サンショウソウ 山椒草
Flora of Mikawa
イラクサ科 Urticaceae サンショウソウ属
中国名 | 小赤车 xiao chi che |
学 名 | Pellionia minima Makino |
花 期 | 4~7月 |
高 さ | 10~30㎝ |
生活型 | 多年草 |
生育場所 | 山地の沢沿、陰湿地 |
分 布 | 在来種 本州(関東地方以西)、四国、九州、沖縄、中国( 安徽省、浙江省、江西省、湖北省) |
撮 影 | 鳳来町 阿寺の七滝 03.7.26 幸田町(雌花) 12.6.27 |
多年草。高さ10~30㎝。茎は緑褐色で、細かい毛が生える。葉は互生し、葉はゆがんだ倒卵形、長さ1~3㎝。葉縁に鈍い鋸歯があり、先はとがらない。雌雄異株。花は散形花序につき、雄花序には長柄があり、雌花序は短柄。雄花は直径約3㎜、紫褐色の花被片が4又は5個、雄しべも4又は5個、2個の葯室の先がくっつき、白色の花弁のように見えて目立つ。雌花序は黄緑色、幅3~5㎜の球形。雌花は長さ約2㎜(角状突起を含め)、花被片は5個、2個の角状突起が痩果より長く(最も長いもの2~11㎜)毛のように見え、3個の角状突起は短い。果実は長さ約1㎜、表面に突起があり、種子は1個入る。種子は長さ約0.8㎜。2n=26,
39, 52, 65。花期は4~7月。
アラゲサンショウソウ Pellionia brevifolia は九州(鹿児島県、宮崎県)に分布し、葉に斑があり、茎に粗毛が密生する。2n=39。中国にも分布し、中国名は短叶赤车(duan ye chi che) 、Flora of China では茎に粗毛のあるものと短毛のものを区別せず、Pellionia minima を同義語とし、サンショウソウと区別していない。USDA(ARS)も同じ見解である。
2014年の富山県中央植物園研究所報告ではサンショウソウはオオサンショウソウと区別できず、アラゲサンショウソウではなく、オオサンショウソウの異名とするのが適切とされた。
多年草又は亜低木。刺毛は無い。葉は見た目は互生、2列生、葉の小さなnanophyllsl(225 ㎜2以下の葉)が有又は無、普通葉に対生する。托葉は2個、葉身は3脈があり、ときに、1本の主な側脈が基部の上につき、又は羽状脈があり、基部は非対称、縁は全縁又は鋸歯縁、鐘乳体(cystoliths)がほとんどあり、線形又は紡錘形。花序は腋生、単性花の集散花序(雌雄同株又は雌雄異株)。雄花序は普通、花序柄がある。雌花序は花序柄があるか又は無柄、苞があり、まれに、円盤状の花托と総苞をもつ。雄花は花被片が4~5個、楕円形、長さの1/2が合着し、わずかに敷石状、、先は普通、角状突起がある(corniculate)。雄しべは花被片に対生して花被片と同数。花糸は蕾中では内曲する。未熟の雌しべは小さい。雌花は花被片が4~5個、子房の長さより明瞭に長いか又は同長、普通、不等長、先には普通、角状突起がある。仮雄しべは花被片に対生し、花被片と同数、鱗片状。子房は真っすぐ、楕円形。花柱は無い。柱頭はほうき状。胚珠は直生。痩果は卵形又は楕円形、わずかに扁平、普通、いぼ状(tuberculate)。x=12 , 13。日本産はx=13
世界に約60種があり、熱帯、亜熱帯のアジアに分布する。日本には5(6)種がある。
【類似属のウワバミソウ属 Elatostemaとの比較】
雌花の花被片は普通4~5個、子房よりかなり短いか又は強く退化し先に角状突起がない。痩果には6~10うねがある。雄花序は普通、花托をもち、まれに集散花序。雌花序は円盤状の花托をもち、縁に小苞がある。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Elatostema
