果実では長さ約25㎝に伸びる)、直径0.5~0.6mm。果時の花序柄(または葉のつく花茎)は長さ約20cm×直径1.2mm・以下、少数の縦方向の角(かど)または狭い翼を持つ。花序柄につく鱗片状の茎葉は4~7個つき、狭披針形、狭楕円形、又は錐形、長さ12(~16)mm以下×幅2.5(~3.5)mm以下。花序軸は長さ6~10 mmで、少数の縦肋があり、果時には5.3cmまでに伸びる。花序は頂生の穂状花序、発達な花を含み6~10(~17)個つく。雄花又は未発達の花は普通、花序の上部及び(又は)雄花両性花同株の場合にはほとんど下部につく。花は花柄がなく、果時には短い花柄になり、苞は無く、両性又は雄性、わずかに左右相称。花被片は6個、狭いへら形、白色、上側の4花被片は長さ(2.2~)3~3.8mm、上部の最も幅広の点で幅0.2~0.4mm。 2つの下側の花被片は長さ(1.2~)1.5~3.5mm。雄しべは6本。花糸は細く、類円柱形、長さ0.3~0.8(~1.2)mm×幅0.1~0.2mm。葯は腎形、完全な単室、長さ0.2~0.3 mm×幅0.3~0.5mm。花粉は淡クリーム色。雌しべは1個。子房は楕円形、長さ0.5~0.6 mm、果時には前向きになり、卵形、長さ2.5~4.3mm、3溝がある。花柱は3個、狭長円形、曲がり、長さ0.6 mm以下、腹側に柱頭がつく。胚珠は子房の各室に2個、辺縁胎座の側面につく。わずかに未熟な種子は狭い(亜)楕円形、長さ2.3mm、褐色、上部に鋭く突き出た白色の薄膜質の種皮で覆われ、これを含めると長さ3.7mm。花期は5月下旬~7月上旬。
シライトソウもチャボシライトソウも6花被片のうち、下位の2花被片は通常退化的に存在するか、時にその一方もしくは双方が欠如しているが、キイヒメシライトソウの下位2片は常に存在するだけでなく、上位の花被片の長さの1/2~2/2。アズマシライトソウC.hisauchianaの花被片も常に6個あるが、下位の2個は上位の長さの約1/2である。キイヒメシライトソウの葯は完全に1室であり、この点はチャボシライトソウに近いが、花被片はシライトソウのように細いへら形である。葉身は小型で通常心臓形を呈する。成長した葉身が安定して心臓形ないしそれに近い形となるものは中国産種も含め他種には見られない特徴である。花茎上の小型の鱗片状葉もシライトソウやチャボシライトソウよりも相対的にやや小さい傾向がある。
3 Chionographis hisauchiana (Okuyama) N.Tanaka アズマシライトソウ
3-1 Chionographis hisauchiana (Okuyama) N.Tanaka subsp. hisauchiana アズマシライトソウ 東白糸草
synonym Chionographis japonica Maxim. var. hisauchiana Okuyama
synonym Chionographis japonica Maxim. subsp. hisauchiana (Okuyama) H.Hara
日本固有種(関東地方の埼玉県~東京都)。山地の林下に生える。
アズマシライトソウはシライトソウに似るが、上位の花被片がシライトソウより短く、下位の花被片が存在し、無くならない。花粉粒も大きい。
根生葉は卵形~長円形、長さ1~6㎝、幅6~20mm、上面は不透明な緑色、縁は縮れる。茎は高さ8~35㎝の茎。上位の花被片4個は、長さ3~5mm、先付近の広がった部分で幅0.6mm。下位の2花被片は長さ1.5~2㎜。雄しべは6本、長さ1.5~2mm。花粉粒は長さ16~22µmX幅19~26µm。2n=42(7倍体)。花期は5月。
3-2 Chionographis hisauchiana (Okuyama) N.Tanaka subsp. kurohimensis (Ajima et Satomi) N.Tanaka クロヒメシライトソウ 黒姫白糸草
synonym Chionographis japonica Maxim. var. kurohimensis Ajima et Satomi
