フィロテカ・ミオポロイデスはミカン科フィロテカ属の園芸栽培種。フィロテカ属はオーストラリア固有属であり、日本でも3種ほどが栽培されている。名札なしで販売されていたものであるが、花序や葉からフィロテカ・ディフォルミスと思われる。
　低木(まれに小高木)、高さ約2.5(～4.5)m以下。小枝は無毛、多数の油腺をもち、暗色の托葉状の異常な突起(excrescences)はない。葉は長円形～広楕円形、長さ(13～)20～120(～155)mm×幅4～35mm(まれに、倒卵形、長さ8～15mm×幅3～6mm)、先は鋭形～円形、短い微突形、革質、しばしば、上面が暗色で、下面が淡色多少、平ら又はやや折りたたまれ、多数の小さな油腺点がある。花序は腋生、花が3～8個、通常の花序柄の上に花柄がつく。花は5数性。咢片は広デルタ形、長さ約1mm。花弁は楕円形、長さ約8mm、白色、無毛(しばしば内にパピラがある)、果時に宿存しない。葯は白色の付属体(apiculum)の下に2個の目立つ腺をもつ。子房はピラミッド形、無毛。心皮はその長さのほとんどで分離。袋果は目立つ長さ約3mmの嘴があり、長さ約7mm。種子は扁平な楕円形、長さ4～4.5mm。花期は主に冬～春。

フィロテカ属

　 family　Rutaceae － genus Philotheca

　低木、亜低木、又は小高木、無毛又は小さな単純毛の密毛がある。小枝は目立つ～弱く腺がある。葉は互生、無柄又は短柄があり、単葉。花序は集散花序、腋生又は頂生、花が1～8個(～多数)。花は5数性又はまれに4数性(P. virgata)。咢片は分離、無毛又は有毛。花弁は覆瓦状、まれに敷石状、分離(Victoria州では)、有毛又は無毛、果時に脱落性又は宿存性。雄しべは花弁の数の2倍つき、花糸は上部で分離(まれに、基部近くで融着)、直立又はピラミッド形に配置し、子房の上に内曲し、普通、毛があり、花時に先が反曲する。葯は普通、目立つ無毛の付属体(apiculum)をもち、先に腺は無又は有。花盤は明瞭、狭い。子房は無毛又は有毛。心皮は5個(まれに4個)、基部で短く統合するが、他は分離(P. trachyphyllaは周辺の膜peripheral membraneにより先近くまで統合する)。果実は5個以下の袋果、ほとんど先に嘴がある。種子は弾力性のある内果皮をもち、爆発的に放出される。
　世界に約53種があり、全てオーストラリア固有種。英名はwaxflower。

フィロテカ属の主な種と園芸品種

1 Philotheca buxifolia (Sm.) Paul G.Wilson　フィロテカ・ブクシフォリア
　　synonym　Eriostemon buxifolius Sm.
　オーストラリア(ニューサウスウェールズ州)原産。英名はbox-leaf waxflower。別名はエリオステモン・ブクシフォリア。
　小低木、高さ30㎝以下。茎は円柱形、細かい剛毛がある。葉は±円形～広楕円形～倒卵形、長さ6～18mm×幅3～12mm、ほとんど無毛、先は円形～微突形、上面はほぼ平ら～凹面、平滑。下面は竜骨があり、腺がある。葉柄は無い。花は腋生、単生、葉を超さない。花序柄は長さ0～2mm、花柄は長さ2～4mm、基部に4個の小さな小苞がある。花弁は広楕円形、長さ8～15mm、白色(蕾は外側がピンク色)、無毛、厚くなった竜骨の上に腺がまばらにある。小乾果(cocci)は直立又はわずかに散開し、長さ約7mm、嘴は長さ約3mm。花期は冬～春。
品種)　'Cascade of Stars'