雌花の花被片は4~5個、子房より長く、普通、先の下に角状突起(corniculate)がある。痩果にはいぼがある(tuberculate )か又は条線があり、まれに平滑、けっしてうねは無い。雌花序は集散花序、まれに円盤状花托と総苞をもつ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Pellionia
日本(九州の鹿児島県、宮崎県)、中国原産。中国名は短叶赤车 duan ye chi che
Flora of ChinaはPellionia minima を同義語とし、サンショウソウと区別していない。USDA(ARS)も同じ見解である。日本産サンショウソウ属5分類群の形態比較によりアラゲサンショウソウはサンショウソウと明確に区別できると2014年に報告されている(参考5)。ただし、サンショウソウはオオサンショウソウと区別できない。
多年草、常緑。茎は基部近くで分枝し、匍匐し、密に長さ約1㎜の粗い開出毛がある。葉は互生し、斜めの楕円形、又は斜めの倒卵形、長さ1~3.5㎝×幅0.5~2㎝、基部は斜め、円形~心形、先は楔形で先端は鈍形、縁は鋸歯縁、歯は4~7対、浅く、歯先は鋭形~鈍形、上面には側脈の間に大きな白斑をもつ。花序は腋生の団散花序(glomerule)、幅8~15㎜。花序柄は長さ3~5㎝、花序は二又分枝する。苞は披針形、長さ約1㎜。雄花は花被片が5個、長円形、長さ約2㎜、外側の先の近くに長さ約0.3㎜の三角形の付属体(角状突起)をもち、まばらに、長さ約0.3㎜の短い剛毛がある。雌花は長さ約2㎜、花被片は5個、まばらに短い剛毛(約長さ0.1㎜)があり、外側の先近くに角状突起をもつ。全ての角状突起は痩果より長い。痩果は細い楕円形~卵形、表面に小さないぼ状の突起が密にある。 2n=39.(参考5)
【Flora of China の解説】
多年草、雌雄同株(又は雌雄異株)。茎は平伏し、分枝し、軟毛又は剛毛がある。葉は互生する。托葉は錐形、長さ1~2㎜×幅0.1~0.2㎜。葉柄は長さ0.5~2㎜。葉身は草質、葉に白斑があり、斜めの楕円形又は倒卵形、長さ0.5~3.2㎝×幅0.4~2㎝、主な側脈は非対称、1本は基部から、他は基部の上から生じ、外の半分は広く耳状になり、縁は波状の円鋸歯又は円鋸歯、先は円形又は鈍形。鐘乳体(cystoliths)は不明瞭。nanophyllsは無い。雄花序は直径0.8~1.5㎝。花序柄は長さ1~4㎝。雄花は花被片が5個、楕円形。雄しべは5本。未熟な雌しべは不明瞭。雌花序は直径2.5~4㎜。花序柄は長さ3(~10)㎜以下。雌花は花被片が5個。痩果は楕円形又は狭卵形、いぼ状。花期は5~10月。2n=39(3x)。
【アラゲサンショウソウとサンショウソウの判別】
アラケサンショウソウは葉の表面に白斑が入り、サンショウソウは白斑が無く、アラケサンショウソウの若い茎の頂部の毛は長さが不同で縮れた長毛(約1㎜)があり、サンショウソウは無毛と短毛(約0.5㎜以下)があり、毛の長さが明らかに異なる。また、雄花序の柄はサンショウソウより長い、サンショウソウの雄花の花被片の背部突起は針状で長さ1-2㎜、雌花序の花被片の背面突起は2本が痩果より長く、無毛の痩果表面のイボ状突起は円錐状で元が尖り、疎らに散在していることに対し、アラゲサンショウソウの雄花花被片の背部突起は三角状に隆起し、長さ0.3㎜程度、全ての雌花序花被片背面突起は痩果より長く、剛毛が散生し、痩果表面のイボ状突起は密集し、乳頭状である特徴によりサンショウソウとアラゲサンショウソウは質的に容易に識別できる(参考5)。
2 Pellionia japonica Hatus. キミズモドキ
日本(本種、九州、四国、沖縄)、台湾、中国、ベトナム原差。
多年草、常緑。茎は基部近くで分枝し、這い、疎~密に微細な毛をもつか又は無毛。葉は互生し、斜めの卵形~広倒卵形~斜めの狭卵形、楕円形~長円形、披針形~狭卵形~斜めの倒披針形、長さ1~10㎝×幅1~3㎝、基部は斜め、円形~心形、縁は波状鋸歯縁、歯は4~7対、浅く、歯先は鋭形~鈍形、葉先は楔形、先端は鈍形~鋭形~尖鋭形~長い尖鋭形。雌雄同株.