本州の秋田県、新潟県、長野県に分布。石灰岩地のブナ等の落葉樹林下に生える。葉柄が長く、大型。
高さ15~40cm。根生葉はアズマシライトソウより大型、葉柄は葉身より長い、葉身はへら形、基部は漸尖し、くさび形。茎葉は小さく、まばらにつき、線形~披針形。雌性両全性異株で両性株と雌性株がある。花被片は6個、線形。両性花は上位4個が長く、シライトソウとほぼ同長。下位の2個はごく短く、ときに痕跡的になる。雌性花は花被片がやや短め。花期は6~7月。
3-3 Chionographis hisauchiana (Okuyama) N.Tanaka subsp. minoensis (H.Hara) N.Tanaka ミノシライトソウ 美濃白糸草
synonym Chionographis japonica Maxim. var. minoensis H.Hara
synonym Chionographis japonica Maxim. subsp. minoensis (H.Hara) H.Hara
岐阜県美濃地方に分布。
ミノシライトソウは花被片が常に6個あり、上位の花被片は長さ3~6mmとシライトソウ(7~10㎜)より短く、下位の2個は雄しべより少し長いのが特徴。 根茎は太さ38mm、ときに曲がる。葉はロゼットにつき、倒披針状長円形、長さ2~8cm×幅1~2cm、先は鋭形又は鈍形、基部は長さ5~50mmの葉柄がつき、くさび状に漸尖し、上面は非常に明るい緑色、側脈は3~5本、鋭く斜上し、上面では凹み、下面では隆起し、葉縁の下部はわずかに縮れる。茎は高さ12~30cm、角(かど)は鋭い。茎葉は4~7個、線状披針形、長さ1~3cm×幅1~3㎜。 穂状花序は長さ1.5~3cm、密花がつく。 花は白色、無柄。花被片は6個、上位の(3)4個は長く、線状へら形、長さ3~6㎜×幅0.7~0.8㎜、先は鈍形。下位の(3)2個は雄しべより長く、長さ約2㎜。 雄しべは6本、長さ1~1.5㎜。 葯は球形~嘴のある卵形、花糸は短い。雌しべは長さ1.5㎜。花柱は3本、長さ0.5~0.7㎜。花期は6月。2n=42(7倍体)。
4 Chionographis japonica Maxim. シライトソウ 白糸草
synonym Chamaelirium japonicum (Willd.) N.Tanaka
日本(本州の秋田県以南、四国、九州)、朝鮮原産。
多年草。根生葉は卵形~披針形~倒卵状長円形、先は鈍形又は円形、まれに尖りぎみになり、長さ1~15㎝×幅6~50mm、縁には細かい縮れがあり、草質のくすんだ緑色(光沢が無い)、主な側脈はしばしば下面に隆起する。葉柄は短または長、長さ8㎝以下。茎は高さ8~70㎝。茎葉は4~35個つき、披針形~線形、ときに穂状花序の下に密集し、長さ5~80mm。穂状花序は長さ2~22㎝、しばしば、密に多数の花をつける。花被片は6個。花の上側の花被片は4又は3個が長く、へら状線形、白色、水平に広がり、長さ5~15mm、上部で幅0.6~0.8mm。花の下側の花被片はごく短く、長さ1~2mm、しばしば欠く。雄しべ6個、長さ1~3mm、上側の長い花被片よりかなり短い。葯は2室、帯白色。花粉粒は長さ12~17µmx幅14~18µm。蒴果は長円状卵形、長さ2.5~4㎜、斜上する。種子は紡錘形、上部の翼を含めて、長さ2.5~3.5㎜。2n=24(4倍体)。花期は5~6月。
4-1 Chionographis japonica Maxim. subsp. yakusimensis (Masam.) N.Tanaka ヤクシマシライトソウ 屋久島白糸草
屋久島に分布する。
シライトソウに比べて全体に小型。葉は濃緑色、普通、幅が狭く(幅5~15mm)、先が尖り側脈は下面でやや不明瞭、普通、葉柄が長い。上側の長い花被片は普通、長さ7~13mm、ごく小形の個体では短く、約6mm。
4-1-1 Chionographis japonica Maxim. subsp. yakusimensis (Masam.) N.Tanaka var. yakusimensis Masam. ヤクシマシライトソウ 狭義