2 Philotheca difformis (A.Cunn. ex Endl.) Paul G.Wilson　フィロテカ・ディフォルミス
　　synonym　Eriostemon rhombeus Lindl.
　　synonym　Eriostemon rhomboideus Paul G.Wilson
　オーストラリア(ニューサウスウェールズ州、クイーンズランド州)原産。英名はsmall-leaf wax-flower
　低木、高さ 0.5～2m。茎はまばらに腺のいぼがあり、全体に±細かい毛がある。葉は様々で、±卵形～菱形で約・長さ4mm×幅2mm、あるいは、ほぼ円柱形で約・長さ8mm×幅1mm、縁には1～2個の腺のいぼが両側にあり、先は円形で微細な黒色の腺点があり肉質、無毛。葉柄は短い。托葉は小さく、黒色。花は花序柄がなく、束生。花柄は長さ2～3mm。花弁は長円状楕円形、長さ4～5mm、白色、まばらに綿毛があり、中肋が目立つ。小乾果は直立、長円形、長さ約5mm、先は切径、いぼがあり、短い嘴がある。花期は散発的に通年。
3 Philotheca myoporoides (DC.) Bayly　フィロテカ・ミオポロイデス
　オーストラリア(クイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州)原産。英名はlong-leaf waxflower
　低木(まれに小高木)、高さ約2.5(～4.5)m以下。小枝は無毛、多数の油腺をもち、暗色の托葉状の異常な突起(excrescences)はない。葉は長円形～広楕円形、長さ(13～)20～120(～155)mm×幅4～35mm(まれに、倒卵形、長さ8～15mm×幅3～6mm)、先は鋭形～円形、短い微突形、革質、しばしば、上面が暗色で、下面が淡色多少、平ら又はやや折りたたまれ、多数の小さな油腺点がある。花序は腋生、花が3～8個、通常の花序柄の上に花柄がつく。花は5数性。咢片は広デルタ形、長さ約1mm。花弁は楕円形、長さ約8mm、白色、無毛(しばしば内にパピラがある)、果時に宿存しない。葯は白色の付属体(apiculum)の下に2個の目立つ腺をもつ。子房はピラミッド形、無毛。心皮はその長さのほとんどで分離。袋果は目立つ長さ約3mmの嘴があり、長さ約7mm。種子は扁平な楕円形、長さ4～4.5mm。花期は主に春と秋。
品種)　'Flower Girl Pink' , 'Flower Girl White' ,'Profusion' , 'Ruby Cascade'(高さ0.5～0.6m、花が白色、赤色、ピンク色) , 'White Lady' , 'Winter Rouge'
3-1 Philotheca myoporoides subsp. brevipedunculata M.J.Bayly
　低木、高さ約1m以下。葉は長円状楕円形～倒卵形、長さ11～19mm×幅4～7mm、上面は平ら～わずかに凹面、下面で中肋が目立ち、先は円形～鈍形、花序は花が1(～3)個、花序柄は長さ0～2mm。花期は2月(オーストラリア：8月)。
3-2 Philotheca myoporoides subsp. euroensis Bayly
　低木、高さ約1m以下。葉は広楕円形、長さ15～35mm×幅6～12mm、上面は明瞭に凹面～2つ折り、下面で中肋は不明瞭、先は鈍形。花序は花が1～4個。花序柄は長さ0～7mm。花期は11～5月(オーストラリア：5～11月)。
3-3 Philotheca myoporoides subsp. myoporoides
　低木(まれに、小高木)、高さ約2.5(～4.5)m以下。葉は狭楕円形～倒披針形、長さ(20～)30～120(～155)mm×幅(7～)10～18(～33)mm、上面は平ら～わずかに凹面、下面で中肋が目立ち、先は鋭形～円形。花序は花が3～8個。花序柄は長さ2～20mm。花期は1～7月(オーストラリア：7～1月)。
3-4 Philotheca myoporoides subsp. petraea Rozefelds
　低木、高さ約1m以下。葉は倒卵形、長さ8～16mm×幅4～7mm、断面でわずか～明瞭にV字形、下面では中肋が不明瞭、先は鈍形。花序は花が1～4個。花序柄は長さ2～3mm。花期は5月(オーストラリア：11月)。

4 その他ハイブリッド
品種)　'J. Semmens' , 'Poorinda'

参考

1) Flora of Victoria
　hilotheca 2) NEW SOUTH WALES FLORA ONLINE
　Philotheca buxifolia (Sm.) Paul G.Wilson 3) Plants of the World Online | Kew Science
　Philotheca buxifolia (Sm.) Paul G.Wilson