花序は腋生の集散花序。雄の団散花序(glomemle)は幅8~15㎜。花序柄は長さ1~2㎝。苞は披針形、長さ約1㎜。雄花は花被片が5個、長円形、長さ約2㎜、無毛、外側の先近くに針状の(acerose)長さ1~2㎜の付属体をもつ。雌花(carpellate flower)は長さ約2㎜、花被片は5個、無毛、各先付近に角状突起(hom-like appendage)をもち、2個の角状突起は痩果より長く(最も長いもの2~8㎜)、3個の角状突起は痩果より短い。痩果は細く、楕円形~卵形、微細突起がある、長さ1~2㎜、表面はまばらに三角状の突起がある。2n = 52.(参考5)
※過去にはナガバサンショウソウの異名(北村、村田1961)、台湾産のケイタオミズPellionia keitaonensls Yamam.の異名(初島1959, 1967)とされたりした。花被片が無毛であり、痩果の表面の突起が異なり、ナガバサンショウソウと区別できる(参考5)。
Elatostema japonicum Wedd. ヒメウワバミソウがGBIF(Catalogue of Life)ではsynonymとされているが、 ウワバミソウ属は雌花の花被に角状突起が無い。
3 Pellionia radicans (Siebold et Zucc.) Wedd. オオサンショウソウ 大山椒草
synonym Elatostema radicans (Siebold & Zucc.) Wedd. [Kewscience]
日本(本州、四国九州)、朝鮮、中国、台湾、ベトナム原産。中国名は赤车 chi che
多年草、普通、雌雄異株。茎は斜上又は這い回り、普通、分枝し、無毛又は微軟毛がある、葉は互生。托葉は錐形、長さ1~4㎜×幅0.1~0.2㎜。葉柄は長さ1~4㎜。葉身は草質、斜めの菱状卵形、又は披針形、長さ(1.2~)2.4~5(~9)㎝×幅(0.8~)1~2.5(~4.5)㎝、主な側脈は非対称、1本は基部にあり、他は基部の上から生じ、幅の広い外側の半分が耳状になり、縁は歯状、先は尖鋭形。鐘乳体(cystoliths)は不明瞭又は明瞭。 nanophyllは無い。雄花序は直径1~1.5㎝。花序柄は長さ0.5~3.5(~7)㎝。雄花は花被片が5個、楕円形。雄しべは5本、未発達の雌しべは円錐形。雌花序は直径3~5㎜。花序柄は長さ0.3~3(~25) ㎜。雌花は長さ約2㎜(角状突起を含め)、花被片が5個、2個の角状突起は長く(最も長いもの2~11㎜)、他は短い。痩果はほぼ楕円形、いぼ状(tuberculate)。花期は5~1月。2n=39 , 52 , 65。
3-1 Pellionia radicans (Siebold et Zucc.) Wedd. var. radicans オオサンショウソウ
synonym Pellionia keitaoensis Yamam.
synonym Pellionia japonica Hatus.
synonym Pellionia heteroloba auct. non Wedd.
synonym Pellionia arisanensis Hayata
【オオサンショウウオの類似種】
(1) Pellionia arisanensis Hayata アリサンサンショウソウ
synonym Pellionia radicans (Sieb. & Zucc.) Wedd.
台湾に分布。葉が細い個体
(2) Pellionia keitaoensis Yamamoto ケイタオミズ
日本(沖縄県西表島)、台湾に分布する。
アリサンサンショウソウと葉や葉先の形態が違い、株が大型。
(3) Pellionia minima Makino サンショウソウ
サンショウソウとオオサンショウゾウは若い茎の先の毛、雄花、雌花、瘻果の測定値と形態に違いは認められず、また葉の形態では両種間に中間型が存在し、サンショウソウ、キミズモドキとオオサンショウソウを明白に識別することはできない。(参考5)
4 Pellionia minima Makino サンショウソウ 山椒草
synonym Pellionia radicans (Siebold et Zucc.) Wedd. var. minima (Makino) Hatus [YList].
synonym Pellionia minima Makino
synonym Pellionia brevifolia auct. non Benth.
synonym Pellionia brevifolia Benth. [THe Plant List]※
日本(本州の関東地方以西、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国原産。中国名は小赤车 xiao chi che
多年草。高さ10~30㎝。茎は緑褐色で、細かい毛が生える。葉は互生し、葉はゆがんだ倒卵形、長さ1~3㎝。葉縁に鈍い鋸歯があり、先はとがらない。雌雄異株。花は散形花序につき、雄花序には長柄があり、雌花序は短柄。雄花は直径約3㎜、紫褐色の花被片が4又は5個、雄しべも4又は5個、2個の葯室の先がくっつき、白色の花弁のように見えて目立つ。雌花序は黄緑色、幅3~5㎜の球形。雌花は長さ約2㎜(角状突起を含め)、花被片は5個、2個の角状突起が痩果より長く(最も長いもの2~11㎜)毛のように見え、3個の角状突起は短い。果実は長さ約1㎜、表面に突起があり、種子は1個入る。種子は長さ約0.8㎜。2n=26, 39, 52, 65。花期は4~7月。
※THe Plant ListではサンショウソウをアラゲサンショウソウPellionia brevifoliaに含めている。YListではサンショウソウをオオサンショウソウの変種としている。Kewscienceでは Pellionia minima を認めている。
5 Pellionia repens (Lour.) Merr. ハナビソウ
synonym Pellionia daveauana N.E.Br.