4-1-2 Chionographis japonica Maxim. subsp. yakusimensis (Masam.) N.Tanaka var. koreana (F.T.Wang et Tang) Okuyama サイシュウシライトソウ
4-1-3 Chionographis japonica Maxim. subsp. yakusimensis (Masam.) N.Tanaka var. koshikiensis N.Tanaka コシキシライトソウ 甑白糸草
鹿児島県の甑島の固有種。山地の林内や谷沿いに生える。
高さ15~40cm。シライトソウより小型。根生葉は長楕円形~倒披針形、縁は細かい波状鋸歯がある。茎葉は線形~披針形、無柄。花期は5~6月。
4-2 Chionographis japonica Maxim. var. kurokamiana H.Hara クロカミシライトソウ 黒髪白糸草
synonym Chionographis koidzumiana Ohwi var. kurokamiana (H.Hara) M.Maki
九州の佐賀県黒髪山固有変種。湿った岩場に生える。
シライトソウとチャボシライトソウのやや中間の形質を示すが、花被片が短いものもあり、先がやや太くなり、葯は2室が多いのが特徴。
多年草。高さ15~40㎝。葉は長楕円形~倒披針形、長さ3~14㎝、下部は次第に漸尖し、葉柄となり、縁には細かい波状の鋸歯があり、先はやや鈍形。茎葉は線形~披針形。穂状花序は長さ5~20㎝、花が多数つく。花被片は白色、6個つき、上位の4個は線形、長さ4~12mm、先がやや太く幅約0.3mmになる。下位の2個は短い。葯は2室が多く、室は合流。蒴果は長楕円形、長さ3~4㎜。花期は5~6月。
5 Chionographis koidzumiana Ohwi チャボシライトソウ 矮鶏白糸草
synonym Chionographis sparsa F.Maek.
synonym Chionographis koidzumiana Ohwi var. mikawana Ohwi et Okuyama
日本固有種(本州の愛知県・紀伊半島、四国、九州)。愛知県の絶滅危惧ⅠB類、国の絶滅危惧Ⅱ類に指定されている。山地の林内や沢沿いの岩上に生える。
多年草。普通高さ10~20㎝、まれに30㎝を超える。地下茎は短い。葉は束生し、長さ 2~8cm、葉身は卵形~狭卵形、先は鈍形、縁の下部は細かい波状鋸歯があり、基部は漸尖し、葉柄状になる。花茎は高さ12~30㎝、分枝せず、茎葉は線状披針形。頂生の穂状花序にややまばらに花をつける。花被片は下位の2個が退化し、上位の4個のみ、白色~淡緑色、糸状、長さ 9~15mm、先は幅広にならない。蒴果で長楕円形、長さ3~4mm。花期は5月。2n=24。
5-1 Chionographis koidzumiana Ohwi var. leiophylla N.Tanaka コシキチャボシライトソウ
6 Chionographis shiwandashanensis Y.Feng Huang & R.H.Jiang
中国の広西チワン族自治区原産。2011年に記載された。 C. koidzumiana Ohwi や C. chinensis Krauseに似ているが、長円状楕円形~長円状の苞状の葉と6個の糸状の通常葉をもつ。
Chionographis
Chionographis
紀伊半島産シライトソウ属(シュロソウ科)の1新種 キイヒメシライトソウ
原寛:ミノシライトソウ
黒津幸子・原 寛: 日本植物の細胞分類学的予察(1)
原 寛: シライトソウ属の再検討
クロカミシライトソウ(新変種)