中国、台湾、ブータン、カンボジア、インド、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナム原産。中国名は吐烟花 tu yan hua 。英名はtrailing watermelon begonia
6 Pellionia scabra Benth. キミズ
synonym Pellionia pellucida (Raf.) Merr .[Kewscience]
日本(関東以西、四国、九州、沖縄)、中国、台湾、ベトナム原産。中国名は蔓赤车 wan chi che 。
亜低木、基部が木質化し、普通、雌雄異株。茎は斜上又は直立し、普通、分枝し、剛毛がある。葉は互生する。托葉は錐形、長さ1.5~3㎜×幅0.1~0.2㎜。葉柄は長さ0.5~2㎜。葉身は草質、斜めの菱状倒披針形又は長円形、長さ3.2~8.5(~10)㎝×幅(0.7~)1.3~3.2(~4)㎝、主な側脈は非対称~ほとんど無い、外側の半分の幅が広く、基部は楔形、円形、又は耳形、縁は小歯状、先は尖鋭形又は尾状。 鐘乳体(cystoliths)は不明瞭又は明瞭、密にあり、nanophyllslは無い。雄花序は直径0.8~1.5㎝。花序柄は長さ0.5~3.5㎝。雄花は花被片が5個、楕円形。雄しべ5本、未発達の雌しべは錐形。雌花序は直径2~8(~14)㎜、花序柄は長さ1~4㎜。雌花は花被片が4~5個、三倍体は花被片の背面に剛毛(seta) がある。痩果はほぼ楕円形、いぼ状(tuberculate)、三倍体は小型の痩果が多数できる。花期は3~7月。二倍体(2n = 26)、三倍体(2n = 39)、四倍体(2n = 52)、五倍体(2n = 65) 。
ナントウキミズPellionia scabra Benth. var. pedunculata Yamamはキミズの三倍体である。
7 Pellionia yosiei (H.Hara) H.Hara ナガバサンショウソウ 長葉山椒草
synonym Pellionia keitaoensis Yamam. f. yosiei (H.Hara) Hatus.
日本(九州の宮崎県、長崎県、対馬)。湿った林床に生える。
多年草、常緑。茎は基部近くで分枝し、匍匐し、先は弱く斜上し、無毛[微細な突起状]。葉は互生し、斜めの狭長円形~長円形、又は斜めの狭卵形、長さ5~10㎝×幅1~3㎝、基部は斜め、円形~心形、先は楔形で先端は尖鋭形~長い腺鋭形、縁は波状鋸歯縁で歯は4~7対、浅く、歯先は上向きに反り返り、鋭形~鈍形、上面は濃緑色、光沢があり、中央に白色の斑紋をもち、下面は薄緑色。雌雄同株[雌雄異株が普通とされている]。花序は腋生の集散花序。雄性の団散花序(glomemle)は幅8~15㎜。花序柄は長さ3~5㎝[10㎝]。苞は披針形、長さ約0.5㎜。雄花は花被片が5個、長円形、長さ約2㎜、外側の先近くにかすかに付属体をもち、まばらに剛毛があり、微毛がある。雌花序は幅(5~)15㎜、花序柄は長さ5~6㎜。雌花は長さ約1.5㎜(角状突起を含み)。花被片は5個、まばらに剛毛があり、微毛があり、外側の先近くに角状の突起をもち、3個の角状突起は痩果より長く(最も長いもの約15㎜)、2個は痩果より短い。痩果は細い楕円形~卵形、微細突起があり(muricate)、長さ1~2㎜、表面は密に小さないぼ状突起(verrucose)がある。2n=39(参考5 雌雄同株)
Pellionia
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=124292
2) Plants of the World Online | Kew Science
Pellionia
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:331835-2
3)植物研究雑誌 J. Jpn. Bot.Vol.78 (5): 262-268 (2003