多年草。根生葉は卵形~披針形~倒卵状長円形、先は鈍形又は円形、まれに尖りぎみになり、長さ1~15㎝×幅6~50mm、縁には細かい縮れがあり、草質のくすんだ緑色(光沢が無い)、主な側脈はしばしば下面に隆起する。葉柄は短または長、長さ8㎝以下。茎は高さ8~70㎝。茎葉は4~35個つき、披針形~線形、ときに穂状花序の下に密集し、長さ5~80mm。穂状花序は長さ2~22㎝、しばしば、密に多数の花をつける。花被片は6個。花の上側の花被片は4又は3個が長く、へら状線形、白色、水平に広がり、長さ5~15mm、上部で幅0.6~0.8mm。花の下側の花被片はごく短く、長さ1~2mm、しばしば欠く。雄しべ6個、長さ1~3mm、上側の長い花被片よりかなり短い。葯は2室、帯白色。花粉粒は長さ12~17µmx幅14~18µm。蒴果は長円状卵形、長さ2.5~4㎜、斜上する。種子は紡錘形、上部の翼を含めて、長さ2.5~3.5㎜。2n=24(4倍体)。花期は5~6月。
シライトソウ属
family Melanthiaceae - genus Chionographis多年草、しばしば、両性花又は雄花両性花同株(andropolygamous)、 雌花両性花異株(gynodioecious)、まれに雄花両性花異株(androdioecious)、短い丈夫な根茎をもい、無毛。葉は根生し、ロゼットになり、葉柄があり、へら形~楕円形、常緑、縁は全縁又は微細な波状鋸歯がある。花茎はロゼットの中心に生じ、直立し、単純、3~30個の苞状の葉(又は細い葉)を持つ。花序は頂生の穂状花序、多数の花をつける。苞は無い。花は無柄、左右相称、小さい。花被片は離生、上側の3又は4個はへら状線形又は糸状、下側の2又は3個はかなり短く又は欠く。雄しべは6本、花被片の基部につき、やや短い。葯は底着、類心状卵形~ほぼ球形、外向き、室は合流又は分離。子房は球形、3室があり、胚珠は各室に2個。花柱は3個、柱頭は内側につく。果実は蒴果、胞間裂開?。種子は紡錘形、片側に翼がある。
世界に約5種があり、日本、朝鮮、中国に分布する。
シライトソウ属の主な種と園芸品種
1 Chionographis chinensis K.Krause チュウゴクシライトソウ 中国白糸草synonym Chionographis merrilliana H.Hara
中国原産。中国名は白丝草 bai si cao。
2 Chionographis cordifolia N.Tanaka キイヒメシライトソウ 紀伊姫白糸草
日本固有種(紀伊半島の奈良県・三重県)
特徴は葉の基部が心形、花茎の苞状の鱗片葉が比較的に小さい。花被片は6個、下側の2個が常に存在し、上側の長さの1/2~2/2。葯は完全に1室。
多年草、小さく、無毛、雄花両性花同株(andromonoecious)または両性花であり、ときに雄性。根茎は斜上し、ほぼ円柱形、しばしば湾曲し、枯れた葉の痕があり、細く、長さ15㎜×直径2.5mm・以下。根は糸状、直径約0.3mm以下。葉は5~14個、ロゼットにつき、常緑、葉柄を含めて長さ5.5㎝以下。葉身は心形、卵形、または三角状卵形、基部は心形~類心形、まれに円形、先は鋭形~類鋭形、ときに鈍形、縁は著しく縮れ、長さ6~15(~18)mm×幅5~10.5mm。葉柄は細く、上面に溝があり、縁に狭い翼があり、下面に竜骨があり、長さ0.7~3.7㎝×幅0.5~0.7mm(中間部分)で、基部に向かってわずかに広がる。花のつく茎は直立し、花序軸を含めて長さ13~14㎝(果実では長さ約25㎝に伸びる)、直径0.5~0.6mm。果時の花序柄(または葉のつく花茎)は長さ約20cm×直径1.2mm・以下、少数の縦方向の角(かど)または狭い翼を持つ。花序柄につく鱗片状の茎葉は4~7個つき、狭披針形、狭楕円形、又は錐形、長さ12(~16)mm以下×幅2.5(~3.5)mm以下。花序軸は長さ6~10 mmで、少数の縦肋があり、果時には5.3cmまでに伸びる。花序は頂生の穂状花序、発達な花を含み6~10(~17)個つく。雄花又は未発達の花は普通、花序の上部及び(又は)雄花両性花同株の場合にはほとんど下部につく。花は花柄がなく、果時には短い花柄になり、苞は無く、両性又は雄性、わずかに左右相称。花被片は6個、狭いへら形、白色、上側の4花被片は長さ(2.2~)3~3.8mm、上部の最も幅広の点で幅0.2~0.4mm。 2つの下側の花被片は長さ(1.2~)1.5~3.5mm。雄しべは6本。花糸は細く、類円柱形、長さ0.3~0.8(~1.2)mm×幅0.1~0.2mm。葯は腎形、完全な単室、長さ0.2~0.3 mm×幅0.3~0.5mm。花粉は淡クリーム色。雌しべは1個。子房は楕円形、長さ0.5~0.6 mm、果時には前向きになり、卵形、長さ2.5~4.3mm、3溝がある。花柱は3個、狭長円形、曲がり、長さ0.6 mm以下、腹側に柱頭がつく。胚珠は子房の各室に2個、辺縁胎座の側面につく。わずかに未熟な種子は狭い(亜)楕円形、長さ2.3mm、褐色、上部に鋭く突き出た白色の薄膜質の種皮で覆われ、これを含めると長さ3.7mm。花期は5月下旬~7月上旬。