兼本正,鳴橋直弘 .日本産サンショウソウ属の染色体数
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_078_262_268.pdf
4)植物研究雑誌 88(2): 81-93(2013)
兼本正:キミズ(イラクサ科)の三倍体と四倍体における形態比較
5)富山県中央植物園研究所報告 Bull. Bot. Gard.Toyama 19 : 1-43 (2014)
日本イラクサ科サンショウソウ属5分類群の形態比較
https://www.bgtym.org/assets/file/research/research19_2005.pdf
6)Yahara1984Elatostema.pdf
Pellionia and Elatostema in Thailand
http://seibutsu.biology.kyushu-u.ac.jp/~ecology/yahara/publication/Yahara1984Elatostema.pdf
アラゲサンショウソウ Pellionia brevifolia は九州(鹿児島県、宮崎県)に分布し、葉に斑があり、茎に粗毛が密生する。2n=39。中国にも分布し、中国名は短叶赤车(duan ye chi che) 、Flora of China では茎に粗毛のあるものと短毛のものを区別せず、Pellionia minima を同義語とし、サンショウソウと区別していない。USDA(ARS)も同じ見解である。
2014年の富山県中央植物園研究所報告ではサンショウソウはオオサンショウソウと区別できず、アラゲサンショウソウではなく、オオサンショウソウの異名とするのが適切とされた。
サンショウソウ属
family Urticaceae - genus Pellionia多年草又は亜低木。刺毛は無い。葉は見た目は互生、2列生、葉の小さなnanophyllsl(225 ㎜2以下の葉)が有又は無、普通葉に対生する。托葉は2個、葉身は3脈があり、ときに、1本の主な側脈が基部の上につき、又は羽状脈があり、基部は非対称、縁は全縁又は鋸歯縁、鐘乳体(cystoliths)がほとんどあり、線形又は紡錘形。花序は腋生、単性花の集散花序(雌雄同株又は雌雄異株)。雄花序は普通、花序柄がある。雌花序は花序柄があるか又は無柄、苞があり、まれに、円盤状の花托と総苞をもつ。雄花は花被片が4~5個、楕円形、長さの1/2が合着し、わずかに敷石状、、先は普通、角状突起がある(corniculate)。雄しべは花被片に対生して花被片と同数。花糸は蕾中では内曲する。未熟の雌しべは小さい。雌花は花被片が4~5個、子房の長さより明瞭に長いか又は同長、普通、不等長、先には普通、角状突起がある。仮雄しべは花被片に対生し、花被片と同数、鱗片状。子房は真っすぐ、楕円形。花柱は無い。柱頭はほうき状。胚珠は直生。痩果は卵形又は楕円形、わずかに扁平、普通、いぼ状(tuberculate)。x=12 , 13。日本産はx=13
世界に約60種があり、熱帯、亜熱帯のアジアに分布する。日本には5(6)種がある。
【類似属のウワバミソウ属 Elatostemaとの比較】
雌花の花被片は普通4~5個、子房よりかなり短いか又は強く退化し先に角状突起がない。痩果には6~10うねがある。雄花序は普通、花托をもち、まれに集散花序。雌花序は円盤状の花托をもち、縁に小苞がある。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Elatostema
雌花の花被片は4~5個、子房より長く、普通、先の下に角状突起(corniculate)がある。痩果にはいぼがある(tuberculate )か又は条線があり、まれに平滑、けっしてうねは無い。雌花序は集散花序、まれに円盤状花托と総苞をもつ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Pellionia
サンショウソウ属の主な種
1 Pellionia brevifolia Benth. アラゲサンショウソウ 荒毛山椒草日本(九州の鹿児島県、宮崎県)、中国原産。中国名は短叶赤车 duan ye chi che
Flora of ChinaはPellionia minima を同義語とし、サンショウソウと区別していない。USDA(ARS)も同じ見解である。日本産サンショウソウ属5分類群の形態比較によりアラゲサンショウソウはサンショウソウと明確に区別できると2014年に報告されている(参考5)。ただし、サンショウソウはオオサンショウソウと区別できない。
多年草、常緑。茎は基部近くで分枝し、匍匐し、密に長さ約1㎜の粗い開出毛がある。葉は互生し、斜めの楕円形、又は斜めの倒卵形、長さ1~3.5㎝×幅0.5~2㎝、基部は斜め、円形~心形、先は楔形で先端は鈍形、縁は鋸歯縁、歯は4~7対、浅く、歯先は鋭形~鈍形、上面には側脈の間に大きな白斑をもつ。花序は腋生の団散花序(glomerule)、幅8~15㎜。花序柄は長さ3~5㎝、花序は二又分枝する。苞は披針形、長さ約1㎜。雄花は花被片が5個、長円形、長さ約2㎜、外側の先の近くに長さ約0.3㎜の三角形の付属体(角状突起)をもち、まばらに、長さ約0.3㎜の短い剛毛がある。雌花は長さ約2㎜、花被片は5個、まばらに短い剛毛(約長さ0.1㎜)があり、外側の先近くに角状突起をもつ。全ての角状突起は痩果より長い。痩果は細い楕円形~卵形、表面に小さないぼ状の突起が密にある。 2n=39.(参考5)
【Flora of China の解説】
多年草、雌雄同株(又は雌雄異株)。茎は平伏し、分枝し、軟毛又は剛毛がある。葉は互生する。托葉は錐形、長さ1~2㎜×幅0.1~0.2㎜。葉柄は長さ0.5~2㎜。葉身は草質、葉に白斑があり、斜めの楕円形又は倒卵形、長さ0.5~3.2㎝×幅0.4~2㎝、主な側脈は非対称、1本は基部から、他は基部の上から生じ、外の半分は広く耳状になり、縁は波状の円鋸歯又は円鋸歯、先は円形又は鈍形。鐘乳体(cystoliths)は不明瞭。nanophyllsは無い。雄花序は直径0.8~1.5㎝。花序柄は長さ1~4㎝。雄花は花被片が5個、楕円形。雄しべは5本。未熟な雌しべは不明瞭。雌花序は直径2.5~4㎜。花序柄は長さ3(~10)㎜以下。雌花は花被片が5個。痩果は楕円形又は狭卵形、いぼ状。花期は5~10月。2n=39(3x)。
【アラゲサンショウソウとサンショウソウの判別】
アラケサンショウソウは葉の表面に白斑が入り、サンショウソウは白斑が無く、アラケサンショウソウの若い茎の頂部の毛は長さが不同で縮れた長毛(約1㎜)があり、サンショウソウは無毛と短毛(約0.5㎜以下)があり、毛の長さが明らかに異なる。また、雄花序の柄はサンショウソウより長い、サンショウソウの雄花の花被片の背部突起は針状で長さ1-2㎜、雌花序の花被片の背面突起は2本が痩果より長く、無毛の痩果表面のイボ状突起は円錐状で元が尖り、疎らに散在していることに対し、アラゲサンショウソウの雄花花被片の背部突起は三角状に隆起し、長さ0.3㎜程度、全ての雌花序花被片背面突起は痩果より長く、剛毛が散生し、痩果表面のイボ状突起は密集し、乳頭状である特徴によりサンショウソウとアラゲサンショウソウは質的に容易に識別できる(参考5)。
2 Pellionia japonica Hatus. キミズモドキ
日本(本種、九州、四国、沖縄)、台湾、中国、ベトナム原差。
多年草、常緑。茎は基部近くで分枝し、這い、疎~密に微細な毛をもつか又は無毛。葉は互生し、斜めの卵形~広倒卵形~斜めの狭卵形、楕円形~長円形、披針形~狭卵形~斜めの倒披針形、長さ1~10㎝×幅1~3㎝、基部は斜め、円形~心形、縁は波状鋸歯縁、歯は4~7対、浅く、歯先は鋭形~鈍形、葉先は楔形、先端は鈍形~鋭形~尖鋭形~長い尖鋭形。雌雄同株.