シライトソウもチャボシライトソウも6花被片のうち、下位の2花被片は通常退化的に存在するか、時にその一方もしくは双方が欠如しているが、キイヒメシライトソウの下位2片は常に存在するだけでなく、上位の花被片の長さの1/2~2/2。アズマシライトソウC.hisauchianaの花被片も常に6個あるが、下位の2個は上位の長さの約1/2である。キイヒメシライトソウの葯は完全に1室であり、この点はチャボシライトソウに近いが、花被片はシライトソウのように細いへら形である。葉身は小型で通常心臓形を呈する。成長した葉身が安定して心臓形ないしそれに近い形となるものは中国産種も含め他種には見られない特徴である。花茎上の小型の鱗片状葉もシライトソウやチャボシライトソウよりも相対的にやや小さい傾向がある。
3 Chionographis hisauchiana (Okuyama) N.Tanaka アズマシライトソウ
3-1 Chionographis hisauchiana (Okuyama) N.Tanaka subsp. hisauchiana アズマシライトソウ 東白糸草
synonym Chionographis japonica Maxim. var. hisauchiana Okuyama
synonym Chionographis japonica Maxim. subsp. hisauchiana (Okuyama) H.Hara
日本固有種(関東地方の埼玉県~東京都)。山地の林下に生える。
アズマシライトソウはシライトソウに似るが、上位の花被片がシライトソウより短く、下位の花被片が存在し、無くならない。花粉粒も大きい。
根生葉は卵形~長円形、長さ1~6㎝、幅6~20mm、上面は不透明な緑色、縁は縮れる。茎は高さ8~35㎝の茎。上位の花被片4個は、長さ3~5mm、先付近の広がった部分で幅0.6mm。下位の2花被片は長さ1.5~2㎜。雄しべは6本、長さ1.5~2mm。花粉粒は長さ16~22µmX幅19~26µm。2n=42(7倍体)。花期は5月。
3-2 Chionographis hisauchiana (Okuyama) N.Tanaka subsp. kurohimensis (Ajima et Satomi) N.Tanaka クロヒメシライトソウ 黒姫白糸草
synonym Chionographis japonica Maxim. var. kurohimensis Ajima et Satomi
本州の秋田県、新潟県、長野県に分布。石灰岩地のブナ等の落葉樹林下に生える。葉柄が長く、大型。
高さ15~40cm。根生葉はアズマシライトソウより大型、葉柄は葉身より長い、葉身はへら形、基部は漸尖し、くさび形。茎葉は小さく、まばらにつき、線形~披針形。雌性両全性異株で両性株と雌性株がある。花被片は6個、線形。両性花は上位4個が長く、シライトソウとほぼ同長。下位の2個はごく短く、ときに痕跡的になる。雌性花は花被片がやや短め。花期は6~7月。
3-3 Chionographis hisauchiana (Okuyama) N.Tanaka subsp. minoensis (H.Hara) N.Tanaka ミノシライトソウ 美濃白糸草
synonym Chionographis japonica Maxim. var. minoensis H.Hara
synonym Chionographis japonica Maxim. subsp. minoensis (H.Hara) H.Hara
岐阜県美濃地方に分布。