花序は腋生の集散花序。雄の団散花序(glomemle)は幅8~15㎜。花序柄は長さ1~2㎝。苞は披針形、長さ約1㎜。雄花は花被片が5個、長円形、長さ約2㎜、無毛、外側の先近くに針状の(acerose)長さ1~2㎜の付属体をもつ。雌花(carpellate flower)は長さ約2㎜、花被片は5個、無毛、各先付近に角状突起(hom-like appendage)をもち、2個の角状突起は痩果より長く(最も長いもの2~8㎜)、3個の角状突起は痩果より短い。痩果は細く、楕円形~卵形、微細突起がある、長さ1~2㎜、表面はまばらに三角状の突起がある。2n = 52.(参考5)
※過去にはナガバサンショウソウの異名(北村、村田1961)、台湾産のケイタオミズPellionia keitaonensls Yamam.の異名(初島1959, 1967)とされたりした。花被片が無毛であり、痩果の表面の突起が異なり、ナガバサンショウソウと区別できる(参考5)。
Elatostema japonicum Wedd. ヒメウワバミソウがGBIF(Catalogue of Life)ではsynonymとされているが、 ウワバミソウ属は雌花の花被に角状突起が無い。
3 Pellionia radicans (Siebold et Zucc.) Wedd. オオサンショウソウ 大山椒草
synonym Elatostema radicans (Siebold & Zucc.) Wedd. [Kewscience]
日本(本州、四国九州)、朝鮮、中国、台湾、ベトナム原産。中国名は赤车 chi che
多年草、普通、雌雄異株。茎は斜上又は這い回り、普通、分枝し、無毛又は微軟毛がある、葉は互生。托葉は錐形、長さ1~4㎜×幅0.1~0.2㎜。葉柄は長さ1~4㎜。葉身は草質、斜めの菱状卵形、又は披針形、長さ(1.2~)2.4~5(~9)㎝×幅(0.8~)1~2.5(~4.5)㎝、主な側脈は非対称、1本は基部にあり、他は基部の上から生じ、幅の広い外側の半分が耳状になり、縁は歯状、先は尖鋭形。鐘乳体(cystoliths)は不明瞭又は明瞭。 nanophyllは無い。雄花序は直径1~1.5㎝。花序柄は長さ0.5~3.5(~7)㎝。雄花は花被片が5個、楕円形。雄しべは5本、未発達の雌しべは円錐形。雌花序は直径3~5㎜。花序柄は長さ0.3~3(~25) ㎜。雌花は長さ約2㎜(角状突起を含め)、花被片が5個、2個の角状突起は長く(最も長いもの2~11㎜)、他は短い。痩果はほぼ楕円形、いぼ状(tuberculate)。花期は5~1月。2n=39 , 52 , 65。
3-1 Pellionia radicans (Siebold et Zucc.) Wedd. var. radicans オオサンショウソウ
synonym Pellionia keitaoensis Yamam.
synonym Pellionia japonica Hatus.
synonym Pellionia heteroloba auct. non Wedd.
synonym Pellionia arisanensis Hayata
【オオサンショウウオの類似種】
(1) Pellionia arisanensis Hayata アリサンサンショウソウ
synonym Pellionia radicans (Sieb. & Zucc.) Wedd.
台湾に分布。葉が細い個体
(2) Pellionia keitaoensis Yamamoto ケイタオミズ
日本(沖縄県西表島)、台湾に分布する。
アリサンサンショウソウと葉や葉先の形態が違い、株が大型。
(3) Pellionia minima Makino サンショウソウ
サンショウソウとオオサンショウゾウは若い茎の先の毛、雄花、雌花、瘻果の測定値と形態に違いは認められず、また葉の形態では両種間に中間型が存在し、サンショウソウ、キミズモドキとオオサンショウソウを明白に識別することはできない。(参考5)
4 Pellionia minima Makino サンショウソウ 山椒草
synonym Pellionia radicans (Siebold et Zucc.) Wedd. var. minima (Makino) Hatus [YList].
synonym Pellionia minima Makino
synonym Pellionia brevifolia auct. non Benth.
synonym Pellionia brevifolia Benth. [THe Plant List]※
日本(本州の関東地方以西、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国原産。中国名は小赤车 xiao chi che
多年草。高さ10~30㎝。茎は緑褐色で、細かい毛が生える。葉は互生し、葉はゆがんだ倒卵形、長さ1~3㎝。葉縁に鈍い鋸歯があり、先はとがらない。雌雄異株。花は散形花序につき、雄花序には長柄があり、雌花序は短柄。雄花は直径約3㎜、紫褐色の花被片が4又は5個、雄しべも4又は5個、2個の葯室の先がくっつき、白色の花弁のように見えて目立つ。雌花序は黄緑色、幅3~5㎜の球形。雌花は長さ約2㎜(角状突起を含め)、花被片は5個、2個の角状突起が痩果より長く(最も長いもの2~11㎜)毛のように見え、3個の角状突起は短い。果実は長さ約1㎜、表面に突起があり、種子は1個入る。種子は長さ約0.8㎜。2n=26, 39, 52, 65。花期は4~7月。
※THe Plant ListではサンショウソウをアラゲサンショウソウPellionia brevifoliaに含めている。YListではサンショウソウをオオサンショウソウの変種としている。Kewscienceでは Pellionia minima を認めている。
5 Pellionia repens (Lour.) Merr. ハナビソウ
synonym Pellionia daveauana N.E.Br.