ミノシライトソウは花被片が常に6個あり、上位の花被片は長さ3~6mmとシライトソウ(7~10㎜)より短く、下位の2個は雄しべより少し長いのが特徴。 根茎は太さ38mm、ときに曲がる。葉はロゼットにつき、倒披針状長円形、長さ2~8cm×幅1~2cm、先は鋭形又は鈍形、基部は長さ5~50mmの葉柄がつき、くさび状に漸尖し、上面は非常に明るい緑色、側脈は3~5本、鋭く斜上し、上面では凹み、下面では隆起し、葉縁の下部はわずかに縮れる。茎は高さ12~30cm、角(かど)は鋭い。茎葉は4~7個、線状披針形、長さ1~3cm×幅1~3㎜。 穂状花序は長さ1.5~3cm、密花がつく。 花は白色、無柄。花被片は6個、上位の(3)4個は長く、線状へら形、長さ3~6㎜×幅0.7~0.8㎜、先は鈍形。下位の(3)2個は雄しべより長く、長さ約2㎜。 雄しべは6本、長さ1~1.5㎜。 葯は球形~嘴のある卵形、花糸は短い。雌しべは長さ1.5㎜。花柱は3本、長さ0.5~0.7㎜。花期は6月。2n=42(7倍体)。
4 Chionographis japonica Maxim. シライトソウ 白糸草
synonym Chamaelirium japonicum (Willd.) N.Tanaka
日本(本州の秋田県以南、四国、九州)、朝鮮原産。
多年草。根生葉は卵形~披針形~倒卵状長円形、先は鈍形又は円形、まれに尖りぎみになり、長さ1~15㎝×幅6~50mm、縁には細かい縮れがあり、草質のくすんだ緑色(光沢が無い)、主な側脈はしばしば下面に隆起する。葉柄は短または長、長さ8㎝以下。茎は高さ8~70㎝。茎葉は4~35個つき、披針形~線形、ときに穂状花序の下に密集し、長さ5~80mm。穂状花序は長さ2~22㎝、しばしば、密に多数の花をつける。花被片は6個。花の上側の花被片は4又は3個が長く、へら状線形、白色、水平に広がり、長さ5~15mm、上部で幅0.6~0.8mm。花の下側の花被片はごく短く、長さ1~2mm、しばしば欠く。雄しべ6個、長さ1~3mm、上側の長い花被片よりかなり短い。葯は2室、帯白色。花粉粒は長さ12~17µmx幅14~18µm。蒴果は長円状卵形、長さ2.5~4㎜、斜上する。種子は紡錘形、上部の翼を含めて、長さ2.5~3.5㎜。2n=24(4倍体)。花期は5~6月。
4-1 Chionographis japonica Maxim. subsp. yakusimensis (Masam.) N.Tanaka ヤクシマシライトソウ 屋久島白糸草
屋久島に分布する。
シライトソウに比べて全体に小型。葉は濃緑色、普通、幅が狭く(幅5~15mm)、先が尖り側脈は下面でやや不明瞭、普通、葉柄が長い。上側の長い花被片は普通、長さ7~13mm、ごく小形の個体では短く、約6mm。
4-1-1 Chionographis japonica Maxim. subsp. yakusimensis (Masam.) N.Tanaka var. yakusimensis Masam. ヤクシマシライトソウ 狭義
4-1-2 Chionographis japonica Maxim. subsp. yakusimensis (Masam.) N.Tanaka var. koreana (F.T.Wang et Tang) Okuyama サイシュウシライトソウ
4-1-3 Chionographis japonica Maxim. subsp. yakusimensis (Masam.) N.Tanaka var. koshikiensis N.Tanaka コシキシライトソウ 甑白糸草
鹿児島県の甑島の固有種。山地の林内や谷沿いに生える。
高さ15~40cm。シライトソウより小型。根生葉は長楕円形~倒披針形、縁は細かい波状鋸歯がある。茎葉は線形~披針形、無柄。花期は5~6月。
4-2 Chionographis japonica Maxim. var. kurokamiana H.Hara クロカミシライトソウ 黒髪白糸草
synonym Chionographis koidzumiana Ohwi var. kurokamiana (H.Hara) M.Maki
九州の佐賀県黒髪山固有変種。湿った岩場に生える。
シライトソウとチャボシライトソウのやや中間の形質を示すが、花被片が短いものもあり、先がやや太くなり、葯は2室が多いのが特徴。
多年草。高さ15~40㎝。葉は長楕円形~倒披針形、長さ3~14㎝、下部は次第に漸尖し、葉柄となり、縁には細かい波状の鋸歯があり、先はやや鈍形。茎葉は線形~披針形。穂状花序は長さ5~20㎝、花が多数つく。花被片は白色、6個つき、上位の4個は線形、長さ4~12mm、先がやや太く幅約0.3mmになる。下位の2個は短い。葯は2室が多く、室は合流。蒴果は長楕円形、長さ3~4㎜。花期は5~6月。
5 Chionographis koidzumiana Ohwi チャボシライトソウ 矮鶏白糸草
synonym Chionographis sparsa F.Maek.
synonym Chionographis koidzumiana Ohwi var. mikawana Ohwi et Okuyama
日本固有種(本州の愛知県・紀伊半島、四国、九州)。愛知県の絶滅危惧ⅠB類、国の絶滅危惧Ⅱ類に指定されている。山地の林内や沢沿いの岩上に生える。
多年草。普通高さ10~20㎝、まれに30㎝を超える。地下茎は短い。葉は束生し、長さ 2~8cm、葉身は卵形~狭卵形、先は鈍形、縁の下部は細かい波状鋸歯があり、基部は漸尖し、葉柄状になる。花茎は高さ12~30㎝、分枝せず、茎葉は線状披針形。頂生の穂状花序にややまばらに花をつける。花被片は下位の2個が退化し、上位の4個のみ、白色~淡緑色、糸状、長さ 9~15mm、先は幅広にならない。蒴果で長楕円形、長さ3~4mm。花期は5月。2n=24。
5-1 Chionographis koidzumiana Ohwi var. leiophylla N.Tanaka コシキチャボシライトソウ
6 Chionographis shiwandashanensis Y.Feng Huang & R.H.Jiang
中国の広西チワン族自治区原産。2011年に記載された。 C. koidzumiana Ohwi や C. chinensis Krauseに似ているが、長円状楕円形~長円状の苞状の葉と6個の糸状の通常葉をもつ。
参考
1) Flora of ChinaChionographis
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=106712
2) Plants of the World OnlineChionographis
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:331166-2
3) 植物研究雑誌 88巻 1号 p30-35 2013紀伊半島産シライトソウ属(シュロソウ科)の1新種 キイヒメシライトソウ
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201302282004503023
4) 植物研究雑誌 36(8): 270–271(1961)原寛:ミノシライトソウ
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_036_270_271.pdf
5) 植物研究雑誌 35(2): 43–46(1960)黒津幸子・原 寛: 日本植物の細胞分類学的予察(1)
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_035_43_46.pdf
6) 植物研究雑誌 43(9): 257–267(1968)原 寛: シライトソウ属の再検討
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_043_257_267.pdf
7) 植物研究雑誌 46(9): 282–282(1971)クロカミシライトソウ(新変種)
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_046_282_282.pdf