中国、台湾、ブータン、カンボジア、インド、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナム原産。中国名は吐烟花 tu yan hua 。英名はtrailing watermelon begonia
6 Pellionia scabra Benth. キミズ
synonym Pellionia pellucida (Raf.) Merr .[Kewscience]
日本(関東以西、四国、九州、沖縄)、中国、台湾、ベトナム原産。中国名は蔓赤车 wan chi che 。
亜低木、基部が木質化し、普通、雌雄異株。茎は斜上又は直立し、普通、分枝し、剛毛がある。葉は互生する。托葉は錐形、長さ1.5~3㎜×幅0.1~0.2㎜。葉柄は長さ0.5~2㎜。葉身は草質、斜めの菱状倒披針形又は長円形、長さ3.2~8.5(~10)㎝×幅(0.7~)1.3~3.2(~4)㎝、主な側脈は非対称~ほとんど無い、外側の半分の幅が広く、基部は楔形、円形、又は耳形、縁は小歯状、先は尖鋭形又は尾状。 鐘乳体(cystoliths)は不明瞭又は明瞭、密にあり、nanophyllslは無い。雄花序は直径0.8~1.5㎝。花序柄は長さ0.5~3.5㎝。雄花は花被片が5個、楕円形。雄しべ5本、未発達の雌しべは錐形。雌花序は直径2~8(~14)㎜、花序柄は長さ1~4㎜。雌花は花被片が4~5個、三倍体は花被片の背面に剛毛(seta) がある。痩果はほぼ楕円形、いぼ状(tuberculate)、三倍体は小型の痩果が多数できる。花期は3~7月。二倍体(2n = 26)、三倍体(2n = 39)、四倍体(2n = 52)、五倍体(2n = 65) 。
ナントウキミズPellionia scabra Benth. var. pedunculata Yamamはキミズの三倍体である。
7 Pellionia yosiei (H.Hara) H.Hara ナガバサンショウソウ 長葉山椒草
synonym Pellionia keitaoensis Yamam. f. yosiei (H.Hara) Hatus.
日本(九州の宮崎県、長崎県、対馬)。湿った林床に生える。
多年草、常緑。茎は基部近くで分枝し、匍匐し、先は弱く斜上し、無毛[微細な突起状]。葉は互生し、斜めの狭長円形~長円形、又は斜めの狭卵形、長さ5~10㎝×幅1~3㎝、基部は斜め、円形~心形、先は楔形で先端は尖鋭形~長い腺鋭形、縁は波状鋸歯縁で歯は4~7対、浅く、歯先は上向きに反り返り、鋭形~鈍形、上面は濃緑色、光沢があり、中央に白色の斑紋をもち、下面は薄緑色。雌雄同株[雌雄異株が普通とされている]。花序は腋生の集散花序。雄性の団散花序(glomemle)は幅8~15㎜。花序柄は長さ3~5㎝[10㎝]。苞は披針形、長さ約0.5㎜。雄花は花被片が5個、長円形、長さ約2㎜、外側の先近くにかすかに付属体をもち、まばらに剛毛があり、微毛がある。雌花序は幅(5~)15㎜、花序柄は長さ5~6㎜。雌花は長さ約1.5㎜(角状突起を含み)。花被片は5個、まばらに剛毛があり、微毛があり、外側の先近くに角状の突起をもち、3個の角状突起は痩果より長く(最も長いもの約15㎜)、2個は痩果より短い。痩果は細い楕円形~卵形、微細突起があり(muricate)、長さ1~2㎜、表面は密に小さないぼ状突起(verrucose)がある。2n=39(参考5 雌雄同株)
参考
1) Flora of ChinaPellionia
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=124292
2) Plants of the World Online | Kew Science
Pellionia
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:331835-2
3)植物研究雑誌 J. Jpn. Bot.Vol.78 (5): 262-268 (2003
兼本正,鳴橋直弘 .日本産サンショウソウ属の染色体数
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_078_262_268.pdf
4)植物研究雑誌 88(2): 81-93(2013)
兼本正:キミズ(イラクサ科)の三倍体と四倍体における形態比較
5)富山県中央植物園研究所報告 Bull. Bot. Gard.Toyama 19 : 1-43 (2014)
日本イラクサ科サンショウソウ属5分類群の形態比較
https://www.bgtym.org/assets/file/research/research19_2005.pdf
6)Yahara1984Elatostema.pdf
Pellionia and Elatostema in Thailand
http://seibutsu.biology.kyushu-u.ac.jp/~ecology/yahara/publication/Yahara1984Elatostema.pdf